JP4243910B2 - 遠心成形用金型の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機やレーザプリンタ等に使用されるシームレスベルト等の中空の成形品を成形する遠心成形用金型の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シームレスのシームレスベルトを製造する場合には、図示しないが、金型に流動性の樹脂材料を注入し、金型を回転させながら加熱し、金型の内周面に樹脂材料を遠心力により付着させ、その後、金型を冷却することにより、チューブ状のシームレスベルトを製造している。
金型は、鉄鋼やステンレス等の材料を使用して円筒状に形成されている。この種の金型は、先ず、鉄鋼等の材料が管状体に押出成形され、この管状体の内周面と外周面とがそれぞれ所定の寸法に研削加工された後、管状体の内周面に研削加工あるいは硬質クロムメッキ等の処理が施されることにより、作製される。樹脂材料としては、有機溶媒を含む溶液が使用され、固形分濃度が略20%以下とされている。
【0003】
ところで、金型は、厚さ精度、真円度、内周面精度等のトータル精度に関し、研削刃の磨耗、加工装置の芯ぶれ、研磨加工のムラ等の要因により、数十μmオーダーのばらつきを有している。これに対し、電子写真複写機やレーザプリンタ等に使用されるシームレスベルトには、特に厳しい厚さ精度が要求されている。具体的な数値にして表わすと、最大値‐最小値で20μm以下、極端な場合には10μm以下である。
【0004】
従来の金型、樹脂材料を使用してシームレスベルトを成形する場合には、金型に上記したばらつきがあっても、有機溶媒の揮発に伴い、厚さばらつきも略同様の割合で減少するので、十分に使用可能なシームレスベルトを得ることができる。例えば、50μmのばらつきを有する金型と固形分量20%以下の樹脂材料とを使用した際、成形されるシームレスベルトは、厚さばらつきが約10μmとなり、十分使用に耐え得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機溶媒量の多い材料を使用して中間転写ベルト等のシームレスベルトを製造する場合、有機溶媒の乾燥に長時間を要するので、生産性が著しく悪化するという問題がある。
係る点に鑑み、本発明者等は、固形分の大きな材料、具体的には30%以上の材料、より好ましくは熱硬化性の樹脂を用い、100%固形分の材料を使用したシームレスベルトの作製を試みた。しかし、有機溶媒の揮発に伴う厚さのばらつき減少の割合が小さいか、全くないため、金型の有する数十μm以下のばらつきをシームレスベルトが負担することとなり、到底使用に耐え得るものではなかった。
【0006】
一方、近年の印刷品位の高精細化により、さらに厚さ精度の高いシームレスベルトが要求されてきている。しかし、金型に20μm以内、さらには10μm以内の高精度を従来の加工法で求めることは非常に困難である。また、このような精度で金型を作製するためには、寸法測定と修正とを繰り返す必要があり、高度な技術と長時間を要するので、金型自体のコストアップを招き、結果としてシームレスベルトのコストが上昇することとなる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、優れた生産性を得るために固形分30%以上、好ましくは100%の樹脂材料を使用した場合でも、非常に優れた厚さ精度のシームレスベルト等を安価に製造することのできる遠心成形用金型の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明においては上記課題を解決するため、中空の成形品を成形する遠心成形用金型の製造方法であって、円筒の管状体を押出成形してその内外周面をそれぞれ研削加工し、この管状体の内周面に粗面化処理を施し、管状体の開口した両端部に孔付きの蓋をそれぞれ着脱自在に取り付け、管状体を外部から加熱しながら回転させるとともに、管状体内に固形分濃度50%以上の樹脂材料を蓋の孔を介し注入して管状体の内周面にコート層を遠心力により積層し、その後、コート層を乾燥硬化させることを特徴としている。
なお、管状体の内周面両端部に、環状の堰をそれぞれ設けることができる。
すなわち、本発明者等は、加工済みの管状体の精度を別部材で調整すれば良いことに着目し、このための方法や材料について種々検討した。その結果、上記方法を採用すれば、高精度の遠心成形用金型の製造方法を得ることができることを確認し、本発明を完成させた。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における遠心成形用金型は、図1や図2(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、金型9を形成する管状体1に、固形分濃度50%以上の樹脂材料7を注入し、管状体1を回転させてその内周面にコート層8を積層成形するようにしている。
【0010】
金型9は、鉄鋼、ステンレス、アルミニウム合金等の材料を使用して円筒状に形成される。この金型9は、鉄鋼、ステンレス、アルミニウム合金等の材料が管状体1に押出成形され、この管状体1の内周面と外周面とがそれぞれ所定の寸法に研削加工された後、管状体1の内周面にコート層8との接着性を向上させるために粗面化処理が施される。
【0011】
コート層8を形成する樹脂材料7は、コート層8の成形時に固形分濃度50%以上の状態で遠心成形可能な流動性を有する必要がある。好ましくは、100%固形分で遠心成形可能な樹脂材料7、すなわち、熱硬化性の樹脂材料7の使用が最適である。具体的には、50,000mPa・s以下となるよう調整するのが良い。これは、50,000mPa・sを超える粘度の場合には、遠心力による管状体1の内周面に対するレベリングが困難になるからである。下限については、特に限定されるものではないが、樹脂材料7の取り扱い上、10mPa・s以上が適切である。
【0012】
樹脂材料7の固形分濃度が50%以上なのは、50%未満では得られる金型9の寸法ばらつきを補正する効果が小さくなり、厚さ精度に優れるシームレスベルトを得られなくなるからである。また、金型9を用いて溶液タイプの樹脂材料からなるシームレスベルトを成形する場合、シームレスベルト用の成形材料に使用されている有機溶媒に対する耐性を備えたものであることが必要となる。
【0013】
以上の観点から、樹脂材料7としては、エポキシ樹脂、架橋型ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が使用される。これらの樹脂材料7には、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、補強性フィラー、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0014】
次に、図2(a)、(b)、(c)、(d)に基づき、遠心成形用金型の製造方法について説明すると、先ず、鉄鋼、ステンレス、アルミニウム合金等の材料を使用して金型素地となる管状体1を円筒に押出成形し、この管状体1の内周面と外周面とをそれぞれ所定の寸法に研削加工した後、管状体1の内周面にサンドブラストやエッチング等の方法により粗面化処理を施す(図2(a)参照)。管状体1の内周面については、後にコート層8を成形することを考慮し、所定のシームレスベルトの寸法よりも大きめに形成する。
【0015】
次いで、管状体1の開口した両端部に、中心に孔3を備えた蓋2をそれぞれ着脱自在に嵌合し、遠心成形装置4に管状体1を回転可能に搭載支持させる(図2(b)参照)。遠心成形装置4は、左右に並んで管状体1を支持する複数の駆動ロール(本実施形態では4本)5と、この複数の駆動ロール5に支持された管状体1内に蓋2の孔3を介して樹脂材料7を注入する進退動可能なディスペンサ装置6とから構成されている。こうして複数の駆動ロール5に管状体1を支持させたら、外部ヒータで管状体1を外部から加熱するとともに、駆動ロール5を回転させて管状体1を回転させ、管状体1内に蓋2の孔3を介して所定量の樹脂材料7をディスペンサ装置6から注入し、管状体1の内周面にコート層8を遠心力により積層成形する(図2(c)参照)。
【0016】
コート層8の厚さについては、管状体1の寸法精度にもよるので、一様にするのは困難である。但し、樹脂材料7の注入量を調整し、シームレスベルトの成形時の有効部分において、最小5μm、好ましくは10μm以上となるよう設定する。こうして管状体1の内周面にコート層8を積層成形した後、所定の時間放置して乾燥、硬化させれば、遠心成形用の金型9を製造することができる(図2(d)参照)。コート層8の乾燥、硬化条件については、適宜設定することが可能である。
【0017】
上記によれば、管状体1の内周面にコート層8を遠心成形により積層成形するので、金型9の寸法精度に起因するシームレスベルトの厚さばらつきを従来の半分以下と実に小さな値に抑制することができる。特に、熱硬化性樹脂を用い、固形分濃度100%でコート層8を成形すれば、シームレスベルトの厚さばらつきを大幅に抑制することができる。また、管状体1に高精度の加工をなんら施す必要がないので、高度な技術と長時間を要することが全くなく、これを通じて金型9のコストアップを抑制防止し、シームレスベルトのコスト上昇を防ぐことが可能になる。さらに、このような金型9で成形したエンドレスで可撓性のシームレスベルトを種々のOA機器に使用すれば、印刷精度の安定性や機器の長寿命化が大いに期待できる。
【0018】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、管状体1の内周面両端部に、例えば断面三角形状の堰10をそれぞれ周方向にエンドレスに周設して樹脂材料7の流動を規制可能とし、管状体1の外周面にはつや消し黒の耐熱塗装層11を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0019】
本実施形態によれば、環状の堰10を突設するので、シームレスベルトの軸方向の寸法を整えることができ、脱型したシームレスベルトの両端部をそれぞれカットするというカット工程を簡単に省略することができる。また、管状体1の外周面につや消し黒を塗布するので、ランプヒータを使用する場合には、エネルギー効率を大幅に向上させることができる。
【0020】
なお、上記実施形態では管状体1の外周面になんら設けないものを示したが、遠心成形時の横ぶれ防止のため、突条等の加工を施すことができる。また、複数の駆動ロール5を2本にしたり、左右方向に接離可能に構成することもできる。複数の駆動ロール5中、一の駆動ロール5は自由回転可能としても良い。また、堰10を断面矩形、半円形、半楕円形、あるいは半小判形等に形成しても良い。さらに、堰10の周設と耐熱塗装層11の形成とは、併用しても良いし、個別に行っても良い。さらにまた、シームレスベルト以外の中空成形品、例えば容器等を得るために適宜金型9を使用することも可能である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明に係る遠心成形用金型の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1
先ず、外径267.4mm、厚さ9.0mm(内径249.6mm)の一般構造用炭素鋼管を長さ500mmに切り出し、旋盤により内径250.1mmとなるよう一般構造用炭素鋼管の内周面を加工し、長さを400.0mmに整えて管状体1を形成した。この管状体1の内周面には、上記加工による研削傷が表面粗さRaで約10μm残存したが、後にコート層8を形成する際に接着強度を向上させるアンカー効果が期待できるので、そのまま用いることとした。
【0022】
次いで、樹脂材料7として、熱硬化性樹脂CPレジンM‐15〔三国製薬株式会社製、商品名〕(硬化物の比重=1.2)を使用し、触媒としてC‐2〔三国製薬株式会社製、商品名〕を、120℃で溶融させたCPレジン100重量部に対し1重量部添加した。
【0023】
次いで、管状体1の開口した両端部に、中心に孔3を備えた蓋2をそれぞれ着脱自在に嵌合し、遠心成形装置4に管状体1を回転可能に搭載支持させ、外部ヒータで管状体1を外部から140℃に加熱するとともに、駆動ロール5を回転させて管状体1を1,000rpmの回転数で回転させた。こうして管状体1を回転させたら、管状体1内に蓋2の孔3を介して所定量の樹脂材料7を水平移動可能なディスペンサ装置6から注入し、管状体1の内周面にコート層8を遠心力により積層成形した。ディスペンサ装置6の吐出速度は毎分25.0g、ディスペンサ装置6の移動速度は26.5cm/分とした。そして、この状態を15分間維持してコート層8を乾燥、硬化させ、遠心成形用の金型9を得た。
【0024】
実施例2
管状体1については、実施例1と同様とした。これに対し、樹脂材料7として、エポキシ樹脂系ワニス(固形分濃度60重量%、溶剤はキシレン:MIBK=9:1の混合溶媒)を使用した。
【0025】
次いで、管状体1の開口した両端部に、中心に孔3を備えた蓋2を嵌合し、実施例1と同様の遠心成形装置4に管状体1を回転可能に搭載支持させ、駆動ロール5を回転させて管状体1を1,000rpmの回転数で回転させた。管状体1を回転させたら、100℃に保った管状体1内に蓋2の孔3を介して所定量の樹脂材料7をディスペンサ装置6から注入し、管状体1の内周面にコート層8を遠心力により積層成形した。ディスペンサ装置6の吐出速度は毎分41.7g、ディスペンサ装置6の移動速度は26.5cm/分とした。そして、この状態を30分間維持して溶剤を乾燥・除去し、その後、温度を140℃に設定して30分間維持し、コート層8を乾燥、硬化させて金型9を得た。
【0026】
比較例1
実施例1と同様の管状体1の内周面を研磨加工し、硬質クロムめっき処理を施し、その後、さらに研磨加工して表面粗さをS0.2に仕上げ、遠心成形用の金型9を作製した。
【0027】
比較例2
管状体1については、実施例1と同様とした。樹脂材料7として、ポリイミド前駆体溶液(固形分濃度20重量%、溶剤はNMPを使用)を使用した。
【0028】
次いで、管状体1の両端部に、実施例1と同様の蓋2を嵌合し、実施例1と同様の遠心成形装置4に管状体1を回転可能に搭載支持させ、駆動ロール5を回転させて管状体1を1,000rpmの回転数で回転させた。管状体1を回転させたら、100℃に保った管状体1内に蓋2の孔3を介して所定量の樹脂材料7をディスペンサ装置6から注入し、管状体1の内周面にコート層8を遠心力により積層成形した。ディスペンサ装置6の吐出速度は毎分125.0g、ディスペンサ装置6の移動速度は26.5cm/分とした。そして、この状態を60分間維持して溶剤を乾燥・除去し、温度を140℃に設定して30分間維持し、管状体1の回転を止め、その後、300℃のオーブンで8時間処理して樹脂を硬化(イミド化)し、金型9を作製した。
【0029】
評 価
実施例と比較例の金型9をそれぞれ10面作製し、各金型9で固形分100%の熱硬化性樹脂CPレジンM‐12〔三国製薬株式会社製、商品名〕、固形分15%のポリアミドイミドN‐100〔東洋紡績株式会社製、商品名〕を使用してシームレスベルトを10本作製した。
なお、金型9の内周面には、予めフッ素樹脂系の離型剤で離型処理を施した。得られたシームレスベルトについて厚さを測定(100点/本)し、厚さレンジ(最大値−最小値)の平均値を表1にまとめた。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、優れた生産性を得るために固形分30%以上、好ましくは100%の樹脂材料を例え使用した場合でも、優れた厚さ精度のシームレスベルト等を安価に製造することができるという効果がある。
すなわち、金型である管状体の内周面にコート層を遠心成形により積層成形するので、金型の寸法精度に起因するシームレスベルト等の厚さばらつきを従来の半分以下と小さな値に抑制することができる。また、金型である管状体に高精度の加工を施す必要がないので、高度な技術と長時間の作業を要することがなく、これを通じて金型のコストアップを抑制し、シームレスベルト等のコスト上昇を防ぐことができる。また、このような金型で成形したエンドレスで可撓性のシームレスベルトを種々のOA機器に使用すれば、印刷精度の安定性や機器の長寿命化が期待できる。さらに、樹脂材料の固形分濃度が50%以上なので、管状体の寸法ばらつきを補正する効果が大きくなり、厚さ精度に優れるシームレスベルトを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る遠心成形用金型の実施形態を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る遠心成形用金型の実施形態における金型の製造方法を示す説明図で、(a)図は押出成形された管状体の内外周面をそれぞれ所定の寸法に研削加工し、管状体の内周面に粗面化処理を施した状態を示す断面図、(b)図は遠心成形装置に管状体を搭載支持させた状態を示す側面図、(c)図は管状体を回転させ、管状体内に樹脂材料を注入する状態を示す断面図、(d)図は管状体の内周面にコート層を積層成形し、乾燥、硬化させて金型を製造した状態を示す部分断面図である。
【図3】本発明に係る遠心成形用金型の他の実施形態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 管状体
2 蓋
4 遠心成形装置
7 樹脂材料
8 コート層
9 金型
10 堰
11 耐熱塗装層
Claims (2)
- 中空の成形品を成形する遠心成形用金型の製造方法であって、円筒の管状体を押出成形してその内外周面をそれぞれ研削加工し、この管状体の内周面に粗面化処理を施し、管状体の開口した両端部に孔付きの蓋をそれぞれ着脱自在に取り付け、管状体を外部から加熱しながら回転させるとともに、管状体内に固形分濃度50%以上の樹脂材料を蓋の孔を介し注入して管状体の内周面にコート層を遠心力により積層し、その後、コート層を乾燥硬化させることを特徴とする遠心成形用金型の製造方法。
- 管状体の内周面両端部に、環状の堰をそれぞれ設ける請求項1記載の遠心成形用金型の製造方法。
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