JP4239629B2 - カーボンブラック組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散性および分散安定性が良好なカーボンブラック組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンブラックは、着色材料や遮光材料として、印刷インキ、塗料、プラスチック成形材料などの分野で広く使用されている。これらの製品において、着色性、光吸収性能を向上させるためには、カーボンブラックを溶剤や樹脂中に均一に分散させなければならない。
一般に、分散させるカーボンブラックの表面状態と樹脂との関係は、塩基性表面(電子供与性)を有するカーボンブラックは酸性官能基をもつ高分子と強く吸着し、酸性表面(電子受容性)を有するカーボンブラックには塩基性官能基をもつ高分子が吸着されやすい傾向がある。したがって、混合するカーボンブラックと樹脂との電荷極性が相違している場合には、良好な分散安定性が得られることになる。このような性質を利用してカーボンブラックの分散性を高めるために、例えば、気相酸化または液相酸化によりカーボンブラック表面を酸化処理して酸性官能基を導入することが行われていた。
【0003】
しかし、気相酸化したカーボンブラックについては、酸性度が低いために十分な分散性が得られないという欠点があった。また、液相酸化したカーボンブラックについては、処理後の精製が困難であるという欠点があった。
これに対して、カーボンブラックを樹脂および溶剤に分散する際に、1級アミノ基および3級アミノ基を有するアミンを分散剤として用いることにより、カーボンブラックの分散性が大幅に改良する試みがなされた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−256068号公報
【特許文献2】
特開2001−344738号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、1級アミノ基は反応性、電子供与性が高いため、1級アミノ基を有するアミンを分散剤として用いると、得られるカーボンブラック組成物の分散安定性が低く、また紫外線等の活性エネルギー線硬化性もしくは熱硬化性の塗料等に用いた場合に硬化阻害を引き起こすという問題があった。
そこで、本発明は、均一かつ高い分散性と、良好な分散安定性とを有し、塗料等に用いたときに粘度が低く、経時粘度変化が小さく、塗工物の光沢値が高いカーボンブラック組成物の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明におけるカーボンブラック組成物は、酸性官能基と3級アミノ基との間の酸−塩基相互作用により酸性カーボンブラック表面に吸着する脂肪族アミン化合物と、酸性カーボンブラックとを含むことにより、均一かつ高い分散性と、良好な分散安定性を兼ね備えるものである。
すなわち、本発明におけるカーボンブラック組成物は、酸性カーボンブラックおよび下記一般式(1)で表される脂肪族アミン化合物を含むカーボンブラック組成物である。
【0007】
【化2】
Figure 0004239629
〔式中、R1、R2、R4、R5は、それぞれビニル基を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルキル基(R1とR2およびR4とR5は、それぞれ一体となってビニル基を含んでよい5員環または6員環を形成してもよい)、R3は炭素原子および水素原子より構成される化学的に合理的な組み合わせからなる分子量14〜500の結合基、または該結合基内に更に3級アミノ基を1〜2個含んでよい結合基、nは1〜3の整数を表す。〕
【0008】
本発明におけるカーボンブラック組成物は、さらに、酸性官能基を有する樹脂や、有機溶剤を含むことができる。
また、酸性カーボンブラックは、表面の酸性官能基量が1〜50μmol/m2であることが好ましく、平均1次粒子径が10〜200nmであることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のカーボンブラック組成物について詳細に説明する。
カーボンブラック組成物に用いられる酸性カーボンブラックは、表面にカルボキシル基(−COOH)、フェノール性水酸基(−OH)、キノン基(>C=O)等の酸性官能基を有し、JIS K6221に従い測定されるpHが7未満のカーボンブラックである。
酸性カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックに、通常行われているオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理等が施された酸化処理カーボンブラックを用いることができる。
【0010】
酸性カーボンブラックは、その表面に存在するカルボキシル基、フェノール性水酸基、キノン基を合計した酸性官能基量が1〜50μmol/m2であることが好ましく、2〜20μmol/m2であることがより好ましい。さらに、脂肪族アミン化合物との酸−塩基相互作用が特に強いカルボキシル基量が0.2〜10μmol/m2であることが好ましく、0.5〜5μmol/m2であることがより好ましい。
【0011】
酸性官能基量が1μmol/m2より少ないカーボンブラックは、脂肪族アミン化合物との吸着点が少ないため、カーボンブラック組成物の分散安定性が不充分になることがある。一方、酸性官能基量が50μmol/m2より多いカーボンブラックは、脂肪族アミン化合物が吸着しない未吸着の酸性官能基が多く存在するため、カーボンブラック組成物の分散安定性が不充分になることがあるばかりでなく、塗料等に用いた場合に塗工物の耐水性が低くなる。
酸性カーボンブラック表面の酸性官能基量は、カルボキシル基量およびフェノール性水酸基量については滴定法により、キノン基量については水素化硼素ナトリウムの水素吸収法により、それぞれ測定することができる。
【0012】
また、酸性カーボンブラックは、平均1次粒子径が10〜200nmであることが好ましく、15〜150nmであることがより好ましい。なお、平均1次粒子径とは、一般にカーボンブラックの物理特性を示すのに用いられる、電子顕微鏡などで測定された1次粒子径の平均値である。平均1次粒子径が10nm未満のカーボンブラックは、比表面積が大き過ぎるために、これを用いる場合にはカーボンブラック粒子同士の凝集力が大きくなり、均一かつ高い分散性と良好な分散安定性を兼ね備えるカーボンブラック組成物が得られないことがある。一方、平均1次粒子径が200nmを超えるカーボンブラックは、特に低粘度分散系において沈降を生じ、かつ塗料等に用いた場合に塗工物の表面平滑性が低下することがある。
【0013】
カーボンブラック組成物に用いられる酸性カーボンブラックの具体例としては、三菱化学株式会社製の#2700、#2650、#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA100S、MA220、MA230、デグサ社製のColorBlack FW200、ColorBlack FW2、ColorBlack FW2V、ColorBlack FW1、ColorBlack FW18、ColorBlack S170、ColorBlack S160、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 550、Special Black 350、Special Black 250、Special Black 100、Printex 150T、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V、東海カーボン株式会社製の#8500/F、#8300/F、#5500、#4500、#4400、#4300などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0014】
カーボンブラック組成物に用いられる脂肪族アミン化合物は、一般式(1)で示される化合物であり、酸性カーボンブラック表面に存在する酸性官能基と3級アミノ基との間の酸−塩基相互作用により、酸性カーボンブラック表面に吸着する。
【化3】
Figure 0004239629
〔式中、R1、R2、R4、R5は、それぞれビニル基を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルキル基(R1とR2およびR4とR5は、それぞれ一体となってビニル基を含んでよい5員環または6員環を形成してもよい)、R3は炭素原子および水素原子より構成される化学的に合理的な組み合わせからなる分子量14〜500の結合基、または該結合基内に更に3級アミノ基を1〜2個含んでよい結合基、nは1〜3の整数を表す。〕
【0015】
一般式(1)で示される脂肪族アミン化合物は、ハロゲン化アルキル基、水酸基、1級または2級アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルフィド基等の高い反応性、極性を有する置換基を含んではならない。高い反応性、極性を有する置換基を有する脂肪族アミン化合物が含まれると、カーボンブラック組成物の分散安定性が損なわれる。また、塗料等に用いる場合に反応性や極性の高い添加剤と併用すると、化学結合や相互作用を生じ分散安定性が損なわれる。また、活性エネルギー線硬化性または熱硬化性の塗料等に用いる場合に硬化阻害を引き起こすおそれが生じる。
【0016】
前記一般式(1)中のR1、R2、R4、R5は、それぞれ炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。R1とR2およびR4とR5は、それぞれ一体となって5員環または6員環を形成してもよい。R1、R2、R4、R5の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。R1、R2、R4、R5が一体となった複素環基の例としては、例えばピロリジニル基、ピペリジノ基が挙げられる。炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基および複素環基の水素は、ビニル基で置換されていても良い。
【0017】
前記一般式(1)中のR3は、炭素原子および水素原子より構成される化学的に合理的な組み合わせからなる分子量14〜500の結合基、または該結合基内に更に3級アミノ基を1〜2個含んでよい結合基である。このような結合基としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン等の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。これらアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基の水素は、ビニル基で置換されていても良い。
【0018】
一般式(1)で表される脂肪族アミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ブタンジアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミンなどが挙げられる。
【0019】
カーボンブラック組成物における酸性カーボンブラックと脂肪族アミン化合物との組成比は、カーボンブラック表面に存在する酸性官能基1molに対し、脂肪族アミン化合物が0.01〜10molとなる比率であることが好ましく、0.10〜2molとなる比率であることがより好ましい。脂肪族アミン化合物の比率が0.01molより少ないと、カーボンブラックを安定に分散する効果が低くなり好ましくない。また、10molより多いと、カーボンブラックに吸着しない余剰の脂肪族アミン化合物がカーボンブラック組成物中に存在するため、分散安定性が失われたり、活性エネルギー線硬化性塗料等に用いる場合に硬化阻害を引き起こすことがあり好ましくない。
【0020】
カーボンブラック組成物には、用途に応じて樹脂を含有させることができる。こうような樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリル樹脂、アクリル樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0021】
カーボンブラック組成物に含有させる樹脂は、酸性官能基を有することが好ましい。酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホウ酸基等が挙げられる。酸性官能基は、脂肪族アミン化合物が吸着した酸性カーボンブラックとの親和性が高く、酸性官能基を有する樹脂を含有させることにより、カーボンブラックの分散性を向上させることができる。
カーボンブラック組成物における樹脂の含有量は、酸性カーボンブラック100重量部に対して1〜200重量部であることが好ましく、5〜50重量部であることがより好ましい。
【0022】
また、カーボンブラック組成物には、酸性カーボンブラックに対する脂肪族アミン化合物、さらに酸性官能基を有する樹脂の吸着の促進、および組成物の低粘度化を目的として、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、芳香族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を用いることができる。
【0023】
カーボンブラック組成物は、カーボンブラックと上記脂肪族アミノ化合物と、必要に応じて樹脂とを混合撹拌することによって製造することができる。混合撹拌の方法には特に制限はなく、乾式分散法または湿式分散法により行うことができる。
乾式分散法による製造に用いる粉砕機または分散機としては、せん断応力によりカーボンブラック粒子を微分散させる3本ロールミルや2本ロールミル、高速気流中でカーボンブラック粒子同士またはカーボンブラック粒子と樹脂や分散機壁面の衝突力により分散させるハイブリダイゼーションシステム、強力な圧縮力の中で強いせん断力により微分散させるメカノヒュージョンシステムやシータコンポーザー、ガラスビーズやジルコニアビーズなどのメディアの衝撃力によりカーボンブラック粒子を微分散させるボールミルやアトライター、CFミルなどを挙げることができる。
【0024】
また、湿式分散法による製造に用いる粉砕機または分散機としては、前記3本ロールミルや2本ロールミル、ボールミル、アトライターの他、ガラスビーズやジルコニアビーズなどのメディアの衝撃力によりカーボンブラック粒子を微分散させるサンドミル、バスケットミル、ペイントコンディショナーや、せん断応力、キャビテーション、衝突力、ポテンシャルコアなどを発生させるような回転羽根によって微分散させるディスパー、ホモジナイザー、ジーナス、クレアミックス(R)や、カーボンブラック粒子同士またはカーボンブラック粒子と樹脂や分散機壁面の衝突力やせん断力によって微分散させるニーダー、エクストルーダー、ジェットミルや、超音波により微分散させる超音波分散機などを挙げることができる。
【0025】
本発明のカーボンブラック組成物では、粉砕機や分散機により微分散された状態で、酸性カーボンブラック粒子表面のカルボキシル基やキノン基、フェノール性水酸基と、上記脂肪族アミン化合物の1つの3級アミノ基との酸−塩基相互作用により、酸性カーボンブラック表面に脂肪族アミン化合物が吸着している。そのため、脂肪族アミン化合物の残りの3級アミノ基がカーボンブラック粒子表面に配位し、カーボンブラック組成物に樹脂や有機溶媒を含有させて塗料等を調製する際に、使用される樹脂や有機溶媒とカーボンブラックとの親和性が向上し、カーボンブラックの分散性を高めることができるものと考えられる。
【0026】
カーボンブラック組成物を用いた塗料等の調製法としては特に制限はなく、カーボンブラック組成物の製造工程で例示した各種分散機または粉砕機を用いることができる。各成分の混合時または分散後に、他の成分を添加しても差し支えない。他の成分としては、分散剤、潤滑剤、活性剤、架橋剤、レベリング剤、消泡剤、溶剤等が挙げられる。また、UV等の活性エネルギー線による硬化性を付与するのであれば、硬化性モノマーを添加すればよい。硬化性モノマーとしては特に限定はなく、アクリル系モノマー、メタクリレート系モノマー、カチオン重合系モノマー等を用いることができる。
【0027】
本発明におけるカーボンブラック組成物の利用分野としては、特に限定はなく、遮光性、耐久性、漆黒性等が要求される分野、例えば、グラビアインキ、オフセットインキ、磁気記録媒体用バックコート、静電トナー、インクジェット、自動車用塗料、繊維・プラスチック形成材料等に用いることができる。また、本発明におけるカーボンブラック組成物は、硬化阻害を引き起こしにくいため、UV等の活性エネルギー線による硬化性を必要とするUV塗料、UVインキ等に好適に用いられる。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。例中、「部」は、「重量部」である。実施例および比較例に使用したカーボンブラックA〜Cの表面のpH、表面酸性官能基量、表面カルボキシル基量を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0029】
[pH測定(JIS K6221)]カーボンブラック10gに蒸留水100mlを加え、ホットプレート上で15分煮沸し室温まで冷却後、遠心分離機で上澄液を取り除き泥状物のpHをガラス電極pHメーターで測定した。
[全酸性官能基量の算出]下記の方法で測定したカルボキシル基量、水酸基量、キノン基量の値から、下記式にて算出した。
全酸性官能基量=カルボキシル基量+水酸基量+キノン基量
【0030】
[カルボキシル基量の測定]乾燥カーボンブラック1gを1mg単位で秤量し、0.1規定の炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを4時間振盪して反応させたのち、濾過し、濾液の上澄み液20mlを採取して0.01規定の塩酸水溶液で滴定した。カルボキシル基量は、カーボンブラックの単位表面積あたりのμmol量(μmol/m2)として下記式にて算出した。
【数1】
Figure 0004239629
【0031】
[水酸基量の測定]乾燥カーボンブラック1gを1mg単位で秤量し、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液50mlを4時間振盪して反応させたのち、濾過し、濾液の上澄み液20mlを採取して0.01規定の塩酸水溶液で滴定した。これより、水酸基量とカルボキシル基量の合計量を、カーボンブラックの単位表面積あたりのμmol量(μmol/m2)として下式にて算出した。
【数2】
Figure 0004239629
【0032】
[キノン基量の測定]乾燥カーボンブラック1gを1mg単位で秤量し、水素化ホウ素ナトリウム100mgを0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液300mlに溶解した溶液50mlと2時間反応させたのち、6規定の硫酸水溶液3mlを加え1時間反応させたときに発生する水素ガス量を測定した。キノン量は、カーボンブラックの単位表面積あたりのμmol量(μmol/m2)として下式にて算出した。
【数3】
Figure 0004239629
【0033】
【表1】
Figure 0004239629
【0034】
また、実施例、比較例で用いたアクリル樹脂Aの製造方法について、以下に示す。
[アクリル樹脂Aの製造方法]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けてシクロヘキサノン735部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりメチルメタクリレート30部、n−ブチルメタクリレート180部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート45部、メタクリル酸45部、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル15部の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分30重量%のアクリル樹脂Aのシクロヘキサノン溶液を得た。アクリル樹脂Aの重量平均分子量は30000であった。
【0035】
(実施例1)
表1に示す酸性カーボンブラックラックA18.0部、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン0.4部(酸性官能基1molに対し0.33mol)、アクリル樹脂A6.6部、シクロヘキサノン75.0部からなる組成物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散してカーボンブラック組成物を得た。
【0036】
(実施例2)
表1に示す酸性カーボンブラックラックB18.0部、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン0.8部(酸性官能基1molに対し0.60mol)、アクリル樹脂A6.2部、シクロヘキサノン75.0部からなる組成物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散してカーボンブラック組成物を得た。
【0037】
(比較例1)
カーボンブラックラックC18.0部、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン0.4部(酸性官能基1molに対し8.69mol)、アクリル樹脂A6.6部、シクロヘキサノン75.0部からなる組成物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、カーボンブラック組成物を得た。
【0038】
(比較例2)
カーボンブラックラックA18.0部、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン0.4部(酸性官能基1molに対し0.38mol)、アクリル樹脂A6.6部、シクロヘキサノン75.0部からなる組成物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、カーボンブラック組成物を得た。
【0039】
(比較例3)
カーボンブラックラックB18.0部、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン0.4部(酸性官能基1molに対し0.30mol)、アクリル樹脂A6.6部、シクロヘキサノン75.0部からなる組成物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、カーボンブラック組成物を得た。
【0040】
実施例1〜2、比較例1〜3で得られたカーボンブラック組成物について、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
(1)初期粘度および経時後粘度
カーボンブラック組成物の粘度をE型粘度計(東機産業株式会社製「VISCONIC ELD」)を用い、回転数10rpmにて測定した。また、カーボンブラック組成物を40℃で7日間保存した後に、同様にして粘度を測定した。
【0041】
(2)光沢(60゜鏡面反射率)
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、カーボンブラック組成物をコーター(RK PRINT−COAT INSTRUMENT LTD.社製「RKコントロールコーター」)を用いて塗工(#2バーコーター使用)し、室温で5分放置後に105℃で5分間の焼き付けを行った。得られた塗膜の60゜−60゜反射率を光沢計(BYK社製「micro−TRI−gloss」)を用いて測定した。
【0042】
(3)反射濃度
カーボンブラック組成物50.00部およびシクロヘキサノン50.00部を混合攪拌してカーボンブラック希釈分散液を作製した。ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、得られたカーボンブラック希釈分散液をコーター(RK PRINT−COAT INSTRUMENT LTD.社製「RKコントロールコーター」)を用いて塗工(#2バーコーター使用)し、室温で5分放置後に105℃で5分間の焼き付けを行った。得られた塗膜の反射濃度を反射濃度計(X−rite社製「X−rite528」)を用いて測定した。
【0043】
(4)UV硬化性
カーボンブラック組成物53.5部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュア369」)4.0部、光硬化性モノマー(東亞合成株式会社製「アロニックスM−402A」)5.5部、アクリル樹脂A2.0部、シクロヘキサノン35.0部を攪拌混合して、UV硬化性塗料を作製した。ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、得られたUV硬化性塗料をコーター(RK PRINT−COAT INSTRUMENT LTD.社製「RKコントロールコーター」)を用いて塗工(#2バーコーター使用)し、室温で5分放置後に105℃で5分間の焼き付けを行った。得られた塗膜に、UV照射装置(株式会社東芝製)を用いて紫外線照射(照射エネルギー量108mJ/cm2)を行い、照射後のタックの有無を指触で確認した(○:タック無、×:タック有)。
【0044】
【表2】
Figure 0004239629
【0045】
【発明の効果】
本発明におけるカーボンブラック組成物は、分散性、分散安定性が非常に高く、また塗料等に用いた場合に塗膜の反射濃度が高く、硬化性等に優れている。

Claims (5)

  1. 酸性カーボンブラックおよび下記一般式(1)で表される脂肪族アミン化合物を含むカーボンブラック組成物。
    Figure 0004239629
    〔式中、R1、R2、R4、R5は、それぞれビニル基を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルキル基(R1とR2およびR4とR5は、それぞれ一体となってビニル基を含んでよい5員環または6員環を形成してもよい)、R3は炭素原子および水素原子より構成される化学的に合理的な組み合わせからなる分子量14〜500の結合基、または該結合基内に更に3級アミノ基を1〜2個含んでよい結合基、nは1〜3の整数を表す。〕
  2. さらに、酸性官能基を有する樹脂を含む請求項1記載のカーボンブラック組成物。
  3. 酸性カーボンブラック表面の酸性官能基量が1〜50μmol/m2であることを特徴とする請求項1または2記載のカーボンブラック組成物。
  4. 酸性カーボンブラックの平均1次粒子径が10〜200nmであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
  5. さらに有機溶剤を含む請求項1ないし4いずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
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