JP4269496B2 - モータ制御装置及びモータ制御方法 - Google Patents

モータ制御装置及びモータ制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ制御装置及びモータ制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電動車両においては、回転自在に配設され、磁極対を備えたロータ、及び該ロータより径方向外方に配設され、U相、V相及びW相のステータコイルを備えたステータから成るモータが使用される。そして、モータ制御装置によってU相、V相及びW相の電流を前記ステータコイルに供給することにより、前記モータを駆動し、モータのトルク、すなわち、モータトルクを発生させ、該モータトルクを駆動輪に伝達して電動車両を走行させるようになっている。
【0003】
そのために、前記モータ制御装置において、前記ステータコイルに供給される電流を電流センサによって検出するとともに、前記ロータの磁極の位置、すなわち、磁極位置をレゾルバによって検出し、検出された電流、及び検出された磁極位置、すなわち、検出磁極位置θをモータ制御部に送るようになっている。そして、該モータ制御部は、前記電流、検出磁極位置θ、及び車両制御装置から送られたトルク指令値に基づいてインバータを駆動する。
【0004】
ところが、前記レゾルバを使用する場合、磁極位置の検出精度、及びモータの制御性を向上させることはできるが、モータ制御装置のコストが高くなってしまう。そこで、前記レゾルバに代えて簡易的な磁極位置センサとしての磁気抵抗素子、例えば、ホール素子を使用することが考えられる。この場合、ロータのシャフトにドラムが取り付けられ、該ドラムに小磁石が取り付けられ、前記ホール素子は、前記小磁石の位置を検出し、所定の角度(例えば、60〔°〕)ごとに位置検出信号PU 、PV 、PW を発生させるようになっている(特開平6−165572号公報参照)。
【0005】
そして、前記ホール素子と接続させて磁極位置検出回路が配設され、該磁極位置検出回路は、位置検出信号PU 、PV 、PW を受けると、位置検出信号PU 、PV 、PW の信号レベルの組合せに基づいて6個の検出パルスを発生させ、各検出パルスに基づいて磁極位置を検出し、検出磁極位置θを前記検出パルスと共に前記モータ制御部に送るようにしている。この場合、前記ホール素子はレゾルバと比べて価格が低いので、モータ制御装置のコストをその分低くすることができる。
【0006】
図2は従来の位置検出信号及び検出磁極位置の波形図である。なお、図において、横軸に時間、縦軸に位置検出信号PU 、PV 、PW 及び検出磁極位置θを採ってある。
【0007】
図において、PU 、PV 、PW はホール素子によって発生させられた位置検出信号であり、該位置検出信号PU 、PV 、PW は、それぞれ電気角で180〔°〕ごとに信号レベルが切り換わり、互いに電気角で120〔°〕ずつ位相をずらして発生させられる。したがって、前記位置検出信号PU 、PV 、PW の信号レベルの組合せは6個のパターンから成る。
【0008】
前記磁極位置検出回路は、前記位置検出信号PU 、PV 、PW を受けると、各タイミングt1〜t6で検出パルスを発生させ、位置検出信号PU 、PV 、PW の信号レベルの組合せに基づいて、電気角の1周期において6ステップの分解能で磁極位置を検出する。この場合、検出磁極位置θは、図に示されるように階段状に変化させられる。
【0009】
ところで、実際の磁極位置、すなわち、実磁極位置と検出磁極位置θとは一致しない。
【0010】
図3は従来のホール素子を使用して磁極位置を検出したときの実磁極位置と検出磁極位置との関係を示す図である。なお、図において、横軸に実磁極位置を、縦軸に検出磁極位置θを採ってある。
【0011】
図において、L1は理想の検出磁極位置θを表す線であり、理想の検出磁極位置θと実磁極位置とは等しい。また、L2は磁極位置検出回路によって検出された検出磁極位置θを表す線であり、実磁極位置が0〔°〕以上60〔°〕未満、60〔°〕以上120〔°〕未満、120〔°〕以上180〔°〕未満、180〔°〕以上240〔°〕未満、240〔°〕以上300〔°〕未満、及び300〔°〕以上360〔°〕未満の各位置検出可能範囲にあるときの各検出磁極位置θはそれぞれ0、60、120、180、240、300〔°〕である。
【0012】
そこで、前記モータ制御装置は、各検出パルスが発生させられたときの検出磁極位置θに基づいて制御用として認識される磁極位置、すなわち、制御磁極位置θdを算出するようにしている。そして、前記モータが所定のモータの回転速度、すなわち、所定のモータ回転速度より高いモータ回転速度で駆動され、ロータが所定の回転速度より高い回転速度で回転させられる場合、制御磁極位置θdは、例えば、比例計算によって線形補間を行うことにより算出される。モータ回転速度をNmとし、検出パルスが発生させられてから現在までに経過した時間をτとすると、制御磁極位置θdは、
θd=θ+Nm・τ
になる。
【0013】
また、モータが所定のモータ回転速度以下のモータ回転速度で駆動され、ロータが所定の回転速度以下の回転速度で回転させられている場合、制御磁極位置θdは、前記線L1上における各位置検出可能範囲の中間点p1〜p6にあると推定され、
θd=θ+30〔°〕
として算出される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のモータ制御装置においては、ホール素子を使用しているので、分解能が低く、一律に制御磁極位置θdが各位置検出可能範囲の中間点p1〜p6にあると推定すると、制御磁極位置θdと実磁極位置との差が大きくなることがある。その場合、モータトルクを、最大にして、電動車両を駆動するのに必要とされるトルク、すなわち、要求トルクと等しい値にすることができない。
【0015】
したがって、発進時、登坂路走行時等のように要求トルクが大きい場合に、電動車両を走行させるのが困難になり、電動車両の走行性が低下してしまう。
【0016】
そこで、モータ制御装置の処理能力、モータの性能等を向上させることが考えられるが、その場合、モータ制御装置のコストが高くなってしまう。
【0017】
本発明は、前記従来のモータ制御装置の問題点を解決して、モータ制御装置のコストを低くすることができ、電動車両の走行性を向上させることができるモータ制御装置及びモータ制御方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明のモータ制御装置においては、ロータ及びステータを備えたモータと、前記ロータの回動に伴って、所定の角度ごとに磁極位置情報を発生させる磁極位置センサと、前記磁極位置情報に基づいて制御磁極位置算出処理を行い、制御用として認識される制御磁極位置を算出する制御磁極位置算出処理手段と、前記制御磁極位置に基づいて前記モータを駆動する駆動手段とを有する。
【0019】
そして、前記制御磁極位置算出処理手段は、前記磁極位置情報の発生に伴って、所定の変更領域内で前記制御磁極位置を変更する制御磁極位置変更処理手段を備える。
また、該制御磁極位置変更処理手段は、最初の磁極位置情報を検出するまでは所定の変更領域内で制御磁極位置を変更し、最初の磁極位置情報の発生に伴って、前記変更領域を狭くする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の形態におけるモータ制御装置のブロック図、図4は本発明の実施の形態におけるモータの断面図、図5は本発明の実施の形態におけるモータ制御装置の概略図、図6は本発明の実施の形態におけるモータ制御部のブロック図、図7は本発明の実施の形態におけるモータ制御装置の動作を示すフローチャート、図8は本発明の実施の形態におけるモータの特性図である。なお、図8において、横軸に界磁角を、縦軸にモータトルクを採ってある。
【0028】
図において、10はモータ制御装置、31はモータであり、該モータ31としてDCブラシレスモータが使用される。前記モータ31は、回転自在に配設されたロータ21、及び該ロータ21より径方向外方に配設されたステータ22を備える。前記ロータ21は、図示されないシャフトに図示されないハブを介して取り付けられたロータコア21a、及び該ロータコア21aの円周方向における複数箇所に配設された永久磁石21bを備える。本実施の形態においては、12箇所にそれぞれN極及びS極の永久磁石21bが交互に配設され、6個の磁極対が形成される。また、前記ステータ22は、ステータコア23、及び該ステータコア23に巻装されたU相、V相及びW相のステータコイル11〜13を備え、前記ステータコア23の円周方向における複数箇所(本実施の形態においては、18箇所)には、径方向外方に向けて突出させてステータポール24が形成される。
【0029】
そして、前記モータ31を駆動して電動車両を走行させるために、バッテリ14からの直流の電流がインバータ40によってU相、V相及びW相の電流IU 、IV 、IW に変換され、各相の電流IU 、IV 、IW はそれぞれ各ステータコイル11〜13に供給される。
【0030】
そのために、前記インバータ40は、6個のスイッチング素子としてのトランジスタTr1〜Tr6を備え、各トランジスタTr1〜Tr6を選択的にオン・オフさせることによって、前記各相の電流IU 、IV 、IW を発生させることができるようになっている。
【0031】
また、前記シャフトに図示されないドラムが取り付けられ、該ドラムに小磁石が取り付けられ、前記ドラムと対向させて、簡易的な磁極位置センサとしての磁気抵抗素子、例えば、ホール素子43が配設され、該ホール素子43は、前記ロータ21の回動に伴って、前記小磁石の位置を検出し、所定の角度(本実施の形態においては、60〔°〕)ごとに磁極位置情報としての位置検出信号PU 、PV 、PW を発生させ、磁極位置検出手段及び検出パルス発生処理手段としての磁極位置検出回路44に送る。そして、該磁極位置検出回路44は、前記位置検出信号PU 、PV 、PW を受けて位置検出信号PU 、PV 、PW の信号レベルの組合せに基づいて6個の検出パルスを発生させ、各検出パルスに基づいて磁極位置を検出し、検出磁極位置θを前記検出パルスと共にインバータ出力発生手段としてのモータ制御部45に送る。
【0032】
ところで、前記ステータコイル11〜13はスター結線されているので、各相のうちの二つの相の電流の値が決まると、残りの一つの相の電流の値も決まる。したがって、各相の電流IU 、IV 、IW を制御するために、例えば、ステータコイル11、12のリード線にU相及びV相の電流IU 、IV を検出する電流センサ33、34が配設され、該電流センサ33、34のセンサ出力としての検出信号SGU 、SGV がモータ制御部45に送られる。
【0033】
したがって、電動車両の全体の制御を行う図示されない車両制御回路の指令値発生部がトルク指令値を発生させ、該トルク指令値をモータ制御部45に送ると、該モータ制御部45は、トルク指令値に基づいて電流指令値を発生させ、前記検出磁極位置θ、検出信号SGU 、SGV 及び前記電流指令値に基づいて所定のパルス幅を有するV相、U相及びW相のパルス幅変調信号SU 、SV 、SW を発生させ、該各相のパルス幅変調信号SU 、SV 、SW をドライブ回路51に送る。該ドライブ回路51は、前記パルス幅変調信号SU 、SV 、SW を受けて、トランジスタTr1〜Tr6を駆動するための6個の駆動信号をそれぞれ発生させ、該駆動信号をインバータ40に送る。該インバータ40は、前記駆動信号がオンの間だけトランジスタTr1〜Tr6をオンにして各相の電流IU 、IV 、IW を発生させ、該各相の電流IU 、IV 、IW を前記各ステータコイル11〜13に供給する。このように、モータ31を駆動することによって電動車両を走行させることができる。なお、17はインバータ40とバッテリ14との間に配設された平滑用のコンデンサである。また、インバータ40、モータ制御部45及びドライブ回路51によって駆動手段が構成される。
【0034】
ところで、前述されたように、実磁極位置と検出磁極位置θとは一致しないので、前記モータ制御部45内に制御磁極位置算出処理手段72が配設され、該制御磁極位置算出処理手段72は、制御磁極位置算出処理を行い、磁極位置検出回路44から各検出パルス及び検出磁極位置θが送られると、各検出パルス及び検出磁極位置θに基づいて、制御用として認識される制御磁極位置θcを算出するようにしている。
【0035】
そして、前記モータ制御部45においては、ロータ21の磁極対の方向にd軸を、該d軸と直角の方向にq軸をそれぞれ採ったd−q軸モデル上でベクトル制御演算によるフィードバック制御が行われるようになっている。
【0036】
そのために、前記モータ制御部45内において、前記検出信号SGU 、SGV 及び制御磁極位置θcがUV−dq変換器61に送られる。該UV−dq変換器61は、検出信号SGU 、SGV 及び前記制御磁極位置θcに基づいて三相/二相変換を行い、検出信号SGU 、SGV をd軸電流id 及びq軸電流iq に変換する。
【0037】
そして、d軸電流id は減算器62に送られ、該減算器62において前記d軸電流id と前記電流指令値のうちのd軸電流指令値idsとのd軸電流偏差Δid が算出され、該d軸電流偏差Δid が電圧指令値発生手段としてのd軸電圧指令値発生部64に送られる。一方、q軸電流iq は減算器63に送られ、該減算器63において前記q軸電流iq と前記電流指令値のうちのq軸電流指令値iqsとのq軸電流偏差Δiq が算出され、該q軸電流偏差Δiq が電圧指令値発生手段としてのq軸電圧指令値発生部65に送られる。
【0038】
そして、前記d軸電圧指令値発生部64及びq軸電圧指令値発生部65は、パラメータ演算部71から送られたq軸インダクタンスLq 及びd軸インダクタンスLd 、並びに前記d軸電流偏差Δid 及びq軸電流偏差Δiq に基づいて、d軸電流偏差Δid 及びq軸電流偏差Δiq が零(0)になるように、2軸上のインバータ出力としてのd軸電圧指令値Vd * 及びq軸電圧指令値Vq * をそれぞれ発生させ、該d軸電圧指令値Vd * 及びq軸電圧指令値Vq * をそれぞれdq−UV変換器67に送る。
【0039】
続いて、該dq−UV変換器67は、前記d軸電圧指令値Vd * 、q軸電圧指令値Vq * 及び制御磁極位置θcに基づいて二相/三相変換を行い、d軸電圧指令値Vd * 及びq軸電圧指令値Vq * をU相、V相及びW相の電圧指令値VU * 、VV * 、VW * に変換し、該各相の電圧指令値VU * 、VV * 、VW * をPWM発生器68に送る。該PWM発生器68は、前記各相の電圧指令値VU * 、VV * 、VW * 、及び前記コンデンサ17の端子間に印加され、図示されない直流電圧検出回路によって検出されたバッテリ14の電圧に基づいて各相のパルス幅変調信号SU 、SV 、SW を発生させ、ドライブ回路51に送られる。
【0040】
次に、制御磁極位置算出処理手段72の動作について説明する。
【0041】
この場合、前記制御磁極位置算出処理手段72は、第1の条件としてのモータ駆動判断条件が成立するかどうか、すなわち、磁極位置検出回路44において検出パルスが発生させられ、検出パルスが発生させられてから現在までに経過した時間をτとしたとき、時間τが閾(しきい)値τTH(本実施の形態においては、300〔ms〕)より小さいかどうかを判断する。モータ駆動判断条件が成立する場合、すなわち、前記時間τが閾値τTHより小さい場合は、モータ31が所定のモータ回転速度より高いモータ回転速度で駆動され、ロータ21が所定の回転速度より高い回転速度で回転させられていることになるので、前記制御磁極位置算出処理手段72は、例えば、比例計算によって線形補間を行うことにより前記制御磁極位置θcを算出する。そして、該制御磁極位置θcは、
θc=θ+Nm・τ
になる。モータ回転速度Nmは、二つ以上の検出パルスが発生させられるタイミングに基づいて算出される。なお、本実施の形態においては、前記モータ駆動判断条件が成立するかどうかを、時間τが閾値τTHより小さいかどうかによって判断されるようになっているが、前記モータ回転速度Nmが閾値以上であるかどうかによって判断することもできる。
【0042】
また、前記モータ駆動判断条件が成立しない場合、すなわち、前記時間τが閾値τTH以上である場合は、モータ31が所定のモータ回転速度以下のモータ回転速度で駆動され、ロータ21が所定の回転速度以下の回転速度で回転させられていることになる。
【0043】
そこで、前記制御磁極位置算出処理手段72は、発進時、登坂路走行時等のように要求トルクが大きい場合、第1の推定方法によって前記制御磁極位置θcを推定し、惰行走行時、平坦(たん)路走行時、降坂路走行等のように要求トルクが小さい場合、第2の推定方法によって前記制御磁極位置θcを推定する。
【0044】
そのために、前記制御磁極位置算出処理手段72は、第2の条件としての制御磁極位置変更処理開始条件が成立するかどうか、すなわち、トルク指令値TM* の絶対値|TM* |が閾値TMTH(本実施の形態においては、90〔Nm〕)より大きいかどうかを判断する。制御磁極位置変更処理開始条件が成立する場合、すなわち、絶対値|TM* |が閾値TMTHより大きい場合は、前記要求トルクが大きいので、制御磁極位置算出処理手段72の図示されない制御磁極位置変更処理手段は、制御磁極位置変更処理を開始し、位置検出信号PU 、PV 、PW 及び検出パルスの発生に伴って、第1の推定方法によって前記制御磁極位置θcを推定し、ホール素子43の各位置検出可能範囲において設定された所定の変更領域内、すなわち、所定のスイープ幅で制御磁極位置θcを変更(スイープ)する。なお、本実施の形態において、各位置検出可能範囲は、電気角で表したとき60〔°〕である。
【0045】
また、前記絶対値|TM* |が閾値TMTH以下である場合は、前記要求トルクが小さいので、前記制御磁極位置算出処理手段72の図示されない中間点設定処理手段は、第2の推定方法によって、制御磁極位置θcが前記線L1(図3参照)上における各位置検出可能範囲の中間点p1〜p6にあると推定され、
θc=θ+30〔°〕
として算出される。
【0046】
前記制御磁極位置変更処理手段は、前記制御磁極位置変更処理が開始された後、最初の検出パルスが発生させられるまでは前記制御磁極位置θcを第1のスイープ幅w1及び第1の変化速度Δθc1で変更し、前記最初の検出パルスが発生させられると、前記制御磁極位置θcを第2のスイープ幅w2及び第2の変化速度Δθc2で変更する。なお、前記第1、第2のスイープ幅w1、w2及び第1、第2の変化速度Δθc1、Δθc2は、
w1>w2
Δθc2>Δθc1
である。また、該第2の変化速度Δθc2は、検出パルスが発生させられるたびに変更され、高くされる。したがって、モータトルクを、最大にして、要求トルクと等しい値にするのに必要な時間を短くすることができる。
【0047】
そして、本実施の形態において、前記制御磁極位置変更処理が開始されてから最初の検出パルスが発生させられるまでは、前記制御磁極位置θcは電気角で70〜−10〔°〕の範囲で変更され、前記第1のスイープ幅w1は80〔°〕にされる。すなわち、前記位置検出可能範囲内における制御磁極位置θcの初期値を30〔°〕とし、前記最初の検出パルスが発生させられるまで、制御磁極位置θcを、30〔°〕からトルク指令方向に70〔°〕まで大きくした後、70〔°〕からトルク指令方向と逆の方向に−10〔°〕まで小さくし、その後、70〜−10〔°〕の範囲で繰り返し変更する。
【0048】
続いて、前記最初の検出パルスが発生させられると、前記制御磁極位置θcは電気角で45〜15〔°〕の範囲で変更され、前記第2のスイープ幅w2は狭くされ、30〔°〕にされる。すなわち、前記位置検出可能範囲内における制御磁極位置θcの初期値を15〔°〕とし、次の検出パルスが発生させられるまで、制御磁極位置θcを、15〔°〕からトルク指令方向に45〔°〕まで大きくした後、45〔°〕からトルク指令方向と逆の方向に15〔°〕まで小さくし、その後、45〜15〔°〕の範囲で繰り返し変更する。
【0049】
ところで、モータ31を駆動し、ステータ22に対してロータ21を回動させるのに伴って、ロータ21におけるN極とステータ22におけるS極との間の角度、すなわち、界磁角が変化するが、図8に示されるように、界磁角が30〔°〕である場合、モータトルクが最大になり、30〔°〕から離れるに従ってモータトルクが小さくなる。そこで、前記制御磁極位置変更処理が開始されてから最初の検出パルスが発生させられるまでの制御磁極位置θcの初期値を30〔°〕にし、制御磁極位置θcを70〜−10〔°〕の範囲内において変更すると、モータトルクは必ず最大になる。
【0050】
また、前記最初の検出パルスが発生させられる時点において、界磁角は0〔°〕であるが、0〔°〕から60〔°〕までの間に実磁極位置が進む速度は予測できない。そこで、制御磁極位置θcを実磁極位置に対して進ませるようにしている。すなわち、前記最初の検出パルスが発生させられた後は、制御磁極位置θcの初期値を15〔°〕にし、制御磁極位置θcを45〜15〔°〕の範囲で変更すると、モータトルクは必ず最大になる。
【0051】
このように、制御磁極位置θcを変更すると、モータ31によって発生させられるモータトルクに積極的にトルク脈動が発生させられるので、実磁極位置と検出磁極位置θとが一致しない場合でも、モータトルクの実行値成分をトルク脈動によって一時的に大きくし、モータトルクを最大にして要求トルクと等しい値にすることができる。したがって、発進時、登坂路走行時等のように要求トルクが大きい場合でも、電動車両を走行させるのが容易になり、電動車両の走行性を向上させることができる。
【0052】
また、モータ制御装置の処理能力、モータの性能等を向上させる必要がないので、モータ制御装置のコストを低くすることができる。
【0053】
なお、前記最初の検出パルスが発生させられた後は、制御磁極位置θcとモータトルクが最大になる磁極位置とが大きくずれることがない。したがって、第1のスイープ幅w1を第2のスイープ幅w2にして変更領域を狭くし、モータトルクを最大にして要求トルクと等しい値にするのに必要な時間を短くすることができる。
【0054】
また、モータ駆動判断条件が成立し、例えば、比例計算によって線形補間を行うことにより前記制御磁極位置θcを算出する場合には、前記制御磁極位置θcを変更する必要がなくなるので、モータトルクを最大にして要求トルクと等しい値にするのに必要な時間が不要になる。
【0055】
このようにして、制御磁極位置変更処理が行われ、モータ31が十分なモータトルクで駆動されると、制御磁極位置算出処理手段72は第3の条件としての制御磁極位置変更処理解除条件が成立するかどうかを判断する。本実施の形態において、制御磁極位置変更処理解除条件が成立するかどうかは、モータ回転速度Nmの絶対値|Nma|が閾値NTH(本実施の形態においては、20〔rpm〕)以上であるかどうか、又は絶対値|TM* |が閾値TMTHより大きいかどうかによって判断され、絶対値|Nma|が閾値NTH以上であるか、又は絶対値|TM* |が閾値TMTHより大きい場合に成立し、絶対値|Nma|が閾値NTHより小さく、かつ、絶対値|TM* |が閾値TMTH以下である場合に成立しない。
【0056】
そして、前記制御磁極位置算出処理手段72は、前記制御磁極位置変更処理解除条件が成立する場合、制御磁極位置変更処理を終了し、制御磁極位置変更処理解除条件が成立しない場合、制御磁極位置変更処理を継続する。
【0057】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 モータ駆動判断条件が成立するかどうかを判断する。モータ駆動判断条件が成立する場合はステップS2に、成立しない場合はステップS3に進む。
ステップS2 比例計算によって制御磁極位置θcを算出し、処理を終了する。
ステップS3 制御磁極位置変更処理開始条件が成立するかどうかを判断する。制御磁極位置変更処理開始条件が成立する場合はステップS5に、成立しない場合はステップS4に進む。
ステップS4 制御磁極位置θcが各位置検出可能範囲の中間点p1〜p6にあると推定し、処理を終了する。
ステップS5 最初の検出パルスが発生させられたかどうかを判断する。最初の検出パルスが発生させられた場合はステップS7に、発生させられていない場合はステップS6に進む。
ステップS6 制御磁極位置θcを第1のスイープ幅w1及び第1の変化速度Δθc1で変更し、ステップS5に戻る。
ステップS7 制御磁極位置θcを第2のスイープ幅w2及び第2の変化速度Δθc2で変更する。
ステップS8 制御磁極位置変更処理解除条件が成立するかどうかを判断する。制御磁極位置変更処理解除条件が成立する場合は処理を終了し、成立しない場合はステップS7に戻る。
【0058】
次に、モータ制御装置10の動作の例について説明する。
【0059】
図9は本発明の実施の形態におけるモータ制御装置の動作の例を示すタイムチャートである。
【0060】
図において、q1〜q6は検出パルス、rは位置検出可能範囲である。タイミングt11において、検出パルスq1が発生させられ、磁極位置検出回路44(図5)から検出パルスq1が送られると、制御磁極位置算出処理手段72(図6)は、検出パルスq1が発生させられてから現在までに経過した時間τが閾値τTHより小さいかどうかを判断し、時間τが閾値τTHより小さい場合、前記制御磁極位置算出処理手段72は、例えば、比例計算によって前記制御磁極位置θcを算出する。そして、該制御磁極位置θcは、ラインL11に示されるように、
θc=θ+Nm・τ
にされる。また、制御磁極位置θcが、タイミングt12で
θc=θ+60〔°〕
になると、ラインL12に示されるように一定の値になる。
【0061】
続いて、タイミングt13で前記時間τが閾値τTH以上になると、制御磁極位置算出処理手段72は、絶対値|TM* |が閾値TMTHより大きいかどうかを判断し、絶対値|TM* |が閾値TMTHより大きい場合、第1の推定方法によって前記制御磁極位置θcを推定する。
【0062】
すなわち、制御磁極位置算出処理手段72は、前記位置検出可能範囲r内における制御磁極位置θcの初期値を30〔°〕とし、ラインL13に示されるように、タイミングt13、t14間に、制御磁極位置θcを30〔°〕からトルク指令方向に70〔°〕まで大きくした後、タイミングt14、t15間に、制御磁極位置θcを70〔°〕からトルク指令方向と逆の方向に−10〔°〕まで小さくし、その後、タイミングt15、t16間、すなわち、次の検出パルスq2が発生させられるまでに、制御磁極位置θcを−10〔°〕からトルク指令方向に大きくする。
【0063】
そして、前記タイミングt16で次の検出パルスq2が発生させられると、制御磁極位置算出処理手段72は、前記位置検出可能範囲r内における制御磁極位置θcの初期値を15〔°〕とし、ラインL14で示されるように、タイミングt16、t17間に、制御磁極位置θcを15〔°〕からトルク指令方向に45〔°〕まで大きくした後、タイミングt17、t18間に、制御磁極位置θcを45〔°〕からトルク指令方向と逆の方向に15〔°〕まで小さくし、その後、タイミングt18、t19間に、すなわち、次の検出パルスq3が発生させられるまでに、制御磁極位置θcを15〔°〕からトルク指令方向に大きくする。
【0064】
続いて、前記タイミングt19で次の検出パルスq3が発生させられると、制御磁極位置算出処理手段72は、前記位置検出可能範囲r内における制御磁極位置θcの初期値を15〔°〕とし、ラインL15で示されるように、タイミングt19、t20間、すなわち、次の検出パルスq4が発生させられるまでに、制御磁極位置θcを15〔°〕からトルク指令方向に大きくする。
【0065】
同様に、制御磁極位置算出処理手段72は、各検出パルスが発生させられるたびに、次の検出パルスが発生させられるまで、制御磁極位置θcを15〔°〕からトルク指令方向に大きくする。そして、制御磁極位置算出処理手段72は、タイミングt21で検出パルスq5が発生させられ、制御磁極位置θcを15〔°〕からトルク指令方向に大きくする。また、タイミングt22で検出パルスq6が発生させられると、制御磁極位置θcを15〔°〕からトルク指令方向に大きくし、例えば、絶対値|Nma|が閾値NTH以上になると、制御磁極位置算出処理手段72は制御磁極位置変更処理を終了する。
【0066】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0067】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、モータ制御装置においては、ロータ及びステータを備えたモータと、前記ロータの回動に伴って、所定の角度ごとに磁極位置情報を発生させる磁極位置センサと、前記磁極位置情報に基づいて制御磁極位置算出処理を行い、制御用として認識される制御磁極位置を算出する制御磁極位置算出処理手段と、前記制御磁極位置に基づいて前記モータを駆動する駆動手段とを有する。
【0068】
そして、前記制御磁極位置算出処理手段は、前記磁極位置情報の発生に伴って、所定の変更領域内で前記制御磁極位置を変更する制御磁極位置変更処理手段を備える。
また、該制御磁極位置変更処理手段は、最初の磁極位置情報を検出するまでは所定の変更領域内で制御磁極位置を変更し、最初の磁極位置情報の発生に伴って、前記変更領域を狭くする。
【0069】
この場合、磁極位置センサによって発生させられた磁極位置情報に基づいて、制御用として認識される制御磁極位置が算出され、制御磁極位置は、磁極位置情報の発生に伴って、所定の変更領域内で変更されるので、モータによって発生させられるモータトルクに積極的にトルク脈動が発生させられる。
【0070】
したがって、実磁極位置と検出磁極位置とが一致しない場合でも、モータトルクの実行値成分をトルク脈動によって一時的に大きくし、モータトルクを最大にして要求トルクと等しい値にすることができる。その結果、発進時、登坂路走行時等のように要求トルクが大きい場合でも、電動車両を走行させるのが容易になり、電動車両の走行性を向上させることができる。
【0071】
また、モータ制御装置の処理能力、モータの性能等を向上させる必要がないので、モータ制御装置のコストを低くすることができる。
【0074】
さらに、最初の磁極位置情報が検出された後は、制御磁極位置とモータトルクが最大になる磁極位置とが大きくずれることがない。したがって、変更領域を狭くし、モータトルクを最大にして要求トルクと等しい値にするのに必要な時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図2】従来の位置検出信号及び検出磁極位置の波形図である。
【図3】従来のホール素子を使用して磁極位置を検出したときの実磁極位置と検出磁極位置との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるモータの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるモータ制御装置の概略図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるモータ制御部のブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態におけるモータの特性図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるモータ制御装置の動作の例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 モータ制御装置
21 ロータ
22 ステータ
31 モータ
40 インバータ
43 ホール素子
44 磁極位置検出回路
45 モータ制御部
51 ドライブ回路
72 制御磁極位置算出処理手段
U 、PV 、PW 位置検出信号
w1、w2 第1、第2のスイープ幅
Δθc1、Δθc2 第1、第2の変化速度
θ 検出磁極位置
θc 制御磁極位置

Claims (4)

  1. ロータ及びステータを備えたモータと、前記ロータの回動に伴って、所定の角度ごとに磁極位置情報を発生させる磁極位置センサと、前記磁極位置情報に基づいて制御磁極位置算出処理を行い、制御用として認識される制御磁極位置を算出する制御磁極位置算出処理手段と、前記制御磁極位置に基づいて前記モータを駆動する駆動手段とを有するとともに、前記制御磁極位置算出処理手段は、前記磁極位置情報の発生に伴って、所定の変更領域内で前記制御磁極位置を変更する制御磁極位置変更処理手段を備え、該制御磁極位置変更処理手段は、最初の磁極位置情報を検出するまでは所定の変更領域内で制御磁極位置を変更し、最初の磁極位置情報の発生に伴って、前記変更領域を狭くすることを特徴とするモータ制御装置
  2. 前記磁極位置情報に基づいて検出パルスを発生させる検出パルス発生処理手段を有するとともに、前記制御磁極位置変更処理手段は、前記制御磁極位置算出処理が開始された後、前記検出パルスが発生させられるたびに、前記制御磁極位置の変化速度を変更する請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記制御磁極位置変更処理手段は、モータが所定のモータ回転速度以下のモータ回転速度で駆動される場合に、前記制御磁極位置を変更する請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. モータのロータの回動に伴って、所定の角度ごとに磁極位置情報を発生させ、該磁極位置情報に基づいて、制御用として認識される制御磁極位置を算出し、該制御磁極位置に基づいて前記モータを駆動するとともに、前記磁極位置情報の発生に伴って、所定の変更領域内で前記制御磁極位置を変更し、最初の磁極位置情報を検出するまでは所定の変更領域内で制御磁極位置を変更し、最初の磁極位置情報の発生に伴って、前記変更領域を狭くすることを特徴とするモータ制御方法。
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