JP4258691B2 - 貯槽の形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、石油、水などの液体、低温液化ガス、消化ガス、粉体、粒状物等の各種貯蔵物を貯蔵する貯槽の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
第1の貯槽の従来例としては、円筒形の側壁に囲まれた底版上に総足場を組み立て、その上部に鋼製の屋根を形成した貯槽、あるいはこの総足場に加えてドーム形状の型枠を組立て、この型枠の上にコンクリートを打設してコンクリート製のドーム屋根を形成した貯槽があった。
【0003】
また、第2の貯槽の従来例としては、不通気性の平膜で構成した円形平面の袋体内に流体を送入し膨らませ、この袋体の表面に急結性のモルタルセメント層を形成せしめてドーム型建築物用型枠を施工する方法で構築した貯槽が、特公平6−39845号公報に紹介されている。
【0004】
さらに、第3の貯槽の従来例としては、コンクリート材等で形成した底版と側壁とからなる筒体の上部開放面に可撓膜体を気密的に被覆し、この可撓膜体で密封された筒体内へ空気を送入し昇圧することによって、可撓膜体をドーム形状に緊張維持させた状態で、この可撓膜体上にモルタルまたはコンクリートを打設してドーム屋根を構築する貯槽が、特許第2840876号の発明に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述第1の貯槽の従来例、つまり総足場を組立て、この総足場を使用して鋼製の屋根を構築する貯槽は、総足場の仮設が繁雑で手間がかかった。また、この総足場と、総足場に支えられた型枠を使用して、コンクリート製の屋根を形成する貯槽は、総足場と型枠の仮設作業の手間、工数がさらに膨大となる上に、型枠の仮設費用が多くかかり、さらに、この型枠の製作は、繁雑でかつ熟練を要する作業であった。また、この総足場と型枠を仮設して屋根を構築する作業は、高所作業であるために危険を伴うものであった。
【0006】
また、前述第2の貯槽の従来例、つまり円形平面の袋体を用いてドーム型建築物用型枠を施工する方法で構築した貯槽は、足場や支保工の仮設工事は要らなくなるものの、その構築に用いる円形平面の袋体は、筒体の立上り部が小さく側壁部が高くないので、広い敷地面積を要する割りに貯蔵容量は少なく、大容量の貯槽としては適していなかった。
【0007】
さらに、前述第3の貯槽の従来例、つまり平底円筒体内へ空気を送入し昇圧することによって、可撓膜体をドーム屋根状に緊張維持させ、この可撓膜体上にモルタルまたはコンクリートなどを打設してドーム屋根を構築する貯槽においては、総足場や型枠などの仮設工事を不要とする利点を有するが、可撓膜体の周縁部の取付けが繁雑で、その取付部からの漏洩防止に配慮を必要とした。
【0008】
この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、総足場などの仮設を必要とすることなく、簡単かつ短い工期で、安全に構築することができるとともに、気密性、耐久性に優れた貯槽の形成方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の貯槽の形成方法は、予め形成した鋼製あるいはコンクリート製の平底円筒体の内部に可撓膜体で形成した袋体を挿入し、この袋体内に流体を送入してこの袋体を緊張させるとともに、この袋体を前記平底円筒体の内壁面に密着させ、緊張した前記袋体の上面に鋼材あるいはコンクリート材からなる屋根を設けて貯槽を形成し、かつ前記袋体を前記貯槽の内壁面に残存させることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明の貯槽の形成方法は、前記袋体の屋根部と側部との境界部外周縁に設けた、環状帯、あるいはタブや耳片などの固着部材を前記平底円筒体の側壁上縁部の周方向にわたって固着したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明に係る貯槽の実施形態例を、図面に基づいて説明する。図1は、参考例で、図2は、請求項1及び2の発明に係る貯槽の形成方法の一実施形態例である。
【0012】
図1に示す貯槽においては、ドーム形状の屋根部1Cを備えた平底円筒体形状に可撓膜体で形成した袋体1を、平面円形に形成した底版2あるいは基盤上にアンカー等で固定し、この袋体1の内部に空気等の流体を送入し袋体1を緊張させ、この緊張して自立した袋体1の外面に固結溶材8を付着させて、円筒形の側壁3とドーム形状の屋根4とからなる一体の外壁を形成することによって、貯槽本体10を構築するものである。
【0013】
上記平底円筒体形状の袋体1は、円形平面形状を有する底部1Aと、この底部1Aに連続する円筒体形状を有する側部1Bと、この側部1Bに連続する球殻状のドーム形状を有する屋根部1Cとによって、一体の密封体に形成する。
【0014】
この袋体1は、上記貯槽本体10の構築の際に、袋体1の内部に空気や水などの流体を送入し昇圧しても十分耐え得る強度を有し、かつ気密性、水密性などに優れたシート体で形成する。また、袋体1の材料は、貯槽内部9に石油や水などを長期間貯蔵する際に、貯蔵物に対応して最適な材料、つまり貯蔵物に侵されることがなく耐久性、耐老化などに優れたシート体を選択する。
【0015】
例えば、水の貯蔵に適したシート体としては、繊維織物に樹脂材料等をコーティングした膜材、例えばガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維等の繊維織物に、例えば四ふっ化エチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、フッ素樹脂等の樹脂材料等をコーティングした可撓性を有する膜体がある。
【0016】
図1に基づいて、上記貯槽本体10を構築する状況についてさらに詳述する。袋体1の側部1Bの下方には、空気送入用の送入口5を設け、該送入口5に接続する送風管6を介して送風機7を設ける。この送風機7と送風管6によって送入口5から袋体1の内部に空気を送入し、袋体1を膨らませて昇圧緊張した後に、袋体1の外表面に固結溶材8を施工する。袋体1内の昇圧の程度は、袋体1が緊張状態で平底円筒体形状に自立維持し、かつ屋根はドーム形状に緊張保持され、かつ袋体1の外表面上に施工作業ができる圧力で、しかも固結溶材8が付着されてその全重量が加わっても、円筒体形状とドーム形状が維持でき十分耐え得る圧力とする。
【0017】
なお、上記袋体1内に空気などの流体を送入昇圧し緊張させて固結溶材8を施工する際に、空気などの気体を使用して貯蔵ガス圧より高い圧力で施工した場合には、貯槽の気密・圧力テストを同時に実施することができるため、貯槽構築後に別途、気体封入による気密・圧力テストを行う必要がない。また、上記空気などの気体に代えて水などの液体を使用し昇圧した場合には、貯蔵する液体より高い圧力による耐圧テストを同時に実施することができるため、貯槽構築後に別途、液体封入による耐圧テストを行う必要がない。よって、従来貯槽構築後に別途実施されていた気密テストや耐圧テストにかかる手間と時間を削減し、工期の短縮化を図ることが可能となる。
【0018】
上記袋体1の表面に施工する固結溶材8は、施工後に流動体が固化して十分な強度を有する材料として、例えば、繊維強化樹脂材、モルタル材、あるいはコンクリート材などがある。この固結溶材8の施工は、高所作業車などを用いて、吹き付け施工、積層施工などによって、筒体形状の側壁3下部からドーム形状の屋根4上部に向かって順次能率良く打設していく。
【0019】
なお、袋体1と同種系統の材料を含有する固結溶材8を使用した場合には、袋体1と固結溶材8の接着性、融合性が得られるため、より密着性と一体化が向上する。また、モルタルやコンクリートの固結溶材8を施工する場合には、モルタル用やコンクリート用接着剤、例えばクロロプレン系合成ゴムの反応型接着剤等を使用すると、接着能力が一層向上する。さらに、モルタル用やコンクリート用の接着剤の下地材として、例えばニトリルゴム等の特殊合成ゴムを主原料としたプライマーを施工した場合においては、接着剤の付着力を増すことができるだけでなく、モルタルやコンクリートを打設する前の膜体表面の養生をすることができるため、膜体を一体に結合したモルタル層やコンクリート層の健全性が増し、強度、耐久性をより増すことができる上に、モルタルやコンクリートの打設工程も調整でき、より経済的な施工が可能となる。
【0020】
図示は省略するが、袋体1と固結溶材8の結合性を高めるために、袋体1の外表面に、例えば、突起、凹凸、タブ、アンカーピンなどの接続部材を設けておくと、袋体1と固結溶材8の接合性と一体化が向上する。さらに、袋体1の形状を補正するために、袋体1の外表面に、例えば、帯状の補強バンド(図示省略)を配設した場合には、袋体1が補強され、かつ袋体1の変形を抑制して形状を補正し整えることができる。さらに、固結溶材8の強度を向上するために、固結溶材8を施工する前に、袋体1の外表面に密着させるか又は間隔を持たせて、例えば、繊維、ラス、金網、鉄筋、形鋼材などの補強材(図示省略)を配置した場合には、これらの補強材によって固結溶材8が補強され、固化後の固結溶材8によって形成された側壁3及び屋根4は一層高強度となる。
【0021】
また、図示省略するが、袋体の側部外表面に固結溶材を付着させて内側の型枠を形成し、その外周側に間隔をおいて外側の型枠を支持するように設置し、この内側の型枠と外側の型枠とによって形成される隔離間隔内へ、鉄筋コンクリートなどを打設することによって下部側壁を構築し、この下部側壁の上部に順次同様に上部側壁を延長させて形成するようにしてもよい。このように、袋体の側部を内側の型枠の形成に使用するとともに外側の型枠を支持し、上方に向かってこの型枠形成支持を順次繰返しながら側壁を構築していくことによって、コンクリート構造等の側壁を能率良く構築することができる。また、コンクリート構造等で頑強な筒体状の側壁が得られるため、側壁上部を被覆するドーム屋根の構築作業、つまり袋体の屋根部外表面へ固結溶材を付着させる作業も、上記の頑強な側壁に支承させて行うため安定しやり易くなり、かつ側壁にその荷重を負担させることによって袋体内の昇圧力を低減することも可能となる。
【0022】
上記のように固結溶材8を付着させて形成した平底円筒体形状の貯槽本体10は、側壁3が高く立上った筒体状の壁体となるので、敷地面積が小さい割りに大容量の貯槽にすることができる。また、袋体1の外表面に高強度な軽量材の固結溶材8を薄く均一に打設して形成した貯槽本体10は、ほぼ均一な圧力が壁面にかかる消化ガス、燃料ガスなどの気体を貯蔵するガスホルダーとしても好適な貯槽となる。なお、図示の請求項1の発明に係る貯槽の事例においては、平底円筒体形状の貯槽の場合を示したが、袋体を平底かまぼこ形状とした場合にはかまぼこ型の倉庫とすることができ、あるいは袋体を平底ドーム形状とした場合にはドーム型の展示会場とすることができるため、貯槽の他各種の構造物とすることも可能となる。
【0023】
固結溶材8を付着させて形成した貯槽本体10には、その内壁面に底部1Aと側部1Bと屋根部1Cとが一体化した袋体1が固着して、気密、液密に保持される。そして、この袋体1によって貯槽本体10の内壁面がコーティング、保護され、貯槽内部9に貯蔵する腐食性貯蔵物に対しても防食効果が得られるので、別途、内面塗装や内面コーティングなどの防錆対策を施工する必要がない。また錆などによる貯蔵物の汚染もなく、さらに袋体1は、貯蔵物に対応して最適な材料を使用しているので、貯蔵物の品質も保持される。
【0024】
上述のように、袋体1と高所作業車などを用いて構築した貯槽本体10は、貯槽内部9の底版2上部にドーム屋根構築用の総足場や型枠などを仮設する必要がなく、この総足場と型枠の仮設撤去の作業もないので、短い工期で、簡単容易に作業能率良く施工することができる。そして総足場と型枠に係る高所での作業がないため安全で、かつ総足場と型枠を使用しないので経済的に貯槽を構築することができる。
【0025】
請求項1及び2の発明に係る貯槽の形成方法の実施形態例について、図2に基づいて説明する。この貯槽は、あらかじめ鋼材あるいはコンクリート材で、円形平面の底版12と円筒体の側壁13とからなる平底円筒体を構築し、この平底円筒体の内部に可撓膜体で密封体に形成した袋体11を挿入し、この袋体11の内部に、流体、つまり空気などの気体又は水などの液体を送入して袋体11を膨らませて緊張させ、この緊張した袋体11の上面に鋼材あるいはコンクリート材からなる屋根材18を密着させ、側壁13の側壁上縁部21を覆うごとく屋根14を設けて貯槽本体20を形成したものである。
【0026】
このように形成した貯槽本体20は、鋼構造あるいはコンクリート構造よりなる平面円形状の底版12と円筒体形状の側壁13とによって、頑強な平底円筒体形状の壁体が形成されているので、この貯槽内部19に、石油や水などの液体、低温液化ガス、粉体、粒状物等、側壁13の水平方向に水頭圧などが大きくかかる各種貯蔵物を貯蔵する貯槽に適している。この貯槽本体20は、内部に設けた袋体11によって全体が密封体に形成されているので、消化ガス、燃料ガス等を貯蔵するガスホルダーとしても適用することができる。
【0027】
上記平底円筒体の内部に挿入する袋体11は、可撓性を有する膜体を用いて、ドーム形状の屋根部11Cを備えた平底円形状の底部11Aと、円筒体形状の側部11Bとから密封体の平底円筒体形状に形成する。この袋体11は、その内部に空気などの流体を送入し、昇圧しても十分耐える強度を有し、かつ気密性、及び水密性に優れた膜材で形成するものであって、貯蔵する貯蔵物に対応して長期間貯蔵するのに適する材料を用いる。例えば、水を貯蔵するのに適した膜材としては、繊維織物に樹脂材料等をコーティングした膜材、例えばガラス繊維、ポリアミド繊維等に、例えば四ふっ化エチレン樹脂、フッ素樹脂等をコーティングした可撓性を有する膜体がある。
【0028】
図2に基づいて、上記貯槽本体20を構築する状況についてさらに詳述する。袋体11の側部11Bの下部に送入口15を設け、この送入口15の位置と対応する外周の側壁13の下部に貫通孔25を設け、この送入口15と貫通孔25に接続する送風管16を介して送風機17等の送風設備に接続する。そして、上記送入口15から袋体11の内部に、送風管16を介して送風機17によって空気を送入し、袋体11を膨らませて緊張させ、この緊張した袋体11の上表面、つまり側壁13上端部を覆う位置に、鋼材あるいはコンクリート材からなる屋根材18を施工する。
【0029】
上記袋体11内の昇圧の程度は、その袋体11の屋根部11Cがドーム屋根形状に緊張保持され、かつその袋体11上に屋根材18の施工作業ができ、しかも屋根材18の全重量に十分耐え得る圧力とする。なお、袋体11の内部に送入する流体として、空気に代えて水などの貯蔵液体より重い液体を用いれば、水あるいは水より軽い液体を貯蔵する貯槽の耐圧テストを同時に行うことができるので、建設後に別途、耐圧テストを行う必要がなく、工期の短縮化が図られる。
【0030】
上記袋体11の外表面、つまり屋根部11C上面に施工する屋根材18は、後述の鋼製の屋根材の他、例えば、現場施工のコンクリートモルタル、現場施工の合成樹脂材など、流動体の状態から固化する材料で、固化後には十分な強度を有する材料を用いる。この流動体の状態から固化する屋根材18は、袋体11の屋根部11Cとの密着性が良く隙間を生じることがないので、この屋根部11Cによって屋根材18の内壁面が保護される。また、コンクリートモルタルなどの屋根材18は断熱性を有するので、保温特性に優れた貯槽に形成することができる。このコンクリートモルタルなどの屋根材18を施工する事例については、例えば、圧送コンクリートポンプ等を使用し、凝結遅延剤などを混入したコンクリートモルタルなどの屋根材18を圧送し、袋体11の屋根部11C上面に、コンクリートモルタルなどの屋根材18を順次施工して、ドーム形状の屋根14を形成する。
【0031】
なお、上記の屋根材18を施工する前に、袋体11外表面、屋根部11C上面に、図示しないが、例えば、タブ、アンカーピンなどの接続部材を縫付けや接着、溶着などによって固着し、また、平帯状の補強バンド、繊維、ラス、金網、鉄筋などの補強材等を配置し、これらの接続部材と補強材等を結束し連結する。上記接続部材は、袋体11の屋根部11Cと屋根材18を結合し一体化を図り、また上記補強材等は、屋根材18を補強し、形状を整える役割を果すため、高強度で美観に優れた屋根14を形成することができる。
【0032】
また、側壁13の最上部近傍には、壁の厚さを増加して段差に形成した側壁上縁部21を設け、モルタルなどの屋根材18がこの側壁上縁部21の立上がり部で堰止められるようにする。なお、袋体11の屋根部11Cと側部11Bとの境界部外周縁に、環状帯、あるいはタブや耳片などの固着部材22を設け、この固着部材22を側壁上縁部21の周方向にわたって固着するように形成すると、袋体11を側壁13の上方開放部から挿入し、展開して取付ける作業がやり易くなり、また袋体11内へ流体を送入し昇圧する際に位置ずれが起き難く、さらに袋体11の屋根部11Cを緊張させて形状を保持する作業も容易となる。
【0033】
鋼製の屋根材18を使用して鋼構造の屋根14を形成する場合は、膨らませて緊張させた袋体11を作業足場および支持架台に使用して、袋体11の屋根部11Cの上に形鋼等の骨材を配置し、その骨材を連結し側壁上縁部21に両端固定してアーチ状に組立て、この骨材に鋼板などを溶接等で固着するとともに屋根部11Cに密着させるものであるが、この施工の際に、溶接の火花や飛散物の付着、溶接による高熱、鋼材などの衝撃などによって、屋根部11Cを損傷することがないように、屋根部11Cの上に、耐熱性、耐衝撃性などを有する保護材等を設けて、損傷などしないように養生しながら施工する。
【0034】
このように、鋼製の屋根材18にて鋼構造の屋根14を形成する場合には、袋体11を作業足場と支持架台に使用して短期間に効率良く構築することができる。この鋼構造の屋根14は、近隣火災に対して耐火性に優れた屋根14となる。さらに屋根14を含む貯槽本体20の内壁面には、袋体11が密着し、気密性、液密性が保持されているので、液体や気体、粉体などの貯蔵物を安全に貯蔵する貯槽に適する。
【0035】
上記のように、貯槽本体20のあらかじめ形成した底版12と側壁13の内壁面に、膨らませた袋体11を押圧力によって密着させることができ、かつ底部11Aと側部11Bと屋根部11Cとは一体に連続しているため、貯槽の気密性、液密性が保持される。また、袋体11によって貯槽本体20の内壁面が保護され、貯槽内部19に貯蔵する腐食性貯蔵物に対しても防食効果が得られるので、別途、塗装やコーティングなどの防錆対策を施工する必要がない。また、貯槽内壁面に発生する錆による貯蔵物の汚染も生じることなく、さらに袋体11は貯蔵物に対応して最適な材料を用いるので貯蔵物の品質も保持される。
【0036】
上記のように、袋体11を使用して施工する貯槽本体20の屋根14は、底版12上に総足場を仮設する必要がなく、また総足場に支持された型枠などを用いることもなく、かつその仮設や撤去の繁雑な作業がないため短い工期で安価に構築することができる。また、高所作業がないため作業が安全であり、また大工等の熟練作業者を必要とすることなく、簡単容易に施工することができる。そして、その構築に使用した袋体11は貯槽本体20の構成部材となり撤去する必要がない点で、さらに工期の短縮化が図られる。
【0037】
【発明の効果】
叙述の説明から判るように、請求項1及び2に係る発明の貯槽の形成方法で得られる貯槽は、袋体が貯槽の内壁面に残存しているので、貯槽の気密性および液密性を保持し、また、腐食性の貯蔵物に対する貯槽内壁面の防食対策も図れるため、耐久性、耐用性に優れた貯槽となり、さらに貯蔵物の品質保持も得られる貯槽となる。また、袋体を使用し流体で緊張させて貯槽を構築するので、従来の総足場などを使用して構築するのに比べて、安全性が高く、格段に作業能率が向上し、工期が短縮されるため、経済性に優れた貯槽を提供することができる。
【0039】
また、請求項1及び2に係る発明の貯槽の形成方法で得られる貯槽にあっては、貯槽本体の底版および側壁は、あらかじめ鋼構造あるいはコンクリート構造の頑強な平底円筒体形状に形成されているため、水頭圧などが側壁の水平方向に大きくかかる液体や粉体などの貯蔵物を安全に貯蔵する貯槽に最適となる。さらに、請求項2に係る発明の貯槽の形成方法にあっては、前記袋体の屋根部と側部との境界部外周縁に設けた、環状帯、あるいはタブや耳片などの固着部材を前記平底円筒体の側壁上縁部の周方向にわたって固着するので、袋体を側壁の上方開放部から挿入し、展開して取付ける作業がやり易くなり、また袋体内へ流体を送入し昇圧する際に位置ずれが起き難く、さらに袋体の屋根部を緊張させて形状を保持する作業も容易となる。
【0040】
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例で、その構築状況を示す側断面説明図である。
【図2】 請求項1及び2に係る発明の貯槽の形成方法の実施形態例で、その構築状況を示す側断面説明図である。
【符号の説明】
1 袋体 1A 底部
1B 側部 1C 屋根部
2 底版 3 側壁
4 屋根 5 送入口
6 送風管 7 送風機
8 固結溶材 9 貯槽内部
10 貯槽本体
11 袋体 11A 底部
11B 側部 11C 屋根部
12 底版 13 側壁
14 屋根 15 送入口
16 送風管 17 送風機
18 屋根材 19 貯槽内部
20 貯槽本体 21 側壁上縁部
22 固着部材 25 貫通口

Claims (2)

  1. 予め形成した鋼製あるいはコンクリート製の平底円筒体の内部に可撓膜体で形成した袋体を挿入し、この袋体内に流体を送入してこの袋体を緊張させるとともに、この袋体を前記平底円筒体の内壁面に密着させ、緊張した前記袋体の上面に鋼材あるいはコンクリート材からなる屋根を設けて貯槽を形成し、かつ前記袋体を前記貯槽の内壁面に残存させることを特徴とする貯槽の形成方法。
  2. 請求項1記載の貯槽の形成方法において、
    前記袋体の屋根部と側部との境界部外周縁に設けた、環状帯、あるいはタブや耳片などの固着部材を前記平底円筒体の側壁上縁部の周方向にわたって固着したことを特徴とする貯槽の形成方法。
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