以下、本発明の一実施の形態の食器洗い機を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示す食器洗い機の概略構成の側面断面図である。図2は、図1の食器洗い機の正面図である。また、以下の各図には、方向を示す矢印を必要に応じて図示している。
食器洗い機1は、外形を形成するキャビネット2を有し、このキャビネット2の内部に配置されて食器等の被洗浄物(図1に食器Pを図示)を洗浄するための洗浄室3と、この洗浄室3の内部に着脱自在に収容されて被洗浄物を保持する食器カゴ4とを有している。洗浄室3は、前面31に開口30を有し、この開口30を通じて被洗浄物を出し入れすることができる。また。洗浄室3は、開口30を覆う開閉扉5を有している。この開閉扉5により、洗浄時には開口30が密閉される。洗浄室3の内部には、食器カゴ4の下方に、複数の噴射口8を有するアーム形ノズル7が配置されている。アーム形ノズル7の各噴射口8から洗浄水が噴射される。
洗浄室3には、水道等の外部の給水設備(図示せず)から洗浄水が供給され、このための管や弁等(図示せず)が洗浄室3の下方に設けられている。洗浄室3の底部32は、容器状に形成されており、ここに洗浄水を溜めることができる。洗浄室3の底部32は一段低い水溜め部33を有し、この水溜め部33の上にはフィルタ6が設けられると共に、水溜め部33は管9を介して洗浄ポンプ10に接続され、この洗浄ポンプ10の吐出口は、管11,12を介してアーム形ノズル7へとつながっている。モータ13により洗浄ポンプ10が運転されると、洗浄水は、洗浄室3の水溜め部33から吸い込まれてアーム形ノズル7へ圧送される。アーム形ノズル7は、鉛直軸回りに回転自在に支持されており、洗浄水が噴射されるときの反力、特にその水平方向成分により回転しながら、噴射口8から洗浄水を食器に吹き付けて、食器をむらなく洗浄する。その後、洗浄水は洗浄室3の底部32に戻り、洗浄ポンプ10、アーム形ノズル7へと循環しながら、洗浄が行われる。洗浄後、洗浄水は、排水ポンプ14により排水管15を通して排水される。
ところで、本食器洗い機1の外形は、平面視で略長方形の薄型に形成されている。外形の長方形は、前後方向(矢印Y参照)に短く、左右方向(矢印X参照)に長くなっている。また、食器洗い機1の外形に沿うように、洗浄室3および食器カゴ4も、一方向、例えば、左右方向に長く、前後方向に短く形成されている。長手方向に沿う一方の側面は、やや上向きに傾斜しており、前面とされ、ここに開閉扉5が設けられている。また、一方向に長い洗浄室3に対応して、アーム形ノズル7は、長手方向となる左右方向に並ぶ複数箇所、例えば、2箇所に設けられている。上述の管11が分岐して、2つのアーム形ノズル7と、洗浄ポンプ10の吐出口とがつながっている。
このように一方向に長い平面形状とすることにより、薄型の食器洗い機1を実現できるので、従来の平面視での外形がほぼ正方形の食器洗い機では設置できないような、狭隘なスペースに設置することができる。例えば、本食器洗い機1を、流し台の流しの側方に、開閉扉5を流しに向くように横向きに設置できる。
開閉扉5を上下に二分割した上扉16および下扉17により構成し、開閉のためのスペースを低減するとともに、下扉17に食器カゴ4を載せられるようにして、食器を出し入れし易くしている。
開閉扉5は、上下方向に並んで設けられた上述の上扉16および下扉17とを有している。上扉16および下扉17は、開成状態と閉成状態とにそれぞれ回動変位可能とされている。閉成状態では、上扉16および下扉17は、互いに隣り合って配置されて開口30を覆う(図1参照)。また、開成状態では、上扉16および下扉17が離間してその間に開口30を開放する(図3参照)。
開閉扉5と洗浄室3との間には、閉成状態で開口30の周縁部と開閉扉5との間を密封するシール部材18(図5に一部を図示した。)とシール部材19(図15参照)とが設けられている。シール部材18とシール部材19とが、互いに協働して開口30を取り囲むように配置されている。シール部材18は、開口30の上側の周縁部および左右両側の周縁部に沿って設けられている。シール部材19は、開口30の下側の周縁部に沿うようにして、開閉扉5の周縁部に設けられている。また、開閉扉5には、閉成状態の上扉16および下扉17との間に設けられて上扉16および下扉17の間を封止する封止機構26が設けられている。封止機構26については後で詳細に説明する。
開閉扉5は、開閉自在に支持されている。すなわち、上扉16を回動自在に支持する上扉支持機構24と、下扉17を回動自在に支持する下扉支持機構25とが設けられている。下扉支持機構25は、蝶番として機能する回転軸22および支持金具23とを有している。上扉支持機構24は、支軸20、第1支持部材73および第2支持部材74を含み、これらは蝶番72を構成している(図4参照)。
下扉17は、回転軸22の回りに回動自在に支持され、回転軸22を中心に下方へ開くようになっている。回転軸22は、開口30の下縁近傍に配置され左右方向に水平に延びて、下扉17の下部52に固定されている。支持金具23は洗浄室3の側面下部に固定され、回転軸22の周面を包むように回動自在に回転軸22を支持している。
上扉16は、図3に示すように、支軸20の回りに回動自在に支持され、支軸20を中心に上方へ開くようになっている。支軸20は、回転軸22と平行に、回転軸22よりも後方に配置されている。支軸20は、図4に示すように、断面略D字形形状の回動規制部75を含み、この回動規制部75が、第1支持部材73のD字形形状の挿通孔733,734に嵌まるようになっている。それゆえ、支軸20は、その軸線の回りの回転を阻止された状態で、第1支持部材73を介して洗浄室3の上部34に取り付けられている。一方、支軸20は、第2支持部材74の円形の挿通孔744〜746に嵌められて、第2支持部材74を介して上扉16に取り付けられて、支軸20と上扉16との相対回転は許容されている。
上扉16には、所定の回動位置で開いた状態を維持できるように、所定の回動位置で上扉16の回動抵抗を大きくする停止機構27が設けられている。この停止機構27による上扉16の所定の回動位置は複数箇所、例えば、2カ所設定されている。すなわち、上扉16が安定した姿勢になる第1の回動位置(図3にこの状態の上扉16を実線で図示した。)と、上扉16の高さを低く抑えつつ開口30を開けることのできる第2の回動位置(図3にこの状態の上扉16を一点鎖線で図示した。)とである。また、第1の回動位置は、上扉16の重心位置53が支軸20の軸心よりも後方に位置する位置であり、上扉16を全開状態とした位置であり、上扉16の裏面59が前方上向きになる位置でもある。第2の回動位置は、上扉16の裏面59が前方斜め下向きになる位置でもある。
停止機構27は、図4〜図7に示すように、上扉16の回動と連動して相対変位して互いに係合できる一対の係合部材としての板ばね65とカム68とを含んでいる。板ばね65の一端が、上扉16の内部にビス66により固定されている。板ばね65の他端には、半円形状に突出する嵌合部651が形成されている。カム68は、D字形形状の挿通孔682を有し、この挿通孔682に支軸20の回動規制部75が嵌まり、支軸20と相対回転を規制されて取り付けられている。カム68の外周面683には、断面半円形状の凹部からなる嵌合部681が複数、例えば、2カ所に形成されている。嵌合部681の位置は、上述の各回動位置に対応して設定されている。板ばね65とカム68との両嵌合部651,681が、互いに嵌合することにより、板ばね65とカム68とが係合し、上扉16の回動を規制する。板ばね65の弾力は、上述の第2の回動位置のときの上扉16の自重による相対回動のトルクに対して、嵌合部651,681同士の嵌合を維持できるように設定されている。
停止機構27では、板ばね65の嵌合部651は、その弾力により、カム68の外周面683に常時接している。上扉16を支軸20の回りに回動させると、板ばね65がカム68の外周面683を擦りながら、板ばね65がカム68の回りを相対回動する。
例えば、上扉16を閉成位置から上に回動させる場合には、上扉16が第2の回動位置に位置するのに伴い、板ばね65とカム68とは互いに係合して相対変位を規制され、上扉16は第2の回動位置で位置規制される。また、板ばね65の弾力に抗するだけの力をかけて、上扉16をさらに回動させると、上扉16が所定の回動位置から離脱するのに伴い、一方の係合部材が他方の係合部材を弾力的に乗り越えることにより、係合状態が解除される。このとき、嵌合部651,681同士は、相対移動の方向に対して傾斜する面で係合しているので、係合を解除させる力は少なくて済む。そして、上扉16が第1の回動位置に位置すると、板ばね65とカム68とが互いに係合して、上扉16は第1の回動位置で位置規制される。
また、上扉16には、その回動抵抗を増すためのオイルダンパ61が設けられている。このオイルダンパ61は、図8に示すように、支軸20に相対回動を規制された状態で設けられた軸部材62と、回動抵抗を増すためのグリース等の作動流体を介して軸部材62と嵌合されて上扉16に固定された筒部材63とを有している。軸部材62は、カム68と一体に形成され、支軸20の軸方向に隣接して同心に配置されている。軸部材62の外周面は、一対の平面部と、一対の平面部同士を接続する円周面とにより形成されている。筒部材63の内周面は断面円形に形成されている。筒部材63の内周面と軸部材62の外周面の円周面との間には、隙間が相対的に小さい嵌め合い部611が形成され、また、筒部材63の内周面と軸部材62の外周面の平面部との間には、隙間が相対的に大きくされて作動流体を収容する油溜め室612が形成されている。上扉16を回動させると、筒部材63と軸部材62とが相対回動し、この際、作動流体が油溜め室612および嵌め合い部611で攪拌され、その粘性により筒部材63および軸部材62に回動抵抗を付与する。また、上扉16の回動速度が大きくなるほどに回動抵抗は大きくなる。
また、オイルダンパ61の軸部材62は、図9に示すように、外周面に複数の油溜め室612を区画する軸方向に延びる凸条を有してもよい。
このように、第1の回動位置では上扉16は安定した姿勢となるので、上扉16が不意に回動して閉じることを防止できる。しかも、上扉16は停止機構27により第1の回動位置を維持されるので、上扉16が不意に回動して閉じることを確実に防止できる。
また、停止機構27は、第2の回動位置で回動抵抗を大きくできるので、上扉16を閉じる際の回動の勢いを減殺するダンパとして機能して、上扉16を閉じるときのショックを緩和できる。従って、万一、上扉16が不意に回動して閉じる場合に、ショックを緩和できて好ましい。
また、第2の回動位置の上扉16の最上部の高さ(図3の距離L2参照)は、最も高くなる場合の上扉16の最上部の高さ(図3の距離L1参照)に比べて低く(L2<L1)され、しかも、その位置を人手によらずに維持できる。その結果、例えば、設置スペースの高さが低く、そこに設置した食器洗い機1の上扉16を全開にできないような場合であっても、使い勝手を高めることができる。
また、上述の作用効果を、板ばね65とカム68とからなる一対の係合部材という簡単な構成で実現できる。
また、上扉16を所定の回動位置から離脱させると、一対の係合部材の係合状態を解除できるので、回動抵抗を小さくできる。その結果、上扉16をスムーズに開閉できる。
また、上扉16を所定の回動位置から離脱させる際に、停止機構27による回動抵抗が大きくなることを利用して、操作者にクリック感を付与できる。このクリック感により、操作者は、上扉16が回動を停止できる位置にあることを確認でき、上扉16の不意の回動を防止するのに好ましい。
さらに、オイルダンパ61を設けたので、より好ましい。すなわち、上扉16の回動速度が速くなると、オイルダンパ61は回動抵抗を大きくするので、万一、上扉16が不意に回動する場合のその回動の勢いを効果的に抑制できる。また、通常の開閉操作の際、オイルダンパ61による回動抵抗は小さくて済むので、上扉16をスムーズに開閉できる。
また、停止機構27のカム68と、オイルダンパ61の軸部材62とを一体化したので、構造を簡素化できる。
閉成状態では、図1に示すように、開閉扉5は洗浄室3の前面31に沿って配置され、上扉16および下扉17の前面は略面一の傾斜面となっている。閉成状態では、上扉16が下扉17の上方に配置されて、上扉16および下扉17とが協働して、開口30を覆う。
開閉扉5は、先に下扉17を開けて、次に上扉16を開けるようにされている。図3に示すように、下扉17は回転軸22の回りに略90度回動されて開かれる。開成状態では、下扉17の裏面58(閉成状態で洗浄室3側になる面)が、略水平になるように配置される。次に、上扉16が開かれる。上扉16を閉成状態から回動させると、第2の回動位置となり、そして第1の回動位置となる。
第2の回動位置では、上扉16が、閉成状態から支軸20の回りに略135度回動されて、開成状態となり、上扉16の裏面59(閉成状態で洗浄室3側になる面)が前方斜め上方に延びるようになる。第1の回動位置では、上扉16が、閉成状態から支軸20の回りに略180度回動されて、開成状態となり、上扉16の裏面59が前方に向くようにして、上扉16は洗浄室3の上部34に安定して立てかけられる。
下扉17が開かれて第1の回動位置で上扉16が開かれた状態で、図3に示すように、下扉17の裏面58の上には、食器カゴ4の一部となる前半部を洗浄室3から引き出して載置できるようにされている。この状態で食器カゴ4に食器を容易に着脱できる。また、食器カゴ4を下扉17から取り外して、食器を着脱してもよい。このとき、上扉16は、不意に閉じることがないので、引き出された食器カゴ4の食器とぶつかる虞がなく、その結果、食器が破損する虞もない。
また、下扉17が開かれて第2の回動位置で上扉16が開かれた状態でも、上扉16が第1の回動位置にあるときと同様に、下扉17に食器カゴ4を載置して、食器を着脱できる。このとき、上扉16は、下扉17の上に載置された食器カゴ4の前部の上方にまで位置するが、食器の取出しには問題ない。というのは、上扉16は、前方斜め上方に向けて延び、食器カゴ4の上方を前方になるほどに大きく開放できるからである。
ところで、本実施の形態では、上扉16、上扉支持機構24等を組み立て易くするために、上扉16をユニット化している。このユニット70は、上扉16と、上扉16の内部に配置された以下の各部とを有し、この各部は、上扉支持機構24の支軸20および第2支持部材74と、停止機構27と、オイルダンパ61とを含む。
このように、上扉16と支軸20とをユニット70にしているので、洗浄室3に取り付けられていない状態の上扉16に支軸20等を組み付ける結果、作業し易い。そして、上扉16を洗浄室3に組み付ける際には、図4に示すように、上述のユニット70に第1支持部材73を取り付けて、上扉16を蝶番72を介して洗浄室3に取り付ける。第1支持部材73を洗浄室3の上部34の固定部77にビス76に用いて固定した後、キャビネット2を洗浄室3に被せることとなる。
また、本食器洗い機1には、図2および図4に示すように、上扉16を支軸20の回りに回動自在にして洗浄室3に取り付ける取付構造28が設けられている。取付構造28は、上扉16の左右両側に2カ所で設けられている。図4には、上扉16の右側の取付構造28を図示している。各取付構造28は、修理する際に、上扉16を洗浄室3から取り外し易くするために、以下のように構成されている。
各取付構造28は、支軸20と、洗浄室3に取り付けられて支軸20を支持する上述の第1支持部材73と、上扉16に取り付けられて支軸20を支持する上述の第2支持部材74と、第1支持部材73を固定するために洗浄室3の上部34に設けられた固定部77と、第2支持部材74を固定するために上扉16の上部51に設けられた固定部78とを有している。洗浄室3および上扉16の両固定部77,78には、雌ねじが形成され、この雌ねじに、第1支持部材73および第2支持部材74を固定するためのビス66,67,76がねじ込まれる。第2支持部材74が支軸20を回動自在に支持しているが、第1支持部材73および第2支持部材74の少なくとも一方が支軸20を回動自在に支持していればよい。また、第1支持部材73および第2支持部材74は、支軸20を介して互いに連結され、支軸20をその軸方向に変位自在に支持している。
第1支持部材73は、支軸20が挿通する挿通孔733,734の形成された一対の支持部731,732を有している。これら一対の支持部731,732は、支軸20の軸方向に所定距離離れて配置されている。
第2支持部材74は、支軸20が挿通する挿通孔744〜746の形成された複数、例えば3つの支持部741〜743を有している。各支持部741〜743は、互いに所定距離離れて、支軸20の軸方向に並んでいる。2つの支持部741,742は、支軸20を常時支持するようにされている。残りの一の支持部743は、支軸20が第1支持部材73により支持されるときに、他の2つの支持部741,742と協働して両持ち状態で、支軸20を支持するようにされている。支持部742と支持部743との間に、第1支持部材73の一対の支持部731,732が配置される。第1支持部材73の2つの支持部731,732と、第2支持部材74の3つの支持部741〜743とは、支軸20の軸方向に並んで配置される。
支軸20は、第2支持部材74の両端にある支持部741,743に支持される長さを少なくとも有し、この長さよりも長く形成されている。また、支軸20の回動規制部75は、上述のカム68およびオイルダンパ61の軸部材62とも、軸方向に変位可能とされており、支軸20にカム68およびオイルダンパ61の軸部材62を取り付けたままで、支軸20と第1支持部材73との連結および分離が可能とされている。
取付構造28では、支軸20が第2支持部材74により支持されつつ支軸20の軸方向に変位することにより、支軸20と第1支持部材73との連結および分離が可能とされて、これにより、第1支持部材73と第2支持部材74との連結および分離も可能とされる。すなわち、支軸20をその軸方向の一の向きに変位させると、支軸20と第1支持部材73とを、ひいては第1支持部材73と第2支持部材74とを、さらに上扉16と洗浄室3とを互いに分離させることができる。また、支軸20をその軸方向の他の向きに変位させると、支軸20と第1支持部材73とを互いに連結させることができ、上扉16を洗浄室3に取り付けることができる。
図4および図10を参照する。上扉16の上部51の裏面59には、支軸20を軸方向に変位させるためのサービス用開口54が形成されている。
サービス用開口54は、上扉16を閉じている状態では、洗浄室3の前面31の開口30の周縁部に対向して後向きに位置している。サービス用開口54は、上扉16を第1の回動位置である全開状態にすると、前向きになり、前方から操作可能となる。サービス用開口54は、通常、覆い部材55により覆われている(図10(a)参照)。
覆い部材55は、サービス用開口54内に嵌め込まれ、上扉16内に配置された突起551がサービス用開口54の周縁部と係合した状態で取り付けられている。これにより、覆い部材55は、所定の工具により取り外し可能とされて、不案内なユーザがサービス用開口54を開くことが防止される。
取付構造28を利用した上扉16の着脱操作を説明する。先ず上扉16を第1の回動位置にする(図10(a)参照)。覆い部材55を取り外して、サービス用開口54を開くと、支軸20が露出される。支軸20の端部201を工具等により、軸方向の一の向き(左右の支軸20が近づく方向に)に移動させる(図10(b)参照)。これにより、支軸20は、第1支持部材73の支持部731,732から離脱して、第2支持部材74の2つの支持部741,742で支持される。そして、第1支持部材73と第2支持部材74との連結は解除される。この操作を、左右の取付構造28について行うと(図10(c)参照)、上扉16を洗浄室3から取り外すことができる(図10(d)参照)。
このように上扉16の着脱の際に、キャビネット2の着脱や、上扉16の分解をせずに済む。なお、逆の手順により上扉16を取り付けることもできる。
また、支軸20には、支軸20が第1支持部材73および第2支持部材74により支持された状態で、軸方向へ移動することを規制する一対の規制部材552,747が設けられている。それゆえ、支軸20は、軸方向に変位可能に支持されていても、軸方向にがたつきを生じることが防止されている。また、これらの規制部材552,747は、支軸20が第1支持部材73および第2支持部材74とともに連結される状態を維持できるので、支軸20が不用意に軸方向に移動することがなく、ひいては上扉16が不用意に洗浄室3から外れる虞もない。
一方の規制部材552は、上述の覆い部材55に設けられている。サービス用開口54に覆い部材55が取り付けられた状態で、規制部材552が支軸20の端部201(分離させる際の支軸20の移動方向の前側となる端部)と当接して、支軸20を分離させる方向である一の向きへの支軸20の移動を規制する。
他方の規制部材747は、第2支持部材74の支持部741と一体に形成されて、支軸20の所定位置に嵌められた止め環等の凸部202と係合することにより、支軸20の軸方向の他の向きへ過度に移動しないようにされており、支軸20がサービス用開口54から操作できる範囲に位置するように位置規制している。
このように、支軸20を軸方向にスライドさせて第1支持部材73との連結を解除し、蝶番72を分解可能にしている。これにより、上扉16の着脱の際に、上扉16に第2支持部材74および支軸20を取り付け且つ第1支持部材73を洗浄室3に取り付けたままで済み、しかも、支軸20を軸方向に移動させるという簡単な操作で済む。
また、上扉16と第2支持部材74と支軸20とを一体的なユニット70に構成でき、且つ洗浄室3と第1支持部材73とを一体的にユニット化できる。従って、食器洗い機の組み立てや、メンテナンスを行い易い。
ところで、上扉16および下扉17は、洗浄室3を介して互いに位置決めされるので、上扉16および下扉17の両扉の相互の位置精度が低下し易い傾向にある。このような場合、両扉の間の封止が十分でなくなる虞がある。また、封止を確実にするために、両扉の位置精度を高くしようとすると、組み立てが面倒になり、組立コストが高くなる。また、位置精度が低くても封止できるように、例えば、シール部材を強く締め付けるようにすると、扉を開閉し難くなる。このような課題を解決すべく、本実施の形態の封止機構26は、以下のように構成されている。
封止機構26は、図11および図12に示すように、上扉16の下部40と下扉17の上部45との間に介在するシール部材81と、下扉17の上部45に設けられてシール部材81を固定する固定部46と、上扉16の下部40に形成されて固定部46との間にシール部材81を挟持できる相手部材としての挟持部41とを有している。上扉16および下扉17の閉じる操作に伴って、シール部材81が上扉16および下扉17とにより挟まれて締めつけられるように、シール部材81は、固定部46に固定され、相手部材としての上扉16の挟持部41がシール部材81に相対変位して接近し当接するように配置されている。これにより、シール部材81は、固定部46と挟持部41との間を封止する。
シール部材81は、ゴム等の弾性部材により形成されている。シール部材81は、上扉16の下部40と下扉17の上部45とに沿って左右方向に延びる中央部83と、この中央部83の左右両端に設けられて上扉16と下扉17とにより上下方向に挟まれる一対の端部84とを有している。これら一対の端部84および中央部83は一体に形成され、下扉17を閉じた状態としたときに平面視で略コの字形形状をなしている。
シール部材81の中央部83に対応して、固定部46および挟持部41は、以下のように構成されている。
固定部46は、下扉17が閉じた状態で、下扉17の最頂部にあり略水平な上面を有する第1板部47と、この第1板部47の後縁部から下方に延びる第2板部48とを有する。第1板部47には、シール部材81を嵌め込んで固定するための固定孔471が形成されている。
挟持部41は、閉じた状態で、略水平な下面を有する第1板部411と、この第1板部411の後縁部から下方に延びて上扉16の最下部となる第2板部412とを有している。第2板部412は、下扉17の第2板部48と所定の間隔を開けて対向して配置され、下扉17の閉じる方向に対して略垂直に延びている。第1板部411は、下扉17の第1板部47と所定の間隔を開けて対向して配置され、下扉17の閉じる方向に対して傾斜している。
シール部材81の中央部83は、固定部46の第1板部47に沿う第1板部831と、第1板部831の後縁から下方に延びて固定部46の第2板部48に沿う第2板部832と、第1板部831の下面から下方に延びて固定孔471に嵌まる第3板部833と、第1板部831の後縁から湾曲状に延びて挟持部41の第2板部412と沿うことのできる第4板部834と、第1板部831の上面から上方に延びて挟持部41の第1板部411と沿うことのできる第5板部835とを有している。
シール部材81の第2板部832および第4板部834と、上扉16の下部40の第2板部412と、下扉17の上部45の第2板部48と、閉じた状態で正面視で重なり合って配置され、シール部材81が、上扉16の下部40と、下扉17の上部45との間に介在している。シール部材81の第4板部834は、断面円弧状に形成され、開閉扉5が閉じられると、湾曲の曲率が大きくなるように弾性変形して、挟持部41の第2板部412と、シール部材81の第2板部832とに密着して、その間を封止する。
シール部材81の第5板部835は、開閉扉5が閉じられると、挟持部41の第1板部411の下面に沿いつつ、シール部材81の第1板部831に沿うように弾性変形して倒れ、挟持部41の第1板部411と、シール部材81の第1板部831とに密着して、その間を封止する。
また、シール部材81の端部84に対応して、固定部46および挟持部41は、以下のように構成されている。
固定部46では、第1板部47が後方に延びて、シール部材81の端部84の下面に沿いつつこの下面を支持しており、第1板部47の後方に延びる部分には、前後方向に延びる嵌合孔が形成されており、この嵌合孔に端部84の下部の鉤状の爪844がはめこまれるようになっている。
挟持部41は、第2板部412の左右の端部に設けられて後方に延びる第3板部413および当接部42となる第4板部414を有している。第3板部413は、シール部材81の端部84よりも洗浄室3の内側に配置されて、シール部材81の端部84の側面と当接する。当接部42となる第4板部414は、シール部材81の端部84の上方に配置されて、シール部材81の端部84の当接部82となる上面と当接する。第4板部414は、下扉17の閉じる方向に沿って傾斜しており、固定部46の第3板部49との間隔が、洗浄室3の奥側で狭くなるようになっている。シール部材81の端部84の当接部82となる上面も、第4板部414と平行になるように下扉17の閉じる方向に沿って傾斜している。
このように、固定部46、挟持部41の第3板部413、および挟持部41の第4板部414により、正面視で側方に開く凹部が形成され、この凹部内にシール部材81の端部84が配置されて、この凹部を封止する。
シール部材81の端部84は、図13に示すように、断面略E字形状に形成されている部分と、この部分から下方に延びる固定のための鉤状の爪844とを有する。シール部材81の端部84は、挟持部41の第3板部413に沿う立設板部841と、開閉扉5の側面を形成しつつ立設板部841と平行に形成された立設板部842と、両立設板部841,842をつなぐ接続板部843とを有している。両立設板部841,842および接続板部843により囲まれて空洞が区画されている。このように、端部84は内部に空洞を有しているので、下扉17が閉じられるのに伴って締めつけられたときに、端部84はスムーズに弾性変形して、周囲の挟持部41と、固定部46とに確実に当接できる。
また、シール部材81の端部84は、図14に示すように、両立設板部841,842および接続板部843とを含む断面略コの字形状としてもよい。特に、コの字形状を上方に向いて開くように配置する場合には、上扉16との接触面が少なくて済み、開閉時の抵抗を少なくできる。
また、シール部材81の端部84は、上扉16および下扉17の閉じる操作に伴って、上扉16および下扉17との間に上下方向に挟まれて締めつけられるようにされている。シール部材81の端部84の当接部82となる上面と、相手部材の当接部42となる上扉16の挟持部41の第4板部414とは、相対変位の方向に対して同じ向きに傾斜している。
このように封止機構26により、上扉16と下扉17とを閉じる操作に伴って、シール部材81の中央部83は、上扉16と下扉17との間に前後方向に挟まれて締めつけられ、また、シール部材81の端部84は、上扉16と下扉17との間に上下方向に挟まれて締めつけられる。これにより、シール部材81の中央部83および端部84により上扉16および下扉17の間をシールできる。
このように、上扉16および下扉17の隣接する端部同士の間に介在するシール部材81が、一対の扉の間を確実に封止できるので、洗浄時に噴射口8からの水が開閉扉5の内面にかかるとしても、洗浄室3内から水が漏れることを防止することができる。
また、シール部材81と、上扉16の下部40および下扉18の上部45とは、閉じた状態で正面視で重なり合って配置され、前後方向に並んでいる。これにより、上扉16の下部40と、下扉18の上部45と、シール部材81との各部の間を屈曲状につないで、封止距離を長くできる結果、上扉16および下扉17の間を、より一層確実に封止することができる。また、上扉16および下扉17の洗浄室3へ取り付け位置精度が十分に高くない場合や、上扉16と、下扉17と、シール部材81との各部品の寸法精度が十分に高くない場合であっても、閉じる操作によりシール部材81を締めつけることができるので、より一層確実にシールすることができる。
また、シール部材81の端部84は、上扉16と下扉17とにより上下方向に挟まれ、シール部材81の端部84と相手部材である上扉16との互いに当接する当接部82,42が、相対変位の方向に対して傾斜する傾斜面により形成されている。上述のように、シール部材17の端部84は、開閉扉5を閉じるときの相対変位の方向と交差する方向である上下方向に締めつけられるので、上扉16や下扉17の反り等に起因して、相対移動の方向に十分にシール部材81が締めつけられ難い場合であっても、シール部材81を締めつけることができ、確実にシールすることができる。
また、両当接部42,82が相対変位の方向に対して傾斜面により形成されているので、当接部42,82間の摺動抵抗を抑制しつつ、スムーズにシール部材81を締めつけることができる。
シール部材81の端部84よりも洗浄室3内側には、上扉16が配置されている。これにより、シール部材81の下部が洗浄室3の内側に面することとなるので、仮に水がシール部材81の近傍に到達したとしても、水が自然落下によりシール部材81に達することを防止できる。
また、本実施の形態では、封止機構26のシール性を高めるべく、下扉17を以下のように構成している。図11および図15を参照する。
また、下扉17の裏面58には、洗浄室3の底部32に設けられた噴射口8から噴射される水がシール部材81に直接にかかることを阻止される距離(図11の距離L4参照)で、シール部材81よりも後方に張り出した張出部97が形成されている。
このように、張出部97により、水が噴射口8からシール部材81に向けて噴射されるとしても、張出部97に当たって邪魔されるので、シール部材81にかかる虞はない。その結果、シール部材81は、一層確実にシールすることができる。
また、下扉17の裏面58には、下扉17を開けたときに水滴の流出を防止できる防壁部98が形成されている。防壁部98は、下扉17を開けた状態で、下扉17の裏面58の前縁近傍に上方へ突出している。防壁部98は、張出部97の端部で左右方向に延びる凸条であり、下扉17の裏面58の左右端部をつないでいる。防壁部98は、その後方(下扉17が開いた状態で)に凹部を形成している。
防壁部98により、下扉17を開けたときに、裏面58に付着した水滴が下扉17から流れ落ちることを防止できる。その結果、食器洗い機1の周囲が濡れることを防止できる。また、下扉17を閉じると、防壁部98は、下扉17の裏面58の上縁近傍に位置するので、シール部材81への噴射口8からの水の到達を防止でき、シール部材81のシール性をより一層高めることができる。
また、下扉17の裏面58の左右には、噴射口8から噴射される水が、シール部材81の端部84に直接にかかることを阻止する板状の邪魔部99が形成されている。この邪魔部99は、閉じた状態で、食器カゴ4を載置する部分の上部に後方に延びている。邪魔部99は、上述の張出部97と同様の作用を得られて、シール性をより一層確実に得ることができる。
また、本食器洗い機1では、食器カゴ4を下扉17に引き出せるので、食器を出し入れし易くできて、上扉16を十分に開けられない場合の使い勝手を高めるのに好ましい。
また、洗浄室3を薄型にできるので、例えば、正面から見たときに流しの側方にあるスペースの幅が狭い場合にも設置できる食器洗い機1を実現できる。さらに、開閉扉5を上扉16と下扉17とに分けたので、開ける際に、下扉17が流しの蛇口や水栓とぶつかることや、上扉16が流しの上方に設けられた戸棚とぶつかることを防止できる。
また、薄型の洗浄室3に対応した食器カゴ4は、薄くできるので、下扉17に引き出すときに、十分に前に引き出せる結果、食器をより一層出し入れし易くできる。
なお、上述の実施形態の食器洗い機1は、薄型の洗浄室3を有していたが、これには限定されず、例えば、平面形状が略正方形の洗浄室3を有してもよい。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。