ディスク装置の動作停止時には、信号変換素子を搭載した信号変換素子揺動アーム(以下、単に揺動アームと言う)をデータが記録されている領域からアンローディング動作をさせて、記録媒体上の所定の領域(パーキングゾーン)に移動させて保持したり、または、信号変換素子が記録媒体の表面に対して非接触になる記録媒体の外周近傍の所定の位置に移動したりして保持している。すなわち、ディスク装置の動作停止時には揺動アームを所定の待避位置に保持するようになっている。さらに、ディスク装置の動作停止時に外部からの衝撃を受けたとき、揺動アームが待避位置から記録媒体上のデータ記録領域へ移動して、信号変換素子と記録媒体表面との衝突により記録媒体上のデータ領域表面を損傷したり、または、データ記録領域へ移動したときのデータ記録領域に接触したままの状態から動作起動することによる信号変換素子との摺動で記録媒体上のデータ領域表面を損傷したり、または、ディスク装置の他の構成部品と揺動アームが衝突することによって構成部品や揺動アームが損傷を受けるといった致命的な故障を生じないように、揺動アームを所定の待避位置に保持、または把持するための揺動アームの保持機構、または把持機構が採用されている。
以下、従来の揺動アームの保持機構または把持機構を有するディスク装置の例について説明する。
先ず、揺動アームの保持機構を有するディスク記憶装置については、一端に変換ヘッド(上述の信号変換素子に相当)、他端にコイルが取り付けられたアクチュエータアームにおいて、他端側で一体的に設けられた突起に鉄片が取り付けられ、ボイスコイルモータ(以下、VCMと言う)からなる回転軸の周りに回転可能なアクチュエータ(上述の揺動アームに相当)を構成し、また、アクチュエータアームに配設された鉄片に対向してハウジングに永久磁石を固定した構成を有し、かつ、アクチュエータアームに配設した鉄片とハウジングに固定した永久磁石によって、アクチュエータアームの保持機構を有する以下のような構成が提案されている。
すなわち、ディスク記憶装置の停止時には、VCMのコイルに電流が供給され、アクチュエータアームが所定の待避位置に移動するように作動させられ、所定の待避位置に近づくと鉄片が永久磁石に吸引されて待避位置にアクチュエータアームを固定することができるというものであり、この状態では外力が加わってもアクチュエータアームは磁気吸引力により固定されているので動くことなく、記録媒体上のデータ記録領域のデータやアクチュエータは変換ヘッドやアクチュエータアームの不用意な動きから保護されるというものである(例えば、特許文献1参照)。
また、揺動アームの把持機構を有するディスク記憶装置については、上述の揺動アームの保持機構を有するディスク記憶装置の例と同様のアクチュエータアームの保持機構を有し、さらに、ロック手段とソレノイド・コイルからなるアクチュエータアームの把持機構を設け、さらに、アクチュエータアームの把持機構は、VCMからなるアクチュエータと上下方向に係合するように弾性を有し、かつ、上方向に応力を有する板ばねがソレノイド・コイルに電流を供給することによる鉄製のプランジャの動きに応じて上下に移動させられ、プランジャの下側には第1の磁気力を有する第1の磁界供給手段としてのマグネットが配置され、上側には第2の磁気力を有する第2の磁界供給手段としてのVCMヨークが配置された構成を有し、ソレノイド・コイルは、第1の電流が供給された場合には、プランジャを押し上げるような磁気力を発生して板ばねを上側に移動させ、また、第1の電流とは異なる第2の電流が供給された場合には、プランジャを押し下げるような磁気力を発生して板ばねを下側に移動させる。また、板ばねの上方向の応力よりも大きい下向きの磁気力を有したマグネットの第1の磁気力により板ばねを下側に固定し、また、板ばねの上方向の応力に加えて、VCMヨークの第2の磁気力により、板ばねを上側に吸引して固定する構成が提案されている。
このような構成において、ディスクドライブ装置の動作時は、プランジャが第1の磁気力によりマグネットの方向に引き寄せられ、さらに、プランジャにより板ばねが下側に押えつけられて、板ばねがアクチュエータの移動を妨げることはない高さに固定されたロック解除状態になるように板ばねを固定し、また、ディスクドライブ装置の停止時は、アクチュエータを所定のロック位置(上述の待避位置に相当)に移動させ、マグネットの第1の磁気力の大きさと板ばねの応力の大きさとの差よりも大きく、かつ上向きの磁気力を発生させるような第1の電流をソレノイド・コイルに供給し、板ばねを上方向に移動させて、板ばねを上側に固定したロック状態になるように板ばねを移動させて固定する。ここで、ソレノイド・コイルへの電流供給は、ロック解除状態からロック状態、または、ロック状態からロック解除状態への移行時のみに供給され、板ばねが下側、または上側に固定されているロック解除状態、またはロック状態のそれぞれの状態にあるときは、ソレノイド・コイルには電流が供給されていない。ディスクドライブ装置の停止時に、鉄片と永久磁石による磁気吸引力と板ばねを上側に固定してロック状態としてアクチュエータを待避位置にロックすることによって、水平方向のみならず、上下方向に対しても、アクチュエータを固定することができ、衝撃によるアクチュエータの移動を防止することができるというものである(例えば、特許文献2参照)。
また、揺動アームの把持機構を有するディスク記憶装置の別の例として、アクチュエータは揺動軸を中心として回転運動可能に設けられ、その揺動軸を挟んで互いに反対側になるように配設されたヘッドアームとコイルアームからなる構成が提案されている。この構成のディスク装置は以下に示すような特徴を備えている。
(1)ヘッドアームはキャリッジアームとサスペンションアームからなり、そのサスペンションアームはランプブロックに待避するための凸部が形成されたタブを有し、その近傍に信号変換素子を搭載したヘッドスライダが実装されている。
(2)また、ボイスコイルが内面に実装されたコイルアームはアウタアームとインナアームからなる。
(3)アクチュエータの待避位置に設けられたランプブロックおよび慣性ラッチ機構がエンクロージャの内部に収納されている。
(4)エンクロージャにねじ固定されたランプブロックはランプサポートの側面から水平方向に凸設した複数のランプを有し、ランプは第1斜面、頂部平面、第2斜面、底部平面および第3斜面を含む複合平面を有している。
(5)慣性ラッチ機構は、揺動軸を中心にして揺動可能な慣性レバーと、他の揺動軸を中心にして揺動可能なラッチレバーと、ラッチレバーをアーム開放位置に保持するためのスプリングにより構成され、それぞれの揺動軸周りの慣性レバーおよびラッチレバーの慣性モーメントにおいてラッチレバーよりも慣性レバーの慣性モーメントの方が大きくなされている。
(6)慣性レバーは、ラッチレバーと第1係合部において係合するための第1係合突起および第2係合部において係合するための第2係合突起が形成された慣性アームとバランスアームとを有する。
(7)ラッチレバーは、スプリングの作用側端部と係合する2つのスプリング係合突起と位置決め突起とラッチ突起とが形成されたラッチアームと補助アームとを有しており、位置決め突起はラッチレバーのアクチュエータ開放位置およびアクチュエータラッチ位置を決めるためのものであり、ラッチ突起はラッチレバーがアクチュエータラッチ位置に動いたときにアクチュエータのインナアームの先端部に係合してアクチュエータをラッチするためのものである。
(8)ランプブロックと慣性ラッチ機構とでアクチュエータロック機構を構成している。
これらの特徴を有する構成において、ディスクドライブ装置の非動作時には、アクチュエータは待避位置にアンロードされ、サスペンションアームのタブがランプの底部平面に保持されており、微弱な衝撃に対しては、サスペンションアームのタブ凸部がランプの第2斜面、または第3斜面を登ることによりヘッドアームの揺動エネルギーを減衰させてヘッドアームの動きを抑制して、ヘッドアームが待避位置からディスク側、またはその反対側に移動することを防ぎ、ヘッドアームを待避位置に保持するアクチュエータ保持機構として機能する。また、ディスクドライブ装置の非動作時にディスクドライブ装置に衝撃が加わった場合の慣性ラッチ機構の動作において、外部からの衝撃によりアクチュエータに反時計周りに揺動させるトルクが働いたとき、慣性レバーおよびラッチレバーには、それぞれの揺動軸を中心に反時計周りに回動させようとするトルクがそれぞれ働き、慣性レバーに働くトルクがラッチレバーに働く衝撃によるトルクおよび揺動軸を中心に時計周りにラッチレバーを回動させようとするスプリングのトルクによる合力トルクよりも大きければ、慣性レバーはラッチレバーに働くトルクの向きに係わらず反時計周りに回動し、第1係合部において第1係合突起によりラッチレバーを引っ張り、ラッチレバーを反時計周りに揺動させ、ラッチアームのラッチ突起が待避位置にある状態から移動してきたインナアーム先端部に係合し、アクチュエータがラッチされ、その後、ランプの第2斜面の作用によりアクチュエータのタブはランプの底部平面に押し戻され、インナアーム先端部とラッチ突起の係合が離れ、スプリングの作用によりラッチアームはアクチュエータ開放位置に戻る。また、外部からの衝撃によりアクチュエータに時計周りに揺動させるトルクが働いたとき、慣性レバーおよびラッチレバーには、それぞれの揺動軸を中心に時計周りに回動させようとするトルクがそれぞれ働き、ラッチレバーには衝撃によるトルクの他にスプリングにより揺動軸を中心に時計周りに回動させようとするトルクが常に働いている。第2係合部において、慣性レバーに働くトルクがラッチレバーに働く衝撃によるトルクおよびスプリングによるトルクの合力よりも大きければ、第2係合部において第2係合突起によりラッチレバーを押し、ラッチレバーを反時計周りに揺動させ、ラッチアームのラッチ突起がアクチュエータの揺動範囲を規制する弾性体からなるクラッシュストップに激突して反時計周りにリバウンドしてきたインナアーム先端部に係合し、アクチュエータがラッチされるというものであり、ラッチレバーに衝撃により働くトルクよりも慣性レバーに働く衝撃によるトルクを大きくし、衝撃による慣性レバーのトルクの向きに揺動するようにするために、慣性レバーの慣性モーメントをラッチレバーの慣性モーメントよりも大きく設定し、インナアーム先端部が待避点からラッチ点に移動するよりも前に、ラッチ突起がラッチ点に移動するように、開放点からラッチ点までのラッチ突起の揺動距離、ラッチ点の位置、ラッチ突起から揺動軸までの距離等を設定して、アクチュエータを待避位置にラッチして、アクチュエータをロックし、ヘッドアームおよびヘッドスライダがディスクの配設空間に入り込むことを防止するというものである(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
特許第2803693号公報(第3頁、第1図)
特開平8−221915号公報(第4頁、第5頁、第1図、第2図、第4図)
特開平10−302418号公報(第4頁、第5頁、第1図、第2図)
特開2002−260356号公報(第5頁〜第6頁、第1図)
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1〜図8は、本発明の実施の形態におけるディスク装置におけるアクチュエータ把持装置を説明するための図である。図1はアクチュエータが待避位置にあるときのディスク装置の主要部の構成を示す平面図、図2はアクチュエータの構成を示す概略側面図、図3はアクチュエータの構成を示す分解斜視図、図4はアクチュエータが待避位置にあるときのランプブロック近傍を示す部分拡大平面図、図5はランプブロックのカバー部に沿って切断したランプ部、タブ部および記録媒体を示す部分拡大断面図、図6はタブ部の形状を示す拡大断面図、図7はアクチュエータを記録媒体側へ回動させようとする衝撃を受けた場合のタブ部によりランプ部の第1の段差側面を押圧する力を示す説明図、図8はVCMを構成するマグネット側から見たボイスコイルとマグネットを示す部分拡大平面図である。
以下、ディスク装置として磁気ディスク装置を例に挙げ説明する。
図1において、回転中心1の周りに回転するスピンドルモータ(図示せず)の回転軸2に固着されたロータハブ部3に、記録媒体層が表面上に形成された記録媒体4が載置されている。一方、回動軸5の周りにベアリング6を介して回動自在に軸支された信号変換素子揺動アームであるアクチュエータ7には、一方の端部にタブ部8が形成され、タブ部8より回動軸5側にジンバル機構(図示せず)を介して信号変換素子である磁気ヘッド(図示せず)を搭載したヘッドスライダ9が配設され、他端にはボイスコイル10が配設されており、回動軸5の周りに記録媒体4の表面と平行な方向に回動する。そして、アクチュエータ7に設けられたタブ部8に当接してアクチュエータ7を上下にガイドするように、ガイド部が設けられたランプ部14を有するランプブロック15がシャーシ、または他の筐体に取り付けられている。また、ボイスコイル10に対向するようにボイスコイル10の上方、すなわちボイスコイル10が設けられたアクチュエータ7に対して記録媒体4とは反対側にマグネット11を固着した上側ヨーク12がシャーシ、または他の筐体(図示せず)に取り付けられており、また、ボイスコイル10を挟むようにしてボイスコイル10に対向させてその下方に下側ヨーク13がシャーシ、または他の筐体に取り付けられている。さらに、ボイスコイル10、ボイスコイル10に対向する上側ヨーク12に固着されたマグネット11および下側ヨーク13によってVCMが構成されている。マグネット11に対向したボイスコイル10に電流を供給することによって、VCMが作動し、アクチュエータ7が記録媒体4の半径方向に回動させられ、磁気ディスク装置の動作時は、アクチュエータ7が回動軸5の周りに回動して回転中の記録媒体4のデータ記録領域上を移動し、磁気ディスク装置の非動作時には、アクチュエータ7を時計方向に回動させて、アクチュエータ7を待避位置であるランプ部14の所定の位置まで回動する。
次に、アクチュエータ7の構成について図2および図3を用いて説明する。図2および図3において、一方の端部にタブ部8および他方に穴部21aを有するヘッド支持アーム21に、ジンバル機構22を介して磁気ヘッド(図示せず)を搭載したヘッドスライダ9を配設して、ヘッド支持アームユニット23を構成している。なお、ヘッドスライダ9の中心部分近傍に当接するようにディンプル21bをヘッド支持アーム21の下面に設けて、ジンバル機構22を介してヘッドスライダ9を取り付けたとき、そのディンプル21bがジンバル機構22、またはヘッドスライダ9の上面(磁気ヘッドが搭載された面とは反対側の面)の略中心部に当接するようにすることによって、磁気ディスク装置の動作時におけるヘッドスライダ9の記録媒体4に対するロール、またはピッチ方向の不要な振動等にも柔軟性よく追従することができる。さらに、ボイスコイル10が穴部24aを有するボイスコイルホルダ24に取り付けられ、ボイスコイル10を挟んで穴部24aの反対側にバランサ25が固着されて構成されたボイスコイル部26をヘッド支持アームユニット23に固着し、アクチュエータサブユニット27を構成する。なお、ヘッド支持アームユニット23とボイスコイル部は別部材として記述したが、何らこれに限るものではなく一体化された1つのユニットとしてもよい。
一方、上面から見て略環状で側面から見ると略Z字状に2段に折り曲げられた弾性手段である板ばね部28の一端が半円環形状のばね固定部材29を介して一対のピボット30a、30bと穴部30cを有するピボット軸受30に固着されており、さらに、板ばね部28をヘッド支持アーム21の穴部21aに貫通させ、ピボット軸受30の接合部となる一対のピボット30a、30bをヘッド支持アーム21の上面に当接させて板ばね部28の他端をヘッド支持アーム21の下面に固着し、板ばね部28と一対のピボット30a、30bを介してヘッド支持アーム21を構成要素とするアクチュエータサブユニット27とピボット軸受30が弾性手段である板ばね部28によって弾性的に接続され、かつ、ピボット軸受30の接合部となる一対のピボット30a、30bとヘッド支持アーム21の上面とのそれぞれの当接点P1および当接点P2を支点としてアクチュエータサブユニット27を構成するヘッド支持アーム21のタブ部8側を下方に押し下げるように板ばね部28が作用するようになされ、アクチュエータアーム31を構成している。したがって、磁気ディスク装置の動作時、ヘッド支持アームユニット23にジンバル機構22を介して取り付けられたヘッドスライダ9が記録媒体4の表面に対して浮上しているときのヘッドスライダ9のロード荷重は、ピボット軸受30の接合部となる一対のピボット30a、30bのそれぞれの当接点P1および当接点P2によるヘッド支持アームユニット23に対する板ばね部28の変形による反力としての記録媒体4方向への圧縮応力によって生じることになり、ヘッドスライダ9にかかる記録媒体4方向の付勢力とその逆方向の浮揚力との関係によってヘッドスライダ9が浮上し、板ばね部28を変形させて、ヘッドスライダ9、すなわち磁気ヘッドと記録媒体4との間に一定の空隙を保って磁気ディスク装置の記録再生が行われる。
さらに、一端側がピボット軸受30の穴部30cの内径よりも大きな外径を有するフランジ32aと、他端側がピボット軸受30の穴部30cの内径よりも小さな外径を有するねじ部32bと、フランジ32aとねじ部32bとの間にピボット軸受30の穴部30cと嵌合する外径を有する円筒部32cからなる中空つば付き円筒形状の軸受部32を、ピボット軸受30の穴部30c、ばね固定部材29の半円環形状の内側、板ばね部28の円環状の内側およびボイスコイルホルダ24の穴部24aに貫通させ、一方、フランジ32aとは反対側から円筒部32cに嵌合する内径とボイスコイルホルダ24の穴部24aを貫通する外径を有し、一方に側面から見た形状が略Z字状の板ばね部28がばね固定部材29に当接している部分と略同様の形状を有する半円環形状の突出部33aを設けた中空のカラー33を突出部33aが軸受部32のフランジ32a側となるようにして軸受部32の円筒部32cに嵌合させて挿入し、突出部33aの上面33bがばね固定部材29に固着された板ばね部28の略環状の平面部分に当接するようにして、カラー33をばね固定部材29とそのばね固定部材29に固着当接している板ばね部28の平面部分とともに軸受部32のフランジ32aとナット34によって挟持して一体化し、アクチュエータ7を構成している。
次に、アクチュエータ7を構成するピボット軸受30に設けられて接合部となる一対のピボット30a、30bの位置について説明する。ピボット30aとピボット30bがヘッド支持アーム21の上面に当接するそれぞれの当接点P1と当接点P2を結ぶ線が、図1に示すアクチュエータ7の回動軸5の軸心を通り、かつ、図1に示すアクチュエータ7の長手方向の中心線16に垂直になるように形成されている。なお、当接点P1と当接点P2をアクチュエータ7の回動軸5の軸心に関して互いに対称的な位置にあるように配置して、当接点P1と当接点P2を結ぶ線の中点を回動軸5の軸心に略一致させることが望ましい。このように構成することによって、アクチュエータ7を構成するアクチュエータサブユニット27はピボット30aおよびピボット30bの当接点P1と当接点P2を結ぶ線の周りに記録媒体4の表面に垂直な方向に回動可能となり、板ばね部28の弾性力によって、アクチュエータサブユニット27を構成するヘッド支持アーム21に搭載されたヘッドスライダ9側が記録媒体4方向へ付勢されることになる。
さらに、アクチュエータ7の重心位置を、アクチュエータサブユニット27を構成するヘッド支持アーム21の上面に当接するピボット軸受30のそれぞれの当接点P1および当接点P2を結ぶ線の中点に略一致させるようにバランサ25の質量(重量)を設定して、ボイスコイル部26を構成するボイスコイルホルダ24の一端にバランサ25を固着する。すなわち、アクチュエータ7を構成したとき、アクチュエータ7の重心位置は、アクチュエータ7の回動軸5の軸心に略一致するように構成する。なお、近似的には、アクチュエータサブユニット27の重心位置を上述のように回動軸5の軸心に略一致するようにしてもよく、このときアクチュエータ7の重心位置とのずれが実用上は問題にはならない程度のものである。また、バランサ25はボイスコイルホルダ24の一端に固着するように記述したが、アクチュエータ7を構成するそれぞれの構成部品の質量(重量)配分によっては、ヘッド支持アームユニット23のヘッドスライダ9側に設けねばならない場合もある。
アクチュエータ7を上述のように構成することにより、アクチュエータ7を構成するヘッド支持アーム21を剛性の高い材料で形成することができ、したがって、外部からの大きな衝撃等に対する耐衝撃性が向上するとともに、ヘッド支持アーム21の共振周波数を高くすることができ、従来から問題になっていた振動モードが発生せず、セトリング動作の必要がないためにアクチュエータ7を高速で回動および位置決めすることができ、磁気ディスク装置のアクセス速度を向上することができる。また、弾性手段である板ばね部28は、ヘッド支持アーム21として1つの部材になるように一体に形成されたものではなく、ヘッド支持アーム21とは独立した別個の部材として設けられているため、ヘッドスライダ9へのロード荷重を大きく、柔軟性を高く、さらに構造体の剛性を高くしたい、という相反する要請を、それぞれ別々の構成要素の作用として独立して実現することができ、アクチュエータ7の設計が簡易になるとともに、その設計の自由度を飛躍的に広げることができる。また、従来のヘッド支持アームのような、非常に精密な板ばね部のフォーミング加工を必要とせず、従来のものと比較して簡易にヘッド支持アームを形成することができ、さらに、板ばね部28の厚み、材質等を単独で設定することもできて、板ばね部28の強度およびばね定数を所定の望む値に設定することもできる。
磁気ディスク装置の停止時には、アクチュエータ7が回動軸5の周りに回動して、記録媒体4の外側に移動させるいわゆるロード/アンロード方式を用いるのは周知の通りであり、このときのアンロード動作においてアクチュエータ7をガイドして、待避位置に導くためのランプ部14について説明する。
図4および図5において、シャーシ、または他の筐体に取り付けられたランプブロック15は、ランプ取付部41の側面から水平方向に凸設したランプ部14およびカバー部42を有し、ランプ部14の一部が記録媒体4の回転中心1の軸心方向において記録媒体4と上下に隙間を有して重複するように取り付けられている。そして、ランプ部14は、第1の斜面14a、第1の平面14b、第2の斜面14c、第1の段差側面14d、第2の平面14eおよび第2の段差側面14fからなる上面43を有し、上述のアクチュエータ7を構成するヘッド支持アーム21のタブ部8がランプ部14の上面43に当接しながら、アクチュエータ7をガイドする。また、カバー部42は、その下面とランプ部14の第1の平面14bとの間隔がその間を通過するヘッド支持アーム21のタブ部8の大きさよりも大きくなるように形成されている。なお、第2の斜面14cは必ずしも設けなくてもよい。
ランプ部14における第1の平面14bおよび第2の平面14eは回動軸5に垂直な平面にそれぞれ平行な平面上にあり、第1の段差側面14dは第2の平面14eに対して(90+α)°の角度を有する平面上にあり、回動軸5の軸心方向の高さがヘッド支持アーム21のタブ部8の回動軸5の軸心方向の高さより少なくとも大きい高さを有するように形成されている。また、第2の段差側面14fは第2の平面14eに対して略垂直な平面上にあり、その高さは第1の平面14bの位置よりも少なくとも高くなるように形成されている。なお、周知のように、記録媒体4の記録領域側とは反対側へアクチュエータ7が回動して、ランプ部14から離脱することを阻止するために、ボイスコイルホルダ24の端面に当接するストッパ(図示せず)をシャーシ、または筐体その他の構造部材に設ける場合には、上述の第2の段差側面14fは必ずしも設けなくてもよい。
磁気ディスク装置に停止指令が入力されると、記録媒体4を回転させた状態のまま、VCMに電流が供給されてアクチュエータ7を時計方向に回動させ、記録媒体4の外側に移動させる。記録媒体4の外周部近傍において、アクチュエータ7を構成するヘッド支持アーム21のタブ部8は、ランプ部14の第1の斜面14aに当接し、さらに、アクチュエータ7の時計方向への回動により、ランプ部14の第1の斜面14a、第1の平面14b、第2の斜面14c、第1の段差側面14d、第2の平面14eへと順次導かれ、アクチュエータ7の回動は停止し、第2の平面14e上においてアクチュエータ7の待避位置となる。なお、記録媒体4の回転は、アクチュエータ7がランプ部14の上面43をガイド中、または、待避位置に導かれた後に停止する。
待避位置においてアクチュエータ7を構成するヘッド支持アーム21のタブ部8が第2の平面14eに当接しているとき、アクチュエータ7を構成する板ばね部28によりタブ部8が第2の平面14eに対して押圧する付勢力F1を発生する。
また、このように構成されたランプ部14の上面を摺動するヘッド支持アーム21のタブ部8の形状について説明する。ランプ部14の第1の斜面14a、第1の平面14b、第2の斜面14cおよび第1の段差側面14dを摺動させるために、タブ部8の外周形状は、少なくとも半周以上の外周にエッジ等の引っ掛かり部がないようにする必要があり、少なくとも半周以上が円筒状になっている半円月状、または円筒状が望ましい。また、円筒状に限ることはなく、楕円形状、またはその他の楕円形状を部分的に有する形状であってもよく、滑らかに変化する曲面を有する形状であればよい。タブ部8を有するヘッド支持アーム21は通常板状の材料で形成され、その断面形状は略長方形の形状を有しているが、図6(a)に示すように、タブ部8をプレス加工等の周知の加工方法によって、その外周を半円月状形状になるように加工してもよく、また、図6(b)および図6(c)に示すように、板状のタブ部8に外形が半円月状、または円筒状等の形状を有するように樹脂等の材料で一体成形してもよい。
なお、上述の説明においては、アクチュエータ7を待避位置にガイドするランプ部14を有するランプブロック15を記録媒体4の外周部近傍に設けた構成であるが、何らこれに限ることはなく、周知のように、記録媒体4を回転させるスピドルモータが軸固定型の場合における固定軸に取り付けたり、または、装置の筐体やカバー等の構造部材に取り付けることによって、記録媒体4の回転中心1の近傍にランプブロックを設けてもよいのは言うまでもない。この場合には、ランプ部14の第1の段差側面14dは、第2の平面14eの記録媒体4の記録領域側に設けられた構成となる。
次に、磁気ディスク装置の停止時に、磁気ディスク装置が落下による衝撃、携帯運搬中の振動、または他物との衝突による衝撃等の非常に大きな外部からの衝撃を受けた場合について説明する。
回動軸5の周りに回動するアクチュエータ7は、磁気ディスク装置に加わる外部からの大きな衝撃によって、直線的加速度と角加速度を受ける。直線的加速度による衝撃力はアクチュエータ7の重心に働き、その衝撃力の大きさはアクチュエータ7の重量に依存する。また、角加速度による衝撃力は回動軸5の中心に偶力として働き、その衝撃力により生ずる偶力の大きさはアクチュエータ7の慣性モーメントに依存する。一方、上述のように、アクチュエータ7の重心位置をアクチュエータ7の回動軸5の軸心に略一致するように設定しているため、直線的加速度による衝撃力は回動軸5の軸心に働くことになり、アクチュエータ7を回動軸5およびピボット30aおよびピボット30bの当接点P1と当接点P2を結ぶ線の周りに回動させようとする力はほとんど働かず、アクチュエータ7はほとんど回動しない。しかし、直線的加速度による衝撃力における回動軸5の軸心方向の分力によって、アクチュエータサブユニット27、ばね固定部材29、板ばね部28およびカラー33は回動軸5の軸心方向の力を受け、アクチュエータサブユニット27は板ばね部28の応力に抗して回動軸5の軸心方向に移動しようとする力が働く。したがって、回動軸5の軸心方向に移動しようとする力が働いてアクチュエータサブユニット27が移動して、ヘッド支持アーム21のタブ部8がランプ部14の第2の平面14eから浮き上がったとしても、移動が終了して復元したときには、移動前の元の位置、すなわちランプ部14の第2の平面14eに戻ることになる。また、角加速度による衝撃力によって生じる偶力は、アクチュエータ7を回動軸5の周りに回動させるように働き、ランプ部14の第2の平面14eへのヘッド支持アーム21のタブ部8の押圧力(上述の付勢力F1)による摩擦に抗してアクチュエータ7を移動させようとする。したがって、磁気ディスク装置の停止時における外部からの大きな衝撃によって、アクチュエータ7の待避位置からアクチュエータ7に搭載されたヘッドスライダ9を記録媒体4の方向に、または、その反対方向に移動させようとする力は、衝撃における角加速度による衝撃力によって生じることになる。
したがって、アクチュエータ7を記録媒体4側へ回動させようとする外部からの大きな衝撃を受けた場合に、ランプ部14の第2の平面14e、すなわち回動軸5に略垂直な平面に対してθ=(90+α)°の角度を有するように形成された第1の段差側面14d上をヘッド支持アーム21のタブ部8が記録媒体4の方向に移動しないようにするためには、図7にタブ部8がランプ部14の第1の段差側面14dに当接する接点Sにおける第1の段差側面14dに作用する作用力を示すように、タブ部8が受ける衝撃による角加速度の衝撃力Fにおける第1の段差側面14d方向の分力Fsinαが、タブ部8が受ける衝撃による角加速度の衝撃力Fにおける第1の段差側面14dに垂直な方向の分力Fcosαおよび第2の平面14eに対するタブ部8の付勢力F1における第1の段差側面14dに垂直な方向の分力F1sinαによる摩擦力μ(Fcosα+F1sinα)(但し、μは第1の段差側面14dとタブ部8との間の摩擦係数)と、第2の平面14eに対するタブ部8の付勢力F1における第1の段差側面14d方向の分力F1cosαとの和よりも小さくなることが必要である。すなわち、(式1)を満足するようにすればよい。
Fsinα≦μ(Fcosα+F1sinα)+F1cosα ――― (式1)
一方、μ>0、F1>0、sinα≧0、cosα≧0であるから、(式2)となり、
μF1sinα+F1cosα>0 ――― (式2)
故に、(式3)が得られる。
μFcosα<μ(Fcosα+F1sinα)+F1cosα ――― (式3)
したがって、少なくとも(式4)を満足すれば、タブ部8が記録媒体4の方向に移動するようなことはない。
Fsinα≦μFcosα ――― (式4)
故に、第1の段差側面14dを第2の平面14eに垂直な平面に対して(式5)を満足するように形成する。
α≦tan-1μ ――― (式5)
したがって、第2の平面14eに対して(式6)を満足させる。
90≦θ=(90+α)≦90+tan-1μ ――― (式6)
一例として、μ≧0.2とすれば、α≦11°となり、ランプ部14の第1の段差側面14dが第2の平面14eに対して
θ=90°〜100°
の角度を有するように形成することによって、ヘッド支持アーム21のタブ部8はランプ部14の第1の段差側面14dによって記録媒体4の方向に移動することが阻止されることになる。
また、アクチュエータ7を記録媒体4から離れるような方向の衝撃を受けた場合、ランプ部14の第2の段差側面14fが第2の平面14eに対して略垂直、すなわち、アクチュエータ7の回動軸5の軸心に垂直な平面に略垂直な平面になるように形成されており、さらに、ランプブロック15にはカバー部42が形成されているため、外部からの大きな衝撃によってアクチュエータ7が記録媒体4から離れるように回動させる力が働いても、第2の段差側面14fおよびカバー部42によって回動が阻止され、待避位置である第2の平面14eから離脱することはない。
次に、磁気ディスク装置に動作指令が指示され、動作開始時のロード動作において、待避位置である第2の平面14eから記録媒体4方向へのアクチュエータ7の移動について図9、図10を参照しながら説明する。図9(a)は、本発明の実施の形態におけるディスク装置のアクチュエータの回転角位置とVCMによる回動トルクの関係を示すグラフであり、図9(b)は、本発明の実施の形態におけるディスク装置のアクチュエータの回転角位置とVCMによる反発駆動トルクの関係を示すグラフである。また、図10は、本発明の実施の形態におけるディスク装置の動作開始時にランプ部の段差側面に対しタブ部が押圧する作用力を示す説明図である。
先ず、アクチュエータ7を構成するボイスコイルホルダ24に固着されたVCMを構成するボイスコイル10に対向する上側ヨーク12に固着されたマグネット11について説明する。図8に示すように、記録媒体4の記録領域の中央位置に磁気ヘッド(図示せず)が位置するときのアクチュエータ7の位置において、ボイスコイル10の回動周方向の中心線71に対向させて、マグネット11のN極とS極の境界がくるようにマグネット11を着磁し、かつ、アクチュエータ7が記録媒体4の記録領域内で動作しているときのボイスコイル10の動作範囲に対応するマグネット11の回動軸5の半径方向、すなわちアクチュエータ7の長手方向における幅より、アクチュエータ7が待避位置にあるときの回動軸5の半径方向におけるマグネット11の幅が大きくなるように、マグネット11の形状が設定されて、上側ヨーク12に固着されている。
ボイスコイル10に電流が供給されると、VCMによってアクチュエータ7が回動されるとともに、ボイスコイル10とマグネット11との間にフレミングの右手の法則による磁気力が働き、ボイスコイル10への電流の方向およびボイスコイル10に対向するマグネット11の極性によって、アクチュエータ7の回動方向およびマグネット11方向への反発(吸引)方向が決まる。ボイスコイル10に一定の電流を加えたときのVCMにより発生するアクチュエータ7への回動トルクおよびマグネット11方向とは逆方向への反発駆動トルクの一例をそれぞれ図9(a)および図9(b)に示す。但し、図9(b)はVCMにロード動作の指令が指示された場合の反発駆動トルクを示すものである。また、図9(a)および図9(b)は、記録媒体4の記録領域の中央位置に磁気ヘッド(図示せず)が位置するときのアクチュエータ7におけるVCMの位置を横軸方向の原点とし、その位置からアクチュエータ7の待避位置方向を正方向(+)側としたVCMの回転角を横軸としている。
磁気ディスク装置に動作指令が指示されると、ボイスコイル10に電流が供給され、図9(a)に示されるように、VCMの回動トルクによりアクチュエータ7を記録媒体4の方向へ回動させると同時に、図9(b)に示されるように、アクチュエータ7にVCMの反発駆動トルクを与えて、ヘッド支持アーム21のタブ部8をランプ部14の第2の平面14eから上方に移動させようとする。このとき、VCMの回動トルクはアクチュエータ7を記録媒体4側の方へ移動させようとする力を生じ、アクチュエータ7を構成するヘッド支持アーム21のタブ部8において、水平駆動力F3がランプ部14の第1の段差側面14dを押圧するように働く(図10参照)。また、VCMの反発駆動トルクはアクチュエータ7を記録媒体4の表面に垂直な方向に、ピボット30aおよびピボット30bの当接点P1と当接点P2を結ぶ線の周りに回動しようとするトルクとなり、タブ部8を上方に持ち上げようとする垂直駆動力F4がタブ部8に働く(図10参照)。
図10にランプ部14の第1の段差側面14dに当接する接点Tにおける第1の段差側面14dに対してタブ部8が押圧しようとする作用力を示すように、タブ部8に働く付勢力F1およびVCMによる水平駆動力F3は第1の段差側面14dに対する押圧力となり、一方、VCMによる垂直駆動力F4は第1の段差側面14dからタブ部8を離反しようとする離反力となる。したがって、第1の段差側面14dへの押圧力における第1の段差側面14dに垂直な方向の押圧分力f1とタブ部8の離反力における第1の段差側面14dに垂直な方向の離反分力f2の関係によって、アクチュエータ7をランプ部14の第1の段差側面14dを乗り越えて待避位置から記録媒体4側へ回動させることができる垂直駆動力F4を設定することができる。
第1の段差側面14dに垂直な方向の押圧分力f1および離反分力f2は、それぞれ(式7)および(式8)となる。
f1=F1sinα+F3cosα ――― (式7)
f2=F4sinα ――― (式8)
したがって、押圧分力f1と離反分力f2の関係が(式9)を満たすときには、
f1≦f2 ――― (式9)
タブ部8は第1の段差側面14dに対して押圧する力は働かない。故に、ランプ部14の第1の段差側面14dを乗り越えて待避位置から記録媒体4側へアクチュエータ7を回動させるためのVCMによる垂直駆動力F4は、(式10)を満足するように設定すればよい。
F4≧F1 ――― (式10)
また、押圧分力f1と離反分力f2の関係が、(式11)の場合には、
f1>f2 ――― (式11)
第1の段差側面14dを乗り越えて記録媒体4側へアクチュエータ7を回動させるために、押圧分力f1と離反分力f2による第1の段差側面14dに対する摩擦力f3とタブ部8の付勢力F1における第1の段差側面14d方向の分力f4が加わった抗合力f5よりも、VCMによる垂直駆動力F4における第1の段差側面14d方向の分力f6の方が大きくなるようにすればよい。すなわち、摩擦力f3および分力f4は、それぞれ(式12)および(式13)で表される。
f3=μ(f1−f2)=μ(F1sinα+F3cosα−F4sinα) ――― (式12)
f4=F1cosα ――― (式13)
故に、抗合力f5は、(式14)となる。
f5=f3+f4
=F1cosα+μ(F1sinα+F3cosα−F4sinα) ――― (式14)
一方、垂直駆動力F4における第1の段差側面14d方向の分力f6は、(式15)によって表される。
f6=F4cosα ――― (式15)
故に、ランプ部14の第1の段差側面14dを乗り越えて待避位置から記録媒体4側へアクチュエータ7を回動させるためには、VCMによる垂直駆動力F4における第1の段差側面14d方向の分力f6と抗合力f5との間に、(式16)を満足させればよい。
F4cosα
>F1cosα+μ(F1sinα+F3cosα−F4sinα) ――― (式16)
故に、(式17)が得られる。
F4>F1+μ(F1tanα+F3−F4tanα) ――― (式17)
ここで、F4>0
tanα≧0
であるから、(式18)を得る。
F1+μ(F1tanα+F3)
>F1+μ(F1tanα+F3−F4tanα) ――― (式18)
故に、VCMによる垂直駆動力F4は(式19)となる。
F4>F1+μ(F1tanα+F3) ――― (式19)
したがって、(式19)を満足するように、VCMによる垂直駆動力F4を設定すればランプ部14の第1の段差側面14dを乗り越えて待避位置から記録媒体4側へアクチュエータ7を回動させることができる。
また、図9(b)に示されるように、アクチュエータ7が待避位置近傍にあるときの反発駆動トルクは大きく、記録媒体4の記録領域上を移動しているときの反発駆動トルクは非常に小さくなり、磁気ディスク装置の記録再生動作には何ら悪い影響を与えるものではない。
磁気ディスク装置を上述のようなアクチュエータ7、VCMおよびランプブロック15によって構成することによって、磁気ディスク装置の停止(非動作)時に外部からの大きな衝撃を受けても、アクチュエータ7を構成するヘッドスライダ9が配設されたヘッド支持アーム21のタブ部8が、その待避位置であるランプ部14の第2の平面14eから離脱することはなく、また、磁気ディスク装置の動作時には、VCMのボイスコイル10が設けられたアクチュエータ7に対して記録媒体とは反対側にマグネット11を設けてボイスコイル10に対向させる構成とすることによって、タブ部8がランプ部14の第2の平面14eから容易に離脱して、記録媒体4の表面上にヘッドスライダ9が対向するようにアクチュエータ7を回動させることができて、磁気ディスク装置を記録再生動作させることができ、磁気ディスク装置の停止時におけるアクチュエータ把持装置のための個別の部材を必要とせず、把持機構としてのコストおよびスペースが不要であり、安価で、かつ、小型化された磁気ディスク装置を実現することができる。
なお、上述の説明においては、アクチュエータ7の待避位置が記録媒体4の外側にあり、そのときのマグネット11の配設位置をボイスコイル10が設けられたアクチュエータ7に関して記録媒体4側とは反対側に設けて、ボイスコイル10に対向させた構成を説明したが、図11に示すように、記録媒体4の記録領域の内側、すなわち記録媒体4の回転中心1近傍に上記のランプブロック15に相当するアクチュエータ7の待避位置103を設け、別のマグネット105をボイスコイル部26のボイスコイルが設けられたアクチュエータ7に関して記録媒体4側に設けて、別のマグネット105に対向させて別のボイスコイル104を設けて別のVCMを構成することもできる。
図11において、図1および図2と対応する同じ要素については同一符号を付しており、アクチュエータ7が備えるアクチュエータサブユニット27は、ベアリングを有する回動軸5を中心として回転自在に軸支されており、回動駆動手段であるVCMを駆動することにより、記録媒体4の所定のトラック位置に位置決めできる。アクチュエータサブユニット27、回動軸5を有する軸受部およびボイスコイル部26からアクチュエータ7が構成されている。なお、回動駆動手段としては、図11に示したようなボイスコイル部26を用いることができるが、記録媒体4面に水平な方向のヘッド支持アーム21の回動を担っている。
また、記録媒体4の回転中心1近傍に上記のランプブロック15に相当するアクチュエータ7の待避位置103の構成については、図5に断面図で示した構造と略同様の構成を利用でき、重複を避けるため説明は省略する。
また、これまで説明してきた本発明の実施の形態におけるディスク装置のアクチュエータの構成では、図3に示すように、ピボット軸受30の接合部となる一対のピボット30a、30bがヘッド支持アーム21の上面にそれぞれの当接点P1、P2で当接する構成になっているが、図12に示すように、接合部となる一対のピボット30a、30bをヘッド支持アーム21に形成し、ピボット軸受30の下面とそれぞれの当接点P1、P2で当接する構成であってもよい。なお、図12はピボットをヘッド支持アームに形成した構成の例となる本発明の実施の形態における磁気ディスク装置に備わるアクチュエータの他の構成を示す部分側面図である。図12において、図3と対応する同じ要素については同一符号を付している。
図12においては、軸受部およびボイスコイル部を省略していること、また、ピボット軸受を構成する接合部となる一対のピボット30a、30bを一方の端部にタブ部8を有するヘッド支持アーム21の他端側に形成し、かつ、ピボット軸受30の下面と一対の接合部となるピボット30a、30bが当接点P1、P2で当接している構成のみが、図3に示したアクチュエータの構成とは異なっている。その他の構成および動作方法等は図1、図2、図3を用いて説明したアクチュエータと同じであり、重複を避けるため説明を省略する。
また、上記の説明においては、ピボットの形状について言及しなかったが、円錐、多角錐、半球、半楕円体等のような形状で、ヘッド支持アーム21と当接点で当接する形状であればよい。また、いわゆるかまぼこ形状である半円柱や半楕円柱の他、多面体の稜線を利用して線で当接させることも可能である。図13には、半円柱を利用したピボットの例を示している。
なお、図12に示したこれらの構成においても、アンロード動作においてアクチュエータをガイドして、タブ部8を待避位置に導くためのランプ部が示されていないが、本発明の実施の形態における磁気ディスク装置においては、ピボット軸受を構成する接合部となる一対のピボット30a、30bが一方の端部にタブ部8を有するヘッド支持アーム21の他端側に形成し、かつ、ピボット軸受30の下面と接合部となる一対のピボット30a、30bが当接点P1、P2で当接している構成を有するアクチュエータであっても、図1、図4および図5に示したランプ部をそのまま適応させることができることは当然である。
なお、上述の本発明の実施の形態におけるディスク装置のアクチュエータ7を構成するピボット軸受30の説明に当たって、図2および図3に半楕円球形状のピボット30a、30bを示したが、本発明の実施の形態ではこれに限定されるものではない。一対のピボットの各頂点を結ぶ線がヘッド支持アーム21の長手方向の中心線と垂直な方向にあって、ピボットの各頂点とヘッド支持アーム21の上面とのそれぞれの当接点P1および当接点P2を支点として記録媒体4の記録面に垂直な方向にヘッドスライダ9を回動できるように、半球形状、角錐形状、または円錐形状のように当接点P1および当接点P2を有する形状で構成してもよい。また、ピボット軸受に代えて支点ではなく支線でもって記録媒体4の記録面に垂直な方向にヘッドスライダ9を回動できる軸受構成も可能である。具体的には軸受を、一対のピボットで形成する代わりに、ヘッド支持アーム21の長手方向の中心線と垂直な方向にあって、ピボットの各頂点を結ぶ線と同様な線上に楔型の形状で構成してもよい。さらに、半円柱、半楕円柱のようにヘッド支持アーム21の上面との支線を形成できる形状で軸受を構成することも可能である。
また、上述の本発明の実施の形態の説明においては、磁気ディスク装置を例にとって説明したが、何らこれに限ることはなく、光磁気ディスク装置や光ディスク装置等の非接触型のディスク記録再生装置に適用してもよいのは言うまでもない。
以上のように本発明の実施の形態によれば、アクチュエータの設計の自由度を飛躍的に広げ、アクチュエータを構成するヘッド支持アームを剛性の高い材料で形成して、外部からの大きな衝撃等に対する耐衝撃性を向上させるとともに、アクチュエータに組み込まれたヘッドスライダに対するロード荷重を大きくすることができ、ディスク装置の動作中における外部からの振動、または衝撃に対して高い耐衝撃性を有し、また、ヘッド支持アームの共振周波数を高くすることができ、さらに、アクチュエータを高速で回動および位置決めすることができ、高速化されたアクセス速度を有する優れたディスク装置を実現することができる。
また、ディスク装置の停止時(非動作時)、すなわち、アクチュエータが待避位置に保持されているときに、外部からの大きな衝撃に対して、アクチュエータはその重心位置において直線的加速度の回動軸の軸心方向の分力と、角加速度による偶力を受けて、アクチュエータを移動させようとするが、ランプ部の第1の段差側面、または第2の段差側面がアクチュエータを構成するヘッド支持アームのタブ部の移動を阻止し、アクチュエータの待避位置であるランプ部の第2の平面上にタブ部を把持することができる。したがって、アクチュエータの回動軸の軸心を通り、かつ、アクチュエータの長手方向の中心線に垂直な線の周りに、ヘッドスライダおよびタブ部を有するヘッド支持アームが回動するように構成されたアクチュエータと、タブ部をガイドしてアクチュエータの待避位置であるランプ部の第2の平面に対して、その両側に第2の平面に略垂直な側面を有するそれぞれ第1の段差側面および第2の段差側面が設けられたランプとを組合わせ、ボイスコイルが配設されたアクチュエータを挟んで、記録媒体とは反対側に上側ヨークに固着されたマグネットと、記録媒体側に下側ヨークとを配設してVCMを構成することによって、非常に高い耐衝撃性を有するアクチュエータ、すなわち信号変換素子揺動アームの把持機構を実現することができる。また、ディスク装置の動作開始時には、VCMを構成するボイスコイルとマグネットとの間に反発駆動トルクが発生して、アクチュエータサブユニットをアクチュエータの回動軸の軸心を通り、かつ、アクチュエータの長手方向の中心線に垂直な線の周りに回動させようとするトルクが働き、アクチュエータサブユニットの先端部にあるタブ部を上方に移動させる力が発生するとともに、アクチュエータを回動軸周りに回動させる力も発生して、アクチュエータを待避位置から離脱させ、記録媒体の表面上の方向へ移動させる。
このようなアクチュエータ把持機構においては、信号変換素子揺動アームであるアクチュエータを把持するための個別の部材を必要とせず、把持機構としてのコストおよびスペースが不要であり、安価で、小型化され、かつ、非常に高い耐衝撃性を有するディスク装置を実現することができる。