JP4254283B2 - 複合加工糸およびそれを用いた布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミドに対しポリビニルピロリドンを3〜15wt%の量で含有するポリアミドマルチフィラメントを外層側と内層側に配置した層構造に形成されている複合加工糸およびそれを用いた織物または編物などの布帛に関するものである。さらに詳しくは、吸湿性、吸水性に優れ、ソフトな清涼感を有する布帛製品を提供でき、インナー、スポーツ衣料品などに幅広く活用できる複合加工糸およびそれを用いた布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インナー、スポーツなどの汗処理性を求められる衣料分野では、吸汗作用の良い、綿、麻、レーヨン、キュプラなどの親水性繊維、またポリエステルなどの疎水性繊維に吸水性を付与した繊維が用いられてきた。
【0003】
しかし、前者の親水性繊維のみを用いた布帛は、吸汗性、熱の放散性は良好であるものの、水分の保持性が大きいため、発汗量の大きい夏期などにこれを衣服として用いた場合には、べとつきや蒸れが生じるという問題があった。また、後者の疎水性繊維に吸水性を付与した繊維を用いた布帛は、繊維自身は水を保持しないため吸汗量が充分でなく、衣服として着用した場合には、衣服と体の間に汗が残ってしまうという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、前者と後者を複合した繊維およびこれら繊維と一般的な合成繊維各種とを複合した機能性複合加工糸が提供されてきた。例えば、2層以上の多層構造糸で最外層に疎水性繊維、内層または中間層の少なくとも一部がセルロースマルチフィラメント繊維およびリヨセル繊維で構成されている複合加工糸が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
これらは、最外層が疎水性繊維のため水分が吸水性に優れている内層のセルロース繊維およびリヨセル繊維に移行し、さらに吸水率の差で水分を内層に保持することができ、べとつき感を改善できるというものである。しかし、セルロース繊維、リヨセル繊維とも親水性のため、マルチフィラメントの拡散性があるにしろ、夏場、激しい運動時など、多量発汗時には、繊維の吸水量が多く、速乾性が悪いため、べとつき感が発生する。さらに肌表面に疎水性の合繊繊維が接するために、天然繊維に比べソフト感に劣り、サラサラ感はあるものの、粗硬感があり肌触りが悪いという問題もあった。また、セルロース繊維およびリヨセル繊維を使用すると、吸水、吸湿性は向上するものの、周知の通りコストが高くなり、製品の値段が高くなるという消費者に対して最も大きな問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−25637号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−25638号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、従来得られなかった、ソフトな清涼感および吸湿性、吸水性に優れた布帛製品を提供でき、インナー、スポーツ衣料品などに幅広く活用できる複合加工糸およびそれを用いた織編物などの布帛を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
[1]ポリアミドに対しポリビニルピロリドンを3〜15wt%の量で含有するポリアミドマルチフィラメントが外層側と内層側に配置された層構造に形成され、内層側の単糸断面形状が異形断面かつ外層側の単糸断面形状が丸形断面からなり、内層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の吸水高さと外層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の吸水高さが下記式(1)を満たすことを特徴とする複合加工糸。
PV≧NV ・・・(1)式
ただし、
PV:内層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の緯、経の吸水高さの合計値
NV:外層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の緯、経の吸水高さの合計値
【0010】
[2]内層側の単糸断面形状がY、W、C、H、X型のいずれかであることを特徴とする前記[1]に記載の複合加工糸。
【0013】
[3]流体噴射加工が施されていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の複合加工糸。
【0014】
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合加工糸を用いてなることを特徴とする布帛。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明で用いるポリアミドマルチフィラメントには、所望の高吸湿特性を繊維に付与するために、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と略称することがある)をポリアミドに対し3〜15wt%含有させるものであり、特に4〜8wt%が好ましい。PVPの含有率が3wt%未満と少な過ぎると十分な吸湿性が得られない。また15wt%を超える程に多過ぎるとべたつき感が発現し感触不良となり、しかも、製糸性が不良となって安定して製糸することができなくなる。
【0017】
また、ピロリドンの含有率は含有PVP量の0.1wt%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.05wt%以下であり、さらに好ましくは0.03wt%以下である。また、ピロリドンの含有率は含有PVP量の0.001wt%以上であることが好ましい。ピロリドンの含有率が上記の範囲内にある場合は、染色前の黄色度を10以下とすることができる。染色前の黄色度が10を超えると、染色後の色調にくすみ感が出てしまい、衣料用に適した色調良好な繊維が得られない。すなわち、染色前のポリアミド繊維やその布帛の黄色度が10以下であると、染色後の色調にくすみ感がなく、色調良好で高級感のある布帛が得られるのである。
【0018】
本発明で用いるピロリドン含有率0.1wt%以下のPVPはイソプロピルアルコールを重合時溶媒として用いる方法によって製造することができる。また、その際、重合開始剤として過酸化水素系の触媒を含まないことが、黄色度の原因となる副生物のピロリドンの発生を抑制するために好ましい。その他の条件は通常の複合方法を採用すればよい。
【0019】
また、本発明で用いるポリアミドフィラメントは水溶成分の溶出率が5%以下であることが好ましく、特に3%以下がより好ましく、0.5%以上が好ましいい。
【0020】
この溶出率は、後述するように、本発明で用いるポリアミドフィラメントを沸騰水中で30分間処理した際の重量変化率から求めた水溶性成分溶出率の値である。
【0021】
PVPは極めて水溶性が高いので、ポリマー中に含有させた後でも、ポリマー表面へブリードアウトし易い性質を持っている。また、副生物のピロリドンも極めて水溶性が高く、同様にブリードアウトし易い。
【0022】
したがって、PVPの含有による高吸湿性ポリアミド繊維では、その中に含有するPVPやピロリドンの溶出を抑えることが、吸湿特性の保持、および良好な繊維風合いや感触の保持の点で好ましい。例えば、溶出率が5%以下のポリアミド繊維では、繊維製品とした後の着用時にPVPが繊維表面に実質的に析出せず、しなやかな風合いとなめらかな感触の点で極めて良好なものとなる。
【0023】
溶出率を所望の低水準とするためにはPVPとナイロンポリマーとの分子鎖の絡み合いを強くする手段をとることが好ましい。例えば、PVPをエクストルーダーによりポリアミド中に練り込みマスタポリマーとする方法が、ポリアミド分子鎖とPVP分子鎖の絡み合いを強くすることができ好ましいものである。
【0024】
その練り込みは低い酸素濃度の条件下での練り込み法により行うことが紡糸時の糸切れを低減させるために好ましい。これに対し、大気中の酸素濃度(約20%)と同水準あるいはそれ以上の高い酸素濃度の環境下で練り込みをしたマスタポリマーを用いる場合は、紡糸時の糸切れが多発し、安定した生産が困難となる。その低酸素濃度の水準は、例えば15%以下、好ましくは10%以下であれば良くそのためには窒素のごとき不活性気体をホッパーやシリンダーに流して酸素濃度を低減させる方法をとれば良い。
【0025】
マスタチップ中のPVPの練り込み濃度は10〜50wt%とする。10wt%未満ではマスタポリマーの本来の効果が奏し難しく生産性が劣る。50wt%を超えると安定して練り込むことが困難である。
【0026】
このようにして得られたPVP含有ポリアミドマスタポリマーチップは、実質的に無添加のチップとチップブレンドされて濃度調整するチップブレンド法によって濃度調整された後に溶融紡糸に供給され、本発明に用いるPVPを含有するポリアミドマルチフィラメントが提供される。ここで、通常のポリアミドマルチフィラメントの紡糸速度と同じ速度で生産できる利点により、低速でしか生産できないセルロース繊維に比べ、大幅に安価になる。
【0027】
次に本発明の複合加工糸の繊度、また本発明に用いるポリアミドマルチフィラメントの繊度、単糸繊度、フィラメント数は、特に限定されたものではないが以下の条件を満たしていることが好ましい。
【0028】
本発明の複合加工糸の繊度としては、70〜200Dtexが好ましい。インナー、スポーツ衣料品などの衣料分野で要求される生地の厚みを満たす本発明の複合加工糸の繊度は、布帛が一層の場合は90〜170Dtexがより好ましく、2層の場合は70〜100Dtexがより好ましい。また、綿等、他の繊維と交編する場合には、その繊維の機能および太さによって、本発明の複合加工糸を多少太くしたり、細くしても良い。
【0029】
ポリアミドマルチフィラメントの断面形状については、3葉以上の多葉断面、好ましくは3、4、5、6葉断面などのように○断面より表面積が大きくなる異形断面形状の方が、繊維間に微細な空隙を多数形成するため毛細管現象による吸水力が増しより好ましい。なお、異形断面としてはY、W、C、H、Xなどでもよい。また、繊維間に微細な空隙を多数作り出す、○型と異形断面を組み合わせたマルチフィラメントでもよい。ポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度は0.5〜10Dtexであることが好ましく、より好ましくは0.5〜5Dtexである。単糸繊度が細すぎると、毛細管現象により吸い上げた水が繊維間に溜まってしまい、べとつき感になったり、速乾性、吸水性が低下する。また、単糸繊度が太すぎると、十分な毛細管現象が得られず、吸水性が低下する。
【0030】
また、内層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の吸水高さと外層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の吸水高さが下記式を満たすことが好ましい。
【0031】
PV≧NV
(ここで、
PV:内層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の緯、経の吸水高さの合計値
NV:外層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の緯、経の吸水高さの合計値)
より好ましくは下記式を満たすことが好ましい。
【0032】
PV≧1.05NV
もし、PV<NVの場合は、一端内層側に取り込まれた水分が外層側に再び吸水され、繊維表面に戻ってくる濡れ戻り現象が生じ、べとつき感の原因になる。またPV≧1.05NVを満たす場合は、内層側と外層側の吸水高さの差より、より内層に水が取り込まれ、複合加工糸の吸水性が向上する。すなわち、ポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度および断面形状は前記の条件を満たすことが好ましいが、例えば、内層側の単糸断面形状がYの場合は外層側の単糸断面形状は丸にするなど、吸水性を低くする単糸繊度および断面形状の構成をとるようにすることが重要である。
【0033】
本発明の複合加工糸は、流体噴射ノズルを用いた流体噴射加工方法により、2種類の異なるフィラメントにフィード差を付けて送り出すことにより一方が他方に巻き付きカバーするような状態となり、複合の層構造をなす。流体噴射加工は2種の糸条が内層、外層にそれぞれ配置されやすく、また、外層の糸条はループ形成することから、編物等の布帛にした際の風合い向上にもつながる。また、他の製造方法としては、流体噴射加工後に仮撚加工を行う、複合仮撚加工により、それぞれの捲縮度合いによって一方のフィラメントが他方を覆うような構造をとり、その結果、複合の層構造を構成するもの、カバーリング機を用いたカバーリング方法等がある。
【0034】
従来の単層構造のものに比べて複合構造としたことにより、すなわち外側より内側に吸水率を高くすることで、内層側と外層側の吸水高さの差より、より内層に水が取り込まれ、複合加工糸の吸水性が向上する。
【0035】
本発明の複合加工糸はこのようなフィラメントの組み合わせにより、吸水性、吸湿性に優れ、かつPVPの作用により清涼感を有するソフトな肌触り、さらにはセルロース繊維を用いた場合に比べ、コストダウンになるため、スポーツ、インナーなどの分野で広く活用できる素材を提供することができる。
【0036】
なお、本発明における各種特性値は次の方法で測定するものである。
(1)ピロリドン含有率
繊維試料100mgにヘキサフルオロイソプロパノール3mlとクロロホルム1mlとを加え、繊維を溶解した。得られた溶液に、エタノールを加えてポリマ成分を再沈させ20mlに定溶した。溶液成分を定法によりガスクロマトグラム分析を行う。装置はGC14A(島津製作所製)、カラムはNB−1(15m)を使用する。ピロリドンの定量にはバレロラクタムの検量線をあらかじめ作成し、用いる。下記式によりピロリドン含有率を求める。
【0037】
ピロリドン含有率(wt%)=
[(GCピーク面積/検量線係数)(mg/ml)×溶液量(ml)/試料量(mg)]×100
n数は3個でその平均とした。
(2)水溶性成分の溶出率
ポリアミドマルチフィラメントを110℃で8時間乾燥した後、重量を測定する。その後、沸騰水で30分間処理した後、再度110℃で8時間乾燥し、処理前後の重量減少率を水溶性成分の溶出率とする。
【0038】
n数は3個でその平均とした。
(3)黄色度
試験対象とするマルチフィラメントを用いて27Gの筒編み機により、編み密度45本/インチの筒編地を作成する。得られた筒編地を2つ折りとして日本電色工業製カラーメーターΣ80により、同測定器所定の方法にて3刺激値X,Y,Zを測定し、下記式により黄色度(YI)を求める。
【0039】
YI(黄色度)=100×[1.28X−1.06Z]/Y
(4)最高吸湿率と標準吸湿率との差(ΔMR(%))
n数は3個でその平均とした。
【0040】
試験対象とする糸条の27ゲージ筒編み試料を作製する。作製した試料を精練し、油剤を除去した後、その約1gをガラス秤量瓶(風袋重量F)にいれ、乾燥機中110℃2時間の条件で乾燥する。ガラス秤量瓶を密封し、デシケータ中で30分間放冷した後、試料の入ったガラス秤量の総重量(K)を測定する。次に、20℃65%RHに設定された恒温恒湿槽((株)田葉井製作所製の恒温恒湿槽“レインボー”)に秤量ビンを開放状態で入れ、24時間放置する。その後再び密封状態でデシケーター30分間放置後、試料の入った秤量瓶の重量(H)を測定する。引続き、30℃90%RHに設定された恒温恒湿槽に開放状態にした秤量瓶を入れ、24時間後の総重量(S)を同様に測定する。以上の各値から下記式により算出する。
【0041】
最高吸湿率=[(S−K)/(K−F)]×100(%)
標準吸湿率=[(H−K)/(K−F)]×100(%)
ΔMR=最高吸湿率−標準吸湿率
ΔMR≧2.0以上で、インナーとして快適と感じる、十分な吸湿性を有すると判断される。
(5)乾燥時間
試験対象とする糸条の27ゲージ筒編み試料を作製する。作製した試料を精練し、油剤を除去した後、20℃×65%RHに設定された恒温恒湿槽に開放状態で48時間放置し、乾燥させる。その後、幅40cm×長さ40cmの試験片を5枚採取する。試験片が完全に水中に浸るように沈め、10分間放置する。その後、家庭用洗濯機の脱水装置により30秒脱水する。脱水後、試料の重量を測定し、WT0とする。この後、20℃×65%RHに設定された恒温恒湿槽に試験片をしわのないように均一に広がるように洗濯ばさみでつるし、放置する。その後5分毎に測定していく。この時の試験片の重量をWTm(m:放置時間)とすると、
水分率=(WTm−WT0)×100
が5%以下になるまでにかかる時間を求める。5枚の試料が乾燥するのにかかった時間の平均値を乾燥時間とする。
(6)編み地の吸水高さ
試験対象とするマルチフィラメントを28GGシングル編み機で、300mm/100Wで天竺編地を編成する。作製した試料を精練し、油剤を除去した後、20℃×65%RHに設定された恒温恒湿槽に開放状態で48時間放置し、乾燥させる。試料より、幅1cm×長さ20cmの編地試験片を経方向、緯方向でそれぞれ5本ずつ採取する。試験片の一端をつかみ具によって固定し、他端側の約2cm長さを20±2℃の蒸留水中に浸す。浸漬開始から10分後までに毛細管現象によって水が上昇した距離(mm)を0.5mm間隔で読みとり、経方向、緯方向の試験片についてそれぞれ5回測定し、その平均値でもって表す。
(7)インナーウェア製品の蒸れ感、べとつき感
25℃65%RHに調温調湿された部屋内で、Tシャツに縫製したサンプルを被験者20名が着用し、それぞれ4段階(むれ感やべとつき感を感じる0点、少し感じる2点、あまり感じない4点、全く感じない5点)でもって評価した。
着用者のタイムスケジュール; 20分:安静状態→ 10分:歩行(ランニング機械使用、100m/分)→ 10分:安静状態で評価
(8)インナーウェア製品の風合い
上記(7)項の20分安静後の風合いについてそれぞれ4段階(サラサラかつソフト5点、サラサラあるいはソフトの片方のみ2点、着心地が悪い0点)でもって評価した。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
(1)外層側ポリアミドマルチフィラメント
PVPとして、イソプロピルアルコールを溶媒として通常の方法で合成されたPVP(BASF社製“ルビスコール”K30スペシャルグレード:以下K30SPと略記する)を用いた。このPVP(K30SP)中のピロリドン含有量は0.02wt%であった。このPVPをエクストルーダー(φ40mm、2条、2軸)を用いて、98%硫酸相対粘度ηr が2.72のナイロン6に練り混み、ガット状に押し出し、冷却後にペレタイズすることで、PVP濃度20wt%のマスタポリマチップとした。この際、ホッパー、シリンダーに窒素を流すことで、酸素濃度を8%以下とした。
【0043】
回転式真空乾燥機中で、ナイロン6チップと上記マスタポリマチップとを所定の割合でブレンドしながら通常の方法で乾燥した。乾燥して得られたブレンドチップにおけるナイロン6に対するPVPの含有率は、6wt%とした。
【0044】
それぞれのブレンドチップを270℃で溶融し、13ホールの丸型孔口金より吐出して、紡糸速度1300m/分、延伸倍率2.3倍、巻き取り速度3000m/分の直接紡糸延伸法により製糸して、丸断面で、44デシッテクス13フィラメントのPVP含有ポリアミドマルチフィラメント延伸糸を得た。いずれの水準も、黄色度も水溶性成分溶出率もともに十分に低く、ΔMRも4.3と高い値になった。また吸水高さの合計値NVは95であった。
(2)内層側ポリアミドマルチフィラメント
内層側ポリアミドマルチフィラメントは、繊維の単糸断面形状が周囲に3葉の突起部を有し、丸断面よりも空隙が増える44デシテックス13フィラメントのY断面のものを用いた。また、吸水高さの合計値PVは110であり、PV≧NVを満たしている。
【0045】
内層側ポリアミドマルチフィラメントは、断面形状が異なるだけで、外層ポリアミドフィラメントと同じ条件で得たものである。
(3)流体噴射加工
図2に示す流体噴射加工工程において、外層側ポリアミドマルチフィラメントを鞘糸側給糸B、内層側ポリアミドマルチフィラメントを芯糸側給糸Cとし、それぞれフィードローラ1、2を介して、4の流体乱流ノズルに送り込み混繊させる。この時、より密に混繊させるために、芯側ポリアミドマルチフィラメントに、水付与ガイド3を用いて、水を付与する。その後デリベリローラ5とフィードローラ7の間で、ヒータ6を用いてループセットした後、テイクアップローラ8に巻き取る。なお、条件の詳細は以下の通りである。
得られた複合加工糸は、繊度が94デシテックス、顕微鏡拡大観察による外層側ポリアミドフィラメントの外層配置率は73%であった。該加工糸を28GGシングル編機で天竺編地を作製し、98℃の浴槽でリラックス精練し、120℃のテンターでセット後、酸性染料で98℃で染色し、120℃でセットした。得られた布帛の密度は目付が95g/cm2、厚さ0.45mmであった。表1に布帛の物性を示す。優れた吸水性を有しており、かつ快適性の基準となるΔMRが4.0%と高い。また、その効果として、被着試験により、濡れ・べとつき感および肌触りの風合いにおいて、スポーツ、インナー素材として好適な結果を得ていることが分かる。
【0046】
なお、外層配置率の計算方法は、顕微鏡の断面写真から外層側に配置されているフィラメント数を数え、その中の3葉突起部をもつフィラメント数を引いて、13で割ったものである。
【0047】
(比較例1)
42デシッテクス16フィラメントのレーヨン糸を芯糸側給糸、44デシテックス18フィラメントX断面ポリエステルマルチフィラメント延伸糸を鞘糸側給糸として、実施例1と同条件で加工した。得られた加工糸の繊度は90デシテックス、顕微鏡拡大観察によるX断面ポリエステルマルチフィラメントの外層配置率は72%であった。この複合加工糸について実施例1と同条件で編成、130℃分散染料で染色、実施例1と同条件で仕上げ加工を実施したところ、目付90g/cm2、厚さ0.42mmの布帛を得た。
【0048】
表1により、吸水性は優れるもの、速乾性に劣った結果となった。またΔMRも2.0よりも高くなっているが、実施例と比較すると低い。さらに、被着試験では、多量発汗後不快感を感じる結果となっている。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明は、吸湿性、吸水性に優れ、濡れ戻りを防止したソフトな清涼感を有する布帛製品を提供でき、インナー、スポーツ衣料品などに幅広く活用できる素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加工糸を得るための加工工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:フィードローラ
2:フィードローラ
3:水付与ガイド
4:流体噴射ノズル
5:デリベリローラ
6:チューブヒータ
7:フィードローラ
8:テイクアップローラ
Claims (4)
- ポリアミドに対しポリビニルピロリドンを3〜15wt%の量で含有するポリアミドマルチフィラメントが外層側と内層側に配置された層構造に形成され、内層側の単糸断面形状が異形断面かつ外層側の単糸断面形状が丸形断面からなり、内層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の吸水高さと外層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の吸水高さが下記式(1)を満たすことを特徴とする複合加工糸。
PV≧NV ・・・(1)式
ただし、
PV:内層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の緯、経の吸水高さの合計値
NV:外層側ポリアミドマルチフィラメントを用いて編み地となしたときの該編み地の緯、経の吸水高さの合計値 - 内層側の単糸断面形状がY、W、C、H、X型のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の複合加工糸。
- 流体噴射加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の複合加工糸。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の複合加工糸を用いてなることを特徴とする布帛。
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