JP4258152B2 - ポリアミドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカプロラクタムを主原料として製造されるポリアミド樹脂を製造する方法に関する。さらに詳しくは、カプロラクタムを主原料として特定時間の熱処理を施した際の環状オリゴマー量が極めて少ないポリアミドプレポリマー、カプロラクタムを主原料としたポリアミド樹脂の製造方法において、未反応カプロラクタム含有量およびオリゴマー含有量が極めて低減されたポリアミド樹脂を、高効率、低エネルギーで調製できる、当該ポリアミド樹脂を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カプロラクタムを主原料とするポリアミド樹脂はその優れた特性を活かして衣料用繊維、産業用繊維に使われ、さらに、自動車分野、電気・電子分野などにおいて射出成形品として、また、食品包装用途を中心に押出フィルム、延伸フィルムとしても広く使われている。
【0003】
カプロラクタムを主原料とするポリアミド樹脂は通常、カプロラクタムを少量の水の存在下に加熱することによって製造される。この製造方法は比較的単純なプロセスであり、世の中で広く採用されている製造方法である。「ポリアミド樹脂ハンドブック」(福本修編、日刊工業新聞社)の第63頁〜65頁に記載されている汎用的なポリカプラミドの重合方法の概略を以下に説明する。
【0004】
カプロラクタムを溶融し、約260℃に加熱された常圧重合塔に供給し、この重合塔内で約10時間の滞留の後、塔下部からストランド状にして水槽に吐出されペレット化される。こうして得られるポリカプラミド樹脂ペレット中には重合平衡で生じるカプロラクタムモノマーおよびオリゴマーを含有するため、次いで熱水抽出塔に供給され、塔下部から送られる熱水で向流抽出された後、下部から取り出される。抽出後のペレットは多量の水を含んでいるため、真空又は不活性ガス雰囲気中、約100℃で乾燥される。
【0005】
このようにカプロラクタム重合後のポリアミドは未反応カプロラクタムとオリゴマーを含有するため、重合後の熱水抽出工程が必須と考えられている。この熱水抽出工程には多くのエネルギーを要し、また、未反応モノマーは生産性を低下させるので、この工程の省略、もしくは時間短縮が求められている。また、中でも水に対する溶解性が低く、抽出されにくいオリゴマーの低減が求められている。
【0006】
熱水抽出工程の省略の手段としては、重合後のポリアミドを溶融状態のまま高温度・高真空下で処理することにより、未反応カプロラクタムおよびオリゴマーを除去する方法が挙げられる(米国特許3558567号など)。しかし、特にオリゴマーの除去が困難であることから、実生産に適用された例はほとんどなく、またその程度は十分とは言えない。
【0007】
他のアプローチとしては、熱水抽出工程に要する時間を短縮するため未反応モノマー、およびオリゴマーを低減する手段がある。すなわち、熱水抽出工程の省略もしくは時間短縮のためには、重合後の未反応カプロラクタムおよびオリゴマーを減少させる考え方である。このような未反応カプロラクタムおよびオリゴマーを低減する方法としてはこれまで数例が提案されている。
【0008】
例えば、特開昭59−164327号公報にはカプロラクタムのプレポリマーを重合した後、加圧下でさらに重合し、オリゴマーやゲルを低減する方法が提案されている。
【0009】
この方法では、カプロラクタムを220〜280℃でプレポリマー化した後、加圧下240〜290℃でさらに重合することにより、オリゴマーやゲル含有量の少ないポリアミドポリマーを得る方法が開示されている。しかしこの方法は、ゲル低減には有効であるが、プレポリマー化工程の熱履歴が大きいためにこの工程でのオリゴマー削減効果が不十分である。
【0010】
さらに特公昭50−26594号公報には、重合温度を低くしてオリゴマー量を低減する方法が提案されている。
【0011】
この方法では、含水量0.5重量%以下のカプロラクタムを生成するポリアミドの融点以上融点+20℃以下の温度範囲で重合することにより環状オリゴマー含有量の少ないポリアミド樹脂を製造する方法を教示する。しかし、実施例を見てみると環状オリゴマー含有量が0.9重量%のポリアミドが得られたことが示されているものの、その時の未反応カプロラクタム量は15%以上であり、未反応物の低減は不十分である。すなわち、ポリアミドの収率が低く、生産性が低いという問題がある。
【0012】
本発明者らは先に特開平11−343341号公報において、ジカルボン酸とジアミンの存在下、生成するポリアミドの融点以下で重合することによりオリゴマー量の少ないポリアミド樹脂を製造し、得られたポリアミド樹脂を減圧加熱することでカプロラクタム、オリゴマーを除去する方法を提案しているが、更に未反応物、オリゴマー量が少なく、且つ生産性の高い重合方法の開発が求められていた。
【0013】
以上のように、カプロラクタムを主原料とするポリアミド樹脂の製造方法において、カプロラクタム含有量とオリゴマー含有量がともに低い、高品質のポリアミド樹脂を低コストで製造できる方法はこれまで知られていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解決し、熱水抽出工程の省略もしくは時間短縮を達成するための、未反応カプロラクタム含有量およびオリゴマー含有量がともに低いポリアミド樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の含水率を有するカプロラクタム水溶液を特定の添加剤存在下で加圧下・特定の温度で短時間加熱処理することにより、アミノ基量が多く、環状オリゴマー含有量が少ないポリアミドプレポリマーを製造し、該プレポリマーを生成するポリアミドの融点以下の温度条件下で重合することにより、カプロラクタム含有量およびオリゴマー含有量がともに低いポリアミド樹脂が製造可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明の目的は、
【0021】
(1) カプラミド単位を主たる構成成分とするポリアミドの製造方法であって、含水率2〜30重量%のカプロラクタム水溶液と該カプロラクタムに対して0.05〜5mol%のジカルボン酸、ジアミンおよびこれらの塩の内から選ばれる少なくとも1種の成分を混合し、該混合物を加圧下に200〜330℃の温度で1〜30分間加熱する工程を通じて得た、アミノ基量0.1mmol/1g以上、且つ環状オリゴマー含有量が0.6重量%以下であるポリアミドプレポリマーを常圧重合装置に供給し、重合温度の最高値を得られるポリアミドの融点+10℃以下の温度条件下にて重合することを特徴とする、カプロラクタム含有量が15重量%以下、オリゴマー含有量が1.8重量%以下のポリアミドの製造方法。
【0022】
(2) 重合温度の最高値を、得られるポリアミドの融点以下である温度条件下で重合することを特徴とする(1)のポリアミドの製造方法。
【0023】
(3) 常圧重合装置に供給される際のポリアミドプレポリマーの含水率が4重量%以下である(1)または(2)に記載のポリアミドの製造方法。
【0024】
(4) ポリアミドプレポリマーの常圧重合装置供給前に該プレポリマーを常圧重合装置上部でフラッシュさせて水分を蒸散除去する(1)〜(3)いずれか記載のポリアミドの製造方法。
【0025】
(5) 常圧重合装置が連続式常圧重合装置である(1)〜(4)いずれか記載のポリアミドの製造方法。
【0026】
により達成できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
【0028】
本発明にいうポリアミドプレポリマーとは、ポリアミドの原料として下記の工程を通じて得られる組成物であり、主にポリアミド鎖状オリゴマー(アミノカプロン酸を含む)、環状オリゴマー、未反応原料からなる混合物を言う。
【0029】
本発明のポリアミドプレポリマーの製造方法またはポリアミドの製造方法に用いるポリアミドの原料には主にカプロラクタムを用いる。本発明の目的を阻害しない範囲で、1種または2種以上の他のラクタムをポリアミドの原料全体の20mol%を超えない範囲で併用してもかまわない。20mol%を超えると得られるポリアミドポリマーの結晶性が低下しすぎ実用面で制限を受ける場合がある。
【0030】
他のラクタムの具体例としては、バレロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカラクタム、ラウロラクタムなどを挙げることができ、これらのうち、ウンデカラクタム、ラウロラクタムは結晶性の制御に有効なので好ましく用いられる。
【0031】
本発明のポリアミドプレポリマーの製造方法においてはカプロラクタム水溶液を調製する。この時の含水率は仕込み原料の総量に対し2〜30重量%の範囲であり、好ましくは3〜30重量%の範囲であり、さらに好ましくは4〜27重量%、特に好ましくは5〜25重量%である。含水量が2〜30重量%の範囲を外れると、必要なアミノ基量を得るまでにポリアミドプレポリマー中のオリゴマー量が多くなり、本発明の目的を達することができない。
【0032】
本発明においては、含水率2〜30重量%のカプロラクタムと共に該カプロラクタムに対し、0.05〜5モル%のジカルボン酸、ジアミンおよびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の成分を該カプロラクタム水溶液に混合して用いる。中では、ジカルボン酸またはジアミンを用いることが好ましい。
【0033】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、セバシン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、これらの内特にアジピン酸、テレフタル酸が好適に用いられる。
【0034】
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどが挙げられ、これらの内で特に1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、キシリレンジアミンが好ましく使用される。
【0035】
ジカルボン酸とジアミンの塩としては、前記ジカルボン酸と前記ジアミンの塩が挙げられ、中でもアジピン酸と1,6−ジアミノヘキサンの塩、テレフタル酸と1,6−ジアミノヘキサンの塩が好ましく用いられる。
【0036】
作用については、必ずしも明らかではないが、このジカルボン酸、ジアミンおよびこれらの塩の内から選ばれる少なくとも1種の成分は反応促進効果を有し、混合することにより、結果としてポリアミドプレポリマー中の環状オリゴマー含有量の低減、重合時間の短縮、ひいてはポリアミド中のオリゴマー含有量を低減することができるものと思われる。該成分を混合する割合はカプロラクタムに対して、0.07〜4mol%以下が好ましく、更に好ましくは0.1〜3mol%である。該成分の混合割合が5mol%を超えると得られる重合度の低下やポリアミドポリマーの融点・結晶性の低下、成形性・成形品物性の低下等の問題が発現し、0.05mol%未満ではポリアミドプレポリマーおよびポリアミド中の環状オリゴマー低減効果がない。
【0037】
本発明のポリアミドプレポリマーの製造方法は、加圧下で200〜330℃で1〜30分間加熱処理を行うことが必要である。
【0038】
圧力については加圧下であれば特に制限はないが、0.111〜6.08MPa(1.1〜60atm、1.14〜62.00kg/cm2)の範囲が好ましく、0.152〜5.065MPa(1.5〜50atm、1.55〜51.67kg/cm2)がより好ましい。0.111MPa未満の圧力下ではプレポリマー化時のアミノ基生成効率が低下するために、必要なアミノ基量を得るまでにポリアミドプレポリマー中のオリゴマー量が多くなってしまい、一方、5.065MPaを超える場合は、それに見合う効果の増分は小さくむしろハンドリングや装置への負担が大きく生産性や経済性の点で不利である。
【0039】
本発明のポリアミドプレポリマーを調製する際の処理温度は200〜330℃の範囲である。好ましくは205〜325℃、特に好ましくは210〜320℃である。200℃未満では必要なアミノ基量を得た時点での環状オリゴマー含有量が多く、330℃を超えると反応物中アミノ基量の制御が困難で工業的な安定性に欠ける。
【0040】
本発明のポリアミドプレポリマーを調製する際の加熱時間は1〜30分間である。上限として好ましくは25分以下、特に好ましくは20分以下である。30分を超えると反応物中の環状オリゴマー含有量が多くなるためであり、1分未満ではアミノ基含有量が変動し、重合工程でのポリアミドの重合度の制御が困難となる。
【0041】
本発明のポリアミドプレポリマー中のアミノ基量は0.1mmol/1g以上である。さらに、好ましくは0.15mmol/1g反応物以上、特に好ましくは0.2mmol/1g以上である。0.1mmol/1g未満では得られたポリアミドプレポリマーからポリアミドを製造する際にポリアミド中のオリゴマー含有量が増加し、本発明の目的は達せられない。該アミノ基量に上限はないが、生産性を考慮し、通常1.0mmol/g以下として採用される。
【0042】
本発明のポリアミドプレポリマー中の環状オリゴマー含有量は0.6重量%以下である。好ましくは0.4重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。0.6重量%を超えると得られたポリアミドプレポリマーからポリアミドポリマーを製造する際にポリアミドポリマー中のオリゴマー含有量が増加するからである。この環状オリゴマー含有量の下限に特に制限はないが、通常0.01重量%である。
【0043】
本発明のポリアミドは、20時間以内の溶融重合で生成した時点で、未反応カプロラクタム含有量15wt%以下、オリゴマー含有量1.8重量%以下、環状2〜4量体含有量の合計0.9重量%以下の特性を具備していることが必要であり、この要件を満たすことによって高品質のポリアミドを高い生産性を持って製造することが可能になるのである。
【0044】
本発明のポリアミドの製造方法では、重合開始時に、ポリアミドプレポリマーに対してさらにカプロラクタムを追添加して重合することができる。カプロラクタムの追添加量は、ポリアミドプレポリマーと追添加カプロラクタムからなる原料組成物中のアミノ基量が0.1mmol/1g以上となる範囲であれば、特に制限はない。
【0045】
本発明のポリアミドの製造方法では、上記反応で得られた反応物を常圧の重合装置に供給して重合反応が行われるが、この際用いる重合装置には特に制限はなく、一般的にカプロラクタムの重合に用いられる装置を用いることができる。具体的には連続式常圧重合装置、回分式重合装置などの液相重合装置が挙げられる。中でも生産性の面から連続式常圧重合装置が好ましい。
【0046】
本発明のポリアミドの製造方法においては、重合温度の最高値は得られるポリアミドの融点+10℃以下となる温度条件下で重合する。この重合中最高到達温度が得られるポリアミドの融点+10℃を超えるとオリゴマー含有量が増加し、重合温度が低すぎると重合に要する時間が長くなり、生産効率が低下する。そのため重合温度は160〜232℃の範囲で実施することが好ましく、170〜222℃の範囲がより好ましく、180〜220℃の範囲が特に好ましい。なお、融点は、得られるポリアミドからカプロラクタム、オリゴマー等を熱水抽出により除去し、その後ポリアミドを溶融した後急冷したサンプルを用いて示差走査型熱量計(DSC)で昇温速度20℃/分で測定した結晶融解に基づく吸熱ピークのピークトップ温度として定義される。
【0047】
上記の条件を満たせば重合温度プロファイルは常法に従って任意に設定できる。
本発明のポリアミドの製造方法では、重合時間は20時間以内であり、18時間以内が好ましく、16時間以内がさらに好ましい。20時間を超えると生産効率の点で実用価値が低下する。
【0048】
本発明のポリアミドの製造方法では、最終的に得られるポリアミド中のカプロラクタム含有量は15重量%以下であり。好ましくは13重量%以下であり、さらに好ましくは11重量%以下である。15重量%を超えると熱水抽出工程に要する時間とエネルギーが増加する。カプロラクタム含有量の下限に制限はないが、通常約3重量%程度である。
【0049】
本発明のポリアミドの製造方法では、最終的に得られるポリアミド中のオリゴマー含有量は1.8重量%以下である。好ましくは1.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.3重量%以下である。1.8重量%を越えると熱水抽出工程に要する時間が増加し、カプロラクタム、オリゴマー揮発除去後のオリゴマー含有量が増加する。オリゴマー含有量の下限に制限はないが、通常約0.6重量%程度である。
【0050】
本発明のポリアミドにおいては、最終的に得られるポリアミド中の環状2〜4量体含有量の合計は0.9重量%以下である。好ましくは0.85重量%以下であり、さらに好ましくは0.8重量%以下である。0.9重量%を越えると熱水抽出工程に要する時間が増加し、カプロラクタム、オリゴマー揮発除去後のオリゴマー含有量が増加する。環状2〜4量体含有量の合計の下限に制限はないが、通常約0.2重量%程度である。
【0051】
本発明のポリアミドの製造方法では、常圧重合装置に供給される際の含水率に制限はないが、4重量%以下が好ましく、特に2.5重量%以下が好ましい。4重量%を超えるとポリアミドを製造する際の加熱に多くの熱量が必要となり、生産性が低下し、またポリアミド中のオリゴマー含有量が増加する傾向があるためである。
【0052】
本発明のポリアミドポリマーの製造方法では、加圧下熱処理によって得られたポリアミドプレポリマーを常圧重合装置に供給する際に、加圧下熱処理後の反応物を常圧重合装置上部にフラッシュさせて水分を蒸散除去させることが好ましく採用される。水分を蒸散除去させることにより、ポリアミドを製造する際の加熱に要する熱量を低減し、且つ重合温度の制御を容易にすることができる。
【0053】
本発明のポリアミドポリマーの製造方法ではさらに、得られたポリアミドからカプロラクタム、オリゴマーを、熱水抽出によって除去しても良く、減圧下で加熱することにより揮発除去しても良く、減圧下で加熱して、カプロラクタム、オリゴマーを除去した後、さらに熱水抽出を行っても良い。
【0054】
カプロラクタム、オリゴマーの減圧下加熱による揮発除去は、重合反応生成物をペレットなどの固体としたのち、固相で行ってもよく、溶融状態で行っても良い。溶融状態での揮発除去は、重合反応生成物をペレットなどの固体とした後、押出機・薄膜蒸発機などで溶融・減圧下加熱を行ってもよく、重合塔より吐出される溶融状態の重合反応生成物を、直接押出機・薄膜蒸発機などに供給しても良い。
【0055】
また、カプロラクタム、オリゴマーの減圧下加熱による揮発除去においてポリアミドの重合度を用途に応じた好適な値に調製することができる。
【0056】
本発明のポリアミドの製造方法で得られるポリアミドは、押出成形などポリアミドが高粘度であることを要求される用途に対しては、好適な粘度が得られるように、ポリアミドの融点未満の温度かつ減圧下で加熱処理する固相減圧処理によって所望の重合度に調整することが好ましい。
【0057】
本発明のポリアミドの製造方法で得られるポリアミドの重合度は、サンプル濃度0.01g/mLの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度として、2.2〜8.0であることが好ましい。さらに、好ましくは2.2〜7.0、特に好ましくは2.2〜6.5、最も好ましくは2.2〜6.0である。相対粘度が2.2未満では機械物性の発現が不十分であり、8.0を越えると溶融粘度が高すぎて成形が困難となる。
【0058】
本発明のポリアミドの製造方法では、必要に応じてカルボン酸化合物で末端を封鎖することができる。モノカルボン酸を添加して末端封鎖する場合には、得られたポリアミド樹脂の末端基濃度が末端封鎖剤を使用しない場合に比べて低下する。一方、ジカルボン酸で末端封鎖した場合には全末端基量は変化しないが、アミノ末端基とカルボキシル末端基との比率を変えることができる。カルボン酸化合物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸のような脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸のような脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸のような芳香族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0059】
また、末端封鎖剤の添加方法としては、モノカルボン酸の場合にはポリアミドプレポリマーの加熱処理初期にカプロラクタム等の原料と同時に仕込む方法、加熱処理途中で添加する方法、加熱処理後、常圧重合装置投入前に添加する方法、ポリアミド樹脂を溶融状態で未反応カプロラクタムおよびオリゴマーを除去する際に添加する方法などが採用され得、末端封鎖剤としてジカルボン酸を用いる場合には、常圧重合装置投入前に添加する方法、ポリアミド樹脂を溶融状態で未反応カプロラクタムおよびオリゴマーを除去する際に添加する方法などが採用される。末端封鎖剤はそのまま添加しても良いし、少量の溶剤に溶解して添加してもかまわない。
【0060】
本発明の製造方法においては、用途に応じて例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、充填剤(グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、繊維状、針状、板状充填材)、他の重合体(他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)を任意の時点で添加することができる。
【0061】
本発明の製造方法によって得られたポリアミドは、従来のポリアミドと同様に、通常の成形方法によって成形品とすることができる。成形方法に関しては特に制限はなく、射出成形、押出成形、吹込成形、プレス成形などの公知の成形方法が利用できる。ここでいう成形品とは射出成形等による狭義の成形品の他、繊維、フィルム、シート、チューブ、モノフィラメント等の賦形物をも含む。
【0062】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、実施例および比較例に記した分析および測定は次の方法に従って行った。
【0063】
(1)ポリアミドプレポリマー中のアミノ基量
被測定物約0.2gを精秤し、フェノール・エタノール混合溶媒(83.5:16.5、体積比)25ccに溶解後、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定した。
【0064】
(2)ポリアミドプレポリマー中の環状オリゴマー含有量
被測定物を粉砕し、JIS標準ふるい24mesh通過を通過し、124meshは不通過である被測定物の粉末を集め、該粉末約20gをメタノール200mlで3時間ソックスレイ抽出器を用いて抽出し、抽出液中に含まれる環状オリゴマーを高速液体クロマトグラフを用いて定量した。なお、以下の実施例においては7量体以上の環状オリゴマーは検出されなかった。測定条件は下記のとおりである。
高速液体クロマトグラフ:ウォーターズ社600E
カラム :GLサイエンス社 ODS−3
検出器 :ウォーターズ社484Tunable Absorbance Detector
検出波長 :254nm
インジェクション体積 :10μl
溶媒 :メタノール/水
(メタノール/水の組成は、20:80→80:20のグラディエント分析とした。)
流速 :1ml/min。
【0065】
(3)ポリアミドプレポリマーの含水量
平沼微量水分量測定装置AQ−6を用いて測定した。
【0066】
(4)ポリアミド中のカプロラクタム含有量
ポリアミドを粉砕し、JIS標準ふるい24meshを通過し、124meshは不通過のポリアミド粉末を集め、該粉末約20gをメタノール200mlで3時間ソックスレイ抽出し、抽出液中に含まれるカプロラクタムを高速液体クロマトグラフを用いて定量した。測定条件は下記のとおりである。
高速液体クロマトグラフ:ウォーターズ社600E
カラム :GLサイエンス社 ODS−3
検出器 :ウォーターズ社484Tunable Absorbance Detector
検出波長 :254nm
インジェクション体積 :10μl
溶媒 :メタノール/水(20:80(体積比))
流速 :1ml/min。
【0067】
(5)ポリアミド中のオリゴマー含有量
重合反応生成物を粉砕し、JIS標準ふるい24meshは通過し、124mesh不通過のポリアミド粉末を集め、該粉末約20gをメタノール200mlで3時間ソックスレイ抽出し、抽出液中に含まれるカプロラクタムを前記の方法で定量した後、エバポレーターで蒸発乾固し、更に80℃/8時間真空乾燥した後に得られる残渣量を求め、前記(4)項で求めたカプロラクタム量を差し引いてオリゴマー含有量とした。
【0068】
(6)硫酸相対粘度(ηr)
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。
【0069】
(7)ポリアミド中の環状2〜4量体含有量
ポリアミドを粉砕し、JIS標準ふるい24meshを通過し、124meshは不通過のポリアミド粉末を集め、該粉末約20gをメタノール200mlで3時間ソックスレイ抽出し、抽出液中に含まれる環状2〜4量体含有量を高速液体クロマトグラフを用いて定量した。測定条件は下記のとおりである。
高速液体クロマトグラフ:ウォーターズ社600E
カラム :GLサイエンス社 ODS−3
検出器 :ウォーターズ社484Tunable Absorbance Detector
検出波長 :254nm
インジェクション体積 :10μl
溶媒 :メタノール/水(20:80(体積比))
流速 :1ml/min。
【0070】
A.使用原料
下記の実施例および比較例では以下の原料を使用した。
【0071】
カプロラクタムは東京化成工業株式会社の特級品を溶融し、モレキュラーシーブで乾燥したものを使用した。
【0072】
1,6−ジアミノヘキサン、テレフタル酸、アジピン酸は東京化成工業株式会社の特級品をそのまま使用した。
【0073】
実施例、比較例中で使用した1,6−ジアミノヘキサン・アジピン酸塩、1,6−ジアミノヘキサン・テレフタル酸塩は上記のジアミン、ジカルボン酸を等モル量、熱水に溶解した後に冷却、析出した結晶を濾過、80℃/8時間真空乾燥したものを用いた。
【0074】
B.加熱処理および常圧連続重合
実験に用いた装置の概略図を図1に示し、図を用いて説明する。
【0075】
所定組成のカプロラクタム水溶液を原料貯槽1に投入し、ついで原料供給ポンプ2を用い、加圧加熱処理槽4に供給し、所定の条件下で連続的に加熱処理を行った。次いで得られたポリアミドプレポリマーを常圧連続重合塔7に供給、所定条件で重合を行い、重合反応生成物を得た。
【0076】
加圧加熱処理時の圧力は、流路途中のバルブ5の開度によって制御した。
【0077】
プレポリマーの分析に際しては、常圧連続重合塔7への供給前にポリアミドプレポリマー採取口6から、試料を採取し各種分析に供した。
【0078】
C.未反応カプロラクタム・オリゴマーの溶融揮発除去
日本製鋼所社製30mmφベント付2軸押出機を用いた。条件は以下の通りである。
・L/D=45.5、同方向回転、深溝タイプ、
・バレル温度:原料供給側からの温度が
160/240/250/260/260/260/260/250/250℃
・第2、4、6ゾーンから133Pa(1Torr)で減圧脱気
・回転数200rpm。
【0079】
D.未反応カプロラクタム・オリゴマーの固相揮発除去
3L回転型減圧固相重合装置を用い、133Pa(1Torr)、150℃にて6時間揮発除去を行った。
【0080】
E.未反応カプロラクタム・オリゴマーの熱水抽出除去
重合反応生成物中の未反応カプロラクタム量が0.05重量%以下、オリゴマー量が1.0重量%以下にまで低減するために必要な抽出時間を測定した。抽出にはポリアミド樹脂の円筒状ペレット(直径約2mm、長さ約3mm)を用いた。抽出条件は以下の通り。
抽出溶媒:水
抽出浴比:ポリアミド/水=1/20
抽出温度:98℃。
【0081】
実施例1〜6、比較例1〜2
表1、2に示す条件で加熱処理、常圧連続重合を行った。
【0082】
実施例1〜5と比較例1〜4との比較でわかるように、本発明の製造方法で得られたポリアミドポリマーは、未反応カプロラクタム量、オリゴマー量ともに少なく、特にオリゴマー量は大幅に減少することがわかった。
【0083】
実施例7、8、比較例3
前記実施例1、4あるいは比較例1で得たポリアミドからカプロラクタム、オリゴマーを溶融揮発除去を実施した。結果を表3に示す。その結果、本発明の方法によれば、未反応カプロラクタム含有量が0.05重量%以下、オリゴマー含有量が0.98重量%以下という、カプロラクタム、オリゴマーの含有量が少ないポリアミドが得られることがわかった。
【0084】
実施例9、10、比較例4
前記実施例3、4あるいは比較例1で得たポリアミドからカプロラクタム、オリゴマーを固相揮発除去を実施した。結果を表4に示す。その結果、未反応カプロラクタム含有量が0.07重量%以下、オリゴマー含有量が1.15重量%以下という、カプロラクタム、オリゴマーの含有量が少ないポリアミドが得られることがわかった。
【0085】
実施例11、12、比較例5
前記実施例1、4あるいは比較例2で得たポリアミドからカプロラクタム、オリゴマーを熱水抽出除去を実施した。結果を表5に示す。
【0086】
要抽出時間の対比より、本発明の製造方法により得られたポリアミドは必要な抽出時間が短時間で済むことがわかった。
【0087】
また、実施例6〜11のポリアミドを射出成形し、ハンドリング性を確認したところ、従来法によるものと遜色の無いものであった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製造方法を用いることにより、未反応カプロラクタムおよびオリゴマーが低減されたポリアミドを得ることができる。それにより、熱水抽出工程の省略もしくは時間短縮が可能となり、高生産効率かつ低エネルギーコストでポリアミド樹脂を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で用いた重合反応装置の概略図である。
【符号の説明】
1:原料貯槽
2:原料供給ポンプ
3:圧力計
4:加圧加熱処理槽
5:調圧バルブ
6:ポリアミドプレポリマー採取口
7:常圧連続重合塔
Claims (5)
- カプラミド単位を主たる構成成分とするポリアミドの製造方法であって、含水率2〜30重量%のカプロラクタム水溶液と該カプロラクタムに対して0.05〜5mol%のジカルボン酸、ジアミンおよびこれらの塩の内から選ばれる少なくとも1種の成分を混合し、該混合物を加圧下に200〜330℃の温度で1〜30分間加熱する工程を通じて得た、アミノ基量0.1mmol/1g以上、且つ環状オリゴマー含有量が0.6重量%以下であるポリアミドプレポリマーを常圧重合装置に供給し、重合温度の最高値を得られるポリアミドの融点+10℃以下の温度条件下にて重合することを特徴とする、カプロラクタム含有量が15重量%以下、オリゴマー含有量が1.8重量%以下のポリアミドの製造方法。
- 重合温度の最高値を、得られるポリアミドの融点以下である温度条件下で重合することを特徴とする請求項1記載のポリアミドの製造方法。
- 常圧重合装置に供給される際のポリアミドプレポリマーの含水率が4重量%以下である請求項1または2に記載のポリアミドの製造方法。
- ポリアミドプレポリマーの常圧重合装置供給前に該プレポリマーを常圧重合装置上部でフラッシュさせて水分を蒸散除去する請求項1〜3いずれか記載のポリアミドの製造方法。
- 常圧重合装置が連続式常圧重合装置である請求項1〜4いずれか記載のポリアミドの製造方法。
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