JP4242047B2 - 衝突防止制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突防止制御装置に係り、特に、障害物や他の車両との衝突を自動的に防止する衝突防止制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車走行時の追突事故を防止するために、自分が運転する自動車(以下「自車両」と省略する。)から先行車両や障害物までの距離、相対速度に基づいて衝突の危険度を判断し、ドライバへの警報や自動減速を行う装置が開発されている。車両の減速運動は路面の状況、いわゆる路面の摩擦係数(以下「μmax」という。)に影響されるため、車両の減速できる能力を知ることが重要である。μmaxを推定する技術は、ABS制御装置においては一般的に用いられている。ABS制御装置は、車輪にロック傾向が生じてはじめてμmaxを推定することができる。
【0003】
一方、衝突防止制御装置は、ABS制御装置のようにロック傾向が現れてからではなく、通常の走行状態でμmaxを推定することが必要である。通常の走行状態でμmaxを推定するために、特開昭58−53544号公報や特開平9−288177号公報により、路面に電波を照射し、その反射波により路面状態を検出する方法が知られている。しかし、この方法では、路面に電波を照射するための装置が必要となりシステムが大規模になったり高コストになる問題がある。
【0004】
また、特開平7−17348号公報により、装置の作動を2段階に分離し、第1の車間距離以下のときは緩ブレーキを作動させて、第2の車間距離以下になった際にフルブレーキを作動させる装置が知られている。このとき、路面状態は、緩ブレーキ中のブレーキ圧、車輪加速度、車輪スリップ率のデータの回帰分析により推定される。しかし、この装置も、路面状態を検出するためには緩ブレーキの作動が必要となり、ドライバに違和感を与えてしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、ドライバに違和感を与えることなく路面状態を的確に判定して他車両や障害物との衝突を防止する衝突防止制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、前記車輪速度に基づいて、自車両の速度及び加速度を検出する自車両速度/加速度検出手段と、障害物の速度及び加速度を検出する障害物速度/加速度検出手段と、前記車輪速度に基づいて、自車両が走行する路面の路面μ勾配を推定する路面μ勾配推定手段と、前記推定された路面μ勾配に基づいて、発生可能な最大減速度を演算する最大減速度演算手段と、エンジンの出力を制御するエンジン出力制御手段と、ブレーキ圧を制御して制動力を制御する制動力制御手段と、前記自車両の速度及び加速度、前記障害物の速度及び加速度、前記最大減速度に基づいて障害物との衝突の危険度を判定し、前記危険度が大きいと判定したときは、前記エンジン出力制御手段のエンジンの出力を低減し、かつ前記制動力制御手段に所定のブレーキ圧を加える制御をし、前記危険度が小さいと判定したときは、前記エンジン出力制御手段のエンジンの出力を低減する制御をし、前記危険度がこれらの中間であると判定したときは、前記自車両の旋回の程度が直線走行を示す場合や旋回の程度が小さい状態を示す場合、前記制動力制御手段にパルス状のブレーキ圧を垂直加重の小さい車輪である後輪に対して加える制御をし、前記自車両の旋回の程度が直線走行を示す場合や旋回の程度が小さい状態を示す場合でない場合、前記パルス状のブレーキ圧を前記後輪に加えず、旋回内側前輪に加える制御をする制御手段と、を備えて構成されている。
【0011】
自車両速度/加速度検出手段は、車輪速度検出手段で検出される車輪速度に基づいて、自車両の速度及び加速度を検出する。一方、障害物速度/加速度検出手段は、障害物の速度及び加速度を検出する。ここにいう障害物は、自車両の走行の障害となる物であればよく、例えば走行路面に設けられている物体だけでなく、自車両の前方にある他車両も含まれる。路面μ勾配推定手段は、自車両の走行中に、車輪速度検出手段で検出された車輪速度に基づいて路面μ勾配を推定する。この路面μ勾配からスリップ率に対する路面摩擦係数μの特性が分かり、この特性から最大となる路面摩擦係数μmaxを求める。そして、最大減速度演算手段は、この最大路面摩擦係数μmaxに基づいて、発生可能な最大減速度を演算することができる。制御手段は、前記自車両の速度及び加速度、前記障害物の速度及び加速度、前記最大減速度に基づいて障害物との衝突の危険度を判定する。
【0012】
この危険度は、例えば距離や時間の関数からなるパラメータで表すことができる。これらの危険度の大きいパラメータから順に所定の閾値未満になっていないか判定し、ある危険度のパラメータが所定の閾値未満になっているときはその危険度に該当する。なお、パラメータとしては距離の関数、時間の関数のいずれか1つだけ用いてもよい。
【0013】
制御手段は、危険度があると判定したときはエンジン出力を低減させ、さらに危険度が大きくなるに従って制動力制御手段の制動力を大きくして、衝突防止制御を行う。具体的には次のように行うのが好ましい。
【0014】
すなわち、制御手段は、前記危険度が大きいと判定したときは、前記エンジン出力制御手段のエンジンの出力を低減し、かつ前記制動力制御手段に所定のブレーキ圧を加える制御をし、前記危険度が小さいと判定したときは、前記エンジン出力制御手段のエンジンの出力を低減する制御をし、前記危険度がこれらの中間であると判定したときは、前記自車両の旋回の程度が直線走行を示す場合や旋回の程度が小さい状態を示す場合、前記制動力制御手段にパルス状のブレーキ圧を垂直加重の小さい車輪である後輪に対して加える制御をするのが好ましい。さらに、制御手段は、前記自車両の旋回の程度が直線走行を示す場合や旋回の程度が小さい状態を示す場合でない場合、前記パルス状のブレーキ圧を前記後輪に加えず、旋回内側前輪に加える制御を行ってもよい。さらに、自車両の走行路面の勾配、アクチュエータの応答の遅れ、自車両の旋回状態の少なくとも1つに応じて、前記危険度を判定するのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1に示すように、第1の実施の形態に係る衝突防止制御装置は、他の車両や障害物との距離を検出する測距センサ1と、車輪速度を示す車輪速信号を検出するセンサ2と、図示しないエンジンやABS制御等を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)3と、ドライバに音や光によって警報を行うドライバ警報部4と、ブレーキを制御して制動力の制御を行う制動力制御部5と、エンジンの出力を低減させるエンジン出力低減部6とを備えている。なお、本実施の形態では図示しないが、相対速度センサ、加速度センサ、制動液圧センサを備えてもよい。
【0017】
測距センサ1は、レーザやミリ波などを前方へ照射し、その反射波の状態に基づいて他車両や前方障害物までの距離を検出し、この検出出力をECU3に供給する。センサ2は、各車輪の車輪速信号をそれぞれ検出し、これらの車輪速信号をECU3に供給する。
【0018】
ECU3は、図2に示すように、他車両や前方障害物(以下、「他車両等」という。)との相対距離や相対速度を求める相対距離/相対速度演算部11と、自車両の速度や加速度を求める自車両速度/自車両加速度演算部12と、路面μ勾配を推定する路面μ勾配推定部13と、他車両等との速度や加速度を求める他車両速度/他車両加速度演算部14と、路面μ勾配に基づいて発生可能な最大減速度を演算する発生可能最大減速度演算部15と、所定の制御を実行する制御開始/終了および制御量設定部16と、を備えている。
【0019】
相対距離/相対速度演算部11は、測距センサ1で得られた他車両等までの距離を時間微分することにより相対速度を検出し、この相対速度を他車両速度/他車両加速度演算部14に供給する。なお、相対距離/相対速度演算部11は、マイクロ波などのドップラー効果により他車両等との相対速度を検出してもよい。
【0020】
自車両速度/自車両加速度演算部12は、センサ2で検出された各車輪速信号に基づいて自車両の車両速度を演算し、さらにこの車両速度を時間微分するにことにより自車両の車両加速度を演算して、これらの演算結果を他車両速度/他車両加速度演算部14と制御開始/終了および制御量設定部16に供給する。
【0021】
路面μ勾配推定部13は、図3に示すように、センサ2で検出された各車輪の車輪速信号ω1から路面外乱ΔTdを受けた車輪共振系の応答出力としての各車輪の車輪速振動Δω1を検出する前処理フィルタ21と、検出された車輪速振動Δω1を満足するような各車輪の伝達関数を最小自乗法を用いて同定する伝達関数同定回路22と、同定された伝達関数に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数μの勾配を各車輪毎に演算するμ勾配演算回路23と、を備えている。
【0022】
前処理フィルタ21は、本車輪共振系の共振周波数と予想される周波数を中心として一定の帯域の周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタや、該共振周波数成分を含む高帯域の周波数成分のみを通過させるハイパスフィルタなどで構成されている。ここでは、このバンドパスフィルタ或いはハイパスフィルタの周波数特性を規定するパラメータを一定値に固定したものである。
【0023】
なお、この前処理フィルタ21は、直流成分を除去したもの、すなわち車輪速信号ω1の回りの車輪速振動Δω1のみを抽出して出力する。
【0024】
いまここで、前処理フィルタ21の伝達関数F(s)を(1)式とする。
【0025】
【数1】
【0026】
ただし、ciはフィルタ伝達関数の係数、sはラプラス演算子である。
【0027】
つぎに、伝達関数同定回路22が依拠する演算式を導出する。なお、前処理フィルタ21の演算を、伝達関数同定回路22の演算に含めて実施する。
【0028】
同定すべき伝達関数は、路面外乱ΔTdを加振入力として、このとき前処理フィルタ21により検出された車輪速振動Δω1を応答出力とする2次のモデルとする。すなわち、(2)式の振動モデルを仮定する。
【0029】
【数2】
【0030】
ここに、vは車輪速信号を観測するときに含まれる観測雑音である。(2)式を変形すると、(3)式を得る。
【0031】
【数3】
【0032】
最初に、(3)式に(1)式の前処理フィルタを掛けて得られた式を離散化する。このとき、Δω1、ΔTd、vは、サンプリング周期Ts毎にサンプリングされた離散化データΔω1 (k)、ΔTd (k)、v(k)(kはサンプリング番号:k=1,2,3,.... )として表される。また、ラプラス演算子sは、所定の離散化手法を用いて離散化することができる。本実施の形態では、1例として、次の双一次変換により離散化するものとする。なお、dは1サンプル遅延演算子である。
【0033】
【数4】
【0034】
前処理フィルタの次数mは2以上が望ましいので、演算時間も考慮してm=2とし、これによって次式を得る。
【0035】
【数5】
【0036】
また、最小自乗法に基づいて、車輪速振動Δω1の各データから伝達関数を同定するために、(4)式を、同定すべきパラメータに関して一次関数の形式となるように、次式のように変形する。なお、”T ”を行列の転置とする。
【0037】
【数6】
【0038】
上式において、θが同定すべき伝達関数のパラメータとなる。
【0039】
伝達関数同定回路22は、検出された車輪速振動Δω1の離散化データを(9)式に順次当てはめた各データに対し、最小自乗法を適用することによって、未知パラメータθを推定し、これにより伝達関数を同定する。
【0040】
具体的には、検出された車輪速振動Δω1を離散化データΔω(k)(k=1,2,3,...)に変換し、該データをN点サンプルし、次式の最小自乗法の演算式を用いて、伝達関数のパラメータθを推定する。
【0041】
【数7】
【0042】
ここに、記号”^”の冠した量をその推定値と定義する。上記最小自乗法は、次の漸化式によってパラメータθを求める逐次型最小自乗法として演算してもよい。
【0043】
【数8】
【0044】
ここに、ρは、いわゆる忘却係数で、通常は0.95〜0.99の値に設定する。このとき、初期値は、以下のようにすればよい。
【0045】
【数9】
【0046】
また、上記最小自乗法の推定誤差を低減する方法として、種々の修正最小自乗法を用いてもよい。ここでは、補助変数を導入した最小自乗法である補助変数法を用いた例を説明する。この方法によれば、(9)式の関係が得られた段階でm(k)を補助変数として、次式を用いて伝達関数のパラメータを推定する。
【0047】
【数10】
【0048】
また、逐次演算は、以下のようになる。
【0049】
【数11】
【0050】
補助変数法の原理は、以下の通りである。(16)式に(15)式を代入すると、(19)式のようになる。
【0051】
【数12】
【0052】
(19)式の右辺第2項が零となるように補助変数を選べばθの推定値は、θの真値に一致する。そこで、補助変数として、ζ(k)=[−ξy1(k)−ξy2(k)]Tを式誤差r(k)と相関を持たないほどに遅らせたものを利用する。すなわち、
m(k)=[−ξy1(k−L)−ξy2(k−L)]T
とする。ただし、Lは遅延時間である。
【0053】
上記のようにして伝達関数を同定した後、μ勾配演算回路23は、路面μ勾配D0 に関係する物理量を(20)式を用いて演算する。
【0054】
【数13】
【0055】
以上のように路面勾配推定部13は、(20)式により路面μ勾配D0に関係する物理量を演算することができる。例えばこの物理量が小さいときは、タイヤと路面との間の摩擦特性が飽和状態になっている。
【0056】
また、他車両速度/他車両加速度演算部14は、相対距離/相対速度演算部11で算出された他車両等との相対速度と、自車両速度/自車両加速度演算部12で算出された自車両の速度とに基づいて、他車両等の速度を演算する。さらに、他車両速度/他車両加速度演算部14は、他車両等の速度を時間微分することでその加速度を演算する。他車両速度/他車両加速度演算部14は、これらの演算結果を制御開始/終了および制御量設定部16に供給する。
【0057】
発生可能最大減速度演算部15は、路面勾配推定部13で推定された路面μ勾配に基づいて路面μmaxを算出し、この値から発生可能な最大減速度を演算する。発生可能最大減速度演算部15は、例えば図4に示すように、制動がかけられていない車輪スリップ率が零近傍のときの路面μ勾配(例えばK1,K2)を用いて、μmaxを求める。例えば、路面μ勾配K1の場合には、車輪スリップ率に対する路面μの特性(μ−S特性)から路面μmax1を求め、この値から比較的大きな値の最大減速度を演算する。一方、路面μ勾配K2の場合には、前記特性から路面μmax2を求め、この値から比較的小さな値の最大減速度を演算する。このように、路面μmaxが大きいときはタイヤと路面との間の摩擦特性が飽和状態になるまで余裕があるので、最大減速度を大きく設定する。逆に、路面μmaxが小さいときはタイヤと路面との間の摩擦特性が飽和状態になっているので、最大減速度μmaxを小さく設定する。
【0058】
制御開始/終了および制御量設定部16は、自車両の車両速度及び車両加速度、他車両等の速度及び加速度、発生可能な最大減速度に基づいて、他車両等との衝突を回避することができる時間(以下、「衝突余裕時間」という。)及び他車両等との衝突を回避することができる距離(以下、「衝突余裕距離」という。)を演算する。また、制御開始/終了および制御量設定部16は、衝突余裕時間及び衝突余裕距離についてそれぞれ所定の閾値を記憶している。そして、制御開始/終了および制御量設定部16は、衝突余裕時間、衝突余裕距離の少なくとも1つが所定の閾値未満であるか、またいずれも所定の閾値以上であるかを判定し、その判定結果に基づいて、ドライバ警報部4、制動力制御部5、エンジン出力低減部6の制御を開始したり終了したりそれらの制御量を設定する。
【0059】
なお、本実施の形態では、ドライバ警報部4、制動力制御部5、エンジン出力低減部6の全てについて制御するように構成されているが、これらのいずれか1つを制御する構成であってもよい。
【0060】
以上のように構成された衝突防止制御装置では、図5に示すステップST1からステップST18までの処理が実行される。
【0061】
衝突防止制御装置を構成する各部や回路は、最初に初期化される(ステップST1)。そして、各センサに信号が入力されると(ステップST2)、センサ2は各車輪の車輪速度(車輪速信号)を演算する(ステップST3)。自車両速度/自車両加速度演算部12は、これらの車輪速度に基づいて自車両の車両速度を演算し(ステップST4)、さらに自車両の車両加速度を演算する(ステップST5)。
【0062】
相対距離/相対速度演算部11は、測距センサ1の検出出力に基づいて他車両等との相対距離を演算し(ステップST6)、さらにこれを時間微分して他車両等との相対速度を演算する(ステップST7)。他車両速度/他車両加速度演算部14は、自車両の車両速度及び他車両等の相対速度に基づいて、他車両等の実際の速度を演算し(ステップST8)、されにこれを時間微分して他車両等の実際の加速度を演算する(ステップST9)。
【0063】
路面勾配推定部13は、ステップST3で演算された各車輪の車輪速信号の揺らぎにより、各車輪の路面μ勾配を演算する(ステップST10)。発生可能最大減速度演算部15は、これらの路面μ勾配に基づいて発生可能な最大減速度を演算する(ステップST11)。
【0064】
そして、制御開始/終了および制御量設定部16は、自車両や他車両の速度及び加速度、最大減速度に基づいて、衝突防止制御を開始したり終了するときの条件を設定する(ステップST12)。ここにいう条件とは、衝突防止制御を開始したり終了するときの衝突余裕時間及び衝突余裕距離である。
【0065】
衝突余裕時間及び衝突余裕距離の設定では、自車両の走行路面の勾配(上り勾配や下り勾配)、自車両に備えられたアクチュエータの応答の遅れ、自車両の旋回条件なども考慮される。例えば、下り勾配の場合、アクチュエータの応答が悪い場合、急旋回で走行している場合では、衝突余裕時間及び衝突余裕距離はそれぞれ大きく設定される。また、上り勾配の場合、アクチュエータの応答が良好の場合、直進で走行している場合では、衝突余裕時間及び衝突余裕距離はそれぞれの小さく設定される。
【0066】
つぎに、制御開始/終了および制御量設定部16は、衝突防止の制御中であるかを判定し(ステップST13)、そして、制御中でないときは制御を開始するかを判定する(ステップST14)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、衝突余裕時間、衝突余裕距離の少なくとも1つがそれぞれに対応する閾値未満になったときに所定の制御を開始すると判定し、ステップST16に移行する。衝突余裕時間、衝突余裕距離のいずれも閾値未満になっていないときは、制御を開始しないと判定して、ステップST2に戻る。
【0067】
一方、制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST13で制御中であると判定したときは、次に制御を終了するかを判定する(ステップST15)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、衝突余裕時間、衝突余裕距離の両方が上述した閾値以上になっているときは、制御を終了すると判定し、ステップST2に戻る。また、衝突余裕時間、衝突余裕距離のいずれか1つが閾値未満になっているときは、制御を終了しないと判定して、ステップST16に移行する。
【0068】
そして、制御開始/終了および制御量設定部16は、自車両の運転者(ドライバ)に対して音や光を出力するようにドライバ警報部4を制御し、ドライバに警報をする(ステップST16)。つぎに、制御開始/終了および制御量設定部16は、図示しないエンジンスロットルを絞ってエンジン出力を低減させるようにエンジン出力低減部6を制御し(ステップST17)、さらに制動力制御部5のブレーキ液圧を高くして制動力を制御する(ステップST18)。なお、制御開始/終了および制御量設定部16は、他車両との衝突の可能性が大きくなるほど、ドライバ警報部4、制動力制御部5、エンジン出力低減部6の制御量を大きくしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施の形態に係る衝突防止制御装置は、ブレーキ等をすることなく路面μ勾配を推定し、衝突余裕時間及び衝突余裕距離の閾値を決定して、衝突防止の制御を開始したり終了する。これにより、ドライバに違和感を与えることなく、路面状況に応じて最適な状態で他車両や障害物との衝突を防止することができる。このとき、エンジン出力低減だけでなく、自動制動もほぼ同時に行うので、確実に他車両や障害物との衝突を防止することができる。
【0070】
また、自車両の走行状態に応じて衝突余裕時間や衝突余裕距離を変えることができるので、常に、自車両の走行状態に対応して他車両等との衝突を防止することができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態では、衝突余裕時間及び衝突余裕距離を演算していたが、これらのいずれか一方のみを演算してもよい。
【0072】
[第2の実施の形態]
つぎに、本発明の第2の実施の形態に係る衝突防止制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ部位については同じ符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0073】
第1の実施の形態に係る衝突防止制御装置は、他車両等との衝突のおそれが生じたときに、ドライバへの警報、エンジン出力低減及び自動制動制御をほぼ同時に行うものである。これに対して、第2の実施の形態に係る衝突防止制御装置は、他車両等との衝突の危険度を段階的に判定し、その危険度に応じて他車両等との衝突を防止するように制御するものである。具体的には、図6に示すステップST21以下の処理を実行する。
【0074】
ステップST21からステップST31までの処理は、上述したステップST1からステップST11までの処理と同様である。そして、制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST31の処理が終了すると、各車輪に対して制御開始/終了判定を行い、さらに閾値を設定する(ステップST32)。
【0075】
具体的には、制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST31で演算した発生可能な最大減速度に基づいて、他車両等に衝突することなく安全に停止する最小限の距離である安全停止距離D0を設定する。そして、制御開始/終了および制御量設定部16は、安全停止距離D0に基づいて、図7に示すように、自動制動制御を実行する距離である自動制動距離D1(>D0)と、パルス制動制御を実行する距離であるパルス制動距離D2(>D1)と、エンジン出力低減制御を実行する距離であるエンジン出力低減距離D3(>D2)とを設定する。ここで、パルス制動制御とは、制動力制御部5のブレーキ液に対してパルス状の液圧を与えることで制動力を制御することをいう。なお、自動制動距離D1、パルス制動距離D2、エンジン出力低減距離D3になるに従って、他車両等との衝突の危険度は小さくなっている。
【0076】
また、作動条件として、時間の関数を用いることもできる。このとき、制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST31で演算した発生可能な最大減速度に基づいて、他車両等に衝突することなく安全に停止する最小限の時間である安全停止時間T0を設定すればよい。さらに、制御開始/終了および制御量設定部16は、安全停止時間T0に基づいて、自動制動制御を実行する時間である自動制動時間T1(>T0)と、パルス制動制御を実行する時間であるパルス制動時間T2(>T1)と、エンジン出力低減制御を実行する時間であるエンジン出力低減時間T3(>T2)とを設定すればよい。なお、自動制動時間T1、パルス制動時間T2、エンジン出力低減時間T3になるに従って、他車両等との衝突の危険度は小さくなっている。
【0077】
また、制御開始/終了および制御量設定部16は、自動制動距離D1、パルス制動距離D2、エンジン出力低減距離D3、自動制動時間T1、パルス制動時間T2、エンジン出力低減時間T3のそれぞれに対応する所定の閾値を記憶している。
【0078】
さらに、これらのパラメータの設定では、自車両の走行路面の勾配(上り勾配や下り勾配)、自車両に備えられたアクチュエータの応答の遅れ、自車両の旋回条件なども考慮される。例えば、下り勾配の場合、アクチュエータの応答が悪い場合、急旋回で走行している場合では、それぞれのパラメータは大きく設定される。また、上り勾配の場合、アクチュエータの応答が良好の場合、直進で走行している場合では、それぞれのパラメータは小さく設定される。
【0079】
つぎに、制御開始/終了および制御量設定部16は、自動制動制御中であるかを判定し(ステップST33)、これを肯定したときは自動制動制御を終了するかを判定する(ステップST34)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、自動制動距離D1及び自動制動時間T1がそれぞれに対応する所定の閾値以上になっているときは自動制動制御を終了し、それらの少なくとも1つが閾値未満になっているときは自動制動制御を終了しないと判定する。自動制動制御を終了するときはステップST22に戻り、自動制動制御を終了しないときはステップST36に移行する。
【0080】
制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST33で自動制動制御中でないと判定したときは、自動制動制御を開始するかを判定する(ステップST35)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、自動制動距離D1又は自動制動時間T1がそれぞれに対応する所定の閾値未満になっているときは自動制動制御を開始し、これらがいずれも閾値以上になっているときは自動制動制御を開始しないと判定する。そして、自動制動制御を開始することを肯定したときはステップST36に移行し、これを否定したときは図8に示すステップST39に移行する。
【0081】
制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST34の判定で否定した後又はステップST35の判定で肯定した後、自車両のドライバに対して音や光を出力するようにドライバ警報部4を制御し、ドライバに警報をする(ステップST36)。つぎに、図示しないエンジンスロットルを絞ってエンジン出力を低減させるようにエンジン出力低減部6を制御し(ステップST37)、さらに制動力制御部5のブレーキ液の液圧を高くして制動力を制御する(ステップST38)。
【0082】
つぎに、制御開始/終了および制御量設定部16は、パルス制動制御中であるかを判定し(ステップST39)、これを肯定したときはパルス制動制御を終了するかを判定する(ステップST40)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、パルス制動距離D2及びパルス制動時間T2がそれぞれに対応する所定の閾値以上になっているときはパルス制動制御を終了し、それらの少なくとも1つが閾値未満になっているときはパルス制動制御を終了しないと判定する。パルス制動制御を終了するときは図6に示すステップST22に戻り、パルス制動制御を終了しないときはステップST42に移行する。
【0083】
制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST39でパルス制動制御中であることを否定したときは、パルス制動制御を開始するかを判定する(ステップST41)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、パルス制動距離D2又はパルス制動時間T2がそれぞれに対応する所定の閾値未満になっているときはパルス制動制御を開始し、これらがいずれも閾値以上になっているときはパルス制動制御を開始しないと判定する。そして、パルス制動制御を開始することを肯定したときはステップST42に移行し、これを否定したときはステップST45に移行する。
【0084】
制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST40の判定で否定した後又はステップST41の判定で肯定した後、自車両のドライバに対して音や光を出力するようにドライバ警報部4を制御し、ドライバに警報をする(ステップST42)。つぎに、図示しないエンジンスロットルを絞ってエンジン出力を低減させるようにエンジン出力低減部6を制御し(ステップST43)、さらにパルス制動制御を行う(ステップST44)。
【0085】
ここで、パルス制動制御とは、特定の車輪のブレーキ液に対して、図9に示すように、液圧Pを所定時間ΔTからなるパルスを与えることをいう。これにより、ドライバに違和感を与えることなく、発生可能な最大減速度の推定精度を向上させることができる。このパルス制動制御が行われた場合、瞬間的に車輪スリップ率が増加する。
【0086】
ここで、図10に示すように、路面μmaxが高い場合(例えばμmax4の場合)は、パルス制動が与えられても路面μ勾配の低下は少ない。これに対して、路面μmaxが低い場合(例えばμmax3の場合)は、パルス制動が与えられると路面μ勾配の低下は大きい。すなわち、パルス制動を行うことによって、車輪スリップ率に対する路面μの特性を正確に求めることができ、これにより路面μmaxの精度を向上させることができる。そして、この路面μmaxは再び自動制動距離D1や自動制動時間T1等のパラメータ算出に用いられるので、より正確に衝突の危険度を求めることができる。
【0087】
さらに、制御開始/終了および制御量設定部16は、パルス制動制御が実行される前の路面μ勾配に応じて、液圧Pと時間幅Tを決定する。例えば、路面μ勾配が小さい場合では液圧P及び/又は時間幅Tを小さくし、路面μ勾配が大きい場合では液圧P及び/又は時間幅Tを大きくする。
【0088】
制御開始/終了および制御量設定部16は、パルス制動制御において、走行中の車両運動に影響が小さく、路面μ勾配の変化が現れやすい車輪に対して行うのが好ましい。例えば、直線走行の場合や旋回の程度が小さい場合では、ハンドルへのキックバックを避け、また路面μ勾配の変化が現れやすい垂直加重の小さい後輪に対して行う。旋回の程度が大きい場合では、車両安定性を損なうおそれのある後輪には実行せず、旋回内側前輪に対してパルス制動制御を行うのが好ましい。
【0089】
つぎに、制御開始/終了および制御量設定部16は、エンジン出力低減制御中であるかを判定し(ステップST45)、これを肯定したときはエンジン出力低減制御を終了するかを判定する(ステップST46)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、エンジン出力低減距離D3及びエンジン出力低減時間T3がそれぞれ所定の閾値以上になっているときはエンジン出力低減制御を終了し、それらの少なくとも1つが閾値未満になっているときはエンジン出力低減制御を終了しないと判定する。エンジン出力低減制御を終了するときはリターンしてステップST21に戻り、エンジン出力低減制御を終了しないときはステップST48に移行する。
【0090】
制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST45でエンジン出力低減制御中であることを否定したときは、エンジン出力低減制御を開始するかを判定する(ステップST47)。ここでは、制御開始/終了および制御量設定部16は、エンジン出力低減距離D3又はエンジン出力低減時間T3が所定の閾値未満になっているときはエンジン出力低減制御を開始し、これらがいずれも閾値以上になっているときはエンジン出力低減制御を開始しないと判定する。そして、エンジン出力低減制御を開始することを肯定したときはステップST48に移行し、これを否定したときはリターンしてステップST21に戻る。
【0091】
制御開始/終了および制御量設定部16は、ステップST46の判定で否定した後又はステップST47の判定で肯定した後、自車両のドライバに対して音や光を出力するようにドライバ警報部4を制御し、ドライバに警報をする(ステップST42)。さらに、図示しないエンジンスロットルを絞ってエンジン出力を低減させるようにエンジン出力低減部6を制御する(ステップST43)。そして、リターンして、再びステップST21からの処理を実行する。
【0092】
以上のように、本実施の形態に係る衝突防止制御装置によれば、他車両等との衝突の危険度に応じて、エンジン出力低減、エンジン出力低減及びパルス制動制御、エンジン出力低減及び自動制動制御を行うことができる。これにより、ドライバーに違和感を与えることなく常に他車両等と適当な間隔をとることができ、この結果、他車両等との衝突を防止することができる。
【0093】
[第3の実施の形態]
つぎに、本発明の第3の実施の形態に係る衝突防止制御装置について説明する。なお、上述した実施の形態と同じ部位については同じ符号を付し、また、重複する説明は省略する。本実施の形態において、発生可能最大減速度演算部15は、以下に示すように構成されている。
【0094】
(第1の構成)
発生可能最大減速度演算部15は、路面勾配推定部13で推定された路面μ勾配と、車輪速センサ2で検出された車輪速信号とに基づいて、発生可能な最大減速度を演算する。発生可能最大減速度演算部15は、具体的には図11に示すように、所定帯域の車輪速信号を通過させるバンドパスフィルタ31と、振動レベルを演算する振動レベル演算回路32と、走行路面の摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定回路33と、発生可能な最大減速度を演算する減速度演算回路34とを備えている。
【0095】
バンドパスフィルタ31は、車輪速センサ2で検出された車輪速信号のうち、所定範囲の車輪速信号を抽出する。ここで、車輪速センサ2で検出された車輪速信号は、周波数に応じて分解すると、図12に示すように、2つの共振点と1つの反共振点とを有する。2つの共振点のうち周波数が小さい側の共振点は、タイヤ慣性などに基づく前後共振点であり、周波数はf1(15〜20)Hzである。また、2つの共振点のうち周波数が高い側の共振点は、タイヤの空気圧やタイヤゴム弾性に基づく捩れ共振点であり、周波数はf3(35〜40)Hzである。反共振点は、色々な信号に対して不感帯となるもので、周波数f2(20〜25)Hzである。バンドパスフィルタ31は、車輪速センサ2で検出された車輪速信号のうち、捩れ共振点(周波数f3)含む所定範囲Δfの車輪速信号を抽出する。なお、バンドパスフィルタ31は、捩れ共振点以外の、前後共振点や反共振点を含む所定範囲Δfの車輪速信号を抽出するようにしてもよい。
【0096】
振動レベル演算回路32は、バンドパスフィルタ31で抽出された車輪速信号を用いて、次式より定まる車輪速信号の振動レベルG(N)を演算する。ここでは、バンドパスフィルタ31の出力をω(k)とする。
【0097】
【数14】
【0098】
振動レベル演算回路32は、実際には、演算タイミング毎に、以下に示す漸化式を逐次的に演算する。
【0099】
【数15】
【0100】
なお、路面μ勾配は、図13に示すように、突起乗り越し等により適正に推定されないことがある。そこで、振動レベル演算回路32が振動レベルを演算することによって、突起乗り越し等があっても適正に路面μ勾配を推定するようにしている。
【0101】
一方、このようにして得られた振動レベルと路面μ勾配の推定値とを、アスファルト路面や低μ路においてプロットすると、図14に示すように、アスファルト路面と低μ路とでは明確に区別される。さらに、アスファルト路面中に突起を乗り越したとしても、低μ路における領域と明確に区別される。上記事実に鑑み本発明者は、種々の路面状態毎に振動レベルと路面μ勾配との推定値との関係を求めたところ、図15に示すように、振動レベルと路面μ勾配の推定値とは各路面状態、例えば低μ路、アスファルト路、石畳路、圧雪路、砂利・非整地路毎に領域毎に明確に区別されて認識出来ることが実験の結果得られた。即ち、例えば、圧雪路は路面μ勾配の推定値としては高μ路(アスファルト路、石畳路)より若干小さい値となっているが、振動レベルの違いによって領域に差が表れている。砂利道等は更に振動レベルが高い領域にあるが、路面μ勾配の推定値は高μ路より低い値となっている。
【0102】
そこで、路面摩擦状態推定回路33は、振動レベル演算回路32で演算された振動レベルと、μ勾配演算回路23で演算された路面μ勾配の推定値と、図15に示す路面状態毎の両者の関係とに基づいて、車輪の路面に対する摩擦状態(路面状態)を推定する。
【0103】
路面状態は、図15に示すように、各路面における代表的な路面μmaxに対応させることも可能である。この場合、図15に示す領域をまたぐことがあれば、各領域の平均値で路面μmaxを求めることもできる。
【0104】
ところで、バンドパスフィルタ31は、車輪速信号のうち、2つの共振点の何れか一方の共振点の車輪速信号または、反共振点の車輪速信号を抽出する。すなわち、バンドパスフィルタ31は、図12に示すように、周波数が低周波数領域より大きい車輪速信号を検出するようにしている。このように周波数が低周波数領域より大きい車輪速信号を検出するようにしているのは、周波数が低周波数領域より小さい車輪速信号は、誤差が大きいため影響が大きくなり、路面摩擦状態を精度よく推定することが出来ないためである。
【0105】
図16には、アスファルト路、低μ路を走行したときの車輪速信号の周波数特性が示されている。なお、低μ路は、アスファルト路に比較して凹凸が非常に小さくなっている。40Hz付近にある共振特性を見ると、低μ路はアスファルト路に比較して振動レベルが小さくなっており、路面の凹凸をよく反映していることが理解できる。また、共振の強さも小さくなっており、本手法によって低μ路であることが推定できる。
【0106】
低周波数領域(5Hz以下)の振動成分をみると、この領域では、振動レベルは路面μ勾配の逆数に比例して大きくなるため、低μ路の低周波数領域の車輪速信号の振動レベルは、アスファルト路の低周波数領域の車輪速信号の振動レベルより大きくなっている。よって、低周波数領域の車輪速信号に基づいて振動レベル及び路面μ勾配を演算して路面状態を推定すると、次のような問題が生ずる。即ち、低周波数領域の振動成分は、路面μ勾配に依存し、実路面の凹凸状態を反映していない。このため、路面判定用のマップ作成には多くの適合工数を必要となる。また、低周波数領域の車輪速信号には、車両のロール、ピッチング運動による振動成分も含まれているため、走行条件によっては路面状態を精度よく判定することができない場合がある。更に、上記理由から、判定マップは、タイヤや車両の物理パラメータに応じて用意しなければならないが、タイヤ交換等により車両の緒元を変更したときは対応が困難であり、場合によっては路面状態の判定ができないおそれがある。
【0107】
これに対して、本実施の形態では、低周波数領域より大きい領域の車輪速信号を対象としているため、上記問題が発生せず、路面状態を精度よく判定することができる。また、路面摩擦状態推定回路33は、自車両の走行する路面がアスファルト路であるか低μ路であるかを推定し、これから路面μやその最大値である路面μmaxを推定することもできる。減速度演算回路34は、路面状態あるいはこの路面μmaxを用いて発生可能な最大減速度を算出し、この最大減速度を上述した図2に示す制御開始/終了および制御量設定部2に供給する。
【0108】
以上のように、発生可能最大減速度演算部15は、路面μ勾配と車輪速信号の振動とに基づいて路面状態を推定し、さらに最大減速度を算出することができる。すなわち、この発生可能最大減速度演算部15を備えた衝突防止制御装置は、制動をかけることなく、路面状態に応じた適切な最大減速度を演算するので、より確実に他車両等との衝突を防止することができる。
【0109】
(第2の構成)
つぎに、発生可能最大減速度演算部15の第2の構成について説明する。上述した実施の形態と同様の構成部分を有するので、同一部分は同一の符合を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。発生可能最大減速度演算部15は、上述した振動レベル演算回路32に代えて、図17に示すように振幅演算回路35を備えている。
【0110】
振幅演算回路35は、バンドパスフィルタ31により抽出された所定周波数の車輪速信号の振幅を演算する。具体的には、所定周波数fの振幅を求めるには、後述するsin関数の値Siとcos関数の値Ciを用いて求める。
【0111】
最初に、サンプル時間をTSとして、以下の式を求める。
【0112】
【数16】
【0113】
つぎに、振幅を求めたい車輪速信号をy、現在のサンプリング時の車輪速信号の値をy(N)とすると、以下の式から振幅Aが求められる。
【0114】
【数17】
【0115】
ところで、上記のように演算された振幅Aと路面μ勾配推定値は、図18に示すように、路面状態毎に領域に分かれて明確に区別することができる。すなわち、振幅Aとそのときの路面μ勾配推定値が分かれば、アスファルト路や圧雪路であるか等の路面状態を推定することができ、更にその結果、路面μや路面μmaxを推定することができる。そこで、路面摩擦状態推定回路33は、μ勾配演算回路23により演算された路面μ勾配と、振幅演算回路35により演算された振幅Aと、図18に示す関係とに基づいて、路面摩擦状態を推定する。これにより、この発生可能最大減速度演算部15を備えた衝突防止制御装置は、制動をかけることなく、路面状態に応じた適切な最大減速度を演算するので、より確実に他車両等との衝突を防止することができる。
【0116】
(第3の構成)
つぎに、発生可能最大減速度演算部15の第3の構成について説明する。前述した構成と同一部分を有するので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0117】
発生可能最大減速度演算部15は、図19に示すように、μ勾配演算回路23で演算された路面μ勾配の変化率を演算するμ勾配変化率演算回路36と、路面μ勾配とその変化率とに基づいて路面摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定回路33と、推定された路面摩擦状態から最大減速度を演算する減速度演算回路34とを備えている。
【0118】
ここで、路面μ勾配の変化率と路面μ勾配の推定値は、図20に示すように、路面状態に応じて領域毎に分割されて明確に区別することができる。すなわち、路面μ勾配の変化率と路面μ勾配推定値が分かれば、アスファルト路や圧雪路であるか等の路面状態を推定することができ、更にその結果、路面μや路面μmaxを推定することができる。そこで、路面摩擦状態推定回路33は、μ勾配演算回路23により演算された路面μ勾配と、勾配変化率演算回路36で演算された路面μ勾配の変化率と、図20に示す関係とに基づいて、車輪の路面に対する摩擦状態を推定する。これにより、この発生可能最大減速度演算部15を備えた衝突防止制御装置は、制動をかけることなく、路面状態に応じた適切な最大減速度を演算するので、より確実に他車両等との衝突を防止することができる。
【0119】
なお、前述した説明においては路面μ勾配を推定しているが、路面μ勾配と等価な制動トルク勾配を演算してもよい。
【0121】
本発明によれば、自車両の速度及び加速度、障害物の速度及び加速度、最大減速度に基づいて障害物との衝突の危険度を判定し、危険度に応じて衝突防止制御を行うことができるので、ドライバに違和感を与えることなく、障害物との距離を十分に保って衝突を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る衝突防止制御装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】衝突防止制御装置に備えられたECUの具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】ECUに備えられた路面勾配推定部の具体的な構成を示すブロック図である。
【図4】車輪スリップ率に対する路面μの関係であるμ−S特性を示す図である。
【図5】衝突防止制御装置の動作内容を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る衝突防止制御装置の動作内容を説明するフローチャートである。
【図7】安全停止距離D0、自動制動距離D1、パルス制動距離D2、エンジン出力低減距離D3の関係を説明する図である。
【図8】衝突防止制御装置の動作内容を説明するフローチャートである。
【図9】パルス制動制御においてブレーキ液に与えられるパルス状の液圧を説明する図である。
【図10】パルス制動制御を行ったときのμmaxと路面μ勾配の変化を説明する図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る衝突防止制御装置の発生可能最大減速度演算部の構成を示すブロック図である。
【図12】車輪速信号の周波数に対する振幅の関係を示す図である。
【図13】アスファルトを走行しているときに突起を乗り越したときの路面μ勾配推定値の変化を示す図である。
【図14】アスファルトや低μ路を走行したときの車輪速信号の振動レベルに対する路面μ勾配推定値の関係を示す図である。
【図15】走行路面毎の車輪速信号の振動レベルに対する路面μ勾配推定値の関係を示す図である。
【図16】車輪速信号の周波数特性を示す図である。
【図17】発生可能最大減速度演算部の第2の構成を示すブロック図である。
【図18】走行路面毎の車輪速信号の振幅に対する路面μ勾配推定値の関係を示す図である。
【図19】発生可能最大減速度演算部の第3の構成を示すブロック図である。
【図20】路面μ勾配変化率に対する路面μ勾配推定値の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 測距センサ
2 車輪速センサ
3 ECU
4 ドライバ警報部
5 制動力制御部
6 エンジン出力低減部
Claims (1)
- 車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度に基づいて、自車両の速度及び加速度を検出する自車両速度/加速度検出手段と、
障害物の速度及び加速度を検出する障害物速度/加速度検出手段と、
前記車輪速度に基づいて、自車両が走行する路面の路面μ勾配を推定する路面μ勾配推定手段と、
前記推定された路面μ勾配に基づいて、発生可能な最大減速度を演算する最大減速度演算手段と、
エンジンの出力を制御するエンジン出力制御手段と、
ブレーキ圧を制御して制動力を制御する制動力制御手段と、
前記自車両の速度及び加速度、前記障害物の速度及び加速度、前記最大減速度に基づいて障害物との衝突の危険度を判定し、前記危険度が大きいと判定したときは、前記エンジン出力制御手段のエンジンの出力を低減し、かつ前記制動力制御手段に所定のブレーキ圧を加える制御をし、前記危険度が小さいと判定したときは、前記エンジン出力制御手段のエンジンの出力を低減する制御をし、前記危険度がこれらの中間であると判定したときは、前記自車両の旋回の程度が直線走行を示す場合や旋回の程度が小さい状態を示す場合、前記制動力制御手段にパルス状のブレーキ圧を垂直加重の小さい車輪である後輪に対して加える制御をし、前記自車両の旋回の程度が直線走行を示す場合や旋回の程度が小さい状態を示す場合でない場合、前記パルス状のブレーキ圧を前記後輪に加えず、旋回内側前輪に加える制御をする制御手段と、
を備えた衝突防止制御装置。
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