JP4235009B2 - センサ回路付切削工具およびその製造方法 - Google Patents

センサ回路付切削工具およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は切削加工に使用する切削工具とその製造方法に関し、特に切刃の摩耗を検知するセンサラインを設けた切削工具とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、切削工具の熱的、機械的、電気的変化を利用して切削工具の寿命を検知する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、母材表面の逃げ面の切刃部分に沿って一定幅のセンサライン(薄膜回路)を形成したスローアウェイチップを作製し、該チップで被削材を切削しながらセンサラインの電気抵抗を測定することにより、工具寿命を判定する方法が開示されている。また、本出願人は、特許文献2にて、センサラインを含むセンサ回路の形成方法として母材表面に薄膜形成法により導電膜を成膜した後、レーザー加工によりセンサ回路パターンに加工する方法を開示した。
【0003】
〔特許文献1〕
特開2000−94272号公報
〔特許文献2〕
特開2001−121308号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献2のように、薄膜形成法で被覆した導電膜をレーザー加工により加工して配線パターン(センサ回路)を形成する方法ではレーザー加工面が凹曲面になってしまうことから、加工幅が500μm程度、加工深さが2μm程度の幅広な加工を行う場合には複数条に分けて数回加工することになり、図5に示すように、加工面60の面粗度が低くなるために切削時に切屑がこの加工面に当たると切屑の排出性が悪くなり、切屑が加工面に溶着して溶着部が最終的に欠損する恐れがあったり、溶着した切屑がセンサ回路間を橋渡しして回路が部分的に短絡したりする恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、切削時の切屑によっても溶着によるセンサ回路の短絡や欠損が発生しない、安定した切削が可能なセンサ回路付切削工具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に対しセンサ回路の加工方法について検討した結果、加工精度および加工面粗度を高めることができる研磨加工方法である先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かす方法によってセンサ回路のバフ研磨を行い、配線パターン間表面の算術平均粗さ(Ra)を0.1μm以下に制御することによって、切削時の切屑によっても溶着によるセンサ回路の短絡や欠損が発生しない、安定したセンサ検知機能および高寿命な切削が可能となることを知見した。
【0007】
すなわち、本発明のセンサ回路付切削工具は、母材表面に、先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かす方法によって前記導電膜をバフ研磨してセンサ回路を形成した導電膜を少なくとも含む硬質被覆膜を形成し、前記研磨加工された配線パターン間表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記配線パターンの断面の厚みが配線パターン断面の端部に向かって漸減する、すなわち配線パターンの断面形状が両端に裾野を引くような略台形形状からなることにより、配線パターン端部境界での段差が無くなり、その段差を起点とする配線パターンの破壊や、剥離が少なくなるという効果がある。
【0009】
また、前記母材が導電性母材からなり、該母材と前記導電膜との間に絶縁膜を介装してなるとともに、該絶縁膜の表面の一部のみを前記研磨加工によって除去し、母材全体が絶縁膜によって覆われた状態を維持することにより、隣り合う配線パターン間の導電膜を確実に絶縁することができ、隣り合う配線パターン間での導通をなくしてセンサ機能を安定化することができるという効果がある。
【0010】
さらに、本発明によれば、隣接する前記配線パターン間の間隔が50〜3000μmで、かつ前記配線パターンを形成する導電膜の膜厚が0.5〜5μmである場合に、特に有効にセンサ回路による加工面の面粗度および加工精度に優れた加工が可能となる。
【0011】
また、本発明のセンサ回路付切削工具の製造方法は、母材表面に絶縁膜と導電膜を含む硬質被覆膜を形成し、前記絶縁膜表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下となるように先端部に平坦面のある砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かして前記導電膜の一部を研磨加工して導電膜からなる配線パターンを形成することによってセンサ回路を形成することを特徴とするものである。
【0012】
ここで、前記研磨加工方法が、バフ研磨であることが、加工面精度を精密に制御できる点で望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の切削工具の好適例であるスローアウェイチップの一例について、その概略斜視図である図1((a)手前上方からみた斜視図、(b)手前下方から見た斜視図)、および図1のスローアウェイチップ1の要部拡大断面図である図2を基に説明する。
【0014】
図1によれば、スローアウェイチップ1は、略平板状(図1では略直方体形状)を呈する母材2の一方の主面にすくい面5、他方の主面に着座面6を、側面に逃げ面7を形成し、すくい面5と逃げ面7との交差稜部分、特に図1のような主面が多角形状の場合には、逃げ面7が複数の平面からなり、すくい面5と隣接する2つの逃げ面7とが交差するコーナー部8に切刃9が形成されている。
【0015】
また、図1によれば、逃げ面7の切刃9近傍に該切刃9に沿って平行に導電帯からなるセンサライン10が設けられており、センサライン10の形成位置と幅によって、工具寿命(摩耗量)の許容摩耗幅を規定することができる。
【0016】
そして、例えば、センサライン10の逃げ面7の内側端部10aの位置を切刃9の寿命基準量(切刃9の摩耗限界幅)、例えば0.05〜0.7mmに一致させておき、該切刃9にて切削加工を行うことにより、該切刃9の近傍に形成されたセンサライン10の少なくとも一部が摩耗等の損傷により断線した時点で、センサライン10間、すなわちセンサ回路13が断線され、該センサ回路13の両端に形成された一対の接続端子22,22間の抵抗値を測定することによって、切刃9の寿命を検知することができる。
【0017】
ここで、本発明によれば、スローアウェイチップ1の要部断面図である図2に示すように、母材2の表面に、研磨加工によりセンサ回路13とした導電膜16を少なくとも含む硬質被覆膜15を形成し、研磨加工されたセンサ回路13間(以下、回路間加工部と称す。)11表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、特に0.05μm以下、さらに0.03μm以下、さらには0.01μm以下であることが大きな特徴であり、これによって、切削時の切屑によっても溶着によるセンサ回路の短絡や欠損が発生しない、安定したセンサ検知機能および高寿命な切削が可能となる。
【0018】
ここで、上記のような平滑性の高い回路間加工部11を得るためには、母材2表面に少なくとも導電膜16を含む硬質被覆膜15を形成し、先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かす方法によって導電膜16表面の一部を算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下となるように図3に示すようにバフ研磨して導電膜16からなる配線パターンを形成することによってセンサ回路を形成する方法により可能であり、また、前記研磨加工方法はバフ研磨、すなわち、先端部に布やゴム等の柔らかい材質マトリックス中にダイヤモンド砥粒等の硬質粒子を分散させた砥石100を有する棒状の研磨部材101を自転させながらセンサ回路パターンに従って動かす方法によって加工することが重要である。この方法によれば、砥石100が柔らかい材質のマトリックスを具備するために、砥石100自体が図3に示すように変形して、加工底面の平坦度を向上せしめることができるとともに、加工面の面粗度を向上せしめることができる。なお、研磨加工による加工面には砥石100の動作とともに移動する砥粒の軌跡が転写されるが、本発明によれば加工面の面粗度が算術平均表面粗さ(Ra)で0.1μm以下と小さいために砥粒の軌跡は切屑の排出性に悪影響を与えることはない。
【0019】
また、上記バフ研磨による加工方法によれば、図3に示すように、加工底面の端部において砥石が滑らかに湾曲するような形状に変形することから、センサ回路13の配線パターンを、図3に示すような、断面の厚みが配線パターンの断面端部16aに向かって漸減する、すなわち、なだらかな裾野を引いた形状とすることができ、これによって、配線パターン端部境界での段差が無くなり、その段差を起点とする破壊や、剥離が少なくなるという効果がある。
【0020】
さらに、母材2が導電性母材2aからなり、母材2aと導電膜16との間に絶縁膜17を介装してなるとともに、絶縁膜17の表面から一部の厚み領域のみを前記バフ研磨によって除去すること、すなわち、導電性母材2aが表面に露出しないように絶縁膜17にて導電性母材2a表面を全面にわたって覆うことにより、隣り合うセンサ回路間の導電膜を確実に絶縁して隣り合う配線パターン間での導通をなくし、センサ機能を安定化することができるという効果がある。
【0021】
なお、本発明によれば、隣接する前記配線パターン間の間隔、すなわち回路間加工部11の幅が50〜3000μmである場合に、特に有効にセンサ回路13による加工面の面粗度および加工精度に優れた加工が可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、特に耐欠損性等の切削性能を高める上では、図2に示すように、チップ1のすくい面5と逃げ面7との交差稜部分において、少なくとも切刃9をなす部分における硬質被覆膜15の膜厚が他の部分における膜厚よりも薄くなるように形成されていることが望ましい。
【0023】
一方、図1によれば、一対の接続端子22,22(22’、22’)を着座面6(6’)に形成しており、これによって、センサ回路13を着座面6と接するチップホルダ20に形成した一対の検知回路21に容易に接続できる。
【0024】
また、図1によれば、一方の接続端子22とセンサライン10との間は逃げ面7に形成された第1の側面ライン24を介して接続され、またセンサライン10の他方端はすくい面5に形成されたすくい面ライン25と接続され、さらにすくい面ライン25と他方の接続端子22との間は逃げ面7に形成した第2の側面ライン28を介して接続されている。つまり、図1によれば、センサ回路13は、第1の接続端子22−第1の側面ライン24−センサライン10−すくい面ライン25−第2の側面ライン28−第2の接続端子22と経由される。
【0025】
さらに、図1によれば、一対の接続端子22,22(22’、22’)を隣接して形成しており、これによって、一対の接続領域22,22と接続される外部端子30,30の位置決めが容易にできる。
【0026】
なお、図1によれば、逃げ面7に形成された第1の側面ライン11および第2の側面ライン28は、センサ回路13の接続端子22,22の配置位置と、該センサ回路13の接続端子22,22の反対面に対をなして点対称に存在する他のセンサ回路13’の接続端子22’、22’の配置位置とが主面上の同じ位置となるように配置されており、ともに後述する図4のチップホルダ20の同じ外部端子30に接続できるように、センサライン10に対して(換言すれば切刃9に対して)、直交方向ではなく、所定の傾斜角度を有するように配設されている。
【0027】
また、本発明によれば、スローアウェイチップ1の形状としては、図1に示すように主面(すくい面5および着座面6)が正方形に限定されるものではなく、円形、楕円形、正三角形等の他の正多角形、平行四辺形、菱形等が適応可能であり、また、スローアウェイチップ1の断面形状は長方形に限定されるものではなく、台形形状であってもよい。また、図1〜3においては、ネガタイプのスローアウェイチップについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一方の主面のみをすくい面とするポジタイプのスローアウェイチップ、ドリルやエンドミル等の先端に切刃を有する切削工具、およびソリッド工具についても適応可能である。
【0028】
さらに、図1によれば、母材2の中央には、母材2を貫通するクランプ孔19が形成されており、図1のスローアウェイチップ1をチップホルダ20に取り付ける図4の一例に示すように、スローアウェイチップ1は、クランプ孔19にクランプねじ44が螺合されるか、もしくは、金具(図示せず)にてすくい面5側から押さえられることによりチップホルダ20等に装着される。
【0029】
また、図4によれば、チップホルダ20の先端にはチップ装着用のポケット41が形成されている。ポケット41の底面はチップ座42となっている。またポケット41の側面はチップの側面に当接し、チップを拘束するための拘束面43となっている。スローアウェイチップ1はこのポケット41に納められ、着座面6がチップ座42に、また、チップ1の側面が拘束面43に当接される。そして上方からクランプねじ44がスローアウェイチップ1のクランプ孔19に差し込まれて、その先端がチップ座42の中央に形成されたねじ孔45に螺合されることによりスローアウェイチップ1はチップホルダ20に装着される。
【0030】
さらに、チップ座42には、装着されたスローアウェイチップ1の切削に使用するコーナー部に設けられたセンサライン10と接続された一方の接続端子22,22に対向する位置に、例えば、上方へ弾力付勢され、チップ座42から数mm突出した一対の外部端子30,30が突設されている。そして、スローアウェイチップ1がポケット41に装着されると、スローアウェイチップ1の着座面6によって外部端子30,30は押し下げられ、外部端子30,30の上端はチップ座42と面一となる。このとき外部端子30,30の上端はスローアウェイチップ1の着座面6に設けられた一対の接続端子22,22とそれぞれ電気的に接触した状態となる。
【0031】
また、図4によれば、外部端子30,30には、点線で示すように、チップホルダ20内に配設されたリード線48がつながれていて、このリード線48はオーム計等の抵抗値の検知回路21に接続されており、これによりポケット41に装着されたスローアウェイチップ1の切刃9に設けられたセンサライン10の抵抗値を測定することができる。
【0032】
なお、図4の装着状態では、例えばスローアウェイチップ1のコーナー部8Aの切刃9が切削に用いられる。そして、コーナー部8Aの切刃9が摩耗した場合には、クランプねじ44や押さえ金具を緩めて、すくい面5の中央を中心にしてスローアウェイチップ1を90°回転させて、コーナー部8Aと隣接する別のコーナー部8Bを切刃9として切削に使用できる。このようにスローアウェイチップ1を90°ずつ回転させて、チップ1の一方の主面側の4つのコーナー部を順次切削に使用することができる。さらに、スローアウェイチップ1の上下を反転させてホルダ等に装着すれば、他主面の4つのコーナー部(8C等)を順に切削に使用することができ、合計8つのコーナー部8を使用することができる。なお、他方の主面のコーナー部8を使用する場合は、すくい面5と着座面6が逆転して機能する。
【0033】
一方、スローアウェイチップ1の母材2としては、アルミナ質焼結体、窒化珪素質焼結体、サーメット、超硬合金、立方晶窒化ホウ素質焼結体(CBN/Cubic Boron Nitride)、ダイヤモンド焼結体(PCD/PolyCrystalline Diamond)等が好適に使用できる。
【0034】
他方、センサライン10、接続ライン(一対の接続端子22,22、第1および第2の接続ライン24、28、折り返しライン25)等のセンサ回路13を形成する導電膜16は、スローアウェイチップ1の母材2に対する接合力が強いこと、被削材と反応せず、センサライン10の電気抵抗値が常に所定値を示し、スローアウェイチップ1の摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること、被削材の加工表面に反応生成物が発生しにくいこと、耐酸化性に優れ、酸化物生成によるセンサライン10の電気抵抗値の変化がなく、スローアウェイチップ1の摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること等の理由から、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等の4a、5a、6a族金属、Co、Ni、Fe等の鉄族金属、あるいはAlなどの金属材料やTiC、VC、NbC、TaC、Cr、MoC、WC、WC、TiN、VN、NbN、TaN、CrN、TiCN、VCN、NbCN、TaCN、CrCN等の4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、(Ti、Al)Nの群から選ばれる少なくとも1種、特にTiN、(Ti、Al)N、(Ti、Al)CNの群から選ばれる少なくとも1種、さらにはTiNが好適である。
【0035】
また、絶縁膜17としては、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等の周期律表4a、5a、6a族金属、Co、Ni、Fe等の鉄族金属、あるいはAlなどの金属材料やTiC、VC、NbC、TaC、Cr、MoC、WC、WC、TiN、VN、NbN、TaN、CrN、TiCN、VCN、NbCN、TaCN、CrCN等の周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、(Ti、Al)Nの群から選ばれる少なくとも1種で形成される。この中でも、TiNは被削材と反応せず、センサの電気抵抗値が常に所定値を示し、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること、被削材の加工表面に反応生成物による傷が形成されるのを有効に防止できること、耐酸化性に優れ、酸化物生成によるセンサの電気抵抗値の変化がなく、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること等の理由から好適に使用し得る。
【0036】
また、導電膜16の厚みは、0.05〜20μmであることが、スローアウェイチップの摩耗度合いや欠損を正確に検出するためにセンサの電気抵抗を得ることができるとともに、導電膜16中への応力の発生を抑制し、導電膜16の密着性を高める点で望ましい。さらに、導電膜16は、CVD法やイオンプレーティング、スパッタリング、蒸着等のPVD法、めっき法等を採用することによってスローアウェイチップ1の母材2のほぼ全面に所定厚み被着形成される。
【0037】
さらに、下地膜18としては、図2に示すように、絶縁膜17と導電性母材2との間に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物、Alの酸化物や、TiAlの窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種を単層または複数層として0.1〜10μmの厚みで形成することができる。特に、導電性母材2aと絶縁膜17との付着強度を上げる上では、絶縁膜17の直下に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちのいずれか1種以上による単層または複数層を設けることが望ましい。なお、切削性能向上のためには、Alの酸化物、TiAlの窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種を0.1μm〜10μmの厚みで単層または複数層で形成することが望ましい。その場合は、この層と絶縁膜17との間に上記Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物の単層または多層を介在させることが望ましい。また、これらの下地膜18は、CVD法やイオンプレーティング、スパッタリング等のPVD法群から選ばれる少なくとも1種の成膜法によって形成される。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
導電性母材として、Co:8重量%、Ta:5重量%、Ti:3重量%、残部がWCからなる超硬合金(25℃における体積固有抵抗値5×10−5Ω・cm)を準備し、母材の切刃にブラシを用いて曲率半径0.08mmのホーニングRをつけた。
【0039】
その表面に、CVD法で、TiN(1μm)−TiCN(5μm)−TiC(2μm)−Al(2μm)の材質および膜厚の構成からなる硬質被覆膜を成膜した。ここで、CVD法の成膜条件は、TiC、TiCNおよびTiNについてはTiCl、N、H、CH、CHCNを用いて炉内温度800℃以上で成膜し、また、酸化アルミニウム(Al)膜については、キャリアガスとしてHを用い、反応ガスとしてCO、HCl、AlClを用い、成膜温度1000℃、炉内圧力は10kPa、成膜時間90分で、1層毎に一旦降温させながら3層成膜した。
【0040】
その後、アークイオンプレーティング法でTiNからなる導電膜を膜厚:1μmで成膜した後、導電膜の表面から、先端部に布の柔らかい材質マトリックス中にダイヤモンド砥粒等の硬質粒子を分散させた砥石(直径1mmφ)を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って動かす方法を用いて、加工ライン(回路間加工部)幅:1000μm、加工深さ:1.5μmの加工を施してセンサ回路を作製し、切刃の硬質被覆層の一部を研磨除去してCNMG120408形状のセンサ回路付きスローアウェイチップを作製した。
【0041】
得られた損耗センサ回路つきスローアウェイチップについて、回路間加工部付近の断面を走査型電子顕微鏡(SEM 日本電子製JSM−6340F製)にて観察し、導電膜の研磨状態を測定したところ、回路間加工部は平滑な底面を有していることが確認され、また、導電膜(配線パターン)の断面の厚みが端部に向かって連続的に漸減する形状(図3の16a)であった。また、回路間加工部について、JIS B0601−2001に準じて算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、0.05μmであった。
【0042】
さらに、得られたチップについて以下の条件によってチップのセンサ機能の評価およびチップの耐欠損性の評価を行った。なお、切削性能の評価として、以下の切削条件下での切削試験を行った。
【0043】
≪切削条件≫
切削速度 250m/min
送り 0.3mm/rev
切り込み 2.0mm
被削材 SCM435
切削状態 切削液あり(ソリューション)
評価結果
2分間切削して逃げ面において切屑が衝突した箇所のセンサ回路と母材間で切屑の溶着によりセンサ回路間の短絡や絶縁膜が剥離して母材とセンサ回路が短絡し電気抵抗値が低下しないか調査した。
【0044】
この結果、センサ回路と母材間の電気抵抗値が2000kΩ以上であり、センサ回路付近に溶着が発生することなく良好なセンサ性能を示し、耐溶着性が良いことがわかった。
【0045】
(比較例)
実施例1のスローアウェイチップに対して、センサ回路の加工方法として、実施例1のバフ研磨に代えて、下記条件でのレーザー加工によって回路を形成する以外は、実施例と同様にセンサ回路付スローアウェイチップを作製した。
【0046】
<レーザー加工条件>
波長:1.06μmのYAGレーザ
周波数:5〜35kHz
出力電流:8.0〜20.0A
1回の走査での加工幅:40〜60μm
描画スピード:50〜300mm/s
実施例と同様に回路間加工部付近の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、導電膜の研磨状態を測定したところ、回路間加工部は図5のような波をうった底面を有していることが確認され、また、導電膜(配線パターン)の底面の端部には図5のように複数筋のレーザー加工を行ったことによりエッジに加工筋のある加工面となっていた。また、回路間加工部表面の算術平均粗さ(Ra)は0.3μmであった。さらに、実施例と同じ切削試験を行ったところ、センサ回路と母材間の電気抵抗値が1000Ωと、センサ膜が溶着により部分的に悪くなり、耐溶着性が悪いことがわかった。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明の切削工具によれば、先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かす加工精度および面粗度が高いバフ研磨を用いてセンサ回路の加工を行い、センサ回路間の導電膜が欠如した表面領域を算術平均表面粗さ(Ra)が0.1μm以下となるように制御することによって、加工精度および面粗度の高い幅広な加工面とすることができ、切削時の切屑によっても溶着によるセンサ回路の短絡や欠損が発生しない、安定したセンサ検知機能および高寿命な切削が可能となる。
【0048】
また、本発明の切削工具の製造方法によれば、絶縁膜表面の算術平均粗さが0.1μm以下となるように先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かす加工精度および面粗度が高いバフ研磨によって導電膜を研磨除去して配線パターンを形成することから、加工精度および面粗度の高い幅広な加工面とすることができ、切削時の切屑によっても溶着によるセンサ回路の短絡や欠損が発生しない、安定したセンサ検知機能および高寿命な切削が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンサ回路付切削工具の好適例であるスローアウェイチップの一例についての(a)手前上方からみた斜視図、(b)手前下方からみた斜視図である。
【図2】図1のスローアウェイチップの要部拡大図である。
【図3】本発明のセンサ回路付切削工具について、センサ回路の加工方法の一例を説明するための模式図である。
【図4】図1のスローアウェイチップを、チップホルダへ装着する一例を説明するための概念図である。
【図5】従来のセンサ回路付切削工具の回路間加工部(研磨加工されたセンサ回路間)の加工面状態を説明するための図である。
【符号の説明】
1 スローアウェイチップ
2 母材
2a 導電性母材
5 すくい面
6 着座面
7 逃げ面
8 コーナー部
9 切刃
10 センサライン
10a 逃げ面7の内側端部
11 回路間加工部(研磨加工されたセンサ回路間)
13 センサ回路
14 接続端子
15 硬質被覆膜
16 導電膜
17 絶縁膜
18 下地膜
19 クランプ孔
20 チップホルダ
21 検知回路
22 接続端子
24 第1の側面ライン
25 すくい面ライン
28 第2の側面ライン
30 外部端子
41 ポケット
42 チップ座
43 拘束面
44 クランプねじ
45 ねじ孔
48 リード線
50 保護膜
100 砥石
101 研磨部材

Claims (5)

  1. 母材表面に、センサ回路とした導電膜を少なくとも含む硬質被覆膜を形成し、先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かす方法によって前記導電膜をバフ研磨して前記センサ回路を作製し、前記配線パターン間表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であることを特徴とするセンサ回路付切削工具。
  2. 前記配線パターンの断面の厚みが該配線パターン断面の端部に向かって漸減することを特徴とする請求項1記載のセンサ回路付切削工具。
  3. 前記母材が導電性母材からなり、該母材と前記導電膜との間に絶縁膜を介装してなるとともに、該絶縁膜が前記導電性母材表面の全面を覆って残存するように該絶縁膜の表面から一部の厚み領域のみを前記研磨加工によって除去することを特徴とする請求項1または2記載のセンサ回路付切削工具。
  4. 隣接する前記配線パターン間の間隔が50〜3000μmで、かつ前記配線パターンを形成する導電膜の膜厚が0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のセンサ回路付切削工具。
  5. 母材表面に絶縁膜と導電膜とを含む硬質被覆膜を形成し、前記絶縁膜表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下となるように先端部に平坦面のあるバフ砥石を有する棒状の研磨部材を自転させながらセンサ回路パターンに従って配線パターン間を動かして前記導電膜の一部をバフ研磨して導電膜からなる配線パターンに加工してセンサ回路を形成することを特徴とするセンサ回路付切削工具の製造方法。
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