JP4269936B2 - 感熱記録組成物及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、感熱記録組成物およびこれを用いた感熱記録方法に関する。
近頃、電子部品、電気部品、電気製品、自動車部品、機械部品、シート、カードなどの表面に製造年月日、製造会社名、製品名などを明記する方法として、非接触で且つマーキング速度が速く、幅広い素材の表面形状にとらわれることなくマーキング可能であり、自動化、工程管理が容易なことから、レーザーマーキングが普及している。また、レーザーマーキングは、素材自身に直接マーキングするため、インキ、溶剤および接着剤などを使わず済み、そのため環境的にもクリーンなマーキング方法として最近注目を受けている。
現在、使用されているレーザーマーキングは、金属や樹脂などに直接レーザーを照射することにより、照射部分が熱分解したり蒸発することによって表面に物理的変化を生じさせたり、発色または脱色させることでマーキングする仕組みである。しかし、幅広い用途で使用されている樹脂をマーキングする場合、樹脂自身はレーザーの種類により多少の差はあるもののレーザー感度が低いためマーキングが難しいことがある。特に、それらの樹脂は、大出力でありながら微細加工ができるYAGレーザー光の波長1064nmに対し
このような問題に対して、レーザー感度を持ちながら熱で変色する無機素材を一緒に樹脂に添加し、樹脂成型物のレーザーマーキング性を向上させることが行われている(例えば特許文献1〜3参照。)。
特開平5−229256号公報 特開平5−254252号公報 特開平5−301458号公報
しかし、上記方法により、レーザーマーキング時の発色性の問題は改善されるものの、熱により変色しやすい無機素材を用いるため、混練温度の高いポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂などの熱可塑性樹脂に練りこむ場合には耐熱性に問題が生じ、耐熱性を考慮すると使用できる熱可塑性樹脂は限られてくる。また、使用される無機素材は、そのままでは粒子表面の親水性が高いため、樹脂との相溶性が悪く分散不良と言った問題も生じやすい。
そこで、本発明は、加工時の温度では発色せず、加工性や保存安定性において優れ、熱刺激によりコントラストの高い黒色発色を示す感熱記録組成物、および加熱によりコントラストの高い黒色画像を記録する感熱記録方法を提供することを目的とする。
本発明の感熱記録組成物は、高い感熱発色性および耐熱性を持ち、色が淡い芳香環を有するホスホン酸銅および樹脂などの担持体を含有することを特徴とする。本発明の感熱記録組成物は、さらに、無機材料、カーボンブラックまたはグラファイトから選ばれる一種以上の材料を含有することが好ましく、無機材料が銅原子を含有することが好ましい。また、芳香環を有するホスホン酸銅は、フェニルホスホン酸銅であることが好ましい。
また、本発明の感熱記録方法は、上記の感熱記録組成物を成型してなる成型物表面、または基材上に上記の感熱記録組成物からなる感熱発色層を有する感熱記録媒体に、加熱により記録することを特徴とする。
本発明の感熱記録組成物は、高い感熱発色性および耐熱性を持ち、色が淡い芳香環を有するホスホン酸銅を樹脂などの担持体に混合しているため、化学的にも物理的にも安定で、加熱記録時に無色または淡色から黒色または褐色に発色し、コントラストの高い画像を記録でき、優れた感熱記録適性を示す。
また、本発明の感熱記録組成物を用いた感熱記録方法によれば、安定した濃度・色彩をもつコントラストの高い感熱記録をすることができる。
まず、感熱記録組成物について説明する。
本発明の感熱記録組成物に含有される芳香環を有するホスホン酸銅は、記録時の温度で酸化反応を起こしやすく、非常に着色力の高い黒色または褐色に発色するものである。例えば、フェニルホスホン酸銅、2−メトキシフェニルホスホン酸銅、4−メトキシフェニルホスホン酸銅、4−エチルフェニルホスホン酸銅、2−イソプロピルフェニルホスホン酸銅、3−ニトロフェニルホスホン酸銅、4−ニトロフェニルホスホン酸銅、2−メチル−4−ニトロフェニルホスホン酸銅、3−メチル−5−ニトロフェニルホスホン酸銅、2−クロロ−5−メチルフェニルホスホン酸銅、4−クロロフェニルホスホン酸銅、4−ブロモフェニルホスホン酸銅、2−ヨードフェニルホスホン酸銅、2−フルオロフェニルホスホン酸銅等が挙げられる。特に、フェニルホスホン酸銅は、高い耐熱性および疎水性を持つため熱可塑性樹脂などへの加工性が良好であり、また安価に合成できるため好ましい。芳香環を有するホスホン酸銅は、二種類以上を混合して用いてもよい。
感熱記録組成物には、記録時の熱伝導性や、熱源としてレーザー光を用いる場合のレーザー光に対する感度を向上させるため、無機材料、カーボンブラックまたはグラファイトから選ばれる一種以上の材料を含有させることが好ましい。無機材料、カーボンブラック、グラファイトは、二種類以上を混合して用いてもよい。また、芳香環を有するホスホン酸銅と、無機材料、カーボンブラックまたはグラファイトから選ばれる一種以上の材料の混合重量比率は、99.9:0.1〜10:90が好ましく、その範囲の中でも95:5〜50:50がより好ましい。
無機材料としては、金属の単体、塩、酸化物、水酸化物等を用いることができる。
金属の単体として具体的には、鉄、亜鉛、スズ、ニッケル、銅、銀、金等が挙げられる。
金属の塩として具体的には、炭酸カルシウム、炭酸銅、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、炭酸ランタン、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸カドミウム、硝酸亜鉛、硝酸コバルト、硝酸鉛、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸パラジウム、硝酸ランタン、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸カドミウム、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸パラジウム、塩化銅、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銀、塩化亜鉛、リン酸銅、リン酸鉄、リン酸コバルト、ピロリン酸銅、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸コバルト、シュウ酸銅、シュウ酸鉄、シュウ酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸鉄、安息香酸コバルト等が挙げられる。
金属の酸化物として具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化マンガン、酸化モリブテン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化パラジウム、酸化ランタン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、銅−モリブテン複合酸化物等が挙げられる。金属酸化物としては、層状構造を有する、マイカ、モンモリロナイト、スメクタイト、タルク、クレー等を用いることもできる。
金属の水酸化物として具体的には、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アンチモン、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化ランタン等が挙げられる。
特に、銅原子を含有する無機材料は、記録時の熱伝導性の向上、高い感熱発色性を持つことによるコントラストの高い画像の記録、熱源として用いられるレーザー光に対する感度の向上による感熱発色性の向上などの利点が得られるため好ましい。
本発明の感熱記録組成物の構成成分となる担持体としては特に制限はないが、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
熱硬化性樹脂として具体的には、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂として具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等が挙げられる。特に、燃焼時のダイオキシン類の発生原因となるハロゲンを含まず、安価で広く市場で使用されているポリプロピレン系樹脂、透明性が高く、リサイクル性の高いポリエステル系樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂として具体的には、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエン/ポリチオール系樹脂、スピラン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂等が挙げられる。
感熱記録組成物を用いて感熱発色層を形成する場合には、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール類、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の結着樹脂を担持体とすることが好ましい。結着樹脂は、二種類以上を混合して用いてもよい。
次に、感熱記録組成物を用いた感熱記録方法について説明する。
感熱記録は、感熱記録組成物を成型してなる成型物表面に、または基材上に感熱記録組成物からなる感熱発色層を有する感熱記録媒体に、加熱により記録することによって行う。
成型物表面に加熱により記録する感熱記録方法の場合には、成型物は、芳香環を有するホスホン酸銅と熱可塑性樹脂とを含む感熱記録組成物を加熱成型することにより製造される。この場合、感熱記録組成物の全成分量に対して、芳香環を有するホスホン酸銅の含有量は0.05〜60重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましい。芳香環を有するホスホン酸銅の含有量が60重量%を超えると、熱可塑性樹脂の持つ柔軟性、成型性等の物性を損ねる可能性があるからである。また、白色でない少し着色がかった芳香環を有するホスホン酸銅を使用する場合には、含有量を上げすぎると組成物全体の色調にも影響するため、含有量60重量%以下の範囲内であることが好ましい。
成型物の製造に用いられる感熱記録組成物には、得られる成型物の感熱記録特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤および防曇剤等を添加しても良い。
基材上に感熱発色層を有する感熱記録媒体に、加熱により記録する感熱記録方法の場合には、感熱記録媒体は、感熱記録組成物を有機溶剤、水等からなる液状媒体に分散してなる塗工液を基材に塗工し、感熱発色層を形成することにより製造される。この場合、塗工液の全成分量に対して、芳香環を有するホスホン酸銅の含有量は0.5〜40重量%であることが好ましく、2〜30重量%であることがより好ましい。感熱記録材料の含有量が40重量%を超えると分散不良を起こしやすく、感熱記録媒体の感熱記録特性を損なう可能性があるからである。
塗工液には、塗工性の向上等を目的として、填料、界面活性剤、滑剤等を添加してもよい。
感熱記録組成物を有機溶剤、水等の液状媒体中に分散して塗工液を調製する際に使用する分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)等が挙げられる。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。
塗工液は、例えば、ワイヤーバーを用いて基材上に塗工することができる。
基材としては、紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属箔、またはこれらの積層体が用いられる。
基材と感熱発色層との間には、発色性向上の目的からアンダーコート層を設けることも可能である。アンダーコート層は、アクリル系樹脂やスチレン系樹脂等で形成される球状樹脂微粒子や無機顔料等を結着樹脂に添加することにより構成される。
このようにして得られた成型物または感熱記録媒体を加熱することにより、加熱部分の芳香環を有するホスホン酸銅が熱により酸化分解または炭化し、素材によっては芳香環を有するホスホン酸銅の周りに存在する樹脂等の担持体も熱により分解し変色することで、非常に鮮明なコントラストを持った記録を行うことができる。記録する際のエネルギー量は、芳香環を有するホスホン酸銅の種類や量、記録部分の厚みなどによって異なるが、少なくとも芳香環を有するホスホン酸銅が酸化分解または炭化するためのエネルギー量は必要であり、記録時の加熱温度は250〜550℃であることが好ましく、300〜500℃であることがより好ましい。
感熱記録を行う加熱源としては、例えばサーマルヘッド、熱ペン、レーザー光等が挙げられる。サーマルヘッドや熱ペンを用いる場合は、熱伝導率の高い無機材料、カーボンブラック、グラファイトを、芳香環を有するホスホン酸銅と一緒に用いることが好ましい。また、レーザー光を用いる場合は、熱伝導率が高く、使用するレーザー光に対しても感度を有する無機材料、カーボンブラック、グラファイトを、芳香環を有するホスホン酸銅と一緒に用いることが好ましい。レーザー光としては、例えば炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
また、本発明の感熱記録組成物を成型してなる成型物に対して、加熱源としてレーザー光を用いて記録をし、加熱により記録すると同時に樹脂成型物が溶融および固形化する機構を利用して、二つの樹脂成型物の間を融着させ繋げることもできる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞれ表す。
(合成例1)
水1350部に、フェニルホスホン酸130部を溶解させた。これに、硫酸銅5水和物103部を添加し、室温下で2時間攪拌した。析出物をろ過し、水で洗浄を行い、100℃で減圧乾燥させフェニルホスホン酸銅35部を得た。
(合成例2)
フェニルホスホン酸の代わりに4−エチルフェニルホスホン酸153部を使用した以外は合成例1と同様にして4−エチルフェニルホスホン酸銅を得た。
(合成例3)
フェニルホスホン酸の代わりにエチルホスホン酸90部を使用した以外は合成例1と同様にしてエチルホスホン酸銅を得た。
(成型物の作成)
・マスターバッチの作成方法
表1に示すポリエステル系樹脂またはポリプロピレン系樹脂80部と、合成例で得られたホスホン酸銅単独またはホスホン酸銅と無機材料の混合品(混合重量比率80:20)20部とを溶融混練機にて混練することにより、ペレット状の樹脂組成物(マスターバッチ)を得た。
・フィルム成型方法
得られたマスターバッチ50部と、マスターバッチの作成に用いたのと同様のポリエステル系樹脂またはポリプロピレン系樹脂50部とを混合し、220〜260℃で溶融押出し、厚さ200μmの感熱記録フィルムを得た。
(感熱記録材料の作成)
水195部、合成例で得られたホスホン酸銅単独またはホスホン酸銅と無機材料の混合品(混合重量比率80:20)40部、10%ポリビニルアルコール水溶液90部および炭酸カルシウム20部を攪拌混合し、塗工液を調製した。坪量40g/m2の原紙に、得られた塗工液をワイヤーバーで塗工量(固形分)6g/m2となるように塗工し、乾燥した後スーパーカレンダーで加圧処理して感熱記録材料を得た。
(記録方法A)
得られた成型物および感熱記録材料について、ドット密度8ドット/mm、ヘッド抵抗1300Ωの大倉電機社製サーマルヘッド「TH−PMD」を具備するGIIIFAX試験機
を使用して、感熱記録を行った。記録は、ヘッド電圧22V、通電時間1.2msで行い、記録画像の反射濃度(O.D.値)をマクベス濃度計で測定した。成型物に感熱記録した結果を表1に、感熱記録材料に感熱記録した結果を表2に示す。
(記録方法B)
得られた成型物および感熱記録材料について、YVO4レーザー「YVO社製i-Marker10W」(連続描画)を使用して感熱記録を行い、記録画像の反射濃度(O.D.値)をマクベス濃度計で測定した。成型物に感熱記録した結果を表1に、感熱記録材料に感熱記録した結果を表2に示す。
Figure 0004269936

*PETG:イーストマン社製ポリエステル系樹脂「EastarPETG6763」
*PP:グランドポリマー社製ポリプロピレン系樹脂「グランドポリプロB761QD」
Figure 0004269936

Claims (7)

  1. 芳香環を有するホスホン酸銅および担持体を含有することを特徴とする感熱記録組成物。
  2. さらに、無機材料、カーボンブラックまたはグラファイトから選ばれる一種以上の材料を含有することを特徴とする請求項1記載の感熱記録組成物。
  3. 芳香環を有するホスホン酸銅が、フェニルホスホン酸銅であることを特徴とする請求項1または2記載の感熱記録組成物。
  4. 無機材料が、銅原子を含有することを特徴とする請求項2または3記載の感熱記録組成物。
  5. 請求項1ないし4いずれか1項に記載の感熱記録組成物を成型してなる成型物表面に、加熱により記録することを特徴とする感熱記録方法。
  6. 基材上に請求項1ないし4いずれか1項に記載の感熱記録組成物からなる感熱発色層を有する感熱記録材料に、加熱により記録する感熱記録方法。
  7. 加熱が、サーマルヘッドまたはレーザー光により行われることを特徴とする請求項5または6記載の感熱記録方法。
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