=== 開示の概要 ===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
情報を書き込み可能な素子を備えた複数のインクカートリッジが着脱可能なカートリッジ装着部と、被印刷体に向けて吐出されるインクの吐出量を、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジ毎に積算するための積算手段と、前記素子に情報を書き込むための書き込み部材とを有する印刷装置であって、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、前記積算手段の積算結果に基づいて選択されたインクカートリッジに備えられた素子に情報を書き込むことを特徴とする印刷装置。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、前記積算手段の積算結果に基づいて選択されたインクカートリッジに備えられた素子に情報を書き込むから、積算結果を踏まえて短時間に情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記積算手段の積算結果に基づいて、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、一つのインクカートリッジを選択することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記積算手段の積算結果に基づいて、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、一つのインクカートリッジを選択するから、積算結果を踏まえて、より短時間に情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に対して、該インクカートリッジに収容されたインクの使用量又は残量を示す情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材は、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に対して、該インクカートリッジに収容されたインクの使用量又は残量を示す情報を書き込むから、積算結果を踏まえて、より短時間に使用量又は残量を示す情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材がインクカートリッジに備えられた素子に対して前記情報を書き込む際に、該インクカートリッジについての、前記積算結果たる積算値をリセットすることとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材がインクカートリッジに備えられた素子に対して前記情報を書き込む際に、該インクカートリッジについての、前記積算値をリセットするから、該書き込み動作時以後に積算された結果を踏まえて、情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記カートリッジ装着部は移動可能であり、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部が該書き込み部材に対して所定の位置関係になった際に、前記素子に対して、非接触状態にて書き込み動作を実行することとしてもよい。
このような印刷装置においては、前記書き込み部材が常時前記書き込み動作を行うことは困難であり、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部が該書き込み部材に対して所定の位置関係になった際に、前記素子に対して、効率よく書き込み動作を実行する必要がある。ここで、前述したように、かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、前記積算手段の積算結果に基づいて選択されたインクカートリッジに備えられた素子に情報を書き込む構成となっている。したがって、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部が該書き込み部材に対して所定の位置関係になった際に、積算結果を踏まえて短時間に情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、インクカートリッジ毎に閾値が設けられており、あるインクカートリッジについての前記積算結果たる積算値が、そのインクカートリッジについて設けられた前記閾値に達した際に、該インクカートリッジが選択され、前記書き込み部材は、この選択されたインクカートリッジに備えられた素子に、前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、あるインクカートリッジについての積算値が閾値に達しない限り、該インクカートリッジに備えられた素子に対して使用量等を示す情報は書き込まれず、あるインクカートリッジについての積算値が閾値に達した場合に限って、該インクカートリッジに備えられた素子に対して使用量等を示す情報が書き込まれるから、素子への情報書き込みを必要最小限におさえることが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、インクカートリッジ毎の前記閾値は、該インクカートリッジに収容可能なインクの容量に応じて設定されることとしてもよい。
収容可能なインクの容量が小さいインクカートリッジほど、インクの使用量等を細かく管理する必要がある。かかる印刷装置によれば、該インクカートリッジに収容可能なインクの容量に応じて、閾値が設定されるから、収容可能なインクの容量に応じて使用量等を管理することが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、インクを吐出する吐出ヘッドによる双方向の印刷が可能であり、前記吐出ヘッドが前記書き込み部材から離れる方向に移動しながらインクを吐出して印刷している際に、あるインクカートリッジについての前記積算結果たる積算値が、そのインクカートリッジについて設けられた前記閾値に達した場合において、前記吐出ヘッドが前記書き込み部材に近づく方向に移動しながらインクを吐出して印刷すべき、印刷データが存在する場合には、少なくとも、前記吐出ヘッドが前記書き込み部材に近づく方向に移動しながらインクを吐出して印刷を行った後に、前記書き込み部材が前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、双方向印刷をする際に、書き込み動作の実行に伴う無駄な時間の発生が抑制される。
さらに、かかる印刷装置において、前記カートリッジ装着部とともに移動しながらインクを吐出する吐出ヘッドを有し、前記吐出ヘッドから定期的にインクを吐出するフラッシング動作を実行し、前記書き込み部材は、前記フラッシング動作と関連付けて、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、定期的に行われるフラッシング動作と関連付けて、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に前記情報を書き込むから、効率よい情報書き込みが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、あるインクカートリッジについての前記積算結果たる積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、と関連付けて、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材は、あるインクカートリッジについての積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、と関連付けて、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に前記情報を書き込むから、積算値が閾値に達した後の早い時期に、前記書き込み部材が効率よく情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記カートリッジ装着部とともに移動しながらインクを吐出する吐出ヘッドを有し、前記吐出ヘッドから定期的にインクを吐出するフラッシング動作を実行し、前記吐出ヘッドの移動方向において、印刷領域側から順に、前記書き込み部材による書き込み位置、前記フラッシング動作の実行位置、が設けられており、あるインクカートリッジについての前記積算結果たる積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、のために、前記吐出ヘッドが前記フラッシング動作の実行位置に向かう途中において、前記書き込み部材は、前記吐出ヘッドとともに移動している前記素子が、前記書き込み位置を通過する際に、前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、フラッシング動作と関連付けられた情報の書き込みを効果的に実現することが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記素子には、複数の情報が書き込み可能であって、前記書き込み部材は、それら複数の情報のうち、前記使用量又は残量を示す情報のみを書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材は、複数の情報のうち、前記使用量又は残量を示す情報のみを書き込むから、書き込み部材が使用量等以外の情報も含めて書き込む場合よりも、短時間に情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、印刷速度の異なる複数の印刷モードを実行可能であって、それら複数の印刷モードのうち、少なくとも一つの印刷モードにおいては、前記書き込み部材は、あるインクカートリッジについての前記積算結果たる積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した場合であっても、その後に最初に実行されるフラッシング動作と関連付けられた前記書き込み動作を実行しないこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、例えば、印刷速度を優先したい印刷モード等の場合は、書き込み動作を実行しないことにより、印刷速度をあげることが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジに対して、一つ設けられていることとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材は、一度に一つの素子に対してしか情報を書き込めない。しかし、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、前記積算手段の積算結果に基づいて選択された一つのインクカートリッジに備えられた素子に情報を書き込むから、最も書き込みの必要性の高い素子に対する書き込みが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記カートリッジ装着部とともに移動しながらインクを吐出する吐出ヘッドを有し、前記吐出ヘッドから定期的にインクを吐出するフラッシング動作を実行し、前記吐出ヘッドが前記フラッシング動作の実行位置に位置した状態において、前記書き込み部材が、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジのうちのいずれかのインクカートリッジに設けられた素子に対向することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、フラッシング位置と情報の書き込み位置とが近接しているから、素子への情報の書き込みと、フラッシング動作をより効果的に関連付けることが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジに対して、それぞれ一つずつ設けられており、前記カートリッジ装着部とともに移動しながらインクを吐出する吐出ヘッドを有し、前記吐出ヘッドから定期的にインクを吐出するフラッシング動作を実行し、前記吐出ヘッドが前記フラッシング動作の実行位置に位置した状態において、前記書き込み部材が、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジに設けられた素子に、それぞれ対向することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記書き込み部材が、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジに対して、それぞれ一つずつ設けられている場合において、素子への情報の書き込みと、フラッシング動作をより効果的に関連付けることが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジに対して、それぞれ一つずつ設けられており、前記情報の書き込みを行う書き込み部材は、印刷領域に最も近い位置に配置された書き込み部材であることとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、前記情報の書き込みを行う書き込み部材は、印刷領域に最も近い位置に配置された書き込み部材であるから、印刷中であっても、効率的な情報の書き込みが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、前記素子から情報を読み込み可能であり、前記書き込み部材は、前記カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着された際に、該インクカートリッジに備えられた素子に記憶されたID情報を読み取り、該ID情報を読み取った後は、前記書き込み部材は、再度の読み取り動作を実行することなく、読み取ったID情報によって各素子を識別しつつ、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジに備えられた各素子に前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、書き込み部材は、再度の読み取り動作を実行することなく、読み取ったID情報によって各素子を識別しつつ、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジに備えられた各素子に前記情報を書き込むから、誤って他の素子に情報を書き込んでしまうことを防止しつつ、迅速に情報を書き込むことが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記インクカートリッジに設けられた素子には、該インクカートリッジに前記使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するためのタイミング情報が記憶されており、このタイミング情報に基づいて前記閾値を設定することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジに応じて閾値を設定することが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記タイミング情報は、該インクカートリッジに収容可能なインクの容量を示す容量情報であり、この容量情報に基づいて前記閾値を設定することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジの容量に応じて閾値を設定することが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記タイミング情報は、該インクカートリッジに収容可能なインクの容量に応じた閾値を示す閾値情報であり、この閾値情報に基づいて前記閾値を設定することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジの閾値情報に応じて、印刷装置が閾値を設定することが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記カートリッジ装着部とともに移動しながらインクを吐出する吐出ヘッドを有し、前記吐出ヘッドから定期的にインクを吐出するフラッシング動作を実行し、前記書き込み部材は、前記フラッシング動作と関連付けて、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に前記情報を書き込むこととしてもよい。
かかる印刷装置によれば、定期的に行われるフラッシング動作と関連付けて、前記選択されたインクカートリッジに備えられた素子に前記情報を書き込むから、効率よい情報書き込みが可能となる。
さらに、かかる印刷装置において、前記書き込み部材は、前記フラッシング動作を行う際に、前記積算手段の積算結果に基づいて、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、一つのインクカートリッジを選択することとしてもよい。
かかる印刷装置によれば、フラッシング動作を行う時点の積算結果に基づいて、前記カートリッジ装着部に装着された複数のインクカートリッジのうち、一つのインクカートリッジを選択するから、もっとも必要性の高いインクカートリッジの素子に対して書き込み動作を実行することが可能となる。
また、印刷装置本体に着脱可能であってインクを収容可能なインクカートリッジにおいて、情報を書き込み可能な素子を有し、該素子は、前記インクカートリッジに収容されているインクの使用量又は残量を示す情報、及び、該インクカートリッジに前記使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報、が書き込み可能であることを特徴とするインクカートリッジ。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、前記素子は、非接触状態にて情報を書き込み可能であることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、前記書き込みタイミングを決定するための情報は、前記インクカートリッジに収容可能なインクの容量を示す容量情報であることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、複数のインクカートリッジが着脱可能なカートリッジ装着部と、吐出されるインクの吐出量を、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジ毎に積算するための積算手段と、前記素子に情報を書き込むための書き込み部材とを有する印刷装置本体の、前記カートリッジ装着部に、前記インクカートリッジが装着された際に、前記容量情報が前記印刷装置本体に読み込まれて、該容量情報に基づいた閾値が設定され、前記インクカートリッジについての、前記積算手段の積算結果たる積算値が、前記閾値に達した際に、前記素子は、前記書き込み部材によって、前記インクの使用量又は残量を示す情報が書き込まれることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、書き込みタイミングを決定するための情報は、前記インクカートリッジに収容可能なインクの容量に応じた閾値を示す閾値情報であることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、複数のインクカートリッジが着脱可能なカートリッジ装着部と、被印刷体に向けて吐出されるインクの吐出量を、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジ毎に積算するための積算手段と、前記素子に情報を書き込むための書き込み部材とを有する印刷装置本体の、前記カートリッジ装着部に、前記インクカートリッジが装着された際に、前記閾値情報が前記印刷装置本体に読み込まれて、該閾値情報に基づいた閾値が設定され、前記インクカートリッジについての、前記積算手段の積算結果たる積算値が、前記閾値に達した際に、前記素子は、前記書き込み部材によって、前記インクの使用量又は残量を示す情報が書き込まれることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、前記素子には、該素子に固有のID情報が記憶されていることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、該ID情報によって該素子が識別された上で、該素子に情報が書き込まれることとしてもよい。
さらに、かかるインクカートリッジにおいて、複数のインクカートリッジが着脱可能なカートリッジ装着部と、被印刷体に向けて吐出されるインクの吐出量を、前記カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジ毎に積算するための積算手段と、前記素子に情報を書き込むための書き込み部材とを有する印刷装置本体の、前記カートリッジ装着部に、前記インクカートリッジが装着された際に、該インクユニットに備えられた素子に記憶されたID情報が読み取られ、該ID情報が読み取られた後は、前記インクカートリッジに備えられた素子は、該ID情報によって識別された上で、前記書き込み部材によって、情報が書き込まれることとしてもよい。
= 第1の実施の形態 =
=== 印刷装置の概要 ===
まず、印刷装置としてインクジェットプリンタを例にとって、図1〜図3を参照しつつ、その概要について説明する。図1は、インクジェットプリンタの概略斜視図である。図2は、インクジェットプリンタの概略正面図である。図3は、インクジェットプリンタの回路構成を示すブロック図である。
図1に示すように、印刷装置としてのインクジェットプリンタは、印刷装置本体たるプリンタ本体11と、その幅方向(図中の左右方向)に往復動可能なキャリッジ12とを備えている。プリンタ本体11は、印刷用紙Pを搬送する紙送り機構と、キャリッジ12を動作させるためのキャリッジ機構を備えている。紙送り機構は、紙送りモータ15、紙送りローラ16及び図示しない他のローラを備えている。この紙送りモータ15の駆動により紙送りローラ16や図示しない他のローラが回転し、印刷用紙Pの搬送が行われる。
キャリッジ機構は、紙送りローラ16の軸と平行に架設されたガイド部材20、キャリッジモータ21、一対のプーリ22間に張設されたタイミングベルト23を備えている。このキャリッジ機構により、タイミングベルト23に係合したキャリッジ12は、ガイド部材20に沿って印刷用紙Pの幅方向に移動可能となっている。
キャリッジ12には、印刷用紙Pにインク滴を吐出する吐出ヘッドとしての記録ヘッド30が設けられているとともに、例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエロのそれぞれの色のインクが収容されたインクカートリッジ(以下、「カートリッジ」ともいう。)31、32、33、34が取り外し可能な状態で装着されている。キャリッジ12は、複数のカートリッジが着脱可能なカートリッジ装着部80(図4(b)参照)を有している。記録ヘッド30は、カートリッジ装着部80に装着されたカートリッジ31〜34から、インクの供給を受ける。
更に、各カートリッジ31〜34には、それぞれの前面側に、アンテナ36、37、38、39、及び、各種の情報を書き込み可能な素子41、42、43、44を有する記憶ユニットが設けられている。素子41、42、43、44は、各種の情報が書き込み可能であって、かつ、書き込まれた情報を記憶可能なものである。また、これらの素子41、42、43、44は、不揮発性メモリ(EEPROM)を有しており、アンテナ36、37、38、39にそれぞれ接続している。これらのカートリッジ31〜34は、カートリッジ装着部80に対して着脱可能であり、インクが消費された場合、有効期限が過ぎた場合、他の色のカートリッジに変更したい場合等に、ユーザによって適宜交換される。なお、カートリッジ31〜34及び記憶ユニットの詳細については後述する。
記録ヘッド30は、フラットケーブル13を介して、後述する制御部50に接続され、吐出されるインク滴の大きさなどが制御される。
紙送りモータ15及び紙送りローラ16の間には、プラテン17が配置されている。このプラテン17の一端部(ここは非印刷領域になる)には、貫通孔17aが設けられている。この貫通孔17aの下方には、インク吸収材18が配置されており、このインク吸収材18は、プラテン17と平行に配置されている廃インクタンク19内に納められている。更に、プラテン17の他端部の側方には、公知のワイピング部材24と公知のキャッピング手段25とが設けられている。
このキャッピング手段25は、吸引ポンプ26を介してインク吸収材18に接続されている。
図2に示すように、上記プラテン17の貫通孔17aの上方には、送受信部45が設けられており、その送受信部45の中央には、書き込み部材としてのアンテナ60が設けられている。このアンテナ60は、記録ヘッド30のインク吐出口(図示しない)がプラテン17の貫通孔17aの上方の位置(以下、フラッシング位置という)に位置したときに、カートリッジ32のアンテナ37に対向し、アンテナ37と非接触状態にて送受信を行うように構成されている。また、この送受信部45のアンテナ60は、図示しないケーブル等を介して、プリンタ本体11の送受信回路501を介して制御部50に接続されている。
図3に示すように、プリンタ本体11は、プリンタ全体の動作を制御する制御部50としての中央処理装置(CPU)を備えている。この制御部50には、プログラムを格納したリードオンリメモリ(ROM)51及びワーキングデータ等を一時的に格納するランダムアクセスメモリ(RAM)52が接続されている。
制御部50には、印字機構を含むキャリッジ機構や紙送り機構等が接続され、この各機構に対して作動信号が出力されるようになっている。また、制御部50は、記録ヘッド30から吐出されるインクの吐出量を、カートリッジ毎に積算し、その積算結果をRAM52に保存する。
また、制御部50には、アンテナ60が送受信回路501を介して接続され、このアンテナ60及びアンテナ36〜39を介して、各不揮発性メモリ41〜44に対してインクの属性データ等の入出力が行われる。
更に、前記プリンタ本体11内の制御部50には、インターフェース54を介して外部のコンピュータ55が接続され、このコンピュータ55との間で印刷データ等の受け渡しが行われる。また、コンピュータ55にはディスプレイ装置等の表示部56や種々のデータを入力するキーボード57などが接続されている。
===インクカートリッジおよびカートリッジ搭載部の構成===
このように構成されたインクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジ31〜34の基本的な構造は共通する。そこで、図4および図5を参照して、黒用のインクカートリッジ31を例にとって、インクカートリッジの構造、およびこのカートリッジをプリンタ本体11に装着するための構造を説明する。
図4は、インクカートリッジおよびプリンタ本体11のカートリッジ装着部の概略構造を示す斜視図である。図5は、このインクカートリッジの内部構造、キャリッジ40上のカートリッジ装着部の内部構造、およびカートリッジ装着部にカートリッジを装着する様子を示す断面図である。
図4において、インクカートリッジ31は、内部にインクを収容するインク収容部311を構成する合成樹脂製のカートリッジ本体312と、このカートリッジ本体312の前面枠部313に設けられた記憶ユニットとを備えている。この記憶ユニットは、インクカートリッジ31をプリンタ本体11のカートリッジ装着部80に装着したときに、プリンタ本体11との間で各種のデータを授受する。
これに対して、カートリッジ装着部80には、インクカートリッジ31を装着する空間の底部87に針81が上向きに配置されている。この針81の周りは、インクカートリッジ31に形成されているインク供給部314を受け入れる凹部83になっている。この凹部83の内壁には、カートリッジガイド82が3箇所に形成されている。
次に、カートリッジ装着部80に対してインクカートリッジ31を装着する手順を説明する。まず、カートリッジ装着部80にインクカートリッジ31を配置する。カートリッジ装着部80の後壁部88には、支持軸91を介して固定レバー92が取り付けられており、この固定レバー92をインクカートリッジ31に被さるように倒すと、インクカートリッジ31が下方に押されてインク供給部314が凹部83に嵌るとともに、針81がインク供給部314に突き刺さってインクの供給が可能になる。
さらに、固定レバー92を倒すと、固定レバー92の先端に形成した係止部93がカートリッジ装着部80に形成した係合具89に係合し、インクカートリッジ31が固定される。
インクカートリッジ31の構造は、基本的には他のインクカートリッジでも同様であるため、その説明を省略する。
===記憶ユニットの構成===
次に、図6を参照して記憶ユニットの構成について、データの送受信構成を含めて説明する。図6(a)は、記憶ユニットの構成を示す平面透視図である。図6(b)は記憶ユニット及び送受信部45の内部構成を説明するためのブロック図である。
記憶ユニットと送受信部45のアンテナ60とが所定の位置関係、例えば、相互距離が10mm以内、にあれば、互いに非接触状態にて、情報を送受信可能となっている。この記憶ユニットは、全体としてごく小型かつ薄型で、片面に粘着性を持たせてシールとして対象物に貼着させることもできる。メモリタグなどと呼ばれ、多種市販されているものである。なお、インクカートリッジ31以外のインクカートリッジの記憶ユニットも同様の構成であるので説明は省略する。
記憶ユニットは、素子41としての非接触ICチップと、金属皮膜をエッチングして形成された共振用コンデンサ71、及び、アンテナ36としての平面状コイルとがプラスチックフィルム上に実装され、透明なカバーシートにより被覆されている。
送受信部45は、アンテナ60としてのコイルと、プリンタ本体11の制御部(CPU)50に接続される送受信回路501とを有しており、プリンタ本体11の電源ユニットから、電力の供給を受ける。
記憶ユニットの素子41は、整流器411、信号解析部RF(Radio Frequency)413、制御部415、メモリセル417を有している。メモリセル417は、NAND型フラッシュROMなど電気的に読み書き可能な不揮発性のメモリであり、書き込まれた情報を記憶しておくこと、及び、記憶した情報を外部から読み取ることが可能なものである。
記憶ユニットのアンテナ36と、送受信部45のアンテナ60とは、互いに通信し合い、メモリセル417に保存されたID情報などの読み取りやメモリセル417への書き込みを行う。また、送受信部45の送受信回路501で発生された高周波信号は、アンテナ60を介して高周波磁界として誘起される。この高周波磁界は、記憶ユニットのアンテナ36を介して吸収され、整流器411で整流されてICチップ41内の各回路を駆動する直流電力源となる。
素子41のメモリセル417には、素子のシリアル番号など、記憶素子ごとに固有の情報、すなわちID情報が記憶されている。このID情報データは、記憶素子の工場製造時において、書き込み処理されることとすればよい。このID情報をプリンタ10本体側の送受信部45で読み取ることによって、個々の素子41、42、43、44を識別することが可能になる。
また、メモリセル417には、インクカートリッジに収容されているインクの使用量又は残量を示す情報を書き込むことができる。かかる情報をプリンタ本体11側で読み取り、残量が僅かになったときにユーザに対して警告を出すことなども可能である。
また、メモリセル417には、インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報を書き込むことも可能である。インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報として、本実施の形態では、素子41が取り付けられるインクカートリッジ31に収容可能なインクの容量情報を用いる。これにより、プリンタ本体11は、素子41から容量情報を読み込み、例えば、容量情報の1%を閾値に設定し、インクカートリッジ31のインクの吐出量の積算値がこの閾値に達した際に、使用量又は残量を示す情報を素子41に書き込むよう構成することが可能となる。
また、インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報として、素子41が取り付けられるインクカートリッジ31に収容可能なインクの容量に応じた閾値を示す閾値情報を用いてもよい。閾値情報は、例えば、インクの容量の1%等とすればよい。この場合には、プリンタ本体11は、素子41からこの閾値情報を読み込み、インクカートリッジ31のインクの吐出量の積算値が、この閾値に達した際に、使用量又は残量を示す情報を素子41に書き込むよう構成することが可能となる。
また、素子41のメモリセル417には、このような情報以外に、カートリッジを識別するための色データや、当該素子41が添付されるインクカートリッジの製造情報や、有効期限に関する情報などが含まれていてもよい。これらの情報をプリンタ本体11側で読み取り、現在日時との比較処理などを実行することによって、インクカートリッジの有効期限終了が近づいたときに、ユーザに対して警告を出すことなども可能である。
===インクジェットプリンタの動作===
次に、上記のプリンタの動作について、図7〜図9を参照しつつ説明する。
インクカートリッジ31〜34がキャリッジ12にセットされると、まずキャリッジ12は、フラッシング位置に向けて移動させられる。そして、カートリッジ31〜34に設けられた素子41〜44から、アンテナ36〜39及び送受信部45のアンテナ60を介して、各素子に記憶されたID情報がプリンタ本体11に読み取られる。まず、このID情報の読み取り処理について、図7を参照して説明する。
<<< ID情報読み取り処理 >>>
図7は、送受信部45が、素子41〜44に記憶されたID情報を読み取る際の、キャリッジ12(及びインクカートリッジ31〜34)の動作シーケンスを示す図である。
本実施形態の送受信部45に設けられたアンテナ60は、インクカートリッジ31〜34(及びそれぞれに設けられた素子41〜44)の素子配設面ほぼ2つ分に対向する大きさであり、アンテナ60が、ある素子とそれに隣接する素子とのちょうど中央に位置するようにキャリッジ12を停止させた場合は、それら両方の素子とデータ送受信することが可能である。送受信部45は、図の向かって左端、すなわち素子41から右端の素子44に向かって、順次ID情報の読み取りや書き込み動作を行う。
まず、送受信部45がいずれの素子41〜44にもアクセスしていない非アクセス状態(s100)では、キャリッジ12は、送受信部45が設けられている左側非印刷領域よりも遠く右方に位置しており、いずれのインクカートリッジの素子にもアクセスすることはできない。
次に、インクカートリッジ31アクセス状態(s101)では、キャリッジ12が左側非印刷領域まで移動して、左端のインクカートリッジ31のみと送受信部45とがデータ送受信可能な位置に停止する。すなわち、送受信部45のアンテナ60の右端付近が、素子41の中央付近に対向するような位置であって、この位置では、送受信部45は、インクカートリッジ32の素子42とは遠すぎてデータ送受信することができないような位置である。この停止位置にて、まず素子41に記録されたID情報を読み取る。
次に、キャリッジ12をインクカートリッジ1つ分左方に移動した所にて停止させ、インクカートリッジ32の素子42のID情報読み取りを実行する(s102)。この停止位置では、素子41ともアクセス可能なので、データの混信を防ぐために、素子42に対して送受信部45から送信するID情報読み取りコマンドに、既に読み取った素子41のID情報を随伴させる。この素子41のID情報を用いて、素子41及び42の側で識別を行うことにより、間違いなく素子42からのID情報を読み取ることができる。
以降同様に、インクカートリッジ33、34の素子43、44の読み取り動作を順次行う(s103、s104)。素子44のID情報を読み取った(s104)後で、キャリッジ12を右側非印刷領域などの位置に戻し、本ID情報読み取り処理を終了する。
以上で各素子41〜44のID情報を全て取得したので、プリンタ本体11側では、その配列を把握することができる。すなわち、最も左側には、素子41から読み取ったID情報に相当するインクカートリッジ31が配置されており、その右側に隣接する位置には素子42から読み取ったID情報に相当するインクカートリッジ32が配置されているといった様に、全インクカートリッジ31〜34のキャリッジ12内における配列順番が記憶されたことになる。
<<< ID情報以外の情報の読み取り処理 >>>
次に、上記各ステップで把握されたID情報とインクカートリッジ31〜34の配列順番との関係に関する情報を利用することによって、素子41〜44に記録されているID情報以外の情報を読み取る動作について説明する。図8は、素子41〜44に記録されたID情報以外の情報を読み取る際の、キャリッジ12(及びインクカートリッジ31〜34)の動作シーケンスを示す図である。
まず、送受信部45がいずれの素子41〜44にもアクセスしていない非アクセス状態(s200)では、キャリッジ12は、送受信部45が設けられている左側非印刷領域よりも遠く右方に位置しており、いずれのインクカートリッジ31〜34の素子41〜44ともアクセスすることはできない。
次に、インクカートリッジ31及び32へのアクセス状態(s201)では、キャリッジ12が左側非印刷領域まで移動し、左端のインクカートリッジ31とそれに隣接するインクカートリッジ32とに対して、送受信部45がデータ送受信可能な位置に停止する。すなわち、送受信部45のアンテナ60の中央付近が、素子41と素子42の間付近に対向するような位置であって、この位置では、送受信部45は、インクカートリッジ31及び32の両方の素子41、42とデータ送受信することが可能である。
この停止位置にて、素子41及び42に対し、それぞれデータ読み取りコマンドを送信する。その際、素子41に対しては、既に読み取られた素子41のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子41は、随伴されたID情報が確かに素子41自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報を送受信部45に送り返す。素子42に対する読み取り処理も同様に行われる。
次に、キャリッジ12をインクカートリッジ2つ分左方に移動した所にて停止させ、インクカートリッジ33及び34の素子43、44に対し、データ読み取りを実行する(s202)。この停止位置では、上記素子41、42に対する読み取り処理と同様に、素子43、44のID情報を用いてそれぞれの素子43、44を確実に識別しつつ、それぞれのID情報以外の情報を読み取る。
このように、一度に2つの素子に対してアクセスできる位置にキャリッジ12を停止させつつ、ID情報以外の情報を読み取ることによって、キャリッジ12の移動・位置決め動作が2回で済む。素子1つ分ずつ移動・位置決めしつつ素子に記憶された情報を1つずつ読み取ることも可能であるが、本実施形態はそれよりも少ない移動・位置決め動作で済むので、読み取り処理全体にかかる時間を短縮することができ、より好ましい。
以上の処理によって、インクカートリッジ毎の、カートリッジ装着部80に装着された時点での使用量(以下、「初期使用量」ともいう。)、インク色情報、有効期限情報等がプリンタ本体11に読み取られ、RAM52等に記憶される。
以上の処理が終わると、キャリッジ12は、キャッピング手段25が設けられている位置に移動して、キャッピングされた状態で待機される。
<<< 印刷及び使用量・残量書き込み処理 >>>
その後、画像や文字を印刷用紙Pに印刷するために、その画像や文字のデータが、コンピュータ55からインターフェース54を介してプリンタ本体11に送信される。すると、まず、プリンタ本体11の制御部50は、紙送り機構に信号を与えて、印刷用紙Pの送りを開始させる。次に、制御部50は、キャリッジ機構に信号を与えて、キャリッジ12を移動させながら、その記録ヘッド30からその画像や文字に応じたインク滴を吐出させる。このとき、同時に、制御部50は、各カートリッジのインク滴の量及びその吐出させた回数をRAM52に記憶させる。これにより、キャリッジ12のカートリッジ装着部80に装着されたインクカートリッジ毎に、被印刷体たる印刷用紙Pに向けて吐出されるインクの吐出量が積算される。
制御部50は、キャリッジ12がガイド部材20に沿って所定回数往復した後、キャリッジ12を、左側非印刷領域に位置するフラッシング位置まで移動させ、そこで、キャリッジ機構に信号を与えて、記録ヘッド30からインクを所定量吐出させ、いわゆるフラッシング動作を行わせる。このフラッシング動作は、記録ヘッド30が有するインク吐出ノズルの目詰まり等を防止ずること等を目的としてなされる動作である。
同時に、制御部50は、RAM52のデータから最もインク使用量が多いカートリッジを選択する。このときまでに、各カートリッジ31〜34に収容されているインクの使用量、すなわち、インク吐出量の積算結果たる積算値が、例えば図9に示すようにそれぞれ54、81、32、13(ピコリットル)であった場合には、最も使用量の多いカートリッジ32が選択される。
そして、アンテナ37とアンテナ60とが信号を送受信可能な位置関係にない場合には、制御部50は、キャリッジ12をガイド部材20に沿って移動させ、アンテナ60、アンテナ37を介して、カートリッジ32の素子(不揮発性メモリ)42に、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値を、使用量を示す情報として書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。このとき、制御部50は、図9において「1回目のフラッシング後」として示されているように、RAM52に記憶されている、カートリッジ32についての使用量のデータをリセットする。すなわち、カートリッジ32についての積算値をリセットする。
このような動作を終えると、制御部50は、再びキャリッジ機構に信号を与えて、印刷の続きを行う。そして、この印刷中におけるインクの使用量は、RAM52に蓄積される。
なお、このインクの使用量には、前回のフラッシング動作で使用したインクの量も含まれている。そして、キャリッジ12が所定回数往復した後、再びキャリッジ12をフラッシング位置まで移動させ、フラッシング動作を行わせる。例えば、図9に「2回目のフラッシング前」として記載しているように、このときまでに各インクの使用量が112、78、59、41となっている場合には、最も使用量が多かったカートリッジ31を制御部50が選択する。
そして、アンテナ36とアンテナ60とが信号を送受信可能な位置関係にない場合には、制御部50は、キャリッジ12をガイド部材20に沿って移動させ、アンテナ60、36を介して素子(不揮発性メモリ)41に、この時のインク使用量に初期使用量を加算した値を、使用量を示す情報として書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、RAM52に記憶されている、カートリッジ31についての使用量をリセットする。なお、1回目のフラッシング動作から2回目のフラッシング動作前までに使用した各カートリッジ31〜34のインク量は、58、78、27、28(ピコリットル)である。
以上のように、インクジェットプリンタは、カートリッジ装着部80とともに移動しながらインクを吐出する記録ヘッド30を有し、記録ヘッド30から定期的にインクを吐出するフラッシング動作を実行し、書き込み部材たるアンテナ60は、フラッシング動作と関連付けて、選択されたカートリッジに備えられた素子に使用量を示す情報を書き込む。詳しくは、印刷中に、制御部50は、各カートリッジ31〜34に収容されたインクの使用量を積算し、RAM52に格納する。そして、制御部50は、印刷中のキャリッジが所定回数往復する度に、フラッシング動作を行わせ、最もインク消費量が多いと判断したカートリッジ31〜34の素子41〜44にそのインクの使用量を示す情報を書き込む。
そして、その書き込んだ素子41〜44のそれぞれが設けられているカートリッジ31〜34の、RAM52に記憶されているインクの使用量をリセットする。
なお、印刷が複数枚にわたるときには、各頁の印刷が終了する毎にも、キャリッジ12をフラッシング位置に移動させて、各インクカートリッジのインクの使用量の多い順で、素子41〜44に情報を書き込むとともに、RAM52に記憶されているインクの使用量をリセットする。
また、各素子41〜44に対して書き込みを行う際には、再度のID読み取り動作を実行することなく、素子に向けてデータ書き込みコマンドが送信される。その際、各素子41〜44に対しては、既に読み取られた各素子のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子は、随伴されたID情報が確かに素子自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報を送受信部45に送り返す。
書き込み部材たるアンテナ60は、読み取ったID情報によって各素子を識別しつつ、カートリッジ装着部80に装着されたインクカートリッジに備えられた各素子に情報を書き込むから、誤って他の素子に情報を書き込んでしまうことを防止しつつ、迅速に書き込みを実行することが可能となる。
また、素子への書き込みは、キャリッジ12が停止した状態で行ってもよいし、キャリッジ12が移動している状態で行ってもよい。
また、短時間に情報を書き込むという観点から、素子に使用量を示す情報を書き込む際には、複数の情報のうち、使用量又は残量を示す情報のみを書き込むことが好ましい。
= 第2の実施の形態 =
次に第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、使用量又は残量書き込み処理が第1の実施の形態と異なる。他の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、異なる点を中心に説明する。
第1の実施の形態では、キャリッジ12がガイド部材20に沿って所定回数往復した後、キャリッジ12をフラッシング位置まで移動させ、いわゆるフラッシング動作を行わせる。このフラッシング動作を実行する時に、制御部50は、RAM52のデータから最もインク使用量が多いカートリッジを選択する。
第2の実施の形態では、印刷を開始した後、制御部50は、RAM52のデータが閾値に達した際に、カートリッジを選択する。以下、詳しく説明する。
本実施の形態においても、第1の実施の形態において説明した、「ID情報以外の情報読み取り処理」が行われ、その際、各素子41〜44に記憶された、ID情報以外の情報である、インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報としての、各素子が取り付けられるインクカートリッジに収容可能なインクの容量情報が、プリンタ本体11に読み取られる。制御部50は、インクカートリッジ毎に、容量情報の1%の値を閾値として、RAM52に記憶する。本実施の形態では、インクカートリッジ32、33、及び、34の容量情報は等しく、ブラックインクを収容したインクカートリッジ31の容量情報は、インクカートリッジ32、33、及び、34の容量情報よりも大きいので、図10に示すように、インクカートリッジ32、33、及び、34については、閾値が50(ピコリットル)と設定され、インクカートリッジ31については、閾値が70(ピコリットル)と設定される。
<<< 本実施の形態における印刷及び使用量・残量書き込み処理 >>>
画像や文字を印刷用紙Pに印刷するために、その画像や文字のデータが、コンピュータ55からインターフェース54を介してプリンタ本体11に送信される。すると、まず、プリンタ本体11の制御部50は、紙送り機構に信号を与えて、印刷用紙Pの送りを開始させる。次に、制御部50は、キャリッジ機構に信号を与えて、キャリッジ12を移動させながら、その記録ヘッド30からその画像や文字に応じたインク滴を吐出させる。このとき、同時に、制御部50は、各カートリッジのインク滴の量及びその吐出させた回数をRAM52に記憶させる。すなわち、キャリッジ12のカートリッジ装着部80に装着されたインクカートリッジ毎に、被印刷体たる印刷用紙Pに向けて吐出されるインクの吐出量が積算される。
積算結果たる積算値は、インクカートリッジ毎に、閾値に達したか否かが判定される。制御部50は、いずれかのインクカートリッジの積算値が閾値に達したと判定すると、そのカートリッジを選択する。
例えば、図10に示すように、インクカートリッジ31の積算値が、該インクカートリッジ31の閾値である70(ピコリットル)に達した場合には、該インクカートリッジ31を選択する。なお、インクカートリッジ31が選択された時点における各カートリッジ31〜34に収容されているインクの使用量、すなわち、インク吐出量の積算結果たる積算値は、図10に示すようにそれぞれ70、38、21、15(ピコリットル)である。
そして、制御部50は、キャリッジ12を送受信部のアンテナ60に向けて移動させ、アンテナ36とアンテナ60とが信号を送受信可能な位置関係とした上で、アンテナ60、アンテナ36を介して、カートリッジ31の素子(不揮発性メモリ)41に、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値を、使用量を示す情報として書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、制御部50は、図10において「1回目の書き込み後」として示されているように、RAM52に記憶されている、カートリッジ31についての使用量のデータをリセットする。すなわち、カートリッジ31についての積算値をリセットする。
このような動作を終えると、制御部50は、再びキャリッジ機構に信号を与えて、印刷の続きを行う。そして、この印刷中における被印刷体たる印刷用紙Pに向けて吐出されるインクの吐出量は、インクカートリッジ毎に積算される。
積算結果たる積算値は、インクカートリッジ毎に、閾値に達したか否かが判定される。制御部50は、いずれかのインクカートリッジの積算値が閾値に達したと判定すると、そのカートリッジを選択する。
例えば、図10に「2回目の閾値到達時」として記載しているように、カートリッジ32の積算値が、該カートリッジ32ついての閾値である「50(ピコリットル)」に達した場合には、カートリッジ32を制御部50が選択する。
そして、制御部50は、キャリッジ12を送受信部のアンテナ60に向けて移動させ、アンテナ37とアンテナ60とが信号を送受信可能な位置関係とした上で、アンテナ60、37を介して素子(不揮発性メモリ)42に、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値を、使用量を示す情報として書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、RAM52における、カートリッジ32についての使用量をリセットする。なお、1回目の閾値到達時から2回目閾値到達時までに使用した各カートリッジ31〜34のインク量は、56、12、23、13(ピコリットル)である。
以上のように、印刷中に、制御部50は、各カートリッジ31〜34に収容されたインクの使用量を積算し、RAM52に格納する。そして、制御部50は、あるカートリッジについての積算値が、そのカートリッジについて設けられた閾値に達した際に、該インクカートリッジを選択し、そのカートリッジの素子にそのインクの使用量を示す情報を書き込む。そして、その書き込んだ素子のそれぞれが設けられているカートリッジの、RAM52に記憶されているインクの使用量をリセットする。
なお、第1の実施の形態と同様に、各素子41〜44に対して書き込みを行う際には、素子に向けてデータ書き込みコマンドが送信される。その際、各素子41〜44に対しては、既に読み取られた各素子のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子は、随伴されたID情報が確かに素子自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報を送受信部45に送り返す。また、素子への書き込みは、キャリッジ12が停止した状態で行ってもよいし、キャリッジ12が移動している状態で行ってもよい。
また、インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報としての、各素子が取り付けられるインクカートリッジに収容可能なインクの容量に応じた閾値を示す閾値情報を、各素子に記憶させておいてもよい。この場合、「ID情報以外の情報読み取り処理」の際、各素子41〜44に記憶された、閾値情報が、プリンタ本体11に読み取られる。制御部50は、インクカートリッジ毎に、読み取った閾値情報そのもの、又は、その閾値情報に応じた値を閾値として、RAM52に記憶すればよい。
また、記録ヘッド30による双方向の印刷が可能であり、記録ヘッド30が書き込み部材から離れる方向(右側被印刷領域に向かう方向)に移動しながらインクを吐出して印刷している際に、あるインクカートリッジについての積算値が、そのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した場合において、さらに、記録ヘッド30が左印刷領域に向かう方向に移動しながらインクを吐出して印刷すべき印刷データが存在する場合には、少なくとも、記録ヘッド30が左印刷領域に向かう方向に移動しながらインクを吐出して印刷を行った後に、書き込み部材が素子に使用量を示す情報を書き込むこととしてもよい。このようにすれば、双方向印刷をする際に、書き込み動作の実行に伴う無駄な時間の発生が抑制される。
<<< フラッシング動作との関係付け >>>
第2の実施の形態に関する上記の説明において、制御部50は、いずれかのインクカートリッジの積算値が閾値に達したと判定すると、そのカートリッジを選択し、直ちに、キャリッジ12を送受信部のアンテナ60に向けて移動させ、アンテナを介して、素子に使用量を示す情報を書き込むものである。
この素子への使用量を示す情報の書き込み動作は、定期的に(一定時間毎、又は、キャリッジの所定移動回数毎)行われるフラッシング動作と関連付けて行うことが好ましい。なお、フラッシング位置は、図2において、右側非印刷領域及び左側非印刷領域に設けられている。フラッシング動作を行う際には、キャリッジ12が被印刷領域に移動する必要があるが、素子への使用量を示す情報の書き込み動作をフラッシング動作と関連付けて行うことにより、書き込み動作のためだけにキャリッジ12を非印刷領域に移動させる必要が無くなる。
例えば、書き込み部材は、あるインクカートリッジについての積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、と関連付けて、この選択されたインクカートリッジに備えられた素子に使用量を示す情報を書き込むとよい。
図2に示した構成においては、カートリッジ32の積算値が閾値に達したと判定されて、カートリッジ32が選択された場合には、その後に最初に実行されるフラッシング動作の際に、キャリッジ12を左側非印刷領域方向へ移動させ、フラッシング位置にて、フラッシングを行うとともにカートリッジ32に設けられた素子42に使用量を示す情報を書き込むとよい。
また、カートリッジ31の積算値が閾値に達したと判定されて、カートリッジ31が選択された場合には、その後に最初に実行されるフラッシング動作の際に、キャリッジ12を左側非印刷領域方向へ移動させ、キャリッジ12がフラッシング位置に至る途中において、カートリッジ31に設けられた素子41に使用量を示す情報を書き込み、その後、フラッシング位置にてフラッシングを行うとよい。
また、カートリッジ33(又は34)の積算値が閾値に達したと判定されて、カートリッジ33(又は34)が選択された場合には、その後に最初に実行されるフラッシング動作の際に、キャリッジ12を左側非印刷領域方向へ移動させ、フラッシング位置にてフラッシングを行い、その後、キャリッジ12をさらに左側非印刷領域方向へ移動させ、カートリッジ33(又は34)に設けられた素子43(又は44)に使用量を示す情報を書き込むとよい。
さらには、図2において、アンテナ60を含む送受信部45をより印刷領域側に配置して、印刷領域側から順に、全てのカートリッジ31〜34の素子41〜44に対する書き込み位置、フラッシング動作の実行位置、が設けられるように構成することも可能である。
このように構成した場合には、あるインクカートリッジについての積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、のために、記録ヘッド30がキャリッジ12とともにフラッシング動作の実行位置に向かう途中において、アンテナ60は、キャリッジ12とともに移動している素子が、アンテナ60を通過する際に、使用量を示す情報書き込むことが可能となる。
また、印刷速度の異なる複数の印刷モードを実行可能であって、それら複数の印刷モードのうち、少なくとも一つの印刷モードにおいては、書き込み部材は、あるインクカートリッジについての積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した場合であっても、その後に最初に実行されるフラッシング動作と関連付けられた書き込み動作を実行しないようにしてもよい。かかる印刷装置によれば、例えば、印刷速度を優先したい印刷モード等の場合は、書き込み動作を実行しないことにより、印刷速度をあげることが可能となる。
= 第3の実施の形態 =
次に第3の実施の形態について説明する。第1の実施の形態、及び、第2の実施の形態と、異なる点を中心に説明する。第1の実施の形態、及び、第2の実施の形態と同様の構成、処理については、同じ符号を付し、説明を省略又は簡略化して説明する。
=== 印刷装置の概要 ===
まず、印刷装置の概要について、図11〜図13を参照しつつ説明する。図11は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタの概略斜視図である。図12は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタの概略正面図である。図13は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタの回路構成を示すブロック図である。
図11、図12に示すように、上記プラテン17の貫通孔17aの上方には、送受信部45が設けられており、その送受信部45の中央には、書き込み部材としてのアンテナ46、47、48、49が設けられている。このアンテナ46〜49は、記録ヘッド30のインク吐出口(図示しない)がプラテン17の貫通孔17aの上方の位置(フラッシング位置)に位置したときに、各カートリッジ31〜34のアンテナ36〜39にそれぞれ対向し、アンテナ36〜39と非接触状態にて送受信を行うように構成されている。また、この送受信部45のアンテナ46〜49は、図示しないケーブル等を介して、プリンタ本体11の送受信回路502を介して制御部50に接続されている。
また、図13に示すように、制御部50には、アンテナ46〜49が送受信回路502を介してシリアルバスにて接続され、このアンテナ46〜49及びアンテナ36〜39を介して、不揮発性メモリを有する各素子41〜44に対してインクの属性データ等の入出力がシリアルに行われる。
=== インクジェットプリンタの動作 ===
次に、インクジェットプリンタの動作について説明する。
<<< ID情報読み取り処理 >>>
本実施の形態においても、まず、各素子に記憶されたID情報がプリンタ本体に読み取られる。
ID情報は、例えば、送受信部45に設けられたアンテナ46〜49のうち、最も印刷領域に近いアンテナ49を用いて行われる。第1の実施の形態において説明した処理において、第1の実施の形態におけるアンテナ60をアンテナ49と置き換えた処理が実行されることによって、各素子に記憶されたID情報がプリンタ本体11に読み取られる。
<<< ID情報以外の情報の読み取り処理 >>>
本実施の形態においては、送受信部45に設けられたアンテナ46、47、48、49を、それぞれ、各カートリッジ31、32、33、34に設けられた素子41、42、43、44に対向させた状態(図12の状態)にて、ID情報以外の情報の読み取り処理が実行される。
この状態にて、素子41に対し、アンテナ46からデータ読み取りコマンドを送信する。その際、素子41に対して、既に読み取られた素子41のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子41は、随伴されたID情報が確かに素子41自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報をアンテナ46を介して送受信部45に送り返す。
次に、かかる状態(図12の状態)のままで、素子42に対し、アンテナ47からデータ読み取りコマンドを送信する。その際、素子42に対して、既に読み取られた素子42のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子42は、随伴されたID情報が確かに素子42自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報をアンテナ47を介して送受信部45に送り返す。他の素子43、44に対しても同様の処理が実行される。
以上の処理によって、インク色情報、有効期限情報等がプリンタ本体11に読み取られ、RAM52等に記憶される。以上の処理が終わると、キャリッジ12は、キャッピング手段25が設けられている位置に移動して、キャッピングされた状態で待機される。
<<< 印刷及び使用量・残量書き込み処理 >>>
その後、画像や文字を印刷用紙Pに印刷するために、その画像や文字のデータが、コンピュータ55からインターフェース54を介してプリンタ本体11に送信される。すると、まず、プリンタ本体11の制御部50は、紙送り機構に信号を与えて、印刷用紙Pの送りを開始させる。次に、制御部50は、キャリッジ機構に信号を与えて、キャリッジ12を移動させながら、その記録ヘッド30からその画像や文字に応じたインク滴を吐出させる。このとき、同時に、制御部50は、各カートリッジのインク滴の量及びその吐出させた回数をRAM52に記憶させる。すなわち、キャリッジ12のカートリッジ装着部80に装着されたインクカートリッジ毎に、被印刷体たる印刷用紙Pに向けて吐出されるインクの吐出量が積算される。
制御部50は、キャリッジ12がガイド部材20に沿って所定回数往復した後、キャリッジ12を、左側非印刷領域に位置するフラッシング位置まで移動させ、そこで、キャリッジ機構に信号を与えて、記録ヘッド30からインクを所定量吐出させ、いわゆるフラッシング動作を行わせる。
同時に、制御部50は、RAM52のデータから最もインク使用量が多いカートリッジを選択する。
本実施の形態では、図12に示すように、フラッシング動作を実行する位置において、各カートリッジ31〜34に設けられた素子41〜44に対して、それぞれ、アンテナ46〜49を介して情報を書き込むことが可能となっている。
したがって、制御部50は、キャリッジ12をガイド部材20に沿って移動させることなく、選択されたカートリッジの素子に対して、インクの使用量を示す情報を書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、制御部50は、RAM52に記憶されている、選択されたカートリッジについての使用量のデータをリセットする。すなわち、選択されたカートリッジについての積算値をリセットする。
このような動作を終えると、制御部50は、再びキャリッジ機構に信号を与えて、印刷の続きを行う。そして、この印刷中におけるインクの使用量は、RAM52に蓄積される。
なお、このインクの使用量には、前回のフラッシング動作で使用したインクの量も含まれている。そして、キャリッジ12が所定回数往復した後、再びキャリッジ12をフラッシング位置まで移動させ、フラッシング動作を行わせる。同時に、制御部50は、このときまでに最も使用量が多かったカートリッジを選択する。
この場合にも、フラッシング動作を実行する位置において、各カートリッジ31〜34に設けられた素子41〜44に対して、それぞれ、アンテナ46〜49を介して情報を書き込むことが可能となっている。
したがって、制御部50は、キャリッジ12をガイド部材20に沿って移動させることなく、選択されたカートリッジの素子に対して、インクの使用量を示す情報を書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、制御部50は、RAM52に記憶されている、選択されたカートリッジについての使用量のデータをリセットする。すなわち、選択されたカートリッジについての積算値をリセットする。
以上のように、印刷中に、制御部50は、各カートリッジ31〜34に収容されたインクの使用量を積算し、RAM52に格納する。そして、制御部50は、印刷中のキャリッジが所定回数往復する度に、フラッシング動作を行わせ、最もインク消費量が多いと判断したカートリッジ31〜34の素子41〜44にそのインクの使用量を示す情報を書き込む。そして、その書き込んだ素子41〜44のそれぞれが設けられているカートリッジ31〜34の、RAM52に記憶されているインクの使用量をリセットする。
また、各素子41〜44に対して書き込みを行う際には、素子に向けてデータ書き込みコマンドが送信される。その際、各素子41〜44に対しては、既に読み取られた各素子のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子は、随伴されたID情報が確かに素子自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報を送受信部45に送り返す。
また、短時間に情報を書き込むという観点から、素子に使用量を示す情報を書き込む際には、複数の情報のうち、使用量又は残量を示す情報のみを書き込むことが好ましい。
= 第4の実施の形態 =
次に第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、使用量又は残量書き込み処理が第3の実施の形態と異なる。他の構成は、第3の実施の形態と同様であるので、異なる点を中心に説明する。
第3の実施の形態では、キャリッジ12がガイド部材20に沿って所定回数往復した後、キャリッジ12をフラッシング位置まで移動させ、いわゆるフラッシング動作を行わせる。このフラッシング動作を実行する時に、制御部50は、RAM52のデータから最もインク使用量が多いカートリッジを選択する。
第4の実施の形態では、印刷を開始した後、制御部50は、RAM52のデータが閾値に達した際に、カートリッジを選択する。以下、詳しく説明する。
本実施の形態においても、第3の実施の形態において説明した、「ID情報以外の情報読み取り処理」が行われ、その際、各素子41〜44に記憶された、ID情報以外の情報である、インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報としての、各素子が取り付けられるインクカートリッジに収容可能なインクの容量情報が、プリンタ本体11に読み取られる。制御部50は、インクカートリッジ毎に、容量情報の1%の値を閾値として、RAM52に記憶する。
<<< 本実施の形態における印刷及び使用量・残量書き込み処理 >>>
画像や文字を印刷用紙Pに印刷するために、その画像や文字のデータが、コンピュータ55からインターフェース54を介してプリンタ本体11に送信される。すると、まず、プリンタ本体11の制御部50は、紙送り機構に信号を与えて、印刷用紙Pの送りを開始させる。次に、制御部50は、キャリッジ機構に信号を与えて、キャリッジ12を移動させながら、その記録ヘッド30からその画像や文字に応じたインク滴を吐出させる。このとき、同時に、制御部50は、各カートリッジのインク滴の量及びその吐出させた回数をRAM52に記憶させる。すなわち、キャリッジ12のカートリッジ装着部80に装着されたインクカートリッジ毎に、被印刷体たる印刷用紙Pに向けて吐出されるインクの吐出量が積算される。
積算結果たる積算値は、インクカートリッジ毎に、閾値に達したか否かが判定される。制御部50は、いずれかのインクカートリッジの積算値が閾値に達したと判定すると、そのカートリッジを選択する。
そして、制御部50は、キャリッジ12を送受信部45に向けて移動させ、各アンテナ36〜39と各アンテナ46〜49とが、それぞれ信号を送受信可能な位置関係とした上で、選択されたカートリッジの素子に、この時のインクの使用量を示す情報を書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、制御部50は、RAM52に記憶されている、選択されたカートリッジについての使用量のデータをリセットする。すなわち、カートリッジについての積算値をリセットする。
このような動作を終えると、制御部50は、再びキャリッジ機構に信号を与えて、印刷の続きを行う。そして、この印刷中における被印刷体たる印刷用紙Pに向けて吐出されるインクの吐出量は、インクカートリッジ毎に積算される。
積算結果たる積算値は、インクカートリッジ毎に、閾値に達したか否かが判定される。制御部50は、いずれかのインクカートリッジの積算値が閾値に達したと判定すると、そのカートリッジを選択する。
そして、制御部50は、キャリッジ12を送受信部45に向けて移動させ、各アンテナ36〜39と各アンテナ46〜49とが、それぞれ信号を送受信可能な位置関係とした上で、選択されたカートリッジの素子に、この時のインクの使用量を示す情報を書き込む。また、RAM52に記憶された初期使用量を、この時のインクの使用量に初期使用量を加算した値に更新する。また、制御部50は、RAM52に記憶されている、選択されたカートリッジについての使用量のデータをリセットする。すなわち、カートリッジについての積算値をリセットする。
以上のように、印刷中に、制御部50は、各カートリッジ31〜34に収容されたインクの使用量を積算し、RAM52に格納する。そして、制御部50は、あるカートリッジについての積算値が、そのカートリッジについて設けられた閾値に達した際に、該インクカートリッジを選択し、そのカートリッジの素子にそのインクの使用量を示す情報を書き込む。そして、その書き込んだ素子のそれぞれが設けられているカートリッジの、RAM52に記憶されているインクの使用量をリセットする。
なお、第3の実施の形態と同様に、各素子41〜44に対して書き込みを行う際には、素子に向けてデータ書き込みコマンドが送信される。その際、各素子41〜44に対しては、既に読み取られた各素子のID情報を随伴させる。このコマンドを受信した素子は、随伴されたID情報が確かに素子自身のID情報であることを確認した上で、要求されたID情報以外の情報を送受信部45に送り返す。また、素子への書き込みは、キャリッジ12が停止した状態で行ってもよいし、キャリッジ12が移動している状態で行ってもよい。
また、インクカートリッジに対して使用量又は残量を示す情報の書き込みタイミングを決定するための情報としての、各素子が取り付けられるインクカートリッジに収容可能なインクの容量に応じた閾値を示す閾値情報を、各素子に記憶させておいてもよい。この場合、「ID情報以外の情報読み取り処理」の際、各素子41〜44に記憶された、閾値情報が、プリンタ本体11に読み取られる。制御部50は、インクカートリッジ毎に、読み取った閾値情報そのもの、又は、その閾値情報に応じた値を閾値として、RAM52に記憶すればよい。
また、選択されたカートリッジの素子への使用量を示す情報の書き込みの際に、制御部50は、キャリッジ12を送受信部45に向けて移動させ、選択された素子のアンテナが、アンテナ46〜49のうち、印刷領域に最も近い位置に配置されたアンテナたるアンテナ49に対向する位置関係とした上で、このアンテナ49を用いて使用量を示す情報の書き込みを行ってもよい。
<<< フラッシング動作との関係付け >>>
第4の実施の形態に関する上記の説明において、制御部50は、いずれかのインクカートリッジの積算値が閾値に達したと判定すると、そのカートリッジを選択し、直ちに、キャリッジ12を送受信部45に向けて移動させ、アンテナを介して、素子に使用量を示す情報を書き込むものである。
この素子への使用量を示す情報の書き込み動作は、定期的に(一定時間毎、又は、キャリッジの所定移動回数毎)行われるフラッシング動作と関連付けて行うことが好ましい。なお、フラッシング位置は、図12において、右側非印刷領域及び左側非印刷領域に設けられている。フラッシング動作を行う際には、キャリッジ12が被印刷領域に移動する必要があるが、素子への使用量を示す情報の書き込み動作をフラッシング動作と関連付けて行うことにより、書き込み動作のためだけにキャリッジ12を非印刷領域に移動させる必要が無くなる。
例えば、書き込み部材は、あるインクカートリッジについての積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、と関連付けて、この選択されたインクカートリッジに備えられた素子に使用量を示す情報を書き込むとよい。
図12に示した構成においては、フラッシング動作を実行する位置にて、各素子に対する情報の書き込みが可能であるから、いずれかのカートリッジの積算値が閾値に達したと判定されて、カートリッジが選択された場合には、その後に最初に実行されるフラッシング動作の際に、キャリッジ12を左側非印刷領域方向へ移動させ、フラッシング位置にて、フラッシングを行うとともにカートリッジに設けられた素子に使用量を示す情報を書き込むとよい。
さらには、図12において、アンテナ46〜49を含む送受信部45をより印刷領域側に配置して、印刷領域側から順に、全てのカートリッジ31〜34の素子41〜44に対する書き込み位置、フラッシング動作の実行位置、が設けられるように構成することも可能である。
このように構成した場合には、あるインクカートリッジについての積算値がそのインクカートリッジについて設けられた閾値に達した後に最初に実行されるフラッシング動作、のために、記録ヘッド30がキャリッジ12とともにフラッシング動作の実行位置に向かう途中において、アンテナ60は、キャリッジ12とともに移動している素子がアンテナ46〜49を通過する際に、使用量を示す情報を書き込むことが可能となる。
=== その他の実施の形態 ===
以上、いくつかの実施の形態に基づき本発明に係る印刷装置等を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
上記各実施の形態では、素子として、非接触ICチップを用いたが、情報を記憶可能なものであればこのような構成に限定されるものではなく、例えば、アンテナ等と一体化されたものであってもよい。
インクカートリッジは、インクが収容可能な構成であり、かつ、印刷装置本体に対して着脱可能なものであればよく、例えば、インク収容部の他に、インク吐出ヘッド等を更に有するものであってもよい。
素子をインクカートリッジに取り付ける位置は、インクカートリッジの前面に限らず、任意の位置であってよく、その取り付け方法も、接着、圧入等種々の方法であってよい。
インクの吐出量をインクカートリッジ毎に積算する積算手段は、CPU及びこれに読み込まれたプログラムに限らず、積算専用の電子回路によって実現することも可能である。
素子への情報の書き込みは、非接触状態にて行うことが好ましいが、接触状態にて行ってもよい。
書き込み部材たるプリンタ本体側アンテナの位置は、各実施の形態に示した位置(左側非印刷領域)に限らず、例えば、右側非印刷領域であってもよい。
積算手段の積算結果に基づく選択は、CPU及びこれに読み込まれたプログラムに限らず、かかる選択を行うための専用の電子回路によって実現することも可能である。
積算手段の積算結果に基づく選択は、一つのインクカートリッジの選択に限らず、複数のインクカートリッジの選択であってもよい。例えば、積算値の最も大きいもの、及び、次に大きいものを選択してもよい。
素子に使用量を示す情報を書き込む代わりに、残量を示す情報を書き込んでもよい。また、使用量又は残量を示す情報を書き込む構成であればよく、書き込まれる情報は、使用量又は残量自体である必要はなく、例えば、何%使用されたかという情報等、使用量又は残量が直接的又は間接的に把握できる情報であればよい。
閾値は、比較の際に参照される値であればよく、その単位は、リットル、ピコリットル等に限られない。
閾値をインクカートリッジの容量に応じて設定する際には、容量の1%等に設定する場合に限られず、例えば、容量を所定の範囲を有する複数段階(大容量、中容量、小容量等)にわけ、段階毎に閾値を設定してもよい。
素子に使用量又は残量を書き込んだ際には、RAM内の、選択されたインクカートリッジに対する積算値をリセットすることが好ましいが、リセットせずに、積算値から所定値を減じてもよく、又は、積算値を所定値で除してもよい。
前述の実施形態に係るインクジェットプリンタと、コンピュータ本体、必要に応じて、CRT等の表示装置、マウスやキーボード等の入力装置、フレキシブルドライブ装置、CD−ROMドライブ装置等を備えたコンピュータシステムも実現可能であり、このようにして実現されたコンピュータシステムは、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
また、前述の実施形態に係るインクジェットプリンタに、コンピュータ本体、表示装置、入力装置、フレキシブルディスクドライブ装置、及び、CD−ROMドライブ装置がそれぞれ有する機能又は機構の一部を持たせてもよい。例えば、プリンタが、画像処理を行う画像処理部、各種の表示を行う表示部、及び、デジタルカメラ等により撮影された画像データを記録した記録メディアを着脱するための記録メディア着脱部を有する構成としてもよい。
また、上記各実施の形態では、印刷装置としてインクジェットプリンタを用いたが、例えば、インクジェット方式を用いた複写機、ファクシミリ、捺染機等に適用しても良い。
本明細書及び添付図面により様々な発明構成要素が開示されているが、印刷装置については、素子を備えたインクカートリッジが着脱可能であること、及び、素子に情報を書き込み可能であることが必須構成要素であり、インクカートリッジについては、素子を備えていることが必須構成要素である。これらの必須構成要素に、他の構成要素を、それぞれ任意に組み合わせて、又は、単独で付加することによって様々な発明が成立することは勿論である。
本発明によれば、各インクカートリッジに関する情報を効果的に管理することができる印刷装置、及び、インクカートリッジを実現ができる。