JP4234878B2 - 無線受信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、占有帯域が異なり、かつ並行して到来した複数の無線周波信号が合成された受信波を受信し、これら無線周波信号を個別に所定の処理を行う回路に並行して分配する無線受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、移動通信システムは、市場の自由化と複数の通信事業体の競争との下で急速に普及し、多数の加入者が携帯型の端末を利用することによって、通話サービスだけではなく、電子メールその他のデータ通信サービスの提供を受けている。
【0003】
また、従来、多くの移動通信システムには、多元接続方式としてTDMA方式が多く適用されていた。
しかし、次世代の移動通信システムについては、多様な通信サービスの提供と無線周波数の有効利用とが可能であって、秘匿性が高いCDMA方式が積極的に適用され、その実用化にかかわる種々の技術開発が行われている。
【0004】
特に、ワイドバンドCDMA方式の移動通信システムでは、個々の通信事業体に割り付けられた複数(以下では、簡単のため、「4」であると仮定する。)の広い周波数帯に、並行して多様の無線チャネルが形成される。
したがって、このような移動通信システムの無線基地局では、個々の無線チャネルにかかわる受信処理を安価に確度高く実現することを目的として、アンテナが設置された塔の頂部において、上述した複数の周波数帯を介して並行して受信された受信波に周波数変換、レベルの変動分の補償および復調を一括して実現する処理が施されている。
【0005】
図8は、ワイドバンドCDMA方式に適応した無線受信機の構成例を示す図である。
図において、アンテナ81の給電端には、縦続接続された低雑音増幅器82、周波数変換器83、中間周波フィルタ84、AGC部85および直交復調器86が接続される。その直交復調器86の出力は、受信波として並行して到来し得る複数(=4)の無線周波信号の占有帯域に個別に対応したキャリア抽出部87-1〜87-4の入力に並列に接続される。周波数変換器83の局発入力には局部発振器88の出力が接続され、キャリア抽出部87-1〜87-4の出力には上述した占有帯域から個別に抽出された受信波の成分が得られると共に、これらの成分は信号判定、誤り訂正、RAKE受信その他の処理を行う図示されない後段の回路に与えられる。
【0006】
また、AGC部85は、縦続接続された可変利得増幅器89およびA/D変換器(A/D)90と、そのA/D変換器90の出力から可変利得増幅器89の制御端子に亘って負帰還路を形成する利得制御部91とから構成される。
さらに、キャリア抽出部87-1は、縦続接続された周波数シフト部92-1とディジタルフィルタ93-1とから構成される。
【0007】
なお、キャリア抽出部87-2〜87-4の構成については、キャリア抽出部87-1の構成と同じであるので、対応する構成要素に添え番号「1」にそれぞれ代わる「2」〜「4」が付加された同じ符号を付与することとし、ここでは、その説明を省略する。
このような構成の従来例では、アンテナ81には、図9(a) に示すように、5メガヘルツの間隔で隣接して配置され、かつ個別に変調された4つの無線周波信号からなる受信波が到来する。
【0008】
なお、以下では、これらの4つの無線周波信号については、既述のワイドバンドCDMA方式が適用された移動通信システムの加入者が用いる単一または複数の端末装置から到来すると仮定する。
低雑音増幅器82は、この受信波を増幅して周波数変換器83に与える。周波数変換器83および中間周波フィルタ84は、図9(b) に示すように、その受信波と局部発振器88によって生成された局発信号との積として与えられる成分の内、両者の周波数の差fIFに公称周波数が等しく、かつ上述した4つの占有帯域が周波数軸上で保存されつつシフトすることによって得られる中間周波信号を出力する。
【0009】
AGC部85では、可変利得増幅器89およびA/D変換器90は、上述したように負帰還路を形成する利得制御部91と連係することによって、この中間周波信号のレベルを一定に保つ。
直交復調部86は、このようにしてレベルが一定に保たれた中間周波信号を一括して直交復調することによって、互いに直交する2つのチャネルI、Qに対応する復調信号を生成する。
【0010】
キャリア抽出部87-1〜87-4にそれぞれ備えられた周波数シフト部92-1〜92-4とディジタルフィルタ93-1〜93-4とは、図9(c)(1)〜(4) に示すように、それぞれ対応する無線周波信号を周波数軸上で相対的に(−fIF+7.5MHz)、(−fIF+2.5MHz)、(−fIF−2.5MHz)、(−fIF−7.5MHz)に亘ってシフトさせ、かつその周波数軸の原点を中心として±2.5MHzの帯域の成分のみを並行して抽出することによって、これらの無線周波信号に個別に対応した4つのベースバンド信号を生成する。
【0011】
なお、これらのベースバンド信号については、それぞれキャリア抽出部87-1〜87-4の後段に配置され、かつ既述の信号判定処理、誤り訂正処理、RAKE受信処理その他の処理を行う回路に並行して与えられる。
このように図8に示す従来例では、上述した4つの無線周波信号を含む受信波について、レベルの変動分の抑圧、直交復調およびベースバンド信号への変換がアンテナ81の給電端の近傍で一括して行われる。
【0012】
すなわち、これらの無線周波信号に並行してCDMA方式に基づいて形成される無線チャネルの数が広範に増減する場合であっても、無線基地局の空中線系は損失が著しく低い給電線が適用されることなく確実に実現される。
【0013】
したがって、無線基地局が設置されるべき物理的、あるいは地理的な環境にかかわる制約が確実に緩和され、かつワイドバンドCDMA方式の移動通信システムの構築が安価に達成される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来例では、キャリア抽出部87-1〜87-4(ディジタルフィルタ93-1〜93-4)の出力に得られる個々のベースバンド信号のレベルは、CDMA方式に基づいて並行して形成された無線チャネルの数と、その無線チャネルを介して伝送されるべき伝送情報の情報量とに併せて、呼量やトラヒックの分布に応じて大幅に増減する。
【0015】
すなわち、キャリア抽出部87-1〜87-4の後段においてディジタル処理として行われる信号判定、誤り訂正、RAKE受信その他の処理の過程では、このような無線周波信号のレベルの増減に起因して、有効なダイナミックレンジは、ディジタル領域において必ずしも均一には保たれなかった。
したがって、従来例では、特に、個々の無線周波信号の帯域の間における上述した呼量やトラヒックの差が大きいほど、その呼量やトラヒックが大きい無線周波信号に施されるべき既述の処理の過程で無用に丸め誤差が生じ、そのために伝送品質やサービス品質が低下する可能性が高かった。
【0016】
また、このような呼量やトラヒックの差については、チャネル配置やゾーン構成がどのように適正化されても、特定の地域に限って生じた事故その他の事象に応じて生じ得るために、予測および対処が困難であった。
本発明は、構成が大幅に変更されることなく、個々の無線周波信号の間に生じうる広範なレベルの差に柔軟に適応し、これらの無線周波信号をディジタル領域で個別に確度高くベースバンド信号に変換できる無線受信機を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
図1は、本発明に係る第1、3、5の技術の原理ブロック図である。
本発明に係る第1の技術(請求項1に対応)は、占有帯域が異なる複数Nの無線周波信号が合成されてなる受信波を受信し、その受信波のレベルを所定の値に保ちつつ一括して復調し、これらの無線周波信号に個別に対応した異なる帯域に分布する複数Nの復調信号が合成されてなる合成復調信号を出力する一括復調手段11と、一括復調手段1によって出力された合成復調信号に含まれる複数Nの復調信号を個別に共通の帯域に分布する信号として出力する複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nとを備えた無線受信機において、複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nによって個別に出力された信号の電力を並行して所望の精度で規定の値に保つ複数Nのレベル補正手段13-1〜13-Nを備えたことを特徴とする。
【0018】
図2は、本発明に係る第2、4、6の技術の原理ブロック図である。
本発明に係る第2の技術(請求項2に対応)は、占有帯域が異なる複数Nの無線周波信号が合成されてなる受信波を受信し、その受信波のレベルを所定の値に保ちつつ一括して復調し、これらの無線周波信号に個別に対応した異なる帯域に分布する複数Nの復調信号が合成されてなる合成復調信号を出力する一括復調手段11と、一括復調手段11によって出力された合成復調信号に含まれる複数Nの復調信号を個別に共通の帯域に分布する信号として出力する複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nとを備えた無線受信機において、複数Nの復調信号の個々の占有帯域に分布する電力の偏差を求める監視手段21と、複数Nの復調信号の個々の占有帯域について監視手段21によって求められた電力の偏差を取り込み、複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nの後段でこれらの偏差を並行して補正する複数Nのレベル補正手段22-1〜22-Nを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る第3の技術は、本発明に係る第1の技術において、一括復調手段11は、受信波を直交復調し、かつ互い直交する2つのチャネルにそれぞれ対応する合成復調信号を出力し、複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nは、互いに直交する2つのチャネルにそれぞれ対応する2つの信号として、共通の帯域に分布する信号を出力し、複数Nのレベル補正手段13-1〜13-Nは、互いに直交する2つのチャネルにそれぞれ対応する2つの信号のシンボル値あるいは瞬時値の自乗和あるいは和の平均値として、複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nによって個別に出力された信号の電力を識別することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る第4の技術は、本発明に係る第2の技術において、監視手段21は、複数Nの復調信号の占有帯域に分布する単一または複数の周波数の成分の電力を周波数間引きにより求めるFFTを行うことによって、これらの有帯域に分布する電力の偏差を求めることを特徴とする。
本発明に係る第5の技術(請求項1に対応)は、本発明に係る第1の技術において、複数Nのレベル補正手段13-1〜13-Nは、複数Nの復調信号に複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nによってディジタル領域で施される濾波処理に適用されるべき係数を可変することによって、これらの周波数変換手段12-1〜12-Nによって個別に出力された信号の電力を規定の値に保つことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る第6の技術(請求項2に対応)は、本発明に係る第2の技術において、複数Nのレベル補正手段22-1〜22-Nは、複数Nの復調信号に複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nによってディジタル領域で施される周波数変換処理に適用されるべき複素係数の絶対値を可変することによって、これらの復調信号について監視手段21によって求められた電力の偏差を並行して補正することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る第1の技術の無線受信機では、一括復調手段11は、占有帯域が異なる複数Nの無線周波信号が合成されてなる受信波を受信し、その受信波のレベルを所定の値に保ちつつ一括して復調すると共に、これらの無線周波信号に個別に対応した異なる帯域に分布する複数Nの復調信号が合成されてなる合成復調信号を出力する。複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nは、この合成復調信号に含まれる複数Nの復調信号を個別に共通の帯域に分布する信号として出力する。複数Nのレベル補正手段13-1〜13-Nは、これらの周波数変換手段12-1〜12-Nによって個別に出力された信号の電力を並行して所望の精度で規定の値に保つ。
【0023】
すなわち、無線伝送路の伝送特性の変動、並行して送信する送信局の数の増減、適用されたチャネル制御の方式、ゾーン構成、チャネル配置、周波数配置その他に起因して、上述した受信波として到来した複数Nの無線周波信号のレベルが個別に増減する場合であっても、これらのレベルの差が安定に吸収される。
したがって、一括復調手段11が備えられることによって空中線系の構成の低廉化が図られつつ、個々の無線周波信号の帯域に形成される無線チャネルの伝送特性が安定に高く維持される。
【0024】
本発明に係る第2の技術の無線受信機では、一括復調手段11は、占有帯域が異なる複数Nの無線周波信号が合成されてなる受信波を受信し、その受信波のレベルを所定の値に保ちつつ一括して復調すると共に、これらの無線周波信号に個別に対応した異なる帯域に分布する複数Nの復調信号が合成されてなる合成復調信号を出力する。複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nは、この合成復調信号に含まれる複数Nの復調信号を個別に共通の帯域に分布する信号として出力する。
【0025】
また、監視手段21は、上述した複数Nの復調信号の個々の占有帯域に分布する電力の偏差を求める。複数Nのレベル補正手段22-1〜22-Nは、これらの復調信号の個々の占有帯域について監視手段21によって求められた電力の偏差を取り込み、複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nの後段でこれらの偏差を並行して補正する。
【0026】
すなわち、無線伝送路の伝送特性の変動、並行して送信する送信局の数の増減、適用されたチャネル制御の方式、ゾーン構成、チャネル配置、周波数配置その他に起因して、上述した受信波として到来した複数Nの無線周波信号のレベルが個別に増減する場合であっても、これらのレベルの差が安定に吸収される。
したがって、一括復調手段11が備えられることによって空中線系の構成の低廉化が図られつつ、個々の無線周波信号の帯域に形成される無線チャネルの伝送特性は安定に高く維持される。
【0027】
本発明に係る第3の技術の無線受信機では、本発明に係る第1の技術の無線受信機において、一括復調手段11は、受信波を直交復調し、互い直交する2つのチャネルにそれぞれ対応する合成復調信号を出力する。複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nは、これらの2つのチャネルにそれぞれ対応する2つの信号として、共通の帯域に分布する信号を出力する。複数Nのレベル補正手段13-1〜13-Nは、これらの2つの信号のシンボル値あるいは瞬時値の自乗和あるいは和の平均値として、周波数変換手段12-1〜12-Nによって個別に出力された信号の電力を識別する。
【0028】
すなわち、受信波として与えられた複数Nの無線周波信号のレベルは、一括復調手段11が行う直交復調の結果として与えられた2つのチャネルの信号に単純な算術演算が行われることによって確実に得られる。
したがって、上述した無線周波信号が何らかの直交変調方式に基づいて生成された信号である限り、ハードウエアの構成の簡略化が可能となる。
【0029】
本発明に係る第4の技術の無線受信機では、本発明に係る第2の技術の無線受信機において、監視手段21は、複数Nの復調信号の占有帯域に分布する単一または複数の周波数の成分の電力を周波数間引きにより求めるFFTを行うことによって、これらの帯域に分布する電力の偏差を求める。
すなわち、受信波として到来した複数Nの無線周波信号のレベルは、簡便なFFTの下で一括して所望の精度で求められる。
【0030】
したがって、本発明にかかわる無線受信機は、ディジタル信号処理が積極的に適用されることによって、性能が低下することなく実現される。
本発明に係る第5の技術の無線受信機では、本発明に係る第1の技術の無線受信機において、複数Nのレベル補正手段13-1〜13-Nは、複数Nの復調信号に複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nによってディジタル領域で施されるべき濾波処理に適用される係数を可変することによって、これらの周波数変換手段12-1〜12-Nによって個別に出力された信号の電力を規定の値に保つ。
【0031】
すなわち、受信波として到来した複数Nの無線周波信号のレベルの差は、これらの無線周波信号を所望のベースバンド信号として並行して得るために行われるべき濾波処理の過程で並行して吸収される。
したがって、このようなレベルの差が個別に設けられた手段によって圧縮される場合に比べて、ハードウエアの規模の低減および構成の簡略化が図られる。
【0032】
本発明に係る第6の技術の無線受信機では、本発明に係る第2の技術の無線受信機において、複数Nのレベル補正手段22-1〜22-Nは、複数Nの復調信号に複数Nの周波数変換手段12-1〜12-Nによってディジタル領域で施される周波数変換処理に適用されるべき複素係数の絶対値を可変することによって、これらの復調信号について監視手段21によって求められた電力の偏差を並行して補正する。
【0033】
すなわち、受信波として到来した複数Nの無線周波信号のレベルの差は、これらの無線周波信号を所望のベースバンド信号として並行して得るために行われるべき周波数変換処理の過程で並行して吸収される。
したがって、このようなレベルの差が個別に設けられた手段によって圧縮される場合に比べて、ハードウエアの規模の低減および構成の簡略化が図られる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図3は、本発明の第一の実施形態を示す図である。
図において、図8に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与して示し、ここでは、その説明を省略する。
【0035】
本実施形態と図8に示す従来例との構成の相違点は、キャリア抽出部87-1〜87-4に代えて備えられたキャリア抽出部31-1〜31-4の構成にある。
キャリア抽出部31-1とキャリア抽出部87-1との構成の相違点は、ディジタルフィルタ93-1の後段に、既述の互いに直交する2つのチャネルI、Qに対応した乗算器32-11、32-12が配置され、これらの乗算器32-11、32-12の出力に縦続接続された電力測定部33-1、平均化部34-1と、その平均化部34-1の出力が一方の入力に接続され、かつ他方の入力に規定の閾値が与えられた比較器35-1と、その比較器35-1の出力に直結された入力と乗算器32-11、32-12の乗数入力に接続された出力とを有する利得制御部36-1とが備えられた点にある。
【0036】
なお、キャリア抽出部31-2〜31-4の構成については、キャリア抽出部31-1の構成と同じであるので、以下では、対応する構成要素に添え番号「1」に代わる「2」〜「4」が付加された同じ符号を付与することとし、ここでは、その説明を省略する。
以下、本実施形態の動作を説明する。
【0037】
まず、キャリア抽出部31-1〜31-4は、直交復調器86の後段に並列に配置され、かつ並行して同様の処理を行う。
したがって、以下では、これらのキャリア抽出部31-1〜31-4に共通の事項については、添え番号「1」〜「4」に代えてこれらの添え番号の何れにも該当し得る「C」が付加された符号を用いて記述することとする。
【0038】
キャリア抽出部31-Cでは、利得制御部36-Cは、始動時には、初期値として予め設定された同じ乗数(ここでは、簡単のため、「1」であると仮定する。)を乗算器32-C1、32-C2に与える。
一方、これらの乗算器32-C1、32-C2は、このような乗数の如何にかかわらず、ディジタルフィルタ93-Cによって与えられたベースバンド信号にその乗数を乗じることによって、そのベースバンド信号のレベルを調整する。
【0039】
電力測定部33-Cは、このベースバンド信号に含まれ、かつ互いに直交する2つのチャネルI、Qの成分(ここでは、簡単のため、シンボル値であると仮定する。)i、qに対して、
P=i2+q2
の式で示される算術演算を行うことによって、そのベースバンド信号の電力Pを計測する。
【0040】
平均化部34-Cは、この電力Pに平滑処理を施すことによってこのベースバンド信号の平均電力を求める。
比較器35-Cは、上述した乗数が「1」である状態において得られるべきそのベースバンド信号の平均電力の標準値を示す閾値が予め与えられ、かつ平均化部34-Cによって求められた平均電力とこの閾値との差を求める。
【0041】
利得制御部36-1は、上述したように乗算器32-C1、32-C2に与えられるべき共通の乗数をこの差が「0」となる方向に適宜更新する。
すなわち、直交復調器86によってキャリア抽出部31-1〜31-4に並行して与えられる復調信号に含まれる4つの無線周波信号のレベルの差は、乗算器32-C1、32-C2、電力測定部33-C、平均化部34-C、比較器35-Cおよび利得制御部36-Cによって行われる既述のフィードバック制御の下で、確度高く圧縮される。
【0042】
したがって、本実施形態によれば、これらの4つの無線周波信号が塔頂部で一括して直交復調されることによって空中線系の低廉化が図られつつ、従来例において生じていた伝送品質やサービス品質の劣化が大幅に、あるいは確度高く軽減される。
なお、本実施形態では、キャリア抽出部31-1〜31-4では、フィードバック制御に基づいて個々の無線周波信号のレベルの偏差が圧縮されている。
【0043】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、フィードフォワード制御に基づいて同様に個々の無線周波信号のレベルの偏差が圧縮されてもよい。
また、本実施形態では、電力測定部33-Cは、上式に示す算術演算を行うことによってベースバンド信号の電力Pを算出している。
しかし、このような電力Pは、例えば、図4に網掛けを付して示すように、互いに直交する2つのチャネルI、Qに個別に対応した絶対値取得部41-C1、41-C2 と、これらの絶対値取得部41-C1、41-C2の出力端において和をとる加算器42-Cとが既述の電力測定部33-Cに代えて備えられることによって、
P≒i+q
の式で示すように近似値として算出されてもよい。
【0044】
図5は、本発明の第二の実施形態を示す図である。
図において、図3に示す実施形態との構成の相違点は、キャリア抽出部31-1〜31-4に代えてキャリア抽出部51-1〜51-4が備えられ、かつ直交復調器86の出力に直列に接続され、これらのキャリア抽出部51-1〜51-4の利得制御入力に個別に接続された4つの出力を有する電力監視部52が備えられた点にある。
【0045】
キャリア抽出部51-1とキャリア抽出部31-1との構成の相違点は、電力測定部33-1、平均化部34-1、比較器35-1および利得制御部36-1が備えられず、かつ乗算器32-11、32-12の乗数入力が上述した利得制御入力として電力監視部52の対応する出力に接続された点にある。
電力監視部52は、初段に配置された周波数解析部(FFT)53と、その周波数解析部53の後段に配置された平均化部54と、一方の入力がその平均化部54の出力に接続され、かつ他方の入力に所定の閾値が定数として与えられた比較器55と、その比較器55の後段においてキャリア抽出部51-1〜51-4の利得制御入力に後述する4つの乗数を並行して与える利得制御部56とから構成される。
【0046】
以下、本実施形態の動作を説明する。
まず、キャリア抽出部51-1〜51-4は、直交復調器86の後段に並列に配置され、かつ並行して同様の処理を行う。
したがって、以下では、これらのキャリア抽出部51-1〜51-4に共通の事項については、添え番号「1」〜「4」に代えてこれらの添え番号の何れにも該当し得る「C」が付加された符号を用いて記述することとする。
【0047】
電力監視部52では、周波数解析部53は、直交復調器86によって与えられた復調信号の成分の内、既述の2つのチャネルI、Qの信号のベクトル和をとることによってスカラー復調信号を生成し、そのスカラー復調信号を高速フーリエ変換することによって、既述の4つの無線周波信号の占有帯域の電力を周波数スペクトラムとして求める。
【0048】
平均化部54は、これらの電力に所定の平滑化処理を施すことによって、上述した4つの無線周波信号の平均電力を求める。
比較器55はこれらの4つの平均電力と規定の閾値との差分を並行して求め、利得制御部56はキャリア抽出部51-C(乗算器32-C1、32-C2)に、これらの差分が圧縮される値の乗数を並行して与える。
【0049】
すなわち、4つの無線周波信号に対応して復調信号に含まれる成分の電力は、周波数解析部53が行う高速フーリエ変換の下で一括して、かつ簡便に求められ、かつフィードフォワード方式に基づいてこれらの電力の偏差が確度高く圧縮される。
したがって、本実施形態が適用された無線基地局では、このような高速フーリエ変換に適応した規則的な周波数配置が適用される限り、搭載されるべきキャリア抽出部の数と、割り付けられた無線周波数の組み合わせに対する柔軟な適応が可能となり、ハードウエアの標準化と簡略化とが図られる。
【0050】
図6は、本発明の第三の実施形態を示す図である。
図において、図3に示す実施形態との構成の相違点は、キャリア抽出部31-1〜31-4に代えてキャリア抽出部61-1〜61-4が備えられた点にある。
また、キャリア抽出部61-1とキャリア抽出部31-1との構成の相違点は、乗算器32-11、32-12が備えられず、ディジタルフィルタ93-1に代えてディジタルフィルタ62-1が備えられ、利得制御部36-1の出力がディジタルフィルタ62-1の制御端子に接続された点にある。
【0051】
なお、キャリア抽出部61-2〜61-4の構成については、キャリア抽出部61-1の構成と同じであるので、以下では、対応する構成要素に、添え番号「1」に代わる添え番号「2」〜「4」が付加された同じ符号を付与することとし、ここでは、その説明を省略することとする。
また、ディジタルフィルタ62-1は、既述の2つのチャネルI、Qに個別に対応した所定の段数nの遅延素子63-11、63-12と、これらの遅延装置63-11、63-12 の入力端と各段の出力とに個別に一方の入力が接続され、かつ他方の入力に、利得制御部36-1によって並行して所定の係数K-11、K-12が与えられる乗算器64-111〜64-11(n+1)、64-121〜64-12(n+1)と、乗算器64-111〜64-11(n+1)と乗算器64-121〜64-12(n+1)との出力に得られる値の総和を個別にとり、かつ最終段として配置された加算器65-11、65-12とから構成される。
【0052】
なお、ディジタルフィルタ62-2〜62-4の構成については、ディジタルフィルタ62-1の構成と同じであるので、以下では、対応する構成要素に添え番号「1」に代わる添え番号「2」〜「4」が付加された同じ番号を付与することとし、ここでは、その説明を省略する。
以下、本実施形態の動作を説明する。
【0053】
まず、電力測定部33-C、平均化部34-Cおよび比較器35-Cが連係して行う処理については、既述の第一の実施形態と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0054】
利得制御部36-Cは、始動時には、上述した乗算器64-C11〜64-C1(n+1)、64-C21〜64-C2(n+1)に、ディジタルフィルタ62-Cが本来的に有するべき濾波特性を与える規定の係数K-C1、K-C2を与える。
また、利得制御部36-Cは、既述の第一の実施形態と同様に乗数を求めると、乗算器64-C11〜64-C1(n+1)、64-C21〜64-C2(n+1)に、その乗数と上述した規定の係数K-C1、K-C2との積にそれぞれ等しい2つの係数を適宜与える。
【0055】
ディジタルフィルタ62-Cでは、遅延素子63-C1、63-C2、乗算器64-C11〜64-C1(n+1)、64-C21〜64-C2(n+1)および加算器65-C1、65-C2は、このような2つの係数に基づいてトランスバーサル型のフィルタとして作動することによって、上述した2つの係数に比例した利得を伝達特性として維持し、かつ既述の2つのチャネルI、Qに対応した復調信号に対して所定の濾波処理を継続して施す。
【0056】
したがって、本実施形態によれば、既存のディジタルフィルタの係数に実数である係数が適宜乗じられることによって、既述の第一の実施形態に備えられた乗算器32-C1、32-C2によって個々の無線周波信号について行われる利得の調整が同様に実現される。
なお、本実施形態では、乗算器32-C1、32-C2に代わって利得の調整を実現する処理は、キャリア抽出部61-Cに備えられたディジタルフィルタ62-Cの濾波特性を与える係数に実数である乗数が乗じられることによって実現されている。
【0057】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、図7に示すように、下記の構成が適用されてもよい。
・ 直交復調器86が与える復調信号を周波数軸上で所望の周波数fに亘ってシフトさせるためにその復調信号に乗じられるべき複素係数exp(-j2πft)(= cos2πft+jsin2πft) が生成される過程で、その複素係数の実部(sin2πft)と虚部(sin2πft)とを与える三角関数テーブル71が(ROM等として構成されてもよい。)備えられる。
【0058】
・ この三角関数テーブル71には、上述した乗数が取り得る値とこれらの実部と虚部との積の全ての態様が予め格納される。
・ さらに、三角関数テーブル71は、利得制御部36-Cが与える乗数に対応した実部と虚部との値を読み出し、復調信号を与える2つの互いに直交したチャネルI、Qを介して個別に与えられるシンボル値i、qとこれらの実部と虚部との積和をとる乗算器72-C1c、72-C1s、72-C2c、72-C2sに乗数として与える。
【0059】
なお、上述した各実施形態では、ワイドバンドCDMA方式が適用された移動通信システムに本発明が適用されている。
しかし、本発明は、このような移動通信システムに限定されず、個別に変調された複数の無線周波数信号の和からなる受信波が並行して到来し得る無線局において、アンテナの給電端の近傍でその受信波に一括して復調処理が施されることが要求されるならば、如何なる変調方式、多元接続方式、ゾーン構成、チャネル配置および周波数配置が適用された無線伝送系にも同様に適用が可能である。
【0060】
【発明の効果】
上述したように本発明に係る第1、2の技術では、空中線系の構成の低廉化が図られつつ、個々の無線周波信号の帯域に形成される無線チャネルの伝送特性は安定に高く維持される。
また、本発明に係る第3の技術では、受信波として到来した複数の無線周波信号の何れもが直交変調方式に基づいて生成された信号である限り、ハードウエアの構成の簡略化が可能となる。
【0061】
さらに、本発明に係る第4の技術は、性能が低下することなく、ディジタル信号処理が積極的に適用されることによって実現される。
また、本発明に係る第5、6の技術では、受信波として到来した複数の無線周波信号のレベルの差がこれらの無線周波信号に対応して設けられた個別の手段によって圧縮される場合に比べて、ハードウエアの規模の低減および構成の簡略化が図られる。
【0062】
したがって、これらの発明が適用された無線伝送系では、所望の多元接続方式、変調方式、ゾーン構成、チャネル配置および周波数配置に対する柔軟な適応が可能となり、さらに、高い伝送品質およびサービス品質が確度高く、かつ安価に達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1、3、5の技術の原理ブロック図である。
【図2】 本発明に係る第2、4,6の技術の原理ブロック図である。
【図3】 本発明の第一の実施形態を示す図である。
【図4】 キャリア抽出部の他の構成を示す図である。
【図5】 本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図6】 本発明の第三の実施形態を示す図である。
【図7】 利得の調整を可能とする他の構成を示す図である。
【図8】 ワイドバンドCDMA方式に適応した無線受信機の構成例を示す図である。
【図9】 従来例の動作を説明する図である。
Claims (2)
- 占有帯域が異なる複数Nの無線周波信号が合成されてなる受信波を受信し、その受信波のレベルを所定の値に保ちつつ一括して復調し、これらの無線周波信号に個別に対応した異なる帯域に分布する複数Nの復調信号が合成されてなる合成復調信号を出力する一括復調手段と、
前記一括復調手段によって出力された合成復調信号に含まれる複数Nの復調信号を個別に共通の帯域に分布する信号として出力する複数Nの周波数変換手段と
を備えた無線受信機において、
前記複数Nの周波数変換手段によって個別に出力された信号の電力を並行して所望の精度で規定の値に保つ複数Nのレベル補正手段を備え、
前記複数Nのレベル補正手段は、
前記複数Nの復調信号に前記複数Nの周波数変換手段によってディジタル領域で施される濾波処理に適用されるべき係数を可変することによって、これらの周波数変換手段によって個別に出力された信号の電力を規定の値に保つ
ことを特徴とする無線受信機。 - 占有帯域が異なる複数Nの無線周波信号が合成されてなる受信波を受信し、その受信波のレベルを所定の値に保ちつつ一括して復調し、これらの無線周波信号に個別に対応した異なる帯域に分布する複数Nの復調信号が合成されてなる合成復調信号を出力する一括復調手段と、
前記一括復調手段によって出力された合成復調信号に含まれる複数Nの復調信号を個別に共通の帯域に分布する信号として出力する複数Nの周波数変換手段と
を備えた無線受信機において、
前記複数Nの復調信号の個々の占有帯域に分布する電力の偏差を求める監視手段と、
前記複数Nの復調信号の個々の占有帯域について前記監視手段によって求められた電力の偏差を取り込み、前記複数Nの周波数変換手段の後段でこれらの偏差を並行して補正する複数Nのレベル補正手段を備え、
前記複数Nのレベル補正手段は、
前記複数Nの復調信号に前記複数Nの周波数変換手段によってディジタル領域で施される周波数変換処理に適用されるべき複素係数の絶対値を可変することによって、これらの復調信号について監視手段によって求められた電力の偏差を並行して補正する
ことを特徴とする無線受信機。
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