JP4242395B2 - 多孔質部材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質部材およびその製造方法に関する。
触媒の担体や燃料電池の電極等には多孔質部材が使用されている。これは、触媒の担体では排出ガスを流すために圧力損失が少ないことが必要とされ、燃料電池の電極では、水素と酸素が反応して発生した水を水蒸気として速やかに電極外に排出しなければならないので、水蒸気通過時の圧力損失が少ないことが必要とされるからである。
ところで、内燃機関等の排出ガス浄化に使用される触媒の担体では、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガスや、一酸化炭素(CO)、未燃ガス(HC)等の反応性の高い物質を含む流体と接触するため、その素材には耐食性が必要とされる。また、燃料電池の電極では、その表面において電気化学反応を起すことから、加水分解に近い苛酷な状況に長時間さらされるので耐食性が必要であり、しかも、原料となる水素や酸素との間の電気化学反応によって発生する電子を運ぶために導電性も必要となる。
上記のごとく、触媒の担体や燃料電池の電極等に使用する多孔質部材には、低圧力損失であることはもちろん、耐食性や導電性とも必要であるから、これらの性質を全て備えた材料としてチタンを素材とする多孔質部材が注目されている。
本発明は、触媒の担体や燃料電池の電極等に使用可能であるチタン粉末を素材とする多孔質部材およびその製造方法に関する。
従来からチタン粉末を焼結した多孔質のチタン粉末焼結体が開発されている(例えば、特許文献1,2)。
特許文献1,2のチタン粉末焼結体は、球状ガスアトマイズチタン粉末を焼結容器内に収容し、その後、無加圧で真空焼結することにより形成されたものであり、特許文献1の実施例には空隙率が37〜44%のフィルタが記載されており、特許文献2の実施例には気孔45〜67%の焼結体が記載されている。
しかるに、内燃機関用触媒担体および燃料電池用電極において、所定の性能を維持するには、空隙率70%以上、できれば空隙率80%以上であることが好ましいが、従来例1,2のチタン粉末焼結体では、この性能を満たすことはできない。
そして、粉末を焼結容器内に封入して焼結する場合には、粉末の平均粒径を大きくすれば空隙率は大きくなるが、平均粒径を大きくすることにより形成されたチタン粉末焼結体の厚さが厚くなりすぎるため燃料電池用ガス拡散剤(電極)として使用することができないし、触媒担体に使用しても触媒自体が大型化してしまい小型の内燃機関に使用することは困難である。
しかも、粉末を焼結容器内に封入して焼結した場合、空隙は互いに接触している粉末同士の間に形成されるだけであるから(図2(A)参照)、粉末の平均粒径をいかに大きくしても空隙率は理論上50%程度にしかならない。このことは粉末の焼結等を行っている当事者の間では常識であり、粉末を焼結容器内に封入して焼結する方法では、焼結気孔率が50%を超えるような焼結体を安定して確実に製造することは、現実的には不可能である。
高い空隙率を有する多孔質焼結体を得る方法として、ポリウレタン等の合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着させ、その後焼成して、セラッミク多孔体を製造する方法が開示されている(特許文献3)。この方法によれば、ポリウレタンと同等の網目構造を有する多孔質焼結体を得ることができるため、多孔質焼結体の空隙率を50%以上とすることも可能である。
しかるに、特許文献3の方法をチタン粉末焼結体の製造にそのまま採用すると、焼結時において、合成樹脂発泡体中の炭素がチタンと結合してチタン粉末の表面に炭化チタンの層が形成されるとともに炭素がチタン中に拡散してしまう。そして、合成樹脂発泡体中には大量の炭素が存在しているので、大部分のチタン粉末が炭化チタンの層を表面に有する粉末や炭素含有量の高い粉末となってしまい、焼結が困難になる。たとえ焼結できたとしても、焼結体の導電性が悪化し粉末同士の結合力が低下して焼結体としての強度は低下するので、焼結体を燃料電池用ガス拡散剤(電極)として使用することができないし、振動や衝撃に弱くなるので小型の内燃機関に使用することは困難である。
しかも、合成樹脂発泡体を除去するときに、合成樹脂発泡体中の酸素や周囲に存在する気体中の酸素がチタンと反応してチタン粉末の表面に酸化チタンの層が形成される。酸化チタンの層が形成されると、チタン粉末におけるチタン原子同士が接触できなくなるため、チタン粉末同士の結合が妨げられ焼結が困難になり、たとえ焼結できたとしても、焼結体の強度が低下するという問題も生じる。上記のごとき問題もあり、特許文献3の方法はこれまでチタン粉末焼結体の製造に全く採用されていない。
以上のごとき事情もあり、これまではチタン粉末焼結体は空隙率が50%程度のものしか製造されておらず、せいぜいガスクロマトグラフィ等のフィルタに使用されているに過ぎなかった。ガスクロマトグラフィ等のフィルタであれば、空隙率が50%程度であっても十分に機能するのであるが、空隙率70%以上が必要とされる内燃機関用触媒担体および燃料電池用電極には使用されておらず、また、内燃機関用触媒担体および燃料電池用電極に使用できるチタン粉末焼結体は、現在のところ製造されていない。
特開2002−662993号 特開2002−317207号 特開平10−101451号
本発明は上記事情に鑑み、空隙率が50%以上であり、内燃機関用触媒担体および燃料電池用電極に使用することができる多孔質材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
第1発明の多孔質部材の製造方法は、チタン粉末同士が結合することによって形成された多孔質部材の製造方法であって、チタン粉末を含有するスラリーに網目状構造を有する基礎材料を浸漬して、該基礎材料における網目状構造の表面にスラリーを付着させてスラリー付着材料を形成し、該スラリー付着材料を加熱して前記基礎材料を除去しチタン構造体を形成し、該チタン構造体を、真空又は不活性ガス雰囲気中で加熱して、α相の状態のまま拡散接合し得る温度に一定時間保持して拡散接合を生じさせた後、β相に変態させることを特徴とする。
第2発明の多孔質部材の製造方法は、第1発明において、前記チタン構造体を600℃以下で形成することを特徴とする。
第3発明の多孔質部材の製造方法は、第1または第2発明において、前記スラリー付着材料を、昇温速度1.5℃/min未満で加熱することを特徴とする
第4発明の多孔質部材の製造方法は、第1、第2または第3発明において、炭素と反応する炭素吸収部材とともに、チタン構造体を加熱することを特徴とする。
発明の多孔質部材の製造方法は、第1、第2または第3発明において、酸素と反応する酸素吸収部材とともに、チタン構造体を加熱することを特徴とする。
発明の多孔質部材の製造方法は、第1、第2または第3発明において、水素化チタンとともにチタン構造体を加熱することを特徴とする。
発明の多孔質部材の製造方法は、第1、第2または第3発明において、スポンジチタンとともにチタン構造体を加熱することを特徴とする。
発明の多孔質部材は、請求項1,2,3,4,5、6または7記載の方法によって製造された多孔質部材であって、チタン粉末同士の接合によって形成された中空な骨格を有しており、該骨格によって網目構造が形成されていることを特徴とする
発明の多孔質部材は、第8発明において、チタン粉末の平均粒径が200μm以下であることを特徴とする。
10発明の多孔質部材は、第8または第9発明において、空隙率が50%以上であることを特徴とする
第1発明によれば、基礎材料の骨格表面に層状に付着していたチタン粉末が、その層状構造を維持したままで互いに接合するので、基礎材料と同等のスポンジ(海綿)状の網目状構造を有し、しかも、基礎材料と同等または同等以上の空隙率を有する多孔質部材を形成することができる。そして、多孔質部材の網目状構造は、チタン粉末が結合して形成されているから、通気性、耐食性に優れることはもちろん、構造的な強度も強くなり、二輪車や手動工具等に使用する内燃機関の排ガス処理用触媒における触媒担体への使用も可能となる。しかも、導電性が高いので、燃料電池用の電極としても使用することができる。また、チタンをα相の状態において一定時間保持しその保持温度を800℃程度にしている間は、不動態被膜の活性は高いものの遊離炭素や酸素がチタン内部に拡散する速度を遅くすることができる。すると、チタンをα相の状態に保持している間に、チタン粉末同士を連結していた炭素や不動態被膜を形成した酸素等を、互いに反応させたり水素などの他の物質と反応させたりしてチタン粉末から分離させることができる。そして、炭素や酸素が少ない状況となってからβ相に変態させるので、チタン粉末内部に拡散する酸素や炭素も少なくでき、チタンの脆性を向上させることができる。しかも、β相に変態させた状態においても焼結が進行するので、チタン粉末同士の結合を強くすることができ、多孔質部材の強度を高くすることができる。
第2発明によれば、チタン粉末表面に形成されている不動態被膜の活性が低いので、不動態被膜が維持されたまま基礎材料等を除去することができる。すると、基礎材料等が分解したときに発生する炭素や酸素がチタン粉末に固溶したり拡散したりすることを防ぐことができる。
第3発明によれば、基礎材料等を除去する際に、基礎材料の蒸発発散を緩やかにすることができるので、遊離炭素によってチタン粉末同士を連結させることができる。
第4発明によれば、樹脂部材やスラリーに含まれていた炭素を炭素吸収部材が吸収するので、チタン粉末が炭素と結合してチタン粉末表面に炭化チタンの層が形成される確率を低くすることができ、また、チタン粉末内部に拡散する炭素を少なくすることができる。すると、多孔質部材中におけるチタンの純度を高めることができ、チタン粉末同士の結合を強くすることができるから、多孔質部材の強度や脆性を向上させることができる。
発明によれば、樹脂部材やスラリーに含まれていた酸素や、チタン構造体の周囲に存在する酸素を酸素吸収部材が吸収するので、チタン粉末が酸素と結合してチタン粉末表面に酸化チタンの層が形成される確率を低くすることができ、また、チタン粉末内部に拡散する酸素を少なくすることができる。すると、多孔質部材中におけるチタンの純度を高めることができ、チタン粉末同士の結合を強くすることができるから、多孔質部材の強度や脆性を向上させることができる。
発明によれば、加熱により水素化チタンから水素が分離し、この水素がチタン構造体を構成するチタン粉末から酸素や炭素を奪う。つまり、チタン粉末が還元されることによって、チタン粉末表面に酸化チタンの層や炭化チタンの層が形成されることを防ぐことができ、チタン粉末内部に拡散する炭素や酸素を少なくすることができる。よって、製造されたチタン構造体の導電性や強度、脆性が低下することを防ぐことができる。
発明によれば、スポンジチタンがチタン構造体を構成するチタン粉末から酸素や炭素を奪う。つまり、チタン粉末が還元されることによって、チタン粉末表面に酸化チタンの層や炭化チタンの層が形成されることを防ぐことができ、チタン粉末内部に拡散する酸素を少なくすることができる。よって、製造されたチタン構造体の導電性や強度、脆性が低下することを防ぐことができる。
発明によれば、第1発明ないし第7発明によって製造されたものであるため、チタン粉末が結合した骨格によって、スポンジ(海綿)状の構造を有するウレタンフォーム等と同等または同等以上の空隙率を有する網目状構造の多孔質部材となっている。そして、網目状に配置された骨格はチタン粉末が結合して形成されたものであるから、通気性、耐食性に優れることはもちろん、構造的な強度も強、二輪車や手動工具等に使用する内燃機関の排ガス処理用触媒における触媒担体への使用も可能である。しかも、導電性が高いので、燃料電池用の電極としても使用することができる。
発明によれば、粒径が小さい粉末が結合しているから、部材の空隙率は高くなっても粉末同士が結合している部分の空隙率は小さくすることができ、部材の強度いものとなっている。
10発明によれば、部材の空隙率が高いので、通気性に優れており、圧損も小さいものとなっている。
本発明の多孔質部材は、チタンを素材とする粉末によって形成された多孔質部材であって、内部にチタン粉末同士が接合して形成された網目構造の骨格を有しているものである。網目構造とは、例えば、ウレタンフォーム等のようにスポンジ(海綿)状の構造であって、内部に多数の連続する空隙が形成されている構造を意味する。
本発明の多孔質部材は、上記のごとき網目構造の骨格を有しているので、ウレタンフォーム等と同程度の空隙率、具体的には、50%以上、好ましくは、70%以上、より好ましくは80%以上や90%程度の空隙率を有しており、通気性にも優れている。
また、本発明の多孔質部材では、網目構造の骨格がチタン粉末が結合して形成されているので、耐食性に優れることはもちろん、構造的な強度も強くなる。すると、自動車などに比べて衝撃や振動を受けやすい、二輪車や手動工具等に使用する内燃機関の排ガス処理用触媒における触媒担体への使用も可能となる。
しかも、チタンは熱容量が小さいので局部的に温度が上がりやすく、触媒の反応温度に到達するのが早いため、エンジン始動時における未燃ガス処理にも有効である。
さらに、網目構造の骨格自体がチタン粉末の結合によって形成されたものであるから、導電性も優れている。よって、通気性、耐食性に加えて、導電性も要求される燃料電池用の電極としても使用することができる。
とくに、粒径が小さい粉末、例えば、平均粒径50μm以下、好ましくは、平均粒径20μm以下の粉末を使用して骨格を形成すれば、多孔質部材全体の空隙率は高くなっても、骨格自体の空隙率は小さくすることができる。言い換えれば、骨格部分におけるチタン粉末間に形成される隙間が小さくなる。すると、空隙率は高くなっても骨格自体の強度は高く維持することが可能となるから、空隙率を高くしても多孔質部材の強度低下を防ぐことができる。
ところで、上記のごとく平均粒径の小さい粉末を使用して多孔質部材を形成する方法はこれまでも多々開発されている。例えば、粉末を容器内に入れて焼結等して多孔質部材を形成する方法や、ドクターブレード法などによって粉末を混合したスラリー等から形成したグリーン体等を加熱焼結等して多孔質部材を形成する方法などがある。
しかし、上記のごとき従来方法の場合、粉末の平均粒径を小さくすれば多孔質部材の強度は向上できても空隙率を高くすることはできなかった。具体的には、粉末の平均粒径が50μm以下であれば空隙率はせいぜい30%程度にしかならず、粉末の平均粒径を200μmより大きくしても50%程度にしかならなかった。この理由は、上記従来方法によって形成された多孔質部材の場合、空隙は、互いに接触している粉末同士の間において、粉末同士が接触できない部分に形成されているに過ぎないからであり(図2(A)参照)、かかる構造上の制約から粉末の半径以上の幅を有する空隙はほとんど存在しなかったのである。そして、上記従来方法を使用する限り、空隙率を大きくするには粉末の平均粒径を大きくするしかなく、したがって、粉末の平均粒径をいかに大きくしても空隙率は理論上50%程度にしかならないし、多孔質部材の強度向上と空隙率の向上の両方を満たすことはできなかったのである。
これに対し本願の多孔質部材は、チタン粉末が結合した網目構造の骨格が形成されており、この骨格同士の間に多数の連続する空隙が形成されているから、粉末の大きさ以上の空隙を形成できることはもちろん、粉末の大きさに制限されることなく空隙の幅を自由に調整することができ、空隙率を50%以上、好ましくは70%以上とすることも可能となり、80%以上や90%程度とすることも可能となるのである。しかも、本願の多孔質部材の場合、粉末の平均粒径が小さくなればなるほど網目構造の骨格の形状や配置等の自由度が大きくなるのであるから、上記従来方法によって形成された多孔質部材とは逆に、粉末の平均粒径を小さくすれば、空隙率をさらに大きくできる可能性があるのである。
そして、チタン粉末の粒径が小さくなれば骨格部分の空隙率は小さくなるが、骨格部分の空隙率が小さくなることによって粒子同士の結合が強くなり網目構造の骨格の強度を高めることができるから、高い空隙率を維持しつつ多孔質部材の強度を高めることができる。つまり、多孔質部材の強度向上と空隙率の向上の両方を満たすことが可能となるのである。
なお、粉末の平均粒径が50μmより大きくても、本発明の多孔質部材を形成することは可能であるが、平均粒子の径が大きくなればなるほど部材の強度が低下し衝撃や振動等への耐久性が低下し部材が大型化する。よって、二輪車や手動工具等に使用する内燃機関の排ガス処理用触媒や燃料電池用ガス拡散材(電極)として使用するのであれば、粉末の平均粒径は、好ましくは50μm以下、通常100μm以下、悪くとも平均粒径は200μm以下で形成することが必要である。
つぎに、本発明の多孔質部材の製造方法を図2(B)に基づいて説明する。
(スラリー付着材料形成)
図2(B)に示すように、まず、アクリル樹脂等やブチラール等の樹脂材料Jをアセトンやエタノール、トルエン等の常温で蒸発する溶剤によって溶かして液体状のバインダを形成し、このバインダにチタン粉末mを混ぜてチタン粉末含有スラリーを形成する(スラリー形成工程S1)。
なお、樹脂材料Jは、溶剤が蒸発すると固まるが、高温(例えば100℃以上500℃以下)では燃焼、蒸発、分解するものであって、かつ、溶剤に溶けた状態において粘着性を有するものであれば、特に限定はない。そして、水溶性セルローズエーテル(CMC)、メチルセルローズ(MC)等の水溶性の樹脂でもよく、この場合には溶剤として水を使用すればよい。
ついで、チタン粉末含有スラリーに基礎材料を浸漬させる(スラリー含浸工程S2)。この基礎材料は、ウレタンフォームやポリエチレンフォーム、ポリスチレン等によって形成された網目構造の骨格2を有するものであり(図1(A)、図3(A)参照)、その内部には連続する空隙Hが、空隙率が50%以上、好ましくは70%以上となるように形成されたものである。このため、チタン粉末含有スラリーに基礎材料を浸漬すると、連続する空隙H内にチタン粉末含有スラリーが侵入し、チタン粉末含有スラリーによって基礎材料の空隙H内が満たされる。
なお、基礎材料を形成する素材は、炭素を含有し、かつ、チタン粉末含有スラリーに含まれる上記の溶剤に溶けない物質であって、高温において燃焼または蒸発、分解するものであればよく、特に限定はない。
さらになお、樹脂材料Jおよび基礎材料を形成する素材は、100℃以上600℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下、さらに好ましくは、100℃以上400℃以下において燃焼、蒸発、分解するものであることが望ましい。この理由は、チタンは400〜600℃程度まではその表面に形成されている不動態被膜の活性が低く他の物質と反応しないからであり、後述する加熱除去工程S4において、樹脂材料Jや基礎材料が分解して炭素や水素、酸素等が発生しても、これらの物質がチタン粉末内部に拡散したり、チタン粉末と反応して化合物を形成することを防ぐことができるからである。また、樹脂材料Jや基礎材料を形成する素材は100℃以上で分解することが好ましいが、スラリー含浸工程S2が終了するまでに燃焼、蒸発、分解しないのであれば、100℃未満の温度で燃焼、蒸発、分解するものであってもよい。
基礎材料の空隙H内に十分にチタン粉末含有スラリーが侵入した後、チタン粉末含有スラリーから基礎材料を取り出すと、基礎材料の空隙H内に浸入していたチタン粉末含有スラリーは、基礎材料から排出される。このとき、チタン粉末含有スラリーの一部は、基礎材料における網目構造の骨格2表面に付着したまま残留する。
そして、チタン粉末含有スラリーから取り出した基礎材料を乾燥させると、図1(A)に示すように、チタン粉末mを含有した樹脂材料Jの層Lが、骨格2の表面に形成される(乾燥工程S3)。すると、チタン粉末mを含有した樹脂材料Jの層Lも、網目構造に形成される。
なお、基礎材料が、ウレタンフォーム等のように柔軟性を有する場合には、基礎材料を加圧するなどして、強制的に基礎材料の空隙H内に浸入していたチタン粉末含有スラリーを基礎材料から排出させてもよい。
さらになお、骨格2表面へのチタン粉末含有スラリーの付着が不十分である場合には、複数回、基礎材料をチタン粉末含有スラリーに浸漬させてから乾燥させればよい。
(バインダ・ウレタンフォーム除去)
つぎに、乾燥した基礎材料(以下、スラリー付着材料という)を真空炉等において加熱し、樹脂材料Jおよび基礎材料を形成する素材を除去する。
まず、スラリー付着材料を、真空炉等の内部に配置し、この真空炉内を真空引きして真空度を高くする。例えば、真空炉内を1.3×10−2Pa以下にする。
ここで、真空炉等とは、内部を高真空状態または不活性ガス雰囲気にできかつ内部に収容された物質を高真空状態または不活性ガス雰囲気のまま加熱できる装置のことである。また、真空引きとは、真空炉等の内部の空気を、例えば、真空ポンプなどによって吸引することをいう。
なお、真空炉等の内部を真空状態にする代わりに、真空炉等の内部をアルゴンや炭酸ガス等の不活性ガスで満たしてもよい。
ついで、真空炉内の真空度が高くなると、真空炉内を加熱し温度を上昇させる。このときの昇温速度は、1.5℃/min未満とする。また、加熱中も、真空炉内の真空引きは継続する。
真空炉内の温度が、約100℃、つまり、基礎材料や樹脂材料Jが燃焼、分解、蒸発する温度を超えると、基礎材料や樹脂材料Jを構成していた有機物は分解し、有機物中に存在していた酸素や水素は気化したり、互いに結合して水蒸気となったりして真空炉内から排出される。また、有機物中に存在していた炭素も、有機物中に存在していた酸素と結合して二酸化炭素や一酸化炭素となって蒸発した後真空炉内から排出される(加熱除去工程S4)。
このとき有機物に含まれていた炭素は、全てが酸素と結合して蒸発するのではなく、一部の炭素は遊離炭素となってチタン粒子の表面に残留する。すると、この遊離炭素はチタン粉末m同士をくっつける結合剤として機能するので、チタン粉末mによって構造体(チタン構造体)が形成される(図1(B)参照)。このとき、樹脂材料Jの層Lに存在していたチタン粉末同士がそのままの位置に配置された状態で結合するから、このチタン構造体は、樹脂材料Jの層Lとほぼ同じ構造となる。つまり、チタン構造体は網目構造に形成され、しかも、網目構造の骨格は、その内部が中空になった状態となる(図1(B)参照)。
なお、加熱除去工程において、真空炉内の温度を徐々に上昇させその昇温速度を1.5℃/min未満とするのであるが、これはスラリー付着材料の表面やその内部における樹脂材料Jや基礎材料の蒸発発散を緩やかにするためであり、蒸発発散が緩やかになることによって遊離炭素によるチタン粉末同士の連結を確実に生じさせることができる。これに対し、昇温速度が速くなり1.5℃/min以上となった場合には、樹脂材料Jや基礎材料の急激な蒸発や、蒸発したガスの急激な膨張等が発生するため、遊離炭素によるチタン粉末同士の結合が生じにくくなる。したがって、昇温速度は1.5℃/min未満にする必要があり、好ましくは、0.75℃/min以下が好ましく、さらに0.5℃/min以下が最も好ましい。
(チタン粉末焼結)
チタン構造体が形成された後も加熱を継続すると、真空炉内の温度はさらに上昇し、チタン構造体も網目構造を維持したまま昇温される。そして、真空炉内の温度が600℃以上になると、チタン粉末の表面に形成されている不動態被膜の活性が高くなり、他の物質と反応しやすくなる。すると、チタン酸化物の酸素は、チタン粉末表面に存在している遊離炭素と反応してCOやCOとなってチタン粉末から分離し、分離したCOやCOは真空炉内から除去される。同時に、チタン構造体に水素が残留している場合には、遊離炭素の一部は残留水素と反応してハイドロカーボン(HC)となりガス化してチタン構造体から除去される。また、遊離炭素の一部はチタン粉末に拡散する。
すると、チタン粉末は、その金属チタン同士が直接接触するようになり、接触した金属チタン同士の間で相互拡散が発生し、隣接するチタン粉末m同士が拡散接合する。すると、結合剤として機能していた遊離炭素が消滅しても、チタン粉末mだけで樹脂材料Jの層Lとほぼ同じ構造の網目構造が維持される。そして、時間の経過ともに、チタン粉末mの拡散接合が進行し、チタン粉末mによって形成された網目構造の骨格を有する強固な多孔質部材が形成されるのである(接合工程S5、図1(C)、図3(B)参照)。
しかも、この多孔質部材は樹脂材料Jの層Lとほぼ同じ構造の網目構造を維持しているから、基礎材料と同程度の空隙率を有することになる。そして、基礎材料が存在していた部分も空隙となる(図4(B)参照)。つまり、骨格自体が中空な構造体となり、しかも、骨格を形成しているチタン粉末m間に形成されるから、少なくとも基礎材料と同等以上の空隙率を有する多孔質部材を形成することが可能である。
したがって、基礎材料として空隙率が70%程度のものを使用しても、空隙率が70%以上の多孔質部材を形成することができる。そして、より好適な網目構造を有する基礎材料と、好適な平均粒径のチタン粉末mを使用すれば、空隙率が80%以上、さらに空隙率が90%程度の多孔質部材を製造することも可能である。
なお、チタン粉末の焼結は不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、この場合には真空炉内に存在する酸素等のチタンと反応する物質の割合が低下するので、焼結中にこれらの物質とチタンが反応する確率を低くすることができる。
とくに、接合工程S5において、チタンを、α相の状態において一定時間保持してからβ相に変態させれば、多孔質部材の強度を高くすることができ、しかも、チタンの脆性も向上させることができるので、好適である。この理由は、以下のとおりである。
加熱除去工程S4の後、真空炉内の温度を急激に上昇させて1100℃以上にすれば、不動態被膜の活性も高くなり、チタン自体も短時間でβ相の状態となるのであるが、この場合には、遊離炭素のチタン内部への拡散速度が速くなる。すると、急速に金属チタン同士が接触する面積が増加し拡散接合が生じやすくなるので、多孔質部材の強度が高くなる。しかし、真空炉内の温度が高ければ、チタン粉末mへの酸素や炭素の拡散速度も速くなる。とくに、酸素はβ相に固溶するのであるが、その拡散速度は濃度勾配に支配され、チタン粉末mにはその表面に酸素濃度の高い不動態被膜が存在するため、大量の酸素がチタン粉末に拡散することになる。すると、チタン粉末m自体の硬度が高くなってしまい、チタン粉末m自体が脆くなり、最終的に多孔質部材も脆くなってしまう可能性がある。
一方、真空炉内の温度を、例えば、800℃程度で一旦保持しておけば、チタンはα相の状態のまま拡散接合を開始するので、不動態被膜の活性は高いものの遊離炭素や酸素がチタン内部に拡散する速度は遅くすることができる。すると、チタンをα相の状態に保持している間に、チタン粉末同士を連結していた炭素や不動態被膜を形成した酸素等を互いに反応させたり水素などの他の物質と反応させたりしてチタン粉末から分離させることができる。そして、炭素や酸素が少なくなった状況において、チタンをβ相に変態させれば、たとえ拡散速度が速くなったとしても、その量を少なくすることができる。すると、チタン粉末自体の硬度の増加を防ぎ、チタン粉末m自体や多孔質部材も脆くなることを防ぎつつ、多孔質部材の強度を高くすることができる。
また、チタン構造体の加熱中において、チタン構造体に残留する炭素と、真空炉内の全酸素(チタン構造体に残留する酸素を含む)の割合が合致していれば、焼結中にチタン粉末の表面に炭化チタンの層や酸化チタンの層が形成されることを防ぐことができ、また、チタン粉末に拡散する炭素や酸素を少なくすることができる。よって、チタン粉末含有スラリーにおけるチタン粉末mと樹脂材料Jの混合割合を、チタン構造体に残留する炭素の量とチタン粉末mの表面に形成されている酸化チタンに含まれる酸素の量とが合致するように調整しておくことが望ましい。炭素と酸素の割合が合致するとは、炭素原子1molに対して、酸素分子2molが存在している状態をいう。
なお、後述するように、チタン構造体に残留する炭素と酸素の割合が不適合となる場合において、この不適合から生ずる問題を解決する上で、水素化チタンを使用することも重要であるが、詳細は後述する。
さらに、チタン構造体の加熱中において、チタン構造体に残留する炭素の量よりも、チタン粉末mの表面に形成されている酸化チタンに含まれる酸素の量の方が多くなるようにチタン粉末mと樹脂材料Jの混合割合を調整してもよい。この場合には、チタン構造体の加熱中において、表面に酸化チタンの層を有するチタン粉末mは存在しても、表面に炭化チタンの層を有するチタン粉末mが存在する可能性を低くすることができる。すると、多孔質部材を、1.33〜1.33×10−2Pa(10−2〜10−5Torr)の真空中において、拡散接合時よりも高温の状態で加熱すれば、酸化チタンから酸素を離脱させることができるから、チタンのみからなる多孔質部材を形成することができる。
なお、焼結終了時に酸化チタンが存在しないようにしても、多孔質部材を再び大気中に戻せば多孔質部材の表面には酸化チタンの不動態被膜が形成される。しかし、チタン粉末m同士が互いに接触している部分には酸化チタンの不動態被膜は存在しない。よって、多孔質部材の表面には酸化チタンの不動態被膜が形成されても、多孔質部材の強度等の低下は生じない。
さらに、チタン構造体の加熱により、チタン粉末mから酸素は除去できたが炭素が十分に除去できず表面に炭化チタンの層を有するチタン粉末mが残ってしまった場合には、多孔質部材を、再び水素化チタンとともに加熱してもよい。この場合、加熱により水素化チタンから発生する水素を、多孔質部材に残留する炭素とHC反応させるゲッター材として機能させることができる。すると、炭素をハイドロカーボン(HC)としてチタン粉末mから放出させることができるので、チタン粉末mに炭素が残留することを防ぐことができる。
また、表面に炭化チタンの層を有するチタン粉末mが残ってしまった場合に、アルゴン−水素混合ガス中で加熱し還元反応を生じさせてもよい。この場合も、炭素をハイドロカーボン(HC)としてチタン粉末mから放出させることができる。ただし、チタンは金属の中ではガスを捕獲しやすい物質であり、また、水素と結合すると水素脆化が生じるので、アルゴン−水素混合ガスに含まれる水素の割合は、全混合ガス中の2〜5重量%が好ましい。
そして、スラリー付着材料の加熱を開始するときから、または、チタン構造体が形成された直後から、真空炉の同じ空間内に、チタンよりも炭素と反応しやすい、例えば、スポンジチタン、水素化チタン等の炭素吸収部材を配置しておけば、チタン構造体中の樹脂材料Jに含まれていた炭素や、基礎材料を燃焼させたときにチタン粉末mと結合した炭素を、炭素吸収部材に吸収させることができるので、好適である。とくに、水素化チタンを使用した場合には、加熱により水素化チタンから発生する水素をチタン構造体に残留する炭素とHC反応させるゲッター材として機能させることができるので好適である。
なお、炭素吸収部材は、チタンよりも炭素と反応しやすい性質を有するものであればとくに限定されないが、ジルコニアを炭素吸収部材として使用すれば、炭素吸収効率が高くなるので、チタン粉末mが炭素と結合して炭化チタンになる確率をより一層低くすることができる。とくに、特別な炭素吸収部材を設けずに、セッター等の部材を炭素吸収部材によって形成してもよい。セッター等の部材とは、チタン構造体を真空炉等に配置するときに使用するもの等、チタン構造体を真空炉で加熱するときに使用する部材をいう。
さらになお、炭素吸収部材をスラリー付着材料の加熱を開始するときから使用する場合には、チタン粉末同士が結合しチタン構造体を形成できる程度の遊離炭素は残留するように調整するのは、言うまでもない。
また、スラリー付着材料の加熱を開始するときから、または、チタン構造体が形成された直後から、真空炉の同じ空間内に、チタンよりも酸素と反応しやすい酸素吸収部材を配置しておけば、拡散接合時にチタン粉末mの表面に酸化チタンの不動態被膜が形成される確率をより一層低くすることができるので、チタン粉末同士の結合をさらに強くすることができ、多孔質部材の強度をより一層高くすることができる。とくに、スラリー付着材料の加熱を開始するときから配置しておけば、真空炉内やチタン構造体に残留する酸素を少なくすることができるので、拡散接合時にチタン粉末mの表面に酸化チタンの不動態被膜が形成される確率をさらに低くすることができる。この酸素吸収部材として、スポンジチタンを多量に使用するのも一法であり、スポンジチタンを採用すれば、酸素に限らず、酸素以外の殆どの残留ガスも吸収させることができるという利点がある。
なお、特別な酸素吸収部材を設けずに、セッター等の部材を酸素吸収部材によって形成してもよい。
さらに、燃料電池向けガス拡散材等の多孔質薄板(厚さ0.5mm以下)を製造する場合には、接合工程S5において、チタン構造体を加熱しながら加圧すれば、チタン構造体を加熱する温度を低くしても拡散接合させることができ、製造時間も短縮できるから、生産コストを抑えることができ、生産効率を向上させることができる。とくに、2MPa以上で加圧しながら、樹脂材料Jが蒸発する温度以上であってかつ炭素がチタンと反応したりチタン粉末に拡散する温度以下、例えば、500〜800℃の間で拡散接合させれば、拡散接合中において、拡散した炭素の量が多いチタン粉末や、表面に炭化チタンが形成されるチタン粉末mの量を少なくすることができる。すると、形成された多孔質部材の網目構造の骨格におけるチタンの純度を高めることができるから、多孔質部材の強度を高くすることができ、導電性も高く維持することができる。
本発明の製造方法によって、チタン粉末から多孔質部材を製造した。
チタン粉末には、最大粒径45μmのもの(住友チタニウム株式会社製粉末チタン)を使用し、このチタン粉末370gを、アクリル樹脂(45g)とアセトンを1:1の割合で混合した液体に混入してスラリーを形成し、このスラリーに空隙率が70%であるウレタンフォームを浸漬させた後、最大真空到達2×10−3Pa、最高加熱温度1300℃の真空炉(ネムス社製 500kN真空ホットプレス装置)で加熱焼結して、本発明の多孔質部材を形成した。
なお、本実施例では、炭素吸収部材および酸素吸収部材は使用していない。
図6は、真空炉内の温度と真空度の変化を示したグラフである。図6に示すように、スラリー付着部材を真空炉内に配置した後、真空炉内の温度を約0.5℃/minの昇温速度で上昇させていくと、約100℃を超えたあたりで真空炉内の気圧が上昇し真空度が低下していることが確認できる。これは、アセトンや水分が分解して蒸発していると推測できる。
さらに温度を上昇させていくと、真空炉内の温度が約150℃になる付近で再び真空度が低下し、気圧は2×10−2Pa以上まで上昇する。これは、ウレタンフォームやアクリル樹脂が分解蒸発を開始したことを示していると考えられる。
真空炉内の温度上昇を継続すると、真空炉内の気圧は変動するもののしばらくは2×10−2Pa以上に維持されており、ウレタンフォームやアクリル樹脂が分解蒸発が継続していることが推測される。
真空炉内の温度が約350℃になる少し前に、真空度が高くなり始める。これは、ウレタンフォームやアクリル樹脂の分解がほぼ終了したことを示している。このことは、真空炉内の温度を約350℃で保持することにより、真空度が高くなっていくことからも確認できる。この段階では、チタン粉末同士が遊離炭素によって結合されたチタン構造体が形成されていると考えられる。
真空度の上昇がある程度落ち着いた状態になると、再び温度を約500℃まで、約0.5℃/minの昇温速度で上昇させる。すると、再び真空度の低下が生じるが、チタン構造体の内部に残留していた残留ガスや、ウレタンフォームやアクリル樹脂が分解蒸発したときに真空炉内部に付着した有機物やガスが離脱したためと推測される。
500℃になる前には真空度の低下が止まり、再び真空度が高くなりその上昇がある程度落ち着いた状態になると、チタン粉末同士を焼結させる温度まで(約800℃)まで速い昇温速度(約2℃/minの昇温速度)で温度を上昇させる。これは、できるだけ短時間で焼結温度にするためである。この温度上昇を開始すると、真空炉内の真空度が低下し始めるが、これは、遊離炭素が真空炉内に残っている酸素や水素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素、ハイドロカーボンなどとなり、チタン構造体から離脱を開始したからである考えられる。
そして、この温度上昇中に、真空炉内の真空度が低下がさらに進む。これは、真空炉内の温度はチタン粉末表面の不動態被膜の活性が高くなる600℃を越えるので、不動態被膜の酸素と遊離炭素や残留している水素が反応してチタン構造体から離脱していると推測される。つまり、遊離炭素や水素によって不動態被膜の還元反応が生じて、一酸化炭素や二酸化炭素、ハイドロカーボンが発生するから、真空炉内の真空度が低下がさらに進んでいると考えられる。
真空炉内の温度が約800℃となる少し前に再び真空度の上昇が始まる。この真空度の上昇は、遊離炭素の大部分がチタン粉末から除去され、一酸化炭素や二酸化炭素、ハイドロカーボンの発生が鈍くなったためであると考えられる。
真空炉内の温度が約800℃となってからしばらくその温度に保持し真空度の上昇が落ち着いた状態になると、再び温度を上昇させる。このときには、チタン粉末同士を焼結をさらに進めるために、チタンがβ相となる1100℃以上まで急激に温度を上昇させる(約5℃/minの昇温速度)。すると、真空度の低下が生じる。これは、真空炉内の温度上昇により不動態被膜の活性化がさらに進み、炭素や水素との間で生じる還元反応だけでは除去し切れなかった不動態被膜も分解されたからであると考えられる。
そして、真空度は真空炉内の温度が約1300℃になる少し前に反転し上昇に転じている。これは、不動態被膜がほぼ分解され、ほぼチタン粉末だけの多孔質部材が形成されたからであると考えられる。
この後、真空引きを継続しながら、真空炉内の温度を自然に低下させることによって、本発明の多孔質部材が形成される。
図3〜図5には、上記の製造方法によって製造された多孔質部材の拡大写真を示しており、図5は電子顕微鏡写真である。図3〜5より明らかなように、本発明の多孔質部材の内部には、網目状の骨格が形成されており、この骨格はチタン粉末同士が接合して形成されていることが確認できる。また、図4に示すように、骨格内部には中空な空間が形成されていることも確認できる。
そして、ウレタンフォームの空隙率70%であることから、本発明の多孔質部材の空隙率が70%以上であると推察できるので、本発明の製造方法を採用することによって、チタン粉末からでも、空隙率70%以上の多孔質部材を製造することができることが確認できる。
本発明の多孔質材料は、耐食性、通気性が必要であり、かつ、構造的な強度も要求される内燃機関用触媒担体や燃料電池用電極、化学反応棟のフィルタ等に適している。
(A)は樹脂材料Jの層Lが形成された基礎材料2の概略説明図であり、(B)は基礎材料2が除去されたチタン構造体の部分拡大断面図であり、(C)は本発明の多孔質材料の部分拡大断面図である。 (A)は本発明の多孔質材料における骨格部分の概略拡大説明図であり、(B)は本発明の多孔質材料の製造方法のフローチャートである。 (A)は本発明の多孔質部材の製造に使用される基礎材料の部分拡大写真であり、(B)本発明の多孔質部材の部分拡大写真である。 (A)は本発明の多孔質部材の部分拡大写真であり、(B)本発明の多孔質部材における骨格の断面拡大写真である。 本発明の多孔質部材の電子顕微鏡写真である。 真空炉内の温度と真空度の変化を示したグラフである。
符号の説明
2 基礎材料の網目構造の骨格
m チタン粉末
J 樹脂材料
L 樹脂材料Jの層
H 空隙

Claims (10)

  1. チタン粉末同士が結合することによって形成された多孔質部材の製造方法であって、
    チタン粉末を含有するスラリーに網目状構造を有する基礎材料を浸漬して、該基礎材料における網目状構造の表面にスラリーを付着させてスラリー付着材料を形成し、
    該スラリー付着材料を加熱して前記基礎材料を除去しチタン構造体を形成し、
    該チタン構造体を、真空又は不活性ガス雰囲気中で加熱して、α相の状態のまま拡散接合し得る温度に一定時間保持して拡散接合を生じさせた後、β相に変態させる
    ことを特徴とする多孔質部材の製造方法。
  2. 前記チタン構造体を600℃以下で形成する
    ことを特徴とする請求項1記載の多孔質部材の製造方法。
  3. 前記スラリー付着材料を、昇温速度1.5℃/min未満で加熱する
    ことを特徴とする請求項1または2記載の多孔質部材の製造方法。
  4. 炭素と反応する炭素吸収部材とともに、チタン構造体を加熱する
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の多孔質部材の製造方法。
  5. 酸素と反応する酸素吸収部材とともに、チタン構造体を加熱する
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の多孔質部材の製造方法。
  6. 水素化チタンとともにチタン構造体を加熱する
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の多孔質部材の製造方法。
  7. スポンジチタンとともにチタン構造体を加熱する
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の多孔質部材の製造方法。
  8. 請求項1,2,3,4,5、6または7記載の方法によって製造された多孔質部材であって、
    チタン粉末同士の接合によって形成された中空な骨格を有しており
    該骨格によって網目構造が形成されている
    ことを特徴とする多孔質部材。
  9. チタン粉末の平均粒径が200μm以下である
    ことを特徴とする請求項記載の多孔質部材。
  10. 空隙率が50%以上である
    ことを特徴とする請求項8または9記載の多孔質部材
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