JP4261027B2 - 樹脂成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂成形金型の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂成形金型として、例えば、実開平6−9744号公報「金型」が知られている。
上記技術は、同公報の図1によれば、金型1のキャビティ2表面近傍に冷却のために多孔質材の部分域3を形成し、この部分域3にメッキ等の表層7を形成し、この表層7の反対から部分域3に給水路4及び排水路5を接続したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記「金型」では、単に、多孔質材の部分域3に給水路4及び排水路5を接続しただけのものなので、給水路4近くの冷却効果が大きく、排水路5近くでは冷却効果が小さいことになり、給水路4と排水路5とで金型に冷却効果のばらつきが発生する。
【0004】
そこで、本発明の目的は、金型の強度を維持しつつ熱媒体の流路を形成すると共に、金型本体の温度の均一化を図ることのできる樹脂成形金型を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、金型本体に、多孔質の焼結金属層を設け、この焼結金属層へ冷却用媒体又は加熱用媒体としての熱媒体を流通させる樹脂成形金型において、焼結金属層をその厚さが熱媒体の供給側を小さく、排出側を大きくなるように構成し、金型本体のうちで焼結金属層とキャビティとで挟まれる部位をキャビティ金型部というときに、このキャビティ金型部をその厚さが熱媒体の供給側を大きく、排出側を小さくなるように構成したことを特徴とする。
【0006】
焼結金属層をその厚さが熱媒体の供給側を小さく、排出側を大きくなるように構成し、金型本体のうちで焼結金属層とキャビティとで挟まれる部位をキャビティ金型部というときに、このキャビティ金型部をその厚さが熱媒体の供給側を大きく、排出側を小さくなるように形成する。
すなわち、焼結金属層をその厚さが熱媒体の供給側を大きく、排出側を小さくなるように形成し、キャビティ金型部をその厚さが熱媒体の供給側を大きく、排出側を小さくなるように形成することで、金型本体の温度の均一化を図る。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る樹脂成形金型の斜視図である。
樹脂金型装置20は、樹脂成形金型としての可動側金型30と樹脂成形金型としての固定側金型40とから構成するものであって、可動側金型30に成形凸部32を形成し、固定側金型40に成形凹部42を形成し、これらの成形凹部42及び成形凸部32を合せることで樹脂成形品Wを成形するためのキャビティ50を形成するものである。
【0008】
図2は図1の2−2線断面図であり、可動側金型30の平面断面を示す。
可動側金型30は、金型本体31に形成した成形凸部32と、金型本体31に形成した複数個の矩形の流路33A〜33Fと、これらの流路33A〜33Fにそれぞれ形成する多孔質の焼結金属層34A〜34Fと、これらの焼結金属層34A〜34Fを一括して覆う蓋部材35と、流路33A〜33Fに形成それぞれ形成した供給側としての入水口36A〜36F及び排出側としての排水口37A〜37Fとからなる。
なお、38・・・は流路33A〜33Fを仕切る仕切壁、39A〜39Fはキャビティ金型部としての流路の底を示す。
【0009】
なお、図1に示す固定側金型40は、金型本体41に成形凹部42を備え、金型本体41に可動側金型30と略同一の流路、焼結金属層、蓋部材、入水口及び排水口を備えるものであり、詳細な説明は省略する。
【0010】
図3は図1の3−3線断面図であり、可動型金型30の縦断面を示す。
流路33Aは、流路の底39Aの入水口36A側の肉厚を、排水口37A側よりも厚く設定した流路であって、入水口36A側から排水口37A側に向かって流路の底39Aの肉厚を漸減させた可変肉厚流路である。
同様に、図2に示す流路33B〜33Fは、入水口36B〜36F側から排水口37B〜37F側に向かって流路の底39B〜39Fの肉厚を漸減させた可変肉厚流路である。
【0011】
焼結金属層34Aは、熱媒体(不図示)としての冷却用媒体又は加熱用媒体を流通させるための部材であり、熱媒体は、焼結金属層34Aを流通させることで可動側金型30を強制冷却又は強制加熱を図るための媒体である。また、焼結金属34B〜34Fは、焼結金属層34Aと同様に形成したものである。
蓋部材35は、焼結金属層34A〜34F(34Aのみ図示)を一括して覆うベース部35aと、このベース部35aに形成した冷却フィン35b・・・(1個のみ図示)とからなる部材である。
【0012】
図4は図1の4−4線断面図であり、可動側金型30の横断面である。
可動側金型30は、金型本体31に、多孔質の焼結金属層34A〜34Fを設け、これらの焼結金属層34A〜34Fへ冷却用媒体又は加熱用媒体としての熱媒体(不図示)を流通させる樹脂成形金型において、焼結金属層34A〜34Fをその厚さが熱媒体の供給側(図2に示す入水口36A〜36F側)を小さく、排出側(図2に示す排水口37A〜37F側)を大きくなるように構成し、金型本体31のうちで焼結金属層34A〜34Fとキャビティ50とで挟まれる部位をキャビティ金型部(流路の底39A〜39F)というときに、これらの流路の底39A〜39Fをその厚さが熱媒体の入水口36A〜36F側を大きく、排水口37A〜37F側を小さくなるように構成したものである。
【0013】
すなわち、焼結金属層34A〜34Fを、その厚さが熱媒体の入水口36A〜36F(図2参照)側を大きく、排水口37A〜37F(図2参照)側を小さくなるように形成すると共に、流路の底39A〜39Fを、その厚さが熱媒体の入水口36A〜36F側を大きく、排水口37A〜37F側を小さくなるように形成することで、金型本体31の温度の均一化を図る。
この結果、金型本体31の温度の均一化を図ることができ、樹脂成形品W(図1参照)の品質の向上を図ることができる。
【0014】
また、仕切壁38・・・の先端にベース部35aを当てることで仕切壁38・・・と共にキャビティ50の強度を高めることができる。
さらに、冷却フィン35b・・・を、仕切壁38・・・の軸線C・・・上に配置することで、可動側金型30の放熱効果の促進を図ることができる。すなわち、仕切壁38・・・は、補強部材であると共に熱伝導部材でもある。そこで、仕切壁38・・・と冷却フィン35b・・・を一直線上に並べれば、熱の流れが円滑となり、金型本体31の放熱機能を格段に高めることができる。
【0015】
以上に述べた可動側金型30(樹脂成形金型)の作用を次に説明する。
図5(a)〜(d)は本発明に係る樹脂成形金型の第1作用説明図であり、可動側金型30(図4参照)の製作手順の一例を示す。
(a)において、金属ブロック52に成形凸部32及び流路33A〜33Fを形成し、金型本体31を製作する。
(b)において、鉄系金属、アルミニウム系金属若しくはステンレス鋼の金属粒53・・・を流路33A〜33Fに充填する。
(c)において、流路33A〜33Fに金属粒53・・・を充填済みの金型本体31を焼結炉54に入れ、金属粒53・・・同士を焼結させ、焼結金属層34を形成する。
【0016】
(d)において、蓋部材35で焼結金属層34A〜34Fを一括して覆い、ボルト締め又は熱溶着を行ない、流路33A〜33Fを密封する。その後、成形凸部32面の仕上を行なう。例えば、成形凸部32面と流路33Aの底39A面との厚さをtとするときに、厚さtを2mmから5mmの範囲に設定する。ここで、厚さtが2mm以下では成形凸部32の強度が不足する。また、5mm以上では冷却効率又は熱効率の悪化を招く。なお、成形凸部32面と他の流路33B〜33Fの底39B〜39F(図4参照)面との厚さについても同様である。
【0017】
図6(a),(b)は本発明に係る樹脂成形金型の第2作用説明図であり、(a)は比較例を示し、(b)は実施例を示す。
(a)において、樹脂成形金型としての可動側金型100は、金型本体101に成形凸部102を形成し、金型本体101に流路103を形成し、これらの流路103に焼結金属層104を形成し、金型本体101の一方に入水口106を形成し、金型本体101の他方に排水口107を形成したものである。
入水口106Aから矢印▲1▼の如く熱媒体(不図示)を流路103に供給すると、金型本体101の一方側では加熱又は冷却の効果が大きく、他方側では加熱又は冷却の効果が小さくなるので、金型本体101に温度差が生ずる。
【0018】
(b)において、可動側金型30は、焼結金属層34Aを、その厚さが熱媒体の入水口36A側を大きく、排水口37A側を小さくなるように形成すると共に、流路の底39Aを、その厚さが熱媒体の入水口36A側を大きく、排水口37A側を小さくなるように形成した。従って、以下の通りの作用をなす。
【0019】
ここで、流路33Aにおいて、流路の底39Aの入水口36A側の肉厚をt1、排水口37Aの肉厚をt2とするときに、肉厚t1を肉厚t2よりも厚く設定する(t1>t2)。
例えば、金型本体31を冷却する場合を考えると、入水口側36Aで熱媒体(不図示)の温度が上昇しても、入水口36Aの肉厚t1を排水口37Aの肉厚t2よりも厚く設定することで、入水口36Aではキャビティ50(図3参照)の冷却に時間がかかり、排水口37A側はキャビティ50の冷却に時間がかからないので入水口36Aと排水口側37Aと均等に冷却することができる。また、金型本体31を加熱する場合を考えると、上記同様の理由で、入水口36Aと排水口側37Aと均等に加熱することができる。
この結果、金型本体31の温度の均一化を図ることができ、樹脂成形品W(図1参照)の品質の向上を図ることができる。
【0020】
図7は本発明に係る第2実施の形態の樹脂成形金型の平面断面図であり、樹脂成形金型としての可動側金型60の平面断面を示す。
可動側金型60は、金型本体61に、多孔質の焼結金属層64A〜64Fを設け、これらの焼結金属層64A〜64Fへ冷却用媒体又は加熱用媒体としての熱媒体を流通させる樹脂成形金型において、焼結金属層64A〜64Fを互いに独立させることで複数個の流路63A〜63Fを金型本体61に形成したものであり、流路63A〜63Fは、流路63Aの底69Aの肉厚が入水口66Aに対して排水口67Aを薄くする可変肉厚流路であって、流路63Aの幅が入水口66Aに対して排水口67Aを幅広としたテーパ流路である。
なお、62は金型本体61に形成した成形凸部、69B〜69Fは流路の底を示す。
【0021】
図8は図7の8−8線矢視図であり、流路63Aの断面を示す。
流路63Aにおいて、流路の底69Aの入水口66A側の肉厚をt3、排水口67Aの肉厚をt4とするときに、肉厚t3を肉厚t4よりも厚く設定するものであって(t3>t4)、入水口66Aを金型本体61の一方61a側に設定し、排水口67Aを金型本体61の他方61b側に設定するものである。
なお、図7に示す流路63B〜63Fは、流路63Aと略同一の可変肉厚流路であって、入水口66B〜66Fを金型本体61の一方61a側に設定し、排水口67B〜67Fを金型本体61の他方61b側に設定するものである。
【0022】
すなわち、可動側金型60は、流路63A〜63Fを可変肉厚流路、且つテーパ流路に形成したので、金型本体の温度の均一化を図れる効果がさらに大きなものとなる。
この結果、樹脂成形品の品質の向上をさらに推進めることができる。
【0023】
尚、第2の実施の形態図では図7及び図8に示したように、流路63A〜63Fは入水口66A〜66Fから排水口底67A〜67Fに向かって幅広のテーパ流路として説明したが、これに限るものではなく、図2に示す矩形の流路33A〜33Fとの組合せは任意であり、テーパ流路と矩形の流路とを組合せたものであってもよい。また、樹脂成形金型は、実施例では蓋部材を用いて焼結金属層を密封する型で説明したが、金型本体のキャビティに、金属、合成樹脂又はセラミックなどの表面被膜を形成した型(特開平7−285169号公報、図1参照)であってもよいことは言うまでもない。
【0024】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、焼結金属層をその厚さが熱媒体の供給側を小さく、排出側を大きくなるように構成し、金型本体のうちで焼結金属層とキャビティとで挟まれる部位をキャビティ金型部というときに、このキャビティ金型部をその厚さが熱媒体の供給側を大きく、排出側を小さくなるように形成したので、金型本体の温度の均一化を図ることができる。
この結果、樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る樹脂成形金型の斜視図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図1の3−3線断面図
【図4】図1の4−4線断面図
【図5】本発明に係る樹脂成形金型の第1作用説明図
【図6】本発明に係る樹脂成形金型の第2作用説明図
【図7】本発明に係る第2実施の形態の樹脂成形金型の平面断面図
【図8】図7の8−8線矢視図
【符号の説明】
30,60…樹脂成形金型(可動側金型)、31…金型本体、33A〜33F…流路、34A〜34F…焼結金属層、36A〜36F…供給側(入水口)、37A〜37F…排出側(排水口)、39A〜39F…キャビティ金型部(流路の底)、50…キャビティ。
Claims (1)
- 金型本体に、多孔質の焼結金属層を設け、この焼結金属層へ冷却用媒体又は加熱用媒体としての熱媒体を流通させる樹脂成形金型において、
前記焼結金属層は、その厚さが前記熱媒体の供給側を小さく、排出側を大きくなるように構成し、金型本体のうちで焼結金属層とキャビティとで挟まれる部位をキャビティ金型部というときに、
このキャビティ金型部は、その厚さが前記熱媒体の供給側を大きく、排出側を小さくなるように構成したことを特徴とする樹脂成形金型。
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