JP4268912B2 - 薬物徐放性コンタクトレンズキット - Google Patents

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Description

本発明は、薬物徐放可能なヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズを提供するための薬物徐放性コンタクトレンズキットに関する。さらに詳しくは、本発明は、眼疾患治療薬(ターゲット薬剤)をより多く取り込むことが可能であり、かつ長時間に渡り、その治療薬を徐放することができるコンタクトレンズを提供するための薬物徐放性コンタクトレンズキットに関する。
現在、ドライアイ、緑内障、結膜炎あるいは角膜上皮障害などの眼科領域での主要な疾患に対する薬物治療には、点眼薬または眼軟膏が使用されているが、なかでもその第一選択は、もっぱら点眼薬である。点眼薬は、患者にとっては、取扱いが簡単でかつ低侵襲というメリットがあり、医師にとっても取扱い説明が簡単であり、双方のメリットが大きい。
しかしながら、瞬きによる眼瞼の機械的運動や涙液置換のために、点眼薬を長時間に渡って眼内に保持しておくことは不可能に近い。点眼薬によって投与された薬剤の99%は、涙液によって涙点から涙小管に洗い流されてしまい、薬効はほとんど期待できないことが知られている(M. Patrick, A. K. mitra, Ophthalmic Drug Delivery Systems, A. K. Mitra(Ed.), Chapter 1, Marcel Dekker, New York(1993))。
すなわち、点眼薬による薬剤投与の場合、一般の内服薬と比較して生体有効利用性が圧倒的に低いのである。したがって、薬効を発揮させるためには頻回の点眼が必要となる。この頻回点眼は、患者にとって煩雑な作業となるだけでなく、患者の服用コンプライアンス(患者が医師の指示通りに薬剤を服用すること)が低下し、点眼投与を忘れたり、また、それを補うために一度に2〜3日分を投与したりすることから、組織内での薬物濃度が低すぎたり高すぎたり不安定になることから、治るはずの疾患も治り難くなることが問題となっている。
さらに、頻回点眼により角結膜上から洗い流され、全身に回る薬剤量も点眼回数に比例して増加する。点眼薬依存症のように過度の点眼を繰り返す患者も多く、薬剤の種類によっては、重篤な全身的副作用を引き起こすこともある。眼内においても頻回点眼により、組織内における薬剤濃度は激しく変動し(I. K. Reddy, M. G. Ganesan, Ocular Therapeutics And Drug Delivery, I. K. Reddy(Ed.), Chapter 1, Technomic, Pennsylvania(1996))、眼内局所における副作用の危険性は非常に高くなる。
また、眼疾患がある場合に頻回点眼を行なうと、本来の涙液成分(ムチン、ラクトフェリン、IgA、リゾチームなど)を希釈し洗い流してしまうため、逆に疾患の症状が悪化することも多い。さらには、健常人でも人工涙液を頻回点眼すると新たに角膜上皮障害が発生したという報告さえある(眼科 New Insight 2, MEDICAL VIEW(1994))。
以上より、眼科領域での疾患に対する薬物治療には、点眼薬が最良であるというわけではなく、点眼薬以外に有効な解決方法がないのが現状である。
以上をふまえると、理想的な眼内薬物治療法は、以下のような効果をもたらすものである。:
1.薬効の持続性を向上させ、薬剤の生体有効利用性を高める。
2.投与回数を極力減らし患者の服用コンプライアンスを向上させる。
3.投与された薬剤のロスを減らし、副作用を低減させる。
4.患者自身が投与可能(煩雑な作業でない)である。
5.低侵襲である
一方、これまでに、コラーゲンシールドやオキュサート(登録商標)などが販売された(M. Friedberg, U. Pleyer, B. J. Mondino, Ophthalmol., 1991, 98, 725-732;S. G. Deshpande, S. Shirolkar, J. Pharm. Pharmacol., 1989, 41,197-200)。しかし、これらは、プラスチックに起因する装用感の悪さに加え、患者自身の取扱いが許されなかったため、医師による装用が必要とされ、患者が頻繁に眼科を訪問しなければならないという欠点を有していた(F. E. Ros, J. W. Tiji, J. A. Faber, CLAO J., 1991, 17, 187-190)。
以上のような背景から理想に近いものは、生体との親和性が高く装用感のよいヒドロゲルを用いた薬剤徐放システムであるとされてきた。実際にこれと同じ発想で市販のソフトコンタクトレンズ(以下、SCLと称することがある。)に薬物を染込ませて、これを患者に装用させるという試みは、WaltmanやKaufranらによって1970年にすでに実施されている(S. R. Waltman, H. E. Kaufman, Inv. Ophthalmol., 1970, 9, 250-255;S. M. Podos, B. Becker, C. Asseff, J. Hartstein, Am. J. Ophthalmol., 1972, 73, 336 他)。しかし、ヒドロゲル中に拡散した薬剤は、拡散律速にしたがった放出挙動を示すため(M. Negishi, et al, Drug. Dev. Ind. Pharma., 1999, 25, 437-444)、30分以内にほとんどの薬剤は放出されてしまう(M. R. Jain, Bri. Ophthalmol., 1988, 72, 150-154;J. W. Shell, R. Baker, Ann. Ophthalmol., 1974, 6, 1037)。これは、点眼薬1滴の角膜上滞在時間(約5分)と比較すると確かに改善されてはいるものの、「薬剤徐放システム」と言うにはほど遠い。また、これに類似するものとして、特許文献1には、神経栄養因子NGFおよびBDNF並びにこれらの誘導体の1種または2種以上を混合してなる眼科用組成物およびそれを用いた緑内障治療薬をコンタクトレンズに配合することが記載されているが、薬物徐放システムについての記載はない。また、特許文献2には、ホルモンをコンタクトレンズのマトリックス内に取り込ませる方法が記載されているが、充分な薬物放出時間を確保することができないだけでなく、そのコントロールもできるものではない。
さらに、市販のSCL 1枚に取込むことのできる薬剤量は非常に少なく、薬効を示すのに充分な量の薬剤を保持させることはかなり困難である(A. L. Weiner, Polymeric Drug delivery Systems for the Eye, A. J. Domb(Ed.), Polymeric site-specific pharmacotherapy, John Wiley & Sons, Chichester(1994), 315-346;T. P. Heyman, M. L. McDermott, et al, J. Cat. Ref. Surg., 1989, 15, 169-175)。これらが通常のSCLの持つ最大の欠点であり、このために通常のSCLは薬物キャリアとしての利用法が制限されてきた。
この点を改善するために、薬物供給能力を付加したコンタクトレンズの検討がなされ、たとえば、含水性ソフトコンタクトレンズ2枚でシート状の薬物をはさみ込んだコンタクトレンズが開示されている(特許文献3)。しかし、該コンタクトレンズは、薬物が含まれたシートをコンタクトレンズ内にはさみ込む作業が必要となり煩雑であるうえ、薬物濃度および薬物供給時間のコントロールすることの具体的解決策が示されたものではない。また、特許文献4には、レンズ前面部を形成しうる第1部材およびレンズ後面部を形成しうる第2部材からなり、コンタクトレンズにおいて該第1部材と第2部材によって空隙を形成させ、該空隙に薬物を存在させるコンタクトレンズが記載されているが、製造工程が多く改善が望まれるものである。さらに、特許文献5は、硬質コンタクトレンズの外周縁部に着脱自在な錘を提供することにより安定感および装用感を向上させること、薬物を保持させることが記載されているが、薬物徐放コントロールについて詳細に開示したものではない。また、微粉末状またはゲル状の薬物徐放剤をコンタクトレンズの一部に付着させることにより、薬物の保持能力を高めたコンタクトレンズが特許文献6に記載されているが、コンタクトレンズと微粉末状の薬物徐放剤を別々に調製することや、使用前にコンタクトレンズに該薬物を付着させる必要があり煩雑であった。以上のようなコンタクトレンズでは、製造工程が煩雑なため、該コンタクトレンズを治療に用いる際にはコスト高になるという欠点も有していた。
他方、ヒドロゲル材料に薬物を取り込ませる方法として、
(α)モノマー混合液中に直接薬物を添加し、薬物存在下で重合を行なう方法
(β)薬物非存在下でモノマー混合液を重合し、その後薬物溶液中に浸漬し、飽和させる方法
などが検討されている(たとえば、特許文献7および特許文献8参照)。
しかし、上記のいずれの方法も薬物の徐放時間が比較的短く、長時間に渡る効果が期待できない。また、ヒドロゲル材料に取り込まれた薬物の放出速度が速いと、適用直後に急激な薬物濃度上昇が起こるため、副作用の危険性が高まってしまう。
一方、ヒドロゲル材料内に大量の薬物を保持できる材料の製造方法として、
(γ)分子認識機能を有するインプリントゲルの製造方法
などが検討されている(たとえば、特許文献9参照)。
しかし、このインプリントゲルからなる薬物徐放性コンタクトレンズを提供するための方法を想定するまでには至らなかった。
したがって、ゲル内により多くの薬剤を取り込むことができ、かつ薬剤を長時間に渡って放出することができる薬剤徐放可能なコンタクトレンズを準備、提供することが可能なキットが望まれている。
特開平10−218787号公報 特開平05−093889号公報 特開平06−273702号公報 特開平10−339857号公報 特開平11−024009号公報 特開平11−024010号公報 特開昭62−103028号公報 特開昭62−103029号公報 国際公開第03/090805号パンフレット
本発明の目的は、ゲル内により多くの薬剤を取り込むことができ、かつ薬剤を長時間に渡って放出することができる薬剤徐放可能なコンタクトレンズを提供するための薬物徐放性コンタクトレンズキットを提供することにある。
すなわち、本発明は、容器内に、薬物徐放可能なヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズおよび浸漬液を含み、該浸漬液が3.3×10-3〜3.3×10g/lのターゲット薬剤を含有する薬物徐放性コンタクトレンズキットに関する。
また本発明は、ターゲット薬剤を含有しない保存液とターゲット薬剤を含有しない薬物徐放可能なヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズを有する第1室およびターゲット薬剤含有液を有する第2室からなり、2室を開放して、コンタクトレンズとターゲット薬剤含有液とを接触させて、コンタクトレンズ内にターゲット薬剤を含有させる薬物徐放性コンタクトレンズキットに関する。
前記コンタクトレンズが0.1〜1000μgのターゲット薬剤を含有することが好ましい。
前記ヒドロゲル材料が、
(a)ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマー、ならびに架橋剤を含んでなるモノマー混合液を得る工程;
(b)該ターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーとの間に生じる複合体を維持したまま重合する工程;ならびに
(c)該重合体から該ターゲット薬剤と未反応のモノマーを除去する工程、
を包含する方法によって製造されるインプリントゲルであることが好ましい。
前記ヒドロゲル材料の含水率が10〜80%であることが好ましい。
前記ターゲット薬剤が、緑内障治療剤および/または涙液分泌亢進剤であることが好ましく、緑内障治療剤が、チモロールまたはピロカルピン、あるいはそれらの医療的に許容される塩、そして、涙液分泌亢進剤が、3−イソブチル−1−メチルキサンチンまたはブロムヘキシン、あるいはそれらの医療的に許容される塩であることがより好ましい。
本発明の薬物徐放コンタクトレンズキットを用いれば、ゲル内により多くの薬剤を取り込むことができ、かつ薬剤を長時間に渡って放出することができる。
本発明は、容器内に、薬物徐放可能なヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズおよび浸漬液を含み、該浸漬液が3.3×10-3〜3.3×10g/lのターゲット薬剤を含有する薬物徐放性コンタクトレンズキットに関する。
前記容器は、特に限定されるものでなく、たとえばコンタクトレンズのケースをそのまま採用することができる。
容器の材質としては、とくに限定はないが、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、ガラスがあげられる。
本発明において、ヒドロゲル材料は、薬物を取り込むことができ、徐放可能なものであればとくに限定はなく、一般にコンタクトレンズを製造するために用いられる材料からなる。
また、ヒドロゲル材料は、
(a)ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマー、ならびに架橋剤を含んでなるモノマー混合液を得る工程;
(b)該ターゲット薬剤と該特定官能基を有するモノマーとの間に生じる複合体を維持したまま重合する工程;ならびに
(c)該重合体から該ターゲット薬剤と未反応のモノマーを除去する工程
により製造されるインプリントゲルであることが好ましい。
なお、本明細書中において、「物理的架橋構造」とは、「水素結合および/または静電的相互作用(荷電粒子間のクーロン力のほかに、双極子や四極子などの多重極子間相互作用を含む)によって生じる架橋構造」のことをいう。
本発明に係るヒドロゲル材料の成形材料および製造方法として、具体的には、国際公開第03/09085号パンフレットに記載されているものが、好適に採用される。
ターゲット薬剤として、エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、塩酸セフメノキシム、クロラムフェニコール、スルベニシリンナトリウム、トブラマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ジメカシン、硫酸ミクロノマイシン、コリスチン、テトラサイクリンなどの抗生物質;オフロキサシン、ノルフロキサシンなどのキノロン剤;ピマリシンなどの抗真菌剤;インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、プラノプロフェン、アズレン、グリチルリチン酸ジカリウム、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムなどの非ステロイド;塩化リゾチウムなどの消炎酵素薬;アンレキサノクス、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェンなどの抗アレルギー製剤;ピレノキシン、ペンタセシルスルホン酸ナトリウム、グルタチオン、カタリン、シネラリアルマチィマなどの白内障治療薬、エピネフリン、塩酸ジピベフリン、塩酸カルテオロール、塩酸ベフノロール、マレイン酸チモロール、ピロカルピン、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオフェイト、エチルスルホン酸エチルパラニトロフェノールなどの緑内障治療薬;ビタミンAパルミテート、フラビンアデニンジヌクレオチド、リン酸ピリドキサール、ジアノコバラミン、酢酸トコフェノールなどのビタミン;角膜成長因子(KGF)、神経成長因子(NGF)、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、骨由来成長因子(BDGF)、脳由来神経栄養因子、インターロイキンなどのペプチド性成長因子などの細胞成長因子;インシュリン、糖質コルチコイド、プロスタグランジン、成長ホルモン、副腎皮膚刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、アンドロジェン、エストロジェンなどのホルモン;デキサメタゾン、フルオロメトロン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウムがあげられる。
なかでも、(I)に示すターゲット薬剤および(II)に示す特定官能基を有するモノマーを採用することが望ましく、さらには(III)に示すターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーの組み合わせから採用することが望ましい。また、ヒドロゲル材料の柔軟性を適度にコントロールでき、良好な機械的強度を付与することができ、共重合性を向上させる効果が大きいことから、(IV)に示す架橋剤を採用することが望ましい。また、透明性、成形性、強度の面から、(V)に示すような親水性モノマーや任意モノマーが適宜に配合される。さらに(VI)に示すような添加物が必要に応じて加えられる。
(I)ターゲット薬剤
緑内障治療薬として、チモロール、ピロカルピンおよびこれらの医薬的に許容される塩、涙液分泌亢進剤としては、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、ブロムヘキシンおよびこれらの医薬的に許可される塩。
(II)特定官能基を有するモノマー
(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)クリレート。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、「…アクリレート」ならびに「…メタクリレート」の二つの化合物を総称するものである。
(III)ターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーの好ましい組み合わせ
ターゲット薬剤(I)がチモロール、ピロカルピン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、ブロムヘキシンの場合、特定官能基を有するモノマー(II)が(メタ)アクリル酸および/またはスチレンスルホン酸。
(IV)架橋剤
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンビスアクリルアミド。
(V)親水性モノマー
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN−ビニルピロリドン。
(VI)添加物
ラジカル重合開始剤、光重合開始剤、増感剤。
モノマー混合液の重合は、従来からの公知の各種手法がいずれも採用可能である。
たとえば、モノマー混合液の重合は、モノマー混合液を樹脂製の成形型に注入し、成形型の型締めを行なって、進行させる。モノマー混合液の重合方法としては、室温〜約130℃の温度範囲で徐々にまたは段階的に加熱する方法、あるいは、マイクロ波、紫外線または放射線(γ線)などの電磁波を照射する方法などがある。重合は、塊状重合法、溶媒などを用いた溶液重合法またはそのほかの方法によってなされてもよい。
モノマー混合液の重合は、ターゲット薬剤と、特定官能基を有するモノマーとの間に生ずる複合体を維持したまま完了させる。したがって、複合体を維持したまま重合が完了するように、適宜、重合条件を変更してもよい。
重合終了後、重合体を成形型から脱型後、大過剰量の洗浄溶液によって洗浄して、内部に存在する未反応モノマーおよびターゲット薬剤を除去することにより、ヒドロゲル材料を得ることができる。
未反応モノマーおよびターゲット薬剤を除去するために使用される洗浄溶液としては、水、蒸留水、生理食塩水;希塩酸;水酸化ナトリウム水溶液;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール;または、これらの混合溶液などがあげられる。
また、本発明のヒドロゲル材料は、未反応モノマーおよびターゲット薬剤を除去したのち、さらに、(d)ターゲット薬剤を前記重合体に取り込ませる工程を経て製造する。取り込ませるターゲット薬剤は、モノマー混合液に配合したターゲット薬剤と同一のものを使用する。ターゲット薬剤を組み込むためには、ターゲット薬剤を溶解もしくは懸濁させた水溶液中にヒドロゲル材料を1時間〜数日間浸漬すればよい。
容器内に、前記ヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズおよび浸漬液を含むキットにおいて、浸漬液が3.3×10-3〜3.3×10g/lのターゲット薬剤を含有する。浸漬液中のターゲット薬剤濃度は3.3×10-1〜1.65×10g/lがより好ましい。浸漬液のターゲット薬剤濃度が3.3×10-3g/l未満では、薬効を所望の時間持続させることが困難となる傾向があり、3.3×10g/lをこえると、過剰のターゲット薬剤が物理的架橋構造を形成せずにヒドロゲル材料内に残存し、適用直後に眼組織内の薬物濃度が高くなる傾向にある。
また本発明は、ターゲット薬剤を含有しない保存液とターゲット薬剤を含有しない薬物徐放可能なヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズを有する第1室およびターゲット薬剤含有液を有する第2室からなり、2室を開放して、コンタクトレンズとターゲット薬剤含有液とを接触させて、コンタクトレンズ内にターゲット薬剤を含有させる薬物徐放性コンタクトレンズキットに関する。
前記容器は、2室以上に区画されているものを用いることができる。2室以上に区画されている容器の具体例としては、たとえば、以下のものがあげられる。
1.仕切り板によって上下に区画されており、その上室を第1室、下室を第2室として使用することができる容器。仕切り板は2枚の板からなっており、それぞれに孔が設けられており、上部および/または下部を回転させて、その2つの孔を合わせることによって開放することができる。
2.容器自体を第1室、その容器のフタは内部が空洞になっており、そのフタ内を第2室として使用することができる容器。フタの底面には孔が設けられており、その孔はフタの上部に設けられたレバーをスライドさせることによって開放することができる。
3.仕切り板によって2室に区画されている容器。仕切り板を取り去ることによって2室を1室にすることができる。
4.破断可能に形成した隔壁によって3室に区画されており、第1室および第2室は、いずれも第3室に接している容器。たとえば図1および図2に示す容器の、第1室30aおよび第2室30bは軟質材からなっており、その第2室30bを押しつぶして、図2に示す第3室12との隔壁36を破断させることにより、第2室30bと第3室12とを、連通口34を連通させ開放することができる。
容器の材質としては、とくに限定はないが、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、ガラスがあげられる。
本発明のヒドロゲル材料としては、前記ヒドロゲル材料であることが好ましい。
ターゲット薬剤として、前記ターゲット薬剤があげられる。
なかでも、前記(I)に示すターゲット薬剤および前記(II)に示す特定官能基を有するモノマーを採用することが望ましく、さらには前記(III)に示すターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーの組み合わせから採用することが望ましい。また、ヒドロゲル材料の柔軟性を適度にコントロールでき、良好な機械的強度を付与することができ、共重合性を向上させる効果が大きいことから、前記(IV)に示す架橋剤を採用することが望ましい。また、透明性、成形性、強度の面から、前記(V)に示すような親水性モノマーや任意モノマーが適宜に配合される。さらに前記(VI)に示すような添加物が必要に応じて加えられる。
コンタクトレンズ1枚に含有可能なターゲット薬剤の量は、その使用方法や用途によっても異なるが、好ましくは0.1〜1000μg、より好ましくは10〜500μgである。治療薬の量が0.1μg未満であると、薬効を所望の時間持続させることが困難となる傾向があり、1000μgをこえると、過剰のターゲット薬剤が物理的架橋構造を形成せずにヒドロゲル材料内に残存し、適用直後に眼組織内の薬物濃度が高くなる傾向がある。
ターゲット薬剤を再度組み込んだヒドロゲル材料のターゲット薬剤の放出持続性比は、2以上であることが好ましい。放出持続性比が2未満では、取り込んだ薬剤を所望の治療期間にわたりゆっくりと放出させることができなくなる。また、適用後に眼内局所において、急激な薬物濃度上昇による副作用が起こる危険性がある。
なお、放出持続性比は、時間(t)におけるヒドロゲル材料からのターゲット薬剤の放出量をMt、ターゲット薬剤の放出限界時における全ターゲット薬剤の放出量をMとしたときに、ターゲット薬剤を配合せずに作製したゲルについて、Mt/Mの値が1となった時間(Hc)と、ターゲット薬剤を配合して作製したゲルについて、Mt/Mの値が1となった時間(Hs)から、下式により求められる値である。
放出持続性比 = Hs/Hc
通常、コンタクトレンズに薬物を取り込む際の取り込み速度はレンズの網目の大きさ(含水率に比例)およびレンズ内外の薬物濃度勾配に依存する。
コンタクトレンズの含水率は、10〜80%であることが好ましい。含水率は、より好ましくは15〜70%であり、さらに好ましくは20〜60%である。含水率が10%未満では、装用感が悪くなる傾向にあり、80%をこえると、薬物を効果的にコンタクトレンズ内に捕捉できず、所望の薬物放出時間が得られなくなる傾向がある。
ここで、長時間薬物放出持続性を有するレンズを用いた場合、レンズの含水率を下げるか、または表面にコート層を形成させるのが一般的である。これらの場合、薬物のゲルからの放出速度が遅い反面、取り込み速度も遅くなってしまう。このことは、実際に眼科疾患治療に使用するには大きな欠点となる。
これに対して、前記ヒドロゲル材料(インプリントゲル、レンズ)では、目的薬物の吸着親和性が高いため、濃度勾配のみならず、親和性による寄与のため薬物の取り込み速度を速くすることが可能となる。また、薬物とレンズとの吸着親和性のため、薬物をレンズから放出する際には、その放出速度は遅くなる。このような特徴は、実際の疾患治療への応用には好都合である。
前記ヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズの薬物放出速度は、好ましくは1×10-7〜1×10-12cm2/秒、より好ましくは1×10-8〜1×10-11cm2/秒である。薬物放出速度が1×10-7cm2/秒未満であると、薬効を所望時間持続させることが困難となる傾向があり、1×10-12cm2/秒をこえると、放出された薬物の組織内における濃度が有効濃度に達しないため、所望の効果が得られなくなる傾向がある。
また、薬物放出時間は、好ましくは1時間〜1ヵ月、より好ましくは8時間〜14日である。薬物放出時間が1時間未満であると、薬剤の投与回数が多くなる傾向があり、1ヵ月をこえると、コンタクトレンズに取り込ませる薬物量が多くなり、物理的架橋構造を形成しないものが存在し、適用直後に眼組織内の薬物濃度が高くなる傾向がある。
前記ヒドロゲル材料は、透明かつ柔軟性に富み、優れた機械安定性と生体適合性を示し、薬物の取り込み量も多い材料である。
また、ヒドロゲル材料は、ゲル調製に用いられるモノマー混合液中の特定官能基を有するモノマーの濃度とターゲット薬剤の濃度との比を変化させることにより、ターゲット薬剤の放出速度を、所望の時間に制御することができる。モノマー混合液中の特定官能基を有するモノマーおよびターゲット薬剤の濃度は、次の式(1)を満足するように決定されるものである場合、より高い徐放効果を有するヒドロゲル材料を得ることができる。
y≦0.277x−10 (1)
ここで、xは特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yはターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。なお、本明細書中において、モル濃度とは、架橋性化合物、重合開始剤、光増感剤を除いた全重合成分1Lに対する物質量を示す。
したがって、このヒドロゲル材料は、その光学機能を応用して、コンタクトレンズなどの眼用レンズ材料に広く利用することができ、そのほか、薬物徐放カプセルなどにも利用することができる。
ヒドロゲル材料を、薬物放出速度をより制御し得る薬物徐放可能とするためにヒドロゲル材料の表面改質を行うのが好ましい。
表面改質方法としては、プラズマ照射、紫外線照射、グラフト重合、シリコーン含有高分子による被覆、相互侵入網目形成(Interpenetrating Polymer Network(IPN)形成)などがあげられる。これら表面改質は、単独または2種以上を組合わせて行なってもよい。
前記表面改質は、ヒドロゲル材料にターゲット薬剤を取り込ませる前、もしくは取り込ませた後のいずれの時点で施しても良いが、表面改質による薬剤への影響を考慮すると、ヒドロゲル材料に薬剤を取り込ませる前に行なうことが好ましい。
ヒドロゲル材料の薬物徐放は、生理食塩水などにおいて、時間(t)におけるヒドロゲル材料からのターゲット薬剤の放出量(Mt)、ターゲット薬剤の放出限界時における全ターゲット薬剤の放出量(M)および試験試料の厚さ(h)を用いて下式により得た拡散係数(D)を、表面未改質ヒドロゲル材料による拡散係数(D0)で除した拡散係数比(D/D0)により示される。
t/M = 4(D・t/π)1/2/h
薬物放出速度を制御し得る薬物徐放可能なヒドロゲル材料の拡散係数比は、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下である。拡散係数比が1以上の場合、すなわち表面未改質ヒドロゲル材料よりも拡散係数が高い場合は、表面改質による薬物の徐放効果は全くなくなる。また、拡散係数比が低くなりすぎる場合、薬物徐放効果はあるものの、眼組織内において有効濃度を長時間保つことができなくなることから、薬物持続期間を1日とする場合は0.5以上、約10日とする場合は0.01以上であることが好ましい。
本発明のキットに含まれる浸漬液としては、保存液、洗浄保存液、ターゲット薬剤含有液、ターゲット薬剤含有保存液およびターゲット薬剤含有洗浄保存液からなる群から選択される。これら保存液および洗浄保存液は特に限定されるものではなく、通常のコンタクトレンズ用液剤の調製において使用される、公知の各種添加成分が1種あるいは2種以上組み合わせて生理食塩水やMPS(マルチパーパスソリューション)などに含有せしめられたものが採用される。MPSは、コンタクトレンズや容器内壁に対する洗浄効果やすすぎ効果、殺菌効果、保存効果などを一括して発揮し得る液剤である。また、添加成分としては、防腐剤、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤があげられる。
防腐剤としては、一般に使用されているものを採用することができる。その具体例としては、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサールなどの水銀系防腐剤;塩化ベンザルコニウム、臭化ピリジニウムなどの界面活性剤系防腐剤;クロロヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロロブタノールなどのアルコール系防腐剤;メチルパラベン、プロビルパラベン、ジメチロールジメチルヒダントイン、イミダゾリウムウレアなどがあげられる。
等張化剤としては、コンタクトレンズ用保存液の浸透圧を涙液の浸透圧(280〜300mOsm/kg)に近づけることができ、眼科生理的に許容できるものであればよく、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムのような無機塩や以下にあげる緩衝剤などがあげられる。
緩衝剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルコン酸、リン酸、ホウ酸、グリシンやグルタミン酸などのアミノ酸;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの酸やそれらの塩などがあげられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸などがあげられる。
本発明のキットの具体例としては、治療薬(ターゲット薬剤)の含有の有無、容器および浸漬液などにより、たとえば、以下の組み合わせが考えられる。
Figure 0004268912
(1)の場合、緩やかな薬効を持続することができる。
(2)の場合、治療薬を多く取り込んだコンタクトレンズとして使用することができる。
(3)の場合、(2)と同様にキット提供時は、治療薬を多く取り込んだコンタクトレンズとして使用することができるが、使用後に取り外して、治療薬含有洗浄保存液に浸漬することにより、再度、コンタクトレンズ内に治療薬を含有させることができる。
(4)の場合、容器が仕切り板などによって2室に区画されており、第1室にコンタクトレンズが保存液とともに、第2室に治療薬がそれぞれ充填されている。このキットは、使用時に、その仕切り板を取り去るなどして2室を1室に開放して、コンタクトレンズと治療薬含有液とを接触させて、コンタクトレンズ内に治療薬を取り込ませることができる。
本発明のキットを用いることで、たとえば、治療薬が緑内障治療薬である場合などには以下のような使用方法が考えられる。
・0.1〜250μgの治療薬を含ませたコンタクトレンズを終日で使い捨てる。
・0.1〜250μgの治療薬を含ませたコンタクトレンズを終日装用後、コンタクトレンズを当該治療薬含有保存液に浸漬し、翌日、再度コンタクトレンズを使用する。
・1〜500μgの治療薬を含ませたコンタクトレンズを用いて、コンタクトレンズを連続装用し、1日に1回以上、当該治療薬を点眼する。
・10〜1000μgの治療薬を含ませたコンタクトレンズを用いて、コンタクトレンズを2〜30日連続装用し、コンタクトレンズから当該治療薬を徐々に放出させる。
さらに、本発明のキットの使用例として以下のものがあげられる。
(A)連続装用コンタクトレンズによる緑内障治療
1.ヒドロゲル材料の原料モノマー配合量を、N,N−ジメチルアクリルアミド50mM、メタクリル酸400mM、エチレングリコールジメタクリレート600mM、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート50mMおよびチモロール25mMとして作製したコンタクトレンズ(後述する実施例12参照)を1mMチモロール含有薬液に浸漬した治療キットを用意する。
2.コンタクトレンズを薬液から取り出し、蒸留水で軽く洗浄した後、患者に装用させる。
3.患者は、該コンタクトレンズを1週間連続装用したのち、新たなコンタクトレンズに交換する。
(B)1日使い捨てコンタクトレンズによる緑内障治療
1.ヒドロゲル材料の原料モノマー配合量を、N,N−ジメチルアクリルアミド50mM、メタクリル酸100mM、エチレングリコールジメタクリレート140mM、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート50mMおよびチモロール25mMとして作製したコンタクトレンズ(後述する実施例3参照)を複数用意する。
2.患者は、該コンタクトレンズを装用する。
3.翌日、新たなコンタクトレンズを装用する。
(C)終日装用コンタクトレンズによる緑内障治療
1.ヒドロゲル材料の原料モノマー配合量を、N,N−ジメチルアクリルアミド50mM、メタクリル酸100mM、エチレングリコールジメタクリレート140mM、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート50mMおよびチモロール25mMとして作製したコンタクトレンズ(後述する実施例3参照)および1mMチモロール含有洗浄保存薬液を用意する。
2.患者は朝、コンタクトレンズを装用し、就寝前にコンタクトレンズを取り外す。
3.取り外したコンタクトレンズを上記保存液に1晩浸漬する。
4.翌朝、洗浄保存液からコンタクトレンズを取り出し、水道水または市販の洗浄保存液にて洗浄した後、コンタクトレンズを装用する。
前記(A)では点眼自体が困難な老人においても、緑内障治療を継続的に行うことができる。また、(B)の使用例では、点眼薬を点眼することなく緑内障治療を継続的に行うことができる。また、使用例(C)では、通常の視力矯正コンタクトレンズと全く同じ使用方法により、緑内障治療を継続的に行うことができる。
また、本発明のキットは、継続治療が必要な糖尿病にはインシュリンをインプリントしたコンタクトレンズを使用できるなど、必要に応じてさまざまな治療に用いることができる。
本発明のキットは、ヒトだけでなく、イヌなどの動物の眼疾患に対する薬物治療にも使用することができる。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されることを意味するものではない。
実施例1〜14:ヒドロゲル材料の製造
ヒドロゲル材料の原料モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA;ゲルの骨格を形成するモノマー)、メタクリル酸(MAA;特定官能基を有するモノマー)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA;架橋剤)、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(SK−5001)をそれぞれ蒸留によって精製したものを使用した。
光重合開始剤としては、あらかじめ蒸留によって精製した2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(登録商標)1173)を使用した。
ヒドロゲル材料に取り込ませるターゲット薬剤としては、以下に示すチモロールマレイン酸塩(以下、チモロールという)を使用した:
Figure 0004268912
表2に示すMAA、EDMA、SK−5001、チモロールおよびDMAAの配合量で、ヒドロゲル材料原料モノマー混合液を作製した。この混合液に0.4v/vol%のダロキュア1173を20μL加え、ポリプロピレン製の成形型(凸型および凹型の構成;直径20mm×厚さ0.3mmの円形プレート作製用)に注入し、型組みを行なった。
Figure 0004268912
紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UX0302−03;測定波長365nm)によって、室温下、照射強度11mW/cm2にて、成形型および成形型中のモノマー混合液に紫外線を50分間照射させ、紫外線照射重合を行なった。
重合終了後、成形型を開型し、試験試料を取り出した。
得られた試験試料(インプリントゲル)を、大過剰量の0.9重量%食塩水によって3日以上洗浄し、ゲル中に存在する未反応モノマーおよびチモロールを除去した。
試験材料の含水率を表3に示す。
ついで、得られたプレート状(直径:16mm)の乾燥した試験試料(ゲル)を1mMチモロール水溶液が入ったバイアル瓶中に室温で3日間保存し、試験試料にチモロールを吸着させた。
比較例1〜3:ランダムゲルの製造
表2に示すように、チモロールを配合しない以外は、実施例1〜14と同様の方法によって試験試料(ランダムゲル)を得た。
(試験材料中のチモロール濃度)
1mMチモロール水溶液が入ったバイアル瓶中に室温で3日間保存し、試験試料にチモロールを吸着させた後、試験材料が含有するチモロール濃度を表3に示す。
(拡散係数)
試験試料を生理食塩水中に移し、温度(以下、放出速度測定温度という)を25℃に維持したまま、該生理食塩水の一部(600μL/回)を定期的に採取し、自記分光光度計(株式会社島津製作所製 UV−3150)を用いて、波長295nmにおける吸光度を測定することにより、試験試料からのチモロール放出量(Mt)を定量した。
拡散係数(D)は、時間(t)における全チモロール放出量(Mt)、チモロール放出限界時における全チモロール放出量(M)および試験試料の厚さ(h)を用いて下式より算出した。結果を表3に示す。
t/M = 4(D・t/π)1/2/h
(放出持続性および放出持続性比)
t/Mの値が1となった時間を放出持続性の値とした。また、チモロールを配合せずに作製したゲルについて、Mt/Mの値が1となった時間(Hc)と、チモロールを配合して作製したゲルについて、Mt/Mの値が1となった時間(Hs)を求め、下式より放出持続性比を算出した。結果を表3に示す。
放出持続性比 = Hs/Hc
(徐放効果)
試験試料の徐放効果について、次の評価基準で評価した。結果を表3に示す。
○:放出持続性比が2以上である。
△:放出持続性比が2未満である。
Figure 0004268912
放出持続性比が2以上である試験試料を、薬物放出速度を好ましく制御し得る薬物徐放可能なヒドロゲル材料であると判断した。その結果、特定官能基を有するモノマー(MAA)のモル濃度(x)とチモロールの濃度(y)が、式(1)を満たすヒドロゲル材料の放出持続性比は2以上であり、薬物放出速度を好ましく制御し得る薬物徐放可能なヒドロゲル材料であることがわかった。
y≦0.277x−10 (1)
(チモロール含有コンタクトレンズを用いた家兎眼装用試験)
実施例6および比較例2で作製されたヒドロゲルを家兎眼に装用して、装用直後から96時間後まで経時的に房水を採取して、高速液体クロマトグラフィー測定装置(Waters製、Waters2690)により房水中のチモロール濃度を定量した。その結果の一例を表4に示す。
比較例4
0.025%ブルンネ点眼液(昭和薬品化学工業株式会社、0.025%チモロール溶液)を家兎眼に点眼し、前記同様、経時的に房水を採取して、高速液体クロマトグラフィーにより房水中のチモロール濃度を定量した。その結果の一例を表4に示す。
Figure 0004268912
また、房水中のチモロール滞留時間およびAUC(Area under the curve)について表5の結果を得た。一般にAUCは、薬物のバイオアベイラビリティーの指標とされており、AUCが大きくなるとその薬物の薬効も高くなるとされている。
Figure 0004268912
本発明のコンタクトレンズキットに用いられる容器を示す斜視説明図である。 図1に示された容器の縦断面図である。
符号の説明
10 使い捨て処理ケース
12 レンズ収容領域
14 容器本体
16 覆蓋シート
18 周壁部
20 底壁部
26 連結保持領域
27 把持部
30 貯留膜
32 処理液貯留領域
34 連通口
36 隔壁
38 処理液

Claims (7)

  1. ターゲット薬剤を含有しない保存液とターゲット薬剤を含有しない薬物徐放可能なヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズを有する第1室、およびターゲット薬剤含有液を有する第2室からなり、2室を開放して、コンタクトレンズとターゲット薬剤含有液とを接触させて、コンタクトレンズ内にターゲット薬剤を含有させる薬物徐放性コンタクトレンズキット。
  2. 前記コンタクトレンズが0.1〜1000μgのターゲット薬剤を含有する請求項1記載の薬物徐放性コンタクトレンズキット。
  3. 前記ヒドロゲル材料が、
    (a)ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマー、ならびに架橋剤を含んでなるモノマー混合液を得る工程;
    (b)該ターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーとの間に生じる複合体を維持したまま重合する工程;ならびに
    (c)該重合体から該ターゲット薬剤と未反応のモノマーを除去する工程、
    を包含する方法によって製造されるインプリントゲルである請求項1または記載のキット。
  4. 前記ヒドロゲル材料の含水率が10〜80%である請求項1、2または記載の薬物徐放性コンタクトレンズキット。
  5. 前記ターゲット薬剤が、緑内障治療剤および/または涙液分泌亢進剤である請求項1、2、3または記載の薬物徐放性コンタクトレンズキット。
  6. 前記緑内障治療剤が、チモロールまたはピロカルピン、あるいはそれらの医療的に許容される塩である請求項記載の薬物徐放性コンタクトレンズキット。
  7. 前記涙液分泌亢進剤が、3−イソブチル−1−メチルキサンチンまたはブロムヘキシン、あるいはそれらの医療的に許容される塩である請求項記載の薬物徐放性コンタクトレンズキット。
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