JP4239806B2 - マルチモード光ファイバ母材の製造方法、マルチモード光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、このような母材から製造されたマルチモード光ファイバは、屈折率分布が理想屈折率分布からずれてしまい、広い伝送帯域が得られにくい状況にあった。
長尺状の出発材をその軸回りに回転させつつ、四塩化ケイ素と屈折率調整用添加物と燃焼ガスをバーナに導入して火炎を発生させ、前記火炎によりガラス微粒子を生成し、前記出発材と前記バーナとを前記出発材の長手方向に複数回相対移動させて、前記ガラス微粒子を前記出発材の外側に堆積させた後、堆積した前記ガラス微粒子を加熱して焼結させ、マルチモード光ファイバ母材を製造する方法であって、
前記ガラス微粒子を堆積させる際に、ガラス微粒子堆積部の表面の温度が母材の有効部全長にわたり目標値に対して、ガラス微粒子の堆積時の温度変動に対する透明化後の光ファイバ母材の比屈折率差の変動が所定の伝送帯域に対応する比屈折率差変動幅の許容値範囲内となる所定範囲内となるように、前記燃焼ガスの流量を制御し、かつ、
前記焼結を行って少なくとも1つのロットを製造した後、
前記ロットにおける、相対移動毎に形成された各箇所の屈折率を測定し、
前記ロットにおける相対移動毎の前記屈折率調整用添加物の導入量及び前記屈折率を基に、次回のロットを製造する時の前記屈折率調整用添加物の導入量を相対移動毎に制御することを特徴としている。
図1に、本発明に係るマルチモード光ファイバ母材の製造方法を実施することのできる製造装置を示す。
図1に示す製造装置1は、所謂OVD法により、反応容器2の内側の空間内でマンドレル4に対してガラス微粒子を堆積させるものである。
反応容器2の中には、垂直方向に昇降可能な把持具3が収容されている。この把持具3は、出発材である長尺状のマンドレル4の上端を把持して、マンドレル4を垂直方向に支持している。また、把持具3は、支持したマンドレル4をその軸回りに回転させることができる。マンドレル4は、アルミナ、カーボン、シリカのうち何れかの材質で形成されている。また、マンドレル4は、断面外形は真円に近いことが望ましく、全体構成としては中空の円筒形状であっても中実の円柱形状であっても良い。
反応容器2の内側には、非接触式のサーモトレーサ12が設けられており、バーナ5の火炎が当たってガラス微粒子が堆積しつつある部分6a(これをガラス微粒子堆積部と呼ぶ)の温度を測定できる。サーモトレーサ12は、所望の被温度測定領域のサーモグラフィ画像を得ることができる。このサーモトレーサ12は、制御用コンピュータ13と接続されており、測定した温度データがこのコンピュータ13に送られる。また、コンピュータ13は、バーナ5へ導入するガスの流量を調節する流量調節器(MFC)16に接続されている。
コンピュータ13は、温度の測定値と設定値とのずれ、及び流量の測定値と設定値とのずれに基づいて、流量調節器16の動作を制御する。なお、このコンピュータ13は、所謂PID制御を行って、極めて精度の高い制御を行うことができる。したがって、四塩化ケイ素と四塩化ゲルマニウムの流量を、設定値に対して±1%以内となるように制御することができる。
まず、把持具3によって反応容器2内に吊り下げたマンドレル4をその軸回りに回転させる。そして、バーナ5に四塩化ケイ素と四塩化ゲルマニウム、水素、酸素を導入し、回転しているマンドレル4に向かって、酸水素火炎を発生させる。酸水素火炎中では、加水分解反応により二酸化ゲルマニウムが含まれたガラス微粒子が生成される。さらに、マンドレル4を、軸回りに回転させながら、長手方向に昇降させて往復運動させる。なお、本実施形態ではバーナ5を固定してマンドレル4を移動させる態様としたが、これとは逆にバーナ5をマンドレル4の長手方向に移動させることで、バーナ5とマンドレル4とを相対移動させても良い。
このように、バーナ5からガラス微粒子を生成して、マンドレル4を回転させつつその長手方向に往復運動させることで、生成されたガラス微粒子をマンドレル4の周囲に層状に堆積させて、ガラス微粒子堆積体6を形成していく。
図2に示すように、バーナ5に導入する水素ガスの流量とガラス微粒子堆積部6aの表面の温度とは、比例関係であることがわかる。
図3に示すように、ガラス微粒子堆積部6aの表面の温度と比屈折率差とは、比例関係であることがわかる。なお、グラフの縦軸の変数は、屈折率調整用添加物[D]のガスの流量1slmあたりの比屈折率差であり、グラフのデータは、温度が高いほど屈折率調整用添加物の添加量が多くなることを示している。また、ここで用いた屈折率調整用添加物はゲルマニウムであり、バーナ5に導入した四塩化ゲルマニウムのガス1slm当たりの比屈折率差を示している。なお、比屈折率差とは、純シリカに対する屈折率の差を、純シリカの屈折率で除した値である。
また、光ファイバの屈折率分布と伝送帯域の関係について調べると、1Gbpsの伝送容量を持つ光ファイバを得るための基準である、500MHz・kmの伝送帯域を得るための比屈折率差変動幅の許容値は、0.051%であることがわかった。さらに、ガラス微粒子の堆積時の温度変動に対する透明化後の光ファイバ母材の比屈折率差の変動は、0.0034%/℃である。すなわち、目標値に対して実際の温度が±7℃の範囲内であれば良いことがわかった。
バーナ5から火炎を発生させて、マンドレル4の周囲にガラス微粒子を堆積させる際、サーモトレーサ12によりガラス微粒子堆積部6aの表面の温度を測定する。ここでの温度の測定は、例えば図4に示すように、サーモトレーサ12によってバーナ5の火炎が当たってガラス微粒子が堆積している堆積部を含んだ領域(被温度測定領域12a)の温度を測定する。サーモトレーサ12によって測定された温度は、コンピュータ13によって、図4中の枠内に示すように被温度測定領域12aの温度分布を示すサーモグラフィ画像として処理される。そして、被温度測定領域12aのなかで最も高い温度(例えば、図4中の測定点6b)のデータをコンピュータ13が代表値として取り出して行う。
また、温度の代表値は、被温度測定領域12aの平均温度をコンピュータ13により算出して用いても良い。
これにより、堆積するガラス微粒子に含まれるゲルマニウムの量を、堆積するガラス微粒子の層毎に適切に制御することができ、GI型の屈折率分布を精度良く得ることができる。
また、本実施形態の製造装置1は、ガスの流量をPID制御によって制御するため、測定された温度の代表値と設定された目標値との差分を±2℃以下とすることもできる。この場合には、屈折率分布をさらに目標とする値に近づけることができる。
ガラス微粒子堆積体6を形成した後、これを焼結して透明化し、そのガラス体の比屈折率差を、ガラス微粒子を堆積した層毎に、すなわち径方向に沿って測定していく。そして、この測定結果から、マンドレル4を取り除いてガラス体を中実化したときの屈折率分布を算出する。この実測値から近似した屈折率分布(図中A)と、計算により求められたGI型の屈折率分布(図中B)と、これらの差分値(図中C)とを、図5に示す。この図5で示す差分値がゼロに近づくほど、マルチモード光ファイバとしての伝送帯域が広くなる。
[D1]=[D0]+C/m ・・・(1)
ガラス微粒子を堆積させていく過程では、ガラス微粒子堆積体6が徐々に成長し、その径が太くなり、堆積部の面積も大きくなる。そして、ガラス微粒子堆積部6aがバーナ5に近づいていくため、ガラス微粒子の生成量に対して実際に堆積する量が変化する。すなわち、バーナ5に導入した四塩化ケイ素と四塩化ゲルマニウムの量に対して、堆積されたシリカと二酸化ゲルマニウムの量が変化すると考えられる。
この図8のグラフの縦軸は、ガラス微粒子堆積体6を透明化し、マンドレル4を取り除いてガラス体を中実化したときのコア中心から半径方向への距離を示している。なお、グラフの横軸は、コア中心の位置を基準(ゼロ)として、透明化したガラス体の外周部分を1とみなして規格化させたものである。
図8に示すように、シリカの収率k1と二酸化ゲルマニウムの収率k2は、それぞれ異なった堆積収率を示し、径方向の外側に向かって次第に効率が上がる傾向であることがわかる。
この式(2)を用いて算出されたトラバース毎の四塩化ゲルマニウムの流量[D]を用いて、ガラス微粒子堆積体6を製造する。そして、透明化させたガラス体の比屈折率差を径方向に測定し、理想比屈折率差との差分C5を算出した。この差分C5のグラフを、図7に示す。式(2)を用いた制御により得られた結果は、差分値が極めて小さく、式(1)を用いた制御の結果(差分C1〜C4)と比較しても良好である。
また、上述した水素ガスや四塩化ゲルマニウムの流量の制御は、マンドレル4の長手方向の移動毎にその制御値を設定して行う場合について説明したが、さらに、その1回の長手方向の移動のうち、マンドレル4の長手方向に沿った複数の箇所において制御値を設定すると、長手方向に均一な光ファイバ母材を精度良く得ることができる。
まず、マンドレル4の材質がシリカである場合には、ガラス微粒子堆積体6を焼結させて透明化し、マンドレル4の部分をドリル等で切削して穴あけを行う。マンドレル4の材質が、アルミナ、カーボン、アルミナ上にカーボンをコーティングしたもの、の何れかである場合には、ガラス微粒子堆積体6からマンドレル4を引き抜き、焼結を行って透明化する。マンドレルの材質が、アルミナ、カーボン、アルミナ上にカーボンをコーティングしたものの何れかであると、ガラス微粒子堆積体から引き抜くことが容易である。
これらの何れかの方法により、ガラスパイプが形成される。
さらに、1つの母材から得られたマルチモード光ファイバのうち、その長手方向の任意の2点での伝送帯域の変動が±5%以内であると良い。
また、マルチモード光ファイバのコアの非円率が全長に渉って1%以下であると良い。
なお、非円率は、光ファイバの断面外形を楕円に近似して長径と短径を求め、次式(3)によって計算する。
非円率(%)={(長径−短径)/中心値}×100 …(3)
式(3)の中心値は、次式(4)によって計算する。
中心値=[{(長径)2+(短径)2}/2]1/2 …(4)
まず、ガラス微粒子堆積部の表面の温度を図2で求めた傾きの関係を使って目標値の±7℃の範囲に入るよう調整しつつ、上記の式(1)を用いて四塩化ゲルマニウムの流量を算出し、その流量に従ってガラス微粒子堆積体6を製造した。マンドレル4は、シリカを主成分とする、直径23mm、把持された部分を除く長さが900mmのものを使用した。そして、マンドレル4のバーナ5に対する移動速度は200mm/分とし、その長手方向の往復運動の幅は540mmとした。ここで得られたガラス微粒子堆積体は、その有効部の長さが200mmであり、外径が137mmφであった。
さらに、マルチモード光ファイバのクラッドとなる部分を形成するために、得られたガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させ、それを焼結して透明化した。これにより、マルチモード光ファイバ母材が製造された。
まず、ガラス微粒子堆積部の表面の温度を図2で求めた傾きの関係を使って目標値の±7℃の範囲に入るよう調整しつつ、四塩化ゲルマニウムの流量を前回ロットの屈折率分布から算出し、その流量に従ってガラス微粒子堆積体6を製造した。マンドレル4はカーボンを主成分とする、直径20mm、把持された部分を除く長さが900mmのものを使用した。また、図10に示すように、マンドレル4はガラス製のパイプ17にピン18で固定されている。そして、マンドレル4のバーナ5に対する移動速度は200mm/分とし、その長手方向の往復運動の幅は540mmとした。ここで得られたガラス微粒子堆積体は、その有効部の長さが200mmであり、外径が115mmφであった。
さらに、マルチモード光ファイバのクラッドとなる部分を形成するために、得られたガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させ、それを焼結して透明化した。これにより、マルチモード光ファイバ母材が製造された。
2 反応容器
3 把持具
4 マンドレル(出発材)
5 バーナ
6 ガラス微粒子堆積体
6a ガラス微粒子堆積部
7 排気口
8 排気管
9 排気圧調節部
10 圧力計
11 補助バーナ
12 サーモトレーサ
13 コンピュータ
14 ガス管
15 流量計
16 流量調節器
Claims (14)
- 長尺状の出発材をその軸回りに回転させつつ、四塩化ケイ素と屈折率調整用添加物と燃焼ガスをバーナに導入して火炎を発生させ、前記火炎によりガラス微粒子を生成し、前記出発材と前記バーナとを前記出発材の長手方向に複数回相対移動させて、前記ガラス微粒子を前記出発材の外側に堆積させた後、堆積した前記ガラス微粒子を加熱して焼結させ、マルチモード光ファイバ母材を製造する方法であって、
前記ガラス微粒子を堆積させる際に、ガラス微粒子堆積部の表面の温度が母材の有効部全長にわたり目標値に対して、ガラス微粒子の堆積時の温度変動に対する透明化後の光ファイバ母材の比屈折率差の変動が所定の伝送帯域に対応する比屈折率差変動幅の許容値範囲内となる所定範囲内となるように、前記燃焼ガスの流量を制御し、かつ、
前記焼結を行って少なくとも1つのロットを製造した後、
前記ロットにおける、相対移動毎に形成された各箇所の屈折率を測定し、
前記ロットにおける相対移動毎の前記屈折率調整用添加物の導入量及び前記屈折率を基に、次回のロットを製造する時の前記屈折率調整用添加物の導入量を相対移動毎に制御することを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記燃焼ガスの流量の制御は、前記表面の温度が、目標値に対して±7℃の範囲内となるように行うことを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記燃焼ガスの流量の制御は、前記表面の温度が、目標値に対して±2℃の範囲内となるように行うことを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から3の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記表面の温度として、前記堆積部を含む被温度測定領域内の最高温度を用いることを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から3の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記表面の温度として、前記堆積部を含む被温度測定領域内の平均温度を用いることを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から5の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
測定された屈折率と、目標とする理想屈折率との差分値を、相対移動毎に形成された箇所毎に算出し、前記屈折率の差分値に基づいて、次回のロットを製造する時の前記屈折率調整用添加物の導入量を相対移動毎に制御することを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から5の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記四塩化ケイ素と前記屈折率調整用添加物のうち、前記バーナへの少なくとも一方の導入量を、相対移動毎の堆積収率を用いて制御することを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から7の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記四塩化ケイ素と前記屈折率調整用添加物のうち、前記バーナへの少なくとも一方の導入量の変動を、当該導入量の設定値に対して±1%以内に制御することを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から8の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法であって、
前記ガラス微粒子の生成と堆積を行う反応容器内の圧力変動を、当該圧力の設定値に対して±13%以内となるように制御することを特徴とするマルチモード光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1から9の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法を用いる、マルチモード光ファイバの製造方法であって、
前記ガラス微粒子を焼結させた後、前記出発材を切削加工により除去してガラスパイプを形成し、当該ガラスパイプを中実化してガラスロッドとし、当該ガラスロッドの外側にガラスを設けてマルチモード光ファイバ母材とし、当該マルチモード光ファイバ母材を線引きしてマルチモード光ファイバを製造することを特徴とするマルチモード光ファイバの製造方法。 - 請求項1から9の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法を用いる、マルチモード光ファイバの製造方法であって、
前記ガラス微粒子を堆積させた後、前記ガラス微粒子の堆積体から前記出発材を引き抜いてから、前記焼結によりガラスパイプを形成し、当該ガラスパイプを中実化してガラスロッドとし、当該ガラスロッドの外側にガラスを設けてマルチモード光ファイバ母材とし、当該マルチモード光ファイバ母材を線引きしてマルチモード光ファイバを製造することを特徴とするマルチモード光ファイバの製造方法。 - 請求項1から9の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバ母材の製造方法を用いる、マルチモード光ファイバの製造方法であって、
前記ガラス微粒子を堆積させた後、前記ガラス微粒子の堆積体から前記出発材を引き抜いてから、この引き抜きにより形成された穴を中実化するように前記焼結を行ってガラスロッドを形成し、当該ガラスロッドの外側にガラスを設けてマルチモード光ファイバ母材とし、当該マルチモード光ファイバ母材を線引きしてマルチモード光ファイバを製造することを特徴とするマルチモード光ファイバの製造方法。 - 請求項10から12の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバの製造方法であって、
前記出発材の材質は、アルミナ、カーボン、アルミナ上にカーボンをコーティングしたもの、の何れかであることを特徴とするマルチモード光ファイバの製造方法。 - 請求項10から13の何れか1項に記載のマルチモード光ファイバの製造方法であって、
前記ガラス微粒子の生成及び堆積以外に用いる加熱源として、無水雰囲気の加熱源を用いることを特徴とするマルチモード光ファイバの製造方法。
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