JP4268015B2 - 重水濃縮方法、重水濃縮装置 - Google Patents

重水濃縮方法、重水濃縮装置 Download PDF

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Description

本発明は、重水の濃縮方法および重水濃縮装置に関し、詳細には、軽水と重水を含有する水から、重水を原料としてハイドレートを形成させることにより重水を濃縮する、重水濃縮方法、および重水濃縮装置に関する。
水の中には、約0.02〜0.26重量%の重水が存在するが、工業的に使用するためには高濃度に濃縮する必要がある。重水を濃縮する方法としては、以下に示す3つの方法が知られており、これらのうち一つの方法、あるいは複数の方法を組み合わせることによって、高濃度になるまで濃縮が行われている。
(1)水電解法
水を電気分解すると、水素ガスと酸素ガスが2:1の割合で発生するが、水素が発生する際に、水素と重水素の電解電圧の差により、重水素の方が水素よりガスになり難く、水として残り易い性質がある。この性質を利用すると、電解ガス中にはより水素に富んだ成分が、電解液中にはより重水素に富んだ成分が濃縮される。しかし、この方法では、水の電解のために膨大な電力を必要とするという欠点がある。
(2)蒸留法
OとDOの蒸気圧の差を利用し、蒸留により分離する方法である。しかし、この方法では、HOとDOの蒸気圧差が非常に小さいために、理論段数が十数段にもなる精留塔を数列設ける必要があり、装置構成が大掛りなものとなるという欠点がある。
(3)水−水素同位体交換反応法
水・水素同位体交換反応法は、白金触媒の作用により、水と水素の間で水素原子が置き換わる反応を水素同位体の分離に応用する方法である。この方法では、電解槽で発生した重水素ガス(D)が交換反応ユニットの反応部を上向きに通過すると、その重水素(D)の一部が劣化重水の水蒸気(HDO)を構成する水素(H)と置き換わり、重水の水蒸気(DO)になる。次に、この重水の水蒸気が吸収部を通過すると、その一部が下向きに流れる劣化重水に移行する。総合的には、重水素ガスの重水素(D)と劣化重水の水素(H)が交換される結果となり、劣化重水が交換反応塔を下向きに流れるにつれて、HDOからDOに濃縮され、最終的に製品重水が得られるというものである。この方法も、複雑で大型の装置を必要とする方法である。
上記したように、重水濃縮には、多大な電力や煩雑な操作が必要である。また、複雑で大掛りな装置を必要とする結果、重水製造のコストを増加させている。
本発明は、水中に存在する重水を、低コストで効率良く濃縮し、分離することが可能な重水濃縮方法、および重水濃縮装置を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、軽水及び重水を含有する水と、ハイドレート形成物質とを、該ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より低温・高圧側であり、かつ該ハイドレート形成物質と軽水とのハイドレート生成平衡条件より高温・低圧側の条件で接触させて重水からハイドレートを生成させ、生成した重水によるハイドレートを軽水から分離することを特徴とする、重水濃縮方法である。
この重水濃縮方法によれば、重水と軽水のハイドレート生成条件の相違を利用し、重水のみをハイドレート化することにより、一般には軽水中に微量にしか含まれない重水を高濃度に濃縮することができる。この方法は、従来技術のように大量の電力や大掛りな装置は必要としないため、経済的にも有利である。
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、重水によるハイドレート生成の定常条件を、前記ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より僅かに低温側もしくは僅かに高圧側に設定するとともに、ハイドレートの製造開始時点または製造途中の任意の時点で、温度および/もしくは圧力を急激に変化させて、前記定常条件より低温側の条件および/もしくは高圧側の条件に移行させた後、前記定常条件に戻す操作を行うことを特徴とする、重水濃縮方法である。
ハイドレート生成の定常条件を、前記ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より僅かに低温側もしくは僅かに高圧側に設定する場合、最初のハイドレート結晶が生じるまでに非常に時間がかかる。第2の態様では、第1の態様の作用効果に加え、ハイドレートの製造開始時点または製造途中の任意の時点で、定常条件から短時間過冷却条件および/または過圧条件に移行させることによって、ハイドレートの結晶生成を促す。この操作で生成した結晶が種結晶の役割を果たすことにより、その後の定常条件でのハイドレート生成を効率的に行うことができる。
また、本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、軽水から分離した前記ハイドレートを分解してハイドレート形成物質を放散させ、重水を回収することを特徴とする、重水濃縮方法である。第3の態様では、軽水と固液分離されたハイドレートを分解することにより、濃縮された重水を回収することができる。なお、放散されたハイドレート形成物質(ハイドレートのゲスト分子)は別途回収することにより、再利用を図ることができる。
また、本発明の第4の態様は、軽水及び重水を含有する水とハイドレート形成物質とを接触させてハイドレートを生成させるハイドレート製造装置と、前記ハイドレート製造装置から取出した内容物を静置することにより軽水中のハイドレートを浮上させて分離回収する静置容器と、回収したハイドレートを分解するハイドレート分解装置と、を備えたことを特徴とする、重水濃縮装置である。この重水濃縮装置は、第1の態様〜第3の態様のいずれかの方法の実施に適した装置である。
また、本発明の第5の態様は、第4の態様において、ハイドレート製造装置に、圧力を調整する圧力制御手段を設けたことを特徴とする、重水濃縮装置である。この重水濃縮装置は、圧力制御手段によりハイドレート製造装置内の圧力を容易に調整することができるので、特に第2の態様の重水濃縮方法の実施に適したものである。
また、本発明の第6の態様は、第4の態様または第5の態様において、前記静置容器は、容器下部に比較して容器上部の断面積が小さく形成されていることを特徴とする、重水濃縮装置である。
この第6の態様の重水濃縮装置では、容器下部に比較して容器上部の断面積が小さく形成された静置容器を用いることにより、軽水中を浮上したハイドレートが自然に集合し容易に回収できるようになる。
本発明により、水中に存在する重水を、低コストで効率良く濃縮することが可能となる。本発明ではハイドレートを利用して濃縮を行うため大量の電力や大型の装置は不要であり、従来の重水製造に比べ、消費電力は数百分の1程度に抑えることが可能であり、装置規模も大幅に縮小できる。
以下、適宜図面を参照しながら、発明の実施の形態について説明を行う。
本発明の重水濃縮方法は、軽水及び重水を含有する水と、ハイドレート形成物質とを、該ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より低温・高圧側であり、かつ該ハイドレート形成物質と軽水とのハイドレート生成平衡条件より高温・低圧側の条件で接触させて重水からハイドレートを生成させ、生成した重水によるハイドレートを軽水から分離することによって実施される。
本発明において重水の濃縮に利用するハイドレートは、水分子とハイドレート形成物質の分子(ゲスト分子)からなる氷状の固体物質であり、水分子により形成されるかご状構造の内部にゲスト分子を取り込んだ構造の包接水和物である。
ハイドレート形成物質(ゲスト分子)が同じであっても、重水と軽水ではハイドレート生成平衡条件は異なる。本発明では、この重水と軽水とのハイドレート生成条件の相違を利用し、水中に存在する重水のみをハイドレート化し、軽水から分離しやすい固体の状態にする。
本発明でハイドレートの原料として使用される水は、軽水及び重水を含有する水である。水には、通常約0.02〜0.26重量%の重水が存在しているが、ここから重水のみを分離濃縮することは通常困難であり、従来技術に挙げたように、大量の電力や大掛りな装置を使用しなければならなかった。本発明では、ハイドレートを利用することによって、水中の重水を容易に濃縮することができるようになった。
もう一方のハイドレート原料であるハイドレート形成物質は、包接水和物のゲスト分子としてハイドレートを形成できる物質であり、その種類は特に限定されない。ハイドレート形成物質の例として、Ar、Kr、N、O、Xe、HS、CH、CO、C、C、C、C、C10、フロン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどを挙げることができる。この中でフロンとしては、例えばフロンHFC−134a、フロンHFC−125、フロンHFC−32などを挙げることが可能である。また、THF、アセトンはいずれも常温・常圧で液体である。上記ハイドレート形成物質の中でも、常温・常圧でハイドレートになりやすいCO、フロン、THFなどが好ましい。
ハイドレート形成は、重水を含有する水とハイドレート形成物質とを所定の温度−圧力条件の下で接触させることによって行われる。この気液接触のために、必要に応じて、水を攪拌したり、ハイドレート形成物質が気体である場合は気泡として水中に導入してバブリングさせたりすることができる。
また、ハイドレート形成条件は、ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より低温・高圧側であり、かつハイドレート形成物質と軽水とのハイドレート生成平衡条件より高温・低圧側の温度−圧力領域で行う。ハイドレートの生成は、種結晶を生じさせる場合を除いて、温度−圧力を固定した定常条件で実施することが好ましい。
定常条件としての具体的な温度−圧力の選定は、ゲスト分子であるハイドレート形成物質の種類により異なるが、該ゲスト分子と軽水とのハイドレート生成の相平衡曲線より高温・低圧側であって、該ゲスト分子と重水とのハイドレート生成の相平衡曲線より低温・高圧側の領域(つまり、二本の相平衡曲線の間の領域)から選択される。この領域は、理論上、軽水はハイドレート化せず、重水のみがハイドレート原料として利用される温度−圧力条件である。しかしながら現実には、この領域内でも軽水のハイドレート生成平衡に近い条件であると、ハイドレート生成速度は速まるものの、少量ではあるが軽水のハイドレートが生成してしまい、重水の純度が十分に高められない場合がある。従って、重水によるハイドレート生成を行う定常条件は、前記ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より僅かに低温側もしくは僅かに高圧側に設定することが好ましい。
ここで、ハイドレート生成を行う定常条件の設定について図1を参照しながら説明する。
図1は、ハイドレート形成物質の代表例としての二酸化炭素ハイドレートにおける軽水と重水のハイドレート生成平衡曲線を示す図面である。図1中、温度をt(=280K)に固定して考えた場合、圧力pである条件Aは、重水も軽水もCOハイドレートを形成しない条件である[以下、A(t,p)のように記す。条件B〜Eについても同様に表記する]。条件B(t,p)は、重水によるCOハイドレートの相平衡条件である。条件C(t,p)は、後述するように定常条件として好適な「ハイドレート生成平衡条件より僅かに高圧側」の条件を示し、条件D(t,p)は「過圧条件」を示す(これらの条件については後述する)。条件E(t,p)は、軽水によるCOハイドレートの相平衡条件であり、条件F(t,p)は、軽水と重水の両方がCOハイドレートを生成する条件である。なお、二酸化炭素ハイドレートの温度280Kにおける相平衡条件は、条件Bのp=1800kPaであり、条件Eのp=2800kPaである。
本発明における「ハイドレート生成平衡条件より僅かに高圧側」の定常条件とは、重水の相平衡条件を基準にして、同一温度における軽水の相平衡条件と重水の相平衡条件との圧力差に対して1/10〜4/10程度高圧側にした条件を意味する。例えば、図1中、温度tにおける軽水の相平衡条件と重水の相平衡条件との圧力差はp−pとなるから、重水の平衡条件を基準にして1/10×(p−p)〜4/10×(p−p)程度高圧側となる範囲から「僅かに高圧側」の条件を選択できる。特に、定常条件を前記圧力差に対して1/5程度高圧側[つまり、1/5×(p−p)となる条件C付近)に設定することが望ましい。同じ温度で上記範囲よりも圧力が低い条件(例えばp)では、重水によるハイドレートの生成速度が遅くなり生成効率が低下する。一方、これよりも圧力が高い条件(例えば、p)を「定常条件」に選択すると、理論上は生成しないはずの軽水によるハイドレートが生成してくる可能性がある。よって、ハイドレート生成の定常条件を「ハイドレート生成平衡条件より僅かに高圧側」に設定して重水によるハイドレート生成を行うことが好ましい。
上記と同様にして、圧力を固定した場合の重水の平衡条件と軽水の平衡条件との温度差を考えることによって「ハイドレート生成平衡条件より僅かに低温側」の条件を決定することができる。この場合も、重水の相平衡条件を基準にして、同一圧力における重水の平衡条件と軽水の平衡条件との温度差に対して1/10〜4/10程度(好ましくは、1/5程度)低温側にした条件に設定することが可能である。
以上述べた条件でハイドレート生成を実施することによって、重水によるハイドレートのみを生成させることができるが、ハイドレート生成の効率を高め、重水濃縮の速度を上げるためには、ハイドレートの製造開始時点または製造途中の任意の時点で、前記定常条件より低温側の過冷却条件および/または高圧側の過圧条件に温度または圧力を急激に移行させた後、短時間で前記定常条件に戻す操作を行うことが好ましい。
ハイドレート生成の定常条件を、前記ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より僅かに低温側もしくは僅かに高圧側に設定する場合、最初のハイドレート結晶が生じるまでに非常に時間がかかる場合がある。このため、ハイドレートの製造開始時点または製造途中の任意の時点で、瞬間的に過冷却条件および/または過圧条件に移行させることによって、ハイドレートの結晶生成を促し、種結晶として機能させることにより、その後のハイドレート生成を効率的に行うことができる。
ここで、「過冷却条件」または「過圧条件」とは、前記のように設定された定常条件よりも低温側または高圧側の条件を意味する。この場合、軽水の相平衡条件を超えて「過冷却条件」または「過圧条件」を設定することも可能である。どの程度の温度幅または圧力幅で低温側または高圧側にシフトさせるべきかは、ハイドレート形成物質の種類に応じて決定することができる。
過圧条件の一例として、重水の相平衡条件を基準にして、同一温度における軽水の相平衡条件と重水の相平衡条件との圧力差に対して3/5程度高圧側にした条件、およびこれよりも高圧側の条件を挙げることができる。例えば、図1の場合では、条件D近傍、またはそれ以上高圧の条件Dや条件Fを過圧条件とすることができる。過冷却条件についても、同様に、重水の相平衡条件を基準にして、同一圧力における重水の平衡条件と軽水の平衡条件との温度差に対して3/5程度低温側にした条件、およびこれよりもさらに低温側の条件に設定することが可能である。
過圧条件へのシフトの具体的操作としては、例えば図1において、条件Aから、圧力を変化させ、条件B、条件Cを飛び越えて条件D(過圧条件)に移行させる。この条件Dではハイドレートが生成し易い反面、軽水によるハイドレートも生成する可能性があるため、種結晶の生成を確認したら直ちに条件Bまで圧力を戻す操作を行う。以上の圧力操作は短時間で急激に行うことが好ましい。なお、ハイドレート形成物質の種類によって種結晶の生成が起こり難い場合には、軽水の相平衡条件を超えて、例えば条件Fまで瞬間的に圧力を上昇させることも可能である。過冷却条件へのシフト操作についても、同様にして実施できる。
以上のようにして生成した重水によるハイドレートは、所定の温度−圧力条件では固体であるため、固液分離操作により軽水と分離することができる。その際、軽水中におけるハイドレートの量は、原料の重水の量に比例して極く少量であるため、例えば静置工程などを設けてハイドレートを集合させてから回収することが好ましい。
軽水を除去したハイドレートは、所定の条件まで温度または圧力を変化させることによって容易に分解する。従って、ハイドレート形成物質がガスの場合は、これを放散させて濃縮重水を単離することが可能となる。また、ハイドレート形成物質が常温・常圧で液体である場合は、例えば蒸留などの任意の分離操作を施すことによって重水と分離できる。
次に図2および図3に基づき、本発明の一実施形態に係る重水濃縮装置について説明する。
図2の重水濃縮装置100は、常温・常圧でガス状のハイドレート形成物質を用い、重水とハイドレート形成させることによって重水を濃縮するものである。重水濃縮装置100は、主要な構成としてハイドレート製造装置10、静置容器20、ハイドレート脱水装置30およびハイドレート分解装置40を備えている。
ハイドレート製造装置10は、内部を所定の温度および圧力に調節できるように設計された耐圧容器によって構成され、軽水及び重水を含有する水とハイドレート形成物質とを接触させてガスハイドレートを生成させる。
すなわち、ハイドレート製造装置10には、熱交換器などの冷却装置11と、圧力制御手段としての圧力制御弁12および圧力制御弁13が付設されており、容器内部の温度と圧力をハイドレート生成条件に調整できる。一般には、図示しないポンプ等によって耐圧容器の内部を加圧するとともに、冷却装置11により冷却し、ハイドレート生成条件に設定する。本実施形態のハイドレート製造装置10では、圧力制御弁12が設けられ、前記「定常条件」を維持する圧力制御が容易に行えるほか、ハイドレート製造装置10内部の圧力を速やかに変化させ得るため、過圧条件への急激なシフトと定常条件への復帰を応答性良く短時間で行うことができるように構成されている。
静置容器20は、ハイドレート製造装置10から取出した内容物を静置することにより、軽水中のガスハイドレートを浮上させて分離回収する目的で配備される。水に含まれる重水の濃度は微量であるため、軽水の量に対するガスハイドレートの生成量も1%以下と小さなものとなる。このため、ハイドレート製造装置10から取出した内容物をこの静置容器20内で静置し、多少のガスを含み比重の軽いハイドレートを浮上させて集合させ、回収を容易にする。つまり、静置容器20は、ハイドレート化を利用した重水濃縮に特有の装置構成である。
静置容器20の好ましい実施態様としての静置タンク21の詳細な構造を図3に示す。なお、図3において、(A)は全体図、(B)は破線で囲った部分の要部拡大図であり、符号80はガスハイドレート、符号81は軽水を示す。この静置タンク21は、下部にハイドレート製造装置10からの内容物の導入部と軽水を排出する排水部(いずれも図示せず)とを備え、タンク上部には、屈曲部22でほぼ直角に折曲し、横方向(水平方向)に延設されたハイドレート回収部23が形成されている。ハイドレート回収部23を備えた特徴的形状は、ガスハイドレート80を抜出す際に、損失を極力抑えるためのものである。
静置タンク21は、タンク下部に比較してタンク上部の断面積が小さく形成されており、タンクの下部から屈曲部22へ向うに従い漸次断面積が縮小するように構成されている。このような形状によって、内部に充満した軽水中をガスハイドレート80が浮上する際に、集合して回収されやすくなる。重水濃縮では、ガスハイドレート80の生成量が少いことから、回収時の損失を防ぎ、収率を維持するために上記形状が有効に機能する。
また、横方向に延設されたハイドレート回収部23は、円筒を上下から押し潰したような形状で、出口へ近づくほど通路の断面積が小さくなるように形成されている。軽水中を浮上したガスハイドレート80はこの狭窄した通路で集められ、軽水とともに押し出されるようにしながら回収される。ここで、ハイドレート回収部23の上下の壁27,27は金網などの水を透過しやすい部材(水透過部材)によって構成され、水分離手段を構成している。余分な軽水はこの部分を通過する際にガスハイドレートから分離、除去され、ハイドレート回収部23を囲むように設けられた受け部25で回収されて排水される。
また、ハイドレート回収部23の上下の壁27,27は、図3(B)に示すように傾斜しており、出口へ向うに従い互いに近接するように形成される。この傾斜角θは、水平に対して例えば3〜30°程度、好ましくは5〜10°程度に設定できる。なお、本実施形態では7°に設定している。このような角度に設定することによって、ガスハイドレートスラリーが閉塞することなく円滑に流れ、しかも高い脱水効率が得られる。従って、軽水とともに浮上して屈曲部22で横方向に向きを変えたガスハイドレートは、互いに集合しつつ余分な水分と分離されながら無理なく通過し、高濃度スラリーとして排出される。ハイドレート回収部23における脱水の程度は、弁28の開閉により調節可能である。ガスハイドレートスラリーの濃度は、2〜20%、好ましくは5〜15%に調整することができる。
ハイドレート脱水装置30は、例えばフィルタープレス、スクリュープレス、遠心分離などの固液分離手段を備えており、ガスハイドレートから水分を取り除いて脱水する。
ハイドレート分解装置40は、熱交換器などの加熱手段41あるいは圧力調整弁(図示せず)を備え、温度および/または圧力を変化させ、例えば常温・常圧条件で回収したハイドレート分解せしめ、ハイドレート形成物質のガス(例えばCOガス)を放散させて液体として重水を回収する装置である。
また、重水濃縮装置100には、ハイドレート形成物質を微細な気泡として水中に導入するため、マイクロバブル発生装置50が配備されている。ガス状のハイドレート形成物質を微細気泡として導入することにより、気液接触効率を著しく向上させ得るので、含有量の少ない重水のハイドレート化において有利に作用する。
以上の構成において、ハイドレート製造装置10に、水とともにマイクロバブル発生装置50で微細気泡としたハイドレート形成物質を導入し、所定の温度−圧力条件で接触させて重水をハイドレート化する。気液接触効率を高めるために、必要に応じ攪拌機などによる攪拌を行うこともできる。
水に含まれる重水の比率は軽水に比べ圧倒的に少量であるため、ハイドレート化においては、軽水のガスハイドレートが生成しないように温度−圧力を厳密に調整し、十分な時間をかけて慎重におこなうことが好ましい。また、ガスハイドレートの生成の契機となる種結晶を生じさせるため、前記した過冷却または過圧条件への急激なシフト操作を、製造開始直後および/またはハイドレート製造途中の任意の時点で実施することができる。
重水によるハイドレート形成が十分に進んだ段階では、ハイドレート製造装置10内の液相には軽水だけが残るので、生成したガスハイドレートとともに排出し、静置容器20に移送する。静置容器20では、軽水とガスハイドレートとの混合物を静置状態におくことによって、比重の小さなガスハイドレートを液上部に浮上せしめ、集合させて高濃度のスラリーとして回収する。
回収したガスハイドレートは、脱水装置30において余分な水分を除去した後、ハイドレート分解装置40に導入する。以上のハイドレート製造装置10からハイドレート脱水装置30までの操作は、ハイドレート形成物質の種類に応じて、ハイドレート生成条件、あるいは、これに近似した温度−圧力条件(ハイドレートの分解が抑制される条件)で行われる。
次に、ハイドレート分解装置40に導入した重水のガスハイドレートは、温度および/または圧力を変化させることによって分解させる。分解によりハイドレート形成物質はガスとして放散し、液相として高濃度の重水が得られる。この濃縮重水は、濃縮重水貯蔵タンク70に移して貯蔵する。なお、ハイドレート分解装置40で放散されたガスは、ガス貯蔵タンク60に移送され、必要に応じてポンプなどの圧縮機61により圧縮されてハイドレート形成に循環再利用される。
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
本発明によって製造される高濃度の重水は、原子力産業をはじめ、医療健康、環境保全などの産業分野で利用できる。
二酸化炭素ハイドレートの生成条件を示す図面であり、1は重水、2は軽水の相平衡曲線である。 本発明の一実施形態に係る重水濃縮装置の概要を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る静置タンクの概要を示す図面であり、(A)は全体図、(B)は要部拡大図である。
符号の説明
10 ハイドレート製造装置
11 冷却装置
12 圧力制御弁
20 静置容器
21 静置タンク
22 屈曲部
23 ハイドレート回収部
25 受け部
27 壁
28 弁
30 ハイドレート脱水装置
40 ハイドレート分解装置
50 マイクロバイブル発生装置
60 ガス貯蔵タンク
61 圧縮機
70 濃縮重水貯蔵タンク
80 ガスハイドレート
81 軽水
100 重水濃縮装置

Claims (6)

  1. 軽水及び重水を含有する水と、ハイドレート形成物質とを、該ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より低温・高圧側であり、かつ該ハイドレート形成物質と軽水とのハイドレート生成平衡条件より高温・低圧側の条件で接触させて重水からハイドレートを生成させ、
    生成した重水によるハイドレートを軽水から分離することを特徴とする、重水濃縮方法。
  2. 請求項1において、重水によるハイドレート生成の定常条件を、前記ハイドレート形成物質と重水とのハイドレート生成平衡条件より僅かに低温側または僅かに高圧側に設定するとともに、
    ハイドレートの製造開始時点または製造途中の任意の時点で、温度および/もしくは圧力を急激に変化させて、前記定常条件より低温側の条件および/もしくは高圧側の条件に移行させた後、前記定常条件に戻す操作を行うことを特徴とする、重水濃縮方法。
  3. 請求項1または請求項2において、軽水から分離した前記ハイドレートを分解してハイドレート形成物質を放散させ、重水を回収することを特徴とする、重水濃縮方法。
  4. 軽水及び重水を含有する水とハイドレート形成物質とを接触させてハイドレートを生成させるハイドレート製造装置と、
    前記ハイドレート製造装置から取出した内容物を静置することにより軽水中のハイドレートを浮上させて分離回収する静置容器と、
    回収したハイドレートを分解するハイドレート分解装置と、
    を備えたことを特徴とする、重水濃縮装置。
  5. 請求項4において、前記ハイドレート製造装置に、圧力を調整する圧力制御手段を設けたことを特徴とする、重水濃縮装置。
  6. 請求項4または請求項5において、前記静置容器は、容器下部に比較して容器上部の断面積が小さく形成されていることを特徴とする、重水濃縮装置。
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