JP4234368B2 - 鉄道車両の扉押さえ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の扉を気密状態に保持する扉押さえ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、新幹線車両のような高速鉄道車両では、車両の出入り口周囲のパッキンに、出入り口を覆う扉を車内側より車外側に押し付けることによって、扉と車体との間を気密状態に保持している。この扉押さえ装置として、一扉当たり4個の油圧シリンダを作動させ、該油圧シリンダのピストンロッドで直接扉を押し付ける油圧作動式が広く用いられている。油圧作動式の扉押さえ装置は、押し付け力の割に装置を小さくできる利点があるが、メンテナンスでは、作動油の漏れに対するシールの交換や装置の分解・清掃などで特別な配慮が必要となる。そこで、空気圧作動のシリンダを用いた場合には、油圧作動式に比べてメンテナンスに配慮を要しない利点はあるが、油圧作動式のようにシリンダのピストンロッドで直接扉を押し付けようとすると、必要な押し付け力を出すために、シリンダ径が大きくなり、小型化は困難となる。このため、例えば、特開平9−11895号公報に示されるように、ピストンロッドの伸縮で回動するレバーに設けた扉押さえ部材で扉を押し付ける構造の扉押さえ装置がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の公報に開示された扉押さえ装置は、扉押さえ部材が回動することによって扉を押し付けるため、ピストンロッドが縮んだ時とピストンロッドが伸びた時の扉押さえ部材の位置が異なり、扉と扉押さえ部材との隙間調整が非常にやりにくい。一般的に、この調整作業は、ピストンロッドが伸びた状態とするには、工場内の空気配管をシリンダに接続することが面倒なため、ピストンロッドが縮んだ状態で行っている。
【0004】
また、扉押さえ部材のストローク量に対して、押し付け力が連続的に大きくなり、扉の機密保持位置においてはリンク機構のデッドポイントあるいはその近くとなるので、扉からの反力に対して押し付け力が過大となる。その結果、1扉当たり4本あるシリンダに同じ空気圧を供給しても、シリンダの個体差や隙間調整のばらつきなどから、同一のストロークになるとは限らず、このストロークを同期させる調整も厄介なものとなっている。
【0005】
そこで本発明は、空気圧を用いても隙間調整が容易で、小型化が可能な鉄道車両の扉押さえ装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明は、車両の出入り口周囲のパッキンに、出入り口を覆う扉を車内側より車外側に押し付ける押圧部材と、該押圧部材を作動するシリンダとを備えた鉄道車両の扉押さえ装置において、前記押圧部材を、前記扉に垂直で車体内外方向へ直線状に案内するガイドにて車体内外方向に進退可能に設けるとともに、伸縮方向が前記押圧部材の進退方向と異なる方向に流体圧にて作動するシリンダのピストンロッドと前記押圧部材とをリンク部材を介して連結したことを特徴としている。
【0007】
好ましい実施態様として、前記シリンダが空気圧にて作動すること、前記シリンダが、前記押圧部材からの後退力を支持するブロック部材に沿って転動する転動ローラを前記ピストンロッド先端に有し、前記ブロック部材が、ピストンロッドの伸縮方向に向かって円弧状の凹部を有し、該凹部は、前記押圧部材が扉の気密状態保持位置にあるときに、前記転動ローラが当接する位置に形成されていること、前記シリンダが、前記押圧部材を後退させるバネ部材を有し、該バネ部材が、最大使用圧力時に前記押圧部材の進退ストローク中のストローク量によらず扉押し付け力がほぼ一定となるように、バネ定数が選定されていることが挙げられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示される実施形態例に基づいて説明する。図1乃至図5は本発明の第1実施形態例を示すもので、車両1の出入り口2を覆う扉3は、扉押さえ装置4によって出入り口2周囲のパッキン5に押し付けられて気密状態に保持される。扉押さえ装置4は、出入り口2両側の上部及び下部の4カ所に設けた押し付け装置6で構成されている。
【0009】
各押し付け装置6は、扉3を車内側より車外側に押し付ける押圧部材7と、該押圧部材7を作動するシリンダ8とを基板9に有し、該基板9が出入り口2周囲の戸当たり柱(図示せず)及び戸袋柱10にボルト11にて取り付けられる。押圧部材7は、扉3と直交する方向に設けられて扉3を押し付けるプッシュロッド12を有している。該プッシュロッド12は、ローラ13を介して基板9に設けた直線状のガイド14に案内されて、車体内外方向に直線状に進退可能に設けられている。
【0010】
前記シリンダ8は、前記押圧部材7の横に押圧部材7の進退方向と略直交する方向にシリンダ筒15の軸線を向けて設けられている。このシリンダ8は、シリンダ筒15の底壁16外側のブラケット17を基板9のブラケット18にピン19にて回動可能に軸支され、シリンダ筒15内に収容されたピストン20のピストンロッド21をシリンダ筒15の先端壁22から突出させている。
【0011】
シリンダ筒15の底壁16とピストン20との間には、ピストン20を先端壁22側へ押圧して、ピストンロッド21を伸張させるコイルバネ23が設けられ、シリンダ筒15の先端壁22とピストン20との間には空気圧室24が画成されて、該空気圧室24に供給される圧力空気により、ピストン20が底壁16側へ移動して、ピストンロッド21を縮小させる。
【0012】
ピストンロッド21の先端には、前記押圧部材7のプッシュロッド12に連結されるリンクロッド25と、転動ローラ26とが設けられている。該転動ローラ26の両側には、転動ローラ26を挟んでプッシュロッド12側にガイド部材27が、反対側にブロック部材28がそれぞれ設けられ、転動ローラ26は、ガイド部材27とブロック部材28に沿って転動し、ピストンロッド21は、ガイド部材27とブロック部材28の間を伸縮する。ブロック部材28は、シリンダ筒15の先端壁22側に、ピストンロッド21の伸縮方向に向かって円弧状の凹部29を形成している。この凹部29は、ピストンロッド21の縮小方向に深く形成されている。
【0013】
このように構成された押し付け装置6は、コイルバネ23によってピストンロッド21が最大伸張した状態では、プッシュロッド12は車内側へ最も後退した位置にある。空気圧室24に圧力空気が供給されると、ピストンロッド21が縮小して、ピストンロッド21先端の転動ローラ26がブロック部材28に沿って転動するので、シリンダ8がピン19を支点にして回動して、転動ローラ26が前記凹部29に位置し、リンクロッド25を介してプッシュロッド12を車外側へ前進させ、扉3を出入り口2周囲のパッキン5に押し付け、扉3を気密状態に保持する。
【0014】
車体内外気圧差によって車体外側から扉3を車内側へ押し戻す力が作用した場合には、プッシュロッド12が後退しようとして、プッシュロッド12の後退力がリンクロッド25を介して転動ローラ26に伝達されるが、転動ローラ26は前記凹部29に位置しているので、凹部29に作用してブロック部材28によって支持され、ピストンロッド21を伸張させる方向には作用しない。したがって、扉3の気密状態を機械的に保持できる。
【0015】
ここで、各押し付け装置6のプッシュロッド12の進み動作中のストロークをできるだけ同期させるために、各押し付け装置6のコイルバネ23のバネ定数を選定する。プッシュロッド12の押し付け力は、シリンダ8の伸縮力とリンクロッド25の傾きで作るそれぞれのベクトルで決まり、このベクトルで作る三角形により、ストロークが増えると、プッシュロッド12の押し付け力はシリンダ8の伸縮力に対して増幅される。増幅割合はシリンダ8のストロークにほぼ比例して増加するので、最大使用空気圧で、この増幅分を相殺するようにコイルバネ23のバネ定数を決めることができる。こうすることにより、最大使用空気圧では、この押し付け装置6は、通常の空気シリンダのようにストロークに拘わらず押し付け力はほぼ一定となる。
【0016】
実際には、プッシュロッド12の進み動作中のそれぞれのプッシュロッド12の押し付け力は、それぞれのシリンダ8に流入する空気の圧力差、各押し付け装置6のシリンダ8の個体差、車体の寸法精度、あるいは各押し付け装置6の取付時の寸法調整の不整等により、大きさが異なる。そこで、上述のように、最大使用空気圧でストロークに拘わらず押し付け力はほぼ一定となるようにすれば、出入り口2周囲のパッキン5の圧縮歪みに基づく反力によるフィードバックが働きやすいので、それぞれのプッシュロッド12のストロークが同期し易く、扉3のパッキン5への圧縮の動きをスムースにできる。
【0017】
以上のように、空気圧にて作動するシリンダ8にてリンクロッド25を介して押圧部材7のプッシュロッド12を車体内外方向に直線状に進退させて扉3を押し付けるから、シリンダ8のピストンロッド21が縮んだ状態でも、扉3とプッシュロッド12との隙間調整が容易である。また、シリンダ8のピストンロッド21とプッシュロッド12とをリンクロッド25で連結することにより、シリンダ8のピストンロッド21の伸縮方向とプッシュロッド12の進退方向とを異なる方向にできるから、シリンダ8の設置自由度が向上する。さらに、ブロック部材28の凹部29に転動ローラ26が位置して扉3の気密状態を機械的に保持するから、空気圧作動のシリンダ8を用いても、シリンダ8はプッシュロッド12の反力を受けるだけの大きな力は必要なく、扉3をパッキン5に押し付けるだけの小さな力で充分であるから、装置全体の小型化が可能となる。
【0018】
図6乃至図8は本発明の第2実施形態例を示すもので、押し付け装置30は、基板31の上部に押圧部材32のプッシュロッド33をガイド34,34にて車体内外方向に直線状に進退可能に設けるとともに、基板31の下部に、シリンダ35を押圧部材32の進退方向に対して斜めに設けている。
【0019】
シリンダ35は、シリンダ筒36の底壁37外側のブラケット38を基板31のブラケット39にピン40にて回動可能に軸支され、シリンダ筒36内に収容されたピストン41のピストンロッド42をシリンダ筒36の先端壁43から突出させ、ピストンロッド42先端と前記押圧部材32とをリンクロッド44で連結している。
【0020】
シリンダ筒36の先端壁43とピストン41との間には、ピストン41を底壁37へ押圧して、ピストンロッド42を縮小させるコイルバネ45が設けられ、底壁37とピストン41との間には空気圧室46が画成されて、該空気圧室46に供給される圧力空気により、ピストン41が先端壁43側へ移動して、ピストンロッド42を伸張させる。
【0021】
ピストンロッド42の先端には、前記リンクロッド44と転動ローラ47とガイドローラ48とがピン49にて設けられている。ガイドローラ48は、ピストンロッド42下方の基板31に設けられたガイド部材50に沿って転動し、転動ローラ47は、ガイド50に対向して基板31に設けられたブロック部材51に沿って転動する。ガイド50及びブロック部材51は、ピストンロッド42が伸張するに連れて、ピストンロッド42の先端がプッシュロッド33に近づく方向に向けて基板31に設けられている。ブロック部材51は、ピストンロッド42が最大伸張する直前からプッシュロッド33の進退方向に対して直交する方向に屈曲され、この屈曲した部分にピストンロッド42が最大伸張した際に転動ローラ47が収まる凹部52が形成されている。
【0022】
この構成では、空気圧室46に圧力空気が供給されていない状態では、コイルバネ45によりピストンロッド42が縮小し、プッシュロッド33は車内側へ最も後退した位置にある。空気圧室46に圧力空気が供給されると、ピストンロッド42が伸張して、ピストンロッド42先端の転動ローラ47がブロック部材51に沿って転動するので、シリンダ35がピン40を支点にして回動して、転動ローラ47が前記凹部52に位置し、リンクロッド44を介してプッシュロッド33を車外側へ前進させ、扉3を出入り口2周囲のパッキン5に押し付け、前記第1実施形態例と同様に、扉3を気密状態に機械的に保持する。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、押圧部材の進退方向と扉の押圧方向とを常に一致させているので、扉と押圧部材の関係が作動時と非作動時とで同じであり、装置の個体差、あるいは車体への取付寸法のばらつきなどによって、押圧部材と扉の隙間を調整する場合に、装置を作動させる必要がないので、作業が容易である。また、扉から押圧部材にかかる力をリンク機構の支点で保持するから、シリンダは、扉をパッキンに押し付けるだけの小さな力で済むので、装置を小型化できる。さらに、シリンダのバネ部材定数を選定することによって、シリンダストローク中の扉への押し付け力を最大使用流体圧でほぼ一定にでき、その結果、シリンダの個体差や、扉と押圧部材との隙間調整が不整であっても、パッキンからの反力が各シリンダに作用し易く、シリンダストロークは同期しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態例の押し付け装置の正面図
【図2】 同じく押し付け装置の作動状態の正面図
【図3】 同じく扉押さえ装置の正面図
【図4】 図1のIV−IV断面図
【図5】 図1のV−V断面図
【図6】 第2実施形態例の押し付け装置の正面図
【図7】 図6のVII−VII断面図
【図8】 同じく押し付け装置の作動状態の正面図
【符号の説明】
1…車両、2…出入り口、3…扉、4…扉押さえ装置、5…パッキン、6,30…押し付け装置、7,32…押圧部材、8,35…シリンダ、12,33…プッシュロッド、5,36…シリンダ筒、20,41…ピストン、21,42…ピストンロッド、23,45…コイルバネ、24,46…空気圧室、25,47…転動ローラ、28,51…ブロック部材、29,52…凹部

Claims (4)

  1. 車両の出入り口周囲のパッキンに、出入り口を覆う扉を車内側より車外側に押し付ける押圧部材と、該押圧部材を作動するシリンダとを備えた鉄道車両の扉押さえ装置において、前記押圧部材を、前記扉に垂直で車体内外方向へ直線状に案内するガイドにて車体内外方向に進退可能に設けるとともに、伸縮方向が前記押圧部材の進退方向と異なる方向に流体圧にて作動するシリンダのピストンロッドと前記押圧部材とをリンク部材を介して連結したことを特徴とする鉄道車両の扉押さえ装置。
  2. 前記シリンダは、空気圧にて作動することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の扉押さえ装置。
  3. 前記シリンダは、前記押圧部材からの後退力を支持するブロック部材に沿って転動する転動ローラを前記ピストンロッド先端に有し、前記ブロック部材は、ピストンロッドの伸縮方向に向かって円弧状の凹部を有し、該凹部は、前記押圧部材が扉の気密状態保持位置にあるときに、前記転動ローラが当接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両の扉押さえ装置。
  4. 前記シリンダは、前記押圧部材を後退させるバネ部材を有し、該バネ部材は、最大使用圧力時に前記押圧部材の進退ストローク中のストローク量によらず扉押し付け力がほぼ一定となるように、バネ定数が選定されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の鉄道車両の扉押さえ装置。
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