JP4255965B2 - 抗真菌剤および抗細菌剤配合洗浄用組成物 - Google Patents
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Description
真菌P.ovaleに対し、強い抗真菌効果を示すミコナゾールまたはその硝酸塩を含ませたふけ防止剤の開示がある(特許文献1参照)。ここでの防止剤は、P.ovaleによるふけを防止するためのたとえばシャンプーなどであるが、当該防止剤には、上述したような抗細菌剤は配合されていない。
菌・カビのエルゴステロールの生合成を阻害する1種以上の抗菌・抗カビ剤とリン脂質を含む組成物を開示するものもある(特許文献2参照)。当該文献には、抗菌・抗カビ剤として、抗真菌剤であるアゾールが例示され、抗細菌剤として公知の化合物は例示されていない。皮膚糸状菌(dermatophyte fungi)に対して効果がある旨の記載からみても、当該文献における菌は実質的に真菌を意味しており、抗細菌剤は含まれていない。
上記各文献には、抗細菌剤と抗真菌剤とを組み合わせて使用する必要性は示されていない。
本発明者は、この認識に基づいて抗真菌剤および抗細菌剤を配合した洗浄用組成物について種々検討する過程において、抗真菌剤のうちには、これを通常の抗細菌性石鹸にそのまま配合しても、その溶解性、効果、安定性などが大きく変動してしまい、安定な洗浄用組成物を得ることが困難なものがあるという課題があることがわかった。
このような本発明では、アゾール系抗真菌剤および抗細菌剤が配合された医薬品、医薬部外品または化粧品用の洗浄用組成物を提供する。
抗真菌剤が硝酸ミコナゾールであり、抗細菌剤がトリクロサンである洗浄用組成物は、本発明の好ましい態様例である。
本発明の洗浄用組成物において、通常、抗真菌剤の含有量は、0.1〜2.0wt%の量であり、抗細菌剤の含有量は0.01〜1.5wt%である。
本発明の洗浄用組成物は、洗浄成分として、低刺激性の界面活性剤を含むことができる。
本発明の洗浄用組成物は、たとえば石鹸の形態で提供される。
本発明は、医薬品、医薬部外品または化粧品用の抗真菌性・抗細菌性洗浄用組成物であり、広い抗真菌および抗細菌スペクトルを有する。本発明の洗浄用組成物は、抗真菌剤と抗細菌剤とを必須配合成分として含み、この抗真菌剤としてアゾール系抗真菌剤を含むことを特徴としている。
本発明では、これらの2種以上を洗浄用組成物中に含ませることもできる。
これらのうちでも、好ましくはミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、チオコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、ビフォナゾールおよびそれらの塩であり、さらに好ましくは硝酸ミコナゾールである。
本明細書において、上記ミコナゾールおよび硝酸ミコナゾールは、下記(I)および(II)で表される構造を有する化合物を意味する。
本発明に用いる抗細菌剤は、細菌に対して増殖抑制作用を有するものであれば特に限定されないが、ジフェニルエーテル化合物、カルバニリド化合物またはフェノール化合物が好ましく、具体的には、トリクロサン、トリクロカルバン、イソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。なかでもトリクロサンが好ましい。
これら抗細菌剤は、市販品として入手可能である。
抗真菌剤および抗細菌剤の組成物中への配合量は、特に限定されないが、通常抗真菌剤の配合量が0.1〜2.0wt%であり、抗細菌剤の配合量が0.01〜1.5wt%である。具体的に、抗真菌剤が硝酸ミコナゾールの場合には、その配合量は0.1〜1.0wt%が好ましく、抗細菌剤がトリクロサンの場合には、その配合量は0.05〜1.0wt%が好ましい。
(実施例1)硝酸ミコナゾールおよびトリクロサンのin vitroにおける抗細菌、抗真菌作用
[対象菌株]
〈細菌〉
Staphylococcus aureus ATCC 29213
Escherichia coli ATCC 25922
〈真菌〉
Candida albicans IFM 40213
Trichophyton rubrum IFM 45626
〈細菌〉
(1)ミューラーヒントンII寒天培地(BBL)にて35℃、18〜20時間培養後、滅菌生理食塩液にて、McFarland No.0.5に調製した。その後、滅菌生理食塩液にて10倍希釈をし、供試菌液とした。
(2)測定薬剤はDMSOで溶解し、ミコナゾールは102,400μg/mL(力価)、トリクロサンは409,600μg/mL(力価)に調製した。
102,400μg/mL(力価)に調製したミコナゾール薬液は、さらにDMSOを用いて2倍希釈系列を作製し、102,400〜50μg/mL(力価)となるよう調製した。
409,600μg/mL(力価)に調製したトリクロサン薬液はさらにDMSOを用いて2倍希釈系列を作製し、409,600〜6.00μg/mL(力価)となるよう調製した。
(3)ミコナゾールは1,024〜0.5μg/mL、トリクロサンは4,096〜0.06μg/mLとなるように、(2)で調製した各薬剤の希釈系列をそれぞれカチオン調整したMueller−Hintonブロス(CAMHB)に添加した(このとき、最終DMSO濃度は2%以下となるようにした)。
(4)(3)で調製した測定培地をそれぞれ100μLずつ分注した。対照として薬剤不含有培地を100μLずつ分注した。
(5)接種菌液を各ウェルに5μLずつ接種し、対象として用いた薬剤不含有培地内の菌量を計測し、接種菌量を求めた。
(6)対照に用いた薬剤不含有培地での菌の発育を確認した後、菌の発育が肉眼的に認められないウェルの最小の薬剤濃度をMICとした。
(1)C.albicansはサブローデキストロース寒天培地(BBL)で35℃、24〜48時間培養後、滅菌生理食塩液にて、McFarland No.0.5に調製した。0.165mol/L MOPSを含むRPMI1640培地で1000倍に希釈し、供試菌液(1〜5×103cells/mL)とした。
T.rubrumは、改変1/10サブロー・グルコース寒天斜面培地で27℃、1〜2週間培養後、0.1%Tween80加滅菌生理食塩液を加え分生子を採取し、滅菌ガーゼで濾過した。分生子懸濁液はさらに0.1%Tween80加滅菌生理食塩液で希釈し、血球計算板を用いて菌数を106cells/mLに調製し供試菌液とした。
(2)測定薬剤はDMSOで溶解し、ミコナゾールおよびトリクロサン各々12,800μg/mL(力価)に調製した。12,800μg/mL(力価)に調製したミコナゾールおよびトリクロサン薬液は、さらにDMSOを用いて各々2倍希釈系列を作製し、12,800〜60μg/mL(力価)となるよう調整した。
(3)(2)で調製した各薬剤の希釈系列をそれぞれ、0.165mol/L MOPSを含むRPMI1640培地に、128〜0.06μg/mLとなるよう添加した(このとき、最終DMSO濃度は2%以下となるようにした)。
(4)(3)で調製した測定培地100μLに対し、(2)で調製した菌液100μLを接種し、C.albicansは、35℃で24〜48時間、T.rubrumは、27℃で1〜2週間培養した。但し、薬剤不含有培地での菌の発育状況によって培養時間は適宜延長した。対照として薬剤不含有培地を100μLずつ分注した。
(5)対照に用いた薬剤不含有培地での菌の発育を確認した後、菌の発育が肉眼的に認められないウェルの最小の薬剤濃度をMICとした。
MIC値(μg/mL)評価した結果を表1中に示す。
本品100g中
トリクロサン 0.30g
硝酸ミコナゾール 0.75g
ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム 12.00g
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム
タイン 12.00g
プロピレングリコール 8.00g
抗酸化剤 適量
pH調節剤 適量
精製水 適量
実施例2で作成した液体石鹸は、調製直後は微黄色澄明な液体であり、不溶物等は認められなかった。さらにこの液体石鹸を、温度40℃、相対湿度75%で、プラスチック容器にて6ヶ月間保存した結果、硝酸ミコナゾール、トリクロサンの残存率は、いずれも95%以上(液体クロマトグラフ法を用いた常法により定量)であり、また、沈殿、着色なども認められなかった。
実施例2で作成した液体石鹸を常法に従って手洗いおよび全身に使用した。洗浄時および洗浄後の違和感、皮膚のひりひり感、皮膚のかさつき等は認められず、使用感に優れていた。
本液体石鹸にて洗浄後に寒天培地に掌および足底を押捺(スタンプ法)し、常法に従って培養を行った。対照として、市販の抗細菌石鹸を用いて同様の試験を実施した。培養後に検出される細菌数、真菌数は、本発明の液体石鹸を使用した場合のほうが、市販の抗細菌石鹸を使用した場合に比べて明らかに少なかった。
[方法]
実施例2で作成した液体石鹸を用いて、以下の比較試験を実施した。
1.細菌試験
(1−1)パームスタンプ培地(市販のSCDLP寒天培地;ダイズカゼイン分解物、レシチンおよびポリソルベート80含有)を用いて、被験者(N=5)の試験前の菌を採取した。試験5時間前から手洗いは禁止した。
(1−2)7%に希釈し泡噴出容器に入れた実施例2で作成した液体石鹸(本発明石鹸)および実施例2の組成から硝酸ミコナゾールを除いた液体石鹸(対照石鹸)を用い、被験者の右手掌、左手掌を片手づつ、一定の時間洗浄した。
洗浄は本発明石鹸、対照石鹸の各担当者が、被験者に対してブラインド下、左右ランダムに被験者全員の手を一定の方法(2プッシュで5秒間)で洗浄する方法により実施した。
(1−3)水道水(6L/min)で一定の時間(5秒:500mL)で洗浄剤を洗い流した。
(1−4)両手をドライヤー(冷風)で乾燥し、再度菌を採取した。
(1−5)採取後5時間手を洗わずにいて、5時間後再度菌を採取した。
(1−6)菌を採取した培地を24時間35℃のインキュベーターで培養した。
(1−7)検出された培地の写真を撮影し、細菌のコロニー数を測定した。
(2−1)フットプレス用培地(バクトアガー15g、ネオペプトン10g、ブドウ糖20g、シクロヘキシミド1000mg、クロラムフェニコール50mg、硫酸ゲンタマイシン100mg、蒸留水1000mL)を使用し、被験者(N=5)の試験前の足の菌を採取した。
(2−2)7%に希釈し泡噴出容器に入れた本発明石鹸および対照石鹸を用い、被験者の右足裏、左足裏を片足づつ、一定の時間洗浄した。
洗浄は本発明石鹸、対照石鹸の各担当者が、被験者に対してブラインド下、左右ランダムに被験者全員の足を一定の方法(2プッシュで5秒間)で洗浄する方法により実施した。
(2−3)水道水(6L/min)で一定の時間(5秒:500mL)洗浄剤を洗い流した。
(2−4)両足をドライヤー(冷風)で乾燥し、再度菌を採取した。
(2−5)菌を採取した培地を7日〜14日27℃のインキュベーターで培養した。
(2−6)検出された培地の写真を撮影し、真菌のコロニー数を数えた。
結果を図1(細菌)および図2(真菌)に示す。
図1に示す通り、本発明石鹸を用いた場合の、平均細菌コロニー数(洗浄前を100%として%で表示)は、洗浄直後には顕著な低下を示し、洗浄5時間後においても、洗浄前よりも低い値であった。一方、対照石鹸は、洗浄直後には一時的にコロニー数が減少したが、洗浄5時間後の値は、洗浄前よりも高いものであった。
図2に示す通り、本発明石鹸を用いた場合の、平均真菌コロニー数(洗浄前を100%として%で表示)は、洗浄直後に顕著な低下を示した。一方、対照石鹸は、洗浄直後にコロニー数の減少は認められず、却って、洗浄前よりも高い値となった。
以上より、本発明石鹸は、対照石鹸に比し、抗細菌、抗真菌作用に優れることが確認された。
[対象菌株]
〈細菌〉
Staphylococcus aureus ATCC 29213
Escherichia coli ATCC 25922
〈真菌〉
Candida albicans IFM 40213
Trichophyton rubrum IFM 45626
(1)硝酸ミコナゾール:トリクロサン=2.5:1
(0.7107g:0.2863g)
(2)硝酸ミコナゾール:トリクロサン=2:1
(0.6634g:0.3340g)
(3)硝酸ミコナゾール:トリクロサン=1:1
(0.4975g:0.5010g)
(1)硝酸ミコナゾールおよびトリクロサンを上記薬剤配合比の割合で1gとなるよう秤量した。
(2)この1gをジメチルスルホキシド(DMSO)39.06mLに溶解し、25,600μg/mLの溶液を作成した。
(3)25,600μg/mL溶液を原液として、以下の試験に使用した。
〈細菌〉
(1)ミューラーヒントンII寒天培地(BBL)にて35℃、18時間培養後、滅菌生理食塩液にて、McFarland No.0.5に調製した。その後、滅菌生理食塩液にて10倍希釈をし、供試菌液とした。
(2)上記薬剤調製方法にて作製した原液をDMSOを用いて2倍希釈し、12,800μg/mLに調整後、さらにDMSOを用いて2倍希釈系列を作製し、12,800〜0.8μg/mL(力価)となるよう調整した。
(3)128〜0.008μg/mLとなるように、(2)で調製した薬剤の希釈系列をそれぞれカチオン調整したMueller−Hintonブロス(CAMHB)に添加した(このとき、最終DMSO濃度は2%以下となるようにした)。
(4)(3)で調製した測定培地をそれぞれ100μLずつ分注した。対照として薬剤不含有培地を100μLずつ分注した。
(5)接種菌液を各ウェルに5μLずつ接種し、対照として用いた薬剤不含有培地内の菌量を計測し、接種菌量を求めた。
(6)対照に用いた薬剤不含有培地での菌の発育を確認した後、菌の発育が肉眼的に認められないウェルの最小の薬剤濃度をMICとした。
(1)C.albicansはサブローデキストロース寒天培地(BBL)で35℃、48時間培養後、滅菌生理食塩液にて、McFarland No.0.5に調製した。0.165mol/L MOPSを含むRPMI1640培地で1000倍に希釈し、供試菌液(1〜5×103cells/mL)とした。
T.rubrumは、改変1/10サブロー・グルコース寒天斜面培地で27℃、1週間培養後、0.1%Tween80加滅菌生理食塩液を加え分生子を採取し、滅菌ガーゼで濾過した。分生子懸濁液はさらに0.165mol/L MOPSを含むRPMI1640培地で希釈し、血球計算板を用いて菌数を106cells/mLに調製し供試菌液とした。
(2)上記薬剤調製方法にて作製した原液を、さらにDMSOを用いて2倍希釈系列を作製し、25,600〜1.5μg/mL(力価)となるよう調整した。
(3)(2)で調製した各薬剤の希釈系列をそれぞれ、0.165mol/L MOPSを含むRPMI1640培地に、256〜0.015μg/mLとなるよう添加した(このとき、最終DMSO濃度は2%以下となるようにした)。
(4)(3)で調製した測定培地を100μLずつ分注した。対照として、薬剤不含有培地を100μLずつ分注した。
(5)(1)で調製した菌液100μLを接種し、C.albicansは35℃、48時間、T.rubrumは、27℃、1週間培養した。
(6)対照に用いた薬剤不含有培地での菌の発育を確認した後、菌の発育が肉眼的に認められないウェルの最小の薬剤濃度をMICとした。
MIC値(μg/mL)評価した結果を表2中に示す。
本品100g中
トリクロサン 0.30g
硝酸ミコナゾール 0.75g
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム 15.00g
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム
ベタイン 10.00g
プロピレングリコール 5.00g
抗酸化剤 適量
pH調節剤 適量
精製水 適量
本品100g中
トリクロカルバン 0.50g
硝酸ミコナゾール 0.75g
N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム 30.00g
プロピレングリコール 3.00g
抗酸化剤 適量
pH調節剤 適量
精製水 適量
Claims (8)
- ミコナゾールおよび/またはその塩と、トリクロサンおよび/またはトリクロカルバンとが配合され、前記ミコナゾールおよび/またはその塩の含有量が0.1〜1.0wt%の量であり、前記トリクロサンおよび/またはトリクロカルバンの含有量が0.05〜1.0wt%であり、前記ミコナゾールおよび/またはその塩と前記トリクロサンおよび/またはトリクロカルバンとの配合比が重量比で1:1〜5:1である医薬品、医薬部外品または化粧品用の石鹸(ただし、牡丹皮抽出物を含有する組成物を除く)。
- 前記トリクロサンおよび/またはトリクロカルバンがトリクロサンである請求項1に記載の石鹸。
- 前記トリクロサンおよび/またはトリクロカルバンがトリクロカルバンである請求項1に記載の石鹸。
- 前記ミコナゾールおよび/またはその塩が硝酸ミコナゾールである請求項1〜3のいずれかに記載の石鹸。
- 前記ミコナゾールおよび/またはその塩が硝酸ミコナゾールであり、前記トリクロサンおよび/またはトリクロカルバンがトリクロサンである請求項1〜4のいずれかに記載の石鹸。
- 前記配合比が重量比で1:1〜2.5:1である請求項1〜5のいずれかに記載の石鹸。
- 洗浄成分として、低刺激性の界面活性剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の石鹸。
- 洗浄成分として、少なくとも陰イオン性界面活性剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載の石鹸。
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