JP4266289B2 - ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法、ホメオトロピック配向液晶フィルムおよび光学フィルム - Google Patents

ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法、ホメオトロピック配向液晶フィルムおよび光学フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルム、さらにはホメオトロピック配向液晶フィルムから剥離したホメオトロピック配向液晶層を透光性フィルムと貼りあわせた光学フィルムに関する。さらには当該光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置に関する。当該光学フィルムは単独でまたは他のフィルムと組み合わせて、位相差フィルム、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとして使用できる。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物のホメオトロピック配向は、液晶相の分子長軸が平均して、薄膜(液晶相)を形成する基板に対して実質的に垂直である場合に生じる。自発的にホメオトロピック配向する物質は非常に僅かしかなく、従って、かかる配向を生じさせるためには、一般的に垂直配向剤が用いられる。垂直配向剤によりホメオトロピック配向させることができる液晶化合物としては、たとえば、ネマチック液晶化合物が知られている。かかる液晶化合物の配向技術にかかわる概説は、例えば、化学総説44(表面の改質、日本化学会編,156〜163頁)に記載されている。
【0003】
前記液晶化合物をホメオトロピック配向させうる垂直配向剤としては各種の有機系または無機系配向剤が知られているが、慣用されている配向剤の多くはガラス基板上で有効に作用するようにデザインされている。
【0004】
このような慣用の有機配向剤の例には、レシチン、シラン系界面活性剤、n-オクタデシルトリエトキシシラン、チタネート系界面活性剤、ピリジニウム塩系高分子界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライドまたはクロム錯体があげられる。これら有機系配向剤は、活性成分が非常に少量(代表的には1%よりも少ない量)となるように適当な揮発性溶剤に溶解され、次いで例えばスピンコーティングまたはその他周知の塗工方法によって基板上に塗工された後、揮発性溶剤を蒸発させることにより、ガラス基板上に有機配向剤の薄膜として形成される。これら有機系配向剤は、極性のガラス表面に引き付けられると考えられる極性末端基とガラス表面に対して垂直に配列する無極性の長鎖状アルキル鎖を有することを特徴とするものであり、このような表面上において液晶化合物にホメオトロピック配向を生じさせる。
【0005】
また無機系配向剤としては、例えば、ガラス基板上にSiOxまたはIn23/SnO2を垂直角度で蒸着させたものが知られており、液晶化合物にホメオトロピック配向を生じさせる。その他、アルキル側鎖付ポリイミド膜も液晶ディスプレイなどのホメオトロピック配向膜として用いられている。
【0006】
しかしながら、前記慣用の配向剤は、いずれもガラス基板上においてのみ液晶化合物にホメオトロピック配向を与えるものであり、プラスチックフィルムやプラスチックシート等のポリマー物質からなる基板上での配向にはあまり有効に作用するものではない。ポリマー物質からなる基板の表面は前記慣用されている配向剤の極性末端基に対する親和性に乏しいものと推測され、それゆえ、一般的には、ホメオトロピック配向を全然示さないか、またはほんの僅か配向を示すに留まる。また、アルキル側鎖付きポリイミド膜の形成には高温での熱処理が必要であるが、ポリイミド配向膜を焼成するに耐えることができ、光学用途として使用できる透明プラスチックフィルムはほんの僅かである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し本出願人は、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を含有する側鎖型液晶ポリマーが、垂直配向膜を使用することなく基板上でホメオトロピック配向させることができ、これによりホメオトロピック配向液晶フィルムが製造できることを見出している(特願2000−370978)。
【0008】
これら側鎖型液晶ポリマーは垂直配向膜を使用することなくフィルム基板上でフィルムを形成しているため、液晶フィルムのTgが低く設計されている。これら液晶フィルムには液晶ディスプレイ等の用途として用いうる耐久性の向上が望まれている。耐久性については、光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物を、配向させ、固定化した後、紫外線等の光照射により解決できることを見出している(特願2001−136848)。
【0009】
また、前記ホメオトロピック配向液晶フィルムは、基板の材質とホメオトロピック配向液晶性組成物の組み合わせによっては、ホメオトロピック配向性の低いものが得られる場合があった。このようなホメオトロピック配向性は、ホメオトロピック配向液晶層を、アンカーコート層を介して基板上に形成することにより解決している(特願2001−175936)。
【0010】
また、ホメオトロピック配向液晶層とアンカーコート層の厚みを調整することにより、ホメオトロピック配向液晶層とアンカーコート層の密着性を制御できることも見出している。しかし、基板の材質、アンカーコートおよびホメオトロピック配向液晶性組成物の組み合わせによって、それぞれの密着性が異なるため、厚みにより密着性を制御することは難しかった。特に、ホメオトロピック配向液晶層のみを取り出す場合には、ホメオトロピック配向液晶層とアンカーコート層の界面で剥離することが要求され、逆にアンカーコート層と基板との界面では剥離しないことが要求される。ところが、これまではホメオトロピック配向液晶層のみを剥離する際に、アンカーコート層の一部または全部がホメオトロピック配向液晶層とともに剥離してしまう場合があった。
【0011】
本発明は、アンカーコート層を塗工した基板上で形成されたホメオトロピック配向液晶層を、粘着手段を介して透光性フィルムと貼り合わせる光学フィルムの製造方法において、アンカーコート層を塗工する面に易接着処理を施した基板を用いることにより、アンカーコート層の一部または全部が基板から剥離せず、ホメオトロピック配向液晶層のみを容易に剥離することが可能なホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法を提供することを目的とする。また、前記製造方法により得られたホメオトロピック配向液晶フィルムを提供することを目的とする。さらにはホメオトロピック配向液晶層を有する光学フィルム、当該光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す方法により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明では、易接着処理を施した基板面にアンカーコート層を塗工し、このアンカーコート層上にホメオトロピック配向液晶層を形成しうるホメオトロピック配向液晶性組成物を、液晶状態においてホメオトロピック配向させ、その配向状態を維持したまま固定化することを特徴とする、ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法を提供する。
【0014】
このときの易接着処理は基板面への表面改質処理または易接着層のコーティングであることが好ましい。また、表面改質処理をした後にさらに易接着処理をしてもよく、反対に、易接着処理をした後にさらに表面改質処理をしてもよい。
【0015】
本発明において用いられるホメオトロピック配向液晶性組成物としては、特に制限されないが、垂直配向膜の設けられていない基板上でホメオトロピック配向液晶層を形成しうるものが好ましく、ホメオトロピック配向液晶層を形成しうるホメオトロピック配向液晶性組成物は、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶製フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)からなる側鎖型液晶ポリマーを含有することが好ましい。
【0016】
また、本発明は前記製造方法により得られたホメオトロピック配向液晶フィルムのホメオトロピック配向液晶層に、粘着手段を用いて透光性フィルムを貼着し、ホメオトロピック配向液晶層をアンカーコート層から剥離することを特徴とする光学フィルムの製造方法に関する。このときの透光性フィルムは位相差フィルムであることが好ましい。
【0017】
さらに本発明は、前記製造方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルム、および光学フィルム、また、この光学フィルムを少なくとも1つ用いていることを特徴とする画像表示装置に関する。
【0018】
上記のように本発明では、アンカーコート層を塗工する面の片面または両面に易接着処理を施した基板を用いることによって、基板とアンカーコート層の密着性を高めることができる。これによって、ホメオトロピック配向液晶フィルムから、粘着手段を介して透光性フィルムを貼着したホメオトロピック配向液晶層とアンカーコート層の界面で剥離する際に、アンカーコート層の一部または全部が基板から剥がれ、剥離したホメオトロピック配向液晶層側にアンカーコート層の一部または全部が残ってしまうことを防ぐことができる。本発明によれば、アンカーコート層の一部または全部をホメオトロピック配向液晶層に付着させることなくホメオトロピック配向液晶層を取り出すことを可能にした。
【0019】
【発明の実施形態】
本発明においてホメオトロピック配向液晶層を形成しうるホメオトロピック配向液晶性組成物としては、例えば、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を含む側鎖型液晶ポリマーおよび、当該側鎖型液晶ポリマーに光重合性液晶化合物を配合したものがあげられる。
【0020】
前記側鎖型液晶ポリマーは、垂直配向膜を用いずに、液晶ポリマーのホメオトロピック配向を実現することができる。当該側鎖型液晶ポリマーは、通常の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)の他に、アルキル鎖等を有する非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を有しており、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)の作用により、垂直配向膜を用いなくても、例えば熱処理により液晶状態とし、ネマチック液晶相を発現させ、ホメオトロピック配向を示すようになったものと推察する。
【0021】
前記モノマーユニット(a)はネマチック液晶性を有する側鎖を有するものであり、例えば、一般式(a):
【化1】
Figure 0004266289
(ただし、R1は水素原子またはメチル基を、aは1〜6の正の整数を、X1は−CO2−基または−OCO−基を、R2はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フルオロ基または炭素数1〜6のアルキル基を、bおよびcは1または2の整数を示す。)で表されるモノマーユニットがあげられる。
【0022】
またモノマーユニット(b)は、直鎖上側鎖を有するものであり、例えば、一般式(b):
【化2】
Figure 0004266289
(ただし、R3は水素原子またはメチル基を、R4は炭素数1〜22のアルキル基、炭素数1〜22のフルオロアルキル基を示す。)または一般式(b1):
【化3】
Figure 0004266289
(ただし、dは1〜6の正の整数を、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるモノマーユニットがあげられる。
【0023】
また、モノマーユニット(a)とモノマーユニット(b)の割合は、特に制限されるものではなく、モノマーユニットの種類によっても異なるが、モノマーユニット(b)の割合が多くなると側鎖型液晶ポリマーが液晶モノドメイン配向性を示さなくなるため、(b)/{(a)+(b)}=0.01〜0.8(モル比)とするのが好ましい。特に0.1〜0.5とするのがより好ましい。
【0024】
また、ホメオトロピック配向液晶層を形成しうるホメオトロピック配向液晶組成物としては、前記液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と脂環族環状構造を有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(c)を含む側鎖型液晶ポリマーを用いることもできる。
【0025】
前記側鎖型液晶ポリマーによれば、垂直配向膜を用いずに、液晶ポリマーのホメオトロピック配向を実現することができる。当該側鎖型液晶ポリマーは、通常の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)の他に、脂環族環状構造を有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(c)を有しており、当該モノマーユニット(c)の作用により垂直配向膜を用いなくても、例えば熱処理により液晶状態としネマチック液晶層を発現させ、ホメオトロピック配向を示すようになったと推察する。
【0026】
前記モノマーユニット(c)はネマチック液晶性を示す側鎖を有するものであり、例えば、一般式(c):
【化4】
Figure 0004266289
(ただし、R6は水素原子またはメチル基を、hは1〜6の正の整数を、X2は−CO2−基または−OCO−基を、eとgは1または2の整数を、fは0〜2の整数を、R7はシアノ基、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で表されるモノマーユニットが挙げられる。
【0027】
また、モノマーユニット(a)とモノマーユニット(c)の割合は、特に制限されるものではなく、モノマーユニットの種類によっても異なるが、モノマーユニット(c)の割合が多くなると側鎖型液晶ポリマーが液晶モノドメイン配向性を示さなくなるため、(c)/{(a)+(c)}=0.01〜0.8(モル比)とするのが好ましい。特に0.1〜0.6とするのがより好ましい。
【0028】
ホメオトロピック配向液晶層を形成しうる液晶ポリマーは、前記例示のモノマーユニットを有するものに限られず、また前記例示のモノマーユニットは適宜に組み合わせることができる。
【0029】
前記側鎖型液晶ポリマーの重量平均分子量は、2千〜10万であるのが好ましい。重量平均分子量をかかる範囲に調整することにより液晶ポリマーとしての性能を発揮する。側鎖型液晶ポリマーの重量平均分子量が過少では配向層の成膜性に乏しくなる傾向があるため、重量平均分子量は2.5千以上とするのがより好ましい。一方、重量平均分子量が過多では液晶としての配向性に乏しくなって均一な配向状態を形成しにくくなる傾向があるため、重量平均分子量は5万以下とするのがより好ましい。
【0030】
なお、前記例示の側鎖型液晶ポリマーは、前記モノマーユニット(a)、モノマーユニット(b)、モノマーユニット(c)に対応するアクリル系モノマーまたはメタクリル系モノマーを共重合することにより調整できる。なお、モノマーユニット(a)、モノマーユニット(b)、モノマーユニット(c)に対応するモノマーは公知の方法により合成できる。共重合体の調整は、例えばラジカル重合方式、カチオン重合方式、アニオン重合方式などの通例のアクリル系モノマー等による重合方式に準じて行うことができる。なお、ラジカル重合方式を適用する場合、各種の重合開始剤を用いうるが、そのうちアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイルなどの分解温度が高くもなく、かつ低くもない中間的温度で分解するものが好ましく用いられる。
【0031】
前記側鎖型液晶ポリマーに光重合性液晶化合物を配合してホメオトロピック配向液晶性組成物とすることもできる。このとき、光重合性液晶化合物は、光重合性官能基として、例えば、アクリロイル基またはメタアクリロイル基等の不飽和二重結合を少なくとも1つ有する液晶性化合物であり、ネマチック液晶性のものが賞用される。かかる光重合性液晶化合物としては、前記モノマーユニット(a)となるアクリレートやメタクリレートを例示できる。光重合性液晶化合物として、耐久性を向上させるには、光重合性官能基を2つ以上有するものが好ましい。このような光重合性液晶化合物として、例えば、下記化5:
【化5】
Figure 0004266289
(式中、Rは水素原子またはメチル基を、AおよびDはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基または1,4シクロへキシレン基を、Xはそれぞれ独立して−COO−基、−OCO−基または−O−基を、Bは1,4フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、4,4‘−ビフェニレン基または4,4’−ビシクロヘキシレン基を、mおよびnはそれぞれ独立して2〜6の整数を示す。)で表される架橋型ネマチック性液晶モノマー等を例示できる。また、光重合性液晶化合物としては、前記化5における末端の「H2C=CR−CO2−」を、ビニルエーテル基またはエポキシ基に置換した化合物や、「−(CH2m−」および/または「−(CH2n−」を「−(CH23−C*H(CH3)−(CH22−」または「−(CH22−C*H(CH3)−(CH23−」に置換した化合物を例示できる。
【0032】
上記光重合性液晶化合物は、熱処理により液晶状態として、例えば、ネマチック液晶層を発現させて側鎖型液晶ポリマーとともにホメオトロピック配向させることができ、その後に光重合性液晶化合物を重合または架橋させることによりホメオトロピック配向液晶フィルムの耐久性を向上させることができる。
【0033】
ホメオトロピック配向液晶性組成物中の光重合性液晶化合物と側鎖型液晶ポリマーの比率は、特に制限されず、得られるホメオトロピック配向液晶フィルムの耐久性等を考慮して適宜に決定されるが、通常、光重合性液晶化合物:側鎖型液晶ポリマー(重量比)=0.1:1〜30:1程度が好ましく、特に0.5:1〜20:1が好ましく、さらには1:1〜10:1が好ましい。
【0034】
前記光重合性液晶化合物を配合したホメオトロピック配向液晶性組成物中には、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。光重合開始剤としては、例えば、チバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア(Irgacure)907、同184、同651、同369などを例示できる。光重合開始剤の添加量は、光重合液晶化合物の種類、液晶性組成物の配合比等を考慮して、液晶性組成物のホメオトロピック配向性を乱さない程度に加えられる。通常、光重合性液晶化合物100重量部に対して、0.5〜30重量部程度が好ましい。特に、3〜15重量部が好ましい。
【0035】
前記ホメオトロピック配向液晶性組成物を塗工する基板は、ポリマー物質、ガラス基板、金属等の各種材質のものを用いることができる。基板の厚さは、通常、10〜1000μm程度である。
【0036】
ポリマー物質を基板とする場合、液晶を配向させる温度および前記易接着処理により、フィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はなく、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーフィルムからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなども挙げられる。これらのなかでも水素結合性が高く、透光性フィルムとして用いることができるトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ノルボルネンポリオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。
【0037】
プラスチックフィルムとしては、特にゼオノア(商品名,日本ゼオン(株)社製)、ゼオネックス(商品名,日本ゼオン(株)社製)、アートン(商品名,JSR(株)社製)などのノルボルネン構造を有するポリマー物質からなるプラスチックフィルムが光学的にも優れた特性を有する。このようなポリマー物質(プラスチックフィルム)は光学異方性が非常に小さいため、プラスチックフィルム上に形成された前記ホメオトロピック配向液晶性組成物のホメオトロピック配向液晶層は、当該ホメオトロピック配向液晶層を別のプラスチックフィルムへ貼着することなく、そのままホメオトロピック配向位相差フィルムとして液晶ディスプレイの光学補償用途等の光学フィルムに用いることができる。
【0038】
透光性フィルムとしては、必要とする光学特性をもつフィルムであればこれに限られるものではないが、例えば、位相差フィルム、偏光板、およびコレステリック液晶フィルムが挙げられる。また、透光性フィルムとして、光学異方性のない、または小さいフィルムを用いたり、位相差機能を有する延伸フィルム等を用いたりすると、広視野角の位相差フィルムが得られ、これをSTN型液晶表示装置に適用することにより、液晶表示装置の表示特性、特に視野角特性を著しく向上させることができる。
【0039】
位相差フィルムとしては、ポリカーボネートやポリビニルアルコール、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレートやポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。また傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。
【0040】
直線偏光を楕円または、円偏光に変えたり、楕円または、円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差フィルムなどが用いられ、特に、直線偏光を楕円または、円偏光に変えたり、楕円または、円偏光を直線偏光に変える位相差フィルムとしては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0041】
偏光板の基本的な構成は、二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルムなどからなる偏光子の片側又は両側に、適宜の接着層、例えば、ビニルアルコール系ポリマー等からなる接着層を介して保護層となる透明保護フィルムを接着したものからなる。
【0042】
偏光子(偏光フィルム)としては、例えばポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコールなどの従来に準じた適宜なビニルアルコール系ポリマーよりなるフィルムにヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理や延伸処理や架橋処理等の適宜な処理を適宜な順序や方式で施してなり、自然光を入射させると直線偏光を透過する適宜なものを用いうる。就中、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。また、特に限定するものではないが、偏光子(偏光フィルム)としては、15〜30μm程度の厚みの偏光フィルムを用いることが好ましい。
【0043】
偏光子(偏光フィルム)の片側又は両側に設ける透明保護層となる保護フィルム素材としては、適宜な透明フィルムを用いうる。そのポリマーの例としてトリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂が一般的に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
偏光特性や耐久性などの点より、特に好ましく用いうる透明保護フィルムは、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。なお偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。
【0045】
保護層に用いられる透明保護フィルムは、本発明の目的を損なわない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理などを施したものであってもよい。
【0046】
ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばシリコン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。一方、反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止は隣接層との密着防止を目的とする。アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止などを目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。
【0047】
コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0048】
前記基板には、基板とアンカーコート層の密着性を高めるために易接着処理が施される。易接着処理としては、基板表面を放電、または光照射によって改質する表面改質処理と、基板表面に各種有機化合物を塗工する易接着層のコーティングが挙げられる。
【0049】
表面改質処理の手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、低気圧プラズマ処理、電子線照射、スパッタリング処理、スパッタエッチング処理、紫外線(UV)照射処理などの処理方法が挙げられる。なかでも、コロナ放電処理が特に好ましく用いられる。
【0050】
易接着層のコーティングとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂を基板に用いた場合の一般的な易接着層のコーティング方法としては、基板とアンカーコート層の密着力を向上できる各種の材料を使用できる。このとき、アンカーコート層との間に結合を作ることができる水酸基、カルボキシル基等の官能基を有する材料を好ましく用いることができ、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル系およびエポキシ系等の樹脂あるいはこれらの混合溶液を塗工する方法が挙げられる。
【0051】
また、基板の易滑性付与のために、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を塗工液に添加してもよい。なかでも、シリカがポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適である。
【0052】
上記塗工液の組成物には、その効果を消失しない限りにおいて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、有機フィラー及び潤滑剤等の種々の添加剤を混合してもよい。さらに、塗工液が水性である場合、その寄与効果を消失しない限りにおいて、性能向上のために、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂及びエマルジョン等を塗工液に添加してもよい。
【0053】
上記塗工液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および合金属有機化合物等、種々の化学物質が好ましく用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
【0054】
上記易接着層に用いられる有機化合物は、適宜に溶媒で希釈したものを基板上に塗工する。塗工方法としては、例えばロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法等の公知の方法を単独で、あるいは組み合わせて行うことができる。塗工後、溶媒を除去し、反応を促進する方法としては、通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などが利用される。易接着層の厚みは、材料によっても異なるが、0.005〜0.2μm程度が好ましく、0.01〜0.05μm程度がより好ましい。
【0055】
前記易接着処理のそれぞれの方法は、組み合わせて用いることができる。例えば、基板面に表面改質処理を施し、さらにその面に易接着層をコーティングする方法や、基板面の易接着層をコーティングした面に表面改質処理を施す方法が挙げられる。なかでも、基板面に表面改質処理、易接着層のコーティングの順で処理する方法が好ましく用いられる。
【0056】
アンカーコート層を形成するアンカーコート材料としては、金属アルコキシド、特に金属シリコンアルコキシドゾルが賞用される。金属アルコキシドは、通常アルコール系の溶液として用いられる。前記溶液は、基板に塗工された後、溶媒を除去し、加熱によりゾルゲル反応を促進させることで、基板上で透明ガラス質高分子膜を形成する。金属シリコンアルコキシドゾルからは金属シリコンアルコキシドゲル層が形成される。上記の金属アルコキシドゾル溶液を、基板上に塗工する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などを採用することができる。溶媒除去や反応を促進する方法としては、通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などが利用される。均一かつ柔軟性のある膜が必要であるため、アンカーコート層の厚みは、0.04〜2μm程度が好ましく、0.05〜0.2μm程度がより好ましい。
【0057】
前記ホメオトロピック配向液晶性組成物を、前記アンカーコート層を介して基板に塗工する際には、ホメオトロピック配向液晶性組成物を溶媒に溶解した溶液を用いる溶液塗工方法またはホメオトロピック配向液晶性組成物を溶融して溶融塗工する方法が挙げられるが、この中でも溶液塗工方法にて支持基板上にホメオトロピック配向液晶性組成物の溶液を塗工する方法が好ましい。
【0058】
前記溶液を調製する際に用いられる溶媒としては、側鎖型液晶ポリマー、光重合性液晶化合物や基板の種類により異なり一概には言えないが、通常、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、などのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、酢酸エチル、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素などを用いることができる。溶液の濃度は、用いる側鎖型液晶ポリマー液晶材料の溶解性や最終的に目的とする液晶性フィルムの膜厚に依存するため一概には言えないが、通常3〜50重量%、好ましくは7〜30重量%の範囲である。
【0059】
塗工された前記ホメオトロピック配向液晶性組成物からなるホメオトロピック配向液晶層の厚みは1〜10μm程度とすることが好ましい。なお、特にホメオトロピック配向液晶層の膜厚を精密に制御する必要がある場合には、基板に塗工する段階で膜厚がほぼ決まるため、溶液の濃度、塗工膜の膜厚などの制御は特に注意を払う必要がある。
【0060】
前記溶媒を用いて所望の濃度に調整したホメオトロピック配向液晶性組成物の溶液を、アンカーコートした基板上に塗工する方法としては、例えばロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などを採用することができる。塗工後、溶媒を除去し、基板上にホメオトロピック配向液晶性組成物層を形成させる。溶媒の除去条件は、特に限定されず、溶媒がおおむね除去でき、ホメオトロピック配向液晶性組成物層が流動したり、流れ落ちたりさえしなければ良い。通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用して溶媒を除去する。
【0061】
次いで、支持基板上に形成されたホメオトロピック配向液晶性組成物層を液晶状態とし、ホメオトロピック配向させる。例えば、ホメオトロピック配向液晶性組成物が液晶温度範囲になるように熱処理を行い、液晶状態においてホメオトロピック配向させる。熱処理方法としては、上記の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。熱処理温度は、使用するホメオトロピック配向液晶性組成物と支持基板の種類により異なるため一概には言えないが、通常60〜300℃、好ましくは70〜200℃の範囲において行う。また熱処理時間は、熱処理温度、および使用する側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物や基板の種類によって異なるため一概には言えないが、通常10秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分の範囲で選択される。10秒より短い場合、ホメオトロピック配向形成が十分に進行しない恐れがあり、2時間より長い場合、ホメオトロピック配向状態が保持されない可能性がある。
【0062】
熱処理終了後、冷却操作を行う。冷却操作としては、熱処理後のホメオトロピック配向液晶フィルムを、熱処理操作における加熱雰囲気中から、室温中に出すことによって行うことができる。また空冷、水冷などの強制冷却を行ってもよい。前記ホメオトロピック配向液晶層はホメオトロピック配向液晶性組成物のガラス転移温度以下に冷却することにより配向が固定化される。
【0063】
さらに、前記ホメオトロピック配向液晶性組成物が光重合成液晶化合物を含有する場合には、上記のように固定化されたホメオトロピック配向液晶層に対して光照射を行い、光重合性液晶化合物を重合または架橋させて光重合性液晶化合物を固定化して、耐久性を向上したホメオトロピック配向液晶フィルムを得る。光照射は、例えば、紫外線照射により行う。紫外線照射条件は、十分に反応を促進するために、不活性気体雰囲気中とすることが好ましい。通常、約80〜160mW/cm2の照度を有する高圧水銀紫外ランプが代表的に用いられる。メタハライドUVランプや白熱管などの別種ランプを使用することもできる。なお、紫外線照射時の液晶層表面温度が液晶温度範囲内になるように、コールドミラー、水冷その他の冷却処理あるいはライン速度を早くするなどして適宜に調整する必要がある。
【0064】
このようにして、ホメオトロピック配向液晶性組成物の薄膜が生成され、配向性を維持したまま固定化することにより、ホメオトロピック配向液晶フィルムが得られる。当該ホメオトロピック配向液晶層は同一の方向で配向された分子を有する。したがって、このホメオトロピック配向液晶層の配向ベクトルの凍結または安定化およびその異方性物性の保存が達成されることは周知であり、このような薄膜はそれらの光学的性質が確認され、各種の用途で使用される。前記ホメオトロピック配向液晶層は、一軸性の正の複屈折率を有する薄膜である。
【0065】
ホメオトロピック配向液晶層の配向性は、当該液晶層の光学位相差を垂直入射から傾けた角度で測定することによって量化することができる。ホメオトロピック配向液晶フィルムの場合、この位相差値は垂直入射について対称的である。光学位相差の測定には数種の方法を利用することができる。例えば、自動複屈折測定装置(オーク製)および偏光顕微鏡(オリンパス製)を利用することができる。また、このホメオトロピック配向液晶フィルムはクロスニコル偏光子間で黒色に見える。ホメオトロピック配向性はこのような方法で評価することができる。
【0066】
こうして得られたホメオトロピック配向液晶フィルムは、透光性フィルムあるいはホメオトロピック配向液晶層のどちらか一方または両方に粘着手段を用いて粘着層を形成し、ホメオトロピック配向液晶層と透光性フィルムを貼り合わせる。その後、ホメオトロピック配向液晶フィルムのアンカーコート層とホメオトロピック配向液晶層との界面において剥離し、透光性フィルム、粘着層およびホメオトロピック配向液晶層が積層した状態で光学フィルムとして用いる。このとき、透光性フィルム、粘着層およびホメオトロピック配向液晶層の各層は、1層または2層以上であってもよく、適宜積層することができる。また、前記のように、基板に光学異方性の非常に小さいプラスチックフィルムを用いる場合には、ホメオトロピック配向液晶層を剥離することなくそのまま用いてもよい。
【0067】
粘着層を形成する粘着手段には、必要とする光学特性に影響を及ぼさない限り、限定されることなく用いることができる。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。また、粘着手段の形態は特に制限されず、溶剤型、分散型、エマルション型等の各種接着剤を使用できる。特に本発明における光学フィルムでは、透明性、耐候性などの点で優れているアクリル系溶剤型粘着剤が好ましい。
【0068】
粘着層の形成は、適宜な方法で行うことができる。例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物または混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解または分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で前記液晶層上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれを前記液晶層上に移着する方式などが挙げられる。また、粘着層には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂やガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加される添加剤を含有していてもよい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0069】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を画面に垂直でなく、やや斜めの方向から画面を見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視角を広げるためのフィルムである。このような視角補償フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルムなどにディスコティック液晶を塗工したものや、位相差フィルムが用いられる。通常の位相差フィルムがその面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差フィルムは、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられる。
【0070】
ホメオトロピック配向液晶層を輝度向上フィルムとして用いる場合には、これに限定されるものではないが、例えば、少なくとも1つ以上の1/4波長板(位相差フィルム)、コレステリック液晶フィルムおよびホメオトロピック配向液晶層を積層させて用いる。このときのホメオトロピック配向液晶層は、主に輝度向上フィルムの視角特性を補償するために用いられる。
【0071】
輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光又は所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向フィルムを前述した偏光子と保護層とからなる偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上板に再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収されにくい偏光を供給して液晶画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光はほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性にもよっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収される様な偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上板に再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光を輝度向上フィルムは、透過させ、偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0072】
液晶表示装置としては、前記偏光板および他の光学フィルムを液晶セルの片側または両側に配置してなる透過型や反射型、あるいは透過・反射両用型等の従来に準じた適宜な構造を有するものとして形成することができる。したがって、液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであってよい。
【0073】
また、液晶セルの両側に偏光板や光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0074】
次いで、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
【0075】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性に伴う強い非線形性を示す。
【0076】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を用胃にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0077】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0078】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差フィルムを設けることができる。
【0079】
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0080】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差フィルムにより一般に楕円偏光となるが、特に位相差フィルムが1/4波長板でしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0081】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムで再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0082】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の一態様について説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。得られたホメオトロピック配向液晶フィルムについては、配向性、密着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
実施例1
易接着処理として表面に出力1.5kWでコロナ放電処理を施したポリエチレンテレフタレート基板上に、アンカーコート用のゾル溶液としてエチルシリケートのイソプロピルアルコール、ブタノール2%溶液(コルコート(株)社製、コルコートP)をバーコーティングにより塗工し、130℃で1分加熱、アンカーコート層として透明ガラス質高分子膜(膜厚約0.08μm)を形成した。
【0084】
【化6】
Figure 0004266289
次に、上記化6(式中の数字はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロック体で表示している。重量平均分子量5000)に示すホメオトロピック配向性側鎖型液晶ポリマー5重量部、ネマチック液晶層を示す光重合性液晶化合物(BASF社製,PaliocolorLC242)20重量部および光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア907)5重量%(対光重合性液晶化合物)をシクロヘキサノン75重量部に溶解した溶液を、基材上に設けた前記アンカーコート層上にバーコーティングにより塗工した。次いで80℃で2分間加熱し、その後室温まで一気に冷却することにより、前記液晶層をホメオトロピック配向させ、かつ配向性を維持したままガラス化し、ホメオトロピック配向液晶層(約2.5μm)を固定化した。さらに、固定化したホメオトロピック配向液晶層に紫外線を照射することによりホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。
【0085】
(ホメオトロピック配向性)
次いで、アクリル系粘着剤により形成された粘着剤層を介してホメオトロピック配向液晶層をガラス板に転写し、ホメオトロピック配向性を評価した。ホメオトロピック配向液晶層の配向は、当該ホメオトロピック配向液晶層の光学位相差を垂直入射から傾けた角度で測定することによって量化することができる。ホメオトロピック配向液晶フィルムの場合、この位相差値は垂直入射について対称的である。光学位相差の測定には自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)を利用した。測定光をサンプル表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから、ホメオトロピック配向を確認した。ホメオトロピック配向では、サンプル表面に対して垂直方向での位相差(正面位相差)がほぼゼロである。このサンプルに関しては、液晶層の遅相軸方向に斜めから位相差を測定したところ、測定光の入射角度の増加に伴い、位相差値が増加したことからホメオトロピック配向が得られていると判断できる。以上より、ホメオトロピック配向性が良好であることが確認できた。
【0086】
(密着性試験)
易接着処理基板とアンカーコート層の密着性を調べるために、碁盤目剥離試験を行った。この試験は、得られたホメオトロピック配向液晶フィルムに1mm角の切れ目を碁盤目状(10×10)に入れ、これにJIS Z 0237−1991にて測定したときの接着力が7N/25mmの接着テープを液晶表面に貼り付け、テープを引き剥がした時の状態を、光学的手法(フィルムを偏光板の間に挟み、色変化の違いにより位相差の値に違いが見られるのかを観察する方法)で観察、アンカーコート層が剥がれなかった部分の数(全数100)を記録し、これを密着度とした。このときの密着度は100であった。そのため、ホメオトロピック配向液晶層のみが取り出されていることが確認された。
【0087】
実施例2
実施例1において、ポリエチレンテレフタレート基板表面に易接着処理として出力2.0kWでコロナ放電処理を施したものを用いて、実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。その後、実施例1と同様にして評価した結果、ホメオトロピック配向性が良好であるとともに、密着度は100で、ホメオトロピック配向液晶層のみが取り出されていることが確認された。
【0088】
実施例3
実施例1において、易接着層がコーティングされた市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100:東洋紡績(株)社製)を基板として用いて、実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。その後、実施例1と同様にして評価した結果、ホメオトロピック配向性が良好であるとともに、密着度は100で、ホメオトロピック配向液晶層のみが取り出されていることが確認された。
【0089】
実施例4
実施例1において、易接着層がコーティングされた市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアホイルT600E:三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製)を用いて、実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。その後、実施例1と同様にして評価した結果、ホメオトロピック配向性が良好であるとともに、密着度は100で、ホメオトロピック配向液晶層のみが取り出されていることが確認された。
【0090】
実施例5
実施例1において、易接着層がコーティングされた市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアホイルT100E:三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製)を用いて、実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。その後、実施例1と同様にして評価した結果、ホメオトロピック配向性が良好であるとともに、密着度は100で、ホメオトロピック配向液晶層のみが取り出されていることが確認された。
【0091】
比較例1
実施例1において、表面に易接着処理の施されていない一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基板として用い、実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。その後、実施例1と同様にして評価した結果、ホメオトロピック配向性は良好であったが、密着度は20で、アンカーコート層がホメオトロピック配向液晶層とともに剥離していることが確認された。
【0092】
配向性と密着性の評価結果を次の表にまとめる。
【表1】
Figure 0004266289
【0093】
【発明の効果】
本発明では、実施例に示したように、易接着処理を施した基板を用いることで基板とアンカーコート層の密着力を高めている。これによって、ホメオトロピック配向液晶層に粘着手段を用いて透光性フィルムを貼着したホメオトロピック配向液晶フィルムから、ホメオトロピック配向液晶層とアンカーコート層との界面で剥離する際に、アンカーコート層の一部または全部がホメオトロピック配向液晶層とともに剥がれてしまうことなく、アンカーコート層とホメオトロピック配向液晶層の界面で剥離することを可能にした。

Claims (11)

  1. 易接着処理を施した基板面にホメオトロピック配向液晶層を表面に形成しうるアンカーコート層を塗工し、このアンカーコート層上にホメオトロピック配向液晶層を形成しうるホメオトロピック配向液晶性組成物を、液晶状態においてホメオトロピック配向させ、その配向状態を維持したまま固定化することを特徴とする、ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
  2. 易接着処理が基板面の表面改質処理であることを特徴とする、請求項1記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
  3. 易接着処理が基板面への易接着層のコーティングであることを特徴とする請求項1記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
  4. 易接着処理が基板面の表面改質処理を施した面への易接着層のコーティングであることを特徴とする請求項1記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
  5. 易接着処理が基板面の易接着層をコーティングした面への表面改質処理であることを特徴とする請求項1記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
  6. ホメオトロピック配向液晶層を形成しうるホメオトロピック配向液晶性組成物が、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)からなる側鎖型液晶ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルム。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られたホメオトロピック配向液晶フィルムのホメオトロピック配向液晶層に、粘着手段を用いて透光性フィルムを貼着し、このホメオトロピック配向液晶層をアンカーコート層から剥離することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  9. 請求項8記載の透光性フィルムが位相差フィルムであることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  10. 請求項8または9記載の製造方法により得られる光学フィルム
  11. 請求項7記載のホメオトロピック配向液晶フィルム、または請求項10記載の光学フィルムが、少なくとも1つ用いられていることを特徴とする画像表示装置。
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