JP4261486B2 - 薄型歯列矯正器具 - Google Patents

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Description

本発明は、広くは歯列矯正治療の過程において歯に固定される器具に関する。より詳細には、本発明は、歯表面に近接して位置するように小型で薄型である歯列矯正器具に関する。
歯列矯正は、歯科学の一般的な主題領域内の専門分野である。歯列矯正治療では、変位した歯を歯列弓に沿って正しい位置に移動させることが必要である。歯列矯正治療により、患者に対し、見た目を審美的により美しくするとともに、咬合を改善することができる。
歯列矯正治療の1つのタイプでは、まとめて「ブレース」として知られる1組の部品を使用する必要がある。このタイプの治療では、ブラケットとして知られる小さいスロット付き器具が患者の前歯、犬歯および双頭歯に固定される。ブラケットのスロット内にアーチワイヤが収容され、そのアーチワイヤが、歯の所望の位置までの移動を案内する軌道を形成する。
歯列矯正アーチワイヤの各端部は、頬面管(バッカルチューブ)として知られる小さい器具の閉鎖された細長い通路内に収容されることが多い。頬面管は、患者の臼歯に接続される。閉鎖された通路は、アーチワイヤの端部が口腔内で患者の軟組織に接触しないようにするのに役立ち、それがなければ、接触により痛みおよび損傷がもたらされる可能性がある。いくつかの例では、頬面管に、望ましい場合、管をブラケットに変更するために開放することができる、通路の一方の側に沿ったコンバーチブルキャップが設けられる。
ブラケットおよび頬面管等の歯列矯正器具は、通常、基部と、基部から外側に延在する本体と、器具をアーチワイヤに接続する支持構造と、を有する。あるタイプの基部は、「直接接合」基部として知られ、接着剤により器具を歯のエナメル面に直接固定するように適合される。別のタイプの基部は、「溶接基部」として知られ、患者の歯を取り囲む金属歯列矯正バンドに溶接されるように適合される。
種々のアーチワイヤ支持構造もまた知られている。頬面管の場合、アーチワイヤ支持構造は、閉鎖されたアーチワイヤスロットまたは通路を画定する内壁部を有する円柱状部材であってもよい。他のタイプの頬面管は、アーチワイヤスロットまたは通路を画定する壁部を有する細長い矩形ブロックを備えるアーチワイヤ支持構造を有する。コンバーチブルキャップを有する頬面管は、キャップが取り外されるとアーチワイヤを頬面管に結紮するために使用することができるタイウィングとして知られる小さいウィングを有することが多い。
歯列矯正ブラケットの場合、アーチワイヤ支持構造は、アーチワイヤスロットの3つの面を画定する壁部を有することが多く、第4の壁は、アーチワイヤを挿入するために開放されている。場合によっては、壁部は、タイウィングの1つまたは複数の対の間に配置される。他の場合では、壁部は、ブラケットの中心にかつタイウィングからずれて配置される。前者の構造の例は、米国特許第5,746,594号明細書に示されており、後者の構造の例は、米国意匠特許第290,040号明細書に図示されている。
長年にわたり、ブレースの審美的外観を改善する多くの試みがなされてきた。このために、製造業者は、ブラケットのサイズを低減することにより、それらが口腔内に配置された時により見え難くなるようにした。このようにサイズを低減することが、ブラケットが隣接する軟組織上に過度に突き当たる可能性を低くするため、患者の快適性の向上に役立つことができる。
これまで、種々の薄型歯列矯正器具が提案されてきた。器具によっては、製造業者は、器具の基部とアーチワイヤ支持構造との間に配置される本体のサイズを低減することにより、頬唇方向に(すなわち、患者の唇または頬に向う方向に)ブラケットの深さ全体を低減した。かかる構造により、アーチワイヤ支持構造が基部に比較的近接して配置されることになる。
他の場合では、製造業者は、従来アーチワイヤ支持構造と基部との間に配置されている本体を排除した。たとえば、1つの市販の頬面管器具は、基部に直接溶接される反転した3面トラフに似た細長い略「U」字形構造を備える。この器具では、基部の頬唇側面が、アーチワイヤが4面すべての上で包囲されるようにアーチワイヤスロットに対する第4の壁としての役割を果たす。
しかしながら、従来知られる薄型器具の多くは、満足のいくものであるとは考えられていない。たとえば、上記の段落で述べた器具は、アーチワイヤスロット内の基部の部分を含む基部の頬唇側面が、歯の形状に一致する凸状の湾曲構造を有するため、完全に満足のいくものではない。この器具のアーチワイヤスロット内に収容されるアーチワイヤは、アーチワイヤスロットの長さの一部のみに沿って凸面形状の基部を圧迫する可能性がある。その結果、アーチワイヤと器具との間の移動に対する正確な制御を達成することが困難となり、歯が所望の位置まで移動しない可能性がある。
知られているように、当該技術分野では、比較的薄型であるが関連する歯の移動に対し信頼性のある正確な制御を提供する歯列矯正器具が必要とされている。
本発明は、新規な基部を有する器具を提供することにより従来の歯列矯正器具の上述した不都合を克服する。本発明の一態様では、他の方法による場合よりもアーチワイヤを歯の面に近接した位置に収容することができるように、基部の厚さが、その基部の種々の領域で変化する。基部の厚さの変化を、基部の歯に面する面を変更し、または基部の反対側の面を変更し、または両面を変更することによって実施してもよい。
本発明の別の態様では、器具の基部に、頬唇方向において外側に延在する1つまたは複数の突起が設けられる。適当な突起の例には、細長い隆起、曲線状のバンプ、ポスト、傾斜面(ランプ)およびプラットフォームがある。突起は、関連する歯の移動に対し堅固で正確な制御を達成することができるように、アーチワイヤの隣接する面に対する支持面としての役割を果たす。同時に、器具の薄型特性が維持される。
より詳細には、本発明は、一実施形態において、歯に面する第1面とその第1面の反対側の第2面とを有する基部を備える歯列矯正器具に関する。基部はまた、第1面から第2面に向う方向に延在する複数のキャビティも有し、キャビティは頬唇側−舌側方向に一定深さを有する。基部にはアーチワイヤ支持体が接続される。支持体は、咬合側壁部(すなわち、歯の外側先端に隣接して配置される壁部)と歯肉側壁部(すなわち、患者の歯茎または歯肉に隣接して配置される壁部)とを有する。咬合側壁部と歯肉側壁部との間において近心−遠心方向に(すなわち、歯列弓の中央に向かいかつそこから離れる方向に、歯列弓の経路に従って)、アーチワイヤスロットが延在する。アーチワイヤスロットは、歯に面する面を有する。基部は、第1面と第2面との間において頬唇側−舌側基準軸に沿った方向に一定厚さを有する。アーチワイヤスロットの歯に面する面に隣接する少なくとも1つの領域における基部の厚さは、基部の少なくとも1つの残りの領域における基部の厚さより小さい。キャビティのうちの少なくともいくつかの深さは、基部の厚さの変化に対応する関係で変化する。
本発明の別の実施形態では、歯列矯正器具は、歯に面する面を有する基部を備える。基部はまた、頬唇側−舌側方向に一定深さを有する複数のキャビティも有する。基部にはアーチワイヤ支持体が接続され、それは、咬合側壁部と歯肉側壁部とを有する。咬合側壁部と歯肉側壁部との間において略近心−遠心方向にアーチワイヤスロットが延在し、それは歯に面する面を有する。基部は、頬唇側−舌側基準軸に沿った方向に一定厚さを有する。基部の厚さは、アーチワイヤスロットの歯に面する面に隣接して位置する領域において変化する。キャビティの少なくともいくつかの深さは、基部の厚さの変化に対応する関係で変化する。
本発明の別の実施形態による歯列矯正器具は、歯に面する第1面と第1面の反対側の第2面とを有する基部を備える。基部はまた、第1面から第2面に向う方向に延在する複数のキャビティも有し、キャビティは、頬唇側−舌側方向に一定深さを有する。基部の第2面にアーチワイヤ支持体が接続される。器具を横切って略近心−遠心方向にアーチワイヤスロットが延在する。アーチワイヤスロットは、基部の第1面と第2面との間に少なくとも部分的に位置する経路に沿って延在する、歯に隣接する面を有する。アーチワイヤスロットの舌側の領域に位置するキャビティの少なくともいくつかの深さは、アーチワイヤスロットからずれた領域に位置するキャビティの深さより小さい。
別の実施形態において、本発明はまた、歯列矯正器具に関する。本実施形態では、器具は、歯に面する面を有する基部とアーチワイヤを収容するために基部に接続されるアーチワイヤ支持体とを備える。アーチワイヤ支持体を横切って略近心−遠心方向に、アーチワイヤスロットが延在する。基部は、頬唇側−舌側基準軸に沿った方向に一定深さを有する複数のキャビティを有する。アーチワイヤスロットの舌側の領域に位置するキャビティのうちの少なくともいくつかの深さは、アーチワイヤスロットの舌側の領域に位置する残りのキャビティのうちの少なくともいくつかの深さより小さい。
本発明のさらなる実施形態もまた、歯に面する第1面と第1面の反対側の第2面とを有する基部を備える歯列矯正器具に関する。基部にはアーチワイヤ支持体が接続され、それは、咬合側壁部と歯肉側壁部とを有する。咬合側壁部と歯肉側壁部との間において略近心−遠心方向にアーチワイヤスロットが延在し、それは舌側面を有する。基部の第1面は、アーチワイヤスロットに向う方向に延在する少なくとも1つの突起を有する。
本発明の実施形態もまた、歯列矯正器具に関する。本実施形態では、器具は、歯に面する第1面と第1面の反対側の第2面とを備えた基部を有する。基部には、少なくとも2つのタイウィングが直接接続される。タイウィングの各々は、全体として略「L」字形形状を有する。タイウィングのうちの少なくとも2つの間において略近心−遠心方向にアーチワイヤスロットが延在し、それは基部によって画定される歯に面する面を有する。
本発明のさらなる詳細は、特許請求の範囲の特徴において定義される。
本発明の一実施形態による歯列矯正器具を図1および図2に示し、概して数字20によって示す。器具20は、基部22と、基部22に接続されるアーチワイヤ支持体24と、を有する。アーチワイヤ支持体24内を、アーチワイヤを収容する細長いアーチワイヤスロット26が延在している。
より詳細には、基部22は、図2に示す歯に面する第1面28と、第1面28の反対側の第2面30と、を有する。第2面30は図1に示す。図示する例では、器具20は、歯の頬唇側面に固定されるように採用される。したがって、この例における基部22の第1面28を、舌側面(すなわち、患者の舌に面する面)とみなすことも可能であり、第2面30を、頬唇側面(すなわち、患者の唇または頬に面する面)とみなすことができる。
図2に示すように、基部22の第1面28に、器具20を患者の歯のエナメルに付着させるために使用される歯列矯正用接着剤の一部を収容する一連のキャビティ32が設けられている。キャビティ32は、矩形のアレイに配置されており、頬唇方向で見ると正方形の形状を有する。しかしながら、他のアレイおよび形状も可能である。たとえば、キャビティを対角アレイに配置してもよく、かつ/またはキャビティが、頬唇方向にみると円形、長円形または矩形の形状を有していてもよい。
別法として、キャビティ32は、図2に示す別個の小さいキャビティ32の代りに2つ以上の連続した細長い溝を含んでもよい。溝は、平行のアレイに配置されてもよく、あるいは溝のうちのいくつかが他の溝と交差するクロスオーバアレイに配置されてもよい。クロスオーバアレイに配置された細長い溝の例は、米国意匠特許第331,975号明細書に記述されている。さらなるオプションとして、キャビティ32を、基部22の内部を通して延在する孔により、または基部22の第1面28の外面に沿って位置する開放チャネルにより、相互接続してもよい。さらに、キャビティ32を、第2面30から離れる方向に第1面28から外側に延在する突起間の空間によって確立してもよい。
さらに、キャビティ32を含む基部22は、患者の歯の面に対する器具20の接合をさらに強化する追加の構造または態様を含んでもよい。たとえば、キャビティ32内の面を含む基部22を、化学エッチング液を用いてまたはレーザエッチング装置を用いてエッチングしてもよく、あるいはサンドブラスト装置を用いて粗化してもよい。さらなる例として、キャビティ32を含む基部22を、下塗剤または歯列矯正用接着剤と器具20との間の接合を強化する役割を果たす他の構成物でコーティングしてもよい。
基部22の第1面28が、器具20が取り付けられることが意図される歯の面の形状に一致する形状であることが好ましい。図面に示す例では、第1面28は、臼歯の凸面形状と嵌合するように適合された方向に湾曲する凹状の複雑な外形を有する。湾曲部のうちの1つは、器具20が歯に取り付けられた時の患者の咬合面に対して平行な基準面内に視認することができ、この湾曲部を図4の斜視図に示す。残りの湾曲部は、咬合面に対して垂直な基準面内に視認することができ、それを図5の斜視図に示す。しかしながら、場合によっては(前歯に取り付けることが意図された器具の場合等)、基部は、1つの方向のみに沿って湾曲してもよく、あるいは平坦な形状を有してもよい。
アーチワイヤ支持体24は、本実施形態では、3つの面、すなわち咬合側面34、頬唇側面36および歯肉側面38を有する矩形「U」字形部材である。アーチワイヤ支持体24は、基部22を横切る長手方向に延在する。咬合側面34の舌側縁と歯肉側面38の舌側縁とは、基部22の第2面30に直接一体的に接続されている。図示するように、アーチワイヤ支持体24は、本来基部22の第2面30に隣接して配置される可能性のある舌側面を有していない。任意に、アーチワイヤ支持体24は、基部22の中央から咬合または歯肉方向において横方向にずれて配置される。
アーチワイヤ支持体24の咬合側面34は、咬合側壁部(図示せず)を有し、歯肉側面38は、図1に示す歯肉側壁部42を有する。アーチワイヤ支持体24の頬唇側面36は、頬唇側壁部44(図2)を有する。必要ではないが、壁部は平坦であり、アーチワイヤスロット26に収容される選択された矩形アーチワイヤの形状に一致する幅であることが好ましい。さらに、咬合側壁部と歯肉側壁部42とが互いに平行であることが好ましい。
アーチワイヤスロット26は、咬合側壁部と、歯肉側壁部42と、頬唇側壁部44と、図1および図3〜図5に示す歯に面するすなわち舌側壁部46と、によって画定される。舌側壁部46は、アーチワイヤ支持体24の一部ではないが、代りに基部22の一部である。舌側壁部46は平坦であり、唇側壁部44に対して平行な基準面において延在することが好ましい。
別法として、舌側壁部46と残りの壁部のうちの1つまたは複数とは、アーチワイヤに係合する1つまたは複数の隆起または溝(図示せず)を有してもよい。かかる溝の例は、米国意匠特許第315,957号の図8〜図11に示されている。しかしながら、器具20の移動とアーチワイヤの移動との間の適切な制御を提供するように、壁部がアーチワイヤスロット26の長さに沿って十分な面積でアーチワイヤと接触することが好ましい。
図1、図3、図4および図5に示すように、舌側壁部46は、舌方向において基部22の第2面30より下に延在する。したがって、舌側壁部46の舌側に位置する領域における基部22の厚さは、基部22の残りの領域における基部22の厚さより小さい。この目的で基部22の厚さは、頬唇側−舌側基準軸に対して平行な方向に確定される。任意に、基部22の厚さは、舌側壁部46の舌側に位置する基部22の領域を除き本質的に均一である(キャビティ32は無視する)。
例示する実施形態では、基部22の第2面30は凸状であり、基部22の厚さは、舌側壁部46の中心に隣接する領域において最小である(この目的で、壁部46の中心は、近心−遠心基準軸に沿った方向に確定される)。しかしながら、他の構造も可能である。たとえば、器具20が歯の近心−遠心中心からずれた位置において歯に配置されることが意図される場合、または器具20がオフセット回転として知られるものを提供するように意図されている場合、基部22の厚さは、舌側壁部46の舌側面に位置するがその近心または遠心端に隣接する領域において最小であってもよい。これらの例では、基部22の厚さは、アーチワイヤスロット26の長手方向軸に沿った方向におけるその領域の位置に応じて、舌側壁部46の舌側に位置する領域において変化する。
さらに、頬唇側−舌側基準軸に沿った方向におけるキャビティ32の深さは、基部22の厚さに対応する関係で変化する。特に、キャビティ32の深さは、基部22の厚さが最小である領域において最小である。図面に示す実施形態では、特に図4を参照すると、アーチワイヤスロット26の近心−遠心中心近くに位置するキャビティ32の深さが、舌側壁部46の近心および遠心端に隣接するキャビティを含む残りのキャビティ32の深さより小さいことがわかる。アーチワイヤスロット26の舌側の領域に位置するキャビティ32のうちの少なくともいくつかの深さは、咬合または歯肉方向においてアーチワイヤスロット26からずれた領域に位置するキャビティ32の深さより小さい。任意に、キャビティ32の深さは、基部22の厚さが増大するに従って徐々に増大する。別のオプションとして、キャビティ32の厚さは、器具20の咬合側縁および/または歯肉側縁に近づくに従って徐々に増大してもよい。
上述した器具20の特徴は、頬唇方向における器具20の高さ全体が、本来可能であり得る高さより小さいという点で、重要な利点を提供する。特に、舌方向において基部22の第2面30より下に位置する舌側壁部46により、アーチワイヤスロット26は、基部22の第1面28に比較的近接することができる。また、基部22の変化する厚さと、キャビティ32の変化する深さと、により、かかる利点を実現することができる。
本発明の原理に従うことにより、器具20、アーチワイヤおよび関連する歯の移動に対する制御を妥協する必要がない、ということが重要である。特に、舌側壁部46が頬唇側壁部44と平行であるため、アーチワイヤは、器具20との優れた支持接触を達成することができ、したがってアーチワイヤが器具20に与える力は、過度の公差または「スロップ(slop)」なしに伝達される。
本発明の別の実施形態による薄型歯列矯正器具20aを、図6、図7および図8に示す。器具20aは、上述した基部20と本質的に同じである基部22aを有する。
しかしながら、器具20aは、上述したアーチワイヤ支持体24とは幾分か異なるアーチワイヤ支持体24aを有する。特に、アーチワイヤ24aは、近心−咬合側タイウィング48aと、近心−歯肉側タイウィング50aと、遠心−咬合側タイウィング52aと、遠心−歯肉側タイウィング54aと、を有する。タイウィング48a〜54aの各々は、略反転「L」字形形状と、基部22aの第2のすなわち頬唇側面30aに直接接続される舌側端部と、を有する。
アーチワイヤスロット26aは、器具20aを横切って略近心−遠心方向に延在する。アーチワイヤスロット26aは、タイウィング48a、50a間の空間と、タイウィング52a、54a間の空間と、を通過する。アーチワイヤスロット26aは、夫々タイウィング48a、52aに位置する2つの咬合側壁部40aと、夫々タイウィング50a、54aに位置する2つの歯肉側壁部(図示せず)と、によって画定される。アーチワイヤスロット26aはまた、基部22aの一部である舌側壁部46aによっても画定される。
器具20aはブラケットであり、多くのブラケットと同様に、アーチワイヤスロット26aは、その頬唇側面に沿って開放されている。アーチワイヤを器具20aに結合するために、アーチワイヤがアーチワイヤスロット26aに着座すると、アーチワイヤの頬唇側面を横切って結紮糸(図示せず)が配置される。結紮糸はまた、結紮糸を適所に保持しアーチワイヤを器具20aに固定するために、タイウィング48a〜54aのうちの2つ以上の周囲に配置される。結紮に有用な従来の一般に知られる結紮糸は、小さいエラストマ製Oリングと、医師によってループに形成される金属ワイヤ片と、を含む。
タイウィング48a〜54aに、基部の上に張り出すタイウィングの部分の舌側面に従来位置するアンダカット領域または切欠がないことが有利である。言い換えれば、張り出し部は、基部22aの頬唇側面30aから同じタイウィングの外側、咬合側または歯肉側端の間の間隔より、頬唇方向において基部22aの頬唇側面30aからさらに離れた間隔に位置する凹所を有していない。代りに、タイウィング48a〜54aの張り出し部の舌側面は、略平滑かつ平坦であり、咬合側−歯肉側基準軸に沿って延在する。かかる構造は、1つには舌側壁部46aが凹型であるため満足がいくものであり、それによりアーチワイヤは、他の方法による場合よりも基部22aの第1面28aに近接して配置可能となる。
器具20aは、従来タイウィングと基部との間に設けられる本体を有さないことが有利である。代りに、タイウィング48a〜54aが基部22aの頬唇側面に直接接続される。器具20aは、金属射出成形工程または機械加工工程により単一部品として一体的に作製されることが好ましい。しかしながら、代替態様として、タイウィング48a〜54aを別々に製造し、その後溶接または蝋付け作業により直接基部22aに接続してもよい。
器具20aの他の態様は、上述した器具20に類似し、基部22aの厚さの変化と基部22aのキャビティの深さの変化とを含む。したがって、基部20に関連して実現される利点は、器具20aにも同様に提供される。
本発明の別の実施形態による薄型歯列矯正器具20bを、図9および図10に示す。後述することを除き、器具20bは本質的に器具20aと同様である。
器具20bは、アーチワイヤスロット26bに向う方向に延在する1つまたは複数の突起56bを備えた基部22bを有する。図示する実施形態では、基部22bは、全体的に曲線状で半球状のバンプの形状である2つの突起56bを有する。突起56bのうちの1つは、アーチワイヤスロット26bの近心端に隣接して配置され、残りの突起56bは、アーチワイヤスロット26bの遠心端に隣接して配置される。しかしながら、特に、治療の過程において器具が関連する歯をその長軸を中心に回転させることが意図されている場合、アーチワイヤスロット26bの一端のみに隣接して配置される1つまたは複数の突起を設けることも可能である。
任意に、突起56bは、器具20bを製造している時に実施される金属射出成形工程中に形成される。別のオプションとして、突起56bを、穿孔工程を使用して形成してもよく、その場合、穿孔工具は、基部22の歯に面する面に接触して配置され、頬唇方向に駆動される。
図面には示さないが、器具20bは、舌方向において器具の基部22の頬唇側面より下に延在する舌側壁部によって一部画定されるアーチワイヤスロットを有してもよい。たとえば、舌側壁部は、上述した舌側壁部46、46aに類似してもよい。それらの場合、突起56bは、凹型の舌側壁部から頬唇方向に延在してもよい。さらなるオプションとして、突起56bを舌側壁部の近心および/または遠心面に配置してもよい。
本発明の別の実施形態による薄型歯列矯正器具20cを、図11および図12に部分的に示す。図11は、図10の図と同じ方向に取り出された器具20cの断面図である。下に示すことを除き、器具20cは器具20bと同じである。
器具20cは、器具20cの基部22cから頬唇方向に延在する2つの突起56cを有する。しかしながら、本実施形態では、突起56cは、頬唇方向に厚さが変化する傾斜面(ランプ)の形状である。特に、アーチワイヤスロット26cの近心−遠心中心に近づくに従って厚さが低減する。
この例における各突起56cの頬唇側面は、平坦な平面上にある。突起56cは、厚さが変化するが、基部22cの凸状の頬唇側面30cの頂部に位置する。突起56cの厚さの変化は、突起56cの最外の頬唇側面が共通の平坦面にあるように、基部22cの頬唇側面30cの湾曲に従って選択される。その結果、突起56cは、アーチワイヤの舌側面に平坦に接触し、アーチワイヤが関連する歯の移動に対して堅固で正確な制御を行うことができるようにする。
代替態様として、突起56cは、頬唇方向に均一な厚さであってもよい。かかる構造は、たとえば、頬唇側面30cが図面に示すような凸状ではなく本質的に平坦である場合に望ましい可能性がある。さらなるオプションとして、突起56cを、上述した、凹型の舌側壁部46、46a等のアーチワイヤスロットの凹型の舌側壁部上に配置してもよい。
上に詳細に説明した器具を含む、本発明による薄型歯列矯正器具を、口腔内で使用するのに適した、かつ歯列矯正治療の過程において通常もたらされる応力に耐えるために十分な強度を有する、任意の材料から作製してもよい。かかる材料の例には、ステンレス鋼およびチタンの合金等の金属材料がある。半透明の多結晶アルミナ等のセラミック材料を採用してもよい。特に好ましい薄型歯列矯正器具は、金属射出成形技術を使用してステンレス鋼商品番号17−4PHまたは316Lから作製される。
上述した歯列矯正器具は、本発明の代表的な例であり、複数の他の実施形態も可能である。たとえば、器具を、上述したような唇歯側面ではなく歯の舌側面に接続するように適合させてもよい。さらに、器具に、補助スロット、フック、位置合せマーク等の追加の特徴を設けてもよい。したがって、本発明は、詳細に示す特定の例に限定されるとみなされるべきではなく特許請求の範囲とそれらの等価物との公正な範囲によってのみ限定されるとみなされるべきである。
本発明の一実施形態によって構成される薄型歯列矯正器具の斜視図であり、器具をその頬唇、近心および咬合側面に向う方向で見ている図である。 図1に示す歯列矯正器具の斜視図であり、器具をその舌、近心および咬合側面に向かって見ている図である。 図1および図2に示す器具の基部のみの斜視図であり、その頬唇、近心および咬合側面に向う方向で見ている図である。 図3に示す基部の斜視断面図であり、基部を図3の図と同じ方向で見ている図である。 図3に示す基部の別の斜視断面図であり、図4の図の平面に対し垂直な基準面に沿った図である。 本発明の別の実施形態による薄型歯列矯正器具の斜視図であり、器具をその頬唇、近心および歯肉側面に向う方向で見ている図である。 図6に示す器具の別の斜視図であり、器具をその舌、近心および歯肉側面に向う方向で見ている図である。 図6および図7に示す歯列矯正器具の側断面図であり、器具をその遠心側面に向う方向で見ている図である。 本発明のさらに別の実施形態による薄型歯列矯正器具の斜視図であり、器具をその頬唇、近心および歯肉側面に向う方向で見ている図である。 図9に示し器具のアーチワイヤスロットを二分する基準面に沿った歯列矯正器具の断面図である。 本発明のさらに別の実施形態による歯列矯正器具を示す以外は図10に幾分か類似する図である。 図11に示す器具の斜視断面図である。

Claims (1)

  1. 歯列矯正器具であって、
    歯に面する第1面と該第1面の反対側の第2面とを有するとともに、該第1面から該第2面に向う方向に延在する複数のキャビティを有する基部と、
    該基部の該第2面に接続されるアーチワイヤ支持体と、
    該歯列矯正器具を横切って略近心−遠心方向に延在するアーチワイヤスロットと、を有し、
    該キャビティは頬唇側−舌側方向について一定の深さを有し、
    該アーチワイヤスロットは、該基部の該第1面と該第2面との間に少なくとも部分的に位置する経路に沿って延在する、該歯に近接する面を有し、
    該アーチワイヤスロットの舌側の領域に位置する該キャビティのうちの少なくともいくつかの深さは、該アーチワイヤスロットからずれた領域に位置する該キャビティの該深さより小さく、かつ該基部の厚さの変化に応じて変化する、
    歯列矯正器具。
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