JP4259115B2 - マルチスリット型アクチュエータ,インクジェットヘッド及びマルチスリット型アクチュエータの製造方法 - Google Patents

マルチスリット型アクチュエータ,インクジェットヘッド及びマルチスリット型アクチュエータの製造方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、圧電性材料から成るアクチュエータを櫛歯状に複数整列配置して形成したマルチスリット型アクチュエータに関する。
特に、量産性に富み、洗浄〜乾燥工程が不要であり、また50μm以下の幅のスリットであっても、更にアスペクト比10以上であっても作成可能なマルチスリット型アクチュエータの製造方法、及びその製造方法により作成することでスリット壁面の結晶粒子の破壊大幅に削減したマルチスリット型アクチュエータ及びインクジェットヘッドに関する。
背景技術
例えばシェアモード方式のインクジェットヘッドで使用される圧電アクチュエータがある。これは図11に示すような構造を有し、基板21上に櫛歯状に圧電性材料で形成された複数の壁部22を形成し、壁部の間に長方形状のインク室23を隣接して形成し、壁部22を変形させることでインク室の体積を変化させてインクの吐出動作をさせている。
このようなアクチュエータは、図7に示す手順で作成されていた。まず(a)で圧電性材料17を用意し、(b)で焼成する。そして(c)で分極処理し、(d)でダイシングソー等で微細なスリット形成加工を行って櫛歯状の駆動部18を形成すると共にインクを収容するスリット19を複数整列形成し、(e)でスリット内の壁面に電極20を形成した。その後、図11に示すようにガラス板等の蓋板24で蓋をしてインク室を閉塞し、ノズル26を形成したノズル板25で先端開口部を閉塞して形成されていた。
しかし、上記製造方法は、固い圧電性板材を機械加工するため、角部が欠けやすく次のような問題があった。
第1に、スリット加工に時間がかかり、量産性に適していなかった。
第2に、スリット加工後は加工用遊離砥粒や加工液で汚染されるため、十分な洗浄工程が必要であるが、加工後の強度は低下するため満足のいく洗浄を行うには複雑な工程となりコストのかかる工程となっていた。
第3に、インク室であるスリットは加工に使用されるダイサーブレードで制限を受け、略70μm以下の幅にはできないし、壁厚もダイサーブレードの切削強度が必要であるため、スリットの深さに対して限界値が自ずと決定され、アスペクト比10以上で形成するもが難しかった。そのため、高密度、或いは高強度・高出力の櫛歯型アクチュエータを得ることが出来なかった。
第4に、ダイサーブレードにより加工するため、直線的、平面的スリット加工しかできず、複雑形状にするときには、後工程で部品の接着等することで対応していたし、直線的加工を行う結果、駆動時にはノズルプレート接合端まで圧電応力変形が生じてしまい、接合面の耐久性が低下し易かった。
第5に、切削加工によりスリットを形成するため、櫛歯側面に現れた結晶粒子は粒内破壊を生じ、圧縮残留応力による特性劣化が生じ易かった。図8はこの説明図であり、(a)は図7のQ視端面図、(b)はN部拡大断面図を示している。ダイシングソーによる切削加工で斜線で示す櫛歯表面の圧電体結晶粒子は、一部が削り取られて、粒内破壊を生じ、特性劣化を生じていた。また、切削加工により、結晶粒子間や粒内にマイクロクラックが生じ、これによる特性劣化が生じることもあった。
発明の開示
上記課題を解決するため、本発明者らは、まず、ダイサーブレードを使用しない形成方法として、図9に示す作成方法を検討した。これは、(a)で圧電材料グリーンシート1を所定枚数各々櫛歯形状に打ち抜き加工して、(b)で治具を用いて基板4上に位置合わせして積層して加熱加圧し、(c)で焼成して一体化し、その後(d)で分極処理して(e)で電極6等を形成する形成方法である。
しかし、この形成方法は打ち抜いたグリーンシート1の重ね合わせが難しく、図9のR視の端面説明図を示す図10のように、重ね合わせた各シート間の位置ズレは大きく、20μm近い積層位置ずれが発生し10μm以下に抑えることは不可能であった。この原因は、位置決めは通常、各グリーンシート1に位置合わせ穴を設け、位置決めピンのある治具を用意し、そのピンをグリーンシート1の穴に通して積層していく方法を採るが、そのためにはピン穴とピンとのクリアランスが少なくとも10μmは必要であり、またグリーンシート1の柔軟さのために、10層以上を積層すると最終的には20μm近い圧電層間のずれが生じざるを得なかったことによる。
このような圧電層間のズレが発生すると、電極に駆動電圧を印加した際、ズレによる段差部に電界集中が起こって絶縁破壊が生じやすいし、圧電すべり振動モードによる櫛歯の変形形状が一様ではなくなり、マイクロクラックが発生して素子の破壊に至りやすく好ましくない。
また、このような不具合は、特にスリット間ピッチが200μm以下のような、微細なマルチスリット型アクチュエータにおいて大きな問題となる。なぜならば、仮にスリット幅を100μmと設定すると、圧電層の幅は100μm以下しかなくなり、これに対して20μmものズレが生じると、全体として無視できない応力集中・電界集中が生じるためである。
本発明は、このような実験結果を踏まえて成し得たもので、スリット壁面の結晶粒子の破壊大幅に削減したマルチスリット型アクチュエータ及びインクジェットヘッドである。そして、量産性に富み、洗浄〜乾燥工程が不要であり、更に直線形状以外のスリットであっても、また50μm以下の幅のスリットであっても、またアスペクト比10以上であっても作成可能なマルチスリット型アクチュエータの製造方法である。
先ず、本発明に係るマルチスリット型アクチュエータは、基板上に複数の圧電アクチュエータを櫛歯状に整列配置したマルチスリット型アクチュエータであって、櫛歯間の最小のスリット幅が70μm未満であり、櫛歯間のスリット壁面を構成する圧電アクチュエータの側面が焼成面で形成され、櫛歯間のスリット幅が櫛歯奥から先端に向けて狭くなるように形成されていることを特徴とする。
このように構成することで、圧縮残留応力による特性劣化が生じることが無くなり、耐久性、信頼性を向上できる。更に、櫛歯間のスリット幅を単純な直線溝ではなく櫛歯奥から先端に向けて狭くなるように形成しているので、スリットをインクジェットヘッドのインク流路とした場合、流体に適した形状にすることができ櫛歯先端部の圧電変形応力を小さくすることが可能となる。その結果、別途部材を介在させることなく長寿命化を図ることが可能となる。
また、上記構成においてスリット壁面の表面粗さRtを10μm以下とすると良く、そうすることでスリット壁面の凹凸が小さいため駆動時に電界集中や応力集中の発生を防止でき、各櫛歯間で安定した動作を実現できる。
また、上記構成において、各櫛歯間のスリット幅が同一でなく、少なくとも2種類の幅のスリットを設けても良い。こうすることで、目的に応じて最適なスリット幅にでき、最適な特性のアクチュエータを提供出来る。
本発明に係るインクジェットヘッドの一つはシェアモード方式で駆動されるインクジェットヘッドであって、上記構成のマルチスリット型アクチュエータの基板に対向するアクチュエータ上面を閉塞板で閉塞し、スリットをインク室として櫛歯先端方向にインクを吐出可能としたことを特徴とする。
また、本発明に係るもう一つのインクジェットヘッドは同様にシェアモード方式で駆動されるインクジェットヘッドであって、上記構成のマルチスリット型アクチュエータ2個を、互いの櫛歯部が合致するよう上面同士を接合し、部屋状に形成したスリット部をインク室として櫛歯先端方向にインクを吐出可能としたことを特徴とする。
このように構成することで、耐久性,信頼性を向上でき、インク流路を流体的に適切な形状にできるし、長寿命化を図ることが出来る。
そして、本発明に係るマルチスリット型アクチュエータの製造方法は、基板上に圧電性材料から成るアクチュエータを櫛歯状に複数整列配置して形成したマルチスリット型アクチュエータの製造方法であって、複数の圧電材料グリーンシートを用意し、そのうちの第一の圧電材料グリーンシートをダイ上にセットして、周囲にストリッパを配置したパンチを下降させて前記第一の圧電材料グリーンシートにスリット孔を開ける第一の行程と、前記第一の圧電材料グリーンシートをストリッパを用いて引き上げる第二の行程と、前記パンチの先端部を、引き上げた前記第一の圧電材料グリーンシートの最下部より僅かに引き込む程度に引き上げる第三の工程と、前記パンチを下降させて、前記ダイ上にセットした第二の圧電材料グリーンシートに第二のスリット孔を開ける第四の工程と、前記第二の圧電材料グリーンシートを前記第一の圧電材料グリーンシートと共に前記ストリッパにより引き上げる第五の工程と、前記パンチ先端部を、引き上げた前記第二の圧電材料グリーンシートの最下部より僅かに引き込む程度に引き上げる第六の工程と、以降、複数枚の圧電材料グリーンシートを第四の工程から第六の工程を繰り返して積層して櫛歯状の複数の圧電層を形成する第七の工程と、該圧電層の一側面を基板に密着して焼成する第八の工程とを有することを特徴とする。
このように製造することで、パンチ自体を圧電材料グリーンシートの積層軸として使用し、打ち抜いた圧電材料グリーンシートを移動することなく順次重ね合わせて櫛歯を形成するので、スリット孔の変形が発生せず、高い精度で積層でき、凹凸の少ない櫛歯側面を形成できる。そのため、スリット幅が70μm未満の櫛歯であっても、またアスペクト比10以上のスリット深さであっても作成可能であるし、優れた特性のアクチュエータを得ることができる。
また、打ち抜き金型の設計により、スリットの幅を櫛歯奥から先端に向けて変更できるし、スリット幅は打ち抜き時点では金型加工幅に等しいが、焼成することで収縮するので、最終的に30〜50μm幅の微細スリットを形成することも可能である。
更に、スリット部分は焼成前に形成するので、スリット壁面は高温焼成面のままであり、粒内破壊を受けないので、圧縮残留応力が発生せず良好な特性を維持できるし、スリット形成に切削工程を必要としないので、洗浄及び乾燥工程が必要なく、工程を簡略化できる。
発明を実施するための最良の形態
本発明を具体化した実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るマルチスリット型アクチュエータの一例を示し、(a)〜(d)は製造工程の概略、(e)は完成したアクチュエータの概略を示している。
製造工程を説明する。まず(a)で圧電材料グリーンシート1(以下、単にシートと称する。)にスリット2を形成すると共に積層を後述する方法により同時に行い、シート1を積層して櫛歯3を形成し、打ち抜きの終了と共に積層も完了させる。次に、(b)で別途用意したシートから成る基板3上に櫛歯3を形成すると共に積層したシート1,1・・を載置し、(c)で加熱加圧して各層を密着させ、(d)で焼成して全シート1,1・・及び基板4を一体化して駆動部を完成させる。その後、スリット内の壁面等に電極6を形成することで、(e)の完成したマルチスリット型アクチュエータを得る。尚、上記シートは、ドクターブレード法等の周知のテープ形成手段によって形成される。
このように、焼成前に櫛歯を形成するので、スリット壁面は焼成面で形成され、ダイサー等でスリット加工した場合に発生する圧電体結晶の粒内破壊が発生することが無い。そのため、圧縮残留応力による特性劣化が生ずることがなく耐久性・信頼性を向上させることができる。また、加工中に角部の破損(チッピング)が発生し難いし、ダイサー加工がないため洗浄〜乾燥工程が必要なくなる。
図2は、櫛歯3の形成と積層を同時に行う具体的製造方法を示し、周囲にシート1の積層操作をするストリッパ10を配置したパンチ8とダイ9から成る金型を用いている。図2(a)はダイ上に最初のシート1aを載せた打ち抜き前の状態を示し、図2(b)でパンチ8及びストリッパ10を下降させてシート1aにスリット孔を打ち抜いて櫛歯を形成している(第一の工程)。
次に、2枚目のシート1bの打ち抜き準備に入るが、このとき図2(c)に示すように最初のシート1aはストリッパ10に密着させて上方に移動させて、ダイ9から離す(第二の工程)。ストリッパ10にシート1を密着させる方法はストリッパ10に吸引孔を形成して真空吸引することで実施できる。
また、2枚目のシート1bの打ち抜き準備に入るために、ダイ9からパンチ8及びストリッパ10を引き上げるが、この引き上げている途中は、パンチ8の先端部を一緒に引き上げた最初のシート1aのスリット孔の中まで戻さないことが望ましく、また止める際には一緒に引き上げたシート1aの最下部より僅かに引き込んだところで止めるのが肝要である(第三の工程)。パンチを8最初のシート1aの孔まで戻したり、完全にストリッパ10の中へ格納してしまうと、シート1は軟質であるため形成した孔が変形してしまい、シート1を積層して櫛歯を形成した際にその側面の平坦性が低下してしまう。
図2(d)は2枚目のシート1bの打ち抜き工程を示し、最初のシート1aをストリッパ10に密着させることで、ダイ9上に2枚目のシート1bを容易に載置でき、図2(b)の工程のごとく打ち抜きでき、同時に最初のシート1aに重ね合わせられる(第四の工程)。
そして、(c),(d)の工程を繰り返して打ち抜かれた最初のシート1aと2枚目のシート1bを重ね合わせてストリッパ10により引き上げ(第五の工程)、3枚目のシート1cの打ち抜き準備に入る。但し、この時も一緒に引き上げたシート1の最下部より僅かに引き込んだところで止めることが肝要である(第六の工程)。その後、第四の工程から第六の工程を繰り返して必要積層数のシート1の打ち抜き及び積層を繰り返す(第七の工程)。
図2(e)は、打ち抜きを終了した状態を示している。必要な枚数のシート1の打ち抜き及び積層が終了したら、ストリッパ10によるシート1の保持を解除し、打ち抜き積層したシート1をストリッパ10から引き離して取り出し可能としている。ストリッパ10からの引き離しは図示するように、ストリッパ下面に引き離し治具11を設けることで確実に行うことが出来る。
以上述べた操作は、特願2000−280573に記載の製造方法を適用したものであり、この操作により所定厚の櫛歯状マルチスリットの積層体を得ることができ、この後、同様に圧電材料グリーンシートから成る基板4上に上記積層体を重ね合わせ、加圧積層処理を施してハンドリング可能な積層体と成し、次いでシートの特性に適した条件で当該積層体を焼成一体化する(第八の工程)。
図3(a)は、図1(d)のP視端面図を示し、図3(b)はスリット壁面のM部を拡大した断面模式図を示している。上記製造方法による重ね合わせ精度の実験値を示すと、例えば暑さ40μm、ヤング率39N/mmのシートに、スリット70μm、櫛歯幅100μmの櫛歯を形成し、10枚重ね合わせた場合、焼成後の各層間のズレ量は最大で4μm、表面粗さRtは7μmであり、図示するように櫛歯側面を凹凸なく滑らかなものにできる。そして、スリット壁面は焼成面であるため図3(b)に示すように、表面の結晶粒子であっても圧電体結晶粒子は粒内破壊が発生せず、粒内破壊を受けている結晶粒子を1%以下に抑えることができる。尚、焼成後のスリット幅は、焼成収縮により約55μmであった。
このように、パンチとダイを用いてスリットの形成と積層を同時に行い、パンチ自体を圧電材料グリーンシートの積層位置合わせ軸としても使用してパンチにより打ち抜いたスリット孔の変形を防止するため、スリット孔の変形が発生せず、積層間のズレ量を5μm未満に抑えることができ、高い精度で積層し、凹凸の少ないスリット壁面を形成できる。そのため、スリット幅が70μm未満の櫛歯であっても、またアスペクト比10以上のスリット深さであっても容易に作成でき、優れた特性のアクチュエータを得ることができる。
また、櫛歯間のスリット壁面の結晶粒子が破壊されていないので、圧縮残留応力による特性劣化が生じることが無いし、上記製造方法ではシートを移動させるための治具や積み重ねるスペースが必要ないため、製造ラインも簡略化でき、低コストでの製造が可能である。
更に、スリット幅は、シート打ち抜き時点では、金型のパンチ加工幅とほぼ同等であるが、焼成時に収縮するので、上記製造方法によれば、薄肉加工スリットと焼成収縮の組み合わせで、幅30〜50μmの微細スリットを形成することも可能であるし、打ち抜き金型の設計により、スリットは直線以外であっても容易に形成でき用途に応じて最適な形状に形成できる。
図4は本発明のマルチスリット型アクチュエータ製造方法の他の例を示している。順に説明すると、まず(a)で各シート1のスリット状の孔2a形成と積層を上記方法で同時に行い、シートの孔開け及び積層が終了したら、(b)で同様に圧電材料グリーンシートから成る基板4上に上記積層体を重ね合わせ、(c)で加熱加圧して各層を密着させ、(d)で焼成一体化する。ここまでの製造方法は上記図2の製造方法と同様であるが、この場合打ち抜きするスリット孔2aは両端が閉塞された長孔であり、焼成した後(e)で一端を切除して櫛歯形状としてマルチスリットを形成する。その後、電極等を形成することで完成となる。
このように、直接櫛歯を打ち抜かず、櫛歯両端を連結して積層させることで、各シートの櫛歯部分の重ね合わせ精度を更に上げることが可能である。但し、焼成後に端部除去加工が必要であるため、除去加工部の洗浄〜乾燥工程が必要となり、工数が増加してしまう。
図5は、本発明のマルチスリット型アクチュエータをインクジェットヘッドに適用した場合を示し、シェアモード型ヘッドの要部であるアクチュエータ部の断面説明図であり、図5(a)は2種類の幅のスリット13a,13bを交互に形成し、拡幅したスリット13aをインク室、挟幅スリット13bを縁切りスリットとして設けている。
このように、上記製造方法は複数種類の幅のスリットを隣接形成することも容易に実施でき、こうすることで全インク室毎の隔壁を縁切すれば、独立して駆動させることが可能となり、シェアモード型ヘッドの高性能化を図ることができる。
また、図5(b)は櫛歯先端部を幅広に形成しスリットを逆に狭く形成している。このように、金型の形状を変更するだけで一つのスリットの前後方向のスリット幅も容易に変更でき、流体的に適切なインク流路形状やノズルプレートとの接合面での応力低減を図った形状を無理なく実現でき、櫛歯先端部を幅広に形成することで櫛歯先端面に接着するノズルプレート(図11に示す)との接合部の圧電変形応力を小さくできる。
このように、目的に応じて最適なスリット幅にでき、最適な特性のアクチュエータを提供出来るし、スリットをインクジェットヘッドのインク流路とした場合、流体的に適切な形状にできるし、櫛歯先端部の圧電変形応力を小さくでき、別途部材を介在させることなく長寿命化を図ることができる。
尚、ダイサー加工でこのような複数種類のスリットを形成しようとすると、その種類に応じた刃厚のブレードを用意して使い分けなければならず、困難であったし、櫛歯の幅を基部と先端部とで変化させようとした場合、別途部材を接合して対応するしかなかった。
図6は、本発明のマルチスリット型アクチュエータを搬送装置に適用した場合を示し、(a)はスリットを一定の間隔で形成し、一定速度での搬送を可能としたもの、(b)はスリットの間隔に変化を持たせて、搬送速度が変化するように形成したものを示している。14は搬送部品を示し、図6(a)に示すように各櫛3に電圧を印加し矢印の方向に変形させることで裁置した部品を搬送することができる。
微細加工部品の製造工程、特にマイクロマシンファクトリーにおいては、その搬送方法が問題となっており、このようにマルチスリット型アクチュエータで搬送装置を形成すれば、マイクロマシンの搬送をスムーズに行うことができる。
更に、本発明のマルチスリット型アクチュエータは、マイクロリレーやマイクロスイッチとして利用することも可能であり、産業の発展に貢献大である。
【図面の簡単な説明】
図1は、マルチスリット型アクチュエータ及びその製造方法を示す説明図である。
図2は、図1のスリット形成及び圧電材料グリーンシートの積層を同時に行う方法を示す工程説明図であり、(a)はダイに最初の圧電材料グリーンシートを載せた図、(b)は最初の圧電材料グリーンシートの打ち抜き工程図、(c)は2枚目の圧電材料グリーンシートを載せた図、(d)は2枚目の圧電材料グリーンシートの打ち抜き工程図、(e)は全シートの打ち抜き、積層を終えてストリッパにより積層した圧電材料グリーンシートを離した工程図である。
図3は、図1のP視端面図を示し(a)は全体図、(b)はM部の断面拡大模式図である。
図4は、マルチスリット型アクチュエータの他の製造方法の説明図である。
図5は、マルチスリット型アクチュエータをインクジェットヘッドに適用した場合の形状を示し、(a)は2種類の幅のスリットを交互に設けたアクチュエータの断面図、(b)はスリットを幅を櫛歯先端に向けて変化させたアクチュエータの斜視図である。
図6は、マルチスリット型アクチュエータの他の形状を示し、搬送装置に適用した断面図であり、(a)はスリットを一定幅で形成した場合、(b)はスリット幅が変化している場合を示している。
図7は、従来のマルチスリット型アクチュエータの製造方法を示す説明図である。
図8は、図7の方法により製造されたマルチスリット型アクチュエータを示し、(a)はQ視端面図、(b)はN部の断面拡大模式図である。
図9は、従来の他の製造方法を示す説明図である。
図10は、図9のR視端面図である。
図11は、Xaar型インクジェットヘッドの説明図である。

Claims (6)

  1. 基板上に複数の圧電アクチュエータを櫛歯状に整列配置したマルチスリット型アクチュエータであって、
    櫛歯間の最小のスリット幅が70μm未満であり、
    櫛歯間のスリット壁面を構成する圧電アクチュエータの側面が焼成面で形成され、
    櫛歯間のスリット幅が櫛歯奥から先端に向けて狭くなるように形成されていることを特徴とするマルチスリット型アクチュエータ。
  2. スリット壁面の表面粗さRtが10μm以下である請求項1記載のマルチスリット型アクチュエータ。
  3. 各櫛歯間のスリット幅が同一でなく、少なくとも2種類の幅のスリットを有する請求項1又は2に記載のマルチスリット型アクチュエータ。
  4. シェアモード方式で駆動されるインクジェットヘッドであって、請求項1乃至の何れかに記載のマルチスリット型アクチュエータの基板に対向するアクチュエータ上面を閉塞板で閉塞し、スリットをインク室として櫛歯先端方向にインクを吐出可能としたインクジェットヘッド。
  5. シェアモード方式で駆動されるインクジェットヘッドであって、請求項1乃至の何れかに記載のマルチスリット型アクチュエータ2個を、互いの櫛歯部が合致するよう上面同士を接合し、部屋状に形成したスリット部をインク室として櫛歯先端方向にインクを吐出可能としたインクジェットヘッド。
  6. 基板上に圧電性材料から成るアクチュエータを櫛歯状に複数整列配置して形成したマルチスリット型アクチュエータの製造方法であって、
    複数の圧電材料グリーンシートを用意し、そのうちの第一の圧電材料グリーンシートをダイ上にセットして、周囲にストリッパを配置したパンチを下降させて前記第一の圧電材料グリーンシートにスリット孔を開ける第一の行程と、
    前記第一の圧電材料グリーンシートをストリッパを用いて引き上げる第二の行程と、
    前記パンチの先端部を、引き上げた前記第一の圧電材料グリーンシートの最下部より僅かに引き込む程度に引き上げる第三の工程と、
    前記パンチを下降させて、前記ダイ上にセットした第二の圧電材料グリーンシートに第二のスリット孔を開ける第四の工程と、
    前記第二の圧電材料グリーンシートを前記第一の圧電材料グリーンシートと共に前記ストリッパにより引き上げる第五の工程と、
    前記パンチ先端部を、引き上げた前記第二の圧電材料グリーンシートの最下部より僅かに引き込む程度に引き上げる第六の工程と、
    以降、複数枚の圧電材料グリーンシートを第四の工程から第六の工程を繰り返して積層して櫛歯状の複数の圧電層を形成する第七の工程と、該圧電層の一側面を基板に密着して焼成する第八の工程とを有することを特徴とするマルチスリット型アクチュエータの製造方法。
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