JP4236048B2 - 人工固有歯槽骨及びこれを備えた人工歯根 - Google Patents
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その際に人工歯根を骨性癒着や骨接合によって緩衝機構を備えずに顎骨と結合させると、咀嚼を繰り返すことによって、人工歯根に破断が生じたり、周囲骨の破壊等の問題が生じる。
そこで本発明は、人工歯根の植立箇所と顎骨の皮質骨の間の生体組織内に電流を流し、造骨及び造血作用を励起することによって早急にリン酸、カルシウムイオン、栄養、酸素等までを含んだphysicochemical stimuliを同化した未分化間葉系細胞を固有歯槽骨及び骨梁に分化することにある。
また他の目的は、人工固有歯槽骨を口腔内に設置し得るようにすることにある。
(1)内部歯根の植設箇所を被包するための開口部を有した筒状の人工固有歯槽骨であって、この人工固有歯槽骨の表面には固有歯槽骨及び骨梁を形成するための多数の透孔を有し、かつ固有歯槽骨及び骨梁を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極としての機能を有することを特徴とする人工固有歯槽骨である。
Ti、Ti合金、Pt及びAu合金は生体為害性が極めて少なく、生体との親和性が良いから人工固有歯槽骨の材料として好適である。特にコストの面からはTi若しくはTi合金がより好ましい。
網状構造物は、例えば導電性繊維を紡績機、織機等を用いて絡み合わせることによって製造できる。ただし必ずしも一定のパターンで織り込まれている必要はない。例えば導電性の金属製の短繊維を接合させて形成してもよい。
電源及び配線を接続することによって、好適な電流を常に人工固有歯槽骨に印加することができる。電源を口腔内(例えば奥歯の裏側等)に固着することによって、外観上目立つことなく、造血と造骨を誘起することができる。人工固有歯槽骨に流れる電流は10μA〜100μA程度が好ましい。
電源としては、口腔内に設置するためには、ボタン電池が好ましい。ボタン電池としては、アルカリ(マンガン)電池、二酸化マンガンリチウム、酸化銀電池、亜鉛電池、水銀電池、ニッケル系電池等を用いることができる。印加電圧は、人工固有歯槽骨に用いられる材料の導電率によって代わるが、電圧1.4〜1.55Vのボタン電池を用いることもできる。もちろん他の電圧の電池を用いても良い。また本発明に用いられる電源は、ボタン電池に限定されるものではない。
膨出部と陥凹部とが交互に形成されているため、周囲骨とより癒着しやすい構造と形状となっている。内部歯根は有限要素解析の結果得られた応力分散形状となっており、表面で主応力線が直交する二成分に分離されやすい形状になっている。
また人工固有歯槽骨と内部歯根との間に緩衝材を設けてもよい。緩衝材としては、プラスチックスの接着剤やセメント材等が用いられる。例えば、スーパーボンド(商標名)、リン酸セメント、パナビア(商品名)等である。内部歯根と人工固有歯槽骨との間に緩衝材を介在することによって、主応力線が変換されるとともに、この緩衝材がクッションとなり咬合力の骨に及ぼす破壊傾向が除去される。
内部歯根として好適な金属は、純TiやTi合金であり、特に好ましくは純Tiである。純Tiは生体為害性が極めて少なく、生体との親和性が良いからである。また形状記憶効果を利用することで挿入後の固定が容易に行える利点を活かし、Ti系の形状記憶合金を人工歯根として実用化する研究も行われている。その中でもTiPd系形状記憶合金は、歯根で長年利用されてきたPdと耐食性に優れたTiを主組成とする合金であり、生体為害性の少ない人工歯根用の材料となる。
また他の目的は、植立用の装置の全てを口腔内に設置し得るようにすることにより、外観上目立つことなく、造血と造骨を誘起することができるという効果を奏する。
図1は、本発明に係る人工固有歯槽骨1の実施形態の一例を示す模式図である。図1に示すように本発明に係る人工固有歯槽骨1は筒状電極であって、内部歯根2の植設箇所を被包するための開口部を有している。この人工固有歯槽骨1は、固有歯槽骨を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極として機能する。通常、内部歯根2の上部には義歯4が被着される。
本実施形態に係る人工固有歯槽骨1は網状に織成されており、人工固有歯槽骨1の周辺部分に存在する未分化間葉細胞を内部歯根の周面部分に取り込むことができる。これによって造血作用がより活発化し、より早急に内部歯根の周囲に固有歯槽骨と骨梁を形成することができる。
なお人工固有歯槽骨1と内部歯根の形状は植立部位によって若干形が異なってもよい。すなわち根尖端部は前歯、小臼歯、犬歯型では丸く、大臼歯型では分岐して中心に陥凹を有することになる。
図2は、本発明に係る他の人工固有歯槽骨11の実施形態の一例を示す模式図である。図1と同様の機能を有する部材については、同じ符号を用いる。図2に示すように本発明に係る人工固有歯槽骨11は筒状電極であって、内部歯根2の植設箇所を被包するための開口部を有している。この人工固有歯槽骨11は、固有歯槽骨を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極として機能する。内部歯根2の上部には義歯4が被着される。人工固有歯槽骨11と内部歯根2との間には接着剤が充填され、固化することによって緩衝材3が形成される。
また人工固有歯槽骨11の内周面には、軸方向に沿って膨出部6と陥凹部7が交互に形成されている。同様に内部歯根2の外周面にも膨出部7’と陥凹部6’が交互に形成されており、両者とも外形は波形状態を有している。このように内部歯根2の周面と人工固有歯槽骨11の対向内周面を波状形態とし、緩衝材3を介して人工固有歯槽骨11と内部歯根2を固着することによって、咬合力の内部歯根2に及ぼす破壊傾向を除去することができる。
本実施形態に係る人工固有歯槽骨11には、固有歯槽骨及び骨梁を形成するための多数の透孔12が形成されている。この孔12によって人工固有歯槽骨11の周辺部分の未分化間葉細胞を内部歯根の周面部分に取り込むことができる。これによって造血作用がより活発化し、より早急に内部歯根の周囲に固有歯槽骨と骨梁を形成することができる。
図3は、本発明に係る更に他の人工固有歯槽骨21の実施形態の一例を示す模式図である。図3に示すように本発明に係る人工固有歯槽骨21は筒状電極であって、内部歯根22の植設箇所を被包するための開口部24を有している。ここで内部歯根22の最大外径はφ5mmであり、人工固有歯槽骨21の最大内径はφ5.4mmである。この人工固有歯槽骨21は、固有歯槽骨を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極として機能する。人工固有歯槽骨21の両端子よりボタン電池25の正極、負極へリード線27がつながっている。ボタン電池25は電源として人工固有歯槽骨21に電流を印加するものである。かかるボタン電池は口腔内に設置されるのが好ましい。
図4は、本発明に係る人工歯根の実施形態の一例を示す断面図である。図4に示すように本発明に係る大臼歯用の人工歯根は、人工固有歯槽骨31によって植設箇所が被包された内部歯根32と、この内部歯根32の上部には、内部にボタン電池35が設置された仮歯である冠34が被着されている。ここで内部歯根32の最大外径はφ6mmであり、人工固有歯槽骨31の最大内径はφ6.4mmである。このボタン電池35の各電極からは、それぞれ絶縁体によって被覆されたリード線36が導出しており、人工固有歯槽骨31に接続されている。人工固有歯槽骨31は、網状構造体でありTi合金より形成されている。この網状構造体は、Ti合金を繊維状に形成した後、熱を加えて溶融させながら筒状の型に入れ圧縮成形されることによって製造される。もちろん他の製造方法によって製造しても良い。この人工固有歯槽骨31には、ボタン電池より電流が印加される。本実施の形態においては、ボタン電池として1.55Vのアルカリ電池(ソニー製:SR421SW,No.348・SB−A6)が用いられる。人工固有歯槽骨31の内周面と内部歯根32は、一番に近接している部分が0.2mm程度であるのが好ましい。
まず歯科用エンジンのヘッドにピーソーリーマを取り付け、顎骨の術部の中心にセンターガイド用の孔を穿孔する。その後、サーキュラーナイフをヘッドに取り付け、サーキュラーナイフの軸刃をセンターガイド用の孔に挿入し、センターガイド用の孔の円周上にトレフィンバー用のφ5mmのガイド溝を形成する。その後、ヘッドにφ6mm〜6.5mmのトレフィンバーを取り付け、センターガイド用の孔に軸刃を挿入し、ガイド溝に沿って顎骨を円周状に切削していく。この切削によって人工固有歯槽骨を植立するための穴が穿孔される。かかる穴に人工固有歯槽骨31を埋設し、人工固有歯槽骨31の開口部より内部歯根32を設置する。この際に内部歯根32の表面にアパタイトやコラーゲンを塗布しても良い。内部歯根32を設置した後、歯茎38を縫合し内部歯根32を固定する。次に内部歯根の歯茎から突出している歯冠部に、ボタン電池35が設置された冠34を接着する。冠を接着する前に冠34から引き出されているリード線36を人工固有歯槽骨31に接続する。リード線36を接続した後、接着剤を使用して冠34を内部歯根32に接着する。
図5は、本発明に係る更に他の人工固有歯槽骨41の実施形態の一例を示す模式図である。図5に示すように本発明に係る人工固有歯槽骨41は棒状に成形されたチタン合金を格子状45に織成した筒状電極であって、内部歯根の植設箇所を被包するための開口部44を有している。かかる人工固有歯槽骨41は、この構成を採用することによって固有歯槽骨を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極として機能する。
図6は、本発明に係る更に他の人工固有歯槽骨51の実施形態の一例を示す模式図である。図6に示すように本発明に係る人工固有歯槽骨51は、棒状に成形されたチタン合金にらせん状に細線55を巻きつけて織成した筒状電極である。この人工固有歯槽骨51は、内部歯根の植設箇所を被包するための開口部54を有している。かかる人工固有歯槽骨51は、この構成を採用することによって固有歯槽骨を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極として機能する。
図7は、電流を印加するための電源及び配線が接続されている人工固有歯槽骨61の実施形態の回路構成の一例を示す図である。図7に示すように、かかる人工固有歯槽骨61は、筒状電極62の開口部にチタン製電極棒63を有している。筒状電極62は、α−TPC+COPブロック、HA顆粒+BMP5mg填塞、シリコンコーティングが施されている。また底部はスーパーボンドで封鎖されている。かかるチタン製電極棒63にはリード線64が接続され、筒状電極62の正極側はオペアンプ65へ、負極側は電圧1.5Vのリチウム電池66の正極に接続される。チタン製電極棒63とオペアンプ65の間には、図7に示すように電圧3Vのリチウム電池67が接続されている。筒状電極62の負極側とリチウム電池66の間より150kΩの抵抗68を介してオペアンプ65へのリード線が接続され増幅回路が形成されている。回路全体にはシリコーンコーティングが施されている。
上記の人工固有歯槽骨61に大臼歯型の人工歯根を口腔内に設置し、顎骨に植立し電流を加えたところ、二週間ほどで固有歯槽骨及び骨梁が形成された。かかる人工固有歯槽骨61を用いることによって、臨床体によって若干の相違は考えられるが、およそ二〜三週間で固有歯槽骨及び骨梁が形成されることが予想される。
従来の大臼歯型の人工歯根の植立具については、固有歯槽骨及び骨梁が形成するまで、おおよそ10ヶ月程度の経過が必要であった。かかる従来の植立具に比較して、本発明に係る人工固有歯槽骨を使用すれば、極めて短期間に固有歯槽骨及び骨梁を形成できることがわかった。
2,22,32 内部歯根
3 緩衝材
4 義歯
12,26 多数の透孔
24,44,54 開口部
25,35 ボタン電池
27,36 リード線
34 冠
A 固有歯槽骨
B 骨梁
Claims (7)
- 内部歯根の植設箇所を被包するための開口部を有した筒状の人工固有歯槽骨であって、当該人工固有歯槽骨は、網状構造物によって形成され、その表面に固有歯槽骨及び骨梁を形成するための多数の透孔を有し、かつ固有歯槽骨及び骨梁を形成する細胞の分化を電流によって誘起せしめる電極としての機能を有することを特徴とする人工固有歯槽骨。
- 前記人工固有歯槽骨はTi、Ti合金、Pt又はAu合金から形成されていることを特徴とする請求項1に記載された人工固有歯槽骨。
- 電流を印加するための電源及び配線が接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載された人工固有歯槽骨。
- 人工固有歯槽骨の内周面に軸方向に沿って膨出部と陥凹部が交互に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載された人工固有歯槽骨。
- 膨出部と陥凹部が交互に形成された波状形であることを特徴とする請求項4記載の人工固有歯槽骨。
- 一端に歯冠部、反対端に根尖部を有する内部歯根と、内部歯根の植設箇所が請求項1乃至5のいずれか一に記載された人工固有歯槽骨によって被包されることを特徴とする人工固有歯槽骨を備えた人工歯根。
- 一端に歯冠部、反対端に根尖部を有する内部歯根と、内部歯根の植設箇所が請求項1乃至5のいずれか一に記載された人工固有歯槽骨によって被包されており、当該歯冠部に仮歯である冠を被着し、冠の内部に電池を設置し、当該電池より電流を印加するための配線が人工固有歯槽骨に接続されていることを特徴とする人工固有歯槽骨を備えた人工歯根。
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