以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図21は本発明の一実施形態による4サイクル船外機を説明するための図であり、図1は船外機の左側面図、図2〜図7は船外機の平面図、図8はクランク室部分の断面平面図、図9は吸気系の背面図、図10はカム軸回りの背面図、図11は吸気系の断面左側面図、図12は断面左側面図、図13は図12のXIII-XIII 矢視図、図14は潤滑油,冷却水の流れ方向を説明するための図、図15,図16,図17は図12のXV-XV 線,XVI-XVI 線,XVII-XVII線断面図、図18,図19ははオイルパン付近の断面左側面図、図20は排気マニホールドの断面左側面図、図21は排気マニホールドの断面背面図である。
図において、1は船外機であり、該船外機1は船体2の船尾2aに固着されたクランプブラケット3にスイベルアーム4を介してチルト軸5回りに上下方向(図1矢印a方向)に揺動可能に枢支され、かつ旋回軸6回りに左右方向(図2矢印b方向)に旋回可能に支持されている。上記船外機1は、スクリュー7及び前後進切換機構7aを保持するロアケース8上にアッパケース9を接続し、該アッパケース9上にエキゾーストガイド40を介して搭載されたエンジン10の周囲をカウリング11で囲んだ構造のものである。
ここで上記カウリング11は、樹脂の射出成形品であり、合面11aを境に上側カリング11bと下側カウリング11cとに上下二分割されている。そして上側カウリング11bは、合面11a部分が開口するボックス状のもので、該合面11aから上側に行くほどその横断面形状が小さくなる型抜き勾配を有している。また上記上側カウリング11bの後壁の上端付近に左,右一対の外気導入開口11dが形成されている。なお、この左,右の外気導入口11d,11d全体に渡って外気導入口としても良い。
上記エンジン10は水冷式4サイクルV型6気筒クランク軸縦置きタイプのものである。該エンジン10のシリンダブロック12は、V字形(Vバンク)をなすように形成された左,右シリンダ部12a,12bと、該両シリンダ部12a,12bの底部同士を接続するように一体形成された共通のクランクケース部12cとから構成されている。ここで図7に示すように、上記左,右シリンダ部12a,12bのVバンク内側壁のヘッド側合面近傍部分同士はカバー壁12gによって接続されており、該カバー壁12gと上記内側壁とで囲まれた空間はトンネル状に上下方向に延びるVバンク空間Aとなっている。
そして上記各シリンダ部12a,12bには、それぞれ3組ずつ気筒(シリンダボア)12dが形成されており、該左,右シリンダ部12a,12bの気筒はクランク軸方向にオフセットされて交互に配置形成されている。また上記クランクケース部12cには、これの前側合面に接続されたクランクケースカバー17とで上記オフセット配置された一対の気筒12d,12dに対して1つのクランク室Eを形成するクランク凹部12eが形成されている。
上記各気筒12d内に摺動自在に挿入配置された各ピストン14はコンロッド15を介してクランク軸16に連結されている。このクランク軸16のジャーナル部16aは、上記クランクケース部12c内に上記各クランク室Eの境界を構成するように形成された軸受壁12fと、該軸受壁12fに着脱可能に装着された軸受キャップ13とで回転自在に支持されている。
上記クランク室E内には、バッフルプレート(仕切板)75が配設されている。このバッフルプレート75は、多数の小孔が形成された金属プレートをクランクケースカバー17と大略同一形状に成形してなるものであり、該バッフルプレート75とクランクケースカバー17との間には空間が設けられており、該空間は、オイルミストを含むガスを上昇させるための上昇通路E′となっている。
上記上昇通路E′の上端は、後述するオイルセパレータ機能付のチェン室Bに連通している。また上記クランク室Eの下端部に落下した潤滑油は図12に破線の矢印Hで示すオイル戻り通路を通ってオイルパン41内に落下する。詳細には、図15に示すように上記潤滑油は、ポンプ室Cとクランク室Eとの境界壁面上を伝わって流れ、上側ガイド40aの開口Iを通って上側ガイド40aの凹みKに流下した後、これの開口Lを通ってオイルパン41へと落下する。
なお、後述するようにクランクケースカバー17の前側にはスタータモータ52が配設されているが、該クランクケースカバー17のスタータモータ52に対応する部分はエンジン内側に凹んでおり、これにより船外機全体の前側への膨出を回避している。またこの凹みにより上記上昇通路E′の凹み17d部分の幅は他の部分より狭くなっている。
また上記シリンダブロック12の左,右のシリンダ部12a,12bの後側合面(ヘッド側合面)には左,右のシリンダヘッド18a,18bが装着されヘッドボルトでシリンダブロック12に締結されている。また該両シリンダヘッド18a,18bの後側合面(カバー側合面)は左,右のヘッドカバー19a,19bで覆われており、これによりクランク軸方向(上下方向)に延びる左,右カム室F,Fが形成されている。
上記シリンダヘッド18a,18bのブロック側合面に凹設された燃焼凹部18cには各気筒毎に2つの吸気開弁開口,排気弁開口が形成され、該各開口を開閉する吸気弁20a,排気弁20bはそれぞれ吸気カム軸21a,排気カム軸21bのカムノーズ21eで開閉駆動される。
上記吸気,排気カム軸21a,21bは、シリンダヘッド18a,18bとヘッドカバー19a,19bとで形成された左,右のカム室F,F内にそれぞれ2本ずつ上記クランク軸16と平行に配置されている。そして左側シリンダ部用吸気カム軸21a及び右側シリンダ部用排気カム軸21bの上端部には大径(クランクスプロケットの2倍)のカムスプロケット32a,32bが装着され、ボルト21cによりボルト締め固定されている。この両カムスプロケット32a,32bと上記クランク軸16の上端近傍に形成された小径のクランクスプロケット16bとはタイミングチェン33aにより連結されている。このタイミングチェン33aは上記カム室F,Fとクランク室Eとを連通し、かつエンジン上端に位置する上記チェン室B内に配置されている。
ここで上記上側カウリング11bは、上述のように上側ほど横断面形状が小さくなる型抜き勾配を有しているのであるが、本エンジン10の場合、図10に示すように、上記カムスプロケット32a,32bの配置されているチェン室Bの幅(図示左右寸法)に基づいて上記上側カウリング11bの基本幅寸法が決定され、該部分より上側ほど幅が狭くなり、下側ほど幅が広くなるような抜き勾配が設定されている。
上記Vバンク空間A内には、ガイドスプロケット34aを軸支するガイド軸34が配設されており、該ガイドスプロケット34aは上記タイミングチェン33aをVバンク形状に沿うようにガイドしている。また上記タイミングチェン33aのクランクスプロケット16b〜カムスプロケット32b間部分,及びカムスプロケット32b〜ガイドスプロケット34a部分は、固定式のカイドプレート35a,35bによりガイドされている。
さらにまた、上記タイミングチェン33aの左側カムスプロケット32a〜クランクスプロケット16b間部分には可動式のテンショナプレート35cが摺接している。このテンションプレート35cは、その後端部がピン35dにより軸支され、その前部が押圧機構36によりエンジン中心側に押圧されている。これによりタイミングチェン33の張力は常に一定になるよう調整されている。
上記各スプロケット16b,32a,32b,34a、タイミングチェン33a、及びガイドプレート35a,35b,テンションプレート35cは、上記シリンダブロック12,クランクケースカバー17,シリンダヘッド18a,18b及びヘッドカバー19a,19bで形成される平面視略Y字形の上端開口部にチェンカバー37を着脱可能に装着してなるチェン室B内に配置されている。
また上記各シリンダ部の吸気,排気カム軸21a,21b同士は、カムスプロケットより小径(1/2程度)の中間スプロケット32c,32cに中間チェン33bを巻回することにより連結されている。この中間スプロケット32cは、上端部のカムスプロケット32a,32bにカム軸受21dを挟んで隣接するように、つまりカムスプロケット32aより下側でかつ最も高所に位置している。
ここで上記チェン室B内には上記クランク室E及びカム室F,Fが連通している。また図示していないが、上記チェン室Bには、該室に導入されたオイルミストを含むエンジン内ガスから潤滑油成分を分離するオイルセパレータ機能が付与されている。この機能は、例えば該チェン室B内を迷路構造とすることにより実現できる。
また上記チェンカバー37の、上記カムスプロケット32a,32bと対向する部分にはスプロケット固定用ボルト21cとの干渉を回避するために平面視略円形の膨出部37aが上方に膨出形成されている。この膨出部37aはチェン室B中、最も高所に位置している。該膨出部37aにエンジン内ガスを排出するための排出孔37bが形成されており、該各排出孔37bは排出ホース37cにより後述する吸気系22のスロットル弁28より下流側に接続されている。
なお、上記排出孔37bは、図5に二点鎖線で示すように、上記チェン室Bのクランク軸とカム軸との間の部分に設けても良い。
また上記各シリンダヘッド18a,18bの吸気弁開口は吸気ポート18d,18dによりVバンク内側に船体後方に向けて導出されており、該吸気ポート18d,18dの外部接続開口に吸気系22が接続されている。この吸気系22は、左,右のシリンダ部12a,12bへの吸気管長を等しくすべく、左,右対称となっている。即ち、左,右のサージタンク23a,23bを上記左,右のヘッドカバー19a,19bの後側にクランク軸16と平行に配置し、該左,右のサージタンク23a,23bと上記吸気ポート18d,18dとを吸気マニホールド部23c,及び吸気孔24aを有する吸気プレート24を介して連通接続した構造になっており、実質的吸気管長は全気筒同一となっている。
上記吸気プレート24は、上記左,右のシリンダヘッド18a,18bの上記吸気ポート18d,18dの外部接続開口間に、上記Vバンクの上面を塞ぐように架設された平板状のものである。該吸気プレート24は上記吸気ポート18dと上記吸気マニホールド部23cとを連通する吸気孔24aを有し、また該吸気プレート24には燃料噴射弁26が上記吸気孔24aから上記吸気ポート18dを通って吸気弁20aの弁頭の裏面に向けて燃料を噴射供給するように装着されている。
上記左,右のサージタンク23a,23b、及び左,右の吸気マニホールド部23c,23cは一体鋳造されたものであり、該左,右の吸気マニホールド部23c,23cで形成されたトンネル内に、上記各燃料噴射弁26に燃料を供給する燃料供給レール25が上下方向に挿入配置されている。また該燃料供給レール25の上端には燃料圧力を調整するレギュレータ27が装着されている。ここで該燃料供給レール25は上記吸気プレート24に立設された脚部24bに固定されている。従って、燃料供給レール25,吸気プレート24及び各燃料噴射弁26を予め別工程で組み立ておくことが可能である。また、燃料は、上記供給レール25内にその下端から流入し、上端のレギュレータ27を通って排出される。これにより燃料中の空気抜きを容易に行うことができる。
また上記左,右のサージタンク23a,23bの上端部に一体形成された左,右の吸気管部(分岐通路)23d,23dはエンジン上端付近かつ幅方向中心にて1つに合流しており、該合流管部(合流通路)23eは船体前側を向いている。そして該合流管部23eにスロットル弁28aを内蔵するスロットルボディ28が接続されており、該スロットルボディ28には可撓性を有するジャバラホース29を介して導入管30が接続されている。該導入管30の開口は、エンジンの上端に位置しており、吸入空気がエンジンからの熱を受け難く、吸気温度の上昇が回避されている。
上記スロットルボディ28は、上記吸気プレート24の上端部を上方に延長してなるブラッケト部24cに上記合流管部23eと共締め固定されており、該スロットルボディ28は上記シリンダブロック12の上壁の少し上方に位置している。なお、上記ジャバラホース29は、上記導入管30とスロットルボディ28との接続部における気密性を高め、該接続部から空気が吸引されることによる騒音の発生を防止するためのものであり、該ホース29の上流側に接続された導入管30がゴムバンド30aを介してチェンカバー37により支持されている。
また上記左,右のサージタンク23a,23bの後面同士には金属製の支持プレート77が架設されており、該支持プレート77の後面にはコントロールボックス等の電装品78が搭載されている。この支持プレート77は、電装品78で発生した熱をサージタンク23a,23bに逃して電装品78の冷却を促進するヒートシンクとして機能するばかりでなく、左,右のサージタンク23a,23b同士を結合して剛性を高めることにより振動,騒音の発生を防止する機能も果す。
上記左,右のシリンダヘッド18a,18bの排気弁開口は左,右の排気ポート18e,18eによりVバンク外側壁面(左右壁面)に導出されており、該左,右の排気ポート18e,18eには対称形に形成された左,右の排気系38a,38bが接続さている。該各排気系38a,38bは、上記3つの排気ポート18eに接続された排気マニホールド39と、該排気マニホールド39にエキゾーストガイド40,及びオイルパン41に形成された排気口41aを介して接続された排気パイプ42と、該排気パイプ42に接続されたマフラ65とを備えている。
上記排気マニホールド39は、図20,21に示すように、上記3つの排気ポート18eを合流させつつ上記シリンダブロック12の各シリンダ部12a,12bの外壁面に沿って下方に延び、シリンダヘッド18a,18bとエキゾーストガイド40との間を通って上記Vバンク内側に延び、該エキゾーストガイド40の排気通路40eに接続されている。
上記排気マニホールド39は、水冷ジャケットJを有する一体鋳造製の二重管構造のもので、排気ガスが流れる内管部43の外周を水冷ジャケットを構成する外管部44で囲んだ構造となっている。そして上記排気マニホールド39は、上側に位置する本体部39aと下側に位置するエルボ状の継手部39bとに、シリンダヘッド18a,18bとエキゾーストガイド40との間にて水平をなしている部位で二分割されており、両者はゴムジョイント45で接続されている。このように水平部分で二分割したので、両者をゴムジョイント45で接続する際の作業性を向上できる。
上記ゴムジョイント45は、内管部43同士を接続するゴム製の内側リング45aと、外管部44同士を接続するゴム製の外側リング45bとから構成されており、上記内側リング45aはバンド45cで内管部43に固定されている。
ここで上記本体部39aと継手部39bとの組立時には、まず外側リング45bを図21の破線位置に軸方向にずらした状態で内側リング45aをバンド45cで内管部43に固定し、その後、外側リングを正規位置に移動させる。このように二分割構造とし、かつ可撓性を有するゴムジョイント45により接続したので、シリンダヘッドの排気ポート18eの外部接続開口位置とエキゾーストガイド40の排気通路40eの開口位置との間の寸法誤差を吸収可能であるとともに、組立が容易である。
また上記クランクケースカバー17の前壁面17aの上部には支持ブラッケト48が固着されており、該支持ブラッケト48には発電機47が出力軸47aを上方に向けてかつクランク軸16と平行に配置されている。該発電機47の出力軸47aに装着された従動プーリ47bはクランク軸16の上端に装着された駆動プーリ51に伝動ベルト50で連結されている。また上記発電機47は、支持ブラッケト48に対して左側ボルト49を中心に回動可能となっており、これによりベルト50の伸びを吸収して張力を調整可能となっている。
また上記クランクケースカバー17の前壁面17aの下部にはフランジ部17bがオーバーハング状に前側に向けて膨出形成されており、該フランジ部17b上にスタータモータ52が出力ギヤ(ピニオンギヤ)52aを下方に向けてかつ上記クランク軸16と平行に装着されている。そしてこのスタータモータ52の出力ギヤ52aは、フライホイール53の外周に形成されたリングギヤ53aに噛合している。このフライホイール53は上記クランク軸16の下端部に接続固定されている。
なお、52bは、上記スタータモータ52に取り付けられたピニオンギヤ移動用モータであり、エンジンが始動すると上記ピニオンギヤ52aを上昇させる。
上記シリンダブロック12のクランクケース部の下端面には上記クランクケースカバー17のフランジ部17bとで接続合面を形成するフランジ部12hが形成されており、該接続合面に上記エキゾーストガイド40が接続されている。また該エキゾーストガイド40の下側合面にはオイルパン41及び上述のアッパケース9が接続されており、該オイルパン41の外側をアッパケース9が囲んでいる。
上記エキゾーストガイド40は、排気ガスをマフラ65に導入するとともに、該船外機1を船体2にマウントするためのものであり、底壁40cを有し、上部が開口した上側ガイド40aと下側ガイド40bとの上下二分割構造となっている。上記下側ガイド40bにボルト締め固定されたマウント部材81に支持アーム82が固定されており、該支持アーム82が船体2側に固定されたクランプブラケット3に支持されている。
また上記エキゾーストガイド40は縦壁40dによりポンプ室(ホイール室)Cと、オイル落下室Dとに隔成されている。さらにまた上記下側ガイド40bの後部は上側ガイド部40aより後方に延長されており、該延長部とシリンダヘッド18a,18bとの間には空間が形成されている。そして上記後方延長部の後端部には排気ガス膨張室74が形成されている。該膨張室74は、アイドリング運転時に排気ガスを大気中に排出することによりアイドリング運転を安定化するためのアイドル排気系における消音室であり、下側ガイド40bに形成された凹部40hの開口を蓋74aで覆った構造となっている。
上記ポンプ室Cは、上記シリンダブロック12,クランクケースカバー17の下端部に形成されたフランジ部17a,12hに上記上側ガイド40aの上端開口周縁部を装着することにより形成されており、水が侵入することのない密閉空間となっている。即ち、上記上側ガイド40aはポンプ室Cを構成する部材として機能している。
上記フライホイール53は上記ポンプ室C内に収容されており、また該フライホイール53には、上述のスクリュー7にエンジン回転を伝達する駆動軸54が継手ロッド55を介して接続されている。該駆動軸54と上記クランク軸16とで同一直線状の出力軸が構成されている。上記駆動軸54の継手ロッド55部分、つまり最下位置のジャーナル部16aとこれの下方に配置されたオイルパン41との間の部分には潤滑油を圧送するオイルポンプ56が配設されている。このオイルポンプ56は、上記上側ガイド40aの底壁40cと蓋部材57とで形成されたポンプケース内にアウタリング58を駆動軸54と同軸をなすように固定配置し、該アウタリング58内で上記継手ロッド55の外周に偏芯させて一体形成されたインナリング55aを回転させるようにしたトロコイドポンプである。このトロコイドポンプ56は上記密閉状のポンプ室C内に配設されており、これによりポンプ内への水の侵入が回避されている。
なお、上記オイルポンプ56は、クランク軸16の最下位置ジャーナル部16aより下側に設けることも可能であり、またこのようなオイルポンプの配置構造はフライホイールをクランク軸上端に設けたタイプのエンジンにも適用可能である。
また、上記ポンプ室Cを密閉状に形成した場合、フライホイール53の回転により空気温度が上昇して内部圧力が高くなったり、フライホイール53の回転抵抗となったりすることが懸念されるので、これを回避するために、散気管66が大気とポンプ室Cとを連通するように配設されている。また散気管66からの水の侵入を回避するために、該散気管66は上方に延長するとともに上端を下方に曲げた形状となっている。さらに上記ポンプ室Cには排水ホース67が取り付けられており、水が侵入した場合には排水できるようになっている。
上記オイルポンプ56の吸込口56aは吸引通路60により上記オイルパン41に連通接続されており、吐出口56bは吐出通路61により、上記エキゾーストガイド40の上側ガイド40aの後壁に装着されたオイルフィルタ62に連通接続されている。このオイルフィルタ62は、エキゾーストガイド40の下側ガイド40bを後方に延長したことにより生じた上述の空間を利用して配置されている。
上記吸引通路60は、上記オイルパン41内に配置とされた吸引パイプ60aと、上記下側,上側ガイド40b,40aに形成された縦孔60bと、上記横壁40cと蓋部材57との間に形成された横孔60cにより構成されている。なお、上記吸引パイプ60aの吸込口には金網等からなるオイルストレーナ83が装着されている。
上記吐出通路61は上記横壁40cと蓋部材57との間に形成された横孔61aと、上記縦壁40dを貫通するU字孔61bと、上記オイル落下室Dを横切る横切孔61cにより構成されている。ここで上記U字孔61bの底辺部は、上記上側,下側ガイド40a,40bの合面に凹設されている。つまりエキゾーストガイド40を上下二分割したことによりこのU字孔61を容易に形成可能となったものである。なお、82は上記吐出通路61内の油圧の異常上昇を回避するためのリリーフ弁である。
そして上記オイルフィルタ62の出口からの供給経路63は主として、クランク軸16のジャーナル部16aに潤滑油を供給するクランク軸潤滑系と、カム軸21a,21bのジャーナル,カム摺動面に潤滑油を供給するカム軸潤滑系とから構成されており、両潤滑系は直列に配置されている。
上記クランク軸潤滑系は、上記吐出通路61の横切孔61cと平行に延びる横切孔63aと、縦壁40d内を上方に延びる縦孔63bと、さらにシリンダブロック12のVバンク底壁内を上端まで延びるメインギャラ部(クランク軸オイル供給通路)63cとを有している。そして該メインギャラ部63cからクランクジャーナル部16aへの分岐孔63dは、該ジャーナル部16bより高所から分岐し、斜め下方に傾斜した後ジャーナル軸受部16dに達している。つまり該分岐孔63dは油溜まりとなっている。
上記カム軸潤滑系は、上記メインギャラ部63bの上端から左,右に分岐するようにシリンダブロック12の上端面に形成されたブロック孔63eと、これに続き、カム軸の軸受部に連通するようにシリンダヘッド18a,18bの上端面に形成されたヘッド孔63fとで構成されており、該ブロック孔63e,ヘッド孔63fがカム軸オイル供給通路となっている。上記ヘッド孔63fは、各カム軸21a,21bの軸芯に形成されたオイル孔21cに連通しており、該オイル孔21cはカム軸軸受部,カムノーズ摺動面に連通している。
上記ブロック孔63e,ヘッド孔63fを介してオイル孔21cの上端に供給された潤滑油は、オイル孔21c内を流下しつつカム軸軸受部に対応する位置に形成された供給孔を通って流出し、カム軸軸受部,カムノーズ摺動面を潤滑する。
そして上記各部に供給された潤滑油をオイルパン41に回収するための回収経路64は以下のように構成されている。クランク軸ジャーナル軸受16dに供給され、該軸受16dとジャーナル部16aとの隙間から各クランク室E内に落下した潤滑油の回収経路は、上記クランク凹部12eの上記メインギャラ部63c寄り部分(中央寄り部分)に上記Vバンク空間Aと連通するように形成された横孔(回収孔)64aと、該Vバンク空間Aと、戻り開口63gと、上記エキゾーストガイド40のオイル落下室Dとを経る経路で構成されている。また上記各クランク凹部12e同士は、平面視で気筒軸延長線上に貫通形成された縦孔64b(図6,14参照)によっても上記戻り開口63gに連通している。
カム軸ジャーナル部と軸受部との摺動面あるいはカムノーズ摺動面に供給された潤滑油の回収経路は、カム室F,Fの底部に連通するようシリンダヘッド18a,18bの下端部に気筒軸方向に形成された横孔64cと、これに連通するようにシリンダブロック12の各シリンダ部12a,12bのヘッド側合面に気筒軸方向に形成された横孔64dと、上記開口63g,及びオイル落下室Dを経る経路によって構成されている。
また本船外機1の冷却水系は以下のように構成されている。上記駆動軸54の下端部に配設された冷却水ポンプ(図示せず)の吐出口に接続された冷却パイプ68を駆動軸54とマフラ65との間を通って上方に延長して上記オイルパン41の底部に形成された冷却水通路69に接続し、これを平面視V字状に形成された分岐通路69a,69aにより左,右シリンダ部用に分岐し、各分岐通路69aをオイルパン41に上下方向に形成された縦孔41b,及び上記下側ガイド40bに形成された連通孔40fを介して上記左,右の排気マニホールド39の水冷ジャケットJに連通接続する。
また上記各排気マニホールド39の水冷ジャケットJの上端部を、冷却ホース70,プレッシャバルブ71を介して上記シリンダブロック12の左,右のシリンダ部12a,12bの水冷ジャケットの下端の接続口12iに接続する(図20参照)。そして上記各シリンダ部12a,12bに供給された冷却水は、該各シリンダ部の水冷ジャケット及び各シリンダヘッド18a,18bの水冷ジャケットを通り、各シリンダ部12a,12bの水冷ジャケットの上端部に達する。
上記各シリンダ部の水冷ジャケットの上端部をサーモバルブ72,戻りホース73を介して上記上側ガイド40aの各戻り孔40gに接続し、該各戻り孔40gを上記下側ガイド40bの上記排気膨張室40hの蓋74aの落下孔74bに接続し、図18の室41nに導く。該室41nに導かれた冷却水は、オイルパン41の開口41jから該オイルパン41の排気パイプ挿通孔41hに落下するとともにオイルパン41の後部とアッパケース9との間に落下する。そしてマフラ65の排気パイプ42,42間に形成された開口65aからアッパケース9内を下方に落下流出する。
このように本船外機1のエンジン内ガス排出装置によれば、縦置きに配置されたクランク軸16,カム軸21a,21bのクランクスプロケット16b,カムスプロケット32a,32bを連結するタイミングチェン33aを収容するチェン室Bという縦置きエンジンの場合に最も高所に位置する室の天壁を構成するチェンカバー37に排出孔37bを形成し、これを排出ホース37cで吸気系に接続したので、エンジン内ガスを吸気系に吸引させ、確実に排出できる。しかも、チェンカバー37の一部をカム軸との干渉を回避するために上方に膨出させた膨出部37aに排出孔37bを形成したので、この膨出部37aが排出室として機能し、専用の排出室を形成する必要がない。
またこの場合、上記チェン室Bはクランク室E及びカム室Fの両方に連通しているので、クランク室E内のブローバイガスやオイルミストを含むガス、及びカム室F内のオイルミストを含むガスの両方とも、チェン室Bに向かって上昇し、排出孔37bから排出ホース37cを通って吸気経路に吸引排出される。
またチェンカバー37の、各シリンダ部12a,12bのカム軸に対向する部位にそれぞれ排出孔を形成したので、Vバンクをなす各シリンダ部12a,12bのカム室からのエンジン内ガスを確実に排出できる。
なお、上記排出孔37bの形成位置は、カム軸と対向する部位に限定されるものではなく、チェン室Bの天壁を構成するチェンカバー37の何れの部位でも構わない。
またこのエンジン内ガス排出装置は、V型エンジンに限らず、シリンダ部が1つの直列型エンジンにも勿論適用可能である。
ここで、本エンジン内ガス排出装置の如く、チェン室Bにエンジン内ガス排出孔を形成した場合、タイミングチェンから飛散される潤滑油がエンジン外に排出され、潤滑油排出量が増加する懸念があるが、本船外機1では、上記チェン室B内にエンジン内ガス中の潤滑油成分を分離するオイルセパレータ機能を付加したので、上記潤滑油の排出が抑制される。
また本船外機1の潤滑油供給装置によれば、クランク軸16の下端にフライホイール53を介して接続された駆動軸54の、上記フライホイール53とこれよりより下方に配設されたオイルパン41との間の部分にオイルポンプ56を同軸をなすように装着したので、オイルポンプ56はクランク軸直結となり、例えばクランク軸と平行に配置して歯車等を介して駆動するようにしたものに比べて構造が極めて簡単となるとともに、オイルポンプの配置スペースが少なくて済み、船外機に特に要求される小型化を図ることができる。またオイルポンプ56はエンジン回転数と同じ回転数で駆動されることから油量,油圧の確保が容易である。
またオイルポンプ56をフライホイール53とオイルパン41との間でかつ該オイルパン41の直近上側に配置したので、該オイルポンプ56からオイルパン41内の油面までの吸込水頭(ヘッド)が小さくて済み、この点からも油量,油圧の確保が容易であり、ポンプの小型化を図ることができる。
さらにまた、上記駆動軸54を上記フライホイール53近傍にて上下に分割するとともに該分割体の一方である継手ロッド(接続用ジョイント)55の外周面に上記オイルポンプ56の回転体であるインナロータ55aを加工形成したので、継手ロッド55が短尺ものである分だけ加工時の取り扱いが容易であり、1本ものの駆動軸にポンプ回転体を加工する場合に比べて加工作業が容易である。
また本船外機1では、上記オイルパン41の近傍に固定されたマウント部材81と上記フライホイール53との間にオイルポンプ56を配設したので、マウント部材81から船体側に向かって支持アーム82が延びているために、船外機下部で発生したスプラッシュが上方に飛び散っても支持アーム82が邪魔になってマウント部材上方のオイルポンプ56にかかりにくい。またオイルポンプ56上方には大径のフライホイール53が配設されているためにこれが邪魔になって上方からかかった水しぶきがオイルポンプ56にかかりにくくなる。従ってオイルポンプ56への水入りが確実に防止される。
また、エキゾーストガイド40とシリンダブロック12及びクランクケースカバー17とで外部からの水の侵入を阻止すべく形成されたポンプ室(ホイール室)C内にオイルポンプ56を収容配置したので、海上で使用される船外機に特に要求されるオイルポンプ56への水入り防止機能を向上できる。
さらにまたは、本船外機1では、シリンダブロックと別体に形成された別部材としてのエキゾーストガイド40内に潤滑油吸引通路60及び潤滑油戻り通路(オイル落下孔D)を形成したので、例えばシリンダブロック12に形成する場合に比較して通路の形成が容易である。またこの場合に、エキゾーストガイド40を上下二分割構造とし、該分割面間にオイル通路の一部(U字孔61bの底部)を形成したので、オイル通路の形成がさらに容易である。
なお、上記潤滑油供給装置は、V型エンジンに限らず、シリンダ部が1つの直列型のエンジンにも勿論適用可能である。
本船外機1のオイルフィルタ配置構造によれば、シリンダブロック12及びクランクケースカバー17の下端に接続されたエキゾーストガイド40にオイルポンプ56からエンジンへの吐出通路61を形成するとともに、該エキゾーストガイド40の後壁にオイルフィルタ62を取り付けたので、側面視でシリンダヘッド18a,18bの下方かつエキゾーストガイド後壁後方に生じている空間を利用してオイルフィルタ62を配置することが可能となり、例えばシリンダブロックの側壁にオイルフィルタを配置した場合に比較して船外機の幅の拡大を回避でき、船外機に特に要請される小型化を確保できる。この場合、平面視でVバンクの中央下方にオイルフィルタ62を配置したので、より一層確実に船外機幅の拡大を回避できる。
また、エキゾーストガイド40内にオイルポンプ56を配設し、かつ該エキゾーストガイド40にオイルパン41からオイルポンプ56への吸引通路60及びオイルポンプ56からオイルフィルタ62への吐出通路61を形成したので、オイルポンプの配置に起因して船外機幅が拡大する問題を回避できる。
本船外機1の潤滑油供給回収構造によれば、フライホイール53とオイルパン41との間に配設されたオイルポンプ56からクランク軸ジャーナル部等の被潤滑部へのオイル供給通路及び被潤滑部からオイルパン41へのオイル戻り通路の上記フライホイール部分63b,Dを、クランク軸方向に見て上記フライホイール53の外周より外側を通るように形成したので、特に潤滑油の落下回収においてフライホイール53が抵抗となることがなく、潤滑油の回収が容易となる。
またオイルポンプ56からクランク軸ジャーナル部16aに潤滑油を供給するためのメインギャラ部(クランク軸オイル供給通路)63cをシリンダブロック12のVバンク底壁内にクランク軸16と略平行に形成するとともに、各シリンダ部12a,12bのVバンク内側壁同士を接続壁12gで接続してなるVバンク空間Aを、上記クランク軸ジャーナル部,カム軸ジャーナル部からの潤滑油をオイルパン41に戻すオイル戻り通路としたので、V型縦置きエンジンにおいてVバンク底壁内及びVバンク空間という比較的利用されていない部分を利用でき、従って供給通路,戻り通路を直線状にかつ大径に形成することが可能となり、供給油量,油圧の確保が容易となるとともに、回収抵抗が円滑となる。
またメインギャラ部63cから各ジャーナル部16aへの分岐孔63dを、ジャーナル部側が低くなる傾斜状に形成したので、該分岐孔63dが油溜まりとして機能する。そのため、エンジンの再始動時には上記油溜まり内の潤滑油によってジャーナル部16aが潤滑され、始動時の潤滑性を確保できる。
また、クランク軸ジャーナル部16aからの潤滑油を上記Vバンク空間A(オイル戻り通路)に回収する横孔64a(回収孔)をクランク室Eと上記Vバンク空間Aとを連通するように形成したので、潤滑油のクランク室内溜まり量を減少できる。またこの場合、オフセット配置された気筒(シリンダボア)12d,12dの間を利用したので、上記横孔64aの配置スペースを確保できる。
また、上記メインギャラ部(クランク軸オイル供給通路)63cの上端からカム軸の軸受部に連通するカム軸オイル給油通路63e,63fを分岐形成したので、つまりクランク軸オイル供給通路にカム軸オイル供給通路を直列接続したので、クランク軸ジャーナル部への給油量をカム軸ジャーナル部への給油量より増加でき、各ジャーナル部の要求量に容易に対応できる。
なお、上記潤滑油供給回収構造では、カム軸の上端から下方に潤滑油を流すようにしたが、これと逆にカム軸の下端から上方に潤滑油を流すようにすることも可能であり、またV型エンジンに限らず、シリンダ部が1つだけの直列型エンジンにも勿論適用可能である。
また上記直列接続ではなく、クランク軸オイル供給通路の下部からカム軸オイル供給通路を分岐させることも可能であが、このようにすると、クランク軸ジャーナル部への給油量が不足する懸念がある。このような構成を採用する場合には、カム軸オイル供給通路の該分岐部付近に油量調整用のオリフィスを配置することとなる。
また本船外機1の排気装置によれば、左,右のシリンダヘッド18a,18bのVバンク外側壁に排気マニホールド39の上流端を接続するとともに、該排気マニホールド39を該シリンダヘッドの外側から該シリンダヘッドと上記エキゾーストガイド40との間の空間をVバンク中央側に延長し、該Vバンク中央側にて上記エキゾーストガイド40の排気通路40eに接続したので、V型縦置きエンジンの場合の空き空間となり易いVバンク下方空間を利用した排気管の配設が可能となり、4サイクルV型エンジンを備えた船外機の場合に、排気管の配設に起因する船外機幅の拡大を回避でき、船外機の場合に特に要請される小型化に対応できる。
なお、上記排気装置における排気管の取り回しは、V型エンジンの場合だけでなく、直列型エンジンにも適用可能である。
また本船外機1の補機類配置構造によれば、V型エンジンをシリンダヘッド18a,18bを船体後側に向けてかつ縦置きに配置した場合に、クランク軸16を挟んでVバンク空間と反対側の前側空間Gにスタータモータ52,発電機47といった補機類を配置したので、シリンダヘッドが船体後側に位置することによる重心の後側偏位を補機類の前側配置により補正することができ、重量バランスを良好にできる。
また特にV型エンジンの場合、左,右のシリンダヘッドの幅が広くなることから、エンジン側部に補機類を配置した場合は船外機幅が大きくなり、好ましくない。従って上記前側空間Gに補機類を配置することは、上記重量バランス上だけでなくスペース確保上も有利である。
また本船外機1では、前側空間Gに補機類を配置したことにより船体前後方向の重量バランスが得られるとともに、該前側空間Gの下部にスタータモータ52を、上部に発電機47を振り分け配置したので、上下方向の重量バランスも得られる。しかもこの場合、クランク軸下端にリングギヤ53aを有するフライホイール53を、上端に駆動プーリ51をそれぞれ配置し、前側空間Gの下部にスタータモータ52を、上部に発電機47を配置したので、スタータモータ52の駆動ギヤ52aをリングギヤ53aに直接噛合させることができ、また駆動プーリ51を伝動ベルト50で従動プーリ47bに連結するだけというように、動力伝達機構が極めて簡単である。
また4サイクルV型エンジンの場合に旋回中心線をクランク軸より前側に設定した場合には、より一層後側ヘビーの状態となるが、本船外機1では、旋回中心線6をクランク軸16より前側に位置させている場合に補機類を該旋回中心線6より前側に配置したので、上記重量バランスの偏位補正作用がより有効となる。
なお、上記補機類配置構造は、V型エンジンだけでなく、直列型のエンジンにも勿論適用可能である。
本船外機1の動弁装置によれば、大径のカムスプロケットを、左側のシリンダ部12aについてはVバンク内側の吸気カム軸21aに装着し、右側のシリンダ部12bについてはVバンク外側の排気カム軸21bに装着したので、Vバンク角度を必要以上に大きくすることなく動弁機構のカムスプロケットに起因してエンジン幅が大きくなるのを抑制できる。
即ち、カムスプロケットは大径であるから、各シリンダ部の吸気,排気カム軸の両方にカムスプロケットを設けるとバルブ挟み角が大きくなるとともに、エンジン全体の幅が大きくなる。また各シリンダ部の一方のカム軸のみにカムスプロケットを設ける場合に、両シリンダ部ともVバンク外側に設けるとこれもエンジン幅が大きくなり、一方、両シリンダ部ともVバンク内側に設けるとVバンク角度が必要以上に大きくなる懸念がある。本船外機1では、各シリンダ部の一方のカム軸のみにカムスプロケットを設ける場合に、左側シリンダ部12aではVバンク内側の吸気カム軸21aに、右側のシリンダ部12bについてはVバンク外側の排気カム軸21bにそれぞれカムスプロケット32a,32bを設けたので上述の各問題を回避できる。
また本船外機1では、大径のカムスプロケットを両シリンダ部のVバンク外側に装着することなく一方のシリンダ部のみについてVバンク外側に配設したので、エンジン全体の幅が必要以上に大きくなることはない。また上記カムスプロケットの装着されていないカム軸側については上側カウリング11bの横断面寸法を、無理なく合面11aから上側にいく程小さくすることができ、型抜きテーパを設ける必要に起因してカウリング寸法が大型化するのを回避できる効果がある。ちなみにカムスプロケットの配置に起因してエンジン幅が大きくなると、上側カウリング11bの合面11a寸法もそれだけ大きくする必要があり、結局カウリング11が大型化する。
カム室F内のオイルは、カム軸受等を潤滑しながらオイル出口64cに向かって流下する途中で中間チェン33bで攪拌されることとなるが、中間チェン33bをタイミングチェン33a、つまりカムチェン室Bよりも下方に位置させたので、たとえ中間スプロケット32cあるいは中間チェン33bによって落下するオイルが攪拌されても、上記カムチェン室Bが中間チェン33bよりも上方に位置していることから、攪拌されたオイルがカムチェン室Bを通ってクランク室Eに流れることはほとんどなく、従ってカム室F内のオイルの回収を効率よく行える。
なお、上記動弁装置は、V型エンジンに限らず直列型エンジンにも勿論適用可能である。
本船外機1の吸気装置によれば、クランク軸と略平行に延びる左,右サージタンク23a,23bを各シリンダ部12a,12bのヘッドカバー19a,19bに沿うように左右対称に配設し、上記左,右サージタンク23a,23b同士を左右対称の分岐通路23d,23dを介して合流通路23eに合流させたので、各シリンダ部への空気の分配量を均一にできる。
また上記各左,右サージタンク23a,23bと各気筒の吸気ポートとを同一長さの吸気マニホールド23cで接続したので、左,右サージタンク23a,23bが大容量を有していることから、各気筒の吸気ポート18eまでの実質的吸気管長に影響を与えるのは上記同一長さの吸気マニホールドのみとなり、従って各気筒への実質的吸気管長を全ての気筒に対して同一にすることができる。
さらにまた上記合流通路23eの外部開口を上記カウリング11の上部に形成された外気導入口11d近傍、つまり上端部に位置させたので、エンジン等からの熱影響を受けていないカウリング上部の空気を導入することができ、吸気温度の上昇を回避できる。また外部開口が最も高所に位置していることから、海面からの跳水がエンジン内に侵入するのを防止できる。
また上記左,右のサージタンク23a,23d同士を支持プレート77で接続し、これにコントロールユニット78を取り付けたので、Vバンク空間を利用してエンジン部品を配置できる。
さらにまた、燃料噴射弁26が装着された吸気プレート24を上方に延長した延長部24cに上記スロットルボディ28を取り付けたので、専用のスロットルボディ取付ブラケットが不要となり、スロットルボディ取付構造を簡素化できる。
なお、上記船外機1では、サージタンクを左,右一対設けた場合を説明したが、図22に示すように、左,右シリンダ部共通のサージタンク90をVバンク中央に配設しても良い。この場合には、該サージタンク90と各気筒の吸気ポートを接続する吸気マニホールド部91を直線状にできる等、構造が簡素となる。
本船外機1の冷却構造によれば、冷却水路69をシリンダブロック12の下方に配置されたオイルパン41の底部を通すとともに排気管39の冷却ジャケットJに接続し、該排気管冷却ジャケットJをエンジン冷却ジャケットKに接続したので、エンジン冷却ジャケットまでの冷却水路の配置位置を工夫するだけの簡単な構造により、別途に専用の冷却水路を設けることなくオイルパン41及び排気管39の冷却を行うことができる。
また、冷却水路69をオイルパン41の底部で左,右に分岐し、該各分岐水路69a,69aを各シリンダ部用の各排気冷却ジャケットJからエンジン冷却ジャケットKに接続したので、各シリンダ部毎に独立の冷却系を構成して各シリンダ部の冷却バランスを向上できる。
また上記各冷却系のエンジン冷却ジャケットKの出側に各冷却系独立のサーモスタットバルブ72を設けたので、各冷却系毎に独立した温度管理が可能となり、各シリンダ部の冷却バランスをより一層向上できる。
さらにまたエンジン冷却ジャケットKを経た冷却水を、上記オイルパン61の周囲及び上記マフラ65の周囲を通って水中に落下するように構成したので、水中に戻る途中の冷却水を有効利用してオイルパン41及びマフラ65を効果的に冷却できる。
なお、上記冷却構造は、V型エンジンに限らず、シリンダ部が1つの直列型エンジンにも勿論適用可能である。
本船外機1のオイルパン配置構造によれば、各シリンダ部12a,12bからの排気マニホールド39,39を船幅方向に所定間隔をあけて上記エキゾーストガイド40の後部に上下方向に挿入接続し、オイルパン41の膨出部41iを上記両排気マニホールド39,39の間に位置させたので、V型縦置きエンジンの場合に左,右の排気管の間に生じるデッドスペースを利用してオイルパン容積を確保できる。
上記膨出部41iの下端部にドレンプラグ80を設けるとともに、上端部からオイルレベルゲージ79を挿入するようにしたので、上記デッドスペースに配置された膨出部41iの下部から廃油でき、かつ上部から給油でき、潤滑油の補給,入れ替え作業等の点検作業性を向上できる。
上記エキゾーストガイド40の、上記膨出部41i両側部分に、冷却水をオイルパン41及びマフラ65の周囲に戻す冷却水戻し口41j及び開口65aを設けたので、上述のデッドスペースを利用してオイルパン41,及びマフラ65を戻り水によって冷却できる。
またエキゾーストガイド40の後部に、アイドル排気系の排気膨張室74を設けたので、上記デッドスペースを利用して排気膨張室配設スペースを確保できる。またこの場合に、下側ガイド40bの上面に凹部40hを形成し、これに蓋74aを被せる構造としたので、該凹部を鋳造により形成できるとともに、塩溜まりを回避できる。
本船外機1の潤滑油補給構造によれば、潤滑油を縦置きエンジン上端のクランク軸ジャーナル部16aを潤滑した潤滑油をオイルパン41に戻すためのオイル戻り通路(Vバンク空間A,オイル落下孔D)をクランク軸16と略平行に形成し、該オイル戻り通路の上端部に潤滑油注入口37eを形成し、該注入口37eにオンルパン41に達する長さのオイルレベルゲージ79′を装着したので、オイル注入口とオイルレベルゲージ挿入口とが共用され、注入口開閉とレベルゲージ着脱作業が同時に行われる分だけ作業性を改善できる。
また上記オイル戻り通路は、クランク軸16と略平行に形成されており、オイルパン21内に直に連通しているので、注入口37eから補給された潤滑油は直ちにオイルパン41内に落下し、オイルパン41内のオイルレベルが一定になるまでの待ち時間が大幅に短縮され、この点からも作業性を改善できる。
本船外機1の潤滑油回収構造によれば、クランクケースカバー17とバッフルプレート(仕切板)75との間の空間をオイルミストガスの上昇通路E′とし、該上昇通路E′の上端部をエンジン上端部に形成されたオイルセパレータ機能を有するチェン室Bに連通させるとともに、クランク室の下端部からオイルパン41に連通するオイル戻り通路Hを形成したので、クランク軸ジャーナル部16aから排出された潤滑油は仕切板75の内面を伝って落下し、オイルパン41内に回収され、またオイルミストガスは仕切板75の細孔から上昇通路E′を通ってチェン室Bに上昇し、ここでオイルミストが空気から分離され、クランクケースカバー17あるいは仕切板75を伝って落下し、オイルパンに回収され、潤滑油の回収効率を向上できる。
なお、上記潤滑油補給構造及び潤滑油回収構造は、V型エンジンに限らず、シリンダ部が1つだけの直列型エンジンにも勿論適用可能である。
図23は、カムスプロケット32a,32bの配置構造の変形例であり、この例ではカムスプロケット32a,32bの両方ともVバンクの内側に位置する吸気カム軸21a,21aに取り付けている。これにより左,右シリンダ部12a,12bの何れも外方への張り出し量が小さくなり、カウリング11の左右幅を小型化できる。