JP4267774B2 - 移動農機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば圃場の穀稈を連続的に刈取って脱穀するコンバインまたは耕耘トラクタまたは圃場管理車などの移動農機に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
左右走行クローラの一方を減速させ且つ他方を増速させて機体を旋回させる構造にあっては、一般に機体の旋回半径は車速が遅い程小さく(スピンターン)、車速が速い程大きく(緩旋回)なって操向ハンドルの同一操作量に対しても車速によって旋回半径が大きく変わるなど旋回性能が悪いという問題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明では、主変速レバーの操作によって左右走行クローラの駆動速度を無段階に変更する走行変速部材と、操向ハンドルの操作によって左右走行クローラの駆動速度の差を無段階に変更する操向部材とを備えた移動農機において、操向ハンドルの操向操作量を検出する操向角度センサと、主変速レバーの変速操作位置及び中立位置及び前後進切換動作を検出する主変速センサとを変速操向コントローラに入力接続させ、主変速レバーの操作角度を検出する主変速センサの入力に対し、操向角度センサに基づきコントローラから二次曲線形に変化させた制御出力を行って、操向部材を構成する油圧ポンプ及び油圧モータの特性を電気的に補正して遅い車速であっても敏感に油圧ポンプによる旋回制御を行うようにしたことを特徴とする移動農機を提供するものである。
【0006】
またさらに、機体の前進時と後進時で操向部材の操向方向を逆転させて、各車速によって旋回半径を変化させる旋回制御において、機体の前進時と後進時で操向ハンドルの操作が逆ハンドルとなるのを防止して、4輪自動車感覚での操舵を容易に行うものである。
【0007】
また、走行変速レバーの操作量によって決定される車速を操向ハンドルの操作量に応じて減速させて、車速によって旋回半径を変化させる旋回制御にあって、旋回時の動力を低減させると共に、操向ハンドルを最大操作量とするときの機体旋回をスムーズ且つ安定良好なものとさせるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの全体側面図、図2は同平面図であり、図中(1)は左右一対の走行クローラ(2)を装設するトラックフレーム、(3)は前記トラックフレーム(1)に架設する機台、(4)はフィードチェン(5)を左側に張架し扱胴(6)及び処理胴(7)を内蔵している脱穀部、(8)は刈刃(9)及び穀稈搬送機構(10)などを備える刈取部、(11)は刈取フレーム(12)を介して刈取部(8)を昇降させる油圧シリンダ、(13)は排藁チェン(14)終端を臨ませる排藁処理部、(15)は脱穀部(4)からの穀粒を揚穀筒(16)を介して搬入する穀物タンク、(17)は前記タンク(15)の穀粒を機外に搬出する排出オーガ、(18)は丸形操向ハンドル(19)及び運転席(20)などを備える運転台、(21)は運転席(20)下方に設けるエンジンであり、連続的に穀稈を刈取って脱穀するように構成している。
【0009】
また、図3に示す如く、前記走行クローラ(2)を駆動するミッションケース(22)は、1対の第1油圧ポンプ(23)及び第1油圧モータ(24)を備えて走行主変速用の油圧式無段変速機構を形成する走行変速部材(25)と、1対の第2油圧ポンプ(26)及び第2油圧モータ(27)を備えて旋回用の油圧式無段変速機構を形成する操向部材(28)とを備え、前記エンジン(21)の出力軸(21a)に第1及び第2油圧ポンプ(23)(26)の入力軸(29a)(29b)を伝達ベルト(30a)(30b)によって連結させ、前記各油圧ポンプ(23)(26)を駆動するように構成している。
【0010】
さらに、前記第1油圧モータ(24)の出力軸(31)に、副変速機構(32)及び差動機構(33)を介して左右走行クローラ(2)の各駆動輪(34)を連動連結させるもので、前記差動機構(33)は左右対称の1対の遊星ギヤ機構(35)(35)を有し、各遊星ギヤ機構(35)は1つのサンギヤ(36)と、該サンギヤ(36)の外周で噛合う3つのプラネタリギヤ(37)と、これらプラネタリギヤ(37)に噛合うリングギヤ(38)などで形成している。
【0011】
前記プラネタリギヤ(37)はサンギヤ軸(39)と同軸線上とのキャリヤ軸(40)のキャリヤ(41)にそれぞれ回転自在に軸支させ、左右のサンギヤ(36)(36)を挾んで左右のキャリヤ(41)を対向配置させると共に、前記リングギヤ(38)は各プラネタリギヤ(37)に噛み合う内歯(38a)を有してサンギヤ軸(39)とは同一軸芯上に配置させ、キャリヤ軸(40)に回転自在に軸支させ、キャリヤ軸(40)を延設して車軸を形成して駆動輪(34)を軸支させている。
【0012】
また、走行変速部材(25)は、第1油圧ポンプ(23)の回転斜板の角度変更調節により第1油圧モータ(24)の正逆回転と回転数の制御を行うもので、第1油圧モータ(24)の回転出力を出力軸(31)の伝達ギヤ(42)より各ギヤ(43)(44)(45)及び副変速機構(32)を介して、サンギヤ軸(39)に固定したセンタギヤ(46)に伝達してサンギヤ(36)を回転するように構成している。前記副変速機構(32)は、前記ギヤ(44)を有する副変速軸(47)と、前記ギヤ(45)を介してセンタギヤ(46)に噛合うギヤ(48)を有する駐車ブレーキ軸(49)とを備え、副変速軸(47)とブレーキ軸(49)間に各1対の低速用ギヤ(50)(51)・中速用ギヤ(52)(53)・高速用ギヤ(54)(48)を設けて、低中速スライダ(55)及び高速スライダ(56)のスライド操作によって副変速の低速・中速・高速の切換を行うように構成している。なお低速・中速間及び中速・高速間には中立を有する。また前記ブレーキ軸(49)に駐車ブレーキ(57)を設けると共に、刈取部(8)に回転力を伝達する刈取PTO軸(58)にギヤ(59)(60)及び一方向クラッチ(61)を介して副変速軸(47)を連結させ、刈取部(8)を車速同調速度で駆動している。
【0013】
上記のように、前記センタギヤ(46)を介しサンギヤ軸(39)に伝達された第1油圧モータ(24)からの駆動力を、左右の遊星ギヤ機構(35)を介して左右キャリヤ軸(40)に伝達させると共に、左右キャリヤ軸(40)に伝達された回転を左右の駆動輪(34)にそれぞれ伝え、左右走行クローラ(2)を駆動するように構成している。
【0014】
さらに、旋回用の油圧式無段変速機構で形成する操向部材(28)は、第2油圧ポンプ(26)の回転斜板の角度変更調節により第2油圧モータ(27)の正逆回転と回転数の制御を行うもので、操向出力ブレーキ(62)を有するブレーキ軸(63)と、操向出力クラッチ(64)を有するクラッチ軸(65)と、前記の左右リングギヤ(38)の外歯(38b)に常時噛合させる左右入力ギヤ(66)(67)を設け、第2油圧モータ(27)の出力軸(68)に前記ブレーキ軸(63)及び操向出力クラッチ(64)を介してクラッチ軸(65)を連結させ、クラッチ軸(65)に正転ギヤ(69)を介して右入力ギヤ(67)を連結させ、またクラッチ軸(65)に正転ギヤ(69)及び逆転ギヤ(70)を介して左入力ギヤ(66)を連結させている。そして、副変速スライダ(55)(56)の中立によって前記ブレーキ(62)を入にしかつクラッチ(64)を切にする一方、前記中立以外の副変速出力時にブレーキ(62)を切にしかつクラッチ(64)を入にし、右側のリングギヤ(38)の外歯(38b)に正転ギヤ(69)を介してモータ(27)回転力を伝え、また左側のリングギヤ(38)の外歯(38b)に正転ギヤ(69)及び逆転ギヤ(70)を介してモータ(27)回転を伝え、第2油圧モータ(27)を正転(逆転)時、左右同一回転数で、左リングギヤ(38)を逆転(正転)させ、かつ右リングギヤ(38)を正転(逆転)とさせるように構成している。
【0015】
而して、旋回用の第2油圧モータ(27)を停止させて左右リングギヤ(38)を静止固定させた状態で、走行用の第1油圧モータ(24)を駆動すると、第1油圧モータ(24)からの回転出力はセンタギヤ(46)から左右のサンギヤ(36)に同一回転数で伝達され、左右遊星ギヤ機構(35)のプラネタリギヤ(37)・キャリヤ(41)を介して左右の走行クローラ(2)が左右同一回転方向で同一回転数によって駆動され、機体の前後方向直進走行が行われる。一方、走行用の第1油圧モータ(24)を停止させて左右のサンギヤ(36)を静止固定させた状態で、旋回用の第2油圧モータ(27)を正逆回転駆動すると、左側の遊星ギヤ機構(35)が正或いは逆回転、また右側の遊星ギヤ機構(35)が逆或いは正回転し、左右走行クローラ(2)を逆方向に駆動し、機体を左或いは右に旋回させる。また、走行用の第1油圧モータ(24)を駆動させながら、旋回用の第2油圧モータ(27)を駆動することにより、機体が左右に旋回して進路が修正されるもので、機体の旋回半径は第2油圧モータ(27)の出力回転数によって決定される。
【0016】
さらに、図2、図4に示す如く、前記運転台(18)の前部上面にステアリングコラム(71)を立設固定させ、ステアリングコラム(71)上面上方側に操向ハンドル(19)を縦軸回りに回転自在に取付けると共に、運転台(18)左側にサイドコラム(72)を設け、サイドコラム(72)下方にミッション(22)を配設させ、主変速レバー(73)、副変速レバー(74)、刈取クラッチレバー(75)、脱穀クラッチレバー(76)を前記サイドコラム(72)に取付ける。
【0017】
また、前記操向ハンドル(19)に連結させるハンドル軸(77)をステアリングコラム(71)上部に回転自在に軸支させると共に、ステアリングコラム(71)上部に操向入力軸(78)上端部を回転自在に軸支させ、前記ハンドル軸(77)のギヤ(79)と操向入力軸(78)のセクタギヤ(80)を噛合させて各軸(77)(78)を連結させる。
【0018】
さらに、前記ギヤ(79)は、270度の外周範囲に複数の歯(81)を形成し、90度の外周範囲を円弧(82)に形成し、操向ハンドル(19)の全回転角度を270度とし、左操向回転または右操向回転の角度を135度に設定し、操向ハンドル(19)回転操作を片手で作業者が容易に行えるように形成する。また、前記セクタギヤ(80)は、130度の外周範囲に複数の歯(83)を形成し、230度の外周範囲を円弧カム(84)に形成し、前記ギヤ(79)の歯(81)とセクタギヤ(80)の歯(83)を噛合せ、各ギヤ(79)(80)の最大正逆転時、前記円弧(82)両端のストッパ(85)と前記円弧カム(84)両端のストッパ(86)を当接させ、操向ハンドル(19)の回転を規制する。
【0019】
また、前記セクタギヤ(80)の円弧カム(84)中央に直進ノッチ(87)を形成すると共に、前記ステアリングコラム(71)上面壁にデテント軸(88)を回転自在に軸支させ、デテント軸(88)下端部にデテントアーム(89)を固定させ、デテントアーム(89)にローラ軸(90)を介してデテントローラ(91)を回転自在に軸支させ、前記円弧カム(84)にデテントローラ(91)を当接させ、直進ノッチ(87)に係脱自在にデテントローラ(91)を係合させ、操向ハンドル(19)を直進位置に支持させる。
【0020】
さらに、前記操向入力軸(78)に操向出力アーム(92)の一端を固定させ、操向ハンドル(19)を直進位置に戻す左右一対の直進バネ(93)(93)と、前記バネ(93)に抗して操向ハンドル(19)の回転速度を遅くする戻り抵抗アブソーバ(94)を、前記出力アーム(92)に連結させ、操向ハンドル(19)を左右に回転させる手動操作を行ったとき、ハンドル(19)から作業者が手を離すことにより、ハンドル(19)を緩やかに直進位置に自動的に戻し、作業者によるハンドル(19)直進戻し操作を省くと共に、スライドポテンショメータ型操向角度センサ(95)を前記出力アーム(92)に連結させ、操向ハンドル(19)の操向操作量を操向角度センサ(95)によって検出させる。
【0021】
また、図5に示す如く、前記主変速レバー(73)の変速操作位置及び中立位置及び前後進切換動作を検出するポテンショメータ型主変速センサ(96)と、前記副変速レバー(74)の変速操作位置及び中立位置を検出するポテンショメータ型副変速センサ(97)と、運転席(20)の作業者が切換えるステアリングコラム(71)上面の撮形手元操作部材(98)の操作によって操向ハンドル(19)の切れ角増大に対する車速の減速比を変更させるボリューム形旋回フィーリング設定器(99)と、前記操向角度センサ(95)を、マイクロコンピュータで形成する変速操向コントローラ(100)に入力接続させる。また、前記直進ノッチ(87)にデテントローラ(91)が係入する直進状態をデテントアーム(89)を介して検出するマイクロスイッチ型直進センサ(101)とを前記コントローラ(100)に入力接続させる。
【0022】
さらに、図3、図5に示す如く、主変速レバー(73)手動操作によって切換える電動変速モータ(103)を設け、前記主変速レバー(73)を操作して変速モータ(103)を作動させて第1油圧ポンプ(23)の斜板角度を変更させ、第1油圧モータ(24)の出力軸(31)の回転数を無段階に変化させたり、逆転させる前後進切換動作を行わせ、主変速レバー(73)の操作量に比例させて第1油圧モータ(24)の回転数を変更させると共に、前記操向ハンドル(19)手動操作によって切換える電動操向モータ(104)と、操向ハンドル(19)の直進操作並びに副変速機構(32)中立切換によって作動させる直進バルブ(105)と、該バルブ(105)に接続させる操向クラッチシリンダ(106)を設け、前記操向ハンドル(19)を操作して操向モータ(104)を作動させて第2油圧ポンプ(26)の斜板角度を変更させ、第2油圧モータ(27)の出力回転数を無段階に変化させたり、逆転させる左右操向動作を行わせ、走行方向を左右に変更して圃場枕地で方向転換したり進路を修正するもので、操向ハンドル(19)の操作量に比例させて操向モータ(27)の回転数を変更させると共に、前記操向ハンドル(19)の直進操作並びに副変速機構(32)の中立操作によって直進バルブ(105)が自動的に切換わり、操向クラッチシリンダ(106)を作動させて操向出力クラッチ(62)を切にして第2油圧モータ(27)の出力を中止し、操向駆動を中止させるように構成している。
【0023】
また、前記変速モータ(103)を正転または逆転させる増速及び減速回路(107)(108)を前記コントローラ(100)に接続させ、主変速レバー(73)操作量(操作角度)に対して変速モータ(103)による第1油圧ポンプ(23)の斜板角を略正比例させて変化させ、主変速レバー(73)の傾き操作に応じた車速を得ると共に、前記操向モータ(104)を正転または逆転させる左右旋回回路(109)(110)を前記コントローラ(100)に接続させ、操向ハンドル(19)の操向操作量(左右回転角度)に対して操向モータ(104)による第2油圧ポンプ(26)の斜板を略正比例させて変化させ、また図6の旋回出力線図に示す如く、主変速レバー(73)の前進操作時と後進操作時とでは、操向ハンドル(19)の左右回転に対して左右旋回出力を逆にし、前進時と後進時とで逆ハンドルになるのを防ぎ、4輪自動車と同じ操向動作を行わせて前後進させる。また、主変速レバー(73)が中立のときは、第2油圧ポンプ(26)の斜板角を零に保ち、第2油圧モータ(27)の出力を停止維持し、主変速中立状態下でのハンドル(19)操作による旋回動作を阻止すると共に、操向ハンドル(19)切れ角に応じて大きくなる第2油圧ポンプ(26)の斜板角の絶対値を主変速レバー(73)操作角度の絶対値と比例するように制御し、操向ハンドル(19)切れ角が一定のときに車速を変化させても旋回半径を一定に保ち、四輪自動車と同じ操向動作で旋回させる。また、直進バルブ(105)を切換えて操向クラッチシリンダ(106)を作動させる直進回路(111)を前記コントローラ(100)に接続させ、副変速中立またはハンドル(19)直進によって操向出力を自動的に停止させると共に、第1油圧モータ(24)の作動油圧を検出させる変速油圧センサ(112)と、第2油圧モータ(27)の作動油圧を検出させる操向油圧センサ(113)を設け、前記各油圧モータ(24)(27)による走行クローラ(2)駆動負荷を各油圧センサ(112)(113)によって検出して前記コントローラ(100)に入力させ、前記条件センサ(102)並びに各油圧センサ(112)(113)の検出結果に基づき、走行路面状況(乾田または湿田)を自動的に判断させる。
【0024】
さらに、左右走行クローラ(2)の駆動速度(回転数)をそれぞれ検出する走行クローラ速度センサ(114)(115)と、操向ハンドル(19)の一定切り角毎の左右走行クローラ(2)の速度比(C)を設定する旋回設定器(116)とをコントローラ(100)に入力させ、操向ハンドル(19)を一定切り角とする旋回動作時には、車速(中心速)に関係なく左右走行クローラ(2)の速度比を設定速度比(C)に維持させる制御を操向モータ(104)で行うように構成している。
【0025】
また、図7の車速出力線図に示す如く、操向ハンドル(19)の切れ角の増大に伴い、主変速レバー(73)変速位置で決定される車速を減速させるもので、主変速レバー(73)を一定位置に保ち乍らハンドル(19)切れ角に比例させて減速させ、ハンドル(19)を直進に戻すだけでレバー(73)速度に自動的に戻ると共に、ハンドル(19)最大切り角でスピンターン速度に減速され、またハンドル(19)の直進を中心とする不感帯(約15度の回転角度)でレバー(73)速度を保たせ、収穫作業中に未刈り穀稈列に沿わせる条合せ(進路修正)のための操向操作を行っても、走行速度が減速されたり増速されて収穫作業途中に走行速度が不均一に変化するのを防ぎ、作業者の運転感覚とコンバインの走行動作との間にずれが生じることなく適正な操向操作を行わせると共に、手元操作部材(98)を用いた作業者の手動切換により、鋭敏な旋回、通常間旋回、滑らかな旋回となるように減速比を変化させる制御を前記部材(98)の手動によって行わせ、作業内容、圃場条件、作物状況などに適応させた旋回性能を得る。
【0026】
さらに、図8の旋回出力線図に示す如く、前記主変速レバー(73)の操作角度を検出する主変速センサ(96)入力に対し、操向角度センサ(95)に基づきコントローラ(100)から出力される操向モータ(104)制御出力を二次曲線形に変化させ、容積効率が低い第2油圧ポンプ(26)の斜板の小さいときに車速が遅くても操向ハンドル(19)を少し切るだけで斜板を大きく変化させ、第2油圧ポンプ(26)及び油圧モータ(27)の特性を電気的に補正して遅い車速であっても敏感に操向モータ(104)により第2油圧ポンプ(26)を旋回制御し、主変速レバー(73)の変速全域で操向ハンドル(19)の切れ角に対して走行クローラ(2)の旋回半径を略同一に保つもので、主変速レバー(73)が高速のときよりも低速のときの操向ハンドル(19)操作量に対する第2油圧ポンプ(26)制御量の割合を大きくし、第2油圧ポンプ(26)出力が低効率になる低速域で車速が遅いときであっても操向ハンドル(19)の少量操作によって適正な旋回動作を行わせ、操向ハンドル(19)の操作量と走行クローラ(2)の旋回半径を一致させる操向操作性及び操向機能の向上を図ると共に、主変速レバー(73)の中立を主変速センサ(96)によって検出して第2油圧ポンプ(26)を中立に維持させ、停止時の走行クローラ(2)の旋回動作を阻止し乍ら低速域の旋回性能を向上させ、操向ハンドル(19)の操作性向上並びに運転操作の簡略化などを図る。
【0027】
また、図9は機体の左右旋回時における操向ハンドル(19)の切れ角と左右走行クローラ(2)の速度の関係を示すもので、ハンドル(19)の切れ角が大となる程左右走行クローラ(2)の速度差は大となると共に、左右走行クローラ(2)の平均速度となる機体中心速度も副変速レバー(74)の走行速度(高速・標準・低速)状態に応じて減速される。直進位置の操向ハンドル(19)を左方向(右方向)に約15度回転させる刈取り進路修正範囲では、変速出力が直進と略同一位置に維持されると共に、第2油圧ポンプ(26)によって第2油圧モータ(27)を正転(逆転)させる操向出力によって左方向(右方向)に旋回させ、未刈り穀稈(作物)列の湾曲に合せる進路修正を行う。このとき、旋回内側の走行クローラ(2)の減速量と、旋回外側の走行クローラ(2)の増速量が略等しくなり、機体中心速度が直進と略同一速度に保たれる。また、操向ハンドル(19)を直進位置から15度以上回転させると、変速出力が左旋回及び右旋回のいずれでも減速変化し、第1油圧ポンプ(23)及びモータ(24)の走行変速出力を減速させ、左右走行クローラ(2)(2)を同一方向に回転駆動させて前進(または後進)させ、左右走行クローラ(2)(2)の走行速度差により左方向(右方向)に機体を旋回する動作を行わせ、未刈り穀稈(作物)列から外れたときに元の列に戻したり隣の列に移動させる進路修正を行う。さらに、操向ハンドル(19)を約116度回転させると、旋回出力が最高出力維持され、135度の切角範囲で機体中心速度が直進時の約4分の1に減速され、旋回内側の走行クローラ(2)が逆転駆動され、左右走行クローラ(2)の間の旋回中心回りに機体が旋回するスピンターン動作が行われ、左右走行クローラ(2)の左右幅だけ旋回方向にずらせて機体を180度方向転換させるもので、ハンドル切角0度からハンドル切れ角135度の範囲で操向ハンドル(19)を回転させて左または右方向の旋回操作を行い、直進位置を中心とした左右15度のハンドル(19)回転範囲で未刈り穀稈(作物)列に沿って移動する条合せ進路修正を、直進時の走行速度を維持し乍ら行うと共に、左右116度乃至135度のハンドル(19)回転により、旋回部材(28)を最高出力維持し乍ら、圃場枕地で機体を方向転換させて次作業工程に移動させるスピンターン動作を、直進時の約4分の1の走行速度(減速率25パーセント)に自動的に減速して行う。
【0028】
さらに、副変速を標準(秒速1.5メートル)速度に保ち、操向ハンドル(19)を90度回転させたとき、主変速レバー(68)操作により主変速出力を高速及び3分の2及び3分の1に変更しても、旋回内側のクローラ(2)は停止したブレーキターン状態を維持させて機体の旋回半径が略一定に保たれた状態で、旋回速度(機体中心速度)だけを変化させる。また、直進位置を基準として操向ハンドル(19)の約15度の操向操作範囲で第1油圧ポンプ(23)及び第1油圧モータ(24)を直進状態に維持させ、農作業中に作物列または畦などに機体を沿わせる操向操作を行っても走行速度が不均一に変化するのを防止し、略同一走行速度を保ち乍ら農作業中の進路修正を行え、作業者の運転感覚と機体の走行動作とを略一致させて適正な操向操作を行える。
【0029】
また、図10のフローチャート、図11の車速出力線図に示す如く、操向ハンドル(19)による旋回動作時にあっては、主変速レバー(68)操作により車速(中心速)を高速(3/3)・中速(2/3)・低速(1/3)に変更しても、旋回外側のクローラ(2)の駆動速度(回転数)をV1、旋回内側のクローラ(2)の駆動速度(回転数)をV2を入力するとき、操向ハンドル(19)の切れ角が一定であればV1/V2=C±α(略一定)(C=定数α=許容範囲(微小))制御を前記操向モータ(104)によって行って、車速の変化に関係なく旋回半径を一定に維持して、4輪自動車と同じ操舵感覚で機体を旋回させる。
【0030】
またこの場合車速が低速となる程V1/V2の値をC+α(略一定の最大限界値)に近づけるように大きくし、最低速時にはV1/V2を最大値とさせるように制御して、車速が遅い状態で緩旋回する第2油圧ポンプ(26)の斜板の小さい容積効率の低い状態での使用のとき、V1/V2の値を微小大きく変化させるだけで、敏感に第2油圧ポンプ(26)を制御して、車速の微速時で第2油圧ポンプ(26)の出力が低効率の緩旋回時でも一定の旋回半径を正確に保った旋回を行わせて旋回性能を向上させる。
【0031】
なお、同一ハンドル角度でV1/V2=C±α制御を行う場合、ブレーキターン(旋回内側のクローラ(2)停止)を起生するときのハンドル角度は高速A・中速B・低速Cとするとき理論上はA>B>Cの関係となって、低速となる程操向ハンドル(19)操作によってブレーキターン動作が速く行われる。
【0032】
以上のように、主変速レバー(73)の操作によって左右走行クローラ(2)の駆動速度を無段階に変更する走行変速部材(25)と、操向ハンドル(19)の操作によって左右走行クローラ(2)の駆動速度の差を無段階に変更する操向部材(28)とを備えた移動農機において、操向ハンドル(19)の操作量一定のとき、車速に関係なく左右走行クローラ(2)間の速度比(V1/V2)を略一定(C±α)に維持させることによって、車速に関係なく常に旋回半径を略一定に維持させて、4輪自動車の運転感覚でこの移動農機の操舵を容易に可能とさせて、操作性を向上させる。
【0033】
また、旋回車速の微速時に内外側クローラ(2)の速度(回転数)V1、V2の速度比V1/V2を一定値(C)より微小(α)大とさせることによって、車速を微速とさせた旋回で、操向部材(28)を構成する油圧ポンプ(26)の容積効率が低い操向ハンドル(19)の操作による油圧ポンプ(26)の制御割合の小さなときでもこの制御割合を大きくして、車速の微速時で油圧ポンプ(26)が低効率の緩旋回時でも一定の旋回半径を保った旋回を行って、旋回性能を向上させるものである。
【0034】
また図11に示す如く、車速によって旋回半径を変化させる制御も可能とさせるもので、車速に関係なく、操向ハンドル(19)に切り角に応じ前記操向モータ(104)を駆動して、操向部材(28)の旋回用トラニオンアームの操作角度を略同一とさせて、車速(中心速)が高速(D)・中速(E)・低速(F)時における左右走行クローラの速度差(回転数差)(D1)(E1)(F1)を略同一(D1≒E1≒F1)とさせて、車速の低速(F)時には旋回半径を極めて小さくし(左右クローラ速度1:−1でスピンターン)、車速が速くなる程大きな旋回半径とさせて、各車速に応じた最適の旋回半径でスムーズに機体を旋回させる。
【0035】
このように、主変速レバー(73)の操作によって左右走行クローラ(2)の駆動速度を無段階に変更する走行変速部材(25)と、操向ハンドル(19)の操作によって左右走行クローラ(2)の駆動速度の差を無段階に変更する操向部材(28)とを備えた移動農機において、前記操向ハンドル(19)の操作量に応じて変化する操向部材(28)の操向量を車速に関係なく一定維持させることによって、操向ハンドル(19)の同一操作量に対して各車速に応じた旋回半径で機体をスムーズに旋回させて、効率良好な旋回を行わせると共に、微速時などでの旋回性能を向上させるものである。
【0036】
また、機体の前進時と後進時で操向部材(28)の操向方向を前実施例同様逆転させるもので、各車速(D)(E)(F)によって旋回半径を変化させる旋回制御においても、機体の前進時と後進時で操向ハンドル(19)の操作が逆ハンドルとなるのを防止して4輪自動車感覚での操舵を容易に行うことができる。
【0037】
さらに前実施例同様、主変速レバー(37)の操作量によって決定される車速(D)(E)(F)を操向ハンドル(19)の操作量に応じて減速させるもので、車速によって旋回半径を変化させる旋回制御にあって、旋回時の動力を低減させると共に、操向ハンドル(19)を最大操作量とするときの機体旋回をスムーズ且つ安定良好なものとさせる。
【0038】
【発明の効果】
以上実施から明らかなように本発明は、主変速レバーの操作によって左右走行クローラの駆動速度を無段階に変更する走行変速部材と、操向ハンドルの操作によって左右走行クローラの駆動速度の差を無段階に変更する操向部材とを備えた移動農機において、操向ハンドルの操向操作量を検出する操向角度センサと、主変速レバーの変速操作位置及び中立位置及び前後進切換動作を検出する主変速センサとを変速操向コントローラに入力接続させ、主変速レバーの操作角度を検出する主変速センサの入力に対し、操向角度センサに基づきコントローラから二次曲線形に変化させた制御出力を行って、操向部材を構成する油圧ポンプ及び油圧モータの特性を電気的に補正して遅い車速であっても敏感に油圧ポンプによる旋回制御を行うようにしている。
したがって、主変速レバーが高速のときよりも低速のときの操向ハンドル操作量に対する油圧ポンプの制御量の割合を大きくし、油圧ポンプの出力が低効率になる低速域で車速が遅いときであっても操向ハンドルの少量操作によって適正な旋回動作を行わせ、操向ハンドルの操作量と走行クローラの旋回半径を一致させる操向操作性及び操向機能の向上を図ると共に、主変速レバーの中立を主変速センサによって検出して油圧ポンプを中立に維持させ、停止時の走行クローラの旋回動作を阻止し乍ら低速域の旋回性能を向上させることができる。
【0041】
またさらに、機体の前進時と後進時で操向部材(28)の操向方向を逆転させるものであるから、各車速(D)(E)(F)によって旋回半径を変化させる旋回制御において、機体の前進時と後進時で操向ハンドル(19)の操作が逆ハンドルとなるのを防止して、4輪自動車感覚での操舵を容易に行うことができるものである。
【0042】
また、走行変速レバー(37)の操作量によって決定される車速(D)(E)(F)を操向ハンドル(19)の操作量に応じて減速させるもので、各車速(D)(E)(F)によって旋回半径を変化させる旋回制御にあって、旋回時の動力を低減させると共に、操向ハンドル(19)を最大操作量とするときの機体旋回をスムーズ且つ安定良好なものとさせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体側面図。
【図2】コンバインの全体平面図。
【図3】ミッション駆動系の説明図。
【図4】操向ハンドル部の平面説明図。
【図5】変速及び操向制御回路図。
【図6】操向ハンドルと旋回出力を示す線図。
【図7】操向ハンドルと変速出力を示す線図。
【図8】主変速レバーと旋回出力を示す線図。
【図9】主変速と操向ハンドル操作を示す線図。
【図10】フローチャート。
【図11】ハンドル角度と車速を示す線図。
【図12】ハンドル角度とクローラ速度を示す線図。
【符号の説明】
(2) 走行クローラ
(19) 操向ハンドル
(25) 走行変速部材
(28) 操向部材
(73) 主変速レバー(走行変速レバー)
(D)(E)(F) 車速
(V1/V2) 速度比
(C±α) 略一定
Claims (3)
- 主変速レバー(73)の操作によって左右走行クローラ( 2 )の駆動速度を無段階に変更する走行変速部材(25)と、操向ハンドル(19)の操作によって左右走行クローラ(2)の駆動速度の差を無段階に変更する操向部材(28)とを備えた移動農機において、
前記操向ハンドル (19) の操向操作量を検出する操向角度センサ (95) と、前記主変速レバー (73) の変速操作位置及び中立位置及び前後進切換動作を検出する主変速センサ (96) とを変速操向コントローラ (100) に入力接続させ、
前記主変速レバー (73) の操作角度を検出する主変速センサ (96) の入力に対し、操向角度センサ (95) に基づきコントローラ (100) から二次曲線形に変化させた制御出力を行って、前記操向部材 (28) を構成する油圧ポンプ (26) 及び油圧モータ (27) の特性を電気的に補正して遅い車速であっても敏感に油圧ポンプ (26) による旋回制御を行うようにしたことを特徴とする移動農機。 - 機体の前進時と後進時で操向部材 (28) の操向方向を逆転させたことを特徴とする請求項1記載の移動農機。
- 主変速レバー (73) の操作量によって決定される車速 (D 、 E 、 F) を操向ハンドル (19) の操作量に応じて減速させたことを特徴とする請求項1又は2記載の移動農機。
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