JP4246318B2 - 偏光回折性コレステリック液晶フィルムの製造方法 - Google Patents

偏光回折性コレステリック液晶フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光性を有する回折光を生じることができる偏光回折性コレステリック液晶フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
回折素子は、分光光学などの分野で光の分光や光束の分割を行う目的で広く用いられている汎用光学素子である。回折素子は、その形状からいくつかの種類に分類され、光が透過する部分と透過しない部分を周期的に配置した振幅型回折素子、透過性の高い材料に周期的な溝を形成した位相型回折素子などに通常分類される。また、回折光の生じる方向に応じて透過型回折素子、反射型回折素子と分類される場合もある。
【0003】
上記の如き従来の回折素子では、自然光(非偏光)を入射した際に得られる回折光は非偏光しか得ることができない。分光光学などの分野で頻繁に用いられるエリプソメーターのような偏光光学機器では、回折光として非偏光しか得ることができないため、光源より発した自然光を回折素子により分光し、さらにこれに含まれる特定の偏光成分だけを利用するために、回折光を偏光子を通して用いる方法が一般的に行われている。この方法では、得られた回折光のうちの約50%以上が偏光子に吸収されるために光量が半減するという問題があった。またそのために感度の高い検出器や光量の大きな光源を用意する必要もあり、回折光自体が円偏光や直線偏光のような特定の偏光となる回折素子の開発が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するものであり、液晶層構造を制御することで、コレステリック液晶フィルムの一部の領域に回折能を付与することに成功した。さらに詳しくは、コレステリック液晶に特有な選択反射特性および円偏光特性に併せて回折能という新たな特性をコレステリック液晶フィルムに付与する方法を見出し、遂に本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、配向支持基板上にGPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量Mwが1000〜10万、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)が5以下、対数粘度が0.05〜2.0(フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)混合溶媒において濃度0.5g/dl(温度30℃))、ガラス転移温度(Tg)が200℃以下、かつ液晶相から等方相への転移温度(Ti)が40℃以上である液晶性ポリエステルを必須成分とするフィルム材料からなるコレステリック液晶フィルムを形成する第1工程、コレステリック液晶フィルム面に回折素子基板の回折パターンを転写し、フィルムの一部に回折能を示す領域を形成する第2工程、回折パターンが転写されたコレステリック液晶フィルムのフィルム面と再剥離性基板とを接着剤層を介して接着せしめた後、コレステリック液晶フィルムから配向支持基板を剥離して、再剥離性基板に転写する第3工程、及びコレステリック液晶フィルムから再剥離性基板を剥離する第4工程、を含む偏光回折性コレステリック液晶フィルムの製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の第1工程は、配向支持基板上にGPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量Mwが1000〜10万、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)が5以下、対数粘度が0.05〜2.0(フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)混合溶媒において濃度0.5g/dl(温度30℃))、ガラス転移温度(Tg)が200℃以下、かつ液晶相から等方相への転移温度(Ti)が40℃以上である液晶性ポリエステルを必須成分とするフィルム材料からなるコレステリック液晶フィルムを形成する工程である。
【0007】
第1工程に用いられるフィルム材料の必須成分である高分子液晶(液晶性ポリエステル)のGPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)が、1000未満の場合には最終的に得られるコレステリック液晶フィルムの機械的強度が低く、各種後処理工程や実用性能面で望ましくない。また第2工程において説明する回折パターンを転写する際に、実用性に耐えうる程度の転写ができない恐れがある。また10万を越えると液晶の流動性が悪化し配向性に悪影響を及ぼす恐れがあり、また第2工程において回折パターンを転写する際にフィルムに割れ、亀裂等が入る恐れがある。また分子量分布が5を越えると、コレステリック液晶フィルム作製時の溶融性、溶液への溶解性が悪くなり、コレステリック相への均一配向も得られ難く実用上問題となる恐れがある。また第2工程において回折パターンを転写する際にフィルムに割れ、亀裂等が入る恐れがある。また対数粘度が0.05未満ではコレステリック液晶フィルムの機械的強度が低くなる恐れがあり、各種後工程や実用性能面で望ましくない。また第2工程において回折パターンを転写する際に、実用性に耐えうる程度の転写ができない恐れがある。また2.0を越えると液晶の流動性が悪化しコレステリック相への均一配向が得られ難くなる恐れがあり、また第2工程において説明する回折パターンを転写する際にフィルムに割れ、亀裂等が入る恐れがある。またガラス転移温度(Tg)が、200℃より高い場合は液晶状態での流動性が悪く均一配向が得られ難くなる恐れがあり、さらに必要により配向時に使用される配向支持基板の選定が困難という問題も生じる可能性がある。さらに液晶相から等方相への転移温度(Ti)が40℃より低い場合は室温付近におけるコレステリック液晶フィルムの配向安定性が悪化する恐れ、また回折パターン転写後のコレステリック液晶フィルムにおいては転写した回折パターンが損なわれる恐れがある等、望ましくない。
【0008】
本発明に用いられる高分子液晶は、上記各諸物性を満足する高分子液晶であれば何ら限定されるものではないが、コレステリック配向を形成する上で配向性が良く、合成も比較的容易である液晶性ポリエステルが望ましい。またポリマーの構成単位としては、例えば芳香族あるいは脂肪族ジオール単位、芳香族あるいは脂肪族ジカルボン酸単位、芳香族あるいは脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を好適な例として挙げられる。
【0009】
またコレステリック液晶フィルムの耐熱性等を向上させるために、フィルム材料中にコレステリック相の発現を妨げない範囲において、例えばビスアジド化合物やグリシジルメタクリレート等の架橋剤を添加することもでき、これら架橋剤を添加することによりコレステリック相を発現させた状態で架橋させることもできる。さらにフィルム材料中には、二色性色素、染料、顔料等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲において適宜添加することもできる。
【0010】
本発明の第1工程では、上記の如きフィルム材料を配向支持基板上に配し、コレステリック液晶フィルムを得るものである。第1工程に供することができる配向支持基板としては、例えばガラス基板またはプラスチックフィルム、プラスチックシート等のプラスチック基板を例示することができる。ガラス基板としては例えばソーダガラス、シリカコートソーダガラス、ホウケイ酸ガラス基板等を用いることができる。またプラスチック基板としては、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂、各種アモルファスポリオレフィン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース等のセルロース系プラスチックス等が挙げられる。
これらの配向支持基板に必要に応じて一軸または二軸延伸操作を適宜加えることもできる。さらに上記基板に、親水化処理や疎水化処理や易剥離性処理などの表面処理を施すこともできる。また配向支持基板としては1種単独、または2種以上の基板を積層したものを配向支持基板として用いることもできる。
【0011】
また上記各配向支持基板上に配向膜を形成したものも本発明では配向支持基板に包含するものである。配向膜としては、ラビング処理したポリイミドフィルムが好適に用いられるが、その他当該分野で公知の配向膜も適宜使用することができる。またポリイミド等を塗布することなく、直接ラビング処理によって配向能を付与して得られるプラスチック基板等もコレステリック配向フィルムを得る際の配向支持基板として使用することができる。なお配向処理の方法は特に制限されるものではないが、液晶分子を配向処理界面と一様に平行に配向させるものであればよい。
【0012】
次いで配向支持基板上にフィルム材料を塗布する手段としては、溶融塗布、溶液塗布が挙げられるが、プロセス上溶液塗布が望ましい。
【0013】
溶液塗布は、フィルム材料を所定の割合で溶媒に溶解し、所定濃度の溶液を調製する。溶媒としては、用いるフィルム材料の種類により異なるが、通常トルエン、キシレン、ブチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン等の炭化水素系、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系、ブチルアルコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール、ヘキシレングリコール等のアルコール系等を用いることができる。これらの溶媒は必要により2種以上を適宜混合して使用することもできる。また溶液の濃度は用いられる高分子液晶の分子量や溶解性、さらに最終的に目的とするフィルムの膜厚等により異なるため一概には言えないが、通常1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%である。
【0014】
また溶液中には、塗布を容易にするために界面活性剤等を加えても良い。界面活性剤としては、例えばイミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類や溶剤、あるいは塗布する支持基板にもよるが、通常、高分子液晶の重量に対する比率にして10ppm〜10%、好ましくは50ppm〜5%、さらに好ましくは0.01%〜1%の範囲である。
【0015】
上記の如くして調製したフィルム材料溶液を配向支持基板上に塗布する。塗布方法としては、例えばロールコート法、ダイコート法、バーコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法等を採用することができる。
【0016】
塗布後溶媒を乾燥により除去し、コレステリック液晶相を呈する所定温度、所定時間熱処理してコレステリック配向を完成させる。次いで液晶状態において形成したコレステリック配向を、高分子液晶のガラス転移点以下の温度に急冷することによってコレステリック配向が固定化されたコレステリック液晶フィルムを得ることができる。
【0017】
コレステリック液晶フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、量産性、製造プロセスの面から、通常0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.7〜3μmであることが望ましい。またコレステリック配向の螺旋巻き数としては、通常2巻き以上10巻き以下、好ましくは2巻き以上6巻き以下であることが望ましい。螺旋巻き数が2巻きより少ない場合、また10巻きより多い場合には、偏光回折特性を発現できない恐れがある。
【0018】
本発明の第2工程は、第1工程で得られたコレステリック液晶フィルム表面に回折素子基板の回折パターンを転写し、回折パターンが接したコレステリック液晶フィルムに回折能を示す領域を形成する工程である。コレステリック液晶フィルムに回折パターンを転写する際に用いられる回折素子基板の材質としては、金属や樹脂のような材料であっても良く、あるいはフィルム表面に回折機能を付与したもの、あるいはフィルムに回折機能を有する薄膜を転写したもの等、およそ回折機能を有するものであれば如何なる材質であっても良い。なかでも取り扱いの容易さや量産性を考えた場合、回折機能を有するフィルムまたはフィルム積層体がより望ましい。
【0019】
またここでいう回折素子とは、平面型ホログラムの原版等の回折光を生じる回折素子全てをその定義として含む。またその種類については、表面形状に由来する回折素子、いわゆる膜厚変調ホログラムのタイプであってもよいし、表面形状に因らない、または表面形状を屈折率分布に変換した位相素子、いわゆる屈折率変調ホログラムのタイプであっても良い。本発明においては、回折素子の回折パターン情報をより容易に液晶に付与することができる点から、膜厚変調ホログラムのタイプがより好適に用いられる。また屈折率変調のタイプであっても、表面形状に回折を生じる起伏を有したものであれば本発明に好適に用いることができる。
【0020】
回折パターンをコレステリック液晶フィルムに転写する際の諸条件は、コレステリック液晶フィルムの諸物性、回折素子基板の材質等によって異なるため一概には言えないが、通常、温度40〜300℃、好ましくは70〜180℃、圧力0.05〜80MPa、好ましくは0.1〜20MPaの加温および/または加圧条件下で行うことができる。温度が40℃未満の場合、室温で十分安定な配向状態を有するコレステリック液晶フィルムにおいては回折パターンの転写が不十分となる恐れがある。また300℃を越えるとコレステリック液晶フィルムの分解や劣化が起こり恐れがある。また圧力が0.05MPaより低い場合、回折パターンの転写が不十分となる恐れがある。さらに80MPaより高い場合には、コレステリック液晶フィルムや他の基材の破壊等が起こる恐れがあり望ましくない。
【0021】
また転写に要する時間は、コレステリック液晶フィルムを形成しているフィルム材料の種類、フィルム形態、回折パターン型や回折素子基板の材質等により異なるため一概には言えないが、通常0.01秒以上、好ましくは0.05秒〜1分である。処理時間が0.01秒より短い場合、回折パターンの転写が不十分となる恐れがある。また1分を越えるような処理時間は生産性の観点から望ましいとは言えない。
【0022】
回折パターンをコレステリック液晶フィルムに転写する具体的な方法としては、例えば上記諸条件を満足する一般の圧縮成型機、圧延機、カレンダーローラー、ヒートローラー、ラミネーター、ホットスタンプ、電熱板、サーマルヘッド等を用い、コレステリック液晶フィルムの液晶面と回折パターン面が接するようにした状態で成型機等に供することにより、回折素子基板の回折パターンをコレステリック液晶フィルムに転写することができる。また回折パターンの転写は、コレステリック液晶フィルムの片面のみに限られるものではなく、例えば配向支持基板をコレステリック液晶フィルムから除去し、当該基板を除去したコレステリック液晶フィルムに対して上記と同様の方法によって、フィルム両面に回折パターンを転写することもできる。
【0023】
上記の如き方法および条件にてコレステリック液晶フィルムに回折素子基板の回折パターンを転写した後、当該回折素子基板はコレステリック液晶フィルムから除去される。
【0024】
回折パターンが転写されたコレステリック液晶フィルムは、その回折パターンが転写された当該フィルム面に回折能を示す領域が形成される。ここで回折能を示す領域とは、その領域を透過した光またはその領域で反射された光が、幾何学的には影になる部分に回り込むような効果を生じる領域を意味する。また回折能を有する領域の有無は、例えばレーザー光等を前記領域に入射し、直線的に透過または反射する光(0次光)以外に、ある角度をもって出射する光(高次光)の有無により確認することができる。また別法としては、原子間力顕微鏡や透過型電子顕微鏡などで液晶層の表面形状や断面形状を観察することにより回折能を示す領域が形成されているか否か確認することができる。また回折能を示す領域は、コレステリック液晶フィルムの複数領域、例えばフィルム表裏面にそれぞれ形成することもできる。また回折能を示す領域は、例えばフィルム面に均一な厚さを持った層状態として形成されていることは必ずしも必要とせず、フィルム面の少なくとも一部に回折能を示す領域が形成されていれば偏光回折フィルムとしての効果を発現することができる。また回折能を示す領域を、所望の図形、絵文字、数字等の型を象るように形成することもできる。さらに回折能を示す領域を複数有する場合、全ての当該領域が同じ回折能を示す必要性はなく、それぞれの領域において異なった回折能を示すものであってもよい。
【0025】
また回折能を示す領域が層状態として形成されている場合、回折能を示す層(領域)の厚みとしては、コレステリック液晶フィルムの膜厚に対して通常50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下の厚みを有する層状態で形成されていることが望ましい。回折能を示す層(領域)の厚さが50%を超えると、コレステリック液晶相に起因する選択反射特性、円偏光特性等の効果が低下し、本発明の効果を得ることができない恐れがある。
【0026】
さらに本発明の第2工程において、回折素子基板の回折パターンを転写されたコレステリック液晶フィルムは、その回折パターンを転写されたフィルム面における配向状態、すなわち回折能を示す領域の配向状態は、コレステリック液晶相における螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行ではないコレステリック配向、好ましくは螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行でなく、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔ではないコレステリック配向を形成していることが望ましい。またそれ以外の領域においては、通常のコレステリック配向と同様の配向状態、すなわち螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行で、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔な螺旋構造を形成していることが望ましい。
【0027】
また本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムにおいて、回折能を示す領域が一方のフィルム面領域に有する際、そのフィルムの表裏、すなわち回折能を示す領域を有するフィルム面とその面とは反対のフィルム面とは多少異なった光学効果、呈色効果等を示すものである。したがって本発明の製造方法で得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムを各種光学用途等に用いる場合には、その目的とする機能、効果等に応じ、フィルム面の配置位置等を選択することが望ましい。
【0028】
本発明の第3工程では、第2工程で得られた回折パターン転写後のコレステリック液晶フィルムの回折パターン転写面と再剥離性基板とを接着剤層を介して接着せしめた後、コレステリック液晶フィルムから第1工程で用いた配向支持基板を剥離して、再剥離性基板に転写する工程である。第3工程において用いられる再剥離性基板とは、シート状物、フィルム状物、板状物等の形状を有する自己支持性を具備し、かつ再剥離性を有する基板であれば特に制限されるものではない。このような再剥離性基板としては、通常剥離性を有するプラスチックフィルムが望ましく用いることができる。ここで再剥離性とは、接着剤を介してコレステリック液晶フィルムと再剥離性基板とを接着した状態において、接着剤と再剥離性基板との界面で剥離できることをいい、好ましくは接着剤を介して再剥離性基板に転写されたコレステリック液晶フィルムの空気側面と、別に用意された基板等を対向させて接着剤を介して張り合わせた後に、再剥離性基板が直接接する接着剤との界面で剥離できることが望ましい。本発明の第3工程において用いられる上記の如き再剥離性基板としては、接着剤(硬化後)との界面での剥離強度(180゜剥離試験、剥離速度30cm/分)の値として、通常0.5〜80gf/25mm、好ましくは2〜50gf/25mmの剥離強度のものが望ましく用いられる。このような再剥離性基板として好適なプラスチックフィルムとしては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンサルファイド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース系プラスチックス等が挙げられる。これらのプラスチックフィルムそれ自身を用いてもよいし、適度な再剥離性を付与するためにこれらのプラスチックフィルムの表面に、シリコーンコートをしたもの、有機薄膜または無機薄膜を形成したもの、化学的処理や物理的処理を施したものを用いることができる。本発明の第3工程に用いられる再剥離性基板としては、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびこれらのフィルム表面をシリコーン処理したプラスチックフィルムが、接着剤と適度な接着性および剥離性を兼ね備えていることから特に望ましい。
【0029】
またコレステリック液晶フィルムと再剥離性基板との間に介される接着剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の様々な粘・接着剤、例えば光または電子線硬化型の反応性接着剤、ホットメルト型接着剤等を適宜用いることができる。
【0030】
反応性接着剤としては、光または電子線重合性を有するプレポリマーおよび/またはモノマーに必要に応じて他の単官能、多官能性モノマー、各種ポリマー、安定剤、光重合開始剤、増感剤等を配合したものを用いることができる。
【0031】
光または電子線重合性を有するプレポリマーとしては、具体的にはポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート等を例示することができる。また光または電子線重合性を有するモノマーとしては、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、2官能アクリレート、2官能メタクリレート、3官能以上の多官能アクリレート、多官能メタクリレート等が例示できる。またこれらは市販品を用いることもでき、例えばアロニックス(アクリル系特殊モノマー、オリゴマー;東亞合成社製)、ライトエステル(共栄社化学社製)、ビスコート(大阪有機化学工業社製)等を用いることができる。
【0032】
また光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン誘導体類、アセトフェノン誘導体類、ベンゾイン誘導体類、チオキサントン類、ミヒラーケトン、ベンジル誘導体類、トリアジン誘導体類、アシルホスフィンオキシド類、アゾ化合物等を用いることができる。
【0033】
光または電子線硬化型の反応性接着剤の粘度は、接着剤の加工温度等により適宜選択するものであり一概にはいえないが、通常25℃で10〜2000mPa・s、好ましくは50〜1000mPa・s、さらに好ましくは100〜500mPa・sである。粘度が10mPa・sより低い場合、所望の厚さが得られ難くくなる。また2000mPa・sより高い場合には、作業性が低下する恐れがあり望ましくない。粘度が上記範囲から外れている場合には、適宜、溶剤やモノマー割合を調整し所望の粘度にすることが好ましい。
【0034】
また光硬化型の反応性接着剤を用いた場合、その接着剤の硬化方法としては公知の硬化手段、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を使用することができる。また露光量は、用いる反応性接着剤の種類により異なるため一概にはいえないが、通常50〜2000mJ/cm2、好ましくは100〜1000mJ/cm2である。
【0035】
また電子線硬化型の反応性接着剤を用いた場合、その接着剤の硬化方法としては、電子線の透過力や硬化力により適宜選定されるものであり一概にはいえないが、通常、加速電圧が50〜1000kV、好ましくは100〜500kVの条件で照射して硬化することができる。
【0036】
また接着剤としてホットメルト型接着剤を用いる場合、当該接着剤も特に制限はないが、ホットメルトの作業温度が80〜200℃、好ましくは100〜160℃程度のものが作業性等の観点から望ましく用いられる。具体的には、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ゴム系、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等をベース樹脂として製造されているものが挙げられる。
【0037】
さらに接着剤として粘着剤を用いる場合も特に制限されるものではなく、例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系粘着剤などを用いることができる。
接着剤の厚さは、用いられる用途やその作業性等により異なるため一概にはいえないが、通常0.5〜50μm、好ましくは1〜10μmである。
【0038】
また接着剤の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えばロールコート法、ダイコート法、バーコート法、、カーテンコート法、エクストルージョンコート法、グラビアロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法を用いて再剥離性基板またはコレステリック液晶フィルムの回折パターンが転写されたフィルム面若しくは再剥離性基板およびコレステリック液晶フィルムの両方に形成することができる。
【0039】
コレステリック液晶フィルムの回折パターンが転写されたフィルム面と支持基板とを接着剤層を介して積層する方法としては特に制限されるものではないが、例えば前述の回折パターンの転写に使用することのできる機器類として例示したものの中から適宜選定する等の方法によって積層することができる。
【0040】
上記の如き接着剤層を介してコレステリック液晶フィルムと再剥離性基板とを接着せしめた後、第1工程で用いた配向支持基板をコレステリック液晶フィルムから剥離し、コレステリック液晶フィルムを再剥離性基板側に転写する。
【0041】
配向支持基板の剥離する方法としては、例えば配向支持基板のコーナー端部に粘着テープを貼り付けて人為的に剥離する方法、ロール等を用いて機械的に剥離する方法、構造材料全てに対する貧溶媒に浸漬した後に機械的に剥離する方法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、配向支持基板とコレステリック液晶フィルムとの熱膨張係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、配向支持基板そのもの、または配向支持基板上の配向膜を溶解除去する方法等を例示することができる。剥離性については、コレステリック液晶フィルムを形成しているフィルム材料の諸物性や配向支持基板との密着性によって異なるため、その系にもっとも適した方法を採用すべきである。
【0042】
上記の如くして再剥離性基板にコレステリック液晶フィルムを転写した後、第4工程としてコレステリック液晶フィルムから再剥離性基板を剥離することにより、本発明の偏光回折性コレステリック液晶フィルムを製造することができる。
【0043】
コレステリック液晶フィルムから再剥離性基板を剥離する方法は、第3工程において配向支持基板を剥離する方法として説明した各方法を適宜採用することができる。またコレステリック液晶フィルムが自己支持性に乏しい場合には、適度な自己支持性を有するシート状、フィルム状、板状等の形状を有する第2の支持基板と配向支持基板を剥離したコレステリック液晶フィルム面とを接着剤層を介して接着せしめた後に再剥離性基板を上記の方法で剥離することもできる。
【0044】
上記の如き第2の支持基板としては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリアリレート、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のシート、フィルムあるいは基板、または紙、合成紙等の紙類、金属箔、ガラス板等から適宜選択して用いることができる。さらに支持基板としては、その表面に凹凸が施されているものであってもよい。なお、必要によってはこれら基板は前述の配向支持基板と同一であってもよい。
【0045】
第2の支持基板とコレステリック液晶フィルムとの接着に用いられる接着剤としては、第3工程において用いた光または電子線硬化型の反応性接着剤等を好適に用いることができる。
さらに上記の方法、すなわち第2の支持基板を用い、再剥離性基板を剥離してコレステリック液晶フィルムを製造する際には、上述した第3工程における接着剤層に紫外線防止剤、ハードコート剤等を配合しておくことにより、支持基板/接着剤層/コレステリック液晶フィルム/保護層(接着剤硬化層)の順に構成された偏光回折素子を得ることもできる。
【0046】
本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムは、回折光が円偏光性を有するという、従来の光学フィルムには無い特異な効果を有する。この効果により、例えばエリプソメーターのような偏光を必要とする分光光学機器に用いることにより、光の利用効率を極めて高くすることが可能となる。従来の偏光を必要とする分光光学機器では、光源より発した光を回折格子やプリズム等の分光素子を用いて波長ごとに分光した後に偏光子を透過させる、または偏光子を透過させた後に分光する必要があり偏光子が必須であった。この偏光子は、入射した光の約50%を吸収してしまい、また界面での反射が生じるために光の利用効率が極めて悪いといった問題があったが、本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムを用いることにより光の利用効率を極めて高く、理論的には約100%利用することが可能となる。また本発明の製造方法によって得られる当該フィルムは、通常の偏光板を用いることによって容易に回折光の透過および遮断をコントロールすることが可能である。通常、偏光性を有していない回折光では、どのような偏光板と組み合わせても完全に遮断することはできない。すなわち本発明の製造方法によって得られる偏光回折素子では、例えば右偏光性を有する回折光は、左円偏光板を用いた時にのみ完全に遮断することができ、それ以外の偏光板を用いても完全な遮断を実現することができないものである。このような効果を有することから、例えば観察者が偏光板越しに回折像を観察する環境において、偏光板の状態を変化させることによって、回折像を暗視野から突然浮かび上がらせたり、また突然消失させたりすることが可能となる。
【0047】
以上のように本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムは、新たな回折機能素子として応用範囲は極めて広く、種々の光学用素子や光エレクトロニクス素子、装飾用部材、偽造防止用素子等として使用することができる。
【0048】
具体的に光学用素子や光エレクトロニクス素子としては、例えば透明かつ等方なフィルム、例えばフジタック(富士写真フィルム社製)、コニカタック(コニカ社製)などのトリアセチルセルロースフィルム、TPXフィルム(三井化学社製)、アートンフィルム(日本合成ゴム社製)、ゼオネックスフィルム(日本ゼオン社製)、アクリプレンフィルム(三菱レーヨン社製)等に当該フィルムを積層して偏光回折素子とすることにより様々な光学用途への展開を図ることが可能である。例えば当該偏光回折素子をTN(twisted nematic)−LCD(Liquid Crystal Display)、STN(Super Twisted Nematic)−LCD、ECB(Electrically Controlled Birefringence)−LCD、OMI(Optical Mode Interference)−LCD、OCB(Optically Compensated Birefringence)−LCD、HAN(Hybrid Aligned Nematic)−LCD、IPS(In Plane Switching)−LCD等の液晶ディスプレーに備えることによって色補償および/または視野角改良された各種LCDを得ることができる。また当該偏光回折素子を上記したように分光された偏光を必要とする分光光学機器、回折現象により特定の波長を得る偏光光学素子、光学フィルター、円偏光板、光拡散板等として用いることも可能であり、さらに1/4波長板と組み合わせることによって直線偏光板を得ることもできる等、光学用素子や光エレクトロニクス素子として従来にない光学効果を発現しうる様々な光学部材を提供することができる。
【0049】
装飾用部材としては、回折能による虹色呈色効果とコレステリック液晶による色鮮やかな呈色効果等を併せ持った新たな意匠性フィルムをはじめ様々な意匠性成形材料を得ることができる。また薄膜化できることから既存製品等に添付する、一体化する等の方法によって、他の類似製品との差別化にも大きく貢献することが期待できる。例えば、意匠性のある回折パターンを組み込んだ偏光回折性コレステリック液晶フィルムをガラス窓等に張り付けることにより、外部からはその視角によって前記回折パターンを伴ったコレステリック液晶特有の選択反射が異なった色に見え、ファッション性に優れたものとなる。また明るい外部からは内部が見え難く、それにもかかわらず内部からは外部の視認性がよい窓とすることができる。
【0050】
偽造防止用素子としては、回折素子およびコレステリック液晶のそれぞれの偽造防止効果を併せ持った新たな偽造防止フィルム、シール、ラベル等として用いることができる。例えば自動車運転免許証、身分証明証、パスポート、クレジットカード、プリペイドカード、各種金券、ギフトカード、有価証券等のカード基板、台紙等と本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムとを一体化するまたは一部に設ける、具体的には貼り付ける、埋め込む、紙類に織り込むことにより偽造防止フィルムとしての効果を発現することができる。また本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムは、回折能を示す領域がコレステリック液晶フィルムに一体化されたものであり、さらにコレステリック液晶の波長選択反射性、円偏光選択反射性、色の視角依存性、コレステリックカラーの美しい色を呈する効果を併せ持ったものである。したがって本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムを偽造防止フィルムとして用いた場合には、当該偏光回折性コレステリック液晶フィルムの偽造は極めて困難であるといえる。また偽造防止効果とあわせて、回折素子の虹色呈色効果、コレステリック液晶の色鮮やかな呈色効果を有することから意匠性にも優れたものである。これらのことから本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムは、偽造防止用素子としても好適に用いることができる。
【0051】
これらの用途はほんの一例であり、本発明の製造方法によって得られる偏光回折性コレステリック液晶フィルムは、従来、回折素子単体、通常のコレステリック配向を固定化したコレステリック配向フィルム単体が使用されている各種用途や、新たな光学的効果を発現することが可能であること等から前記用途以外の様々な用途にも応用展開が可能である。
【0052】
【実施例】
以下に実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明で使用した各種測定法を説明する。
【0053】
(GPC測定法)
東ソー製GPC(CP8000、CO8000、UV8000)に、TSKG3000HXL、G2000HXL、G1000HXLの構成のカラムを接続し、25℃℃でテトラヒドロフラン(THF)溶媒、流量0.7ml/分で測定を行った。同条件で標準ポリスチレンを用いて検量線を別途作成し、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを求めた。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
Du Pont製DSC990にて測定した。
(液晶相から等方相への転移温度(Ti)の測定)
ホットステージを設置したオリンパス(株)製偏光顕微鏡BX50にて測定を行った。
【0054】
(実施例1)
Mwが3000、Mw/Mn2.0、対数粘度が0.124dl/g、Tgが80℃、Tiが230℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィドフィルム上にスピンコート法で製膜した。次いで180℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。得られたフィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック配向が固定化されたコレステリック液晶フィルムが得られていることが確認された。
【0055】
次いでエドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面とコレステリック液晶フィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。室温まで冷却後、回折格子フィルムを取り除いた。
【0056】
回折格子フィルムが重ねられていたコレステリック液晶フィルム面を観察したところ、回折パターンに起因する虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。また回折格子フィルムを取り除いたコレステリック液晶フィルム面の配向状態を偏光顕微鏡観察および液晶層断面の透過型電子顕微鏡観察をしたところ、コレステリック相における螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行ではなく、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔ではないコレステリック配向が液晶層の表面領域に形成されていることが確認された。またそれ以外の領域においては、螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行で、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔なコレステリック配向が形成していることが確認された。この領域のコレステリック配向の螺旋巻き数は3であった。
【0057】
またコレステリック液晶フィルム面内に垂直にHe−Neレーザー(波長632.8nm)を入射したところ、0゜および約±35゜の出射角にレーザー光が観察された。さらに偏光特性を確認するために、通常の室内照明下に得られたフィルムをおき、右円偏光板(右円偏光のみ透過)を介して観察したところ、虹色の反射回折光が観察され、偏光板なしで観察した場合の明るさとほぼ同じであった。これに対し左円偏光板(左円偏光のみ透過)を介して観察したところ、暗視野となり、虹色の反射回折光は観察されなかった。
【0058】
以上のことよりコレステリック液晶フィルムには、回折能を示す領域がフィルム表面領域に形成され、またその回折光が右円偏光であることが確認された。
【0059】
コレステリック液晶フィルムの回折パターンが転写された面に、市販のアクリル系光硬化型接着剤をバーコーターで厚さ5μmとなるように塗布し、その上にシリコーン系離型層の形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネーターで積層し、紫外線照射して硬化させた後、配向支持基板として用いたポリフェニレンスルフィドフィルムの端部を手で持ち、180°方向にポリフェニレンスルフィドフィルムをポリフェニレンスルフィドフィルムとコレステリック液晶層との界面で剥離した。
【0060】
ついで、露出したコレステリック液晶層上に上述のアクリル系光硬化型接着剤を塗布し。トリアセチルセルロースフィルムを積層、紫外線照射して硬化させた後シリコーン系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離除去して偏光回折性コレステリック液晶フィルムを得た。得られた偏光回折性コレステリック液晶フィルムの液晶層の配向状態は、上述の各種観察と全く同一の結果を与えた。
【0061】
(実施例2)
Mwが7000、Mw/Mn2.0、対数粘度が0.144dl/g、Tgが85℃、Tiが230℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜した。次いで200℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック配向が固定化されたフィルムが形成されていることが確認された。
このコレステリック液晶フィルムを使用する以外は実施例1と同様に行い、偏光回折性コレステリック液晶フィルムを得た。得られた偏光回折性コレステリック液晶フィルムの液晶層の配向状態は、実施例1と同様の結果を与えた。
【0062】
(実施例3)
Mwが7000、Mw/Mn2.0、対数粘度が0.144dl/g、Tgが85℃、Tiが230℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜した。次いで200℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック配向が固定化されたフィルムが形成されていることが確認された。
【0063】
エドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折素子フィルム(900本/mm)の回折面と前記で得られたコレステリック液晶フィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、130℃、0.1MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。
【0064】
回折格子フィルムが重ねられていたコレステリック液晶フィルム面を観察したところ、回折パターンに起因する虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。また回折格子フィルムを取り除いたコレステリック液晶フィルム面の配向状態を偏光顕微鏡観察および液晶層断面の透過型電子顕微鏡観察をしたところ、コレステリック相における螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行ではなく、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔ではないコレステリック配向が液晶層の表面領域に形成されていることが確認された。またそれ以外の領域においては、螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行で、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔なコレステリック配向が形成していることが確認された。この領域のコレステリック配向の螺旋巻き数は4であった。
【0065】
またコレステリック液晶フィルム面内に垂直にHe−Neレーザー(波長632.8nm)を入射したところ、0゜および約±35゜の出射角にレーザー光が観察された。さらに偏光特性を確認するために、通常の室内照明下に得られたフィルムをおき、右円偏光板(右円偏光のみ透過)を介して観察したところ、虹色の反射回折光が観察され、偏光板なしで観察した場合の明るさとほぼ同じであった。これに対し左円偏光板(左円偏光のみ透過)を介して観察したところ、暗視野となり、虹色の反射回折光は観察されなかった。
【0066】
以上のことよりコレステリック液晶フィルムには、回折能を示す領域がフィルム表面領域に形成され、またその回折光が右円偏光であることが確認された。
次いで得られたコレステリック液晶フィルムのコレステリック液晶面に、バーコーターを使用して市販の光硬化型アクリル系オリゴマーからなる接着剤を厚さ5μmとなるように塗布した。次に塗布面にシリコーン系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを卓上ラミネーターを用いて貼り合わせ、紫外線照射し、接着剤を硬化させた後、配向支持基板として用いたポリフェニレンスルフィドフィルムの端部を手で持ち、180°方向にポリフェニレンスルフィドフィルムをポリフェニレンスルフィドフィルムとコレステリック液晶層との界面で剥離した。さらに、露出した液晶面に前述の光硬化型アクリル系オリゴマーからなる接着剤を厚さ5μmとなるように塗布し、アートンフィルム(商品名、JSR製)を積層し紫外線照射により硬化させ、シリコーン系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離除去して偏光回折性コレステリック液晶フィルムを得た。得られた偏光回折性コレステリック液晶フィルムの液晶層の配向状態は、上述の各種観察と全く同一の結果を与えた。
【0067】
(実施例4)
Mwが20000、Mw/Mn2.2、対数粘度が0.344dl/g、Tgが102℃、Tiが250℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜した。次いで220℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック配向が固定化されたフィルムが形成されていることが確認された。
【0068】
エドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面と前記で得られたコレステリック液晶フィルムの液晶面が向き合うように重ね、油圧プレスにて105℃、15MPaで30秒間加熱加圧後水冷して室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。
【0069】
回折格子フィルムが重ねられていたコレステリック液晶フィルム面を観察したところ、回折パターンに起因する虹色とコレステリック液晶に特有の選択反射とが明瞭に認められた。また回折格子フィルムを取り除いたコレステリック液晶フィルム面の配向状態を偏光顕微鏡観察および液晶層断面の透過型電子顕微鏡観察をしたところ、コレステリック相における螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行ではなく、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔ではないコレステリック配向が液晶層の表面領域に形成されていることが確認された。またそれ以外の領域においては、螺旋軸方位が膜厚方向に一様に平行で、かつ螺旋ピッチが膜厚方向に一様に等間隔なコレステリック配向が形成していることが確認された。この領域のコレステリック配向の螺旋巻き数は6であった。
【0070】
またコレステリック液晶フィルム面内に垂直にHe−Neレーザー(波長632.8nm)を入射したところ、0゜および約±35゜の出射角にレーザー光が観察された。さらに偏光特性を確認するために、通常の室内照明下に得られたフィルムをおき、右円偏光板(右円偏光のみ透過)を介して観察したところ、虹色の反射回折光が観察され、偏光板なしで観察した場合の明るさとほぼ同じであった。これに対し左円偏光板(左円偏光のみ透過)を介して観察したところ、暗視野となり、虹色の反射回折光は観察されなかった。
【0071】
以上のことよりコレステリック液晶フィルムには、回折能を示す領域がフィルム表面領域に形成され、またその回折光が右円偏光であることが確認された。
【0072】
このコレステリック液晶フィルムのコレステリック液晶面にバーコーターを使用して、リポキシSP−1509(昭和高分子(株)製商品名)に微細シリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジルR812(商品名))5重量%、紫外線吸収剤CyasorbUV−24(サイテック社製)5重量%および4重量%のルシリンTPO(BASF社商品名)を混合したイソプロピルアルコールの20重量%溶液をバーコーターで厚さ5μmとなるように塗布・乾燥し、塗布面にポリエチレンテレフタレートフィルムを卓上ラミネーターを用いて貼り合わせ、紫外線照射し、接着剤を硬化させた後、配向支持基板として用いたポリフェニレンスルフィドフィルムの端部を手で持ち、180°方向にポリフェニレンスルフィドフィルムをポリフェニレンスルフィドフィルムとコレステリック液晶層との界面で剥離させた。
【0073】
次いでポリフェニレンスルフィドフィルムが剥離されたコレステリック液晶層に紫外線硬化型の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルムを卓上ラミネーターを用いて貼り合わせ、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを微細シリカおよび紫外線吸収剤を配合した接着剤層との界面で剥離し、保護層(接着剤層(紫外線吸収剤および微細シリカ含有))/コレステリック液晶フィルム/接着剤層/トリアセチルセルロースフィルムからなる偏光回折性コレステリック液晶フィルムを得た。得られた偏光回折性コレステリック液晶フィルムの液晶層の配向状態は、上述の各種観察と全く同一の結果を与えた。
【0074】
(比較例1)
Mwが950、Mw/Mn2、対数粘度が0.06dl/g、Tgが60℃、Tiが220℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜した。次いで180℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック配向が固定化されたフィルムが形成されていることが確認された。
【0075】
エドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたコレステリック液晶フィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。得られたフィルムは、フィルムの一部に割れが生じるとともに、コレステリック配向に乱れ配向ムラが発生していた。また回折パターンに起因する虹色も呈していなかった。
【0076】
(比較例2)
Mw(重量平均分子量)が約12万、Mw/Mnが4.0、対数粘度が2.0dl/g、Tgが150℃、Tiが240℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜し、220℃20分間熱処理したところ、淡黄色系の弱い選択反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約550〜600nmで明確に特定できず、選択反射波長帯域がブロードの弱い選択反射を示した。オリンパス(株)製顕微鏡BX50で観察したところ、液晶層に多数の配向欠陥が観察された。
【0077】
次いでエドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたフィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。回折格子フィルムを取り除いた液晶面は、さらに多くの配向欠陥が発生し、また回折パターンに起因する虹色も全く呈していなかった。
【0078】
(比較例3)
Mwが95000、Mw/Mnが6.0、対数粘度が1.5dl/g、Tgが145℃、Tiが240℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜し、220℃20分間熱処理したところ、淡黄色系の弱い選択反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約550〜600nmで明確に特定できず、選択反射波長帯域がブロードの弱い選択反射を示した。オリンパス(株)製顕微鏡BX50で観察したところ、液晶層に多数の配向欠陥が観察された。
【0079】
次いでエドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたフィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。回折格子フィルムを取り除いた液晶面は、さらに多くの配向欠陥が発生し、また回折パターンに起因する虹色も全く呈していなかった。
【0080】
(比較例4)
Mwが98000、Mw/Mnが3.0、対数粘度が1.8dl/g、Tgが205℃、Tiが250℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜し、230℃20分間熱処理したところ、淡黄色系の弱い選択反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約550〜600nmで明確に特定できず、選択反射波長帯域がブロードの弱い選択反射を示した。またオリンパス(株)製顕微鏡BX50で観察したところ、液晶層に多数の配向欠陥が観察された。
【0081】
次いでエドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたフィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。回折格子フィルムを取り除いた液晶面は、さらに多くの配向欠陥が発生し、また回折パターンに起因する虹色も全く呈していなかった。
【0082】
(比較例5)
Mw(重量平均分子量)が1040、Mw/Mnが2.1、対数粘度が0.06dl/g、Tgが15℃、Tiが36℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜し、30℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック液晶層が形成されていることが確認された。
【0083】
エドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折素子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたコレステリック液晶フィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、40℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折素子フィルムを取り除いた。得られたフィルムは、コレステリック液晶相の一部が等方相に転移するとともに、コレステリック配向が乱れ、配向ムラが発生していた。また回折パターンに起因する虹色も呈していなかった。
【0084】
(比較例6)
Mw(重量平均分子量)が1030、Mw/Mnが2.2、対数粘度が0.046dl/g、Tgが20℃、Tiが115℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜し、100℃5分間熱処理したところ、金色の鏡面反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約600nm、選択反射波長帯域幅が約100nmの選択反射を示すコレステリック配向が固定化されたフィルムが形成されていることが確認された。
【0085】
エドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折素子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたコレステリック液晶フィルムの液晶面が向き合うように重ね、水圧プレス機にて、50℃、90MPa、加圧時間30秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折素子フィルムを取り除いた。得られたフィルムは、フィルムの一部に割れが生じるとともに、コレステリック配向に乱れ配向ムラが発生していた。また回折パターンに起因する虹色も呈していなかった。
【0086】
(比較例7)
Mwが98900、Mw/Mnが4.0、対数粘度が2.5dl/g、Tgが148℃、Tiが250℃の液晶性ポリエステル(R体光学活性化合物を含有)をラビング処理したポリフェニレンスルフィド上にスピンコート法で製膜し、220℃20分間熱処理したところ、淡黄色系の弱い選択反射を呈するフィルムが得られた。同フィルムを日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570にて透過スペクトルを測定したところ、中心波長が約550〜600nmで明確に特定できず、選択反射波長帯域がブロードの弱い選択反射を示した。またオリンパス(株)製顕微鏡BX50で観察したところ、液晶層に多数の配向欠陥が観察され、均一なコレステリック配向は得られていなかった。
次いでエドモンド・サイエンティフィック・ジャパン社製刻線式回折格子フィルム(900本/mm)の回折面と上記で得られたフィルムの液晶面が向き合うように重ね、東京ラミネックス社製ラミネーターDX−350を用い、120℃、0.3MPa、ロール接触時間0.5秒の条件で加熱加圧を行った。次に室温まで冷却後、刻線式回折格子フィルムを取り除いた。回折格子フィルムを取り除いた液晶面は、さらに多くの配向欠陥が発生し、また回折パターンに起因する虹色も全く呈していなかった。
【0087】
【発明の効果】
本発明では、特定物性の液晶性ポリエステルをフィルム材料として用いることにより、当該材料で得られたコレステリック配向フィルムの配向に容易に回折素子基板の回折パターンを複雑な工程や処理等を行うことなく転写することができ、その結果、従来の光学素子では示さない回折光が円偏光性を示すといった特異な光学特性を持った偏光回折性コレステリック液晶フィルムを製造することができる。さらに支持用基板が無い形態での偏光回折性コレステリック液晶フィルムの製造が可能であり、さらに回折能を示す領域を有するフィルム面とは反対の面を支持基板側に接するように配置される液晶ディスプレー等の光学素子、光エレクトロニクス素子、装飾用材料、偽造防止用素子等の光学部材として軽量化、薄膜化を達成することができ、しかも低コスト化等もできる等、優れた効果を奏するものである。

Claims (1)

  1. 配向支持基板上にGPC(ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量Mwが1000〜10万、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)が5以下、対数粘度が0.05〜2.0(フェノール/テトラクロロエタン(重量比60/40)混合溶媒において濃度0.5g/dl(温度30℃))、ガラス転移温度(Tg)が200℃以下、かつ液晶相から等方相への転移温度(Ti)が40℃以上である液晶性ポリエステルを必須成分とするフィルム材料からなるコレステリック液晶フィルムを形成する第1工程、コレステリック液晶フィルム面に回折素子基板の回折パターンを転写し、フィルムの一部に回折能を示す領域を形成する第2工程、回折パターンが転写されたコレステリック液晶フィルムのフィルム面と再剥離性基板とを接着剤層を介して接着せしめた後、コレステリック液晶フィルムから配向支持基板を剥離して、再剥離性基板に転写する第3工程、及びコレステリック液晶フィルムから再剥離性基板を剥離する第4工程、を含む偏光回折性コレステリック液晶フィルムの製造方法。
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