JP4256483B2 - 静電チャック、集積回路デバイスを製造するための装置、及び静電チャックの製造方法 - Google Patents
静電チャック、集積回路デバイスを製造するための装置、及び静電チャックの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集積回路の製造に関する。より詳細には、本発明は、改良型誘電塗膜を有する静電チャックと、改良型誘電塗膜を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電チャックは、高密度プラズマ反応のような製造プロセス中に半導体ウェーハを把持するために、半導体工業の分野では広く使われるようになった装置である。静電チャックは、それぞれ正と負に荷電された二表面間の静電力を使用して、ウェーハをチャックに確実に固定する。静電チャックの製造は通常、アルミニウム、または陽極酸化アルミニウムのようなプロセスに適合した金属を機械加工して適切な支持ペデスタルとし、そのペデスタル上面をグリットブラストして行う。一般的に、その後、セラミックのような誘電体材料層が、ペデスタルの上面に形成されて、ウェーハを支持するためにスムーズで平坦な上面となるように研磨される。処理中に、ウェーハと金属ペデスタルの間に電圧がかけられて、誘電体層の両側に互いに逆の極性をもつ電荷を発生させる。この互いに逆の極性をもつ電荷は実質的に均一なクーロン吸引力をその間隙に発生し、ウェーハを誘電体層に固定する。
【0003】
静電チャックの製造における一つの重要な検討要件は、誘電率と絶縁耐力のような誘電体材料層の電気的特性値である。例えば、ウェーハをチャック上の所定の位置に保持する力である静電チャックのクランプ力は、一般的には、(ある特定の誘電体層厚に対して)チャックへ印加される電圧の二乗に比例して増加する。一般的なプロセスにおいては、比較的に高い電圧が静電チャック全体にわたって印加されて、処理中に半導体ウェーハをチャック保持する。この高い保持電圧が一般的に必要とされる理由は、冷却ガスが半導体とウェーハの間に供給されて、ウェーハの温度を低下させるからである。この冷却ガスは、ウェーハ裏側に衝突してウェーハをチャックから引き離す。誘電体層の絶縁耐力を増加させることは、誘電体層がより高い印加電圧に耐える能力を増加させて、層を横切る絶縁破壊と、それに続く静電チャックの機能停止を引き起こすことがない。
【0004】
静電チャックの製造におけるもう一つの重要な検討要件は、誘電体層の多孔度である。多孔質誘電体層は、処理中、プラズマからの衝撃に対して抵抗がより少なく、それ故に、比較的早期に摩耗をきたしてウェーハ製造プロセスのダウンタイムを増加させ、スループットを減少させる可能性がある。多孔度は、誘電体層の電気的特性値、すなわち、層の電気的安定性や絶縁耐力に悪影響を及ぼす。さらに、多孔質誘電体層は、チャンバからの水蒸気、および/または、ガスを誘電体層の開孔へ吸収する傾向がある。これらの孔内に蓄積される水蒸気やガスは、誘電体層の電気的特性値を低下させて、ウェーハ製造プロセスに影響を与える可能性がある。
【0005】
誘電体層は普通、酸化アルミニウムのようなセラミック粉末を、金属ペデスタル上面にプラズマスプレーすることにより形成される。プラズマスプレー・プロセスにおいては、一対の互いに離隔された電極の間に電気アークを発生させて、ガスを電極の一つに接触させそのガスが電気アークを含むようにする。塗膜を生成するために使用される粉末は、アーク内蔵ガスと混合され、その混合物は、ノズル内の狭い所を通され、ペデスタルに堆積させられて誘電体層を形成する。プラズマスプレー・プロセスが十分な誘電体層を生成するとはいえ、これらの誘電体層の電気的、物理的特性値を改善して、それにより、静電チャックの性能をさらに改善し、寿命を延ばすことが望ましい。
【0006】
さらには、静電チャックの製造中に生ずる歩留り(例えば、チャックの合計生産数量に対する使用可能な静電チャック数量との比)を改善することも望まれる。プラズマスプレー・プロセスにより生成されるチャックの収率を減らす一つの要因は、処理中の金属不純物である。金属粒子は、時々、プラズマスプレー中に電極から除去されて、誘電体層を形成する粉末へ混合される。誘電体層表面上の金属粒子は、処理中に半導体ウェーハを損傷する可能性がある。さらには、金属粒子は、誘電体層を通ってアークを生成する導電路を提供するかもしれない。これらの理由から、誘電体層内に臨界量の金属不純物を有する静電チャックは、使用不可能と見なされるのが普通であり、このことは、全体的収率を減らし、静電チャックの製造コストを上げる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、改善された電気的特性値とプラズマ及び化学腐食に対して高い抵抗力を備えた誘電体層のような電気的絶縁層を有する静電チャックを提供する。本発明は、電気的絶縁層の製造方法と、その層をペデスタルに形成して静電チャックの一部分を形成する方法も提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電チャックは、導電性ペデスタルと、ペデスタルの上面へ形成される電気的絶縁層ないしは誘電体層を有する。電気的絶縁層は、通常は酸化アルミニュウムのようなセラミック材料で形成される誘電体層である。電気的絶縁層はその総体積の少なくとも4%以下の多孔度を有する。通常は、絶縁層の多孔度はその総体積の2%以下で、好ましいのは1%以下である。この低多孔度は、プラズマ衝撃と化学腐食に対する層の抵抗力を強化して、絶縁耐力及び層の誘電率のような、層の電気的特性値を改善する。更に、低多孔度は、誘電体層への水蒸気と他のガスの吸着を低減し、チャックの電気的特性値を一層強化する。
【0009】
本発明の誘電体層は、多く既存の誘電体層に対して上で静電チャックに関する電気的特性値が改良されている。通常、誘電体層は、実質的に十分な乾燥状態で300V/mil以上、は400V/mil以上の耐力を有することが好ましい。この高耐力は処理中における誘電体層を横切るアーク破壊と、それに続く静電チャックの機能停止を最少にし、それによりオペレータがより大きな保持力をウェーハに印加できるようにする。本発明の誘電体層は、比較的短い乾燥時間の後、約8.5〜11の安定した誘電率も有し、静電チャックのダウンタイムを減少させる。更に誘電体層の上面は、適切な研磨後に、約1〜2Raの表面粗度を有する。円滑な上面は、誘電体層の表面に接して、あるいはその近傍に設置される半導体ウェーハの裏側上への微粒子汚染を減少させる。
【0010】
本発明のもう一つの利点は、誘電体層の不純物含有率がきわめて低いということである。通常、誘電体層は、400ppm以下の不純物を有するが、200ppm以下が好ましい。不純物、特に金属不純物は電圧が誘電体層を通ってアークすることを可能にする導電路を提供するので、静電チャックの性能を低下させる。更に、金属不純物は、処理中に半導体ウェーハの裏側へ転移するかもしれず、これはウェーハを損傷あるいは破壊する。
【0011】
本発明の誘電体層は、デトネーションガンプロセスにより形成され導電性ペデスタルへ適用される。このプロセスは、粉末状であるのが好ましい塗膜材料を従来型の、あるいは特別のデトネーションガンで、燃料ガス混合物と結合させることを含む。酸化アセチレンのような燃料ガス混合物は点火されてデトネーション波を発生させ、ガンの筒に沿って伝達され、そこで塗膜材料を加熱して、塗膜材料をガンからほぼ平坦なペデスタル表面上へ送り込む。本発明の方法によれば、デトネーションガンへ供給される粉末は、実質的に少量(400ppm未満台)の不純物を含む比較的純粋な酸化アルミニウムの形をしている。デトネーションガンプロセスにおいて、従来技術のプラズマ塗膜プロセスとは異なり、金属粒子はガンの筒から除去されず、ペデスタルへ堆積されるのが普通である。事実、結果としてできた誘電体層内の不純物含有率は酸化アルミニウム粉末内の不純物含有率より実質的には少ない。このことが、収率を上げ、静電チャックの製造コストを下げる。本発明のもう一つの実施例では、デトネーションガンへ供給される粉末は、重量比98%の酸化アルミニウムと重量比約2%のチタニア(即ち酸化チタン)である。酸化アルミニウムにチタンをドープすることにより、静電チャックの電気的特性値を最適化し、改良できるということが分っている。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、ペデスタルアセンブリ14と電気回路22を含む静電チャック4を組み込んだ代表的なウェーハ処理装置2を示す。静電チャック4は、本装置2の高密度プラズマ反応チャンバ8内部で、ペデスタルアセンブリ14上に半導体ウェーハWを支持し、静電気的に保持する。図3に示すように、ペデスタルアセンブリ14は、一般的に金属支持体40の上面に形成された誘電体層6を有する 。
【0013】
ウェーハ処理装置2は、チャンバ用の電気、配管及び他の支援機能を提供するメインフレームユニット(図示せず)に取り付けられる。装置2は、通常、ボルトなどでメインフレームに取り外しできるように取り付けられ、その結果プラズマ反応チャンバ8は、保守あるいは修理用に取り外したり、別のチャンバと交換することができる。図示実施形態のウェーハ処理装置2に適用可能なメインフレームユニットは、現在、米国のアプライドマテリアルズインコーポレイテッドからPrecision 5000(商標)とCentura 5200(商品)システムとして入手可能である。しかしながら、本発明を、マルチチャンバ処理システムにおけるプラズマ反応チャンバの部分として図示し、説明するが、この方法に限定しようとするものではないことは理解されるべきである。つまり、本発明は、堆積、またはエッチングチャンバ、バッチチャンバ等、多様な処理チャンバにおいて使用できる。
【0014】
ウェーハ処理装置2は、プラズマ反応チャンバ8とペデスタルアセンブリ14を収容するエンクロージャアセンブリ12を含む。エンクロージャアセンブリ12は、ペデスタルアセンブリ14の周りで支持されるカバー・リング20、即ち、“ホットプレスキット”を含む。カバー・リング20は、ウェーハW上のチャンバ8内にあるプラズマが、静電チャック74の部分に接触して、それにより、腐食することを防止するか或は最少化するように作用する誘電体材料を有する。よって、カバー・リング20は、ウェーハWとチャック4の端から約0.005〜0.02インチ(0.127〜0.508mm)の範囲内に設置されるのが好ましいが、このギャップは、一般的には小さすぎて、プラズマが入り込めない。
【0015】
電気回路22は、DC電源(電圧源)24とRF電源(電力源)27を含む従来型の回路である。DC電源24は、ウェーハとペデスタルアセンブリ14との間に適切なクランプ電圧、例えば、約1000ボルトを加えるもので、ローパスフィルタ26(DC電源24をRF電源27から隔離するフィルタ)を介してペデスタルアセンブリ14に接続されている。RFソース電力とRFバイアス電力は、ソース電力が誘導アンテナ30と結合し、バイアス電力がペデスタルアセンブリと結合して、各々、インピーダンス整合回路網28を介しRF電源27から供給される。RFバイアス電力とDC電圧双方用の接地基準は、接地された上部電極32である。DC電源24は、クランプ電圧を提供し、電界を生成してウェーハWをペデスタルに静電気的に保持する。ウェーハWを離す(すなわち“デチャック”)必要がある場合は、電源24は、出力電圧ゼロか、もしくは、ウェーハの離脱を加速する必要がある場合は、逆極性電圧へ切り替えればよい。
【0016】
プラズマ反応チャンバは、誘導結合型RF電力を使用して高密度プラズマを発生させ、維持する。RFバイアス電力はペデスタルアセンブリに容量結合され、接地された対向電極32はバイアス電流用帰路を提供している。図示実施形態のプラズマ反応チャンバ8とウェーハWの処理におけるその操作に関するより詳細な説明は、Collins他による米国特許第5,350,479号明細書に開示されており、その内容を本明細書において援用する。
【0017】
図2と図3を参照すると、ペデスタルアセンブリ14は支持体40からなり、この支持体40は、その上面で冷却されるウェーハからの熱吸収を容易にするために比較的大きな熱容量と良好な熱伝導性を有する導電材料から、一体ブロックとして製造されるのが好ましい。アルミニウムで特に 6061-T6アルミニウムが支持体40用には好ましい材料である。なぜならば、それは、約2.37ワット/cm−℃という比較的高い熱伝導性を有し、一般的にウェーハWの処理に適していることによる。勿論、支持体40は、ステンレス銅やニッケルのような他の材料から作ってもよい。支持体40は、実質的に平坦な上面41と下面43、及び、支持体40外面から外方向に延びる環状の取付フランジ42を画成している。ペデスタルアセンブリ14にDC電源24(図1)により電圧が印加されると、ウェーハWを支持体40の上面41へ密接させて保持する静電吸引力が発生される。
【0018】
図1に示すように、ウェーハ支持体40は、冷却水で行われる直接流体冷却で冷却されるのが好ましい。なお、この冷却水は、当該支持体40の下面にある流入口34から入り、冷却路(図示せず)を通り、流出口38を通ってペデスタルアセンブリ14から流出する。冷却路は、良好な熱伝導性を有するよう支持体40の内部に機械加工され、約1/4インチ(9.35mm)の断面直径を有することが好ましい。運転においては、冷却流体は、ポンプ圧送により約5.6kg/cm2の最高圧力で流入口34を通って流入し、冷却路を循環して対流により支持体40から熱を除去する。冷却流体は、熱交換器(図示せず)からの約15℃〜25℃のグリコール/水が好ましい。
【0019】
再度、図2と3を参照すると、静電チャック4は、ウェーハWの下面を支持するための支持体40の上面41に接合された誘電体材料6からなる平滑な層を有する。この誘電体層6は、4個のリフトピン孔48の上にある区域を除いて、支持体40の全上面を均一に覆う。誘電体層6は、支持体40の上面41上に熱的にスプレーされて薄いセラミック層(通常、0.10〜0.30インチ台)を形成するセラミック粉末から作られるが好ましい。セラミック粉末は、アルミナ、酸化アルミニウム、アルミナ/二酸化チタン複合体、窒化アルミニウム等からなるものが考えられる。本発明の一実施形態では、粉末は、実質的に重量比で約99.5%が酸化アルミニウムである。酸化アルミニウム粒子は、通常は粒子サイズが小さく、例えば、酸化アルミニウムの粒子のうち99%は150ミクロン(最大横方向長さ)以下であって、粒子の5%以下は13ミクロン以下である。この粒子が小型サイズであることは、以下で述べるデトネーションガン(detonation gun)プロセス中の加熱均一性を高める。
【0020】
酸化アルミニウム粉末は、不純物のレベルが低く、通常は800ppm以下、好ましくは、400ppm以下の総不純物を含む。誘電体層6はさらに、不純物のレベルは低くて、通常は300ppm以下、好ましくは120ppm以下の総不純物を層内に含む。この明細書においては、不純物は、酸化アルミニウム、または酸化チタン以外の異物として定義する。表1は、酸化アルミニウム粉末と、結果として生じる誘電体層6内部の異物の好ましい不純レベルを示す。特に、アルミニウム粉末は、タングステンや銅や鉄のような金属粒子を低レベルで含むことに注目すべきである。不純物、特に金属不純物は、静電チャックの性能を低下させる。なぜならば、それらは電圧が誘電体層を通ってアークすることを可能にする導電路を提供するからである。さらに、金属不純物は、処理中に半導体ウェーハの裏側へ転移する可能性があり、これが、ウェーハを損傷し、破壊する。
【0021】
【表1】
本発明の誘電体層6は、従来の静電チャック用誘電体層より多孔度が低い。通常、誘電体層6の見掛け上のミクロ構造的多孔度は、誘電体層6の総体積の4%以下である。多孔度が2%以下であることは好ましいし、1%以下であれば、より好ましい。層の塗膜密度は普通、約3.3〜3.8g/cm3である。この低多孔度と高密度はプラズマ衝撃と化学腐食に対する誘電体層の耐力を強化し、このことは、層の電気的特性値を強化する。さらに、誘電体層の低多孔度は、処理中の水蒸気と他のガスの誘電体層への吸着を減少させて、チャックの電気的特性値をさらに改善する。
【0022】
誘電体層6は、実質的な乾燥状態において、少なくとも、300V/milの絶縁耐力を有するが、少なくとも、400V/milが好ましい。これは、層6が、誘電体層を横切る絶縁破壊と、それに続く静電チャックの機能停止とを引き起こすことなく、比較的大きい印加電圧に耐えることを可能にする。さらに、層6の誘電率は、乾燥状態において約8.5〜10.5の間にあることが好ましい。普通は、ウェーハをチャック上の所定の位置に保持する静電チャックのチャッキング力ないしはクランプ力は次のように表すことができる。
【0023】
F ∝ kV2/t2
ここで、Fはチャッキング力、kは層6の誘電率、Vはチャックへの印加電圧、tは誘電体層6の厚さである。よって、層6の厚さを減少させると、印加電圧を上げなくてもチャックのクランプ力が増加する。
【0024】
本出願人は、本発明の誘電体層から実質的に水分を除去してこの誘電率を得るために必要な乾燥時間が、従来のプロセスによる時間よりきわめて短いことを見いだした。以下に、より詳細に考察するが、水分は、層6から約2時間以内に(従来のプロセスによれば約24時間)完全に除去できるのが普通である。さらに、誘電体層6は、高い結合力を有し、層6と支持体40の間の結合力を強化する。誘電体層6は、通常、5000psi以上の結合力を有するが、8000psi以上が好ましく、10000psi以上は、より好ましい。誘電体層6の抵抗率も、従前の設計値に対して改善される。誘電体層6の空間中の(Biddle Insulation Testerで測定される)1000ボルトでのDCインピーダンスは、通常、乾燥状態において、10ミル(0.254mm)に対して200メグオーム以上である。
【0025】
図4を参照して、誘電体層6の製造方法と層6をペデスタル14の支持体40へ形成方法をここで説明する。図4は、内部燃焼チャンバ103を画成するメインボデー102と、内部燃焼チャンバ103に連通する内部流路106を画成するガンバレル(銃身)104とを有する代表的なデトネーションガン100を概略的に示す。ガンバレル104は、粉末粒子110を静電チャック4の金属支持体40のような加工品112上へ放射するためのノズル(銃口)108を含む。ガン100は、さらに、粉末流入口114と、少なくとも一つの可燃ガスからなる燃料ガス混合物を噴射するための二つの燃料ガス流入口116、118を含む。スパークプラグ120は、燃料ガス混合物に点火するためにチャンバ103の中に延びている。
【0026】
本発明は、飽和炭化水素と不飽和炭化水素とのグループから選択される少なくとも二つの燃焼ガスを利用するのが好ましい。このグループは、アセチレン、プロピレン、メタン、エチレン、メチルアセチレン、プロパン、エタン、ブタジエン、ブチレン、ブタン、シクロプロパン、プロパジエン、シクロブタン、酸化エチレンを含むことができる。好ましい燃料混合物は、酸素とアセチレンとからなる。前述の構造、または同等の構造を有する多様なデトネーションガンを、本発明のプロセスで使用できる。例えば、本発明に適するデトネーションガンは、米国インディアナ州のPraxair S.T.,Inc.of Indianapolis製のD-gunとSuper D-gunの商標名で知られている。
【0027】
本発明での使用においては、酸素とアセチレンの混合が流入口116、118を通って燃焼チャンバ103へ供給され、酸化アルミニウム粉末110の一回分の投入量が窒素、または空気のようなキャリヤガスの媒介で流入口114を通ってチャンバ103へ供給される。燃焼ガスは、スパークプラグ120で点火されて、結果として生じるデトネーション波が、ガンバレル104の流路106を通って粉末110を加速し、粉末110をその融点を超える温度に加熱する。デトネーション波は普通、2800〜3300m/秒の速度に達し、粒子速度は普通、約700〜1000m/秒である。ガンバレル104のノズル108は、支持体40の上面から約50〜200mmの間に設置され、粉末粒子110が、上面41上へ飛んで誘電体層6を形成するのが好ましい。
【0028】
本発明によれば、デトネーションガンプロセスは、実質上、全ての酸化アルミニウム粒子をガンマ相に維持する圧力条件と温度条件において実行される。少なくとも、80%の酸化アルミニウム粒子がガンマ相のままであることが好ましく、これらの粒子の少なくとも99%がガンマ相のままであることが更に好ましい。酸化アルミニウムのガンマ相は、酸化アルミニウムの歪んだ、すなわち非整列結晶相である。酸化アルミニウム粒子をアルファ相への変態を放置すると、容積変化を引き起こし、それが塗膜内にクラックをもたらす。このように、デトネーションガンプロセス全体を通じてガンマ相を維持することは、最終的誘電体層内のクラック発生を最少化する。さらに、誘電体層に実質的に均一な単相(すなわち99%ガンマ相)を与えることは、多くの利点を提供する。例えば、単相誘電体層は、一般的に均一な外観を有するので、検査が容易である。単相誘電体層は、荷電もより均一に分配し、それにより、処理中の静電チャック上へのウェーハの均一な配置が容易になる。
【0029】
酸化アルミニウム粒子は、温度の制御と、粒子が金属ペデスタル上へ堆積された後の冷却速度の制御により、ガンマ相に維持される。酸化アルミニウム粒子は、標準条件下では通常、約1000℃の限界転移温度でアルファ相からガンマ相へ転移するのが普通である。勿論、この温度は、チャンバの圧力や体積等の他の要因によって変化するかもしれない。ガンマ相においては、酸化アルミニウム結晶は歪んでいて一般的に、その温度が1000℃以下に下げられた後は、アルファ相構造へ戻らない。よって、本発明のデトネーションガンプロセスは、酸化アルミニウム粒子の結晶構造が永久歪みを持ったままとなるように実施される。酸化アルミニウム粒子は、全デトネーションガンプロセス中1000℃を超えることが好ましい。
【0030】
実施例を以下に提供して本発明を説明する。
【0031】
【実施例1】
アセチレンと酸素のガス混合物を、表1に示す塗膜粉末とともにデトネーションガンの燃焼チャンバへ入れた。また、酸化アルミニウム塗膜粉末を、ガス混合物とほぼ同等の速度でデトネーションガンへ供給した。デトネーションガンは、毎秒8回の速度で点火し、デトネーションガン内の塗膜粉末をアルミニウム製のペデスタル上へ送り込み、相互に組合い重なり合って成形される微細薄層でできた、密度が高くて接着力のある塗膜を形成した。
【0032】
誘電体層の物理的、電気的特性値を、表2に要約した。表に示すように、誘電体層は1〜2%の多孔度と約3.5g/cm3の密度であった。誘電体層を、約1〜2Raの表面粗度を得るために、500番手の砂粒で研磨した。本出願人は、誘電体層の平滑面は、比較的高密度と低多孔度の結果であると考える。この平滑面が、処理中のウェーハ裏側への粒子不純物を減少させる。さらに、比較的高密度は、誘電体層が処理チャンバ内での腐食に対する抵抗力を高めることを可能にする。
【0033】
【表2】
表2に示すように、誘電体層は10000psiを超える結合力と500V/milを超える絶縁耐力を有した。層の絶縁耐力は、ASTM規格D150−92によって測定した。層の誘電率は、約100kHzで8.5〜11であった。誘電率は、約2時間の乾燥で誘電体層から水分を除去してから測定された。誘電率は、24時間乾燥後でもほぼ同等であったことが確認されたが、このことは、水分除去は実質上は2時間後に完了していたことを示唆している。これらの値は、ASTM規格D149−92によって測定した。
【0034】
【実施例2】
誘電体層6へのチタンの混入は、本発明の静電チャックの電気的特性値を改良できることが更に判明した。チタンを含有しない誘電体層は、誘電体層の有効性を減らす長いデチャッキング、即ち離脱時間を有するということが分かっている。しかしながら、単にチタンを誘電体層6へ加えるだけではこのような改良は与えられないであろう。なぜならば、チタンは、フッ素の存在の中で、ウェーハの製造では、普通にあるケミカルアタックを受けるからである。
【0035】
特に、改善された電気的特性値を得るためには、誘電体層へチタンを均質的に混ぜる、つまり“ドープ(添加)”しなければならないことが、さらに判明した。誘電体層にチタンをドープすることにより、チタンは、ケミカルアタックを受けにくくなる。したがって、誘電体層にチタンをドープすることにより、静電チャックの特性値は、様々な適用例で最適化できる。これらの改良された特性値は、静電チャックの能力として、(a)適度に大きいチャッキング力でウェーハをチャックすること、(b)ウェーハを短時間のうちにデチャックする、つまり外すこと、(c)チャンバ環境内での化学的、物理的アタックに耐えること、(d)ウェーハ上に均一な温度分布を与えることを含む。
【0036】
本発明の最も好ましい実施例において、酸化チタン粒子を、表1に示した塗膜粉末に加え、その後、この混合物を、実施例1で教示したデトネーションガン技術によって用いた。この技術を利用して、チタンは酸化アルミニウムの結晶構造の中へ全体的、かつ均質的に添加される。このことは、ケミカルアタックに対する静電チャックの耐力を落とすことなく、静電チャックの電気的特性値を改善する方法を提供するものである。
【0037】
図5は、誘電体層の抵抗率と酸化アルミニウムへドープされるチタンの%の関係を示し、これらの全ては、前述したデトネーションガン技術により作成した。静電チャックを操作するのに好ましい抵抗率の値は、約1.0×1011オーム・cmよりわずかに大きい。このように、図5で示される通り、最適値は、誘電体層に約2.5原子%チタン(すなわち、重量比で約2%のチタニア)をドープすることである。しかし、約6原子%チタニア(すなわち、重量比で約5%のチタニア)までは機能的誘電体層(functional dielectric layer)を作ることが可能である。このように、重量比で少なくとも95%の酸化アルミニウムの誘電体層が考えられる。
【0038】
図6は、相対誘電率と酸化アルミニウムにドープされるチタン原子%の関係を示す。チャッキング力は、誘電率に正比例している。図6に示したように、約2.5原子%チタンをドープした酸化アルミニウム層は、より大きな相対誘電率を有し、従って、チタンをドープしない酸化アルミニウム層より大きなチャッキング力が得られる。
【0039】
図7は、チタンをドープしない酸化アルミニウム誘電体層に関するXRDデータを示す。図8は、約2.5原子%チタンをドープした酸化アルミニウム誘電体層に関するXRDデータを示す。スペクトルは同一であるように見える。これは、チタンが誘電体層内部で分離した第二相としてよりも、ドープ状態で存在することを示す。
【0040】
酸化アルミニウム構造におけるアルミニウムサイト上のチタンのドープは、次のように表される。
【0041】
[TiAl ・]= 3[VAl''']
これは、室温と低酸素粒子分圧の下で可能である。ここで、TiAlはアルミニウムサイト上のチタンを示し、VAlはアルミニウムサイト上の空格子点を示す。チタンとアルミニウムの原子価の違いにより、電荷補償が発生して導電性の増加をもたらす。高酸素分圧の下でも可能なのは[TiAl ・]が周囲の非ドープ格子に関して公称(net)+1の電荷を持ち、[VAl''']が、格子に関して−3の電荷を持つ場合である。
【0042】
[TiAl ・]= 2[Oi'']
ここで、Oiは介在酸素である。
【0043】
上記パラグラフにおいて、酸化アルミニウムのチタンドーピングにおける導電性の増加の背景理論を説明した。酸化チタンと酸化アルミニウムの単なる混合では、この抵抗率低下は見られないであろう。
【0044】
以上、特定の実施形態及び実施例について詳細に述べたが、多様な変形、代替構造、相当物を用いることができる。例えば、上記記述はマルチチャンバ処理システムのための高密度プラズマ反応チャンバに関してであるが、本発明を他のプラズマエッチングチャンバ等に実施することも可能であろう。従って、上記記述と説明図は、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を制限するものと見なすべきではない。さらに、本発明は、上記に説明し添付の図面で示した単一ウェーハチャンバに限定されないことも注意すべきである。例えば、静電チャックは、複数のウェーハを同時に処理するバッチチャンバへ設置することも可能であろう。さらに、本発明は、個々のウェーハ毎に単独の処理ステップを順次行う、マルチウェーハチャンバ内での使用にも適しているであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理によるチャックを組み込んだ高密度プラズマ反応チャンバの概略図である。
【図2】図1の静電チャック内に含まれるペデスタルと誘電体層の平面図である。
【図3】図2のペデスタルの内部構造を説明する、図2の線3−3に沿った側面断面図である。
【図4】図2の誘電体層を製造するためのプロセスの概略図である。
【図5】電気抵抗率と、酸化アルミニウム誘電体層へドープされるチタン%との関係を示すグラフである。
【図6】相対誘電率と、酸化アルミニウム誘電体層へドープされるチタン%との関係を示すグラフである。
【図7】チタンがドープされていない酸化アルミニウム誘電体層に関するX線回折(すなわちXRD)のスペクトルグラフである。
【図8】約2.5原子%チタンがドープされた酸化アルミニウム誘電体層に関するXRDデータのスペクトルグラフである。
【符号の説明】
2…ウェーハ処理装置、4…静電チャック、6…誘電体層(電気的絶縁層)、8…反応チャンバ、12…エンクロージャアセンブリ、14…ペデスタルアセンブリ、24…DC電圧源、27…RF電源、40…支持体、100…デトネーションガン、103…内部燃焼チャンバ、104…ガンバレル、108…ノズル。
Claims (11)
- ターゲット面を有する導電要素と、
前記ターゲット面に隣接して配置された電気的絶縁層と、を備え、
前記電気的絶縁層は、当該電気的絶縁層の体積の4パーセント未満の多孔度及び3.3g/cm 3 〜3.8g/cm 3 の密度を有する、ウェーハ処理装置のための静電チャック。 - 前記電気的絶縁層が、チタンによってドーピングされた酸化アルミニウムからなる、請求項1に記載の静電チャック。
- 前記電気的絶縁層が、当該電気的絶縁層の体積の2パーセント以下の多孔度を有する、請求項1に記載の静電チャック。
- 前記電気的絶縁層が、最大10ppmのマグネシウム、最大10ppmの鉄及び最大10ppmの銅を含む、請求項2に記載の静電チャック。
- 前記酸化アルミニウムが酸化アルミニウム粒子を含み、前記酸化アルミニウム粒子の少なくとも80%がガンマ相である、請求項2に記載の静電チャック。
- 前記電気的誘導要素に接続された電圧源をさらに備える、請求項1に記載の静電チャック。
- 集積回路デバイスを製造するための装置であって、処理チャンバを収容するエンクロージャアセンブリと、
前記処理チャンバ内部に配置された静電チャックと、を備え、
前記静電チャックは、
上面を有する金属支持体と、
前記支持体の前記上面上の少なくとも一部に形成される誘電体層であって、当該誘電体層の体積の2パーセント以下の多孔度及び3.3g/cm 3 〜3.8g/cm 3 の密度を有する前記誘電体層と、
前記ウェハを前記誘電体層上に保持するためのクーロン吸引力を発生するように前記ウェハと前記支持体との間に電圧をかけるための前記支持体に接続された電圧源と、を有する、装置。 - 前記誘電体層が、チタンによってドーピングされた酸化アルミニウムからなる、請求項7に記載の装置。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の静電チャックを製造するための方法であって、実質的に平坦な面を有する導電性ペデスタルを用意するステップと、チャンバ内で、セラミック粉末と燃料ガス混合物とを結合させるステップと、前記燃料ガス混合物に点火してデトネーション波を形成するステップと、前記ペデスタルの前記平坦面に前記粉末を推進させて、前記平坦面に接合された電気的絶縁層を形成する推進ステップと、を備える方法。
- 前記推進ステップが、デトネーション波を生成し、前記粉末を少なくとも700m/sの速度にまで加速することを含む、請求項9に記載の方法。
- 前記加速ステップ中に、前記粉末を前記粉末の融点付近にまで加熱することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
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