この発明は、工業分野、医療分野などに用いられるX線発生制御方法およびその装置に係り、特に、複数の集束手段によって電子ビームを集束させる技術に関する。
X線発生装置では、電子銃を構成する陰極(電子源)から発生した電子ビームを加速させてターゲットに衝突させることでX線を発生させる。X線を発生させる際には、ターゲットに電子ビームを衝突させるまでに、光学の集束レンズと同様に集束コイル(集束手段)によって電子ビームを集束させる。
従来では陰極としてタングステンで形成されたフィラメントを用いていたが、近年では消耗や切断に強い6ホウ化ランタン(LaB6)や6ホウ化セリウム(CeB6)などで形成された単結晶あるいは焼結体のチップを用いている。これらのチップを用いることでフィラメントを用いたときよりも高輝度で、かつ高分解能化を実現することができる。
なお、上述した高分解能化を実現した場合には、高分解能のモードでは一般にX線量が減少してX線画像が暗くなる場合がある。そこで、実用上の理由によりX線画像が明るい中分解能のモードを兼ね備える必要がある。高分解能・中分解能間での選択を可能とするために、複数の集束コイルを備える。特に、2つの集束コイルを備えた場合、すなわち集束コイルを2段に設けた場合には、電子銃側の集束コイルを『第1集束コイル』とし、ターゲット側の集束コイルを『第2集束コイル』としたときに、第1集束コイルで電子ビームが集束した後に、第2集束コイルでターゲット上に集束し、微小スポットからX線が発生する。なお、このとき、第1集束コイルと第2集束コイルとの間に電子ビームが一旦結像する中間クロスオーバが形成される。これらの2段以上の集束コイルにより中間クロスオーバを形成して微小スポットを形成する手法は、高い縮小率が必要な走査電子顕微鏡(SEM)などで広く使われている手法である(例えば、非特許文献1参照)。
ところで、X線量を制御するのは、従来では陰極から発生した電子ビーム量(『エミッション電流』とも呼ばれる)を制御することで行われている。このエミッション電流を制御するには、以下のような手法で行われている。
すなわち、電子銃は、陰極(カソード),ウェネルト電極,陽極(アノード)から構成され、陰極からターゲットに向かう電子ビームの照射方向には、陰極と集束コイルとの間に、上述したウェネルト電極,陽極を順に配設している。陽極は、陰極から発生する電子ビームを引き出し、この陽極による引き出しで電子ビームはターゲットに向かって加速する。そして、ウェネルト電極は、陽極によって引き出される陰極からの電子ビーム量、すなわちエミッション電流を制御するもので、ウェネルト電極の電位によってエミッション電流を変えることができる。なお、集束コイルを2段以上に設けた場合においても、上述したような電子ビーム量の制御によってX線量を制御している。
実験物理学講座23 電子顕微鏡, 上田良二 編 共立出版(1982),P327-330
しかしながら、ウェネルト電極を操作してエミッション電流を制御することで、X線量を制御しても、所望の量のX線が得られない場合がある。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができるX線発生制御方法およびその装置を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために、発明者らは、以下のような知見を得た。すなわち、制御されるエミッション電流とX線量とをそれぞれ測定した場合、図13に示すような測定結果が得られたが、その結果からもエミッション電流とX線量との間には比例関係のような単純な相関関係がないことがわかる。なお、図13は、陰極として単結晶の6ホウ化ランタン(LaB6)を用いており、縦軸をX線量とし、横軸をエミッション電流とし、陰極に印加する管電圧を40kVから160kVまで20kVずつ変えたときのグラフである。より具体的に説明すると、管電圧を100kV以上にするとエミッション電流を多く設定するのにも関わらずX線量が低下する領域がみられる。
そこで、ウェネルト電極付近での電子ビーム量(すなわちエミッション電流)以外の要素でX線量を制御することに着目してみた。上述した集束コイルを2段に設けた場合には、集束コイルに流す電流、すなわち励起強度を離散的に変えることでレンズ系倍率を変えて電子ビームの縮小率やターゲットに到達する電子ビーム量などを制御する。また、X線量はエミッション電流よりもターゲットに到達する電子ビーム量(『ターゲット電流』とも呼ばれる)と深い相関関係があり、ターゲット電流に比例することがわかった。そこで、励起強度などに代表される集束コイル(集束手段)の操作量に着目してみて、この集束コイルの操作量に基づいてターゲットに到達する電子ビーム量であるターゲット電流やX線量を制御するという知見を得た。なお、これらエミッション電流やターゲット電流を特定しない一般的な電子ビーム量は、『管電流』とも呼ばれている。したがって、管電流は電子ビーム量と同義であって、管電流はエミッション電流やターゲット電流を包含していることに留意されたい。
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
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すなわち、請求項1に記載の発明は、複数の集束手段により電子ビームを集束させて、電子ビームのターゲットへの衝突によりX線を発生させることで、X線の発生を制御するX線発生制御方法であって、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程、(B)前記所定の条件において前記一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する工程を備え、前記(A)および(B)の工程により前記電子ビーム量を制御するとともにX線量を制御し、前記方法は、(C)前記ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を入力により決定する工程を備え、前記(A)の工程は、(A1)前記一方の集束手段の操作量、および前記(C)の工程で入力された電子ビーム量またはX線量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第1相関関係に基づく演算により、一方の集束手段の操作量を決定する工程からなり、前記(B)の工程は、(B1)前記第1相関関係に基づく演算で求められた一方の集束手段の操作量、および前記他方の集束手段の操作量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第2相関関係に基づく演算により、他方の集束手段の操作量を決定する工程からなり、(A)の工程,(B)の工程の順に行い、前記2つの演算で求められた2つの集束手段の操作量に基づいて各集束手段を操作することで、前記電子ビーム量を制御するとともにX線量を制御することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において前記一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程、(B)上述した所定の条件において一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する工程を備えている。つまり、ターゲットに到達する制御されるべき電子ビーム量またはX線量から先に決定して、一方および他方の集束手段の操作量を決定する場合には、先ず上述した電子ビーム量またはX線量を決定すれば、(A)の工程において電子ビーム量またはX線量に連動して一方の集束手段の操作量を決定し、その後に、決定された一方の集束手段の操作量に連動して(B)の工程において他方の集束手段の操作量を決定する。逆に、一方の集束手段の操作量から先に決定して、他方の集束手段およびターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を決定する場合には、先ず上述した一方の集束手段の操作量を決定すれば、(B)の工程において一方の集束手段の操作量に連動して他方の集束手段の操作量を決定するとともに、(A)の工程において一方の集束手段の操作量に連動してターゲットに到達する制御されるべき電子ビーム量またはX線量を決定する。このように(A)および(B)の工程によりターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を制御して、制御されたターゲット電流からX線量を制御する。その結果、ウェネルト電極を操作してウェネルト電極付近の電子ビーム量(エミッション電流)を制御するとともにX線量を制御する手法と比較すると、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、(C)の工程においてターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を入力により決定すれば、(A1)の工程において上述した一方の集束手段の操作量、および上述した(C)の工程で入力された電子ビーム量またはX線量について互いの関係が上述した所定の条件において成立する第1相関関係に基づく演算により、一方の集束手段の操作量を決定する。その後に、(B1)の工程において上述した第1相関関係に基づく演算で求められた一方の集束手段の操作量、および上述した他方の集束手段の操作量について互いの関係が上述した所定の条件において成立する第2相関関係に基づく演算により、他方の集束手段の操作量を決定する。このように、所定の条件の下では、ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を入力すれば、一方の集束手段の操作量,他方の集束手段の順に決定される。そして、上述した2つの演算で求められた2つの集束手段の操作量に基づいて各集束手段を操作することで、先に入力されたターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)が制御される。ターゲット電流にX線量は比例するので、これらの操作量に基づいて集束手段を操作することで、先に入力されたX線量も制御される。
また、請求項2に記載の発明は、複数の集束手段により電子ビームを集束させて、電子ビームのターゲットへの衝突によりX線を発生させることで、X線の発生を制御するX線発生制御方法であって、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程、(B)前記所定の条件において前記一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する工程を備え、前記(A)および(B)の工程により前記電子ビーム量を制御するとともにX線量を制御し、前記方法は、(D)前記一方の集束手段の操作量を入力により決定する工程を備え、前記(B)の工程は、(B2)前記(D)の工程で入力された一方の集束手段の操作量、および前記他方の集束手段の操作量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第2相関関係に基づく演算により、他方の集束手段の操作量を決定する工程からなり、前記(A)の工程は、(A2)前記入力された一方の集束手段の操作量、および前記ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第1相関関係に基づく演算により、前記電子ビーム量またはX線量を決定する工程からなり、前記入力された一方の集束手段の操作量と前記第2相関関係に基づく演算で求められた他方の集束手段の操作量とに基づいて各集束手段を操作することで、前記電子ビーム量を制御するとともにX線量を制御することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において前記一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程、(B)上述した所定の条件において一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する工程を備えている。つまり、ターゲットに到達する制御されるべき電子ビーム量またはX線量から先に決定して、一方および他方の集束手段の操作量を決定する場合には、先ず上述した電子ビーム量またはX線量を決定すれば、(A)の工程において電子ビーム量またはX線量に連動して一方の集束手段の操作量を決定し、その後に、決定された一方の集束手段の操作量に連動して(B)の工程において他方の集束手段の操作量を決定する。逆に、一方の集束手段の操作量から先に決定して、他方の集束手段およびターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を決定する場合には、先ず上述した一方の集束手段の操作量を決定すれば、(B)の工程において一方の集束手段の操作量に連動して他方の集束手段の操作量を決定するとともに、(A)の工程において一方の集束手段の操作量に連動してターゲットに到達する制御されるべき電子ビーム量またはX線量を決定する。このように(A)および(B)の工程によりターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を制御して、制御されたターゲット電流からX線量を制御する。その結果、ウェネルト電極を操作してウェネルト電極付近の電子ビーム量(エミッション電流)を制御するとともにX線量を制御する手法と比較すると、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、(D)の工程において一方の集束手段の操作量を入力により決定すれば、(B2)の工程において上述した(D)の工程で入力された一方の集束手段の操作量、および上述した他方の集束手段の操作量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第2相関関係に基づく演算により、他方の集束手段の操作量を決定する。また(A2)の工程において上述した入力された一方の集束手段の操作量、および上述したターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量について互いの関係が上述した所定の条件において成立する第1相関関係に基づく演算により、上述した電子ビーム量またはX線量を決定する。このように、所定の条件の下では、一方の集束手段の操作量を入力すれば、他方の集束手段の操作量およびターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量が決定される。そして、上述した入力された一方の集束手段の操作量と、上述した第2相関関係に基づく演算で求められた他方の集束手段の操作量とに基づいて各集束手段を操作することで、ターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)が制御される。ターゲット電流にX線量は比例するので、これらの操作量に基づいて集束手段を操作することで、X線量も制御される。
なお、請求項2に記載の発明の場合には、請求項1に記載の発明のように、(A)および(B)の工程の順番については特に限定されず、(A)の工程,(B)の工程の順に行ってもよいし、逆に(B)の工程,(A)の工程の順に行ってもよいし、(A),(B)の工程を並行に行ってもよい。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線発生制御方法において、前記所定の条件は、電子ビームがターゲット上に常に結像される条件であって、前記操作量は、前記集束手段に流す電流に関する励起強度であって、前記第2相関関係は、各集束手段の励起強度について互いの関係が成立する関係であって、前記(B)の工程では、電子ビームを発生させる電子源側に位置する集束手段である第1集束手段の励起強度から第2相関関係に関する多項式近似を用いて、ターゲット側に位置する集束手段である第2集束手段の励起強度を演算することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、所定の条件が、電子ビームがターゲット上に常に結像される条件であって、操作量が、集束手段に流す電流に関する励起強度であって、第2相関関係が、各集束手段の励起強度について互いの関係が成立する関係である。そして、上述した(B)の工程において、電子ビームを発生させる電子源側に位置する集束手段である第1集束手段の励起強度から第2相関関係に関する多項式近似を用いて、ターゲット側に位置する集束手段である第2集束手段の励起強度を演算するので、第1集束手段の操作量を先に決定することで、第2集束手段の操作量が第2相関関係に関する多項式近似の演算により決定される。つまり、第1集束手段の操作量を変動させると、第2相関関係を保ったまま他方の第2集束手段の操作量が連動することになる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線発生制御方法において、前記所定の条件は、電子ビームがターゲット上に常に結像される条件であって、前記操作量は、前記集束手段に流す電流に関する励起強度であって、前記第1相関関係は、一方の集束手段の励起強度およびターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量について互いの関係が成立する関係であって、前記(A)の工程では、電子ビームを発生させる電子源側に位置する集束手段である第1集束手段の励起強度と、前記電子ビーム量またはそれに比例するX線量とを第1相関関係に関する多項式近似を用いて関連付けて、第1集束手段の励起強度、または電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つから、残りを演算することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、第1集束手段の励起強度が0の場合、すなわち第1集束手段に流す電流が0の場合には、ターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)も最少であるが、第1集束手段の励起強度を強くするとターゲット電流が増大する。より具体的に説明すると、電子ビームがターゲット上に常に結像される条件の下で、図15(a)、図15(b)、図15(c)の順に第1集束手段(図15では第1集束コイル131)の励起強度を0から強くすると、それに連動してターゲット電流は増大する。そこで、上述した(A)の工程において、かかる関係について第1相関関係に関する多項式近似式を用いて関連付けることで、ターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)およびX線量を正確に制御することができる。具体的に説明すると、請求項4に記載の発明が請求項1に従属される場合には、(C)の工程においてターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を先に入力することで、その入力された電子ビーム量またはX線量から第1集束手段の励起強度を(A1)の工程において演算して、その求められた第1集束手段の励起強度で第1集束手段を操作することで、先に入力されたターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を制御することになる。また、請求項4に記載の発明が請求項2に従属される場合には、(D)の工程において第1集束手段の励起強度を先に入力することで、第1集束手段の励起強度から電子ビーム量またはX線量を(A2)の工程において演算して、先に入力された第1集束手段の励起強度で第1集束手段を操作することで、求められたターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を制御することになる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のX線発生制御方法において、最小励起強度のときの電子ビーム量に対する相対ビーム量をデシベル標示したものをDBとし、前記第1および第2集束手段のレンズ系の総合倍率をMとし、第1集束手段の最小励起強度時に得られるレンズ系の最小倍率をM0とし、第1集束手段の励起強度を規格化した値をxとし、αおよびβを係数としたときの、4次式の多項式で近似した(1)式は、
DB=10×log10(M2/M0 2)=α×x2+β×x4 …(1)
で表され、この(1)式を実行することで、前記第1相関関係に関する多項式近似を用いて、第1相関関係に基づく演算を行うことを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、第1相関関係を満たすためには、(1)式中の各係数αおよびβを、相関関係をもっとも忠実に近似するように決定する。そして、この(1)式を実行することで、第1相関関係に関する多項式近似を用いて、第1相関関係に基づく演算を行うことができる。
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また、請求項6に記載の発明は、複数の集束手段により電子ビームを集束させて、電子ビームのターゲットへの衝突によりX線を発生させるX線発生装置を制御するX線発生制御装置であって、演算手段を備え、前記演算手段は、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する演算、(B)前記所定の条件において前記一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する演算を行い、前記(A)および(B)の演算を行うことにより前記ビーム量を制御するとともにX線量を制御し、前記装置は、前記ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を少なくとも入力する入力手段と、前記一方の集束手段の操作量および前記ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量について互いの関係が所定の条件において成立する第1相関関係を記憶した第1記憶手段と、一方および他方の集束手段の操作量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第2相関関係を記憶した第2記憶手段と、前記入力手段によって入力された電子ビーム量またはX線量を少なくとも表示する表示手段とを備え、前記演算手段は、前記入力手段によって入力された前記電子ビーム量またはX線量および前記第1記憶手段によって記憶された操作量・電子ビーム/X線量の第1相関関係に基づいて、一方の集束手段の操作量を演算する前記(A)の演算を行う(A)の演算手段と、前記(A)の演算手段によって求められた一方の集束手段の操作量および前記第2記憶手段によって記憶された操作量の第2相関関係に基づいて、他方の集束手段の操作量を演算する前記(B)の演算を行う(B)の演算手段とからなり、(A)の演算手段によって求められた一方の集束手段の操作量と、前記(B)の演算手段によって求められた他方の集束手段の操作量とをそれぞれ2つの集束手段に与えて集束手段を操作することで、前記電子ビーム量を制御するとともにX線量を制御することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明を好適に実施することができる。また、入力された電子ビーム量またはX線量を少なくとも表示手段に表示するので、表示手段を見ながら電子ビーム量およびX線量を制御することができる。
また、請求項7に記載の発明は、複数の集束手段により電子ビームを集束させて、電子ビームのターゲットへの衝突によりX線を発生させるX線発生装置を制御するX線発生制御装置であって、演算手段を備え、前記演算手段は、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する演算、(B)前記所定の条件において前記一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する演算を行い、前記(A)および(B)の演算を行うことにより前記ビーム量を制御するとともにX線量を制御し、前記装置は、前記一方の集束手段の操作量を少なくとも入力する入力手段と、一方の集束手段の操作量および前記ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量について互いの関係が所定の条件において成立する第1相関関係を記憶した第1記憶手段と、一方および他方の集束手段の操作量について互いの関係が前記所定の条件において成立する第2相関関係を記憶した第2記憶手段と、前記入力手段によって入力された一方の集束手段の操作量を少なくとも表示する表示手段とを備え、前記演算手段は、前記入力手段によって入力された一方の集束手段の操作量および前記第2記憶手段によって記憶された操作量の第2相関関係に基づいて、他方の集束手段の操作量を演算する前記(B)の演算を行う(B)の演算手段と、前記入力された一方の集束手段の操作量および前記第1記憶手段によって記憶された操作量・電子ビーム/X線量の第1相関関係に基づいて、前記ターゲットに到達する電子ビーム量またはX線量を演算する前記(A)の演算を行う(A)の演算手段とからなり、入力された一方の集束手段の操作量と、前記(B)の演算手段によって求められた他方の集束手段の操作量とをそれぞれ2つの集束手段に与えて集束手段を操作することで、前記電子ビーム量を制御するとともにX線量を制御することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明を好適に実施することができる。また、入力された一方の集束手段の操作量を少なくとも表示手段に表示するので、表示手段を見ながら電子ビーム量およびX線量を制御することができる。
なお、本明細書は、次のようなX線発生装置およびX線撮像装置に係る発明も開示している。
(1)請求項6または請求項7に記載のX線発生制御装置に用いられるX線発生装置であって、電子ビームを発生させる電子源と、電子源からの電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲットと、電子源と前記ターゲットとの間に配置され、電子ビームを集束させる2つの集束手段とを備えることを特徴とするX線発生装置。
前記(1)に記載の発明によれば、X線発生制御装置において電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる結果、X線発生制御装置に用いられるX線発生装置においても、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる。
(2)前記(1)に記載のX線発生装置を備えたX線撮像装置であって、前記X線発生装置によって発生して照射されたX線を検出するX線検出手段を備え、検出されたX線に基づいてX線画像を撮像することを特徴とするX線撮像装置。
前記(2)に記載の発明によれば、X線発生装置から照射されたX線をX線検出手段が検出することで、検出されたX線に基づいてX線画像を撮像する。X線発生制御装置において電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる結果、X線発生制御装置に用いられるX線発生装置においても、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができ、そのX線発生装置を備えたX線撮像装置においても、所望の値に制御されたX線量に基づくX線画像を精度よく撮像することができる。
この発明に係るX線発生制御方法およびその装置によれば、(A)複数の集束手段のうち2つの集束手段について、所定の条件において前記一方の集束手段を操作する操作量、またはターゲットに到達する電子ビーム量あるいはX線量のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程、(B)上述した所定の条件において一方の集束手段の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束手段の操作量を決定する工程を備えている。このように(A)および(B)の工程によりターゲットに到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を制御して、制御されたターゲット電流からX線量を制御する。その結果、ウェネルト電極を操作してウェネルト電極付近の電子ビーム量(エミッション電流)を制御するとともにX線量を制御する手法と比較すると、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るX線管およびそれを制御する制御用のインターフェイスから構築されるシステム全体の概略図であり、図2は、X線管の構成を示す概略断面図であり、図3は、インターフェイスの構成を示すブロック図である。
図1、図2に示すX線管1はX線非破壊検査機器など代表されるX線撮像装置Aに用いられ、X線撮像装置Aは、X線管1と、X線管1から照射されたX線を検出するX線検出器2とを備えている。X線検出器2は、例えばイメージインテンシファイア(I.I)やフラットパネル型X線検出器(FPD)などがある。X線管1から照射されたX線をX線検出器2が検出することで、検出されたX線に基づいてX線画像を撮像する。X線管1は、この発明におけるX線発生装置に相当し、X線検出器2は、この発明におけるX線検出手段に相当する。
このX線撮像装置Aとは別に、図1に示すように、本実施例1に係るシステムSは、X線管1、およびそれを制御する制御用のインターフェイス3から構築される。X線管1とインターフェイス3とは電気ケーブルなどに代表される伝送手段によって相互に電気的に接続されている。なお、本実施例1では、インターフェイス3は、X線管1を制御するために用いられるが、X線撮像装置Aを制御するのを兼用してもよい。インターフェイス3は、この発明におけるX線発生制御装置に相当する。
X線管1は、図2に示すように、電子ビームBを発生させる陰極(カソード)11と、この陰極11に対向配置され、陰極11からの電子ビームBの衝突によりX線を発生させるターゲット12と、陰極11とターゲット12との間に配置され、電子ビームBを集束させる2つの集束コイル13を備えている。つまり、集束コイル13を2段に設けている。本明細書中では、陰極11側の集束コイル13を『第1集束コイル131』とし、ターゲット12側の集束コイル13を『第2集束コイル132』とする。なお、特に断りがないときには『集束コイル13』で統一して以下を説明する。
なお、本実施例1では、陰極11として6ホウ化ランタン(LaB6)や6ホウ化セリウム(CeB6)などで形成された単結晶あるいは焼結体のチップを用いている。このチップは、タングステンで形成されたフィラメントと比較すると消耗や切断に強い。陰極11は、この発明における電子源に相当し、ターゲット12は、この発明におけるターゲットに相当し、集束コイル13は、この発明における集束手段に相当する。また、第1集束コイル131は、第1集束手段に相当し、集束コイル131は、第2集束手段に相当する。
集束コイル13は円環状に構成されており、その中心には電子ビームBを絞る絞り孔14を有したアパーチャ15を配設している。各集束コイル13は、X線管1の外部にあってインターフェイス3にある各レンズ電源31を介してコントローラ32に接続されており、レンズ電源13から集束コイル13に電流を流すことで磁界を発生させて、光学の集束レンズと同様に集束コイル13は電子ビームBを集束させる。なお、集束コイル13は、それに流す電流、すなわち励起強度を変えることで電子ビームBの焦点距離を自在に変えることができる。本明細書中では、第1集束コイル131に電流を流すレンズ電源31を『第1レンズ電源311』とし、第2集束コイル132に電流を流すレンズ電源31を『第2レンズ電源312』とする。なお、特に断りがないときには『レンズ電源31』で統一して以下を説明する。レンズ電源31およびコントローラ32については、インターフェイス3の説明で後述する。
陰極11と第1集束コイル131との間には、陰極11から第1集束コイル131に向かう電子ビームBの照射方向に、ウェネルト電極16,陽極(アノード)17を順に配設している。なお、陽極17は、通常では接地電位となっている。
ウェネルト電極16は、陽極17によって引き出される陰極11からの電子ビームBの電子ビーム量(すなわちエミッション電流)を制御するもので、ウェネルト電極16の電位によって電子ビーム量が変化する。陽極17は、陰極11から発生する電子ビームBを引き出す。この陽極17による引き出しで電子ビームBはターゲット12に向かって加速する。上述したこれらの陰極11とウェネルト電極16と陽極17とで電子銃を構成している。
この他に、陰極11と第2集束コイル132との間には、図示を省略する偏向コイルを備えており、電子ビームBの照射を偏向する。そして、この偏向コイルに電流を流すことで磁界を発生させて偏向を行う。偏向コイルの配設箇所や、配設個数については特に限定されず、陰極11と第2集束コイル132との間であれば、電子ビームBの照射状況に応じて適宜変更することができる。
次に、インターフェイス3の具体的な構成について、図3を参照して説明する。インターフェイス3は、上述したレンズ電源31およびコントローラ32の他に、入力部33やモニタ34やメモリ部35を備えている。
コントローラ32は、インターフェイス3内に備えられた各構成やX線管1を統括制御し、入力部33から入力された最終的に制御されるべき、ターゲット12に到達した電子ビーム量(すなわちターゲット電流)を、コントローラ32を介して、モニタ34に表示させる。また、本実施例1では、コントローラ32は、入力部33によって入力された制御の対象である上述のターゲット電流およびメモリ部35内に予め記憶された第1近似プログラム35aに基づいて、一方の集束コイル13に相当する第1集束コイル131の励起強度を演算し、さらには、求められた第1集束コイル131の励起強度および第2近似プログラム35bに基づいて、他方の集束コイル13に相当する第2集束コイル132の励起強度を演算する。コントローラ32は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。コントローラ32は、演算手段に相当し、本実施例1ではこの発明における(A)の演算手段および(B)の演算手段に相当する。
入力部33は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。オペレータは、入力部33で制御の対象である電子ビーム量を入力し、コントローラ32を介して、モニタ34に入力したデータを与える。入力部33は、この発明における入力手段に相当する。
モニタ34は、後述する図6に示すような操作画面を表示したり、入力部33から入力された電子ビーム量を表示する。モニタ34は、この発明における表示手段に相当する。
メモリ部35は、コントローラ32を介して送られてきた各種のデータを書き込んで記憶して、必要に応じて読み出す機能を備えている。メモリ部35は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。また、メモリ部35はプログラムを記憶しており、このプログラムを読み出してコントローラ32が実行することで、プログラムに書かれた内容を実行する。本実施例1では、プログラムとして、第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)との相関関係(図5を参照)を関連づけた多項式近似(下記(1)式を参照)をプログラミングする第1近似プログラム35aと、第1集束コイル131および第2集束コイル132の各励起強度の相関関係(図5を参照)を関連付けた多項式近似(下記(2)式を参照)をプログラミングする第2近似プログラム35bとを用いている。第1近似プログラム35aは、この発明における第1記憶手段に相当し、第2近似プログラム35bは、この発明における第2記憶手段に相当する。また、第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)との相関関係は、この発明における第1相関関係に相当し、各集束コイル131,132の励起強度の相関関係は、この発明における第2相関関係に相当する。
続いて、X線発生制御方法に係る一連の処理について、図4のフローチャートおよび図5のグラフ、並びに図6の操作画面、図7のグラフを参照して説明する。
(ステップS1)操作画面を起動
図6に示すような操作画面40を起動させてモニタ34に表示する。操作画面40は、入力部33によって入力したデータを表示する。例えば、陰極11に印加する管電圧の値を表示する管電圧値表示欄41や、ターゲット12に到達する制御の対象である電子ビーム量(ターゲット電流)を表示する欄を操作画面40に設けている。本実施例1では、ターゲット電流に比例したX線輝度(以下、単に『輝度』と略記する)を表示する輝度表示欄42を、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を表示する欄の替わりに操作画面40に設けている。
(ステップS2)電子ビーム量(輝度)を入力・表示
まず、ターゲット電流に相当する輝度を入力部33によって入力して、入力された輝度を操作画面40の輝度表示欄42に表示する。具体的には、入力された輝度を、コントローラ32を介して、モニタ34に与えて輝度表示欄42に表示する(図6では『30』)。輝度を入力するには、入力部33のキーボードなどで輝度を輝度表示欄42に直接に入力することで行ってもよいし、画面上において各表示欄41,42の直下に設けられたスキップボタン43(図6では左から『<<』,『<』,『>』,『>>』)を入力部33のマウスなどでクリックする(1回押す)ことで行ってもよいし、画面上において各スキップボタン43の直下に設けられたスライドバー44を入力部33のマウスなどドラッグする(マウスの左ボタンでクリックした状態で移動させる)ことで行ってもよい。
入力部33のキーボードなどで輝度を輝度表示欄42に直接に入力する場合には、入力部33のマウスなどで輝度表示欄42をクリックした後にキーボードなどで輝度を入力する。
スキップボタン43を入力部33のマウスなどでクリックする場合には、先に輝度表示欄42に入力された輝度をスキップボタン43へのクリックに合わせて上下に変える。例えば、入力できる輝度が100ポイントまで設定できる場合には、『>』のスキップボタン43で輝度表示欄42に入力された輝度を1ポイントずつ上げて入力していき、『<』のスキップボタン43で輝度表示欄42に入力された輝度を1ポイントずつ下げて入力していき、『>>』のスキップボタン43で輝度表示欄42に入力された輝度を10ポイントずつ上げて入力していき、『<<』のスキップボタン43で輝度表示欄42に入力された輝度を1ポイントずつ上げて入力していく。なお、設定するポイント数やスキップするポイント数については上述した値に限定されない。
スライドバー44を入力部33のマウスなどドラッグする場合には、左から右へドラッグした場合には輝度を高く設定入力し、右から左へドラッグした場合には輝度を低く設定入力する。そして、右端までドラッグした場合にはもっとも高い輝度を入力し、左端までドラッグした場合にはもっとも低い輝度を入力する。
もちろん、これらの入力方法に限定されず、例えば、モニタ34の操作画面40に入力部33のタッチパネルの機能を備えて、操作画面40の各種のボタンやバーをオペレータが直接に触れて操作することで入力を行ってもよい。
なお、同様に、管電圧値も入力部33によって入力し、入力された管電圧値を操作画面40の管電圧表示欄41に表示する(図6では『60』)。管電圧値の入力方法については、輝度の入力方法と同じである。なお、スキップボタン43やスライドバー44などを用いて入力することで、輝度や管電圧値などの入力データを連続的に設定変更することが可能である。このステップS2は、この発明における(C)の工程に相当する。
(ステップS3)第1集束コイルの励起強度を決定
各値を各々の表示欄41,42に入力したら、第1集束コイル131の励起強度を求める。第1集束コイル131の励起強度は、ステップS2で入力されたターゲット電流(本実施例1では輝度)および第1近似プログラム35aに基づいて求められる。第1近似プログラム35aは、第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)との相関関係を関連付けた多項式近似をプログラミングしている。この相関関係は、図5に示すとおりである。
図5は、ターゲット12上に常に結像される条件の下で、第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)との相関関係、および第1集束コイル131および第2集束コイル132の各励起強度の相関関係を示すグラフである。図5中の横軸はx軸を表すとともに、左側縦軸はy軸を表す。xは第1集束コイル131の励起強度を規格化した値であるとともに、yは第2集束コイル132の励起強度を規格化した値である。したがって、励起強度が最大のときは規格化した値は1となり、励起強度が最小のときは規格化した値は0となる。また、図5中の右側縦軸はDB軸を表す(図5では『相対X線強度(デシベル標示)』)。DBは、最小励起強度のときの電子ビーム量に対する相対ビーム量をデシベル(DB)標示したものである。Mを第1集束コイル131および第2集束コイル132のレンズ系の総合倍率とし、M0を第1集束コイル131の最小励起強度時に得られるレンズ系の最小倍率としたときに、M0に対するMの倍率比(M/M0)の2乗が相対ビーム量に相当するので、10×log10(M2/M0 2)でDBは表される。
なお、電子ビーム量の替わりにX線量についてデシベル標示した場合、すなわち最小励起強度のときのX線量に対する相対X線量をデシベル標示した場合においても、比の値をデシベル標示するので、電子ビーム量に対する相対ビーム量でも、X線量に対する相対X線量でも同じ値である。したがって、図5の右側縦軸にも示すように、電子ビーム量に対する相対ビーム量は、相対X線量(相対X線強度)と同等である。
各相関関係は数値シミュレーションによってそれぞれ求められる。この数値シミュレーションは、ターゲット12上に常に結像される条件の下で、第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)とを関連付けた下記(1)式、および同じくターゲット12上に常に結像される条件の下で、第1集束コイル131および第2集束コイル132の各励起強度を関連付けた下記(2)式からそれぞれ求められる。
DB=10×log10(M2/M0 2)=α×x2+β×x4 …(1)
y=1+a×x2+b×x4+c×x6+d×x8 …(2)
ここで、各相関関係を満たすためには(1)、(2)式中の各係数α、β、a、b、c、dを、数値シミュレーションで求めた各相関関係をもっとも忠実に近似するように求める。
上記(1)および(2)式は近似多項式で表されており、(1)式を4次式までの多項式で近似しており、(2)式を8次式までの多項式で近似している。(1)式をプログラミングした内容は第1近似プログラム35aであって、(2)式をプログラミングした内容は第2近似プログラム35bである。(1)式は、図5では点線に示す相関関係となり、(2)式は、図5では実線に示す相関関係となる。なお、図5では図示を省略するが、実際に測定された第1集束コイル131および第2集束コイル132の各励起強度の相関関係は上記(2)式で示した実線のグラフと一致し、実際に測定された第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)との相関関係も、上記(1)式で示した点線のグラフと一致する。
この図5のグラフからも、レンズ系倍率が最小のとき、すなわち図5では第1集束コイル131の励起強度を規格化した値xが0のとき、M0に対するMの倍率比(M/M0)が1であるので、DB(=10×log10(M2/M0 2))が0となるのがわかる。そして、レンズ系倍率が最小(第1集束コイル131に流す電流が0)のとき、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)も最少であるが、第1集束コイル131の励起強度を規格化した値xを大きく(第1集束コイル131の励起強度を強く)するとターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)が増大するのがわかる。なお、ターゲット電流が増大することでそれに比例するX線量も増大する。
このように、図7(a)に示すように、ステップS2で入力されたターゲット電流(輝度)をデシベル標示して、図5中の点線のグラフに当てはめて、そのグラフ上で交わった値xが、第1集束コイル131の励起強度として決定される。図5では正規化されているので、実際には励起強度として求める。このステップS3は、この発明における(A)の工程に相当し、この発明における(A1)の工程にも相当する。また、図7(a)のような演算は、この発明における第1相関関係に基づく演算に相当する。
(ステップS4)第2集束コイルの励起強度を決定
第1集束コイル131の励起強度を決定したら、第2集束コイル132の励起強度を求める。第2集束コイル132の励起強度は、ステップS3の演算で決定された第1集束コイル131の励起強度および第2近似プログラム35bに基づいて求められる。上述したように、第2近似プログラム35bは、第1集束コイル131および第2集束コイル132の各励起強度の相関関係を関連付けた多項式近似をプログラミングしている(図5中の実線および上記(2)式を参照)。
具体的に説明すると、図7(b)に示すように、ステップS3で決定された第1集束コイル131の励起強度を、図5中の実線のグラフに当てはめて、そのグラフ上で交わった値yが、第2集束コイル132の励起強度として決定される。実際には、正規化されているので正規化する前の励起強度を求める。このステップS4は、この発明における(B)の工程に相当し、この発明における(B1)の工程にも相当する。また、図7(b)のような演算は、この発明における第2相関関係に基づく演算に相当する。
(ステップS5)両集束コイルの励起強度で操作
ステップS3,S4でそれぞれ求められた第1,第2集束コイル131,132の励起強度を、各第1,第2レンズ電源311,312を介して第1,第2集束コイル131,132に与えて両集束コイル131,132を操作する。
両第1、第2集束コイル131,132を上述した励起強度の条件で操作した状態で、ステップS2で入力された管電圧値で陰極11から電子ビームBを発生させる。ウェネルト電極16の電位でその付近の電子ビーム量(エミッション電流)を制御して、陽極17による引き出しで電子ビームBはターゲット12に向かって加速する。途中で、ステップS3,S4でそれぞれ求められた各集束コイル131,132の励起強度の条件で集束コイル13は磁界を発生させて、電子ビームBを集束させる。ターゲット12に到達した電子ビームBがそのターゲット12に衝突することでX線が発生する。このX線量はステップS2で入力された制御されるべき電子ビーム量に比例するので、所望のX線量を得ることができる。
以上のように構成されたX線管1およびそれを制御するインターフェイス3からなる本実施例1のシステムSによれば、(A)2つの第1、第2集束コイル131,132について、所定の条件(本実施例1ではターゲット12上に常に結像される条件)において、一方の集束コイル(本実施例1では第1集束コイル131)を操作する操作量(本実施例1では励起強度)、またはターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程(ステップS3)、(B)上述した所定の条件において、一方の集束コイルである第1集束コイル131の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束コイル(本実施例1では第2集束コイル132)の操作量を決定する工程(ステップS4)を備えている。
本実施例1のように、ターゲット12に到達する制御されるべき電子ビーム量(ターゲット電流)から先に決定して、第1集束コイル131の操作量および第2集束コイル132の操作量を決定する場合には、先ず上述したターゲット電流(本実施例1では輝度)を決定すれば、ステップS3においてターゲット電流に連動して第1集束コイル131の操作量を決定し、その後に、決定された第1集束コイル131の操作量に連動して、ステップS4において第2集束コイル132の操作量を決定する。このようにステップS3,S4によりターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を制御して、制御されたターゲット電流からX線量を制御する。その結果、ウェネルト電極16を操作してウェネルト16電極付近の電子ビーム量(エミッション電流)を制御するとともにX線量を制御する手法と比較すると、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる。
また、本実施例1の場合には、(C)ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を入力により決定する工程(ステップS2)を備えている。ステップS2においてターゲット電流を入力により決定すれば、ステップS3において一方の集束コイルである第1集束コイル131の操作量(本実施例1では励起強度)、およびステップS2で入力されたターゲット電流について互いの関係が所定の条件(本実施例1ではターゲット12上に常に結像される条件)において成立する相関関係(図5中の点線および上記(1)式を参照)に基づく演算により、第1集束コイル131の操作量(本実施例1では励起強度)を決定する。その後に、ステップS4において、求められた第1集束コイル131の操作量、および他方の集束コイルである第2集束コイル132の操作量について互いの関係が所定の条件において成立する相関関係(図5中の実線および上記(2)式を参照)に基づく演算により、第2集束コイル132の操作量(本実施例1では励起強度)を演算する。
このように、所定の条件の下では、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を入力すれば、第1集束コイル131の操作量,第2集束コイル132の操作量の順に決定される。そして、上述した演算で求められた2つの第1、第2集束コイル131,132の操作量に基づいて各集束コイル13を操作することで、先に入力されたターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)が制御される。ターゲット電流にX線量は比例するので、これらの操作量に基づいて集束コイル13を操作することで、先に入力されたX線量も制御される。
また、本実施例1では、所定の条件が、電子ビームBがターゲット12上に常に結像される条件であって、操作量が、第1、第2集束コイル131,132に流す電流に関する励起強度であって、操作量の相関関係が、各集束コイル131,132の励起強度について互いの関係が成立する関係である。そして、ステップS4において、電子ビームBを発生させる陰極11側に位置する第1集束コイル131の励起強度から励起強度の相関関係に関する多項式近似を用いて、ターゲット12側に位置する第2集束コイル132の励起強度を演算するので、第1集束コイル131の操作量をステップS3で先に決定することで、第2集束コイル132の操作量が励起強度の相関関係に関する多項式近似(上記(2)式を参照)の演算によりステップS4で決定される。つまり、第1集束コイル131の操作量を変動させると、励起強度の相関関係を保ったまま他方の第2集束コイル132の操作量が連動することになる。
また、本実施例1では、第1集束コイル131の励起強度が0の場合、すなわち第1集束コイル131に流す電流が0の場合には、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)も最少であるが、第1集束コイル131の励起強度を強くするとターゲット電流が増大する。より具体的に、図15を参照して説明する。図15は、通常の操作においてX線管の各段の集束コイルの励起強度をそれぞれ変えたときの陰極からの電子ビームの照射状態を示す概略図である。
第1集束コイル131に流す電流が0の場合には、図15(a)に示すような状態となる。この場合には、レンズ系の総合倍率Mは最小倍率M0となり、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)も最少である。電子ビームBがターゲット12上に常に結像される条件の下で、第1集束コイル131の励起強度を増大させると、それに連動して第2集束コイル132の励起強度は小さくなり、図15(b)に示すような状態となり、さらに第1集束コイル131の励起強度を増大させて、それに連動して第2集束コイル132の励起強度は小さくなり、図15(c)に示すような状態となる。そして、図15(a)、図15(b)、図15(c)の順に第1集束コイル131の励起強度を強くすると、それに伴ってターゲット電流は増大する。
そこで、ステップS3において、かかる関係について上記(1)式の多項式近似式を用いて関連付けることで、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)およびX線量を正確に制御することができる。具体的に説明すると、本実施例1の場合には、制御されるべきターゲット電流をステップS2で先に入力することで、その入力されたターゲット電流から第1集束コイル131の励起強度をステップS3で演算して、その求められた第1集束コイル131の励起強度で第1集束コイル131を操作することで、先に入力されたターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)、さらにはX線量を制御することになる。
また、入力されたターゲット電流(本実施例1では輝度)をモニタ34に表示するので、モニタ34を見ながらターゲット電流およびX線量を制御することができる。
また、X線管1を備えたX線撮像装置Aによれば、インターフェイス3において電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる結果、インターフェイス3に用いられるX線管1においても、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができ、そのX線管1を備えたX線撮像装置Aにおいても、所望の値に制御されたX線量に基づくX線画像を精度よく撮像することができる。
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図8は、実施例2のX線発生制御方法に係る一連の処理を示すフローチャートであり、図9、実施例2の一連の処理における操作画面の一態様を示す図であり、図10は、実施例2のフローを併せたグラフである。
なお、実施例1と共通する箇所については、その説明を省略するとともに図示を省略する。また、本実施例2に係るシステムSは、インターフェイス内部の動作を除いては、図1〜図3に示す構成と同一である。まず、本実施例2に係るインターフェイスの具体的な構成について、図3を参照して説明する。
本実施例2では、図3に示すように、実施例1と同様にインターフェイス32は、レンズ電源31やコントローラ32や入力部33やモニタ34やメモリ部35を備えている。
本実施例2のコントローラ32は、入力部33によって入力された一方の集束コイル13に相当する第1集束コイル131の励起強度およびメモリ部35内に予め記憶された第2近似プログラム35bに基づいて、他方の集束コイル13に相当する第2集束コイル132の励起強度を演算し、さらには、入力された第1集束コイル131の励起強度および第1近似プログラム35aに基づいて、制御されるべき電子ビーム量(本実施例2では輝度)を演算する。コントローラ32は、演算手段に相当し、本実施例2ではこの発明における(B)の演算手段および(A)の演算手段に相当する。
本実施例2の入力部33では、オペレータは、入力部33で第1集束コイル131の励起強度を入力し、コントローラ32を介して、モニタ34に入力したデータを与える。
本実施例2のモニタ34は、後述する図9に示すような操作画面を表示したり、入力部33から入力された第1集束コイル131の励起強度を表示する。
本実施例2のメモリ部35は、実施例1と同様に第1近似プログラム35aおよび第2近似プログラム35bを記憶している。本実施例2では、第2近似プログラム35bは実施例1と同じであり、第1近似プログラム35aは、実施例1では制御されるべき電子ビーム量から第1集束コイル131の励起強度を演算したのに対して、本実施例2では、第1集束コイル131の励起強度から制御されるべき電子ビーム量を演算する以外は実施例1と同じである。
続いて、X線発生制御方法に係る一連の処理について、図8のフローチャートおよび図9の操作画面、図10のグラフを参照して説明する。
(ステップT1)操作画面を起動
図9に示すような操作画面60を起動させてモニタ34に表示する。操作画面60は、実施例1の操作画面40と同様に入力部33によって入力したデータを表示する。実施例1と相違する点は、実施例1ではターゲット12に到達する制御の対象である電子ビーム量を表示する欄を操作画面40に設けているのに対して、本実施例2では操作の対象である第1集束コイル131の励起強度を表示する欄を操作画面60に設けている点である。すなわち、第1集束コイル131の励起強度を表示する第1レンズ励起強度欄61を操作画面60に設けている。この他に、後述するステップT3の演算で決定される第2集束コイル132の励起強度を表示する第2レンズ励起強度欄62を設けている。
(ステップT2)第1集束コイルの励起強度を入力・表示
まず、第1集束コイル131の励起強度を入力部33によって入力して、入力された励起強度を操作画面60の第1レンズ励起強度欄61に表示する。このとき、第2レンズ励起強度欄62には第2集束コイル132の励起強度を表示せずに空白の状態で、ステップT3で第2集束コイル132の励起強度を決定した後に、その決定後の励起強度を第2レンズ励起強度欄62に表示する。なお、後述するターゲット電流に比例したX線輝度(輝度)を表示する輝度表示欄66についても輝度を表示せずに空白の状態にする。
第1集束コイル131の励起強度を入力するのは、実施例1のステップS2での輝度の入力・表示でも述べたように、入力部33のキーボードなどで励起強度を第1レンズ励起強度欄61に直接に入力することで行ってもよいし、画面上において第1レンズ励起強度欄61の直下に設けられたスキップボタン63を入力部33のマウスなどでクリックすることで行ってもよいし、画面上においてスキップボタン63の直下に設けられたスライドバー64を入力部33のマウスなどドラッグすることで行ってもよい。各入力の詳しい説明については実施例1と同じなので、その説明を省略する。このステップT2は、この発明における(D)の工程に相当する。
(ステップT3)第2集束コイルの励起強度を決定
第1集束コイル131の励起強度を第1レンズ励起強度欄61に入力したら、画面上において操作画面60の右下領域に設けられた更新ボタン65(図9では『更新』と記載されている)を入力部33のマウスなどでクリックする。
更新ボタン65をクリックすると、それまで空白になっていた第2レンズ励起強度欄62に、決定された第2集束コイル132の励起強度の値が表示される。このとき、輝度表示欄66は空白の状態である。第2集束コイル132の励起強度は、ステップT2で入力された第1集束コイル131の励起強度および第2近似プログラム35bに基づいて求められる。第2近似プログラム35bは、各集束コイル131,132の励起強度の各励起強度の相関関係(図5中の実線および上記(2)式を参照)を関連付けた多項式近似をプログラミングしている。
実施例1のステップS4と同様に、図10(a)に示すように、ステップT2で入力された第1集束コイル131の励起強度を、図5中の実線のグラフに当てはめて、そのグラフ上で交わった値yが、第2集束コイル132の励起強度として決定される。図5では正規化されているので、実際には正規化する前の励起強度を求める。この決定された第2集束コイル132の励起強度を、更新ボタン65のクリック後に第2レンズ励起強度欄62に表示する。このステップT3は、この発明における(B)の工程に相当し、この発明における(B2)の工程にも相当する。また、図10(a)のような演算は、この発明における第2相関関係に基づく演算に相当する。
(ステップT4)電子ビーム量(輝度)を決定
第2集束コイル132の励起強度を決定したら、ターゲット12に到達する制御されるべき電子ビーム量(ターゲット電流)を求める。具体的には、第2集束コイル132の励起強度を決定して第2レンズ励起強度欄62に表示したら、更新ボタン65を入力部33のマウスなどで再度クリックする。
更新ボタン65をクリックすると、それまで空白になっていた輝度表示欄66に、決定されたターゲット電流(本実施例2では輝度)の値が表示される。ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)は、ステップT2で入力された第1集束コイル131の励起強度および第1近似プログラム35aに基づいて行われる。第1近似プログラム35aは、第1集束コイル131の励起強度とターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)との相関関係(図5中の点線および上記(1)式を参照)を関連付けた多項式近似をプログラミングしている。
ステップT2で入力された第1集束コイル131の励起強度を正規化して、図10(b)に示すように、図5中の点線のグラフに当てはめて、そのグラフ上で交わった値DBが、デシベル標示した電子ビーム量として決定される。この決定された電子ビーム量を輝度に換算して輝度表示欄66に表示する。このステップT4は、この発明における(A)の工程に相当し、この発明における(A2)の工程にも相当する。また、図10(b)のような演算は、この発明における第1相関関係に基づく演算に相当する。
(ステップT5)両集束コイルの励起強度で操作
ステップT2で入力された第1集束コイル131の励起強度を、第1レンズ電源311を介して第1集束コイル131に与えて集束コイル131を操作するとともに、ステップT3で求められた第2集束コイル132の励起強度を、第2レンズ電源312を介して第2集束コイル132に与えて集束コイル132を操作する。
両第1、第2集束コイル131,132を上述した励起強度の条件で操作した状態で、陰極11から電子ビームBを発生させる。電子ビームBがターゲット12に向かって加速する途中で、ステップT2で入力された第1集束コイル131の励起強度、およびステップT3で求められた第2集束コイル132の励起強度の条件で集束コイル13は磁界を発生させて、電子ビームBを集束させる。ターゲット12に到達した電子ビームBがそのターゲット12に衝突することでX線が発生する。このX線量はステップT4で求められた制御されるべき電子ビーム量に比例するので、所望のX線量を得ることができる。
以上のように構成されたX線管1およびそれを制御するインターフェイス3からなる本実施例2のシステムSによれば、(A)2つの第1、第2集束コイル131,132について、所定の条件(本実施例2ではターゲット12上に常に結像される条件)において、一方の集束コイル(本実施例2では第1集束コイル131)を操作する操作量(本実施例2では励起強度)、またはターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)のいずれか1つを決定すればそれに連動して残りを決定する工程(ステップT4)、(B)上述した所定の条件において、一方の集束コイルである第1集束コイル131の操作量を決定すればそれに連動して他方の集束コイル(本実施例2では第2集束コイル132)の操作量を決定する工程(ステップT3)を備えている。
本実施例2のように、第1集束コイル131の操作量から先に決定して、第2集束コイル132の操作量およびターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を決定する場合には、先ず上述した第1集束コイル131の操作量を決定すれば、ステップT3において第1集束コイル131の操作量に連動して第2集束コイル132の操作量を決定するとともに、第1集束コイル131の操作量に連動してステップT4においてターゲット電流(本実施例2では輝度)を決定する。このようにステップT3,T4によりターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)を制御して、制御されたターゲット電流からX線量を制御する。その結果、ウェネルト電極16を操作してウェネルト16電極付近の電子ビーム量(エミッション電流)を制御するとともにX線量を制御する手法と比較すると、電子ビーム量およびX線量を正確に制御することができる。
また、本実施例2の場合には、(D)一方の集束コイルである第1集束コイル131の操作量(本実施例2では励起強度)を入力により決定する工程(ステップT2)を備えている。このステップT2において第1集束コイル131の操作量を入力により決定すれば、ステップT3において、ステップT2で入力された第1集束コイル131の操作量(本実施例2では励起強度)、および他方の集束コイルである第2集束コイル132の操作量について互いの関係が所定の条件(本実施例2ではターゲット12上に常に結像される条件)において成立する相関関係(図5中の実線および上記(2)式を参照)に基づく演算により、第2集束コイル132の操作量(本実施例2では励起強度)を決定する。また、ステップT4において、ステップT2で入力された第1集束コイル131の操作量、およびターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)について互いの関係が所定の条件において成立する相関関係(図5中の点線および上記(1)式を参照)に基づく演算により、ターゲット電流を演算する。
このように、所定の条件の下では、一方の集束コイルである第1集束コイル131の操作量を入力すれば、他方の集束コイルである操作量およびターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)が決定される。そして、入力された一方の第1集束コイル131の励起強度と、上述した演算で求められた他方の第2集束コイル132の励起強度の操作量に基づいて各集束コイル13を操作することで、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)が制御される。ターゲット電流にX線量は比例するので、これらの操作量に基づいて集束コイル13を操作することで、X線量も決定される。
また、本実施例2では、電子ビームBを発生させる陰極11側に位置する第1集束コイル131の励起強度から励起強度の相関関係に関する多項式近似を用いて、ターゲット12側に位置する第2集束コイル132の励起強度を演算するので、第1集束コイル131の励起強度をステップT2で先に決定することで、第2集束コイル132の励起強度が励起強度の相関関係に関する多項式近似(上記(2)式を参照)の演算によりステップT3で決定される。つまり、実施例1でも述べたように第1集束コイル131の励起強度を変動させると、励起強度の相関関係を保ったまま他方の第2集束コイル132の励起強度が連動することになる。
また、実施例1でも述べたように、第1集束コイル131の励起強度が0の場合には、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)も最少であるが、第1集束コイル131の励起強度を強くするとターゲット電流が増大する。そこで、ステップT4において、かかる関係について上記(1)式の多項式近似式を用いて関連付けることで、ターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)およびX線量を正確に制御することができる。具体的に説明すると、本実施例2の場合には、第1集束コイル131の励起強度をステップT2で先に入力することで、第1集束コイル131の励起強度からターゲット電流(本実施例2では輝度)をステップT4で演算して、先に入力された第1集束コイル131の励起強度で第1集束コイル131を操作することで、求められたターゲット12に到達する電子ビーム量(ターゲット電流)、さらにはX線量を制御することになる。
また、入力された一方の集束コイルである第1集束コイル131の励起強度をモニタ34に表示するので、モニタ34を見ながらターゲット電流およびX線量を制御することができる。
なお、実施例2の場合には、ステップT3(第2集束コイルの励起強度を決定),T4(電子ビーム量(輝度)を決定)の順番については特に限定されず、図8のフローチャートのようにステップT3,T4の順に行ってもよいし、逆にステップT4,T3の順に行ってもよいし、ステップT3,T4を並行に行ってもよい。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例では、非破壊検査機器などの工業用装置を例に採ってX線撮像装置を説明したが、この発明は、X線診断装置などの医用装置にも適用することができる。
(2)上述した各実施例では、電子源として、消耗や切断に強い単結晶あるいは焼結体のチップを用いたが、タングステンで形成されたフィラメントを用いてもよい。
(3)上述した実施例では、集束コイル13はいわゆる2段式であったが、3段以上であってもよい。この場合には、3段以上の集束コイルから2つの集束コイルを選択する。そして、一方を第1集束コイル131とし、他方を第2集束コイル132とする。なお、ターゲット12にもっとも近い集束コイルを操作した方が電子ビーム量やX線量の制御がしやすいので、3段以上の場合には選択される2つの集束コイルについては、ターゲット12にもっとも近い2つの集束コイルとするのが好ましい。もちろん、ターゲット12にもっとも近い2つの集束コイルに限定されず、操作状況や励起強度などに応じて、選択される集束コイルを適宜変更すればよい。
(4)上述した各実施例についてそれぞれ説明したが、実施例1と実施例2とを双方に組み合わせてもよい。例えば、実施例1のように制御されるべき電子ビーム量(ターゲット電流)を入力してから各第1、第2集束コイル131,132の励起強度を決定してもよいし、実施例2のように第1集束コイル131の励起強度を入力してから第2集束コイル132の励起強度やターゲット12電流を決定してもよい。また、ターゲット電流(輝度)または第1集束コイル131の励起強度の入力を選択して、その選択に応じて各値を求め、求められた各値を必要に応じて次回に入力するように構成してもよい。
(5)上述した各実施例では、近似多項式は上記(1)、(2)式に示すものであったが、8次よりも高次の多項式であってもよいし、逆に4次よりも低次の3次や2次の多項式であってもよい。
(6)上述した各実施例では、各相関関係を記憶するのに、近似多項式をプログラミングする第1、第2近似プログラム35a,35bをメモリ部35に記憶する手法を採ったが、例えば100ポイント程度で予め測定した各相関関係(図14に示すテーブル)をメモリ部35に直接的に記憶して、入力した各値に対応したデータをテーブルから読み出して、そのデータを演算結果として出力してもよい。なお、入力した各値がテーブル中の値に合致しない場合には、入力した各値に近い値を近似して、後者の値に対応したデータを読み出して、そのデータを演算結果として出力すればよい。
(7)上述した各実施例では、集束手段(集束コイル13)の操作量として励起強度を例に採って説明したが、例えば集束コイル13の磁束密度などを操作量とするなど、通常において用いられる集束手段の操作量であれば、特に限定されない。
例えば、集束手段が各実施例のような磁界を発生させるタイプでなく静電タイプの場合には、集束手段に電圧を印加して、その印加電圧の値によって集束手段を制御する。この場合には、集束手段の操作量は印加電圧になる。
(8)上述した各実施例では、所定の条件は、電子ビームBがターゲット12上に常に結像される条件であったが、2つの集束コイル13のうち一方を操作する操作量および電子ビーム量またはX線量について互いの関係が成立する、あるいは各集束コイル13の操作量について互いの関係が成立するのであれば、所定の条件については特に限定されない。
また、電子ビームBがターゲット12上に常に結像される条件の他に、別の条件を追加してもよい。例えば、実施例1でも述べたようにウェネルト電極16(図2を参照)の電位によって電子ビーム量(すなわちエミッション電流)が変化するが、このエミッション電流を最適な値に固定した状態で、この最適値の電子ビーム量を別の条件として追加してもよい。
図11を参照して具体的に説明する。図11は、ウェネルト電極付近の電子ビームを模式的に表した説明図である。なお、図11(a)は、仮想光源径が小さいときの説明図であり、図11(b)は、仮想光源径が大きいときの説明図である。上述したように、陽極17による引き出しで電子ビームBはターゲット(図11では図示省略)に向かって加速する。このとき、ウェネルト電極16の電位が低すぎる(電位の負の値が大きすぎる)と、電荷がウェネルト電極16付近で蓄積されやすくなって、空間電荷効果により電子ビームBが陽極17に引き出されずエミッション電流は低くなる。言い換えれば、エミッション電流を低く設定すれば空間電荷効果により電子ビームBが陽極17に引き出されない。ウェネルト電極16の電位を高く(電位の負の値を小さく)していけば電子ビームBが陽極17に引き出されやすくなって、ウェネルト電極16の電位を高くするのに伴ってエミッション電流も高くなる。電子ビームBはウェネルト電極16の電位によって集束して、陽極17付近で電子ビームBが一旦結像する。このときの結像の径を、本明細書では『仮想光源径』と呼ぶ。
空間電荷効果が発生しないようにウェネルト電極16の電位を高くしていけば、図11(a)に示すように仮想光源径φが一旦小さくなる。しかし、電位を高くしすぎると、図11(b)に示すように仮想光源径φが大きくなってしまう。仮想光源径φが大きくなるとX線源径も大きくなって、X線撮像装置の分解能が低下する。逆に仮想光源径φが小さい場合には分解能も向上する。図12に、エミッション電流Iに対する仮想光源径φの変化を模式的に示す。仮想光源径φが小さくなっているエミッション電流I(またはそれに対応したウェネルト電極16の電位)の範囲が、最適値の電子ビーム量の範囲に相当する。
なお、オペレータは上述した範囲で最適と思われる電子ビーム量を設定する。具体的には、例えばエミッション電流を変化させたときの電子ビームの拡がり(エミッションパターン)を予め求めて、パターンが空間電荷効果によってぼけずにかつ仮想光源径φが小さいとオペレータが判断したときの電子ビーム量を最適値としてメモリ部35(図3を参照)に記憶しておけばよい。そしてそのときのエミッション電流あるいはエミッション電流に対応するウェネルト電極16の電位を操作することで、電子ビーム量を最適な値に固定した状態で制御することができる。
また、陰極11を長時間点灯させると、陰極11の点灯時間や陰極11の温度(すなわち陰極温度)や真空度に依存して陰極11のチップが消耗して、チップの形状が変化する。これによって、図12に示すように、エミッション電流Iに対する仮想光源径φの変化も、点線に示すように変化する。そこで、陰極11の点灯時間や陰極温度や真空度と、最適値の電子ビーム量との相関関係をメモリ部35(図3を参照)に記憶して、これらの消耗のファクタを考慮して電子ビーム量を設定することで、陰極11を長時間点灯させた場合でも、電子ビーム量を最適な値に固定した状態で制御することができる。
実施例1,2に係るX線管およびそれを制御する制御用のインターフェイスから構築されるシステム全体の概略図である。
X線管の構成を示す概略断面図である。
インターフェイスの構成を示すブロック図である。
実施例1のX線発生制御方法に係る一連の処理を示すフローチャートである。
第1集束コイルの励起強度とターゲットに到達する電子ビーム量との相関関係、および第1,第2集束コイルの各励起強度の相関関係を示すグラフである。
実施例1の一連の処理における操作画面の一態様を示す図である。
(a),(b)は、実施例1のフローを併せたグラフである。
実施例2のX線発生制御方法に係る一連の処理を示すフローチャートである。
実施例2の一連の処理における操作画面の一態様を示す図である。
(a),(b)は、実施例2のフローを併せたグラフである。
ウェネルト電極付近の電子ビームを模式的に表した説明図であり、(a)は、仮想光源径が小さいときの説明図であり、(b)は、仮想光源径が大きいときの説明図である。
エミッション電流に対する仮想光源径の変化を模式的に表したグラフである。
エミッション電流に対するX線量の変化の測定結果を示したグラフである。
変形例に係る各相関関係(テーブル)の概略図である。
(a)〜(c)は、通常の操作においてX線管の各段の集束コイルの励起強度をそれぞれ変えたときの陰極からの電子ビームの照射状態を示す概略図である。
符号の説明
1 … X線管
2 … X線検出器
3 … インターフェイス
11 … 陰極
12 … ターゲット
13 … 集束コイル
131 … 第1集束コイル
132 … 第2集束コイル
32 … コントローラ
33 … 入力部
34 … モニタ
35a … 第1近似プログラム
35b … 第2近似プログラム
40,60 … 操作画面
S … システム
A … X線撮像装置
B … 電子ビーム