JP4263941B2 - 円筒状合成樹脂フィルムの成形装置及び成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状合成樹脂フィルムの成形装置及び成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、厚み精度、表面精度に優れた円筒状の合成樹脂フィルムを得る方法としては、例えば、特許文献1、特許文献2等に記載のものが知られている。これらは、金属製の成形円筒体の筒内に液状の合成樹脂を供給した後、成形円筒体を回転させて液状樹脂を筒内面に一様に流延させながら、液状樹脂を加熱して硬化させることによって円筒状の合成樹脂フィルムを成形する。
【0003】
この成形装置により合成樹脂フィルムを成形する場合、液状樹脂の加熱温度の調節が極めて重要である。つまり、液状樹脂の加熱温度が高すぎると、液状樹脂の蒸発速度が過大となって不均一な蒸発が生じ、フィルム表面に凹凸が発生する等のフィルムの品質低下を来すことになる。また逆に、液状樹脂の加熱温度が低すぎると、品質上は問題ないが、蒸発速度が小さくなる結果、液状樹脂の硬化に時間がかかり過ぎ、生産効率が低下して生産コストの上昇を招くのである。
【0004】
従来の成形装置は、遠赤外線ヒータ等で成形円筒体の外側を加熱して筒内の液状樹脂を間接的に加熱する方法や、成形円筒体の筒内へ熱風を供給して液状樹脂を直接加熱する方法が採られている。そして、成形中の液状樹脂の加熱状態を把握するために、成形円筒体の外表面温度、或いは成形円筒体を囲う炉の内部温度等を計測し、この計測温度を予め実験で求めておいた最適な加熱温度に一致させるようにヒータ等の加熱手段を制御していた。
【0005】
しかしながら、これら成形円筒体の外表面温度等は、液状樹脂それ自体の温度を示すものではなく、例えば、室内の気温、湿度等の外部条件や、液状樹脂の吸湿状態、更にはブロワ等による換気流量の影響によって変動する。したがって、たとえ成形円筒体の外表面温度を実験時の最適温度と比較しながら忠実に加熱制御したとしても、これらの外部条件等が実験時と異っていたり、或いはブロワ等の換気能力にばらつきがある場合には、実験時の最適なフィルム成形条件を再現することが困難な場合があった。
【0006】
また、成形すべき円筒状樹脂フィルムの材質や膜厚が同じであっても、その口径や長さが異なる場合には、その都度、実験を行なって改めて最適な加熱温度を見出す必要があり、手間がかかる難点があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−39858号公報
【特許文献2】
特開2000−6172号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置に上記のような難点があったことに鑑みて為されたものであり、例えば、室内の気温、湿度等の外部条件や、液状樹脂の吸湿状態、或いは換気手段の性能等が変わっても、確実に高品質な円筒状合成樹脂フィルムを効率的に成形することができる成形装置と成形方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の技術的課題は、成形すべき円筒状樹脂フィルムの口径や長さが変わっても、必ずしもその都度、事前実験を行なって改めて最適な加熱温度を見出す必要のない円筒状合成樹脂フィルムの成形装置と成形方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、液状樹脂の加熱温度を制御するにあたり、液状樹脂それ自体の状態を捉えるのではなく、従来、単に排気されるに過ぎなかった液状樹脂の蒸発物に着目することによって本発明を完成したのである。
【0011】
即ち、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置は、成形円筒体の筒内に液状樹脂を供給し、該成形円筒体を回転させながら該液状樹脂を加熱して硬化させることにより該成形円筒体の筒内面に沿った円筒状の合成樹脂フィルムを成形する成形装置であって、
該液状樹脂の加熱により発生する蒸発物の蒸発量を計測する計測手段を備えたことを特徴とする円筒状合成樹脂フィルムの成形装置。
【0012】
なお、ここで、液状樹脂とは、室温或いは若干の加熱により液状を呈する樹脂材料をいい、この樹脂材料は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の別を問わず、また、これら樹脂の前駆体をも含むものである。樹脂材料それ自身で液状を呈するものの他、各種の有機溶媒に溶解して樹脂溶液となるものも含む。
【0013】
また、ここで、液状樹脂の加熱により発生する蒸発物とは、加熱反応によって生成されて蒸発する反応生成物の他、例えば、樹脂材料を有機溶媒に溶解させた樹脂溶液から揮発する有機溶媒のように反応によらない蒸発物をも含むものである。
【0014】
また、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置は、前記成形円筒体の筒内を換気する換気手段を備え、前記計測手段が、該換気手段により排気される排気流量を測定する流量測定手段と、該排気内の前記蒸発物の濃度を測定する濃度測定手段と、該排気流量及び該濃度の測定値から前記蒸発物の蒸発量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置は、前記成形円筒体が炉で囲まれており、該炉に前記換気手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置は、前記換気手段が前記成形円筒体の筒内を吸気する吸気装置を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置は、前記計測手段により求めた蒸発物の蒸発量を予め設定された基準量と比較して該液状樹脂の加熱を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
更にまた、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形方法は、成形円筒体の筒内に液状樹脂を供給し、該成形円筒体を回転させながら該液状樹脂を加熱して硬化させることにより該成形円筒体の筒内面に沿った円筒状の合成樹脂フィルムを成形する成形方法であって、該液状樹脂の加熱により発生する蒸発物の蒸発量を計測し、該蒸発物の計測量を予め求めておいた基準量と比較することによって該液状樹脂に対する加熱を制御することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形方法は、前記成形円筒体の筒内を換気し、この換気により排気される排気流量を測定するとともに該排気内の前記蒸発物の濃度を測定し、該排気流量及び該濃度の測定値から前記蒸発物の蒸発量を演算することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0021】
図1において、符号1で指示するものは、円筒状合成樹脂フィルムを成形するための成形円筒体である。成形円筒体1は、両端が開放したステンレス鋼製の円筒材から成り、筒内面が鏡面仕上げ加工されている。この成形円筒体1の筒内に液状樹脂を供給した後、成形円筒体1を回転させて液状樹脂を筒内面に一様に流延させながら、液状樹脂を加熱して硬化させることにより円筒状の合成樹脂フィルムを成形する。
【0022】
図1において、符号2で指示するものは、上記成形円筒体1をその軸周りに回転させるための回転手段である。本実施形態の回転手段2は、水平かつ互いに平行に設けられた一対の軸21で回転可能な一対の受けローラ22から構成されている。これら一対の受けローラ22間に成形円筒体1を載置し、図示しない駆動手段により一対の受けローラ22を同速度、同方向へ回転させることによって、成形円筒体1を軸周りに回転させる。
【0023】
符号3で指示するものは、成形円筒体1の筒内に供給した液状樹脂を加熱するための加熱手段である。本実施形態の加熱手段3は、成形円筒体1の斜め上方に配設された一対の遠赤外線ヒータ31から構成されている。この遠赤外線ヒータ31で成形円筒体1の外側を加熱することによって、成形円筒体1の筒内に供給した液状樹脂を間接的に加熱する。これら一対の遠赤外線ヒータ31は、後述する制御手段8によりその出力が制御される。
【0024】
符号4で指示するものは、成形円筒体1、受けローラ22、及び遠赤外線ヒータ31を包囲する炉である。本実施形態の炉4は、その下部構造の基部41と、上部構造の蓋部42とから構成されており、炉4の内側には全面に亘って保温のための断熱材43が敷設されている。蓋部42を図示しない昇降手段により上昇させて炉4を開くことによって、成形円筒体1を着脱することができる。
【0025】
符号5で指示するものは、上記成形円筒体1の筒内を換気するための換気手段である。本実施形態の換気手段5は、上記炉4の蓋部42の上部に設けられた給気パイプから成る給気路51と、炉4の基部41の下部に設けられた排気パイプから成る排気路52と、この排気路52に接続された吸気装置53とから構成されている。この吸気装置53で炉4内を吸気しながら、その負圧で給気路51を通じて外気を炉4内に取り入れることによって炉4内を強制的に換気する。この炉4内の強制換気によって同時に成形円筒体1の筒内が換気され、液状樹脂の加熱により筒内に発生する蒸発物を炉4外へ排出する。
【0026】
本実施形態では、吸気装置53の吸気によって炉4内を換気しているので、炉4内および成形円筒体1の筒内を減圧状態に保ちながら換気することができる。したがって、成形すべき液状樹脂が、有機溶媒に樹脂材料を溶解させて成る樹脂溶液である場合、炉4内を減圧することで有機溶媒の蒸発を促進させることができる。
【0027】
なお、排気路52に吸気装置53を接続すると共に、吸気路51に送風装置を接続し、これら吸気装置53及び送風装置によって成形円筒体1の筒内を換気するようにしても良い。この場合、吸気装置53及び送風装置をそれぞれ制御することによって炉4内の減圧状態を積極的に調節することも可能となる。また、排気路52に吸気装置53を接続する代わりに吸気路51に送風装置を接続し、この送風装置で炉4内へ外気を送風することによって成形円筒体1の筒内を換気しても良い。
【0028】
図1において、符号6で指示するものは、液状樹脂の加熱により発生する蒸発物の蒸発量を計測するための計測手段である。本実施形態の計測手段6は、上記換気手段5の排気路52の途中に設けられ、吸気装置53により排気される排気の流量を測定する流量測定手段の差圧式流量センサ61と、同じく排気路52の途中に設けられ、排気内の蒸発物の濃度を測定する濃度測定手段の接触燃焼式ガスセンサ62と、これら排気流量及び蒸発物濃度の測定値に基づいて排気内の蒸発物の蒸発量を演算する演算手段63とから構成されている。つまり、演算手段63は、測定した排気流量(L/min)と蒸発物濃度(L/L)とを乗算して蒸発物の蒸発量(L/min)を演算する。演算手段63は、演算した蒸発量に相当する計測信号を後述する制御手段8へ出力する。
【0029】
なお、排気の流量測定手段は、勿論、差圧式流量センサ61に限定されるものではなく、例えば、温度差計測式センサ、面積フローター式センサ等を採択しても良い。また、蒸発物の濃度測定手段についても、接触燃焼式ガスセンサ62に限定されるものではなく、例えば、半導体式ガスセンサ、光吸収分光式ガスセンサ、水晶振動子式ガスセンサ等を採択することができる。
【0030】
図1において、符号7で指示するものは、蒸発物の蒸発量に関する基準量を入力設定するための設定手段である。高品質な円筒状合成樹脂フィルムを効率的に成形し得る最適な蒸発量を予め実験等により求めておき、この基準量を設定手段7に入力設定する。基準量が入力された設定手段7は、その基準信号を次述する制御手段8へ出力する。
【0031】
図1において、符号8で指示するものは、上記計測手段6により求めた蒸発物の蒸発量を、上記設定手段7に入力設定された基準量と比較して液状樹脂の加熱を制御するための制御手段である。即ち、制御手段8は、上記演算手段63から出力された計測信号と、設定手段7から出力された基準信号とを比較し、両者が一致するように上記加熱手段3の遠赤外線ヒータ31へ制御信号を出力し、遠赤外線ヒータ31の出力を制御するのである。
【0032】
しかして、本実施形態の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置は、成形中に液状樹脂の加熱により発生する蒸発物の蒸発量を計測手段6で計測し、この蒸発物の計測量が設定手段7に設定した基準量よりも小さい場合には、制御手段8が遠赤外線ヒータ31の出力を大きくする制御信号を出力して、液状樹脂に対する加熱を強める。また逆に、蒸発物の計測量が基準量よりも大きい場合には、遠赤外線ヒータ31の出力を停止させるか或いは小さくする制御信号を出力して、液状樹脂に対する加熱を停止させるか弱めるかする。こうして、実験時における最適なフィルム成形条件を再現して高品質な円筒状合成樹脂フィルムを効率的に成形するのである。
【0033】
このように、本実施形態の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置によれば、従来のように液状樹脂の加熱状態を計測するのではなく、液状樹脂から発生する蒸発物の蒸発量を計測し、この計測量に基いて液状樹脂の加熱を制御するので、たとえ、室内の気温、湿度等の外部条件や液状樹脂の吸湿状態が実験時と異なっていたり、吸気装置の換気能力にばらつき等があっても、フィルムの品質が左右されることがなく、確実に高品質な円筒状合成樹脂フィルムを効率的に成形することができる。本発明において計測対象とする液状樹脂の蒸発物の蒸発量は、成形時における液状樹脂の硬化の進行状態を直接的に示すものであるので、この蒸発物の蒸発量に基いて液状樹脂の加熱を調節することで、液状樹脂の硬化の進行を的確に制御することができ、確実に高品質な円筒状合成樹脂フィルムを成形することができる。
【0034】
また、本実施形態では、蒸発物の蒸発量に基いて液状樹脂の加熱を制御するので、例えば、成形すべき液状樹脂の単位面積あたりの最適な蒸発量が既に知られている場合、この単位蒸発量に基いて演算によって上記設定手段7に入力する基準量を求めることができる。したがって、円筒状樹脂フィルムの口径や長さが変わっても、円筒状樹脂フィルムの表面積から基準量を求めることができ、必ずしもその都度、実験を行う必要がなく、作業能率を向上させることができる。
【0035】
更にまた、本実施形態では、換気手段5の強制換気により排気される排気を検出して蒸発物の蒸発量を求めているので、液体樹脂の加熱によって炉4内で発生する蒸発物の蒸発量を、漏れなく確実に計測することができ、液状樹脂の硬化の進行を正確に捉えて液状樹脂の加熱を制御することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置及び成形方法の実施例について説明する。
【0037】
比較例
まず、成形円筒体の外表面温度に基いて加熱手段を制御する従来の成形方法(以下、単に従来方法という。)によって、事前実験により得られた以下の最適条件で円筒状合成樹脂フィルムを成形した。そして、このとき液状樹脂から発生する蒸発物の蒸発量の推移を計測した。
最適条件
液状樹脂;熱硬化性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を、N−メチルピロリドンとジメチルフォルムアミドとの混合溶媒に溶解(15重量%)し、これに添加材としてカーボンブラック(9重量%)を混合分散させたポリアミド酸溶液。
成形円筒体のサイズ;内径400mm、長さ600mm
成形円筒体の回転速度;150rpm
成形円筒体の外表面温度;110℃
排気流量;1000L/min
外部温度;23℃
成形時間;3時間
【0038】
液状樹脂は、最終的に得られるポリイミドフィルムの厚みが100μmになるように計量し、この液状樹脂を、成形円筒体1をゆっくり回転させながら筒内に注入した。そして、上記の最適条件で成形した後、常温に冷却し、成形円筒体1から円筒状合成樹脂フィルムを取り出した。この円筒状合成樹脂フィルムは実質的にイミド化していない未閉環の、カーボンブラックが分散されたポリアミド酸フィルムであった。
【0039】
このとき計測した液状樹脂の蒸発物の蒸発量の推移を図3に示す。図3では、成形開始から各時点までの蒸発量の合計(L)を、成形開始から成形完了までの蒸発量の総合計(L)に対する比(%)として表している。
【0040】
なお、得られたポリアミド酸の円筒状合成樹脂フィルムは、この後、別の円筒状金型に嵌着し、200〜450℃の熱風乾燥機中に投入して残存溶媒の完全除去及びイミド化を行い、最終的に円筒状のポリイミドフィルムを得る。
【0041】
比較例1
次に、上記最適条件のうち、外部温度だけを23℃から15℃に変更した成形条件で、従来方法によって円筒状合成樹脂フィルムを成形した。その結果、成形完了時において液状樹脂の硬化が不十分で、フィルムを成形円筒体1から取り外すことができなかった。
【0042】
このとき計測した蒸発量の推移を図4に実線で示す。図4では、成形開始から各時点までの蒸発量の合計(L)を、上記最適条件での成形開始から成形完了までの蒸発量の総合計(L)に対する比(%)として表している。なお、図4中の点線は、上記最適条件での蒸発量の推移(図3と同じ)を表すものである。
【0043】
図4から明らかなように、外部温度が事前実験時と異なった場合、たとえ成形円筒体1の外表面温度(110℃)に基いて加熱手段を制御しても、液状樹脂から発生する蒸発物の蒸発量が変わってしまい、事前実験時の高品質なフィルムを成形することができない。
【0044】
実施例1
次に、本発明に係る成形方法によって、上記比較例1と同様、上記最適条件のうちの外部温度を23℃から15℃に変更し、そして、成形円筒体の外表面温度に基くのではなく、上記最適条件時の蒸発物の蒸発量の推移(図3参照)に基いて、加熱手段を制御して円筒状合成樹脂フィルムを成形した。その結果、外部温度が23℃である最適条件時と同様の高品質なポリアミド酸の円筒状合成樹脂フィルムを得ることができた。そして、上記イミド化処理を行うことにより目的とする円筒状のポリイミドフィルムを得ることができた。
【0045】
比較例2
次に、上記最適条件のうち、成形円筒体1の内径だけを400mmから250mmに変更した成形条件で、従来方法によって、円筒状合成樹脂フィルムを成形した。その結果、成形完了時においてフィルム表面に部分的な筋状の凹凸が発生し、フィルムが不良品になった。
【0046】
このとき計測した蒸発量の推移を図5に実線で示す。図5では、成形開始から各時点までの蒸発量の合計(L)を、上記最適条件での成形開始から成形完了までの蒸発量の総合計(L)に対する比(%)として表している。なお、図5中の点線は、上記最適条件での蒸発量の推移(図3と同じ)を表すものである。
【0047】
図5から明らかなように、成形円筒体1の内径が事前実験時と異なった場合、たとえ成形円筒体1の外表面温度(110℃)に基いて加熱手段を制御しても、液状樹脂から発生する蒸発物の蒸発量が変わってしまい、事前実験時の高品質なフィルムを成形することができない。
【0048】
実施例2
次に、本発明の成形方法によって、上記比較例2と同様、上記最適条件のうちの成形円筒体1の内径を400mmから250mmに変更し、そして、成形円筒体の外表面温度に基くのではなく、上記最適条件時の蒸発物の蒸発量の推移(図3参照)に基いて、加熱手段を制御することにより円筒状合成樹脂フィルムを成形した。その結果、成形円筒体1の内径が400mmである最適条件時と同様の高品質なポリアミド酸の円筒状合成樹脂フィルムを得ることができた。そして、上記イミド化処理を行うことにより目的とする円筒状のポリイミドフィルムを得ることができた。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置及び成形方法は、その他の形態でも実施し得るものである。
【0050】
例えば、上記実施形態では、成形円筒体1を回転させる回転手段2として、成形円筒体1を載置可能な一対の受けローラ22を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、駆動手段により回転駆動される回転体を、成形円筒体1の両端部または一端部に着脱自在に取り付けることによって、直接成形円筒体1を回転させても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、液状樹脂を加熱する加熱手段3として、成形円筒体1の外側を加熱する遠赤外線ヒータ31を採用しているが、例えば、電熱線ヒータ等を用いても良く、また、各種のヒータを成形円筒体1の筒内に配置して液状樹脂を直接加熱するようにしても良い。更にまた、加熱手段3の遠赤外線ヒータ31の代わりに、あるいは遠赤外線ヒータ31と共に、成形円筒体1の筒内へ熱風を供給して液状樹脂を加熱する熱風加熱装置を設けても良い。この場合、熱風加熱装置を利用して成形円筒体1の筒内の換気を行うことも可能となる。
【0052】
更にまた、上記実施形態では、成形円筒体1の両端が開放され、この成形円筒体1を炉4で囲んでいるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、成形円筒体1の両端を、換気手段を備えた蓋部材で覆うようにしても良い。
【0053】
更にまた、上記実施形態では、液状樹脂の蒸発物の蒸発量を成形開始から成形完了までの各時点で計測し、各時点における計測量を、予め設定手段7に基準量として設定入力しておいた蒸発量の推移パターンと比較しながら、加熱手段3を制御しているが、本発明は勿論これに限定されるものではない。例えば、蒸発物の総蒸発量が、基準量を超えたときに単に加熱手段の出力を停止させて成形完了させるように制御しても良い。更にまた、蒸発物の計測量を表示させ、オペレータがこの表示に基いて手動で加熱手段の制御を行っても良い。
【0054】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内で当業者の知識に基づき種々の改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成しても、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る円筒状合成樹脂フィルムの成形装置と成形方法によれば、液状樹脂から発生する蒸発物の蒸発量を計測し、この計測量に基いて液状樹脂に対する加熱を制御するので、たとえ、室内の気温、湿度等の外部条件や液状樹脂の吸湿状態、或いは換気手段の性能等が変わっても、これらによって、フィルムの品質が左右されることがなく、確実に高品質な円筒状合成樹脂フィルムを効率的に成形することができる。
【0056】
また、本発明によれば、蒸発物の蒸発量に基いて液状樹脂の加熱を制御できるので、例えば、成形すべき液状樹脂の単位面積あたりの最適な蒸発量が既に知られている場合には、この単位蒸発量に基いて演算によっても基準量を求めることができる。したがって、円筒状樹脂フィルムの口径や長さが変わっても、必ずしもその都度、実験を行なう必要がなく、作業能率を向上させることができる。
【0057】
更にまた、換気手段の換気により排気される排気の排気流量と排気内の蒸発物の濃度を測定し、これら測定値から蒸発物の蒸発量を演算すれば、液体樹脂から発生する蒸発物の蒸発量を、漏れなく確実に計測することができ、液状樹脂の硬化の進行を正確に捉えて液状樹脂の加熱を制御することができ、より確実に高品質な円筒状合成樹脂フィルムを効率的に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置の部分断面正面図である。
【図2】本発明の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置の成形円筒体1の断面側面図である。
【図3】事前実験により得られた最適条件で、従来方法によって円筒状合成樹脂フィルムを成形した際の蒸発物の蒸発量の推移を示す計測図である。
【図4】外部温度を変更した成形条件で、従来方法によって円筒状合成樹脂フィルムを成形した際の蒸発物の蒸発量の推移を示す計測図である。
【図5】成形円筒体のサイズを変更した成形条件で、従来方法によって円筒状合成樹脂フィルムを成形した際の蒸発物の蒸発量の推移を示す計測図である。
【符号の説明】
1 成形円筒体
2 回転手段
3 加熱手段
4 炉
5 換気手段
6 計測手段
61 差圧式流量センサ(流量測定手段)
62 接触燃焼式ガスセンサ(濃度測定手段)
63 演算手段
7 設定手段
8 制御手段
Claims (7)
- 成形円筒体の筒内に液状樹脂を供給し、該成形円筒体を回転させながら該液状樹脂を加熱して硬化させることにより該成形円筒体の筒内面に沿った円筒状の合成樹脂フィルムを成形する成形装置であって、
該液状樹脂の加熱により発生する蒸発物の蒸発量を計測する計測手段を備えたことを特徴とする円筒状合成樹脂フィルムの成形装置。 - 前記成形円筒体の筒内を換気する換気手段を備え、前記計測手段が、該換気手段により排気される排気流量を測定する流量測定手段と、該排気内の前記蒸発物の濃度を測定する濃度測定手段と、該排気流量及び該濃度の測定値から前記蒸発物の蒸発量を演算する演算手段とを含む請求項1記載の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置。
- 前記成形円筒体が炉で囲まれており、該炉に前記換気手段が設けられている請求項2記載の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置。
- 前記換気手段が前記成形円筒体の筒内を吸気する吸気装置を備えている請求項2又は請求項3記載の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置。
- 前記計測手段により求めた蒸発物の蒸発量を、予め設定された基準量と比較して該液状樹脂の加熱を制御する制御手段を備えた請求項1乃至請求項4の何れかに記載の円筒状合成樹脂フィルムの成形装置。
- 成形円筒体の筒内に液状樹脂を供給し、該成形円筒体を回転させながら該液状樹脂を加熱して硬化させることにより該成形円筒体の筒内面に沿った円筒状の合成樹脂フィルムを成形する成形方法であって、
該液状樹脂の加熱により発生する蒸発物の蒸発量を計測し、該蒸発物の計測量を予め求めておいた基準量と比較することによって該液状樹脂に対する加熱を制御することを特徴とした円筒状合成樹脂フィルムの成形方法。 - 前記成形円筒体の筒内を換気し、この換気により排気される排気流量を測定するとともに該排気内の前記蒸発物の濃度を測定し、該排気流量及び該濃度の測定値から前記蒸発物の蒸発量を演算する請求項6記載の円筒状合成樹脂フィルムの成形方法。
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