[実施例1の構成]
図1ないし図4は本発明の実施例1を示したもので、図1はサプライポンプの全体構造を示した図である。
本実施例の内燃機関用燃料噴射装置は、多気筒ディーゼルエンジン等の内燃機関(以下エンジンと言う)用の燃料噴射システムとして知られるコモンレール式燃料噴射システム(蓄圧式燃料噴射装置)であり、燃料噴射ポンプとしてのサプライポンプと、このサプライポンプより吐出された高圧燃料を蓄圧するコモンレール(図示せず)と、エンジンの各気筒毎に対応して搭載された複数のインジェクタ(電磁式燃料噴射弁等:図示せず)と、サプライポンプのアクチュエータ(電磁弁装置7等)および各インジェクタのアクチュエータ(電磁弁装置等)を電子制御するエンジン制御ユニット(以下ECUと呼ぶ)とを備えている。
本実施例のサプライポンプには、ポンプハウジング1が設けられており、このポンプハウジング1には、エンジンのクランクシャフトによって回転駆動されるポンプ駆動軸(カムシャフト)2が回転自在に軸支されている。また、サプライポンプよりも燃料流方向の上流側には、燃料タンクから燃料を汲み上げるフィードポンプ(低圧供給ポンプ:図示せず)が接続されている。また、サプライポンプは、ポンプハウジング1に一体的に組み付けられるシリンダヘッド(シリンダ)3と、このシリンダヘッド3に摺動自在に支持されるプランジャ4とによってポンプエレメント(高圧供給ポンプ)が構成されている。また、本実施例では、サプライポンプに使用される弁装置として、燃料吸入経路を経由して燃料加圧室5内に吸入される燃料吸入量を調整して燃料加圧室5より吐出される燃料吐出量を制御する電磁弁装置(電磁弁)7と、燃料加圧室5内で昇圧した燃料をコモンレール(インジェクタ)側に圧送供給するための燃料圧送経路を開閉する吐出弁装置(吐出弁)8とが設置されている。
ポンプハウジング1は、金属材料によって所定の形状に形成されており、内部に潤滑油が充填されるカム室を有している。ポンプハウジング1のカム室には、エンジンのクランクシャフトによって回転駆動されるカムシャフト2が挿入されている。このカムシャフト2の外周には、3つのカム山を有するカム10が一体的に組み付けられている。また、カムシャフト2の先端部の外周には、エンジンのクランクシャフトのクランクプーリとベルトを介して駆動連結されるドライブプーリ(図示せず)が取り付けられている。
また、ポンプハウジング1内には、図示上下方向に摺動するタペット11が配設されている。タペット11は、スプリング(コイルスプリング等)12の付勢力により常に図示下方に付勢されている。これにより、タペット11は、ローラ13を介して常にカム10の外周面に当接している。また、ポンプハウジング1の図示上端部には、シリンダヘッド3が液密的に嵌め込まれている。そして、ポンプハウジング1の内周とシリンダヘッド3の外周との間には、フィードポンプからインレットパイプ14の吸入ポートを経由して低圧燃料が導入される燃料ギャラリ15が形成されている。
シリンダヘッド3は、金属材料によって略円筒形状に形成されている。また、シリンダヘッド3の図示上方側には、電磁弁装置7が締め付け固定されている。そのシリンダヘッド3には、電磁弁装置7の外周に形成された雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されている。そして、シリンダヘッド3の内部に形成された摺動孔16内には、プランジャ4が摺動自在に収容されている。また、プランジャ4は、シリンダヘッド3の摺動孔16内に往復移動自在に支持されている。また、プランジャ4の図示下端部は、円環板形状のばね受けを介してタペット11の図示上端面に当接している。
シリンダヘッド3の摺動孔16の開口端側の内壁面とプランジャ4の図示上端面とストッパ6の図示下端面とで囲まれた容積可変空間は、プランジャ4の往復運動によって内部に吸入した低圧燃料を加圧して高圧化する燃料加圧室5として機能する。ここで、フィードポンプから燃料加圧室5内に低圧燃料を吸入させるための燃料吸入経路は、インレットパイプ14の吸入ポート、燃料ギャラリ15、燃料通路17〜19、小径バルブ室20、大径バルブ室21、連通路22よりなる各燃料通路によって構成されている。
また、プランジャ4の往復移動に伴って燃料加圧室5の内容積が拡縮することで加圧された燃料は、燃料加圧室5から燃料通路23、小径バルブ室24、大径バルブ室25、燃料通路26、吐出ポート27を経由してコモンレールへ圧送供給されるように構成されている。なお、燃料加圧室5からコモンレール側に高圧燃料を圧送するための燃料吐出経路は、燃料通路23、小径バルブ室24、大径バルブ室25、燃料通路26、吐出ポート27よりなる各燃料通路によって構成されている。
ストッパ6は、略円環板形状に形成された金属プレートであって、電磁弁装置7をシリンダヘッド3にねじ締付軸力で締め付け固定した際に、シリンダヘッド3の密着面と電磁弁装置7の密着面との間に挟み込まれた状態で保持固定されている。このストッパ6には、ストッパ6の板厚方向の両端面を板厚方向(軸線方向)に貫通するように1個の連通路22または複数個の連通路22が設けられている。連通路22は、電磁弁装置7のバルブ31の移動方向の中心軸線に対してオフセット配置されている。これにより、電磁弁装置7がストッパ6に着座した時に、仮に中央の連通路22が電磁弁装置7により閉塞されても、少なくとも複数個の連通路22は開口しているため、電磁弁装置7よりも燃料流方向の上流側の燃料吸入経路(燃料通路)から電磁弁装置7よりも燃料流方向の下流側の燃料吸入経路(燃料通路)を経由して燃料加圧室5内への燃料の吸入を阻害することはない。
電磁弁装置7は、図1および図2に示したように、常開型(ノーマリオープンタイプ)の電磁式制御弁であって、燃料加圧室5に連通する燃料吸入経路(燃料通路)を開閉するバルブ31と、このバルブ31を閉弁方向に駆動するソレノイドコイル等よりなる電磁駆動部と、バルブ31を閉弁方向に付勢するコイルスプリング等のバルブ付勢手段と、これらを収容するハウジングとによって構成されている。なお、ソレノイドコイルは、電磁弁装置7のハウジングの図示上端側に内蔵されたコイルボビンの外周に巻装されており、バルブ31を一体的に組み付けたアーマチャ(可動側の磁性体)32を電磁力によってステータコア(固定側の磁性体)の吸引部に吸引するものである。
本実施例の電磁弁装置7のハウジングは、バルブハウジング33およびバルブボデー34等によって構成されている。バルブハウジング33の内部には、ソレノイドコイル、このソレノイドコイルに磁化されるステータコア、およびソレノイドコイルに電気的に接続されるターミナル等の電磁駆動部が収容されている。そして、バルブハウジング33の外周には、電磁弁装置7をシリンダヘッド3の内周にねじ締め付けするための雄ねじ部が形成されている。また、バルブハウジング33の外周には、電磁弁装置7のバルブボデー34の密着面とシリンダヘッド3の密着面とを、所定の締結軸力でストッパ6を介して密着させるための工具(例えばトルクレンチやラチェットレンチ等)と係合する係合部28が設けられている。また、バルブハウジング33の図示上端部には、ソレノイドコイルへの給電を行うためのターミナルを保持する筒状のコネクタ29が一体的に設けられている。
電磁弁装置7のバルブ31は、アーマチャ32に圧入固定される頭頂部がバルブボデー34の端面(図示上端面)より突出した状態で、バルブボデー34のバルブ摺動孔(軸方向孔)35内に軸線方向に往復移動自在に収容されている。本実施例のバルブ31は、バルブボデー34のシート部36に着座、離座して燃料吸入経路を閉塞、開放する鍔状の弁頭部(弁鍔部)31A、およびこの弁頭部31Aより軸線方向の図示上方側に延長されて弁頭部31Aの外径よりも小さい外径の摺動部31B等を有している。
また、バルブ31は、ソレノイドコイルへ通電しない状態では、コイルスプリングの付勢力によって開弁し、また、ソレノイドコイルを通電すると、コイルスプリングの付勢力に抗して閉弁する。また、バルブ31の弁頭部31Aは、バルブ31の弁頭部31Aの第1当接部がバルブボデー34のシート部36より離脱した際に、シート部36との間に燃料が通過するクリアランスを形成する。なお、弁頭部31Aと摺動部31Bとの間には、弁頭部31Aや摺動部31Bよりも外径の小さい弁軸部31Cが形成されている。
また、バルブボデー34のシート部36の内径面(円錐面、シート面)は、電磁弁装置7の閉弁時にバルブ31の弁頭部31Aの第1当接部が着座する第1弁座として機能する。この第1弁座は、電磁弁装置7のソレノイドコイルへの通電(ON)時におけるバルブ31の閉弁方向(図示上方)への移動を、バルブ31の全閉位置にて規制するための第1規制面となる。ここで、ストッパ6の図示上端面は、電磁弁装置7の開弁時にバルブ31の弁頭部31Aの第2当接部が着座する第2弁座として機能する。この第2弁座は、電磁弁装置7のソレノイドコイルへの通電停止(OFF)時におけるバルブ31の開弁方向(図示下方)への移動を、バルブ31の全開位置(フルリフト位置)にて規制するための第2規制面となる。
バルブボデー34は、例えば軸受鋼(SUJ2等)よりなる金属材料によって所定の円筒形状に形成されており、バルブハウジング33の先端側(図示下端側)にかしめ等により結合されている。このバルブボデー34は、バルブ31の弁頭部31Aを軸線方向の一端面より突出した状態で、バルブ31の摺動部31Bを摺動自在に支持するバルブ支持部材として機能するもので、内部にバルブ31の摺動部31Bが摺動する丸孔形状のバルブ摺動孔35を有している。また、バルブボデー34は、バルブ31の弁頭部31Aの第1当接部が着座、離座する円環形状のシート部36を有するバルブシートとして機能する。
そして、バルブボデー34は、燃料加圧室5内に低圧燃料を導入する燃料吸入経路を、比較的に内径の小さい小径バルブ室20と比較的に内径の大きい大径バルブ室21とに区画形成している。また、バルブボデー34の外周面とシリンダヘッド3の内周面との間には、燃料通路17に連通する円環状の燃料通路18が形成されている。また、バルブボデー34の内部には、燃料通路18と大径バルブ室21とを連通する燃料通路19および小径バルブ室20が形成されている。
小径バルブ室20は、バルブ31の弁軸部31Cを往復移動自在に収容する略円柱状空間で、バルブ摺動孔35の軸線方向の開口端側に連続して設けられている。また、小径バルブ室20の内周面とバルブ31の弁軸部31Cの外径面との間には、燃料通路19内の燃料をシート部側に円滑に吸入させるための円環状のクリアランスが形成されている。そして、大径バルブ室21は、バルブ31の弁頭部31Aを往復移動自在に収容する略円柱状空間で、バルブボデー34の図示下端側の円筒状部(ストッパ6との間で高圧シールを行う高圧シール部)とストッパ6の図示上端面とで周囲を囲まれている。なお、本実施例の大径バルブ室21は、連通路22を介して燃料加圧室5に常時連通している。
ここで、本実施例のバルブボデー34には、シート部36を半径方向に取り囲むように、つまりシート部36周囲の近傍に、シート部36よりも燃料流方向の下流側(図示下方側)に位置する大径バルブ室21に連通する環状溝(均圧室、環状空間)39が形成されている。そして、環状溝39は、シート部36周囲の近傍のバルブボデー34の軸線方向の一端面(大径バルブ室(凹状部)22の底壁面)で開口している。この環状溝39は、環状溝39内に大径バルブ室21から燃料圧力を導入することで、シート部36に作用する燃料圧力の方向に対して逆方向に環状溝39からシート部36に向かって燃料圧力が作用するように構成されている。なお、本実施例の環状溝39は、バルブボデー34の軸線方向の一端面からシート部36の軸線方向の長さよりも深い位置に至るまで形成されている。これにより、環状溝39は、シート部36の外径側で、軸線方向で重なり合っている(オーバーラップしている)。
本実施例のバルブボデー34のシート部36は、小径バルブ室20(またはバルブ摺動孔35)の軸線方向の一方側(図示下端側)の開口端を小径バルブ室20(またはバルブ摺動孔35)の内径より円錐形状に拡径することで設けられている。これにより、シート部36は、円錐台形状の内径面(シート面)を有し、内部に円錐台形状の中空部(弁孔)を形成する。また、シート部36の外径面は、軸線方向に対して内径面の法線角度(テーパ角度)よりも急な法線角度(テーパ角度)を有する傾斜面(円錐状面)とされている。なお、本実施例では、シート部36のシート面を円錐台形状としているが、小径バルブ室20の内径と略同一径の円環状シートエッジとしても良い。また、小径バルブ室20の内径よりも2段階以上に拡径される階段状シートエッジとしても良い。
吐出弁装置8は、図1、図3および図4に示したように、燃料加圧室5に連通する燃料吐出経路(燃料通路)を開閉するバルブ41と、このバルブ41を燃料吐出経路を閉塞する側(閉弁方向)に付勢するスプリング(バルブ付勢手段)42と、これらを収容するハウジングとによって構成されている。本実施例の吐出弁装置8のハウジングは、バルブホルダ(バルブハウジング)として機能する円筒状のアウトレットパイプ43と、このアウトレットパイプ43の端面とシリンダヘッド3の継ぎ手部(凹状部)との間に挟み込まれたバルブシート44とによって構成されている。
吐出弁装置8のバルブ41は、バルブシート44の小径バルブ室24内に軸線方向に往復移動自在に収容されている。本実施例のバルブ41は、バルブシート44のシート部46に着座、離座して燃料吐出経路を閉塞、開放する弁鍔部41A、およびこの弁鍔部41Aより軸線方向の図示下方側(燃料加圧室側)に延長されて弁鍔部41Aより内径の小さい摺動部41B等を有している。また、弁鍔部41Aより軸線方向の図示上方側には、弁鍔部41Aより内径の小さい弁頭部41Cが設けられている。また、スプリング42は、本例ではコイルスプリングが使用され、一端がスプリングシート47の図示下端面に保持され、また、他端がバルブシート44の軸線方向の一端面に保持されている。
また、バルブ41は、燃料加圧室5に連通する燃料通路23、小径バルブ室24内の燃料圧力がスプリング42の付勢力によって設定される開弁圧よりも低い状態では、スプリング42の付勢力によって閉弁し、また、燃料加圧室5に連通する燃料通路23、小径バルブ室24内の燃料圧力が開弁圧よりも大きくなると、スプリング42の付勢力に抗して開弁する。これにより、吐出弁装置8は、シート部46よりも燃料流方向の下流側から、シート部46よりも燃料流方向の上流側および燃料加圧室側への高圧燃料の逆流を防止する逆止弁機能を具備する逆止弁装置を構成する。また、バルブ41の弁鍔部41Aは、バルブ41の弁鍔部41Aの当接部がバルブシート44のシート部46より離脱した際に、シート部46の内径面との間に燃料が通過するクリアランスを形成する。また、バルブ41の摺動部41Bの外周には、バルブシート44の小径バルブ室24の内周面に摺接する羽根等の部分的なシール構造が設けられている。
バルブシート44は、例えば軸受鋼(SUJ2等)よりなる金属材料によって所定の円筒形状に形成されている。このバルブシート44は、吐出弁装置8をシリンダヘッド3にねじ締付軸力で締め付け固定した際に、シリンダヘッド3の密着面とアウトレットパイプ43の密着面との間に挟み込まれた状態で保持固定されている。このバルブシート44は、バルブ41の弁鍔部41Aを軸線方向の一端面より突出した状態で、バルブ41の摺動部41Bを摺動自在に支持するバルブ支持部材として機能するものである。また、バルブシート44は、バルブ41の弁鍔部41Aの当接部が着座、離座する円環形状のシート部46を有している。また、バルブシート44のシート部46の内径面(円錐面、シート面)は、吐出弁装置8の閉弁時にバルブ41の弁鍔部41Aの当接部が着座する弁座として機能する。この弁座は、吐出弁装置8の閉弁時におけるバルブ41の閉弁方向(図示下方)への移動を、バルブ41の全閉位置にて規制するための規制面となる。
そして、バルブシート44は、燃料加圧室5に連通する燃料通路23から高圧燃料をコモンレール側に圧送する燃料吐出経路を、比較的に内径の小さい小径バルブ室24と比較的に内径の大きい大径バルブ室25とに区画形成している。小径バルブ室24は、バルブ41の摺動部41Bを往復移動自在に収容する略円柱状空間で、バルブシート44の内部に燃料通路23と大径バルブ室25とを連通するように軸線方向に貫通している。また、小径バルブ室24は、内部にバルブ41の摺動部41Bが摺動する丸孔形状のバルブ摺動孔(軸方向孔)を兼ねている。また、小径バルブ室24の内周面とバルブ41の摺動部41Bの外径面(羽根がない部分)との間には、円筒状のクリアランスが形成される。そして、大径バルブ室25は、バルブ41の弁鍔部41Aおよび弁頭部41Cを往復移動自在に収容する略円柱状空間で、アウトレットパイプ43の内周面とバルブシート44の軸線方向の一端面とスプリングシート47の図示下端面とで周囲を囲まれている。なお、本実施例の小径バルブ室24は、燃料通路23を介して燃料加圧室5に常時連通している。
ここで、本実施例のバルブシート44には、シート部46を半径方向に取り囲むように、つまりシート部46周囲の近傍に、シート部46よりも燃料流方向の下流側(図示上方側)に位置する大径バルブ室25に連通する環状溝(均圧室、環状空間)49が形成されている。そして、環状溝49は、シート部46周囲の近傍のバルブシート44の軸線方向の一端面で開口している。この環状溝49は、環状溝49内に大径バルブ室25から燃料圧力を導入することで、シート部46に作用する燃料圧力の方向に対して逆方向に環状溝49からシート部46に向かって燃料圧力が作用するように構成されている。なお、本実施例の環状溝49は、バルブシート44の軸線方向の一端面からシート部46の軸線方向の長さよりも深い位置に至るまで形成されている。これにより、環状溝49は、シート部46の外径側で、軸線方向で重なり合っている(オーバーラップしている)。
本実施例のバルブシート44のシート部46は、小径バルブ室24の軸線方向の一方側(図示上端側)の開口端を小径バルブ室24の内径より円錐形状に拡径することで設けられている。これにより、シート部46は、円錐台形状の内径面(シート面)を有し、内部に円錐台形状の中空部(弁孔)を形成する。また、シート部46の外径面は、図3(a)に示したように、軸線方向に平行な垂直面(円形状面)とされている。あるいは、図3(b)に示したように、軸線方向に対して内径面の法線角度(テーパ角度)よりも急な法線角度(テーパ角度)を有する傾斜面(円錐状面)とされている。なお、本実施例では、シート部46のシート面を円錐台形状としているが、小径バルブ室24の内径と略同一径の円環状シートエッジとしても良い。また、小径バルブ室24の内径よりも2段階以上に拡径される階段状シートエッジとしても良い。
[実施例1の作用]
次に、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムに使用されるサプライポンプの作用を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。ここで、図4は吐出弁装置の作動説明図である。
サプライポンプのカムシャフト2がエンジンのクランクシャフトに回転駆動されて回転すると、タペット11およびローラ13がカム10の外周面(カムプロフィール)に沿って一体的に図示上下方向に往復運動する。そして、タペット11が図示上下方向に往復移動すると、タペット11と連動してプランジャ4も図示上下方向に往復移動する。このとき、電磁弁装置7のソレノイドコイルへの通電が停止(OFF)されており、ソレノイドコイルの起磁力が消磁されているため、図1に示したように、コイルスプリングの付勢力によってバルブ31の弁頭部31Aが全開位置(フルリフト位置、ストッパ6の第2弁座に着座している位置)に押し付けられている。これにより、燃料吸入経路が開放されるため、プランジャ4がシリンダヘッド3の摺動孔16内を下降すると、燃料加圧室5内の内容積が拡大する。
これによって、インレットパイプ14の吸入ポートからサプライポンプのポンプハウジング1内に吸入される燃料がプランジャ4の下降に伴い、燃料ギャラリ15→燃料通路17→燃料通路18→燃料通路19→小径バルブ室20→バルブ31の弁頭部31Aの外径面とバルブボデー34のシート部36の内径面との間に形成されるクリアランス(弁孔)→大径バルブ室21→連通路22を経由して燃料加圧室5内に導入される。このとき、燃料加圧室5内の燃料圧力が、スプリング42の付勢力等により設定されている開弁圧よりも低いため、吐出弁装置8のバルブ41が閉弁されている。すなわち、図3に示したように、吐出弁装置8のバルブ41の弁鍔部41Aは、スプリング42の付勢力によってバルブシート44のシート部46に着座しており、燃料吐出経路は閉塞されている。
そして、プランジャ4がシリンダヘッド3の摺動孔16内を下降から上昇に移行するタイミングで、電磁弁装置7のソレノイドコイルへの通電が実施(ON)されると、ソレノイドコイルに起磁力が発生して、アーマチャ32やステータコア等の複数の磁性体が磁化される。これにより、図2に示したように、アーマチャ32がステータコアの吸引部に吸引され、これに伴いバルブ31が全閉方向に移動してバルブボデー34のシート部36(第1弁座:全閉位置)に着座する。これにより、燃料吸入経路が閉塞されるため、プランジャ4がシリンダヘッド3の摺動孔16内を更に上昇すると、燃料加圧室5内の内容積が狭くなる。これによって、燃料加圧室5内に導入された燃料がプランジャ4の上昇に伴い加圧されて高圧化される。
このとき、燃料加圧室5内の燃料圧力が、スプリング42の付勢力等により設定されている開弁圧よりも高くなると、吐出弁装置8のバルブ41が開弁する。すなわち、図4に示したように、吐出弁装置8のバルブ41の弁鍔部41Aは、燃料加圧室5内の燃料圧力(高圧力)によって、スプリング42の付勢力に抗してバルブシート44のシート部46より離座(離脱)する。これにより、燃料吐出経路が開放されるため、燃料加圧室5から燃料通路23→小径バルブ室24→バルブ41の弁鍔部41Aの外径面とバルブシート44のシート部46の内径面との間に形成されるクリアランス(弁孔)→大径バルブ室25→燃料通路26→吐出ポート27を経由してコモンレールに高圧燃料が圧送供給される。 そして、吐出弁装置8のバルブ41が全閉位置に戻り、コモンレール側への高圧燃料の圧送が終了した後には、電磁弁装置7のソレノイドコイルへの通電が停止(OFF)されて電磁弁装置7のバルブ31が全開位置に戻り、燃料加圧室5内に再び燃料が吸入される。
ここで、サプライポンプからコモンレール内への燃料の吐出量は、ECUによって電磁弁装置7のソレノイドコイルへの通電時期および通電期間を制御することによって、燃料加圧室5内に燃料を吸入する実吸入期間を変更して、プランジャ4がシリンダヘッド3の摺動孔16内を下降する際の、燃料加圧室5内への燃料の吸入量を調整することで制御できる。これにより、エンジンの各気筒毎に対応して搭載されたインジェクタからエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される燃料の噴射圧力に相当(または対応)するコモンレール圧を、エンジンの運転条件に対応した最適値に制御することが可能となる。
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のサプライポンプに用いられる電磁弁装置7は、図1および図2に示したように、バルブ31の摺動部31Bを摺動自在に支持するバルブボデー34の軸線方向の一端面(シート部36よりも燃料流方向の下流側端面)に、シート部36の周囲を半径方向に取り囲むように、つまりシート部36周囲の近傍に大径バルブ室21に連通する環状溝39を形成して、この環状溝39内に燃料圧力(高圧力または低圧力)を導入するように構成されている。
これによって、電磁弁装置7の開弁時には、バルブ31の弁頭部31Aの当接部がシート部36のシート面より離座して、バルブ31の弁頭部31Aの当接部(外径面:円錐台形状のテーパ面)とバルブボデー34のシート部36のシート面(円錐台形状のテーパ面)との間にクリアランスが形成され、燃料吸入経路(燃料通路19→小径バルブ室20→クリアランス→大径バルブ室21)が開放され、低圧燃料が燃料加圧室5内に吸入される。このとき、クリアランスを通過する燃料圧力によってバルブボデー34のシート部36のシート面(内径面)に低圧力が作用する。一方、バルブボデー34のシート部36周囲の近傍に環状溝39を設けているので、大径バルブ室21から環状溝39内に導入された低圧力は、シート部36のシート面に作用する低圧力の方向とは逆方向に環状溝39からシート部36(の外径面)へ向かって作用する。これにより、シート部36の内径を半径方向の外径側に膨らませようとする変形に対して、シート部36の内径を半径方向の内径側に戻そうとする変形が生じるため、シート部36の変形が相殺される。
また、電磁弁装置7の閉弁時には、バルブ31の弁頭部31Aの当接部がシート部36のシート面に着座して、燃料吸入経路(燃料通路19→小径バルブ室20→クリアランス→大径バルブ室21)が閉塞される。このとき、プランジャ4がシリンダヘッド3の摺動孔16内を上昇して燃料加圧室5内に導入された燃料が加圧されて高圧化される。このとき、大径バルブ室21は、連通路22を介して燃料加圧室5に常時連通しているため、大径バルブ室21から環状溝39内に導入された高圧力は、環状溝39からシート部36(の外径面)へ向かって作用する。これにより、シート部36の内径を半径方向の内径側に窄めようとする変形が生じるが、バルブ31の弁頭部31Aの当接部がシート部36のシート面に着座しているため、その変形は抑えられる。あるいは、バルブ31の弁頭部31Aの当接部とシート部36のシート面との密着度が増すので、高圧シール性が向上し、高圧燃料が大径バルブ室21から小径バルブ室20側に漏洩することはない。
したがって、電磁弁装置7のバルブボデー34のシート部36の周囲を半径方向に取り囲むように、つまりシート部36周囲の近傍に大径バルブ室21に連通する環状溝39を設けることにより、燃料圧力(高圧力または低圧力)の作用、非作用時のシート変形(シート部36の変形)を抑えることができ、電磁弁装置7の閉弁後にバルブ31の当接部とシート部36のシート面との間に滑りが発生しないようになる。この結果、シート部36の摩耗を抑えることができるので、シート部36のシート面に段差が生じたり、削られたりすることはない。
すなわち、大径バルブ室21に高圧力や低圧力が繰り返し作用しても、シート部36のシート面に摩耗段差や摩耗傷が形成されないので、バルブ31が閉弁固着することはない。このため、燃料吸入経路から燃料加圧室5内に所定の吸入燃料量の低圧燃料を吸入させることが可能となるので、サプライポンプに用いられる電磁弁装置7の耐久性や信頼性を向上することができる。また、電磁弁装置7の閉弁時に、燃料加圧室5内で昇圧した高圧燃料が大径バルブ室21から小径バルブ室20側に漏洩することはないので、電磁弁装置7の良好なシール性を長期間維持させることができる。これにより、燃料加圧室5内に吸入した低圧燃料を狙い通りの高圧(目標燃料圧力)となるように確実に昇圧させることができる。
また、本実施例のサプライポンプに用いられる吐出弁装置8は、図1および図3に示したように、バルブ41の摺動部41Bを摺動自在に支持するバルブシート44の軸線方向の一端面(シート部46よりも燃料流方向の下流側端面)に、シート部46の周囲を半径方向に取り囲むように、つまりシート部46周囲の近傍に大径バルブ室25に連通する環状溝49を形成して、この環状溝49内に燃料圧力(高圧力または低圧力)を導入するように構成されている。
これによって、吐出弁装置8の開弁時には、バルブ41の弁鍔部41Aの当接部がシート部46のシート面より離座して、バルブ41の弁鍔部41Aの当接部(外径面:円錐台形状のテーパ面)とバルブシート44のシート部46のシート面(円錐台形状のテーパ面)との間にクリアランスが形成され、燃料吐出経路(燃料通路23→小径バルブ室24→クリアランス→大径バルブ室25)が開放され、燃料加圧室5内で昇圧された高圧燃料がコモンレール側に圧送される。このとき、クリアランスを通過する燃料圧力によってバルブシート44のシート部46のシート面(内径面)に高圧力が作用する。
一方、バルブシート44のシート部46周囲の近傍に環状溝49を設けているので、大径バルブ室25から環状溝49内に導入された高圧力は、シート部46のシート面に作用する高圧力の方向とは逆方向に環状溝49からシート部46(の外径面)へ向かって作用する。これにより、シート部46の内径を半径方向の外径側に膨らませようとする変形に対して、シート部46の内径を半径方向の内径側に戻そうとする変形が生じるため、シート部46の変形が相殺される。また、吐出弁装置8の開弁時にシート部46の内径を半径方向の外径側に膨らませようとする変形がないため、吐出弁装置8の閉弁時には、シート部46の内径を半径方向の内径側に窄めようとする戻り(変形)は生じない。
したがって、吐出弁装置8のバルブシート44のシート部46の周囲を半径方向に取り囲むように、つまりシート部46周囲の近傍に大径バルブ室25に連通する環状溝49を設けることにより、燃料圧力(高圧力または低圧力)の作用、非作用時のシート変形(シート部46の変形)を抑えることができ、吐出弁装置8の閉弁後にバルブ41の当接部とシート部46のシート面との間に滑りが発生しないようになる。この結果、シート部46の摩耗を抑制することができるので、シート部46のシート面に段差が生じたり、削られたりすることはない。
すなわち、大径バルブ室25に高圧力や低圧力が繰り返し作用しても、シート部46のシート面に摩耗段差や摩耗傷が形成されないので、バルブ41の弁鍔部41Aが摩耗段差に食い込んで固着し、燃料加圧室5内からコモンレール側へ高圧燃料を圧送させることができなくなることを防止できるので、吐出弁装置8の耐久性や信頼性を向上することができる。
また、吐出弁装置8の閉弁時に、燃料が小径バルブ室24から大径バルブ室25側に漏洩することはないので、吐出弁装置8の良好なシール性を長期間維持させることができる。これにより、燃料加圧室5内に吸入した低圧燃料を狙い通りの高圧(目標燃料圧力)となるように確実に昇圧させることができ、この燃料加圧室5内で昇圧した高圧燃料をコモンレール側に圧送供給することができる。この結果、インジェクタよりエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される燃料の噴射圧力が最適値となるので、エンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される燃料噴射量が最適な噴射量となり、エミッションの向上を得ることができる。
図5および図6は本発明の実施例2を示したもので、図5はサプライポンプの全体構造を示した図である。
本実施例では、例えばコモンレール式燃料噴射システムに使用される燃料噴射ポンプ用逆止弁装置として、ポンプハウジング1に装着されたフィードポンプ30から吸入調量弁(図示せず)を経由して燃料加圧室5内に燃料を吸入するための燃料吸入経路を開閉する低圧側の吸入弁装置9と、シリンダヘッド3の摺動孔16内に摺動自在に保持されたプランジャ4の往復運動によって昇圧された燃料をコモンレール側(燃料噴射弁側)に圧送するための燃料吐出経路を開閉する高圧側の吐出弁装置40とが設置されている。
本実施例の燃料噴射ポンプは、吸入調量弁より吸入弁装置9を経て複数の燃料加圧室5内に吸入される低圧燃料を加圧して高圧化すると共に、高圧化した高圧燃料を圧送供給する吸入燃料調量方式のサプライポンプである。このサプライポンプは、吸入弁装置9を一方の燃料加圧室5よりも図示上方側に設置し、他方の燃料加圧室5よりも図示下方側に設置している。また、吸入弁装置9は、それぞれの燃料加圧室5に対応して設置されている。なお、カムシャフト2の中間部外周には、エキセンカム56が一体的に形成されており、エキセンカム56を挟んで図示上下方向の対称位置に、2つのプランジャ4が配置されている。また、エキセンカム56の外周には、カムリング57がブッシュ58を介して摺動自在に保持されている。カムリング57には、プランジャ4と一体化されたプレート部材59が、スプリング12の付勢力によって押し付けられている。
ここで、吸入弁装置9は、図6に示したように、燃料加圧室5に連通する燃料吸入経路(燃料通路51〜53、小径バルブ室54)を開閉するバルブ61と、このバルブ61を燃料吸入経路を閉塞する側(閉弁方向)に付勢するスプリング(バルブ付勢手段)62と、これらを収容するハウジングとによって構成されている。本実施例の吸入弁装置9のハウジングは、スプリング62を収容するスプリング室55を形成するプラグ63と、このプラグ63の密着面とシリンダヘッド3の嵌合部との間に挟み込まれたバルブボデー64とによって構成されている。
吸入弁装置9のバルブ61は、バルブボデー64のバルブ摺動孔65内に軸線方向に往復移動自在に収容されている。本実施例のバルブ61は、バルブボデー64のシート部66に着座、離座して燃料吐出経路を閉塞、開放する円錐形状の弁頭部61A、およびこの弁頭部61Aより軸線方向の図示上方側(または図示下方側:スプリング室側)に延長されて弁頭部61Aより内径の小さい摺動部61B等を有している。また、スプリング62は、本実施例ではコイルスプリングが使用され、バルブ61と一体化されたシャフト61Cの周囲に配されて、一端がCリング67に固定され、且つワッシャ68を介して保持され、また、他端がバルブボデー64の凹状の保持部に保持されている。
また、燃料通路51〜53および小径バルブ室54内の燃料圧力にスプリング62の付勢力を加えた合力が燃料加圧室5内の燃料圧力よりも低い状態では、バルブ61が閉弁し、また、燃料通路51〜53および小径バルブ室54内の燃料圧力にスプリング62の付勢力を加えた合力が燃料加圧室5内の燃料圧力よりも大きくなると、バルブ61が開弁する。これにより、吸入弁装置9は、シート部66よりも燃料流方向の下流側(燃料加圧室側)から、シート部66よりも燃料流方向の上流側への高圧燃料の逆流を防止する逆止弁機能を具備する逆止弁装置を構成する。また、バルブ61の弁頭部61Aは、バルブ61の弁頭部61Aの当接部がバルブボデー64のシート部66より離脱した際に、シート部66の内径面との間に燃料が通過するクリアランスを形成する。
バルブボデー64は、例えば軸受鋼(SUJ2等)よりなる金属材料によって所定の円筒形状に形成されている。このバルブボデー64は、プランジャ4のストローク方向の増大化を抑えるべく、大径バルブ室を兼ねる燃料加圧室5の図示上端側(または図示下端側)に組み付けられている。すなわち、プラグ63をシリンダヘッド3にねじ締付軸力で締め付け固定した際に、シリンダヘッド3の密着面とプラグ63の密着面との間に挟み込まれた状態で保持固定されている。このバルブボデー64は、バルブ61の弁頭部61Aを軸線方向の一端面より突出した状態で、バルブ61の摺動部61Bを摺動自在に支持するバルブ支持部材として機能するものである。また、バルブボデー64は、バルブ61の弁頭部61Aの当接部が着座、離座する円環形状のシート部66を有している。また、バルブボデー64のシート部66の内径面(円錐面、シート面)は、吸入弁装置9の閉弁時にバルブ61の弁頭部61Aの当接部が着座する弁座として機能する。この弁座は、吸入弁装置9の閉弁時におけるバルブ61の閉弁方向(図示上方または図示下方)への移動を、バルブ61の全閉位置にて規制するための規制面となる。
ここで、本実施例のバルブボデー64には、シート部66を半径方向に取り囲むように、つまりシート部66周囲の近傍に、シート部66よりも燃料流方向の下流側(図示下方側または図示上方側)に位置する燃料加圧室5に直接連通する環状溝(均圧室、環状空間)69が形成されている。そして、環状溝69は、シート部66周囲の近傍のバルブボデー64の軸線方向の一端面で開口している。この環状溝69は、環状溝69内に燃料加圧室5から燃料圧力を導入することで、シート部66に作用する燃料圧力の方向に対して逆方向に環状溝69からシート部66に向かって燃料圧力が作用するように構成されている。なお、本実施例の環状溝69は、バルブボデー64の軸線方向の一端面からシート部66の軸線方向の長さよりも深い位置に至るまで形成されている。これにより、環状溝69は、シート部66の外径側で、軸線方向で重なり合っている(オーバーラップしている)。
本実施例のバルブボデー64のシート部66は、小径バルブ室54の軸線方向の一方側(図示下端側または図示上端側)の開口端を小径バルブ室54の内径より円錐形状に拡径することで設けられている。これにより、シート部66は、円錐台形状の内径面(シート面)を有し、内部に円錐台形状の中空部(弁孔)を形成する。また、シート部66の外径面は、軸線方向に対して内径面の法線角度(テーパ角度)よりも急な法線角度(テーパ角度)を有する傾斜面(円錐状面)とされている。なお、本実施例では、シート部66のシート面を円錐台形状としているが、小径バルブ室54の内径と略同一径の円環状シートエッジとしても良い。また、小径バルブ室54の内径よりも2段階以上に拡径される階段状シートエッジとしても良い。
以上の構成によって、吸入弁装置9の開弁時には、バルブ61の弁頭部61Aとバルブボデー64のシート部66のシート面との間に形成されるクリアランスを経由して低圧燃料が燃料加圧室5内に吸入される。このとき、クリアランスを通過する燃料圧力によってバルブボデー64のシート部66のシート面に低圧力が作用する。一方、バルブボデー64のシート部66周囲の近傍に環状溝69を設けているので、燃料加圧室5から環状溝69内に導入された低圧力は、シート部66のシート面に作用する低圧力の方向とは逆方向に環状溝69からシート部66(の外径面)へ向かって作用する。これにより、シート部66の内径を半径方向の外径側に膨らませようとする変形に対して、シート部66の内径を半径方向の内径側に戻そうとする変形が生じるため、シート部66の変形が相殺される。
また、プランジャ4がシリンダヘッド3の摺動孔16内を上昇して燃料加圧室5内に導入された燃料が加圧されて高圧化されると、吸入弁装置9が閉弁する。このとき、燃料加圧室5から環状溝69内に導入された高圧力は、環状溝69からシート部66(の外径面)へ向かって作用する。これにより、シート部66の内径を半径方向の内径側に窄めようとする変形が生じるが、バルブ61の弁頭部61Aの当接部がシート部66のシート面に着座しているため、その変形は抑えられる。あるいは、バルブ61の弁頭部61Aの当接部とシート部66のシート面との密着度が増すので、高圧シール性が向上し、高圧燃料が燃料加圧室5から小径バルブ室54側に漏洩することはない。
したがって、吸入弁装置9のバルブボデー64のシート部66の周囲を半径方向に取り囲むように、つまりシート部66周囲の近傍に燃料加圧室5に連通する環状溝69を設けることにより、燃料圧力(高圧力または低圧力)の作用、非作用時のシート変形(シート部66の変形)を抑えることができ、吸入弁装置9の閉弁後にバルブ61の弁頭部61Aの当接部とシート部66のシート面との間に滑りが発生しないようになる。この結果、シート部66の摩耗を抑制することができるので、シート部66のシート面に段差が生じたり、削られたりすることはない。
すなわち、燃料加圧室5に高圧力や低圧力が繰り返し作用しても、シート部66のシート面に摩耗段差や摩耗傷が形成されないので、バルブ61の弁頭部61Aが摩耗段差に食い込んで固着し、燃料加圧室5内に低圧燃料を吸入させることができなくなることを防止できるので、吸入弁装置9の耐久性や信頼性を向上することができる。また、吸入弁装置9の閉弁時に、燃料加圧室5内で昇圧した高圧燃料が燃料加圧室5から小径バルブ室54側に漏洩することはないので、吸入弁装置9の良好なシール性を長期間維持させることができる。これにより、燃料加圧室5内に吸入した低圧燃料を狙い通りの高圧(目標燃料圧力)となるように確実に昇圧させることができる。