JP4263016B2 - 複合樹脂材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は結晶性樹脂を用いた複合樹脂材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、結晶性高分子(樹脂)の結晶性を改良するために、結晶性樹脂にタルクやベンジリデンソルビトールなどの添加材を添加していた。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−109657
【特許文献2】
特開平11−029690号
【特許文献3】
特開平10−176084号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タルクやベンジリデンソルビトールなどの添加材を結晶性樹脂に添加して結晶性を改良するには、これら添加材を比較的多量に添加しなければならないという課題がある。添加材の添加量が少ない場合には、複合樹脂材の強度の向上がほとんど見られないからである。強度が向上しないのは、添加材と結晶性樹脂との密着性がそれ程よくないためと考えられる。
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、添加材の少量の添加によっても力学的特性を改善できる複合樹脂材およびその製造方法を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る複合樹脂材の製造方法は、粉末状の結晶性樹脂材料と底の無いカップ形状をなす炭素網層が積層した気相成長法による炭素繊維とを溶媒中に混合し、結晶性樹脂材料を溶解させる工程と、得られた樹脂溶液中から溶媒を揮散させ乾燥させて混合物を得る乾燥工程と、乾燥した混合物を加熱して樹脂材料を溶融し、次いで融点よりも低い所要温度に保持して前記炭素繊維周囲の樹脂材料を結晶化させ、該炭素繊維と結晶化した樹脂材料とにより内部に網目構造を有する複合樹脂材を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
上記結晶性樹脂材料を結晶化させた混合材料を任意の形状に成形する成形工程を含むことを特徴とする。
【0008】
前記炭素繊維に、表面の堆積層が除去されて炭素網層の端面が露出した炭素繊維を用いることを特徴とする。
【0009】
前記結晶性樹脂材料に対する前記炭素繊維の配合割合が0.001〜1wt%であることを特徴とする。
前記炭素繊維に、直径が80〜150nm、アスペクト比が10〜200の炭素繊維を用いることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
本発明に係る気相成長法による炭素繊維は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が積層した構造をなす(以下ヘリンボン構造の炭素繊維という)。
製造方法の一例を説明する。
反応器は公知の縦型反応器を用いた。
原料にベンゼンを用い、ほぼ20℃の蒸気圧となる分圧で、水素気流により反応器に、流量0.3l/hでチャンバーに送り込んだ。触媒はフェロセンを用い、185℃で気化させ、ほぼ3×10-7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。反応温度は約1100℃、反応時間が約20分で、直径が平均約100nmのヘリンボン構造の炭素繊維が得られた。原料の流量、反応温度を調節する(反応器の大きさによって変更される)ことで、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層され、数十nm〜数十μmの範囲に亙って節(ブリッジ)の無い中空の炭素繊維が得られる。
得られる炭素繊維は直径が80〜150nm程度、長さが数十〜数百μm程度のものが得られるが、長さを数μm〜数十μmのものに調整するとよい。この長さの調整は、後記するように、この底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層された炭素繊維をグラインディングすることによって切断することによって行える。
【0011】
以下、まず、炭素繊維の特性について説明する。
図1は、上記気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図、図2はその拡大図、図3はその模式図である。
図から明らかなように、傾斜した炭素網層10を覆って、アモルファス状の余剰炭素が堆積した堆積層12が形成されていることがわかる。14は中心孔である。
このような堆積層12が形成されている炭素繊維を、400℃以上、好ましくは500℃以上、一層好ましくは520℃以上530℃以下の温度で、大気中で1〜数時間加熱することにより、堆積層12が酸化されて熱分解し、除去されて炭素網層の端面(六員環端)が一部露出する。
あるいは、超臨界水により炭素繊維を洗浄することによっても堆積層12を除去でき、炭素網層の端面を露出させることができる。
あるいはまた上記炭素繊維を塩酸または硫酸中に浸漬し、スターラーで撹拌しつつ80℃程度に加熱しても堆積層12を除去できる。
【0012】
図4は、上記のように約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図、図5はその拡大図、図6はさらにその拡大図、図7はその模式図である。
図5〜図7から明らかなように、上記のように熱処理を行うことによって、堆積層12の一部が除去され、炭素網層10の端面(炭素六員環端)が露出していることがわかる。なお、残留している堆積層12もほとんど分解されていて、単に付着している程度のものと考えられる。熱処理を数時間行い、また超臨界水での洗浄を併用すれば、堆積層12を100%除去することも可能である。
また、図4に明らかなように、炭素繊維10は、底の無いカップ形状をなす炭素網面が多数積層しており、少なくとも数十nm〜数十μmの範囲で中空状をなしている。
中心線に対する炭素網層の傾斜角は20°〜35°位である。
【0013】
また、図6や図7に明確なように、炭素網層10の端面が露出している外表面および内表面の部位が、端面が不揃いで、nm(ナノメーター)、すなわち原子の大きさレベルでの微細な凹凸16を呈していることがわかる。図2に示すように、堆積層12の除去前は明確でないが、上記の熱処理により堆積層12を除去することによって、凹凸16が現れた。
露出している炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。これは大気中での熱処理により、堆積層12が除去されつつ、露出する炭素網層の端面に、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性が高いからと考えられる。
また中空構造をなすこと、および凹凸16によるアンカー効果は大きい。
【0014】
図8は、ヘリンボン構造の炭素繊維(サンプルNO.24PS)を、大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
上記熱処理を行うことによって、堆積層12が除去されることは図5〜図7で示したが、図8のラマンスペクトルから明らかなように、Dピーク(1360cm-1)およびGピーク(1580cm-1)が存在することから、このものは炭素繊維であるとともに、黒鉛化構造でない炭素繊維であることが示される。
【0015】
すなわち、上記ヘリンボン構造の炭素繊維は、炭素網面のずれた(グラインド)乱層構造(Turbostratic Structure)を有していると考えられる。
この乱層構造炭素繊維では、各炭素六角網面が平行な積層構造は有しているが各六角網面が平面方向にずれた、あるいは回転した積層構造となっていて、結晶学的規則性は有しない。
この乱層構造の特徴は、層間への他の原子等のインターカレーションが生じにくい点である。このことは1つの利点でもある。すなわち、層間へ物質が入りづらいことから、前記のように、露出され、活性度の高い炭素網層の端面に原子等が担持されやすく、したがって、効率的な担持体として機能することが期待される。
【0016】
図9は、上記熱処理を行って炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
また図10は、上記炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維に3000℃の熱処理(通常の黒鉛化処理)を行った後の炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
図10に示すように、炭素網層の端面を露出させた炭素繊維に黒鉛化処理を行っても、Dピークが消失しないことがわかる。これは、黒鉛化処理を行っても黒鉛化していないことを示す。
図示しないが、X線回折を行っても、112面の回折線が出てこないことからも、上記炭素繊維は黒鉛化していないことが判明した。
【0017】
黒鉛化処理を行っても黒鉛化しないということは、黒鉛化しやすい堆積層12が除去されているからと考えられる。また、残ったヘリンボン構造の部位が黒鉛化しないということが明らかとなった。
上記のように、高温雰囲気下でも黒鉛化しないことは、熱的に安定であることを意味する。
【0018】
上記のようにして得られるヘリンボン構造をなす炭素繊維は、底の無いカップ形状、すなわち断面がハの字状をなす単位炭素網層が数万〜数十万個積層している短繊維(長さ数十μm〜数百μm)である。
上記短繊維を分断するには、水あるいは溶媒を適宜量加えて、乳鉢を用いて乳棒により緩やかにすりつぶすことによって行える。
すなわち、上記短繊維(堆積層12が形成されたもの、堆積層12が一部あるいは全部除去されたもの、いずれでもよい)を乳鉢に入れ、乳棒により機械的に緩やかに短繊維をすりつぶすのである。
乳鉢での処理時間を経験的に制御することによって、長さが数百nm〜数十μmの炭素繊維を得ることができる。
【0019】
その際、環状の炭素網層は比較的強度が高く、各炭素網層間は弱いファンデアワールス力によって結合しているにすぎないので、環状炭素網層はつぶれることはなく、特に弱い結合部分の炭素網層間で分離されることとなる。
なお、上記短繊維を液体窒素中で乳鉢によりすりつぶすようにすると好適である。液体窒素が蒸発する際、空気中の水分が吸収され、氷となるので、氷とともに短繊維を乳棒によりすりつぶすことによって、機械的ストレスを軽減し、上記の単位繊維層間での分離が行える。
工業的には、上記炭素繊維をボールミリングによってグラインディング処理するとよい。
【0020】
上記のように露出した炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度が高く、また大きな表面エネルギーを有するものである。これは、前記したように、大気中での熱処理により、堆積層12が除去されつつ、露出する炭素網層の端面に、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性が高いからと考えられる。
【0021】
本発明では上記の炭素繊維を結晶性樹脂材料中に混入させて複合樹脂材を形成するのである。
複合樹脂材の製造工程は、粉末状の結晶性樹脂材料と底の無いカップ形状をなす炭素網層が積層した気相成長法による上記炭素繊維とを溶媒中に混合させる工程と、混合物中から溶媒を揮散させる乾燥工程と、乾燥した混合物を加熱溶融して、所要温度に保持して結晶性樹脂材料を結晶化させる工程とを含むことを特徴とする。
また、この結晶性樹脂材料を結晶化させた混合材料を任意の形状に成形して複合樹脂材とすることができる。
【0022】
上記のように、結晶性樹脂材料中に、上記炭素繊維が混入され、結晶化処理されることにより、炭素繊維周囲の樹脂材料が結晶化され、該炭素繊維と結晶化した樹脂材料とにより網目構造が形成され、これにより機械的強度が向上されることがわかった。
図11、および図12は、上記のように製造した複合樹脂材をキシレンによりエッチングした場合の複合樹脂材の表面の電子顕微鏡写真を示す。キシレンによるエッチング処理により、結晶化していない樹脂材料はエッチングされて除去され、網目構造が残っていることがわかる。
この網目構造が複合樹脂材中に存在することから、複合樹脂材の機械的強度が向上するのである
また炭素繊維が混入されることによって、導電性や熱伝導特性も向上される。
【0023】
この網目構造の形成は、前記のように、上記炭素繊維の表面は、カップ状をなす炭素網層の端面が露出していて極めて活性度が高いことにより、炭素繊維周囲の結晶性樹脂材料の結晶化が促進される結果からと考えられる。
また、上記炭素繊維は、直径がナノメーター単位の極めて細い棒状をなすことから、その排除体積効果により、炭素繊維周囲の結晶性樹脂材料の結晶化を促進させるものとも推測される。
【0024】
高分子の結晶成長には、結晶化前、すなわち結晶化誘導期における結晶化のための核形成が必要と言われる。
高分子の結晶化の過程は、図13に示すように、
1.高分子鎖の配向化(結晶化誘導期)
2.結晶化による最密充填化
を辿る。
1.の高分子鎖の配向化は一種のスピノーダル分解にあたり、スピノーダル分解が生じるためには濃度揺らぎが形成される必要がある。
そこで、排除体積効果の大きい棒状粒子(炭素繊維)を結晶性樹脂材料に配合すると、炭素繊維の周りの樹脂濃度がその他の部位よりも小さくなり、濃度揺らぎが生じ、スピノーダル分解が生じやすくなる。結晶化樹脂材料が融点以下になると、エネルギーの低いトランス型(高分子鎖が波状、直線状に伸びる。すなわち配向する)をとるようになり、次第に配向され、やがて結晶化する(図13)のである。
このように径の小さな棒状粒子はその排除体積効果により結晶性樹脂材料の結晶を促進する核となりうるのである。
因みに、直径50nm、長さ1μmの棒状粒子の排除体積は、同体積で球状をなす粒子の排除体積の約2.5倍とされる。
直径が150nm以下でアスペクト比が2以上の棒状粒子が結晶化の核剤となりうる。
【0025】
本発明では、上記炭素繊維が、その表面の炭素網層のエッジ部が露出していて活性度が非常に高いことと、上記の排除体積効果が大きいこととが相俟って、炭素繊維の周囲の樹脂材料の結晶化を促進し、網目構造を形成するものと考えられる。また結晶化速度も大きくなり、複合樹脂材の生産効率も向上することとなる。
なお、排除体積効果からすれば、炭素繊維は長いほど良好である。しかし、あまり長すぎると、炭素繊維同士が絡まり合い、繭玉状となってしまい、樹脂材料中に配合した際に樹脂が浸透せず、空隙(ボイド)が生じ、強度低下の原因となるので好ましくない。
したがって、炭素繊維は、直径が80〜150nm、平均長が数百nm〜数十μmの炭素繊維(アスペクト比が2以上、特には10〜200程度が好ましい)を用いると好適である。
また、結晶性樹脂材料に対する炭素繊維の配合割合は特に限定されないが、分散性さえよければ、0.001wt%程度の添加量でも強度の向上が認められる。また炭素繊維の添加量が1wt%よりも多くてもよいが、コストの点から添加量を1wt%以下とするのが有利である。このように、結晶性樹脂材料に対する炭素繊維の配合割合は0.001〜1wt%が好ましく、0.01〜0.3wt%程度が最適である。
【0026】
結晶性樹脂材料と上記炭素繊維との混合方法も特には限定されない。
例えば、結晶性樹脂材料のポリマー重合時に上記炭素繊維を添加するようにしてもよい。
あるいは結晶性樹脂材料がフッ素樹脂の場合には、粉末状のフッ素樹脂と上記炭素繊維とをアルコールを溶媒に用いて混合するようにしてもよい。
あるいは、粉末状の結晶性樹脂材料と上記炭素繊維とを押出機を用いて混練し、混合するようにしてもよい。
これら混合物を加熱溶融し、次いで成形型内で融点以下の所要温度に保持して結晶性樹脂材料を結晶化させて所要形状の複合樹脂材に成形するのである。
【0027】
結晶性樹脂材料は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂などの汎用樹脂を好適に用いることができる。
結晶性樹脂材料がポリエチレンテレフタレートの場合、炭素繊維を混入した混合材料を約280℃の温度で溶解した後、融点以下の温度であるほぼ230℃の温度で約10分間保持して結晶化させるようにすると好適である。
結晶性樹脂材料がポリプロピレンの場合、混合材料を約190℃の温度で溶解し、結晶化工程で、混合材料を融点温度よりも低いほぼ140℃の温度で約10分間保持して結晶化させるようにすると好適である。
【0028】
本発明で得られる複合樹脂材は種々の用途に用いることができる。
1)振動板
バイブレータ、スピーカ、マイクなどに組み込まれる振動板に好適に用いることができる。振動板の強度が上がるので薄膜化でき、振動させるエネルギーを少なくできるので有利である。
2)ラッピングフイルム
電車、自動車、スポーツ用品、バス、建築物などの表層を覆うラッピングフイルムとして好適に用いることができる。フイルム強度向上による薄膜化、それによるコストの軽減化が可能で、薄肉化によるハンドリング性が向上する。
3)製品保護フイルム、包装用フイルム、ステッカーシール基材、磁気テープ等の母材等に用いて、薄膜化、それによるコストの軽減化が可能となる。
4)押出し成形品、射出成形品
これら製品の機械的強度の向上、寸法安定性の向上が図れる。
電子機器部品、IT関連商品部品、自動車部品等の部材、マイクロマシン等の部材、時計等精密機器の部材、燃料電池のセパレータ等の部材などに好適に用いることができる。
5)FRTP(ファイバー レインフォースド サーモ プラスティック:繊維強化熱可塑樹脂)
上記炭素繊維を混入させ、樹脂の結晶化を促進させることで、FRTPの機械特性向上、軽量化、構造物の簡略化、寸法安定性、熱膨張係数の安定化が図れる。
6)航空機、空中を飛翔あるいは飛行する物体、宇宙空間にて使用される機器などの構造材料として、また、X線等の放射線を透過させたい医療用機器の部材として、また、軽量化を図りたいパソコンなどの家電機器の筐体などに好適である。
また、つり竿、ゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレームなどのスポーツ用品の強度部材に好適である。
また、計測機器の部材、自動車オートバイなどの移動体の外装、構造体や住宅、ビルなどの建築物構造体の部材にも好適である。
また、レジャーボート、ヨット等の船舶、潜水艦等の内外装、構造材にも好適である。
7)樹脂糸
強度向上による小線径化が可能となる。
8)コーティング
金属、木材、プラスティック、ゴム、エラストマー、無機物等のコーティング材の膜強度を向上させ、薄膜化や強度付与が可能である。
【0029】
【実施例】
実施例1
あらかじめ90℃の真空オーブン中で8時間乾燥させ、水分を除去した粉状ポリエチレンテレフタレート(PET)とジーエスアイクレオス社製カルベールLongCNT(底のないカップ状をなす炭素網層が多数積層した炭素繊維。直径80〜150μm、アスペクト比が約200に調整したもの)を、PETに対して炭素繊維が0.3wt%となるように計りとった。これに溶媒としてヘキサフルオロプロパノール(HFIP)を加え、固形分が10wt%になるように溶液を調整し、この溶液をガラスシャーレにキャスティングし、室温で乾燥させた。次ぎに、試料の熱履歴を取り、溶媒を完全に除去し、かつ一体化するために、混合材料を約280℃の温度で溶融し、次いで、融点温度よりも低い約230℃の温度で約10分間保持し、結晶化を促進した。また得られた樹脂材料をホットプレスにより任意の形状に成形して複合樹脂材を得た。
【0030】
図14は、炭素繊維の配合量と結晶化時間との関係を示すグラフである。図14から明らかなように、炭素繊維を0.3wt%配合したものは、炭素繊維を配合しないものに比して結晶化時間を約半分に短縮できた。
また、図15は広角X線回折測定曲線を示す。同図から明らかなように、炭素繊維を0.3wt%配合したものは、PETの結晶面間隔が011面、010面、110面、100面共に約0.5%減少した。
表1は、PETに上記炭素繊維を0.15wt%添加したもので、上記方法により、長さ50mm、厚み3mmに作成した試料の降伏点、弾性率を測定した結果を示す。降伏点、弾性率はPETのみの試料に比してそれぞれ209%、251%向上している。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例2
あらかじめ90℃の真空オーブン中で8時間乾燥させ、水分を除去した粉状ポリプロピレン(PP)とジーエスアイクレオス社製カルベールLongCNT(底のないカップ状をなす炭素網層が多数積層した炭素繊維。直径80〜150μm、アスペクト比が約200に調整したもの)を、PPに対して炭素繊維が0.3wt%となるように計りとった。これに溶媒としてヘキサンを加え、固形分が10wt%になるように溶液を調整し、この溶液をガラスシャーレにキャスティングし、室温で乾燥させた。次ぎに、試料の熱履歴を取り、溶媒を完全に除去し、かつ一体化するために、混合材料を約190℃の温度で溶融し、次いで、融点温度よりも低い約140℃の温度で約10分間保持し、結晶化を促進した。また得られた樹脂材料をホットプレスにより任意の形状に成形して複合樹脂材を得た。
実施例1と同様に、炭素繊維を0.3wt%配合したものは、炭素繊維を配合しないものに比して結晶化時間を約半分に短縮できた。またPPの結晶単位格子はa、b、c軸共に約0.5%減少した。さらに弾性率も約200%向上した。また、前記図11、図12の、複合樹脂材をキシレンで約10秒間エッチング処理したサンプルの表面の電子顕微鏡写真から明らかなように、炭素繊維および炭素繊維の周囲に結晶化した樹脂により網目構造が形成されていることがわかる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、気相成長法による炭素繊維を配合して結晶化処理を行うことで、炭素繊維の周囲に結晶性樹脂材料を効率よく短時間で結晶させることができ、高速成形性が得られると同時に、炭素繊維、および炭素繊維の周囲に形成された結晶化した樹脂により網目構造が形成され、機械的強度に優れるとともに、導電性、熱伝導特性も向上する複合樹脂材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】図2の模式図である。
【図4】約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【図5】図4の拡大図である。
【図6】図5のさらに拡大図である。
【図7】図6の模式図である。
【図8】ヘリンボン構造の炭素繊維(サンプルNO.24PS)を、大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図9】上記熱処理を行って炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図10】上記炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維に3000℃の熱処理を行った後の炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図11】複合樹脂材をキシレンでエッチング処理したサンプル表面の電子顕微鏡写真である。
【図12】図11の拡大図である。
【図13】高分子の結晶化の過程を示す説明図である。
【図14】炭素繊維の配合量と結晶化時間との関係を示すグラフである。
【図15】PETの結晶面の広角X線回折測定曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
10 炭素網層
12 堆積層
14 中心孔
16 凹凸
Claims (5)
- 粉末状の結晶性樹脂材料と底の無いカップ形状をなす炭素網層が積層した気相成長法による炭素繊維とを溶媒中に混合し、結晶性樹脂材料を溶解させる工程と、
得られた樹脂溶液中から溶媒を揮散させ乾燥させて混合物を得る乾燥工程と、
乾燥した混合物を加熱して樹脂材料を溶融し、次いで融点よりも低い所要温度に保持して前記炭素繊維周囲の樹脂材料を結晶化させ、該炭素繊維と結晶化した樹脂材料とにより内部に網目構造を有する複合樹脂材を形成する工程とを含むことを特徴とする複合樹脂材の製造方法。 - 上記結晶性樹脂材料を結晶化させた混合材料を任意の形状に成形する成形工程を含むことを特徴とする請求項1記載の複合樹脂材の製造方法。
- 前記炭素繊維に、表面の堆積層が除去されて炭素網層の端面が露出した炭素繊維を用いることを特徴とする請求項1または2記載の複合樹脂材の製造方法。
- 前記結晶性樹脂材料に対する前記炭素繊維の配合割合が0.001〜1wt%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の複合樹脂材の製造方法。
- 前記炭素繊維に、直径が80〜150nm、アスペクト比が10〜200の炭素繊維を用いることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の複合樹脂材の製造方法。
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