JP4235663B2 - 金属対応無線icタグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば無線移動体識別システム(以下、RFIDシステムという。)において用いられる金属対応無線ICタグ装置に関する。
近年、総務省が「ユビキタス」をITに替わる次世代技術のキーワードとして掲げている。「ユビキタス」とはラテン語で「至るところに存在している」という意味であり、情報通信の世界をすべての物質にまで拡張することを意味する。無線ICタグはユビキタス社会の基盤技術と目されており、各種の物体に貼り付けられ、又はそれらの表面に埋め込まれ利用される。また、無線ICタグは、物品のトレーサビリティ利用のように、物品の製造から物流、廃棄に至る各種の過程で利用され、近距離、遠距離通信等異なった通信形態で使用されるため、それに対応した幅広い形態と通信性能が要求される。
一般に、RFIDシステムは、スキャナとも呼ばれリーダ/ライタ機能を持つ質問器と、無線ICタグである応答器とを備えて構成される。質問器から放射された無線信号は応答器により受信され、その無線信号の電力により応答器は起動し、応答器はその内蔵メモリに格納されたタグ情報に従って無線搬送波をデジタル変調して、変調された無線信号を発生して質問器に対して返信する。これに応答して、質問器は受信した無線信号をデジタル復調することによりタグ情報を得る。無線ICタグは各種の物品に実装され、物品の生産、物流、販売、リサイクル過程での効率化、あるいは、人や物の管理、安全確保や電子広告等多くの分野での活用が検討されている。これら利用形態においてより適切な無線ICタグの特性、形態は様々で、各種の無線ICタグが開発利用されている。最も一般的な小型の無線ICタグはダイポールアンテナにタグICを実装したもので、これを図38に示す。また、一般的なタグICの構成例を図39に示す。これらについては詳細後述する。
ところで、この種の一般的な小型の無線ICタグを、各種の金属筐体やコンテナ、金属で被覆された筐体などに実装する場合は金属の影響を受け、RFIDシステムの無線通信に影響を与える。この問題点を解決するために、例えば、特許文献1及び非特許文献1において、金属体にも実装できる金属対応の無線ICタグの一例(以下、第1の従来例という。)が開示されている。第1の従来例では、1/2波長のマイクロストリップ線路共振器を用いて、アンテナと接地導体との間にタグICを接続する無線ICタグであり、誘電体を介して、アンテナと対向した側に接地導体を有するため、当該接地導体側を金属体等に装着しても、基本的には電波放射に影響せず通信を阻害することはなく、従って、1/2波長アンテナの長さ方向と平行した電界成分を有する直線偏波の無線信号に対しては有効な通信を可能としている。
また、特許文献2においては、円偏波平面アンテナを用いた無線ICタグの一例(以下、第2の従来例という。)が示されている。第2の従来例では、平面アンテナの放射導体内の適切な位置で、接地導体に向けて導体部を形成し、導体部と接地面間にタグICを接続したことを特徴としており、ここで、平面アンテナから放射される電波は接地導体と反対の放射面方向にのみに放射されるため、接地導体側を金属体に装着することができる。
特開2000−332523号公報。 特開2002−353735号公報。 小暮裕明,"電磁界シミュレータで学ぶワイヤレスの世界",CQ出版社,pp.118,2001年6月20日発行。
これら第1と第2の従来例では、装置構成は複雑であり、また、直線偏波や円偏波に対してそれぞれに対応した設計はできるが、一度製造すると、その偏波の変更は難しいという問題点があった。また、一般的な小型の無線ICタグでは、RFIDシステムの質問器と応答器との間の通信距離は比較的短いという問題点があった。さらに、生産工程では、1つの独立した小型の無線ICタグを基板や部品に取り付け、物流工程では、完成品や梱包箱やコンテナに実装し、長距離通信可能な金属対応無線ICタグとして利用するなど、1つの小型の無線ICタグを種々の工程で連続的に活用することは難しいという問題点があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来例に比較して装置構成が簡単であって、金属に対応できる金属対応無線ICタグ装置を提供することにある。また、本発明の目的は、独立した小型の無線ICタグの通信距離を伸張することができ、それ自体で利用される1つの小型の無線ICタグで種々の利用工程に見合った動作又は特性を実現でき活用性の高い金属対応無線ICタグ装置を提供することにある。
本発明に係る金属対応無線ICタグ装置は、
直線偏波の電界放射成分を有する無線ICタグと、
互いに実質的に平行な第1と第2の面を有する誘電体と、
上記誘電体の第1の面上に設けられた接地導体と、
上記誘電体の第2の面上に設けられ、互いに直交する第1と第2の共振軸の各両端で開放境界となり、上記第1と第2の共振軸でそれぞれ所定の第1と第2の共振周波数で平面回路共振するパッチ導体からなる電波変換共振反射器とを備え、
上記無線ICタグの直線偏波の電界放射成分の方向と、上記電波変換共振反射器の1つの共振軸とが互いに実質的に一致するように、上記無線ICタグを上記電波変換共振反射器の誘電体の第2の面上又は上記パッチ導体上に設け、
上記第1の共振周波数と、上記第2の共振周波数と、上記第1の共振周波数と上記第2の共振周波数との間の周波数のうちのいずれかである通信周波数を有して受信波として入射する第1の無線信号を上記パッチ導体で平面回路共振させ、第2の無線信号に変換して上記無線ICタグに反射させ、上記無線ICタグからの上記通信周波数を有する第3の無線信号を上記パッチ導体に平面回路共振させ、第4の無線信号に変換して送信波として反射するように構成したことを特徴とする。
なお、「面上に設けられ」、もしくは「導体上に設けられ」の用語は、それぞれ、面又は導体に直接に設けられてもいいし、面又は導体から空隙を介して設けられてもよい。さらに、「設けられ」の用語は、形成されること、貼り付け又は添付されること、単に載置又は搭載されることなどを含むものとする。
従って、本発明によれば、以下の特有の効果を奏する。
(1)電波偏波変換共振反射器の構成はきわめて簡単であって、容易に作製することができ、小型の無線ICタグはそれを用いることにより、容易に金属対応無線ICタグ装置を作製することができる。
(2)平面回路共振を用いることにより伝搬利得を実質的に増大させて通信距離を小型の無線ICタグの単独使用に比較して伸長できる。
(3)金属対応無線ICタグ装置は容易に偏波を変換することができるため、RFIDシステムの無線信号に適合するように異なる偏波に対応することができ、好適なシステムを実現することができる。
(4)例えば無線ICタグである無線通信装置は単独で用いることができ、電波偏波変換共振反射器の利用により伝搬利得を実質的に増大させ、また、金属対応無線ICタグ装置としてなど、用途に見合った広い活用が可能となる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
従来例と実施形態との関係.
無線ICタグは、上述のように、各種の物品に実装され、物品の生産、物流、販売、リサイクル過程での効率化、あるいは人、物の管理、安全確保や電子広告等多くの分野での活用が検討され、これら利用形態においてより適切なタグの特性、形態は様々で、各種のタグが開発利用されている。他の無線通信装置に比べて、無線ICタグにとって非常に重要な望ましい要件は、より多くの活用範囲を広げるため、小型・軽量であって、無線通信装置の伝搬利得を実質的に増大させることである。無線ICタグは各種の物品や物体に直接的に装着することが多く、そのため、金属物体や、強誘電体などあらゆる物体に対しても動作可能であることである。すなわち、装着物体の影響を受けない金属対応無線ICタグ(オンメタル無線ICタグ)であること、また、無線ICタグを物品に取り付ける場合、無線ICタグの方向(偏波軸)に制約を加えることなく実施できること、さらに、無線ICタグ実装物品は色々な工程を移動するため通信する質問器のアンテナとの対向状態が一定せず、円偏波特性に対応できること等にある。従って、各種の用途に対して簡単な方法で等価的に通常の小型タグの偏波特性を変換させかつ伝搬利得を実質的に増大させ、あらゆる物体にも実装を可能とする手段があれば、非常に有効な方法を提供することができる。
図38に示した最も代表的な無線ICタグでは、誘電体基板8c上にダイポールアンテナ8bを形成し、タグIC8aを接続するだけで簡単に安価に形成できる。図39で示したタグIC8aは、非同期MPU30と、不揮発性メモリ31と、電源再生回路32と、高周波通信回線33などを備えて構成される。なお、中には、外部通信用ポート34を有するものがある。ここで、非同期MPU30はタグIC8a全体の動作を制御するためのコントローラであって、例えば外部通信用ポート34を有する。不揮発性メモリ31は当該タグICのタグ情報を格納するためのメモリである。電源再生回路32はアンテナ8bで受信した起動用の無線信号を受信してその電力を再生して各構成要素30,31,33に供給する。高周波通信回路33は無線送信機を含み、非同期MPU30により不揮発性メモリ31から読み出されたタグ情報に従って、無線搬送波をデジタル変調してアンテナ8bを用いて質問器20に向けて放射する。当該無線ICタグはダイポールアンテナの長手方向の軸を中心に周囲360度にわたって電波を放射するため、長手方向の軸とは別の周囲方向から質問器との無線通信が可能で用途によっては非常に便利な場合がある。また、この無線ICタグは長手方向の軸に平行な電界成分Eを有する直線偏波に対して有効であるが、無線ICタグの長手方向の軸に直交した質問器からの無線信号は受信することができない。しかるに、無線信号が周囲方向に放射され、アンテナ利得が低いため長距離通信には難しい。さらに、無線信号の影響を受けにくい繊維や、薄い紙材等からなる物品に実装するにはさほど問題はないが、各種の金属容器やコンテナや、金属導体で被覆された機器筐体、あるいは各種の車両等の物体に実装するには、金属導体の影響を受けこれらの無線ICタグは利用できない。特に、無線ICタグは、生産、物流、流通、修理工程を移動し利用される場合が多く、その過程において無線ICタグの実装物体が変わることもあり金属に対応できるタグが非常に有効で不可欠である。さらには、アプリケーションにおいて、質問器からの無線信号は直線偏波でよい場合もあるが、無線ICタグの実装や無線通信の自由度を考慮すると、円偏波が望ましい。
本発明に係る実施形態によれば、詳細後述するように、上述の無線ICタグ等の電波放射が周辺方向に放射する、小型の一般的な独立した無線ICタグに対して、平面共振回路を用いて偏波を変換することができる共振偏波変換反射手段を用いて、金属導体にも実装でき、実質的に伝搬利得を増大できる金属対応無線ICタグ装置を実現できる。また、独立した無線ICタグを電波偏波変換共振反射器の上側で特定の位置に配置するだけで、質問器からの各種の偏波を有する無線信号に対応して動作を可能とすることを特徴としている。
上述の従来例では、パッチアンテナ(平面アンテナ)の放射導体と接地導体間にタグIC部品を直接的に接続する独立した金属対応無線ICタグそのものの構成方法であり、本発明に係る実施形態が目指す金属対応無線ICタグの形成方法とは、基本的な視点が異なる。すなわち、本発明に係る実施形態では、特にそれ自体でも利用される小型アンテナとタグICからなる一般的な独立した無線ICタグと、電波偏波変換共振反射器とを合体させ、伝搬利得を実質的に増大させた優れた円偏波通信に適した金属対応無線ICタグ装置を簡単に作成する。現在では、最も小型の通信装置であり、各種の用途で各種の物体に貼り付ける無線ICタグにおいて特に大きな効果を発揮する。独立した無線ICタグは非常に小さいため、電波偏波変換共振反射器の上部に配置しても到来波の電波信号を遮蔽する影響は小さく、到来信号は当該電波偏波変換共振反射器に作用し反射され無線ICタグに有効に信号を与える。また、下部に配置する当該電波偏波変換共振反射器の接地導体面を各種物体の実装面とすることにより、金属対応無線ICタグ装置としての効果を発揮させる。独立した無線ICタグは、その放射電界方向と電波偏波変換共振反射器の共振電界方向とを特定の位置関係で配置するだけでよい。電波偏波変換共振反射器は、それ自体でなんら作用効果を持たないが、直線偏波放射特性をもつ独立した無線ICタグとの合体により特別の効果を発揮する。このとき、電波偏波変換共振反射器は、前面に置かれた無線ICタグに対して電波偏波変換による無線ICタグと電界偏波軸の整合と、共振反射に伴う電波強度の強化で伝搬利得を実質的に高める。独立した無線ICタグの配置位置を変えることにより各種の偏波信号に対応できる。また、当該電波偏波変換共振反射器の反射により裏面への電波放射を阻止し、これらにより種々の用途に適した金属対応無線ICタグ装置となるものである。
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係る電波偏波変換共振反射器10の構成を示す平面図である。図2は図1のA−A’線についての縦断面図である。
図1及び図2において、互いに実質的に平行な2つの面を有する誘電体基板1の裏面全面に接地導体2が形成され、誘電体基板1のおもて面(以下、放射面ともいう。)に正方形状のパッチ導体3が形成される。ここで、パッチ導体3の中心Oを座標中心とし、パッチ導体3の各辺に対して平行となるようにX軸及びY軸を定め、X軸を基準の0度の方向とし、X軸からY軸方向に向かって方位角θを定め、以下同様とする。
パッチ導体3は、以下に示すように、互いに直交する2つの共振軸RA1,RA2の各両端で開放境界となり、これら共振軸RA1,RA2でそれぞれ互いに異なる共振周波数fl,fhで平面回路共振する2つの平面回路共振器を含む。パッチ導体3の方位角θ=135度の位置にある頂点101と、パッチ導体3の方位角θ=−45度の位置にある頂点102とを結ぶ対角線の長さをLlとし、当該対角線を第1の平面回路共振器の共振軸RA1とする。また、パッチ導体3の方位角θ=45度の位置にある仮想頂点103において二等辺三角形の切欠部3aが形成され、パッチ導体3の方位角θ=−135度の位置にある仮想頂点104において二等辺三角形の切欠部3bが形成される。これら仮想頂点103,104を結ぶ対角線上でのパッチ導体3の長さをLhとし、当該長さLhの軸を第2の平面回路共振器の共振軸RA2とする。
ここで、パッチ導体3の長さLl及びLhは以下のように設定される。パッチ導体3の第1の平面回路共振器において、互いに近接する2つの共振周波数fl,fhの間であって好ましくはそれらの概略平均周波数である通信周波数f0において、長さLlの共振軸RA1により通信周波数f0よりも低い共振周波数flで平面回路共振する。一方、パッチ導体3の第2の平面回路共振器において、上記通信周波数f0において、長さLhの共振軸RA2により通信周波数f0よりも高い共振周波数fhで平面回路共振する。さらに、上記通信周波数f0の位相が共振軸RA1による共振位相特性で共振周波数flから実質的に45度だけ遅れてずれるとともに、上記通信周波数f0の位相が共振軸RA2による共振位相特性で共振周波数fhから実質的に45度だけ進んでずれるように設定される。従って、パッチ導体3の2つの平面回路共振器は、通信周波数f0又はその近傍の周波数において、通信周波数f0の無線信号が入射したときは平面回路共振し、誘電体基板1を介して形成されたパッチ導体3と接地導体2との間で当該無線信号の電磁界が発生し、誘電体基板1を介するパッチ導体3と接地導体2により、誘電体基板1の面に対して垂直な方向であって接地導体2からパッチ導体3に向かう方向(以下、放射方向という。)に当該無線信号の電磁波が放射される。これらの動作は、給電回路を持たずに実現できる。
図3は図1の電波偏波変換共振反射器10上に無線ICタグ8を載置してなる金属対応無線ICタグ装置50の構成及び動作を示す平面図である。図4は図3の金属対応無線ICタグ装置50と、質問器20との配置関係及び動作を示す、図3のB−B’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。
図3及び図4を参照して、質問器20からの円偏波の無線信号を電波偏波変換共振反射器10により直線偏波の無線信号に変換して、電波偏波変換共振反射器10のパッチ導体3上にタグ実装台9を介して実装された無線ICタグ8に送信する動作について以下に説明する。なお、無線ICタグ8は、例えば図38で示した一般的なダイポールアンテナ8bを用いて直線偏波の無線信号を放射するものとし、図3に示すように、無線ICタグ8はパッチ導体3の中心Oを含みその長手方向がX軸に沿うように実装され、その実装方法としては、例えば、パッチ導体3又は誘電体基板1の放射面において接着テープを用いて無線ICタグ8を貼り付け、もしくは、当該放射面上に無線ICタグ8を収容する袋状の収納体を設け、無線ICタグ8を当該収納体に挿入して収容する。なお、タグ実装台9は無線ICタグ8の形態に対応し、必要により用いるものであって、無線ICタグ8が誘電体でケーシングされて適切な厚さをもつものであれば、タグ実装台9を用いなくてもよい。
図4において、アンテナ20Aを有する質問器20は、電波偏波変換共振反射器10の誘電体基板1の面に対して垂直な方向であって、接地導体2から放射面に向かう方向に延在した位置に、アンテナ20Aが電波偏波変換共振反射器10の放射面と対向するように設けられる。ここで、質問器20のアンテナ20Aから電波偏波変換共振反射器10に向かって円偏波の無線信号20Sが送信され、その回転する円偏波の無線信号20Sの電界成分をEicとする。当該円偏波の無線信号20Sは、互いに直交し位相差が90度異なった2つの直線偏波の無線信号で表されるので、分解した2つの信号をそれぞれ、図4の偏波断面図20L(当該偏波断面図は、放射面に平行な断面における図である。)において電界成分Eia及びEibとして示す。ここで、電界成分Eibは電界成分Eiaより90度だけ位相が進んだ左旋円偏波とする。これら2つの直線偏波の無線信号が電波偏波変換共振反射器10に入射したとき、電界成分Eiaはより高い共振周波数fhを有するパッチ導体3の共振軸RA2により平面回路共振し、パッチ導体3の共振軸RA2上に電流Iaを発生させる。一方、電界成分Eibはより低い共振周波数flを有するパッチ導体3の共振軸RA1により平面回路共振し、パッチ導体3の共振軸RA1上に電流Ibを発生させる。これらの電流Ia,Ibにより、それぞれと平行した直線偏波の電界EaとEbがパッチ導体3から上記放射方向で再放射される。
ところで、上述のように、パッチ導体3の各共振軸RA2,RA1上の電流Ia,Ibはそれぞれ、電流Iaの位相が電流Ibの位相よりも90度だけ進んで発生する。一方、電波偏波変換共振反射器10に到来した無線信号の電界成分Eiaは電界成分Eibに比べて90度だけ位相が遅れて入射しているので、それにより生じた電流の90度の位相差と相殺され、パッチ導体3より再放射される無線信号の電界成分Ea及びEbの位相は同相となる。従って、図4に示すように、直交した同相の2つの直線偏波の電界成分Ea及びEbは互いに合成され、円偏波から偏波変換された直線偏波の無線信号Elとして反射されて放射方向で無線ICタグ8に向けて再放射される。このことは、電流Iaと電流Ibが合成された電流Irから電波が放射されるものとみなしてよい。ここで、無線ICタグ8は上述のように実行されているので、X軸に沿った電界成分に対して受信できるので、反射された無線信号は有効的に無線ICタグ8のダイポールアンテナで受信される。これに応答して、無線ICタグ8は受信した無線信号の電力を再生して起動した後、無線ICタグ8内のメモリに格納されたタグ情報に従って負荷変調され、すなわち、無線搬送波をデジタル変調することにより無線信号を発生し、これを電波偏波変換共振反射器10に向けて送信し、電波偏波変換共振反射器10を介して質問器20に返信される。ここでの電波偏波変換共振反射器10の動作では、上述の質問器20から無線ICタグ8への動作とは逆の処理が実行される。
以上説明したように、電波偏波変換共振反射器10は、入射した円偏波の無線信号を直線偏波の無線信号に変換し、前方に置かれた無線ICタグ8の放射電界軸と合わせて有効な無線信号を供給するととともに、電波偏波変換共振反射器10の接地導体2の面は物体への実装面となり、金属対応無線ICタグ装置50を構築できる。なお、電波偏波変換共振反射器10は受動体であり、偏波変換作用については可逆性がある。
図3及び図4の実施形態では、質問器20から送出された無線信号が円偏波を有し、直交した2波に分解した直線偏波の無線信号の電界成分Eiaが電界成分Eibに比べて、90度だけ遅れた左旋円偏波の場合を示したが、2波の位相差が逆の右円偏波の場合は、到来する無線信号の円偏波が上記の例とは90度異なった直交した直線偏波の無線信号に変換される。そのため、無線ICタグ8はY軸上に平行して配置される。その場合の無線ICタグ8の配置位置を点線で示している。なお、無線ICタグ8は、その直線偏波の放射電界の軸が正方形状のパッチ導体3の対角線上と平行に配置しても、同方向の電界成分を有するため、無線ICタグ8は無線信号が供給され動作は可能である。また、少なくとも、無線ICタグ8の放射電界軸が、パッチ導体3の端部とその中心部を結んだ直線と概略平行し配置しても同様に動作する。
さらに、質問器20からの無線信号が右旋円偏波の場合も、上記と同様に説明できるため説明は省略する。なお、質問器20からの無線信号が円偏波の場合、金属対応無線ICタグ装置50を質問器20からの無線信号と対向させ回転させても、動作は全く同じである。
第1の実施形態の変形例.
図5は本発明の第1の実施形態の変形例に係る金属対応無線ICタグ装置50の構成及び動作を示す平面図である。図6は図5の金属対応無線ICタグ装置50と、質問器20との配置関係及び動作を示す、図5のC−C’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。当該変形例では、第1の実施形態と同様に、無線ICタグ8はダイポールアンテナを備え、ダイポールアンテナの長手方向に平行な放射電界を有する直線偏波の無線信号を送受信するものとする。図5に示すように、無線ICタグ8は、パッチ導体3上であって中心Oを含みX軸に沿って横方向に配置される。また、当該変形例では、図5及び図6を参照して、質問器20からの直線偏波の無線信号を電波偏波変換共振反射器10により円偏波の無線信号に変換して、電波偏波変換共振反射器10のパッチ導体3上にタグ実装台9を介して実装された無線ICタグ8に送信する動作について以下に説明する。
図6において、質問器20から送信された無線信号は、図6の紙面内の上下方向に電界成分Eiを有する直線偏波の無線信号20Sとして送信される場合について考える。まず、電波偏波変換共振反射器10が存在しない場合、無線ICタグ8の放射直線偏波軸が、電界成分Eiに対して直交するように配置される。そのため、質問器20からの無線信号20Sは、電界強度が比較的大きい場合であっても無線ICタグ8のダイポールアンテナを励振することはできず、無線ICタグ8を起動させることはできない。
しかしながら、図6に示すように、無線ICタグ8の後方に電波偏波変換共振反射器10を配置した場合、まず、質問器20からの無線信号20Sは、電波偏波変換共振反射器10に対してY軸に沿って入射し、電波偏波変換共振反射器10内の平面回路共振器で共振する。すなわち、到来した直線偏波の無線信号20Sの電界成分Eiは、放射面に平行な偏波断面図20Lに示すように、互いに直交した同相の電界成分EiaとEibの2波に分解でき、この2波が電波偏波変換共振反射器10を励振する。これらの無線信号は平面共振回路で共振し、パッチ導体3上でこれら電界成分EiaとEibにそれぞれ平行な誘導電流IaとIbを発生させる。ここで、パッチ導体3の共振軸RA2上で発生される電流Iaは、通信周波数f0より高い共振周波数fhにおいて平面回路共振するので、通信周波数f0においてその位相は共振周波数fhから45度だけ位相が進む。一方、パッチ導体3の共振軸RA1上で発生される電流Ibは、通信周波数f0より低い共振周波数flで平面回路共振するので、通信周波数f0においてその位相は共振周波数flから45度だけ位相が遅れる。さらに、これらの電流IaとIbはそれらと平行した電界成分Era及びErbを発生して放射させる。これら2つの放射電界成分Era及びErbは位相差が90度で、電界成分Eraは電界成分Erbよりも90度位相が進み、これらの電界成分が反射されて再放射されるため、それらの合成波Ecは円偏波の無線信号10Sとなる。その結果、当該無線信号10Sは、図6に示すように、再放射された円偏波の無線信号10Sの電界成分Ecは回転しながら、図6の右側方向へ進むため、無線ICタグ8のアンテナと平行した電界成分が発生し、これに応答して無線ICタグ8は起動する。
ここで、質問器20からの直線偏波軸をY軸と平行となるように固定した状態で、金属対応無線ICタグ装置50を図5の位置から中心Oを中心として回転させれば、電波偏波変換共振反射器10による円偏波の無線信号の発生強度は小さくなるが、当該回転により、偏波は円偏波から楕円偏波になり、さらなる回転により直線偏波になり、以下、回転により、円偏波→楕円偏波→直線偏波→楕円偏波→円偏波→…の繰り返しで偏波が変化する。いずれの場合も、無線ICタグ8と平行した電界成分が発生し、無線ICタグ8は動作する。また、電波偏波変換共振反射器10の接地導体2側へは電波放射がないので、接地導体2側を物体に対する装着面とすることができる金属対応無線ICタグ装置50となる。また、このことは、本実施形態に係る電波偏波変換共振反射器10は、平面回路共振して反射することに加えて、無線ICタグ8の適切な実装位置により、以下の作用があることを意味する。
(a)入射する直線偏波の無線信号を円偏波又は楕円偏波の無線信号に変換して無線ICタグ8に反射する。
(b)入射する円偏波又は楕円偏波の無線信号を直線偏波の無線信号に変換して無線ICタグ8に反射する。
(c)無線ICタグ8からの直線偏波の無線信号を円偏波又は楕円偏波の無線信号に変換して反射する。
(d)無線ICタグ8が円偏波又は楕円偏波の無線信号を放射するものであれば、無線ICタグ8からの円偏波又は楕円偏波の無線信号を直線偏波の無線信号に変換して反射する。
なお、電波偏波変換共振反射器10において、偏波を変換しない場合もあるが、その作用に含むものとする。
なお、上記各例で示した金属対応無線ICタグ装置50の形成において、電波偏波変換共振反射器10のパッチ導体3に対する無線ICタグ8は、パッチ導体3の各辺の中央部の端部とその中心Oを結んだ直線と、無線ICタグ8の1つの直線偏波軸とを平行させて配置することが好ましい。また、パッチ導体3と無線ICタグ8との間隔及び配置位置関係は、無線ICタグ8のタグアンテナの方式や、ICの接続方法やケーシング等により異なるため、最適位置は実験的に決められる。これは、電波偏波変換共振反射器10と、無線ICタグ8が分離しているため、容易に調整できる特徴の1つである。さらに、1個の無線ICタグ8に対して適当な電波偏波変換共振反射器10を用い、用途により適した電波偏波変換特性を得ることができるという特有の効果を有している。
第2の実施形態.
図7は本発明の第2の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Aの構成を示す平面図である。図8は図7のD−D’線についての縦断面図である。図9は図7及び図8の無線ICタグ8の構成及び動作を示す平面図である。第2の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Aは電波偏波変換共振反射器10Aを備え、図7及び図8に示すように、第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50に比較して以下の点が異なる。
(1)正方形状のパッチ導体3に代えて、円形状のパッチ導体3Aを用いた。
(2)図1の共振軸RA1に対応する位置に、パッチ導体3Aの直径と同一の長さを有する共振軸RA11を備える。
(3)図1の共振軸RA2に対応する位置に、その両端で概略矩形の切欠部3c,3dを有しかつパッチ導体3Aの直径よりも短い長さを有する共振軸RA12を備える。
(4)無線ICタグ8は、その長手方向が中心Oを含みかつ−Y軸に沿うように実装される。
図7において、パッチ導体3Aの形状は、共振軸RA11でより低い共振周波数flを有し、かつ共振軸RA12でより高い共振周波数fhを有し、第1の実施形態と同様に、通信周波数f0の位相が共振軸RA11による共振位相特性で共振周波数flから実質的に45度だけ遅れてずれるとともに、上記通信周波数f0の位相が共振軸RA12による共振位相特性で共振周波数fhから実質的に45度だけ進んでずれるように設定される。
図9において、無線ICタグ8は例えば、小型化のため、誘電体基板8c上に半波長ダイポールアンテナ8bの両端をコ字形に折り曲げ、C字形アンテナを用いた例を示している。この無線ICタグ8では、アンテナ8bに流れる電流がコの字に折り曲げられたところで部分的に逆方向となり、それより放射される電界成分も逆方向成分が発生し、アンテナ8b全体からの電波放射は直線ダイポールアンテナの場合に比べて小さく利得は低下する。しかしながら、アンテナ8bの長手方向の電界Etと直交した放射電界成分Enも発生し、無線ICタグ8として適した用途もある。これと同様に、誘電体基板8cの両面を利用し、ダイポールアンテナ8bを誘電体基板8cの両面に折り返して形成してもよい。その他、無線ICタグ8としては、少なくとも1つの直線偏波の電界放射成分を有するものであれば種々のものが適用できる。
第3の実施形態.
図10は本発明の第3の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Bの構成を示す平面図である。第3の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Bは電波偏波変換共振反射器10Bを備え、第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50に比較して以下の点が異なる。
(1)正方形状のパッチ導体3Bの中心Oを含み、方位角θ=45度の方向で長手方向を有するストリップ形状のスロット3Sをパッチ導体3Bに形成した。
(2)+X軸方向でパッチ導体3Bから無線ICタグの1つの配置位置を決めるため、矩形形状で突出する突出部3eを形成した。
(3)無線ICタグ8は、例えば、好ましくは、位置8Aで示すように、その長手方向が+X軸に沿うように実装される。
図10において、矩形形状のパッチ導体3Bはその中央部において、その長手方向が方位角θ=45度方向となるようにスロット3Sを形成し、これにより、パッチ導体3Bにおいて方位角θ=±45度方向で直交する2軸で上述の2つの共振周波数fl,fhで平面回路共振するよう設定される。なお、共振位相の設定条件は、第1の実施形態と同様である。また、無線ICタグ8は、その直線偏波の電界軸がパッチ導体3Bの端部と中心Oとを結んだ直線に平行して配置すればよく、例えば、図10の位置8Aに限らず、位置8B又は8Cであってもよい。位置8Bでは、無線ICタグ8は−Y軸に沿うように実装される。また、位置8Cでは、無線ICタグ8はパッチ導体3Bの対角線に沿うように実装される。
第4の実施形態.
図11は本発明の第4の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Cの構成を示す平面図である。第4の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Cは電波偏波変換共振反射器10Cを備え、第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50に比較して以下の点が異なる。
(1)パッチ導体3Cは矩形形状を有し、その短辺方向及び長辺方向をそれぞれ共振軸とし、これら2つの共振軸の長さがそれぞれ共振周波数fh,flで平面回路共振するように設定される。なお、共振位相の設定条件は、第1の実施形態と同様である。
(2)無線ICタグ8は、例えば図11に示すように、パッチ導体3Cの対角線に沿って実装される。
第5の実施形態.
図12は本発明の第5の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Dの構成及び動作を示す平面図である。図13は図12の金属対応無線ICタグ装置50Dと、質問器20との配置関係及び動作を示す、図12のE−E’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。
第5の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Dは電波偏波変換共振反射器10Dを備え、第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50に比較して以下の点が異なる。
(1)切欠部を有しない正方形状のパッチ導体3Dを備えた。ここで、パッチ導体3Dの各辺はX軸又はY軸に平行であり、パッチ導体3Dは、中心Oを通過し、X軸に沿い、パッチ導体3Dの両端部を結ぶ共振軸RA21と、中心Oを通過し、Y軸に沿い、パッチ導体3Dの両端部を結ぶ共振軸RA22とを備える。
(2)共振軸RA21の右側端部と、共振軸RA22の下側端部とを接続し、後述する所定の長さを有する位相調整用ストリップ導体11を誘電体基板1上に形成した。ここで、誘電体基板1を介して形成されたストリップ導体11と接地導体2とは、マイクロストリップ線路である位相調整伝送線路を構成する。
図12において、パッチ導体3Dは、好ましくは、誘電体基板1を考慮した管内波長λgの概略1/2、又はその奇数倍の各辺の長さを有し、その長さを有する共振軸RA21,RA22により共振周波数f0で平面回路共振するように形成される。また、ストリップ導体11の長さは、好ましくは、誘電体基板1を考慮した管内波長λgの概略1/4、又はその奇数倍に設定される。さらに、無線ICタグ8は、パッチ導体3D上であって、例えば、好ましくは、X軸又はY軸に平行となるように配置実装される。
図14乃至図16は図12及び図13のパッチ導体3D上に無線ICタグ8を載置したときの動作を示す平面図である。次いで、図12乃至図16を参照して、円偏波の無線信号を直線偏波の無線信号に変換して反射する電波偏波変換共振反射器10Dの動作と、無線ICタグ8を搭載したときの金属対応無線ICタグ装置50Dの動作について以下に説明する。
図13において、電波偏波変換共振反射器10Dの前方(図13の右側)に配置された質問器20は円偏波の無線信号を電波偏波変換共振反射器10Dに向けて送信する。ここで、無線ICタグ8は、図12に示すように、パッチ導体3Dの中心Oを含むX軸に沿って配置されている。質問器20から送信された回転する円偏波の無線信号の電界成分をEcとしたとき、当該円偏波の無線信号は直交した位相差が90度異なった2つの直線偏波の無線信号で表されるので、分解した2つの無線信号の電界成分をEca及びEcbとして表すことができ、ここで、電界成分Ecbは電界成分Ecaより90度位相が進んだ左旋円偏波とする。
まず、この2つの直線偏波の無線信号が電波偏波変換共振反射器10Dに入射した場合のパッチ導体3Dからの再放射について説明する。電界成分Ecb及びEcaをそれぞれ別々に考え、まず電界成分Ecbの動作について説明する。図12及び図13において、電界成分Ecbはパッチ導体3DのY軸に平行となるように入射し、共振軸RA22で平面回路共振する。それにより、パッチ導体3D上には、図14に示すようにY軸に平行な電流Icbが流れる。これにより、電流Icbはストリップ導体11及びパッチ導体3DのX軸側の端部を介してパッチ導体3Dに流れる。それ故、ストリップ導体11を含む位相調整伝送線路は例えば管内波長λgの1/4の長さを有するので、パッチ導体3D上にはIcbとは直交し、X軸方向で電流Icbより90度だけ位相が遅れた電流Icb(−90゜)(ここでの位相表示は、電流Icbを基準にした位相であり、以下同様である。)が生じる。電流Icb(−90゜)は、電流Icbより90度だけ位相が遅れていることを示している。従って、図14に示すように、パッチ導体3D上には、互いに直交した電流Icb及びIcb(−90゜)が流れる。
次いで、円偏波の無線信号を形成するもう一方の直線偏波の電界成分Ecaの動作について図15を参照して以下に説明する。図15のX軸に平行な直線偏波の電界成分Ecaは、パッチ導体3Dに入射し、共振軸RA21で平面回路共振する。その結果、図15に示すように、電界成分Ecaと平行した電流Icaが発生する。ところで、電界成分Ecaは上述した電界成分Ecbに比較して位相が90度遅れているから、電流Icaも電流Icbに比べて位相が90度だけ遅れている。従って、電流IcaはIca=Icb(−90゜)と表すことができる。なお、電界成分Eca及びEcbは互いに絶対値が等しいものとしている。一方、電流Ica=Icb(−90゜)は、ストリップ導体11を含む位相調整伝送線路を流れ、パッチ導体3DのY軸方向にも流れる。ところが、当該位相調整伝送線路はその長さが例えばλg/4であるから、90度の遅延を伴う。従って、パッチ導体3DのY軸方向に流れる電流は電流Icaよりさらに90度遅れ、その結果、当該電流はIcb(−180゜)として表すことができる。円偏波の無線信号は上記の2つの電界成分が同時に送られているので、それらによりパッチ導体を流れる電流は合成されたものとなる。すなわち、パッチ導体3DのY軸方向の電流は位相が180度異なるから打ち消され、図16に示すように、X軸方向の電流(2Ica)のみが生じる。当該電流(2Ica)により生じる放射電界は、X軸方向に変化する直線偏波の無線信号となる。従って、パッチ導体3Dの前方において、X軸方向に平行に配置された直線偏波のアンテナを有する無線ICタグ8は、パッチ導体3Dからの直線偏波の無線信号と電界軸方向が一致し、有効的にパッチ導体3Dからの無線信号を受信して通信が可能となる。
また、無線ICタグ8より返信される、タグ情報に従って変調された無線信号は、上記の動作とは逆の動作で偏波変換された後、円偏波の無線信号が質問器20に戻される。従って、当該電波偏波変換共振反射器10Dは円偏波の無線信号を直線偏波の無線信号に変換し、かつその逆の処理を実行する。さらに、電波偏波変換共振反射器10Dの裏面は接地導体2が形成されているために、裏面後方への電波輻射を防止し、その面側を金属体などを含めあらゆる物体に装着することができる。
以上の実施形態においては、左旋回の円偏波の例について説明しているが、右旋回の円偏波についても同様である。その場合において、パッチ導体3D上の無線ICタグ8の最適な位置は、無線ICタグ8を上述のX軸方向と直交したY軸方向に沿って配置することが好ましい。図12において点線は、その場合の配置を示している。
第5の実施形態の第1の変形例.
図17は本発明の第5の実施形態の第1の変形例に係る金属対応無線ICタグ装置50Eの構成及び動作を示す平面図である。図18は図17の金属対応無線ICタグ装置50Eと、質問器20との配置関係及び動作を示す、図17のF−F’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。当該第1の変形例においては、金属対応無線ICタグ装置50Eは電波偏波変換共振反射器10Eを備え、質問器20から直線偏波の無線信号が到来したときの動作について以下に説明する。
図18において、質問器20からの直線偏波の無線信号は、図18の上下方向に電界Eiが変動するものとする。電波偏波変換共振反射器10Eが存在しない場合、質問器20からの直線偏波の無線信号Eiは無線ICタグ8と直交するため信号強度が比較的大きい場合であっても無線ICタグ8は動作不可能である。
次いで、電波偏波変換共振反射器10Eを、質問器20からの送信信号に対して無線ICタグ8の後方に配置した場合においては、質問器20からの直線偏波の無線信号は直交した無線ICタグ8には直接には作用せず、電波偏波変換共振反射器10Eに到達する。質問器20からの無線信号の電界成分EiはY軸と平行な共振軸RA22により平面回路共振し、その結果、正方形状のパッチ導体3E上に、電界Eiと平行したY軸に沿った電流Iraを発生する。ここで、電流Iraは、ストリップ導体11を含む位相調整伝送線路を介してパッチ導体3Eの+X軸側の端部に流れ込み、パッチ導体3EにおいてX軸方向に流れ、当該X軸に沿った電流をIrbとする。ここで、ストリップ導体11の線路長を例えばλg/4とすれば、パッチ導体3E上で電流IraとIrbは直交し、電流Irbは電流Iraに比べて90度遅れた電流となる。当該パッチ導体3E上を流れる電流はそれに平行した電界成分を放射する。電流Ira及びIrbに対する放射電界をそれぞれ電界成分Era及びErbとすると、電界成分Erbは電界成分Eraに対して位相が90度遅れた電界成分となる。その結果、2つの電界成分EraとErbによる合成電界成分Ecは円偏波となり、回転しながらパッチ導体3Eから再放射されることになる。従って、回転する電界成分はその前方に配置された無線ICタグ8のダイポールアンテナと平行した電界成分を有するため、無線ICタグ8は無線信号を受信して起動する。
これに応答して、無線ICタグ8は、タグ情報に従って無線搬送波をデジタル変調して、その無線信号を電波偏波変換共振反射器10Eを介して質問器20に返信する。ここでは、電波偏波変換共振反射器10Eでは、上記と逆の動作が実行され、質問器20に対して、質問器20から送信された無線信号と同一の直線偏波で返信される。質問器20は無線ICタグ8からの無線信号をデジタル復調してタグ情報を取り出す。質問器20からの直線偏波の無線信号の方向を例えばY軸方向と平行な方向で固定した場合において、図17の無線ICタグ8の位置からパッチ導体3Eの中心Oを中心として回転させれば、上述の円偏波での効果は小さくなるが、無線ICタグ8の放射軸と平行した電界成分が発生するので、無線ICタグ8は起動する。また、電波偏波変換共振反射器10Eの接地導体2側への電波放射はないため、当該無線ICタグ8を接地導体2側を物体への実装面とする金属対応無線ICタグ装置50Eとして実現できる。
第5の実施形態の第2の変形例.
図19は本発明の第5の実施形態の第2の変形例に係る金属対応無線ICタグ装置50Fの構成及び動作を示す平面図である。当該変形例においては、金属対応無線ICタグ装置50Fは電波偏波変換共振反射器10Fを備え、第5の実施形態に比較して、正方形状のパッチ導体3Dに代えて、互いに直交する共振軸RA21,RA22を有する円形状のパッチ導体3Fを形成したことであり、その他の構成及び作用効果は第5の実施形態及びその第1の変形例と同様である。
第6の実施形態.
図20は本発明の第6の実施形態に係る電波偏波変換共振反射装置10Gを備えた金属対応無線ICタグ装置50Gの構成及び動作を示す平面図である。図21は図20のG−G’線についての縦断面図である。第6の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Gは電波偏波変換共振反射装置10Gを備え、第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50に比較して、誘電体基板1上に図1のパッチ導体3と同様の構成を有する2個のパッチ導体3P、3Qを有し、これら2個のパッチ導体3P,3Qをλg/2の電気長(なお、λg/2の奇数倍の電気長であってもよい。)を有しストリップ導体12を含むマイクロストリップ線路である接続伝送線路により連結したことを特徴としている。
図20において、パッチ導体3Pは切欠部3pa,3pbを有し、互いに直交する共振軸RA31,RA32を有する。また、パッチ導体3Qは切欠部3qa,3qbを有し、互いに直交する共振軸RA41,RA42を有する。パッチ導体3Pの+X軸方向の端部と、パッチ導体3Qの−X軸方向の端部とが、ストリップ導体12を含む接続伝送線路により連結されている。ここで、無線ICタグ8は、例えばパッチ導体3P上であってX軸方向に沿って配置され、無線ICタグ8のアンテナの放射電界軸がX軸方向と平行となるように配置される。
以上のように構成された各パッチ導体3P,3Qによる電波偏波変換及び反射の処理は第1の実施形態と同様であるが、質問器20からの円偏波の無線信号は、パッチ導体3P、3Q上で直線偏波の無線信号を放射する電流が発生し、このとき、2個のパッチ導体3P,3Qにより実質的な伝搬利得をさらに増大できる。当該動作について以下に詳細説明する。
図20において、円偏波の無線信号が電波偏波変換共振反射装置10Gに入射したとき、2つのパッチ導体3P,3Qには、図3を参照して説明したように、パッチ導体3P,3Q上で直線偏波を発生する電流が誘導される。パッチ導体3Pでは、電流Iaが矢印の方向でパッチ導体3P上を流れ、当該電流はパッチ導体3Pとストリップ導体12を介して接続されたパッチ導体3Q上でも流れる。一方、パッチ導体3Qにも同様の電流Ibが発生し、ストリップ導体12を介してパッチ導体3Pにも流れる。ところで、パッチ導体3Pとパッチ導体3Qとを接続する接続伝送線路の線路長は略半波長であるため、当該接続伝送線路を流れる電流は反転し、さらに相手側のパッチ導体3Q又は3Pに流れ込む電流は反転する。そのため、電流Ia及びIbは相手側のパッチ導体3Q又は3P上では同相電流となり互いに強め合う。その結果、いずれかのパッチ導体3P,3Q上に再放射される無線信号は強められ上部に配置された無線ICタグ8に対してより強い無線信号を与える。そのため、当該実施形態では、第1の実施形態に比較して通信距離をより長くすることができる。
以上の実施形態においては、2つのパッチ導体3P,3Qを利用した例を示したが、同様の方法でさらに他のパッチ導体を追加した電波偏波変換共振反射器を形成してもよい。すなわち、複数個のパッチ導体を備え、もしくは複数個の電波偏波変換共振反射器を備え、接続伝送線路における上記通信周波数の管内波長の実質的に1/2の奇数倍の線路長を有する接続伝送線路により、上記複数個のパッチ導体又は電波偏波変換共振反射器を、当該すべての電波偏波変換共振反射器が少なくともいずれかの他の電波偏波変換共振反射器に接続されるように互いに接続する。この場合においても、パッチ導体3P,3Qの裏側には接地導体があるため、金属対応無線ICタグとなる。パッチ導体の個数を増加させたとき、開口面積は増大するので、実質的な伝搬利得を増大できる。
第7の実施形態.
図22は本発明の第7の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Hの構成及び動作を示す平面図である。図23は図22のH−H’線についての縦断面図である。第7の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Hは電波偏波変換共振反射器10Hを備え、上記の実施形態に比較して、それ自身で接地導体2を有しないことを特徴としている。
図22及び図23において、誘電体基板1上に、例えば円形状のパッチ導体3Fを形成しさらにタグ実装台9を介して無線ICタグ8を形成してなる電波偏波変換共振反射器10Hを、その誘電体基板1の裏面が直接に金属板13の表面に装着する。ここで、金属板13の表面は当該電波偏波変換共振反射器10Hの接地導体として動作し、上述と同様の動作で金属対応無線ICタグとなる。この電波偏波変換共振反射器10Hは、それ自身で接地導体を有しないためより簡単に形成できる。
第8の実施形態.
図24は本発明の第8の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Iの構成及び動作を示す裏面図である。図25は図24のI−I’線についての縦断面図である。図24は、電波偏波変換共振反射器10Iの裏面を示している。第8の実施形態において、金属対応無線ICタグ装置50Iは電波偏波変換共振反射器10Iを備える。
図24及び図25において、電波偏波変換共振反射器10Iにおいて、誘電体基板1に代えて誘電体薄膜1Aを形成し、誘電体薄膜1A上に例えば円形状のパッチ導体3Fを形成する。電波偏波変換共振反射器10Iのパッチ導体3Fを下側とし、片側に金属板13(接地導体として動作する)のある誘電体壁14に対して図25のごとく装着する。当該電波偏波変換共振反射器10Iのパッチ導体3Fは誘電体薄膜1Aで被覆され保護されるとともに、誘電体薄膜1Aは例えば各種のラベル等の表示面としても利用できる。無線ICタグ8はその表面に装着される。当該電波偏波変換共振反射器10Iは薄膜で形成できるため、円形状物体等に対しても適用しやすいという特有の作用効果を有する。
第9の実施形態.
図26は本発明の第9の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Jの構成及び動作を示す平面図である。図27は図26のJ−J’線についての縦断面図である。第9の実施形態においては、金属対応無線ICタグ装置50Jは電波偏波変換共振反射器10Jを備える。
第9の実施形態においては、第1の実施形態と同様の形状を有するパッチ導体3を例えば銅版やアルミ箔等の導体薄膜で形成する。なお、パッチ導体3を物体に貼り付けるための接着物を併用してもよい。本実施形態では、裏面に金属板13Aを有する誘電体壁14に対して適用できる。通常の電子機器や情報機器などでは、電磁波の不要輻射を抑圧するため、内側に金属コーティングされたプラスチックの筐体がよく使われる。この場合は、コーティングされた金属部を当該電波偏波変換共振反射器10Jの接地導体として用い、筐体ケースの外側にパッチ導体3のみで構成された電波偏波変換共振反射器10Jを形成し、無線ICタグ8をタグ実装台9を介して設置することができる。例えば、図27において、誘電体壁14はプラスチック等の筺体の壁面でその外側にパッチ導体を配置し、無線ICタグ8を実装する。誘電体壁14に金属板13Aなどの導体がない場合には金属等を筺体内側に設けてもよい。さらに、筺体の誘電体壁14の厚さが不足の場合には、後述する図33及び図34の誘電体スペーサ17を用いてもよい。
第9の実施形態においては、切欠部を有する矩形形状のパッチ導体3を用いたが、本発明はこれに限らず、円形状又は楕円形状、もしくはその他の形状のパッチ導体を用いてもよい。
第10の実施形態.
図28は本発明の第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kの構成及び動作を示す斜視図である。図29は図28の金属対応無線ICタグ装置50Kの詳細を示す拡大図である。本実施形態においては、図28及び図29に示すように、梱包箱15の誘電体壁16上に電波偏波変換共振反射器10Kを実装配置したことを特徴としている。
図30乃至図34は第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kの第1乃至第5の実施例50K−1乃至50K−5の構成を示す縦断面図である。ここで、金属対応無線ICタグ装置50Kの第1乃至第5の実施例50K−1乃至50K−5はそれぞれ、電波偏波変換共振反射器10K−1乃至10K−5を備える。
金属対応無線ICタグ装置50Kの第1の実施例50K−1が図示された図30は、誘電体基板1の片面に接地導体2を形成し、他の片面にパッチ導体3を形成した一体形成型電波偏波変換共振反射器10K−1を誘電体壁16上に実装し、無線ICタグ8を設置した例である。当該電波偏波変換共振反射器10K−1は接地導体2を有するため、無線ICタグ8は梱包箱15に限らずいかなる物体にもそのまま実装でき、金属対応無線ICタグ装置50K−1を形成できる。
金属対応無線ICタグ装置50Kの第2の実施例50K−2が図示された図31は、誘電体基板1上に接地導体を形成せず、誘電体壁16の内側に接地導体2Aを形成した例である。当該電波偏波変換共振反射器10K−2を梱包箱15の誘電体壁16に貼り付け、誘電体壁16の内側に接地導体2Aを設け、パッチ導体3上にタグ実装台9を介して無線ICタグ8を実装配置する。これにより、金属対応無線ICタグ装置50K−2となり、無線ICタグ8の実質的な伝搬利得を増大できる。
金属対応無線ICタグ装置50Kの第3の実施例50K−3が図示された図32は、パッチ導体3のみからなる電波偏波変換共振反射器10K−3を用いた例である。パッチ導体3からなる電波偏波変換共振反射器10K−3は、梱包箱15の誘電体壁16の外側から貼り付け、内側には金属膜等からなる接地導体2Aを形成する。ここで、無線ICタグ8はパッチ導体3上に実装配置する。パッチ導体3からなる電波偏波変換共振反射器10K−3は、梱包箱15の製作時に印刷技術等により、接地導体2Aを形成しておけば容易に作成できる。また、上述のように、梱包箱15や容器等の壁面内部に接地導体2Aの金属箔があればパッチ導体3をその外壁に貼り付け、無線ICタグ8を搭載した電波偏波変換共振反射器10K−3を設置するだけでよい。これにより、金属対応無線ICタグ装置50K−3を形成できる。
金属対応無線ICタグ装置50Kの第4の実施例50K−4が図示された図33は、電波偏波変換共振反射器10K−4に誘電体スペーサ17を用いる方法を示す。例えば、誘電体壁16の厚さが非常に薄ければ、電波偏波変換共振反射器10K−4として十分な効果が得られない場合がある。この場合、誘電体スペーサ17を接地導体2Bとパッチ導体3間に挿入し、誘電体壁16の厚みを増やすことによりその効果を高めることができる。誘電体スペーサ17は誘電体壁16の表側に用いてもよい。これにより、金属対応無線ICタグ装置50K−4を形成でき、これは裏面の電気的影響を受けないため、梱包箱15内の収容物品に関係なく良好な伝搬特性を有する。
金属対応無線ICタグ装置50Kの第5の実施例50K−5が図示された図34は、電波偏波変換共振反射器10K−5は誘電体壁16の外側への出っ張りを少なくするため、電波偏波変換共振反射器10K−5を誘電体壁16の内側に設け、誘電体壁16及びタグ実装台9を介して無線ICタグ8を実装設置した例である。これにより、金属対応無線ICタグ装置50K−5を形成できる。
次いで、本発明者らが行った実験とその結果について以下に説明する。
図35は比較例に係る独立した無線ICタグ8の最大通信距離を質問器20のアンテナ20Aと対向させ測定したときの無線ICタグ8の方位角φを示す平面図である。図36は第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kの最大通信距離を測定したときの方位角φを示す平面図である。図37は発明者らによる図35及び図36の実験結果であって、方位角φに対する最大通信距離を示すグラフである。図35において、独立した無線ICタグ8の方位角φをその上方から見て右回りにとる。また、図36においても、パッチ導体3上に無線ICタグ8を載置した金属対応無線ICタグ装置50についても同様とする。
図37は、第1の実施形態に係る電波偏波変換共振反射器10を用いた金属対応無線ICタグ装置50についての作用効果を示すための実際の利用形態に即した状態での実験結果例である。実験では、独立した無線ICタグ8として、一般的なダイポールアンテナにタグICを実装し、誘電体でモールドされた2.45GHz帯の無線ICタグを用いた。また、タグ通信にとって実用性の高い左旋円偏波を質問器20のアンテナ20Aから送出し、また、タグ取り付け方向の自由度を考慮して、無線ICタグ8を質問器20のアンテナ20Aに対向して回転させ、最大通信距離を測定した。金属対応無線ICタグ装置50は如何なる物体に装着してもよいが、無線ICタグ8自体は装着物体の影響を受けるため、発泡材の表面に貼り付けて比較例として同様の実験を行っている。また、金属対応無線ICタグ装置50に用いた電波偏波変換共振反射器10は、例えば厚さ3mmの発泡材板を誘電体基板1として用いて薄い銅板でパッチ導体3及び接地導体2を形成している。質問器20とこの金属対応無線ICタグ装置50とを対向させ、独立した無線ICタグ8と同様に金属対応無線ICタグ装置50を回転させながら最大通信距離を測定している。
測定結果によれば、図37から明らかなように、無線ICタグ8単独の通信距離に対して、電波偏波変換共振反射器10を用いた金属対応無線ICタグ50は、最大通信距離が約2倍に増大している。この効果は、円偏波が電波偏波変換共振反射器10により直線偏波に変換され無線ICタグに効率よく無線信号が供給された効果分の3dBと、当該電波偏波変換共振反射器10の共振効果による無線信号の電界強化分の3dBによる改善と分析される。なお、無線ICタグ8の回転に伴う最大通信距離の変動は、主として質問器20のアンテナ20Aの軸比によるものである。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、特徴ある平面形の電波偏波変換共振反射器10と、その前方に通常の小型の無線ICタグ8を配置する。そして、無線ICタグ8と電波偏波変換共振反射器10の特有の位置関係により、到来無線信号の偏波変換を行いその再放射電界軸と無線ICタグ8の放射電界軸とを合わせ、無線ICタグ8に有効な無線信号を与える。無線ICタグ8は着脱可能であってその配置関係を変更することにより、異なった偏波に効果的に対応することができる。また、電波偏波変換共振反射器10の平面回路共振により、信号電力密度を高め、より強い無線信号を無線ICタグ8に与える。これにより、無線ICタグ8に係る伝搬利得を実質的に増大し、より長い距離での通信を可能とする。電波偏波変換共振反射器10上に配置する無線ICタグ8は、パッチ導体3の面積に比べてその上に占有する無線ICタグ8との面積比が小さいほど、到来波に対する遮蔽効果が小さいため、小型無線ICタグ8の通信能力の改善効果が大きく得られる。さらに、電波偏波変換共振反射器10を小型無線ICタグ8の背後に設置することにより、無線ICタグ8にとって非常に重要な金属体を含め如何なる物体にも実装できる金属対応無線ICタグ装置50を実現できる。またさらに、特に、無線ICタグ8の取り付けや無線通信の自由度を高める円偏波通信に最適な手段を与えることができる。通常の1つの無線ICタグ8は、利用される生産、物流、流通、修理、廃棄等の過程において、各種の電波偏波変換共振反射器10の利用により、それらに適した形態、性能が得られるため、無線ICタグ8の活用範囲を広め、経済的な無線ICタグ8を実現できる。
本実施形態に係る電波偏波変換共振反射器は、独立して形成できるが、予め、梱包箱や各種機器筐体等の物品に、その外壁を利用し組み込んでおけば、例えば小型で薄い無線ICタグ8をその壁面に装着するだけで、実質的に伝搬利得を増大させ、簡便で実用性の高い無線ICタグ装置50となる。当該金属対応無線ICタグ装置50を利用することにより、RFIDシステムとして用途に合った高性能システムが実現できる。また、将来、他の無線通信装置の超小型化に伴い本発明の実施形態に係る装置を同様に利用できる。
以上の実施形態においては、1層の誘電体基板1を用いているが、本発明はこれに限らず、2層以上の誘電体基板又は誘電体を用いてもよい。
本発明の第1の実施形態に係る電波偏波変換共振反射器10の構成を示す平面図である。 図1のA−A’線についての縦断面図である。 図1の電波偏波変換共振反射器10上に無線ICタグ8を載置してなる金属対応無線ICタグ装置50の構成及び動作を示す平面図である。 図3の金属対応無線ICタグ装置50と、質問器20との配置関係及び動作を示す、図3のB−B’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係る金属対応無線ICタグ装置50の構成及び動作を示す平面図である。 図5の金属対応無線ICタグ装置50と、質問器20との配置関係及び動作を示す、図5のC−C’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。 本発明の第2の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Aの構成を示す平面図である。 図7のD−D’線についての縦断面図である。 図7及び図8の無線ICタグ8の構成及び動作を示す平面図である。 本発明の第3の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Bの構成を示す平面図である。 本発明の第4の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Cの構成を示す平面図である。 本発明の第5の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Dの構成及び動作を示す平面図である。 図12の金属対応無線ICタグ装置50Dと、質問器20との配置関係及び動作を示す、図12のE−E’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。 図12のパッチ導体3D上に無線ICタグ8を載置したときの第1の動作を示す平面図である。 図12のパッチ導体3D上に無線ICタグ8を載置したときの第2の動作を示す平面図である。 図12のパッチ導体3D上に無線ICタグ8を載置したときの第3の動作を示す平面図である。 本発明の第5の実施形態の第1の変形例に係る金属対応無線ICタグ装置50Eの構成及び動作を示す平面図である。 図17の金属対応無線ICタグ装置50Eと、質問器20との配置関係及び動作を示す、図17のF−F’線についての縦断面図及び質問器20の側面図である。 本発明の第5の実施形態の第2の変形例に係る金属対応無線ICタグ装置50Fの構成及び動作を示す平面図である。 本発明の第6の実施形態に係る電波偏波変換共振反射装置10Gを備えた金属対応無線ICタグ装置50Gの構成及び動作を示す平面図である。 図20のG−G’線についての縦断面図である。 本発明の第7の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Hの構成及び動作を示す平面図である。 図22のH−H’線についての縦断面図である。 本発明の第8の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Iの構成及び動作を示す裏面図である。 図24のI−I’線についての縦断面図である。 本発明の第9の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Jの構成及び動作を示す平面図である。 図26のJ−J’線についての縦断面図である。 本発明の第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kの構成及び動作を示す斜視図である。 図28の金属対応無線ICタグ装置50Kの詳細を示す拡大図である。 第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kにおける第1の実施例50K−1の構成を示す縦断面図である。 第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kにおける第2の実施例50K−2の構成を示す縦断面図である。 第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kにおける第3の実施例50K−3の構成を示す縦断面図である。 第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kにおける第4の実施例50K−4の構成を示す縦断面図である。 第10の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50Kにおける第5の実施例50K−5の構成を示す縦断面図である。 比較例に係る無線ICタグ8の最大通信距離を測定したときの無線ICタグ8の方位角φを示す平面図である。 第1の実施形態に係る金属対応無線ICタグ装置50の最大通信距離を測定したときの金属対応無線ICタグ装置50の方位角φを示す平面図である。 発明者らによる図35及び図36の実験結果であって、方位角φに対する最大通信距離を示すグラフである。 従来技術に係る一般的な独立した無線ICタグ8の構成を示す平面図である。 図38のタグIC8aの構成を示すブロック図である。
符号の説明
1…誘電体基板、1A…誘電体薄膜、2,2A,2B…接地導体、3,3A,3B,3C,3D,3E,3F,3P,3Q…パッチ導体、3S…スロット、3a,3b,3c,3d,3pa,3pb,3qa,3qb…切欠部、3e…突出部、8…無線ICタグ、8a…タグIC、8b…ダイポールアンテナ、8c…誘電体基板、9…タグ実装台、10,10A、10B,10C,10D,10E,10F,10H,10I,10K,10K−1,10K−2,10K−3,10K−4,10K−5…電波偏波変換共振反射器、10G…電波偏波変換共振反射装置、11…位相調整ストリップ導体、12…接続ストリップ導体、13,13A…金属板、14…誘電体壁、15…梱包箱、16…誘電体板、17…誘電体スペーサ、20…質問器、20A…アンテナ、30…非同期MPU、31…不揮発性メモリ、32…電源再生回路、33…高周波通信回路、34…外部通信ポート、50,50A,50B,50C,50D,50E,50F,50G,50H,50I,50J,50K−1,50K−2,50K−3,50K−4,50K−5…金属対応無線ICタグ装置、RA1,RA2,RA11,RA12,RA21,RA22,RA31,RA32,RA41,RA42…共振軸。

Claims (1)

  1. 直線偏波の電界放射成分を有する無線ICタグと、
    互いに実質的に平行な第1と第2の面を有する誘電体と、
    上記誘電体の第1の面上に設けられた接地導体と、
    上記誘電体の第2の面上に設けられ、互いに直交する第1と第2の共振軸の各両端で開放境界となり、上記第1と第2の共振軸でそれぞれ所定の第1と第2の共振周波数で平面回路共振するパッチ導体からなる電波変換共振反射器とを備え、
    上記無線ICタグの直線偏波の電界放射成分の方向と、上記電波変換共振反射器の1つの共振軸とが互いに実質的に一致するように、上記無線ICタグを上記電波変換共振反射器の誘電体の第2の面上又は上記パッチ導体上に設け、
    上記第1の共振周波数と、上記第2の共振周波数と、上記第1の共振周波数と上記第2の共振周波数との間の周波数のうちのいずれかである通信周波数を有して受信波として入射する第1の無線信号を上記パッチ導体で平面回路共振させ、第2の無線信号に変換して上記無線ICタグに反射させ、上記無線ICタグからの上記通信周波数を有する第3の無線信号を上記パッチ導体に平面回路共振させ、第4の無線信号に変換して送信波として反射するように構成したことを特徴とする金属対応無線ICタグ装置。
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