JP4240426B2 - 高周波域のアコースティックエミションの検出方法および検出素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波域のアコースティックエミションの検出方法および検出素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アコースティックエミション(AE)は、固体の変形(破壊を含む)に伴って解放されるエネルギーが音響パルスとなって伝搬する現象として知られている。この音響パルスは、10MHz以上の高周波数を有する場合もある。
【0003】
例えば、「センサ技術」1987年10月号(Vol.7.No.11)「圧電型AEセンサの原理と超小型センサの適用例」、あるいは、「計測技術」’96増刊号107−111頁第3章「設備診断技術と適用事例」の「AEによる最近の設備診断例」には、この現象を検知することにより対象の固体の状況を把握する手法が開発され、一部は実用化され、その効果も、品質管理に貢献しているとされ、評価されていることが記載されている。
【0004】
一方、用途が広がるにつれて、検出すべきアコースティックエミションによっては、広帯域および/または20MHz以上の高周波のセンサが必要となり、このようなアコースティックエミションの検出手法の開発が要望され始めた。
【0005】
他方、従来の開発され、あるいは、実用化されている圧電型AEセンサは、その検出素子がセラミックス(アルミナ、PZTなど)圧電体からなるものであり、その検出可能な周波数の上限が1MHz乃至2MHzであり、それがため、前記要望を満足するには不十分であった。
【0006】
また、用途が広がるにつれて、アコースティックエミションを検出する被検出体の表面形状が、平坦面ではなく、二種以上の平面の組合せあるいは曲面である場合も増えてきており、非平坦面を有する、例えば、円柱状あるいは円錐状の棒状体、あるいは、椀状凸面あるいは凹面を有する、被検出体に容易に対応できるセンサが必要となり、このようなアコースティックエミションの検出素子の開発が要望され始めた。
【0007】
上述の通り、従来の圧電型AEセンサは、その検出素子がセラミックス(アルミナ、PZTなど)圧電体からなるものであるため、センサのアコースティックエミションの感知面を被検出体の曲面に適合させることが困難であり、それがため、前記要望を満足するには不十分であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、上記要望を満足させる高周波域のアコースティックエミションの検出方法および検出素子を提供することにある
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る高周波域のアコースティックエミションの検出方法の構成は、次の通りである。
【0010】
高分子圧電膜と、該高分子圧電膜の両面に設けられた電極、これら電極のそれぞれに結合されたリード線と、前記2つの電極のそれぞれの外面を覆って設けられた保護膜とからなる検出素子を用いての高周波域のアコースティックエミションの検出方法において、
前記積層された高分子膜を覆った保護膜の一方を高周波域のアコースティックエミションの被検出体に対向せしめて、前記高分子圧電膜からなる前記検出素子にて検出する、高周波域のアコースティックエミションの検出方法。
【0011】
この本発明によれば、広帯域のアコースティックエミションの検出が可能となり、また、従来の技術に比べより高周波域のアコースティックエミションの検出が可能となる。
【0012】
被検出体の表面の形状が平坦面でない場合は、この本発明において、検出素子を全体として可撓性を有する構造とし、この可撓性を利用して、検出素子を被検出体の表面形状に沿わせて用いるのが、アコースティックエミションの検出精度を高める上で、好ましい。
【0013】
また、この発明において、高分子圧電膜は、フッ化ビニリデン65乃至95モル%と三フッ化エチレン35乃至5モル%との共重合体からなる圧電膜であることが、高周波域のアコースティックエミションの検出精度を高める上で、好ましい
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る高周波域のアコースティックエミションの検出素子の構成は、次の通りである。
【0015】
前記積層された高分子圧電膜と、該高分子圧電膜の両面に設けられた薄層電極と、これら電極の一端にそれぞれに結合されたリード線と、前記2つの電極のそれぞれの外面を覆って設けられた薄層保護膜と、これら保護膜の一方の外面を覆って設けられた導電性材料からなる可撓性を有する薄層シールド部材とからなり、前記保護膜の他方をアコースティックエミションの受信面とする可撓性を有する高周波域のアコースティックエミションの検出素子。
【0016】
この本発明によれば、広帯域のアコースティックエミションの検出が可能となり、また、従来の技術に比べより高周波域のアコースティックエミションの検出が可能となり、更に、被検出体の表面が平坦面でない場合においても、高周波域のアコースティックエミションの精度良い検出が可能となる。
【0017】
また、この発明において、積層された高分子圧電膜は、フッ化ビニリデン65乃至95モル%と三フッ化エチレン35乃至5モル%との共重合体からなる圧電膜であることが、高周波域のアコースティックエミションの検出精度を高める上で、好ましい。
【0018】
なお、この共重合体からなる圧電体自体は、特公昭63−18869号公報に開示されている。また、この共重合体の単結晶膜からなる圧電体自体は、特開平8−36917号公報に開示されている。
【0019】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら、本発明に係る高周波域のアコースティックエミションの検出方法および検出素子の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明を実施するために用いられるセンサの一例の縦断面図であり、図2は、図1に示されたセンサの下面図である。
【0021】
図1および2において、センサ1は、上面が閉塞され下面に開口を有する円筒状のシールドケース2、円筒状のシールドリング3、上下両面に金箔からなる電極4、5がそれぞれ貼着された実質的に円形の高分子圧電膜6、電極4、5の外面にそれぞれ貼着された保護膜7、8、第1のリード線9、第2のリード線10、送信ケーブル11とで形成されている。
【0022】
高分子圧電膜6は、上下2枚の保護膜7、8で封止され、保護膜7、8は、その外方において接合され、その接合の外周端部は、シールドリング3の下端面に貼着されている。このようにして、シールドケース2の下面の開口は、高分子圧電膜6により塞がれている。
【0023】
シールドケース2およびシールドリング3の一部には、ケース2の外周面とリング3の内周面間において、送信ケーブル11が連絡する連絡部(ケーブル挿入孔あるいはコネクタ装着孔)12が設けられている。
【0024】
また、シールドケース2およびシールドリング3の一部には、ケース2の外周面とリング3の内周面間を貫通する空気流通孔13が設けられている。
【0025】
更に、シールドケース2の一部には、腔14が穿設され、この腔14の下方は、シールドケース2の下面にて、外方に解放されており、その上方は、空気流通孔13に解放されている。腔14は、シールドケース2の内壁とシールドリング3の外壁とに囲まれた横断面が半円形の空間である。
【0026】
第1のリード線9は、その一端が電極5に接合され、保護膜7、8の接合部を通り、その端部からシールドケース2の腔14中に延び、更に空気流通孔13からシールドケース2の内腔15に入り、その他端にて、シールドケース2の内面に接合されている。
【0027】
第2のリード線10は、その一端が電極4に接合され、第1のリード線9と同様にして、シールドケース2の内腔15に入り、その他端にて、シールドケース2の連絡部12に至り、直接あるいはコネクタを介して、同軸ケーブルからなる送信ケーブル11のシグナル線に連結されている。また、シールドケース2と送信ケーブル11のグランド線とは、連結線16にて連結されている。
【0028】
この送信ケーブル11は、公知のAEシグナルプロセッサ(図示せず)に結合され、これにより、センサ1が感知するアコースティックエミションに応じて得られる電気信号が処理され、アコースティックエミションが検出される。
【0029】
図1に示した態様は、高分子圧電膜6は、これをλ/2モードで駆動するものである。図示はしないが、高分子圧電膜6の背面に適切な吸収材あるいは反射板を位置せしめることにより、高分子圧電膜6をλ/4モードで駆動することも可能である。
【0030】
図3は、本発明を実施するために用いられるセンサの一例の縦断面図であり、図4は、図3に示されたセンサの上面図である。
【0031】
図3および4において、センサ21は、実質的に円形の高分子圧電膜22の下面に、金箔からなる下方薄層電極23が貼着され、該電極23の下面に、下方薄層保護膜24が貼着され、前記高分子圧電膜22の上面に、金箔からなる上方薄層電極25が貼着され、該電極25の上面に、上方薄層保護膜26が貼着され、更に、該上方薄層保護膜26の上面を覆って導電性材料からなる可撓性を有する薄層シールド部材27が設けられ、前記下方電極23の一端に第1のリード線28が結合され、前記上方電極25の一端に第2のリード線29が結合されることにより、形成されている。
【0032】
これら第1のリード線28と第2のリード線29とは、公知のAEシグナルプロセッサ(図示せず)に結合され、これにより、センサ21が感知するアコースティックエミションに応じて得られる電気信号が処理され、アコースティックエミションが検出される。
【0033】
この構造のセンサ21においては、高分子圧電膜22、下方および上方電極23、25、ならびに、下方および上方保護膜24、26の合計の厚みを、0.5mm以下に設計することが可能である。
【0034】
導電性材料からなる可撓性を有する薄層シールド部材27としては、金属の細線、例えば、線径が約0.05mm乃至0.5mmのスズメッキされた銅の細線、にて形成された編物、織物、あるいは、不織布からなるしなやかなメッシュタイプのシートが好ましく用いられる。
【0035】
この構造によれば、センサ21は、全体として可撓性を有するため、被検出体の表面が平坦面でない場合であっても、この可撓性を利用して、センサ21を被検出体の当該表面に沿わせて位置せしめることが可能となる。
【0036】
従来のセラミックス圧電体を用いたアコースティックエミションの検出においては、事前にセラミックス圧電体を被検出体の表面形状に合わせて成形した場合は別にして、このようなことは困難であった。
【0037】
【実施例】
次に、本発明に係るアコースティックエミションの検出方法の実施例および比較実施例示す。
【0038】
[実施例]
図1に示されたセンサ1と同様の構造からなり、次の要件に基づくセンサ1が作成された。
【0039】
シールドケース2:
真鍮製であり、外径が22mm、下面から上面までの高さが10mm、内径が16mm、内腔15の高さが8mmとされ、連結部12、空気流通孔13および腔14が設けられている。
【0040】
シールドリング3:
真鍮製であり、外径が16mm、内径が15mm、高さが8mmとされ、連結部12および空気流通孔13が設けられている。
【0041】
高分子圧電膜6:
ポリフッ化ビニリデン80モル%と三フッ化エチレン20モル%とからなる共重合体で形成された厚さ60μmの高分子圧電膜が、接着剤(エポキシ樹脂)を介して8枚積層され、その上面および下面に、それぞれ厚さ1000オングストロームの金からなる電極4、5が貼着されてなる。この高分子圧電膜6の直径は、12.4mmとされた。なお、高分子圧電膜の積層枚数を減らすことにより、20MHz以上の高周波が検出可能なAEセンサを作成することができる。
【0042】
保護膜7、8:
厚さ12.50μmのポリイミドフィルムからなる。この保護膜7、8は、電極4、5のそれぞれの外面に貼着された。これら保護膜7、8の外径は、シールドリング3の外径16mmと実質的に同じとされた。この保護膜7、8が接合され一体化された外周部は、シールドリング3の下端面に、接着剤(エポキシ樹脂)を介して接合された。
【0043】
送信ケーブル11:
長さ1mの直径2.2mm、50Ω系の同軸ケーブルが用いられ、一端は、第1のリード線9および第2のリード線10に電気的に接続され、他端には、コネクタ(図示せず)が取り付けられた。
【0044】
振動数応答分析器(Frequency Response Analyzer)(5090FRA)が用いられ、分析器の基準器の上に、センサ1が、センサ1の高分子圧電膜6側が基準器の上面に接する形で載置され、基準器が駆動され、このセンサ1が出力する信号が収録された。
【0045】
この収録された結果が、図5のチャートに示される。
【0046】
ここで、従来のセラミックス圧電体を用いたAEセンサの場合、センサを基準器の上面に載置し、マグネットあるいは強力な接着剤を使用して強固に取り付けないと正確な振動伝達がなされない欠点を有していた。しかるに、本発明に係る高分子圧電体を用いたAEセンサの場合、センサを基準器の上面に載置し、単に粘着性のテープ(ガムテープ)で保持するのみで、適切に駆動するAEセンサとして用いることができ、これは、従来のセラミックス圧電体を用いたAEセンサには見られない利点である。また、本発明に係る高分子圧電体を用いたAEセンサの場合、それ自体が、従来のセラミックス圧電体に比べ遥かにフレキシブルであるため、音響伝達面との間に、高分子からなるゲル状の音響カプラントを介在させることにより、音響伝達面への接触圧を小さくすることが可能である。
【0047】
[比較例]
広帯域型として一般に市販されている圧電体がセラミックスからなるAEセンサ(AE−900F2)が用いられ、実施例の場合と同様にして、このセンサが出力する信号が収録された。
【0048】
この収録された結果が、図6のチャートに示される。
【0049】
これら図5と図6のチャートにおけるそれぞれの波形の比較から、本発明に係るアコースティックエミションの検出方法によれば、従来技術では達成できなかった極めて広帯域で波形が平坦なアコースティックエミションを検出することが可能であることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、従来技術では達成できなかった極めて広帯域で波形が平坦なアコースティックエミションを検出することが可能となる。また、高分子圧電膜の厚みを、膜の積層枚数を選択することにより、調整し、20MHz以上の高周波域のアコースティックエミションを検出することが可能となる。また、検出素子は、全体として可撓性を有するため、被検出体の表面が平坦面でない場合でも、当該表面に沿って検出素子を載置できるため、高周波域のアコースティックエミションの検出精度が保証される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るアコースティックエミションの検出方法に好ましく用いられる高分子圧電体からなるセンサの一例の縦断面図。
【図2】 図1に示されたセンサの下面図。
【図3】 本発明に係る可撓性を有するアコースティックエミションの検出素子の一例の縦断面図。
【図4】 図3に示されたセンサの上面図。
【図5】 実施例におけるセンサの特性を示すチャート。
【図6】 比較例におけるセンサの特性を示すチャート。
Claims (5)
- 高分子圧電膜と、該高分子圧電膜の両面に設けられた電極、これら電極のそれぞれに結合されたリード線と、前記2つの電極のそれぞれの外面を覆って設けられた保護膜とからなる検出素子を用いての高周波域のアコースティックエミションの検出方法において、
積層された高分子膜を覆った前記保護膜の一方を高周波域のアコースティックエミションの被検出体に対向せしめて、前記高分子圧電膜からなる前記検出素子にて検出する、高周波域のアコースティックエミションの検出方法。 - 前記検出素子が全体として可撓性を有し、該可撓性を利用して該検出素子を前記被検出体の表面形状に沿わせて用いてなる請求項1に記載の高周波域のアコースティックエミションの検出方法。
- 前記積層された高分子圧電膜が、フッ化ビニリデン65乃至95モル%と三フッ化エチレン35乃至5モル%との共重合体からなる圧電膜である請求項1あるいは請求項2に記載の高周波域のアコースティックエミションの検出方法。
- 前記積層された高分子圧電膜と、該高分子圧電膜の両面に設けられた薄層電極と、これら電極の一端にそれぞれに結合されたリード線と、前記2つの電極のそれぞれの外面を覆って設けられた薄層保護膜と、これら保護膜の一方の外面を覆って設けられた導電性材料からなる可撓性を有する薄層シールド部材とからなり、前記保護膜の他方をアコースティックエミションの受信面とする可撓性を有する高周波域のアコースティックエミションの検出素子。
- 前記積層された高分子圧電膜が、フッ化ビニリデン65乃至95モル%と三フッ化エチレン35乃至5モル%との共重合体からなる圧電膜である請求項4に記載の高周波域のアコースティックエミションの検出素子。
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