JP4239135B2 - アキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック及びシリンダーライナ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、特に、冷媒としてCO2 を使用する車両用空調装置に用いられ、請求項1の前段部分に基づくアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される空調装置は、種々の構成の冷媒圧縮機が用いられている。しかしながら、昨今においては、いわゆるアキシャルピストンコンプレッサが支配的となってきている。図4において、従来技術に基づくこの種のアキシャルピストンコンプレッサが、縦断面図として示されている。これは、冷媒としてR134aが用いられるいわゆるスワッシュプレート型コンプレッサである。コンプレッサシャフト1は、電磁カップリング2と結合されたプーリーによって駆動される。スワッシュプレート3はドライブシャフト1に結合されている。このスワッシュプレート3は、ドラインブシャフト1に固く取り付けられてドライブシャフトと共に回転するようになっている。プレートはシャフトに対して回転しないようになっているが、スワッシュプレート3の軸3aをドライブシャフト1の軸1aに対して傾かせることができるようにして、ドライブシャフト1上にスワッシュプレート3を取り付けて位置決めするようにしたリンク装置の種々の形態が知られている。スワッシュプレート3の傾斜角は、一般的に、2つのストッピング部材によって最小値(3b)と最大値(3c)に制限が加えられている。調整中にプレートが動かなくなる危険をなくしつつ、ある決められた方法で傾動が行われるように、通常においては、1つ又は2つのガイドピン4が必要とされている。傾動を制限する手段、即ち、制限装置もまたガイドピン4の部分に統合されている。図4に示される例において、ガイドピン4は、スワッシュプレート3に固く取り付けられており、ストッピングプレート5に対して可動すると共にガイドピンを位置決めするベアリング5aに結合している(図4の4a参照)。ストッピングプレート5は、シャフトに同じく取り付けられており、アキシャルベアリング6の手段によって支持されている。
【0003】
スワッシュプレートは、ドライブシャフト1に対する角度について調節できるようになっているのみならず、ドライブシャフト1に沿って軸方向にシフトすることができるようにもなっている。このシフトは、結合されたピストン8の上死点位置がプレート角度の相違にかかわらず維持するために必要となる。通常において、制限装置は、スワッシュプレートがドライブシャフト1に上部シート部3dと下部シート部3eが当接する状態を超えて変位しないように設けられている。変位機構には、圧縮スプリング7によって規定角度にプレテンションが与えられている。ピストンスのトロークは、スワッシュプレート3の傾斜角によって決定されている。この角度が最も大きくなれば、ストロークは最大となり、最小の傾斜角でピストンストロークは最小になる。
【0004】
ここで図示されている具体例でのピストン8は、半球体のリンケージエレメント9,10によってスワッシュプレート3に結合されている。引っ張り圧力荷重を吸収するために、ピストンの上に1つのリンケージエレメント10がスワッシュプレート3の下部ベアリング表面3g上に配置され、他のリンケージエレメント9が上部ベアリング表面3f上に配置されている。これらの平坦面9a,10aによって、リンケージエレメントは、径方向の動きが加えられると共に最大周速度でスワッシュプレート3の対応するベアリング表面上を動き、その結果として、スワッシュプレートのリンケージエレメントの経路は楕円形になる。リンケージエレメントの凸状の上部表面9b、10bは、相補的な形状を有する半球形状のピストン8の窪みにシートされており、コンプレッサの稼動中に、ここでの相対的な動きはかなり小さい量である。上述したアキシャルピストンコンプレッサは、通常において3〜8つのピストンを周辺部の周りに配置されたいくつかのピストンを備えている。
【0005】
図9において、図4で示されるようなアキシャルピストンコンプレッサで用いられるピストン8の側面が示されている。ピストン8は、2つのセクション、即ち、ピストンシャフト8aとピストンネック8bから構成されている。ここで、「シャフト」とは、前後運動をガイドするシリンダーボア内に配されるピストンの一部又は区分を示すために用いられる。ピストンネック8bは、通例において、U字状の空所8cを備えているもので、上述したスワッシュプレート3を収容し、リンケージエレメント9,10と結合して、スワッシュプレート3からピストンシャフト8aへ動力を伝達する役割をしている。ピストンネック8bの背面は、ピストンが前後に動くように、駆動機構のハウジングの内面に結合されており、シリンダーボア内で回転しないようになっている。
【0006】
図7において、回転安定を実現する特有の手段が示されている。付加的な情報は、EP0740076A2に示されている。長軸の周りでのピストン8の回転を制限するために、駆動機構のハウジングに面しているピストンネックの側部に凸状面72が設けられている。この面と対向して、且つ、この面からいくらかの隙間を開けてハウジング71には凹状面が設けられている。凸状面72の半径R1は、ピストンシャフトの外周面の径Rpよりも大きくなっているが、ハウジング71の凹状内周面の径R2よりも小さくなっている。凸状面72とハウジング71の凹状面との間の接触は、ピストン8がその長軸の回りに回転できる範囲を制限している。破線は、仮にピストン8が回転した場合には、凸状面72の一端のみがハウジング71の凹状の内面に接触することを示している。摩擦を低減し、擦切れを避けるために、適切に表面を処理することが望ましい。
【0007】
図8において、ピストンを縦方向(長軸方向)にガイドする他の代替手段が図示されている。このピストン8の意図しない回転を避けるための代替構造は、ピストンシャフトに沿って設けられた隆起部82によって構成され、この隆起部はシリンダーボア81の面に形成された対応する溝83に噛合している。
【0008】
シリンダーボア内でのピストン8の平行移動は、明細書のように非常に近接している互いに対応した構成部分及び/又は表面の大きさ、形、位置、及び表面性質が必要となる。
【0009】
図4、7、8及び9において、車両用空調装置に用いるアキシャルピストンコンプレッサに関する従来の標準的構成が示されている。R134aが冷媒として用いられるときには、ピストンの直径はおよそ30mmである。CO2 は、明らかに高性能の冷媒であるので、CO2 に用いているコンプレッサは、かなり小さい工程容積にすることができる。その反面、比較的大きな圧力差に対処する必要がある。即ち、CO2 が冷媒として用いられる場合には、ピストン8に作用する圧力はかなり大きなものとなる。この高圧を補償するために、CO2 コンプレッサは、相当に小さい直径、例えば16mmくらいの直径のピストンが用いられている。
【0010】
しかしながら、図5に示されるように、ピストンのシャフトがそのように小さい直径になると、そのネックは、外側へさらに突き出すことになる。即ち、ピストンのネックは、ピストンの長軸に対して側方へずらされることとなる。図5に示される具体例において、ピストン8はワブルプレート29によって動かされる。ワブルプレート29は、減耗ベアリング30、28と24を介してスワッシュプレート33に対向して置かれている。内側に装着された定着ディスク31によって、ワブルプレートは、その軸がスワッシュプレートの軸と一致するように固定されている。ピストンがリンケージベアリング27,25とセットスクリュー25’とによってワブルプレートに連結されている。ピストン8はシャフト8aとネック8bとによって構成されている。これらは、ネックにシャフトを結合する移行部8cによって分けられている。R134aコンプレッサの場合、図9に示されるように、ピストンのネックが、結合したシャフトの径よりも大きくない径を有しているので、この移行部は必要でない。図5に示されるピストン8は、シリンダーブロック32内のボアによって前後の動きが軸方向にガイドされている。仮に、ピストン8がピストンリングを備えているなら、シリンダーボアのベアリング表面は、特殊な耐磨耗部材の層に覆われているか、対応する耐性部材で作られたライナ26を挿着する。図5で示されているように、シリンダーの駆動機構の縁部において、ライナ26は、シリンダーブロックと同一平面になっている。したがって、ピストンのシャフトとネックとの間の移行部8cは、常にシリンダーの支持面の外側にある。
【0011】
簡単にいうと、ピストン8に作用する力は、横方向(即ち、長軸に対して直交する方向)の力FQ (駆動機構によって生じる)とシリンダライナ26に加えられる横方向(即ち、長軸に対して直交する方向)の力FA とFB である(図5参照)。反作用的な力FA とFB の大きさを決定する要因の1つは、応力中心距離比(レバーアーム比)B/(B−A)である。
【0012】
これら横方向の力は、1つの作動点に対して図6においてプロットされている。レバーアーム比もまた、このグラフにプロットされている。そこに示される力と角度との関係は、異なる作動点でかなりの範囲にわたって大きさがシフト又は変更されるので、定性的であると考えられなければならない。
【0013】
アキシャルピストンコンプレッサのドライブシャフト1は角度位置が0°であるときに、ここに示された具体例では、ピストン8が上死点(OT)に至り、冷媒ガスが圧縮空間から排出される。角度が増加するにつれて、ピストンは、ドライブシャフトが180°の位置にあるときに到達する下死点(UT)に向って動いていく。下死点では、圧縮空間の圧力は吸引力が生じる吸入圧まで低下する。ドライブシャフト1がさらに回って、180°を超えると、ピストンは、上死点へ戻される。そのプロセスにおいて、冷媒ガスは、圧縮され、続いて圧縮空間から排出される。図5において、横方向の力が、上述したように、ベクトルとしてあらわされている。図5は、ドライブシャフト1の角度位置が0°となる上死点にあるピストンの状態を示している。横方向の力FQ は、この場所で相対的に大きい大きさであり、コンプレッサの中心軸に向けられている。この横方向の力FQ は、ピストン8での曲げモーメントの結果として、この図においてベクトルとして示された反作用的な力FA とFB を生じる。完結したピストンの動作(OT−UT−OT)によって、横方向の力がピストン軸の周りを巡回する。
【0014】
ドライブシャフト1の臨界領域は、250〜360°の角度位置の範囲にある。この範囲で、横方向の力が相対的に大きくなるからである。これは、ピストン8が相対的にシリンダーライナ26から遠ざかるように引っ張られることになる270°のドライブシャフト位置で特に生じることとなる。これは、特に大きな反作用力FA が生じることをを意味している。したがって、この角度位置(270°)で、ピストン8は特に磨耗の危険にさらされている。図6による線図もまた、例えば角度位置180度(UT)において、反作用力が作用するために、ピストンがハウジングの壁に対して踏ん張ることができないことを明らかにしている。
【0015】
結局、上述した横方向の力FQ が、作用している箇所で直接的に支持されるなら、ピストンの曲げモーメントを防ぐことができるようになることは、図5から明らかである。これは、擦り切れを低減することに関して大きな利点をもたらす。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明の目的は、アキシャルピストンコンプレッサに用いるシリンダーブロック、及び、横方向に作用する力に対して相当に改善された支持を保証するシリンダーライナ(シリンダーフェイス)を創造することにあり、もって、アキシャルピストンコンプレッサの寿命を増加させることにある。
【0017】
この目的は、クレーム1で与えられる特徴的な主要点を備えた発明に従って成し遂げられ、好ましい構造上の詳細は、下位のクレームで記述されている。
【0018】
アキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロックに用いられる本発明に係るシリンダーライナに関して、クレーム11以下において言及している。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の中心的なアイディアは、駆動機構側のシリンダーフェイスの開口部の縁部が、ピストンのシャフトとネックとの間に設けられる移行部が噛み合う少なくとも1つの凹部を有しており、そのピストンに効果的なシリンダーフェイスは、拡張され又は延長されていることにある。これにより、シリンダーボア内に設けられたベアリング表面に対してピストンの横からの支持が相当に改善され、その結果、磨耗が少なくなり、アキシャルピストンコンプレッサの寿命が長くなる。
【0020】
さらに、本発明においては、発明に係る凹部がいかなる場合でも最小負荷となる位置に設けられるという基本的なルールが採用されている。この基本的アイディアの理解を助けるために、参考図として図10(a)〜10(c)が作成されている。これらの図面は、ピストンのまわりでの横方向の力の軌道とストロークの過程でのピストンの接触部分の長さを示している。これら2つのパラメータは、磨耗量と延長されたシリンダーフェイスの好ましい位置を決定する。上死点OTで接触部分の長さは最大となり、下死点UTで最小となる。いま、回転する横方向の力を接触長さに投影して示すと、図10(b)に示されるように、ピストンのために伸張された支持面、即ち、同様に延長されたシリンダーフェイスにとっての優先順位は、D、A、B、Cのようになる。つまり、Cの位置で負荷は最小であり、したがって、これが発明に係る凹部の形成にとって好ましい位置である。位置Cは、アキシャルピストンコンプレッサ及びピストン8と結合するスワッシュ又はワブルプレートの縦方向の中央軸に対して径方向の外面にある。即ち、位置Cは、ドライブシャフトから見てシリンダーボア又はピストンの中心線の外側に設けられ、駆動機構のハウジングの内面に隣接した位置にある。この連結部で、図10(a)はスワッシュ又はワブルプレートが回転する側を開放した状態にしている。スワッシュ又はワブルプレートの回転方向によっては、もちろん、図10(b)及び10(c)で示されるX(水平)軸の周りの軌道は反転した鏡像となる。
【0021】
請求項1〜3は3つの構造上の代案である。第1の代案は、シリンダーボアの表面が使用されていること、即ち、分離されたライナ又は類似の構成要素がないことに特徴がある。したがって、この具体例において、上述した凹部は、駆動機構側の開口部の縁部で、シリンダーボア内に形成されなければならない。
【0022】
第2の代案は、駆動機構側でシリンダーボアから突き出すライナの少なくとも1つのシリンダーボアへの挿入に特徴があり、そして、この突出した部分に上述した凹部が設けられている。
【0023】
第3の代案もライナが少なくとも1つのシリンダーボアに挿入されることに特徴があるが、このケースでは、その縁部が、駆動機構側のシリンダーボアの開口部に揃えてある。この例では、駆動機構側での開口部の縁部において、本発明に係る凹部がシリンダーボアとこれに連合するライナとの両方に形成されていなければならない。
【0024】
図10(a)〜10(c)に基づく上述した説明から認識できるように、発明に係る凹部は、ピストンに作用する横方向の力が最も弱い箇所に位置している(即ち、駆動機構によってピストンに作用する横方向の力F Q が最も小さい箇所に設けられている)。この箇所は、通常、駆動機構との連結部に対向するピストンの側部の位置、即ち、駆動機構のハウジングの壁面に隣接した側部にある。
【0025】
好ましくは、ピストンのネックもまた、駆動機構のハウジングに接触して横から保持されている。これによって、ピストンネックは、駆動機構のハウジングによってピストンの長軸周りの回転範囲が制限され、且つ/又は、ピストンの長軸方向にガイドされている。ここで、横からの保持は、ガイドピン、フェザーキー、又は縦方向をガイドする同様の手段によって成し遂げられる。この方法には、従来技術が利用可能である。
【0026】
好ましくは、駆動機構側でのシリンダーフェイスの開口部の縁部は、ピストンの取りつけを容易にするために、そして、ピストンが縁部を過ぎる際のピストンの磨耗を低減するために傾斜され又は丸められるのがよい。
【0027】
本発明に係る凹部は、好ましくは、約80°から160°の角度範囲で、特に約120°の角度範囲にわたって形成されるのがよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明を、添付した図面に基づき具体例を詳細に説明する。なお、この具体例において、図5による構成で共通している部分は、同一番号によって同一視し、ここでの説明を省略する。
【0029】
図1(a)、図1(b)における具体例では、シリンダーライナ26がシリンダーボアに挿入されると共に、特に焼嵌められており、駆動機構側がシリンダーブロック32内に開口部を超えて突き出ている点において相違している。このシリンダーライナ26の突出した部分は、図1(a)及び図1(b)において番号26aで特定されている。これに関して、図2にも番号が付されている。この図2は、図1(a)及び図1(b)によるシリンダーライナ26を、拡大された縦断面図およびA−A線に沿った断面図によって示している
【0030】
ピストンのシャフト8aとネック8bの間にある移行部8cが、駆動機構側でシリンダーボアの外側に突き出しているシリンダーライナ26の部分と衝突することを避けるために、移行部分8cでシリンダーライナの突き出ている部分26aは、凹部26dを形成するために切り欠かれており、この凹部は約120°の角度範囲にわたって形成されている(図2のA−A断面と図1bのA−A断面参照)。
【0031】
主としてピストンを支持する側面上に設けられたシリンダーライナ26内のシリンダーフェイスは、26aの部分によって同様に延長されている。移行部分8cが位置するピストンの側部は、特に無負荷になっており、このため、この領域で凹部26dを形成しても何ら潜在的な問題は生じない。
【0032】
図1(b)に見られるピストンカラー8bの後部は、ピストン8がその側部において縦方向にガイドされるように、駆動機構のハウジングの壁部の内側に接して保持されている。この目的のために、ピストンネック8bの後部は、およそ半球状の断面を有するように形成されている。駆動機構のハウジング壁の内面で、縦溝(ガイド溝)23が対応した相補的形状に形成されている(図1(b)参照)
【0033】
駆動機構のハウジングの壁部は、図5と同様に、番号22によって、図1(a)と図1(b)において特定されている。
【0034】
結果として、ピストンネック8bの領域でピストンにとって縦方向のガイド手段は、図1(b)に示されるように、十分である。もし十分でなければ、フィーチャーキー、ガイドピン、又はこれに類似する追加的なガイド要素を設ければよい。これらは、機械工学上で一般的に使用されているので、詳細にこれらを記述し、図示することを省略する。
【0035】
図2は、駆動機構側でのシリンダーライナの縁部が、上述した理由のために丸められている点が追加して示されている。
【0036】
図3において、本発明にかかるシリンダーライナ26の他の具体例が、互いに対向して設けられた2つの凹部を有する構成として示されている。この具体例は、主として水平方向に横方向の力を支える場合に、特に適したものである。
【0037】
ここにおいても、駆動機構側のシリンダーライナの縁部は丸められ又は傾斜されている。この丸み又は傾斜は、シリンダーライナにピストンの装着を容易にしている。さらに、ピストンが縁部を過ぎる際のピストンの磨耗量を減少させる(丸みが面圧を減らす)。
【0038】
上述した測定の結果として、ピストンに作用する横方向の力は、力の大きさと方向に関して特別な要求に適合するように、より許容されることとなる。シリンダーフェイスが長くなっているので、ピストンを傾かせるモーメントは低減する。レバーアーム比は改善され、シリンダーフェイスには一層少ない負荷がかかることになる。横方向の力の低減に伴う他の重要性は、ピストンシャフトとシリンダーフェイスとの間の摩擦、すなわち磨耗量もこれに対応して減少することにある。仮にシリンダーフェイスにコーティングを施す必要があるなら、より容易に行うことが可能となる。特に、磨耗のリスクが小さいことは、潤滑剤を利用する必要が少なくなり、また、そのような必要になる潤滑剤は、本発明にかかるシリンダーフェイスに設けられた凹部を介して簡単に供給することが可能となる。
【0039】
ここで述べられたシリンダーライナは、好ましくは、高圧冷媒、特にCO2 で作動するアキシャルピストンコンプレッサに用いられるとよい。このケースにおいて、ピストンの直径、すなわちシリンダーボアの直径dは14から17mm、この具体例においては、ピストンストロークはおよそs=24〜17mmである。したがって、その比d/sは、≦1である。
【0040】
さらに、この具体例において、記述された凹部は3〜6mmの軸方向の範囲で形成することが可能である。また、例えば図3による具体例のように、2つ以上の凹部が設けられる場合には、凹部の軸方向の範囲を異ならせてもよい。これは、最終的に外部構造の問題に依存する。
【0041】
なお、この明細書で開示された全ての構成は、個別に又は組み合わせで、従来技術に対して新規である限り本発明の権利範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、アキシャルピストンコンプレッサのための本発明に係る組み立てられたシリンダーブロックの縦断面を示す。図1(b)は、図1(a)のA−A線に沿った断面で、図1(a)による構成部分を示す。
【図2】図2は、本発明にしたがって構成されたシリンダーライナの具体例であり、縦断面とA−A線に沿った断面を示す。
【図3】図3は、本発明にしたがって構成されたシリンダーライナの他の具体例であり、縦断面とB−B線に沿った断面を示す。
【図4】図4は、従来のアキシャルピストンコンプレッサの縦断面図である。
【図5】図5は、本発明にかかるアキシャルピストンコンプレッサのピストンが上死点にある状態を示す部分的に切断した拡大断面図である。
【図6】図6は、ピストンに作用する横方向の力とレバーアーム比とを回転角との関係で示した特性線図である。
【図7】図7は、安定した回転を実現する手段の構成例を示す図である。
【図8】図8は、ピストンを縦方向にガイドする手段を示す図である。
【図9】図9は、図4で示されるようなアキシャルピストンコンプレッサで用いられるピストン8の側面を示す図である。
【図10】図10は、本発明の基本的アイディアの理解を助けるために用いられる参考図である。
【符号の説明】
1 ドライブシャフト
8 ピストン
8a ピストンシャフト
8b ピストンネック
8c 移行部分
23 ガイド溝
26 ライナ
26d 凹部
29,33 駆動機構
Claims (12)
- ピストン(8)を収容する少なくとも一つのシリンダーボアを有し、前記ピストンを、ピストンシャフト(8a)と、ピストンの長軸に対して前記ピストンシャフトより側方へずらしたピストンネック(8b)と、これら前記ピストンシャフト(8a)及び前記ピストンネック(8b)の間に設けられる移行部(8c)とを備えて構成し、前記ピストンネック(8b)を前記シリンダーボアの開口端より常に外側に位置させると共に回転可能なドライブシャフト(1)に接続されるスワッシュ及び/又はワブル−プレート駆動機構(29,33)に連結し、これにより前記ピストン(8)を上死点位置(OT)と下死点位置(UT)との間でシリンダーボア内を前後に移動可能としているアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロックにおいて、
前記シリンダーボアにより前記ピストンシャフトが摺接するシリンダーフェイスが構成され、前記駆動機構側の前記シリンダーボアの開口部の縁部に、前記移行部(8c)に少なくとも部分的に噛合される少なくとも一つの凹部(26d)を具備することを特徴とするアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。 - ピストン(8)を収容する少なくとも一つのシリンダーボアを有し、前記ピストンを、ピストンシャフト(8a)と、ピストンの長軸に対して前記ピストンシャフトより側方へずらしたピストンネック(8b)と、これら前記ピストンシャフト(8a)及び前記ピストンネック(8b)の間に設けられる移行部(8c)とを備えて構成し、前記ピストンネック(8b)を前記シリンダーボアの開口端より常に外側に位置させると共に回転可能なドライブシャフト(1)に接続されるスワッシュ及び/又はワブル−プレート駆動機構(29,33)に連結し、これにより前記ピストン(8)を上死点位置(OT)と下死点位置(UT)との間でシリンダーボア内を前後に移動可能としているアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロックにおいて、
前記シリンダーボアに筒状のライナーを挿着してこのライナーの内周面により前記シリンダシャフトが摺接するシリンダーフェイスを構成すると共に前記ライナーを前記駆動機構側のシリンダーボアの開口端から突出させ、このライナーの突出した部分に、前記移行部(8c)に少なくとも部分的に噛合される少なくとも一つの凹部(26d)を具備することを特徴とするアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。 - ピストン(8)を収容する少なくとも一つのシリンダーボアを有し、前記ピストンを、ピストンシャフト(8a)と、ピストンの長軸に対して前記ピストンシャフトより側方へずらしたピストンネック(8b)と、これら前記ピストンシャフト(8a)及び前記ピストンネック(8b)の間に設けられる移行部(8c)とを備えて構成し、前記ピストンネック(8b)を前記シリンダーボアの開口端より常に外側に位置させると共に回転可能なドライブシャフト(1)に接続されるスワッシュ及び/又はワブル−プレート駆動機構(29,33)に連結し、これにより前記ピストン(8)を上死点位置(OT)と下死点位置(UT)との間でシリンダーボア内を前後に移動可能としているアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロックにおいて、
前記シリンダーボアに筒状のライナーを挿着してこのライナーの内周面により前記シリンダシャフトが摺接するシリンダーフェイスを構成し、前記駆動機構側の前記シリンダーボアの開口部の縁部と前記ライナの開口部の縁部との両方に、前記移行部(8c)に少なくとも部分的に噛合される少なくとも一つの凹部(26d)を具備することを特徴とするアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。 - 前記少なくとも一つの凹部(26d)は、前記駆動機構によって前記ピストンに作用する横方向の力が最も小さい部分に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。
- 前記少なくとも一つの凹部(26d)は、前記ドライブシャフトから見て前記シリンダーボア又は前記ピストン(8)の中心線の外側に設けられていることを特徴とする請求項4記載のアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。
- 前記ピストンネック(8b)は、前記駆動機構のハウジングによって前記ピストンの長軸周りの回転範囲が制限され、且つ/又は前記ピストンの長軸方向にガイド されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。
- 前記ピストンネック(8b)の前記ピストンの長軸周りの回転範囲の制限又は前記ピストンの長軸方向のガイドは、ガイドピン、フェザーキー、又は長軸方向をガイドする同様の手段によってなされることを特徴とする請求項6記載のアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。
- 前記駆動機構側のシリンダーフェイスの開口部の縁部は、傾斜され又は丸められており、前記ピストン(8)の装着を容易にし、且つ前記開口部に付随する縁部でのピストンの消耗を減少させるものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。
- 前記少なくとも一つの凹部(26d)は、約80°から約160°の角度範囲、特に約120°の範囲で形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアキシャルピストンコンプレッサのシリンダーブロック。
- アキシャルピストンコンプレッサのシリンダーボアに挿着されるシリンダーライナ(26)であって、駆動機構側の開口部の縁部には、シリンダーライナ内を前後に移動するピストン(8)のピストンシャフト(8a)と前記ピストンの長軸に対して前記ピストンシャフトより側方へずらすと共に前記シリンダーボアの開口端より常に外側に配されたピストンネック(8b)との間に設けられる移行部(8c)を受容する少なくとも一つの凹部(26d)を具備することを特徴とするシリンダーライナ。
- 前記シリンダーライナ(26)の開口部の縁部に設けられる凹部(26d)の縁部は、傾斜され又は丸められていることを特徴とする請求項10記載のシリンダーライナ。
- 前記凹部(26d)は、約80°から約160°の角度範囲、好ましくは約120°の範囲で形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のシリンダーライナ。
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