JP4255249B2 - 回収再使用の容易な光学活性アミノアルコールの塩、および該塩を使用する光学活性アルコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収再使用が容易である光学活性アミノアルコールの塩、および該塩を使用する光学活性アルコールの製造方法に関する。より詳細には一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩、および該炭酸塩を使用する光学活性アルコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
キラルなβ−アミノアルコールとホウ素化合物からオキサザボロリジンを調製し、このオキサザボロリジンを触媒としてケトンをハイドロボランにより不斉還元する方法が知られている(Corey E.J.ら, J. Am. Chem. Soc., 109: 5551-5553頁 (1987))。しかしながらこの方法は、オキサザボロリジンを調製・単離する操作が煩雑であり、工業的生産には不向きであった。そこで光学活性な触媒を反応系内で調製し、これを単離することなくそのまま不斉還元反応を行う種々の方法が検討されている。例えば、キラルなβ−アミノアルコールおよびルイス酸(例えば、トリアルコキシボラン、アルミニウムトリアルコキシド、リン酸エステル、亜リン酸エステル)の存在下に、ケトンをハイドロボランにより不斉還元する方法が知られている(特開平2001-72628、特開2001-131101、特開平9-255592)。
【0003】
これらの不斉還元に使用されるキラルなβ−アミノアルコールは一般に非常に高価であることから、工業的生産においては、反応終了後、反応混合物より当該β−アミノアルコールを回収し再利用することが望ましい。上記のように遊離のβ−アミノアルコールおよびハイドロボランを使用してケトンの不斉還元を行う方法において、反応混合物からβ−アミノアルコールを回収・再使用するには、まず反応後の抽出液から分離される水層よりβ−アミノアルコールを抽出、溶媒留去などの操作により回収する必要がある。このようにして回収されたβ−アミノアルコールは、通常、純度が低いためそのまま再使用することができず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、各種酸との酸付加塩形成などの精製操作が必要である。このように遊離のβ−アミノアルコールを使用する不斉還元方法において当該β−アミノアルコールを回収・再使用するには、多数の工程を要するため工業的生産には適していない。
【0004】
特開2001-2602には、β−アミノアルコールの酸付加塩および水素化ホウ素金属の混合物に、ジアルキル硫酸または酸(例えば、塩化水素もしくは硫酸などのブレンステッド酸、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどのルイス酸など)を加えて得られる不斉還元剤を使用する光学活性アルコールの製造方法が開示され、β−アミノアルコールの酸付加塩の具体例として、塩酸、硫酸などの無機酸、メタンスルホン酸などの有機酸との酸付加塩が示されているが、本発明の炭酸塩については何ら記載されていない。また当該公報には、反応後の抽出液から分離される水層をアルカリ性にした後、抽出、溶媒留去してβ−アミノアルコールを回収し、回収したβ−アミノアルコールを不活性溶媒に溶解し、これに酸を加えることにより、再びβ−アミノアルコールの酸付加塩を形成する操作手順が記載されているが、操作が煩雑であり工業的生産には適していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、回収再使用が容易である新規な光学活性アミノアルコールの塩、および該塩を使用する光学活性アルコールの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の光学活性アミノアルコールの塩について鋭意研究を重ねた結果、予想外にも一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール 1/2炭酸塩を使用してケトンの不斉還元を行うと、他の塩を用いる場合よりも光学活性アルコールが高収率で得られ、しかも得られる光学活性アルコールの光学純度が著しく高いこと、さらには驚くべきことに反応終了後の反応混合物から一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール 1/2炭酸塩を極めて容易に回収し、再使用することができることを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 一般式(I):
【化7】
[式中、Rは、低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、または非置換もしくは置換アラルキル基を表し;*は、不斉炭素を示す]で表される化合物;
(2) 前記一般式(I)で表される化合物が、(R)または(S)−α,α−ジフェニル−2−ピロリジンメタノール 1/2炭酸塩である、(1)に記載の化合物;
(3) 一般式(II):
【化8】
[式中、R1およびR2は、互いに異なって、非置換もしくは置換アルキル基、非置換もしくは置換シクロアルキル基、非置換もしくは置換アルケニル基、非置換もしくは置換シクロアルケニル基、または非置換もしくは置換アリール基を表すか、あるいはR1およびR2が一緒になって、非対称な環状ケトンを形成する]で表されるケトンを、一般式(I):
【化9】
[式中、Rは、低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、または非置換もしくは置換アラルキル基を表し;*は、不斉炭素を示す]で表される化合物およびハイドロボランの存在下、還元することを特徴とする、一般式(III):
【化10】
[式中、R1aおよびR2aは、R1およびR2と同一の基を表すか、またはR1およびR2が還元された基であり;*は、不斉炭素を示す]で表される光学活性アルコールの製造方法;
(4) 前記一般式(II)で表されるケトンが、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン、フェナシルクロリド、2−ブロモ−4’−メトキシアセトフェノン、2−ブロモ−3’−メトキシアセトフェノン、2−ブロモ−2’−メトキシアセトフェノン、2’−クロロアセトフェノン、3’−クロロアセトフェノン、4’−クロロアセトフェノン、2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ブロモ−3,3−ジメチル−2−ブタノン、3−メチル−2−ブタノン、α−テトラロン、β−テトラロン、1−インダノン、または5−メチル−2−ヘキサノンである、(3)に記載の製造方法;
(5) 前記一般式(II)で表されるケトンが、一般式(IV):
【化11】
[式中、R3は、低級アルキル基を表し;R4は、低級アルキル基、アラルキル基、またはtert−ブチルジメチルシリル基を表し;Xは、塩素原子または臭素原子を表す]で表される化合物であり;
前記一般式(III)で表される光学活性アルコールが、一般式(V):
【化12】
[式中、R4およびXは、前記定義の通りである]で表される化合物である、(3)に記載の製造方法;
(6) R4がベンジル基であり、Xが臭素原子である、(5)に記載の製造方法;
(7) 前記ハイドロボランが、ジボラン、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・N,N−ジメチルアニリン錯体、ボラン・N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン・1,4−オキサチアン錯体、ボラン・4−フェニルモルホリン錯体、またはボラン・カテコール錯体である、(3)に記載の製造方法;
(8) 反応終了後に得られる反応混合物より、一般式(I)で表される化合物を回収し、該回収された化合物をリサイクルすることを特徴とする、(3)に記載の製造方法;および
(9) 前記一般式(I)で表される化合物が、(R)または(S)−α,α−ジフェニル−2−ピロリジンメタノール 1/2炭酸塩である、(3)〜(8)に記載の製造方法に関する。
【0008】
本発明において、下記の用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0009】
「アルキル基」とは、炭素数1〜10の直鎖状または枝分かれ状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、オクチル基、ノニル基などが挙げられる。
【0010】
「低級アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0011】
「シクロアルキル基」とは3〜8員の飽和環状炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0012】
「アルケニル基」とは、少なくとも1個の二重結合を有する直鎖または分岐鎖状の炭素数2〜10の不飽和炭化水素を意味し、例えば、エテニル基(−CH=CH2)、1−プロペニル基(−CH=CHCH2)、2−プロペニル基(−CH2CH=CH2)などが挙げられる。
【0013】
「シクロアルケニル基」とは、環内に少なくとも1個の二重結合を有する、上記シクロアルキル基を意味し、例えば、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセン−1−イル基、3−シクロヘキセン−1−イル基などが挙げられる。
【0014】
「アリール基」とは、1〜3個の環により構成される芳香族炭化水素基を意味し、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0015】
「アラルキル基」とは、上記アリール基で置換された低級アルキル基を意味し、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0016】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0017】
「低級アルコキシ基」とは、炭素数1〜6の直鎖状または枝分かれ状のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0018】
「アリールオキシ基」とは、(アリール)−O−で表される基を表す。
【0019】
「アラルキルオキシ基」とは、(アラルキル)−O−で表される基を表す。
【0020】
「トリ低級アルキルシロキシ基」とは、同一または異なる低級アルキル基で3置換されたシロキシ基を意味し、例えば、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、tert−ブチルジメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0021】
「低級アルコキシカルボニル基」とは、(低級アルコキシ)−CO−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0022】
「低級アルコキシカルボニル低級アルキル基」とは、上記低級アルコキシカルボニルで置換された低級アルキル基を表す。
【0023】
「置換アルキル基」とは、以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、および低級アルコキシカルボニル基から選択される1個の置換基で置換されたアルキル基を表す。
【0024】
「置換シクロアルキル基」とは、以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、およびトリ低級アルキルシロキシ基から選択される1個の置換基で置換されたシクロアルキル基を表す。
【0025】
「置換アリール基」とは、以下からなる群:ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アラルキルオキシ基、トリ低級アルキルシロキシ基、低級アルコキシカルボニル基、および低級アルコキシカルボニル低級アルキル基から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されたアリール基を表し、例えば、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ベンジルオキシフェニル基、4−ベンジルオキシ−3−メトキシカルボニルメチルフェニル基などが挙げられる。
【0026】
「置換アラルキル基」とは、上記置換アリール基で置換された低級アルキル基を意味する。
【0027】
「非対称な環状ケトン」とは、置換基を有してもよく、環内に二重結合を有してもよい3〜8員の非対象な環状ケトンを表し、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、トリ低級アルキルシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはアラルキルオキシ基が挙げられる。また当該環状ケトンは、必要に応じてベンゼン環またはシクロアルカン基と縮環してもよい。
【0028】
本発明に用いられるハイドロボランとしては、例えば、ジボラン、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・N,N−ジメチルアニリン錯体、ボラン・N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン・1,4−オキサチアン錯体、ボラン・4−フェニルモルホリン錯体、およびボラン・カテコール錯体などが挙げられ、好適にはボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体が使用される。
【0029】
本発明の一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩は、以下のようにして製造することができる。
【0030】
すなわち、一般式(I’):
【化13】
(式中、Rは、低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、または非置換もしくは置換アラルキル基を表し、*は不斉炭素を示す)で表される光学活性アミノアルコールを水に懸濁し、必要に応じて、当該光学活性アミノアルコール(I’)に対して約0.5〜約100当量の塩酸もしくは酢酸、および/または有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)を加え、光学活性アミノアルコール(I’)の水溶液を調製する。次いでこの水溶液に、約0〜約50℃の温度で撹拌しながら、炭酸水素ナトリウム水溶液をpHが約8〜約9となるように加えると一般式(I):
【化14】
(Rおよび*は、前記定義の通りである)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩の結晶が析出する。この結晶をろ取し、乾燥することにより、本発明の一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩を得ることができる。
【0031】
上記一般式(I’)で表される光学活性アミノアルコールは、市販されているものを用いるか、あるいは文献公知の方法(例えば、Mathre D.J.ら,J. Org. Chem., 56巻: 751-762頁(1991))またはそれに準じた方法に従って製造することができる。
【0032】
次に、このようにして得られる一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩およびハイドロボランを使用して、ケトンを光学活性なアルコールへ不斉還元する方法について説明する。
【0033】
本発明の光学活性アルコールの製造方法は、通常、一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩を適切な有機溶媒に溶解もしくは懸濁し、当該溶液または懸濁液に、ハイドロボランを加え、約10℃〜溶媒還流温度で約0.5〜6時間撹拌後、一般式(II)で表されるケトンをそのままか、適切な有機溶媒の溶液にして、通常、−78℃〜溶媒の還流温度で約0.5〜約6時間に亘って滴下し、次いで適切な温度で反応させることにより行われる。また、必要に応じて反応の途中でハイドロボランを追加してもよい。
【0034】
一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩の使用量は、通常、一般式(II)で表されるケトンに対して約0.005〜約2.0当量であり、好適には約0.01〜約1.0当量が使用される。
【0035】
ハイドロボランの使用量は、原料化合物(II)に存在する還元部位の数によっても異なるが、通常、約0.4〜約15.0当量であり、好適には約0.5〜約12.0当量が使用される。
【0036】
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類など、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられ、好適にはエーテル類、特にテトラヒドロフランが使用される。
【0037】
反応温度は、原料化合物(II)に存在する還元部位の種類、使用する反応溶媒、ハイドロボランの種類や量によっても異なるが、通常、−78℃〜溶媒の還流温度、好ましくは0℃〜溶媒の還流温度の範囲である。
【0038】
上記反応により得られる目的の一般式(III)で表される光学活性アルコールは、反応終了後、塩酸などの鉱酸を加えた後、常法により適切な有機溶媒(例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムなど)により抽出することにより単離することができる。得られた光学活性アルコール(III)は、必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶などの操作により精製することができる。
【0039】
本発明の製造方法に使用される一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩は、反応混合物から目的の光学活性アルコール(III)を抽出後、分液される水層に、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH約8〜約9に調整し、析出する一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩の結晶をろ取することにより容易に回収することができる。このようにして回収された一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩は十分に純度が高いので、特に精製を行うことなく再度、不斉還元反応に使用することができる。
【0040】
以上のようにして得られる一般式(III)で表される光学活性アルコールは、光学純度が極めて高く、医薬品および農薬などとして、またはそれらの製造中間体として使用することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の内容を実施例、参考例および試験例でさらに詳細に説明するが、これらは本発明を例示することを意図したものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
参考例、実施例中の光学純度は、HPLCにより以下の条件で測定した。
HPLC条件:
検出波長 : 220または230nm
カラム : キラルセルOJまたはキラルセルAD, 4.6 mm x 250 mm (ダイセル化学工業株式会社)
カラム温度: 室温
移動相 : n−ヘキサン/イソプロパノール(95/5〜9/1)
流速 : 1.0mL/分
【0043】
【実施例】
(参考例1)
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール塩酸塩を用いるアセトフェノンの還元
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール塩酸塩(145mg)を乾燥テトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、窒素気流室温撹拌下、10mol/Lボラン・ジメチルスルフィド錯体(0.5mL)を加え1時間撹拌した。これにアセトフェノン(601mg)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液をシリンジポンプを用いて1時間かけて滴下し、滴下後、室温でさらに撹拌を続けた。TLCにて反応の終了を1.5時間後に確認した。1mol/L塩酸(10mL)をゆっくり加えた後,エーテル(15mL)で3回抽出した後、有機層を合わせ、水および飽和食塩水(各5mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムBW−350で精製し、(R)−1−フェニルエタノール(536mg)を無色油状物として得た。収率88%、光学純度78.9%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.48 (3H, d, J=6.1Hz), 1.96 (1H, br), 4.88 (1H, dd, J=6.1, 12.9Hz), 7.25-7.40 (5H, m)
【0044】
(参考例2)
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2硫酸塩を用いるアセトフェノンの還元
参考例1の(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール塩酸塩の代わりに(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2硫酸塩(151mg)を用い、アセトフェノン(601mg)から(R)−1−フェニルエタノール(570mg)を無色油状物として得た。収率93%、光学純度90.7%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.48 (3H, d, J=6.1Hz), 1.96 (1H, br), 4.88 (1H, dd, J=6.1, 12.9Hz), 7.25-7.40 (5H, m)
【0045】
(実施例1)
(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩
(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール(253mg)を1mol/L塩酸(5mL)および水(20mL)に溶かした溶液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を加えpHを9とした。析出した結晶をろ取し、減圧下乾燥して(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(261mg)を白色結晶として得た。収率92%
元素分析 C35H40N2O5:
計算値(%) C: 73.92, H: 7.09, N: 4.93
実測値(%) C: 73.58, H: 7.11, N: 4.80
IR (KBr): 701, 1377, 1448, 1541, 1618, 2984 cm-1
【0046】
(実施例2)
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール(507mg)をテトラヒドロフラン(2mL)、1mol/L塩酸(1mL)および水(2mL)に溶かした溶液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。析出した結晶をろ取し、減圧下乾燥して(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(524mg)を白色結晶として得た。収率95%
IR (KBr): 701, 1377, 1448, 1541, 1618, 2984 cm-1
【0047】
(実施例3)
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩を用いるアセトフェノンの還元
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(142mg)を乾燥テトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、窒素気流室温撹拌下、10mol/Lボラン・ジメチルスルフィド錯体(0.5mL)を加え1時間撹拌した。これにアセトフェノン(601mg)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液をシリンジポンプを用いて1時間かけて滴下した。滴下5分後、TLCにて反応の終了を確認した後、1mol/L塩酸(10mL)をゆっくり加えた。エーテル(15mL)で3回抽出した後、有機層を合わせ、水および飽和食塩水(各5mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムBW−350で精製し、(R)−1−フェニルエタノール(593mg)を無色油状物として得た。収率97%、光学純度97.9%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.48 (3H, d, J=6.1Hz), 1.96 (1H, br), 4.88 (1H, dd, J=6.1, 12.9Hz), 7.25-7.40 (5H, m)
【0048】
(実施例4)
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩を用いるアセトフェノンの還元
(S)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(28mg)を乾燥テトラヒドロフラン(1mL)に溶解し、窒素気流室温撹拌下、10mol/Lボラン・ジメチルスルフィド錯体(0.5mL)を加え1時間撹拌した。これにアセトフェノン(601mg)の乾燥テトラヒドロフラン(2mL)溶液をシリンジポンプを用いて1時間かけて滴下した。滴下5分後、TLCにて反応の終了を確認した後、1mol/L塩酸(10mL)をゆっくり加えた。エーテル(15mL)で3回抽出した後、有機層を合わせ、水および飽和食塩水(各5mL)で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムBW−350で精製し、(R)−1−フェニルエタノール(570mg)を無色油状物として得た。収率93%、光学純度95.1%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.48 (3H, d, J=6.1Hz), 1.96 (1H, br), 4.88 (1H, dd, J=6.1, 12.9Hz), 7.25-7.40 (5H, m)
【0049】
(実施例5)
(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩を用いるアセトフェノンの還元、および(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩の回収
(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(1.42g)を乾燥テトラヒドロフラン(20mL)に溶かし、窒素気流室温撹拌下、10mol/Lボラン・ジメチルスルフィド錯体(8mL)を加え1時間撹拌した。これにアセトフェノン(12.02g)の乾燥テトラヒドロフラン(40mL)溶液を1時間かけて滴下した。滴下5分後、TLCにて反応の終了を確認した後、1mol/L塩酸(25mL)をゆっくり加えた。この混合物を酢酸エチル(100mL)で抽出し、水層と有機層を分離した。水層をさらに酢酸エチル(100mL)で抽出し、水層と有機層を分離した。有機層を合わせ、水および飽和食塩水(各10mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した後、減圧蒸留を行い、(S)−1−フェニルエタノール(8.39g)を無色油状物として得た。収率69%、光学純度98.1%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.48 (3H, d, J=6.1Hz), 1.96 (1H, br), 4.88 (1H, dd, J=6.1, 12.9Hz), 7.25-7.40 (5H, m)
また全ての水層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にてpH8に調整し、析出する結晶をろ取した。水洗後、減圧乾燥し、(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(0.98g)を回収した。
【0050】
(実施例6)
回収(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩を用いるアセトフェノンの還元
実施例5で回収した(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(0.71g)、ならびにアセトフェノン(6.01g)および10mol/Lボラン・ジメチルスルフィド錯体(4mL)を使用し、実施例5と同様にして反応を行い、(S)−1−フェニルエタノール(4.92g)を無色油状物として得た。収率81%、光学純度98.0%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.48 (3H, d, J=6.1Hz), 1.96 (1H, br), 4.88 (1H, dd, J=6.1, 12.9Hz), 7.25-7.40 (5H, m)
【0051】
(実施例7)
(R)−1−[4−ベンジルオキシ−3−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−ブロモエタノール
(R)−α,α−ジフェニルピロリジンメタノール 1/2炭酸塩(377mg)に乾燥テトラヒドロフラン(10mL)を室温撹拌下、10mol/Lボラン・ジメチルスルフィド錯体(3.2mL)を加え1時間撹拌した。これに2’−ベンジルオキシ −5’−ブロモアセチルフェニル酢酸メチル(10.00g)の乾燥テトラヒドロフラン(25mL)溶液を内温20−23℃で滴下した。原料の消失を確認後、内温50℃に加熱し、さらに1時間撹拌した。反応終了を確認後、室温に戻しメタノール(10mL)を注意深く加えた。発泡がなくなってから減圧下に溶媒留去し、残渣に酢酸エチル(30mL)および1mol/L塩酸(10mL)を加えた。有機層を分離し、水層をさらに酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層を合わせ、水(10mL)、炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)、飽和食塩水(10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去し、得られた粗結晶を酢酸エチル−ヘキサンから再結晶し、(R)−1−[4−ベンジルオキシ−3−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−ブロモエタノール(8.52g)を白色結晶として得た。収率92%、光学純度100%e.e.
1H−NMR(CDCl3) δppm:1.85 (1H, s), 2.89-2.95 (3H, m), 3.51 (1H, dd, J=8.9, 10.4Hz), 3.57 (1H, dd, J=3.6, 10.4Hz), 3.80-3.85 (2H, m), 4.80-4.85 (2H, m), 5.07 (2H, s), 6.90 (1H, d, J=8.1Hz), 7.15-7.20 (2H, m), 7.30-7.42 (5H, m)
【0052】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩を使用する製造方法により、医薬品または農薬として、またはこれらの製造中間体として有用な光学活性アルコールを極めて高い光学純度および化学収率で得ることができる。また、反応終了後の反応混合物より、一般式(I)で表される光学活性アミノアルコール1/2炭酸塩を簡便な操作により容易に回収し、再使用することができる。
Claims (9)
- 前記一般式(I)で表される化合物が、(R)または(S)−α,α−ジフェニル−2−ピロリジンメタノール 1/2炭酸塩である、請求項1に記載の化合物。
- 一般式(II):
- 前記一般式(II)で表されるケトンが、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン、フェナシルクロリド、2−ブロモ−4’−メトキシアセトフェノン、2−ブロモ−3’−メトキシアセトフェノン、2−ブロモ−2’−メトキシアセトフェノン、2’−クロロアセトフェノン、3’−クロロアセトフェノン、4’−クロロアセトフェノン、2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ブロモ−3,3−ジメチル−2−ブタノン、3−メチル−2−ブタノン、α−テトラロン、β−テトラロン、1−インダノン、または5−メチル−2−ヘキサノンである、請求項3に記載の製造方法。
- R4がベンジル基であり、Xが臭素原子である、請求項5に記載の製造方法。
- 前記ハイドロボランが、ジボラン、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・N,N−ジメチルアニリン錯体、ボラン・N,N−ジエチルアニリン錯体、ボラン・1,4−オキサチアン錯体、ボラン・4−フェニルモルホリン錯体、またはボラン・カテコール錯体である、請求項3に記載の製造方法。
- 反応終了後に得られる反応混合物より、一般式(I)で表される化合物を回収し、該回収された化合物をリサイクルすることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
- 前記一般式(I)で表される化合物が、(R)または(S)−α,α−ジフェニル−2−ピロリジンメタノール 1/2炭酸塩である、請求項3〜8に記載の製造方法。
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