JP4261805B2 - 塩の除去方法、それを利用した接触改質方法及び接触改質装置 - Google Patents

塩の除去方法、それを利用した接触改質方法及び接触改質装置 Download PDF

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素油中の塩の除去方法に関し、より詳しくは、炭化水素油から塩化アンモニウム等の塩を極めて簡単な設備で効率的に除去する塩の除去方法に関する。また、本発明はかかる塩の除去方法を利用した接触改質装置及び接触改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製プロセスや石油化学プロセスにおいて、各種の石油製品や半製品を製造するために、蒸留塔による蒸留分離操作が広く採用されている。ところが、蒸留塔への原料油中に塩類が含有されていると、蒸留塔内において、塩類が固体となって析出してトレイ等のインターナルに堆積したり、付着し、気液の流路を閉塞して運転不調をきたすことがある。これは、同伴される塩類が蒸留塔内を移動する過程で濃縮されて、更には塩類の析出に好都合な温度、圧力、流速などの条件の部位に到達して析出が促進されて、塩類の堆積又は付着が起こるものと考えられる。石油精製等のプロセスにおいて処理される油に含まれてトラブルを引き起こす代表的な塩として塩化アンモニウムが挙げられる。塩化アンモニウム等の塩類は、高温では固体にならないが、低温で固体となり析出して各種のトラブルを引き起こすことになる。
【0003】
このように塩類は、析出条件を満たす場所で、特に温度が低下することによって析出するので、蒸留塔に限らず、配管や熱交換器の閉塞、ホンプ/コンプレッサー等回転機の駆動不良を引き起こす等のトラブルを生じる。甚だしい場合には、当該機器の運転、更にはプロセス全体の運転を一時停止し、塩析出物を除去することも必要になる。これは、通常、1年以上の連続運転をすることが前提である石油精製や石油化学などの装置産業にとって大きな損失となる。
【0004】
近年、石油精製業において、ナフサの接触改質装置は、連続触媒再生装置を装備した接触改質装置が広く採用されている。この連続触媒再生式の接触改質装置は、常にフレッシュな触媒(再生触媒)を改質反応器に供給し、順次複数の反応器に流して劣化した触媒を触媒再生系に送り、該触媒再生系においても再生を連続的に行い、活性を回復した触媒を再び改質反応器に供給するものである。このとき、改質触媒は、活性を調節するために触媒再生中に塩素化合物で処理される。塩素化合物の塩素分は再生触媒とともに改質反応器に入る。水素雰囲気かつ高温の改質反応器内で、塩素分は、ナフサフィードなどに不純物として同伴されるか、あるいは改質反応器の雰囲気下に生成された塩基性化合物と塩を生成し、接触改質油とともに反応器から流出する。塩は、高温下では固体にならないが、冷却されて120℃以下の温度で固化して反応器に後続するスタビライザー又はデブタナイザーなどの蒸留塔、配管や熱交換器、及びホンプ/コンプレッサー等の回転機において析出して上述のようなトラブルを引き起こす。
【0005】
油中の塩類を除去する方法として、プロセス流体(炭化水素油)と水又は苛性ソーダ水溶液とを混合してプロセス流体中に含まれる塩を水又は苛性ソーダ水溶液側に移行させて除去する方法がある。この方法は、除去効果は期待されるが、水又は苛性ソーダ水溶液の注入設備、油と水又は苛性ソーダ水溶液との混合設備、油と水又は水溶液との分離設備、廃水処理設備等が必要となり、しかも、洗浄時にプロセス流体に微量水分が混入するため、水分によって性能が左右される装置が下流にある場合には、徹底した水分除去の追加対応が要求される。
前記洗浄方法に類似した塩の除去方法として、特開2000‐96067号公報は、蒸留塔内に堆積する塩類を除去するために、蒸留塔に水を導入する水溶性塩類を含む炭化水素油の蒸留方法を開示している。この方法は、水の注入設備、油と水の分離設備を増設ないし強化する必要があり、更に後続の炭化水素処理プロセスが水分を嫌う場合、上記の洗浄による方法と同様に炭化水素油中の微量水分を除去しなければならない問題を有している。
【0006】
また、特開2001−72984号公報には、液状炭化水素流体中の無機及び有機塩素化合物を除去するために、(a)酸化亜鉛と(b)結合剤及び(c)少なくとも一種のアルカリ(土類)金属化合物を主成分として含有する塩素化合物除去剤、及びそれを用いる除去方法が開示されている。この発明は、塩素化合物を除去するとともに、有機塩素化合物の生成を抑制して塩素リークまでの期間の長期化を図ったものである。しかしながら、この発明の実施例にも示されているように、塩素化合物除去剤は、吸着剤であるから一定量の塩素化合物を吸着すると、それ以上の塩素化合物は吸着されずにリークする。したがって、リークする前に吸着剤を交換する必要があるが、その予測(すなわち、吸着剤の寿命予測)は極めて困難であり、計画的な定期修理に合わせて吸着剤を無駄なく使いきることは不可能といえる。更に、吸着剤による方法は、当然、吸着剤が充填された塩素化合物除去設備を増設し、定期修理時ごとに高価な吸着剤を購入して交換する必要があり、しかも使用済み吸着剤を二次公害に配慮して処分しなければならない等の問題も有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、極めて簡単で運転が容易な設備で、炭化水素油中の塩化アンモニウム等の塩を効果的に除去する塩の除去方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記塩の除去方法を利用したナフサの接触改質装置及び接触改質方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、改質反応器に後続する蒸留塔における運転不良の発生原因について検討し、この原因が塩の析出、特に塩化アンモニウムの析出によるものであることを見出した。
この塩析出のメカニズムの詳細は明らかではないが、改質触媒の活性を調節するために再生中に注入される有機塩素化合物と、原料油等に由来する有機窒素化合物とが、改質反応器において、その高温及び水素雰囲気下で、塩化水素及びアンモニアを生成し、それらが反応して塩を生成して、温度の低下に伴い塩固形物(塩化アンモニウムの結晶)として局所的に析出したものと推察される。また、特に蒸留塔で問題となるのは、蒸留塔内において塩の濃縮、温度低下に伴う塩固形物(結晶)の成長、油の流速、その他の条件が大きな塩固形物の形成を促して蒸留塔のある部位に析出・堆積することと推察される。
【0009】
本発明者等は、更に、この塩はある条件下で炭化水素油中において固体状態で存在し、フィルターによって容易に濾過除去できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、前記課題を解決した本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 塩を含有する炭化水素油を、実質的に水のない雰囲気下で120℃以下の温度で濾過する炭化水素油中の塩の除去方法。
(2) 塩が、塩化アンモニウムである上記(1)記載の塩の除去方法。
(3) 炭化水素油が、蒸留前のナフサ接触改質油である上記(1)又は(2)に記載の塩の除去方法。
(4) 濾過を、0.1〜20μmの目開きを有するフィルターを用いて行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の塩の除去方法。
【0010】
(5) ナフサを接触改質する接触改質装置において、接触改質反応器と、該接触改質反応器から流出する接触改質油に含まれる軽質分を除去するための蒸留塔との間に、実質的に水のない雰囲気下で前記接触改質油を120℃以下の温度で濾過して接触改質油中の塩を除去するフィルターを設けてなる接触改質装置。
(6) ナフサを接触改質する接触改質方法において、接触改質反応器と、該接触改質反応器から流出する接触改質油に含まれる軽質分を除去するための蒸留塔との間にフィルターを設け、実質的に水のない雰囲気下で前記接触改質油を120℃以下の温度で濾過して、接触改質油中の塩を除去する接触改質方法。
【0011】
本発明は、塩を含有する炭化水素油を、実質的に水のない雰囲気下で120℃以下で濾過する炭化水素油中の塩の除去方法であり、本発明によれば、簡単な設備で、効率よく炭化水素油から塩を除去することができる。したがって、後続の蒸留設備のトレイ等の閉塞、配管や熱交換器の閉塞、ホンプ/コンプレッサー等回転機の駆動不良などの塩析出によるトラブルを回避することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明でいう塩を含有する炭化水素油としては、120℃以下の温度で析出する塩化アンモニウムなどの塩を含有する炭化水素油、原油や原料油に由来する塩を含有する精製油、石油留分を処理するプロセス又は石油化学プロセスで発生する塩を含有する当該プロセスの流出油などが挙げられる。具体的には、接触改質装置において、特には連続触媒再生装置を装備した接触改質装置において、接触改質反応器から流出する接触改質油、常圧蒸留装置から留出したナフサや灯油などの留出油を水素化脱硫した水素化脱硫油、減圧蒸留装置から留出する減圧軽油などが挙げられる。
【0013】
すなわち、本発明は、塩を含有する炭化水素油、例えば接触改質油、水素化脱硫油などを、実質的に水のない雰囲気下で120℃以下の温度で濾過する塩化アンモニウム等の塩を除去する方法である。以下に本発明の実施の形態を、ナフサを接触改質する接触改質装置を代表的に取り上げて、図1及び2を参照して具体的に説明するが、本発明は、接触改質装置に限定されるものではない。図1に本発明の一実施態様としての接触改質装置を示し、図2に従来の接触改質装置を示す。図1及び2において、同じ設備は同一の符号を付した。
【0014】
図2において、接触改質装置の原料ナフサ(脱硫ナフサ)はリサイクル水素と混合、加熱されたフィード7として改質反応器1に供給される。改質反応器1において、ナフサは水素ガス及び高温下に、連続的に再生系から供給される再生触媒13で接触改質される。図2で改質反応器は符号1として1基のみで示しているが、通常は、3、4基あって、ナフサと水素の混合物(フィード7)は3、4基の反応器間に設けられた加熱炉で温度調節されて各反応器を順次通過して改質される。触媒も反応器を順次通過して劣化触媒14となり、再生系(図示せず)に送られて再生され、活性を取り戻して、再生触媒13として再び改質反応器1に供給される。改質反応器1から流出する接触改質油8は、クーラー2で冷却されて分離槽3に送られ、水素リッチな軽質ガス10と該軽質ガス10が分離された接触改質油9として流出する。通常軽質ガス10の一部はリサイクル水素として使用される。接触改質油9は、ヒーター4で昇温されてスタビライザー又はデブタナイザーなどの蒸留塔5に送られて蒸留される。蒸留塔5の塔頂から軽質ガス又は液化石油ガス(LPG)以下の軽質留分12が流出し、塔底から蒸気圧を調整された又はLPG以下の軽質留分が分離された接触改質油11が流出する。接触改質油11はガソリン基材として又は芳香族成分を回収して化学製品を製造する石油化学用の原料として利用される。
【0015】
図1は、本発明の一実施態様を示すものであり、上記蒸留塔5に供給するために接触改質油9をヒーター4で加熱する前に、フィルター6を備えた接触改質装置である。
既に述べたように、触媒活性を調節するために注入された塩素化合物由来の塩素分は、再生触媒とともに改質反応器に導入され、高温かつ水素雰囲気の改質反応器内で塩化水素に変換される。一方、ナフサは高度に水素化脱硫された脱硫ナフサを接触改質装置の原料として用いるが、微量の窒素化合物を含んでおり、窒素分は改質反応器内でアンモニアに変換される。改質反応器内で生成した塩化水素及びアンモニアは、冷却されて塩化アンモニウムの塩として析出する。反応器に入る塩素分及びアンモニア分は、必ずしも塩形成当量で導入されるわけではなく、一般的に塩素分が過剰である。塩素分は塩化水素又は塩素イオンとして装置材料を腐食することがあるので好ましくないばかりでなく、固化、析出する塩が専ら後続の機器、特に蒸留塔5で析出・堆積して、閉塞、運転不調などの不具合ももたらす。
【0016】
そこで本発明では、接触反応器1から流出後、降温して水素リッチの軽質ガスが分離された接触改質油9を、蒸留塔に供給する前の低温のうちに、120℃以下の温度で濾過する。すなわち、本発明は、図1に示すように、従来の接触改質装置にないフィルター6を設置して軽質ガス分離後の接触改質油9の少なくとも一部をフィルター6に通して濾過するものである。こうすることによって、接触改質油中の塩化アンモニウムなどの塩はフィルター6で捕捉されて、蒸留塔5で塩の析出・堆積による、蒸留塔5の運転不調等の不具合は解消される。
【0017】
120℃を超える温度では、固形の塩の析出が少なく、フィルターで捕捉されずに通過する塩(あるいは、塩化水素及びアンモニア)が多くなり好ましくない。塩は、温度が低いほど析出し、濾過で捕捉するために好ましいが、後続の蒸留段階で昇温する必要があるので、装置あるいは製油所全体のエネルギーバランスを考慮して決めるべきである。濾過温度は100℃以下、特に50℃以下が好ましい。炭化水素油の温度が120℃を超えている場合には、周知の適当な方法を用いて前記の温度に調整すればよい。
【0018】
また、本発明で炭化水素油は、実質的に水分を含まない雰囲気下で濾過される。すなわち、本発明において、炭化水素油の濾過は、系外から水、水蒸気などの水分を加えることなく行うことをいい、接触改質油等の炭化水素油をそのまま濾過処理することを意味する。すなわち、炭化水素油は、少なくとも飽和以上の水分との混合物の形態で濾過されるものではなく、飽和未満の水分を含み得る。炭化水素油に溶解する水分量は、常温(10〜25℃)で飽和未満であることが好ましく、炭化水素油が接触改質油の場合、50重量ppm以下が好ましい。したがって、本発明の方法で塩を除去した炭化水素油には水分が実質的に含まれていないので、後続の水を嫌うプロセスに特別配慮する必要がなく、更に、水洗などの塩除去方法と異なり油水分離の必要がなく、しかも潜熱の大きな水を加熱冷却することがないのでエネルギー的にも有利である。
【0019】
本発明の濾過に用いるフィルターとしては、塩類を除去できるものであれば、不織布フィルター、焼結フィルター、中空糸膜フィルターなどどのようなものでも用いることができる。平膜を折り重ねたプリーツ型のカートリッジをケーシングに収納するタイプのフィルターが、コンパクトで大量に濾過処理できることから、特にバルクで扱われる石油製品などを処理する場合、好ましく用いることができる。
【0020】
また、フィルター材料として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アクリル、セルロースエステル、グラスファイバー、金属、紙などを挙げることができる。フィルター材料の選定にあたっては、芳香族成分を多く含有する接触改質油のように炭化水素油によっては材料を溶解したり、あるいは膨潤するものがあるので、事前に対象油種やその温度、圧力などの使用条件において材料の耐性を検討して適宜選定することが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックは、このような用途では膨潤されることがあるので、避けるか、あるいは表面処理などにより膨潤対策を施したものを用いることが好ましい。
【0021】
フィルターの目開きは、塩類を効率よく捕捉するために0.1〜20μmにすることが好ましい。サイズが0.1μm未満のフィルターでは、差圧が大きくなり、また通油後、このフィルター差圧がフィルターの許容差圧に上昇するまでの期間が短くなり、系から切り離して捕捉された塩を頻繁に水洗等の方法で除去しなければならなくなるので実用的でない。20μmをこえるサイズは、捕捉されずにフィルターを通過する塩類が多くなりすぎてフィルターを設置する意味がなくなる。目開きは、1〜10μmがより好ましく、1〜5μmが特に好ましい。
【0022】
具体的にフィルターを接触改質装置に装備する場合、図1に示すように、フィルターは反応器1から最初の蒸留塔の間で接触改質油の温度が120℃以下の流路(配管)、例えばリサイクル水素ガスの分離槽3から流出する接触改質油9の流路中に設置することが好ましい。120℃以下の温度の場所がない場合には、クーラー(冷却用熱交換器)を通す等公知の方法で接触改質油の温度を120℃以下に下げてフィルターを通すようにすればよい。また、フィルターは、前記接触改質油の全量又は少なくとも一部、例えば油流量の10〜90%がフィルターを通るように設けることもできる。このようにして、蒸留塔の運転不調を回避できる最低量の塩を捕捉するようにフィルターに通す油量を制限することによって、フィルターサイズを小さくすることができる。
【0023】
フィルターは、複雑な制御を必要とせず、操作も特別の熟練を必要としない設備である。フィルターで塩類が捕捉されていくと、フィルター差圧が上昇する。フィルターの設計上許容される上限の差圧に達したら、通油を停止して差圧が上限に達したフィルターをオイル系から切り離す。
通常、塩化アンモニウムなどの塩は水溶性であるので、フィルターに水を通して捕捉された塩類を水に溶解して除去することができる。フィルターの洗浄方法としては、フィルターに水を連続的に通すことにより行ってもよいし、あるいはフィルターケーシングに水を満たして一定時間保持して塩を溶解して排水するバッチ洗浄を1回又は2回以上繰り返すことにより行ってもよい。フィルターに水を通す方向としては、接触改質油を通した方向に流しても、油とは逆向きに流してもよい。また、フィルターケーシングを開放してカートリッジを抜き出して、外部で水洗して塩を除去することもできる。
水洗後、フィルターに乾燥空気などを通して水分を除去したのち、フィルターをオイル系につなぎ接触改質油を通油する。フィルターはほぼフレッシュな状態に戻り、繰り返し使用することができる。
【0024】
また、フィルターは、炭化水素油の流路に2基以上を並列に設けて通油と水洗(及び待機)を互に連携して繰り返してもよいし、あるいは、炭化水素油流路に1基のみ設けて、フィルターの水洗中は、フィルターのバイパス(従来の炭化水素油の流路)に炭化水素油の全量を通すようにしてもよい。いずれにせよ、こうすることによって、当該炭化水素の処理装置の運転を停止することなく塩を除去することができる。
【0025】
なお、以上の説明では、石油精製業のナフサ接触改質装置に本発明の塩の除去方法を適用した例を、連続触媒再生装置を装備した接触改質装置を中心に説明したが、塩を含有する炭化水素油であれば適用できるので、固定床方式の接触改質装置にも触媒再生装置の有無に拘らず適用できる。更に、その他の石油精製プロセス又は石油化学プロセスにおける塩を含有する炭化水素油から塩を除去する場合についても同様に実施可能である。
例えば、ナフサは、接触改質装置で処理する前に不純物として含まれている硫黄分を除去するために必ず脱硫処理されている。この脱硫処理は通常水素化脱硫処理であり、不純物の硫黄化合物は水素化物(主にH2S)に変換されて分離除去される。この場合、脱硫処理される原料の粗ナフサ中の窒素化合物も水素化されてアンモニアを生成する。アンモニアは、粗ナフサやリサイクル水素中の不純物として系内に持ち込まれた塩素分などと反応して塩化アンモニウムなどの塩を生成する。このような塩を含有する水素化脱硫ナフサにも、本発明の塩の除去方法は適用でき、効果的に塩を除去することができる。
【0026】
本発明の方法は、フィルターを炭化水素油の流路に設けるだけで塩を除去することができるものであるから、従来の水洗又はソーダ洗浄、蒸留塔への水の導入、吸着剤などによる方法と比較して、設備がシンプルで経済的であり、二次公害を懸念する必要がなく、運転にも全く熟練を要しない。
【0027】
【実施例】
次に、本究明を実施例に基づいてより詳細に説明する。ここでは、接触改質装置を用いて行った試験を示すが、本発明は実施例により何ら制約されるものではない。
【0028】
図1に示すように、実際の接触改質装置において、水素リッチガス10と接触改質油9とを分離する分離槽3の出口配管に、プリーツタイプの円筒形フィルターカートリッジをケーシングに装着したフィルター6を設置し、接触改質油9中の一定量をフィルターに通油して接触改質油中の塩化アンモニウムの除去試験を行った。
接触改質油中のアンモニウムイオン及び塩素イオンの濃度は、原料油や、触媒活性を調節するために注入される塩素量等によって異なるが、通常、重量比で塩素イオンがアンモニウムイオンの約2倍ないしそれ以上の割合で含まれている。塩化アンモニウムの生成は、アンモニウムイオンの量が支配していると言える。フィルターの入口及び出口から採取した接触改質油サンプル中のアンモニウムイオン濃度及び塩素イオン濃度を下記の方法により測定することによって、フィルターによる塩化アンモニウムの除去効果を評価した。
【0029】
(濃度測定方法)
接触改質油サンプル500mlを分液ロートに入れ、純水50mlを加えて密栓し、5分間激しく振とうした。その後5分間静置して水層及び油層を分離し、得られた水層中のアンモニウムイオン及び塩素イオンの濃度を、イオンクロマトグラフィーを用いて測定した。得られたアンモニウムイオン及び塩素イオンの測定値を接触改質油基準に換算して、接触改質油中のアンモニウムイオン濃度及び塩素イオン濃度を求めた。
【0030】
(実施例1)
表1に実施例1として示した仕様のフィルターを用い、これに接触改質油(圧力3.4MPa、温度35℃)を5kl/hrの流量で流し、フィルター差庄が許容差圧である0.3MPaに達したとき、接触改質油の供給を停止した。接触改質油の供給を停止した後、フィルターケーシングを開放してフィルターカートリッジを抜き出し、容量約20lの金属容器にこのフィルターカートリッジを入れ、純水を注いでフィルターカートリッジ全体を浸らせ、次いで排水した。
この操作を4回繰り返して塩化アンモニウムを水洗除去した後、5回目の注水を行い、フィルターカートリッジ全体が浸った状態でそのまま1時間静置してフィルター濾材の深部の塩化アンモニウムを十分に溶解させ、排水した。洗浄したフィルターカートリッジを約30℃の乾燥室にて24hr乾燥した後、フィルターカートリッジをケーシングにセットし、再び接触改質油を通油した。このようにして、接触改質油の通油、フィルター洗浄の操作を6回繰り返した。
通油開始時、通油停止時及び通油開始後2日目にフィルター入口及び出口の接触改質油をサンプリングし、上記の方法で各サンプル油中のアンモニウムイオン濃度及び塩素イオン濃度を測定し、塩化アンモニウムの除去効果を評価した。
【0031】
【表1】
Figure 0004261805
【0032】
この試験の結果、1回目から6回目の通油期間中(合計683hr)にわたり特に問題なく接触改質油をフィルターに通油することができた。フィルター入口及び出口のサンプル油中のアンモニウムイオン濃度及び塩素イオン濃度を、全通油期間にわたって測定し(n=18)、その算術平均した数値を表2に示す。表2に示すように、通油期間にわたって、フィルター出口のサンプル油中にアンモニウムイオンは検出されなかった。また、塩素イオン濃度の減少量は、フィルター入口の接触改質油に含まれるアンモニウムイオンとで塩化アンモニウムを形成する当量の塩素イオン量にほぼ相当している。したがって、接触改質油に含まれていた塩化アンモニウムは、フィルターによりほぼ全量除去できることが分かる。
【0033】
【表2】
Figure 0004261805
【0034】
(実施例2)
表1に実施例2として示した仕様のアクリル製フィルターを用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。アンモニウムイオン濃度と塩素イオン濃度(通油期間全体にわたる算術平均値)を、実施例1と同様に表2に示す。
その結果、1回目から6回目の通油期間(合計534hr)にわたり、特に問題なく良好に接触改質油を通油することができ、接触改質油中の塩化アンモニウムのほぼ全量をフィルターにより除去することができた。
【0035】
(参考例)
本発明のフィルターを設置していない図2に示す接触改質装置において、長期間の連続運転により、分離槽3の下流にある蒸留塔5において塩化アンモニウムの析出による不具合が認められた。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明は、実質的に水のない雰囲気下で120℃以下で濾過する炭化水素油中の塩の除去方法であり、簡単な濾過設備で塩を確実に除去することができるから、塩の析出による蒸留塔などの精製設備におけるトラブルの発生を未然に防ぎ、更に水や吸着剤を使う従来の方法と異なり、設備がシンプルで経済的であり、運転に全く熟練を要しないなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】接触改質装置にフィルターを設置した本発明の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】フィルターを具備しない従来の接触改質装置を示すフロー図である。
【符号の説明】
1・・・接触改質反応器
5・・・蒸留塔
6・・・フィルター
9・・・接触改質油(軽質ガス分離後)

Claims (6)

  1. 塩を含有する炭化水素油を、実質的に水のない雰囲気下で120℃以下の温度で0.1〜20μmの目開きを有するフィルターに通して濾過し、塩をフィルターで捕捉することを特徴とする炭化水素油中の塩の除去方法。
  2. フィルターを切り離して水で洗浄し、捕捉された塩を溶解して除去し、塩が除去されたフィルターを炭化水素油中の塩の除去に再使用する請求項1記載の塩の除去方法。
  3. 塩が、塩化アンモニウムである請求項1又は2記載の塩の除去方法。
  4. 炭化水素油が、蒸留前のナフサの接触改質油である請求項1〜3のいずれかに記載の塩の除去方法。
  5. ナフサを接触改質する接触改質装置において、接触改質反応器と、該接触改質反応器から流出する接触改質油に含まれる軽質分を除去するための蒸留塔との間に、実質的に水のない雰囲気下で前記接触改質油を120℃以下の温度で濾過して接触改質油中の塩を除去するフィルターを設けてなることを特徴とする接触改質装置。
  6. ナフサを接触改質する接触改質方法において、接触改質反応器と、該接触改質反応器から流出する接触改質油に含まれる軽質分を除去するための蒸留塔との間にフィルターを設け、実質的に水のない雰囲気下で前記接触改質油を120℃以下の温度で濾過して、接触改質油中の塩を除去することを特徴とする接触改質方法。
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