JP4233281B2

JP4233281B2 - ゴムリング型継手用滑剤組成物

Info

Publication number: JP4233281B2
Application number: JP2002227496A
Authority: JP
Inventors: 良雄大倉
Original assignee: Konishi Co Ltd
Current assignee: Konishi Co Ltd
Priority date: 2002-08-05
Filing date: 2002-08-05
Publication date: 2009-03-04
Anticipated expiration: 2022-08-05
Also published as: JP2004067813A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道用鋳鉄管に用いられるタイトンジョイントを代表とするプッシュオン継手を始めとして、ビニル管、ポリオレフィン管、強化プラスチック複合管等に用いられるゴムリング型継手の接合時に使用される継手用滑剤組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来よりタイトンジョイント等のゴムリング型継手は、ゴム輪をはめた受け口にさし口をフォークジャッキ等の簡単な接合装置を用いて押圧挿入するだけで容易に確実な接合が可能で、完全な密閉性を保ち得るところから、各種水道管、各種工場排水管、薬液類の輸送用管、電力・通信ケーブル保護用管等の継手として、注目され且つ次第に普及しつつある。
そして、上記ゴムリング型継手の接合に当っては、管の押圧挿入を容易にするため、一般にさし口外面とゴム輪の内面とに滑剤が塗布されるが、この滑剤には滑性に優れ、接合時の挿入抵抗を少なくする性能が要求されることはもちろんのこと、良好な塗布作業性、ゴムリングや管材料に劣化、腐食等の悪影響を与えない特性が要求される。
さらに、上記接合管が例えば水道水等の導管等として用いられる場合には、管内液に有害成分を溶出させたり、所謂スカム等の発生原因となる成分等を混入させない性質も要求される。
【０００３】
ところで、従来よりゴムリング型継手用滑剤として広く用いられているのは、動植物油脂から得られる脂肪酸石鹸を主成分とする所謂石鹸ペーストである。
この石鹸ペーストは潤滑性に富んでいるので接合作業が容易であり、ゴムリングや管材料の劣化、腐食等の悪影響を与えることも少ない。
しかし、この石鹸ペーストは、水道水等の導管等に対して用いられる場合、接合作業後の洗管通水により完全に洗浄されにくく、該洗管通水後も乳白色の濁り水が蛇口から出てきたりして、使用者に不快感を与えるという欠点がある。
また、石鹸ペーストは、動植物油脂特有の臭気を有していると共に脱脂力が強く、手荒れの原因となり、作業環境面、安全衛生面において好ましいものでない。
【０００４】
そこで、これらの欠点を解決するものとして、カルボキシル基を有する鎖状有機高分子化合物の水溶性塩を有効成分とする継手用滑剤組成物が、特開昭５２−７２０６３号公報において提案されている。
しかし、この滑剤組成物は管材料やゴムリングに対する濡れ性が悪いため、塗布されてから長時間放置された場合、ハジキ（滑剤組成物が管材料やゴムリングに部分的に付着してない状態になる。）を起こして本来の潤滑性が得られなくなる難点がある。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ポリアクリル酸ソーダの濡れ性を改善し、下記１．〜６．の特性をバランス良く備えたゴムリング型継手用滑剤組成物を提供することである。
１．潤滑性に優れ接合に際し挿入抵抗が少ないこと。
２．水に適度に溶け溶解後はなるべく透明で且つスカム等が発生しないこと。
３．適度の可塑性と粘度を有して、刷毛又はヘラ等での塗布作業が容易で、塗布されてから長時間放置された場合でもハジキがないこと。
４．気温による粘度変化が少なく、且つ成分分離がないこと。
５．ほぼ中性であって臭気が少なく、手荒れ等を起こさないこと。特に水道用管の場合には食品添加物公定書規格などに規定される添加物で成分構成されていること。
６．管材料やゴムリングを侵さないこと。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリアクリル酸ソーダの濡れ性を改善するために界面活性剤の検討を行ったところ、ある特定のカーボン数８〜１０の脂肪酸を成分とすることで、上記課題を解決することができることを発見し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の（１）〜（４）のゴムリング型継手用滑剤組成物からなるものである。
（１）Ａ）ポリアクリル酸ナトリウムと、（Ｂ）カーボン数が８〜１０の脂肪酸又はその塩を必須成分として含有するゴムリング型継手用滑剤組成物であって、ゴムリング型継手用滑剤組成物１００質量部当たり、（Ｂ）カーボン数が８〜１０の脂肪酸又はその塩を０．１〜２０質量部含有することを特徴とするゴムリング型継手用滑剤組成物である。
脂肪酸のカーボン数が６以下では脂肪酸臭が強くなり好ましくない。また、カーボン数が１２以上では５℃以下の低温において該組成物が固化するため、作業性が悪くなる。好ましい脂肪酸のカーボン数は８〜１０であり、さらに好ましくはカーボン数１０のカプリン酸である。
【０００７】
（２）ポリアクリル酸ナトリウムのポリアクリル酸数平均分子量が１０万〜１００万の範囲にあることを特徴とする（１）に記載のゴムリング型継手用滑剤組成物である。
ポリアクリル酸の分子量が小さい場合には水に溶解した時に有効成分量を増やしても粘性に乏しく、また水の蒸発により皮膜化し易く、その結果潤滑性に不足して好ましくない。
また、逆に分子量が大きすぎると作業に適した粘度に調整しようとすると有効成分が少なくなり、この場合にも潤滑性に乏しくなって滑剤として機能が充分に発揮されにくい。好ましいポリアクリル酸の数平均分子量は１０万〜１００万であり、さらに好ましくは２０万〜５０万である。
【０００８】
脂肪酸量が０．１質量部以下では管材料やゴムリングへの濡れ性に劣り、２０質量部以上では水道水等の導管等として用いられる場合に濁り水が発生したり、脂肪酸臭が強くなり好ましくない。好ましい脂肪酸量は０．５〜１０質量部であり、さらに好ましくは１〜５である。
【０００９】
（３）組成物中の固形分濃度が５〜５０質量％であり、その粘度が２千〜２０万ｍＰａ・ｓであることを特徴とする（１）又は（２）に記載のゴムリング型継手用滑剤組成物である。
組成物中の固形分濃度が５質量％以下、あるいはその粘度が２千ｍＰａ・ｓ以下では粘性に乏しかったり、固形分量の不足により、潤滑性が不足して好ましくない。
一方、組成物中の固形分濃度が５０質量％以上では水分の蒸発により皮膜化するため潤滑性が不足して好ましくない。あるいはその粘度が２０万ｍＰａ・ｓ以上では刷毛等による塗布が困難になり作業性が悪く好ましくない。
好ましい固形分濃度と粘度は、８〜４０重量％、５千〜１５万ｍＰａ・ｓであり、さらに好ましくは１０〜３０質量％、１万〜１５万ｍＰａ・ｓである。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明の滑剤組成物は、市販のポリアクリル酸を水酸化ナトリウム溶液で中和し、単にカーボン数８〜１０の脂肪酸を混合することにより調製される。市販のポリアクリル酸ナトリウムを使用すれば中和の必要はない。
また、本発明の滑剤組成物中には、要すれば、該組成物の保存安定性を高め、乾燥皮膜化や凝固を防止するための保湿剤をさらに添加配合することも可能である。
この保湿剤としては、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリット等の多価アルコール、グリコール酸塩、乳酸塩等のオキシカルボン酸塩類が好ましい。
【００１１】
本発明の組成物は、更に、該組成物の酸化による変色を防ぐため、酸化防止剤を配合することも可能である。用い得る酸化防止剤は、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、Ｌ−アスコルビン酸、Ｌ−アスコルビン酸塩、ビタミンＥ等が挙げられる。
本発明の組成物は上記各成分以外に、微量成分として、防腐剤、消泡剤を含むことができる。
【００１２】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。実施例１〜８の配合を次の表１に、比較例１〜４の配合を次の表２に示す。
（実施例１〜７）、（参考例１）、（比較例１〜３）
下記市販のポリアクリル酸水溶液（注１〜３）に水酸化ナトリウム水溶液を混合して中和をおこないポリアクリル酸ナトリウムとし、他に表１及び表２に記した各成分を配合してゴムリング型継手用滑剤組成物を調製した。
（比較例４）
水に繊維素グリコール酸ナトリウム（注４）を溶解し、他に表２に記した各成分を配合してゴムリング型継手用滑剤組成物を調製した。
【００１３】
ポリアクリル酸水溶液
注１：日本純薬社製、商品名：ジュリマーＡＣ−１０Ｌ（数平均分子量３００００、固形分４０％）
注２：日本純薬社製、商品名：ジュリマーＡＣ−１０Ｈ（数平均分子量１０００００、固形分２０％）
注３：日本純薬社製、商品名：ジュリマーＡＣ−１０ＳＨ（数平均分子量１００００００、固形分１０％）
繊維素グリコール酸ナトリウム
注４：ダイセル化学工業社製、商品名：ＣＭＣダイセル＜１１７０＞
【００１４】
〈性能評価〉
１．潤滑性
塩ビ管「７５Ｐ−Ｖカン」を用い、被挿入パイプ部分にゴムリングを設置し、滑剤組成物を塗布した。ついで、挿入パイプ部に滑剤組成物を塗布し、被挿入パイプ部分（ゴムリング）に差し入れた。圧縮試験機を用い、試験速度１０ｍｍ／ｍｉｎで挿入し、挿入時の最大過重で潤滑性を以下のように評価した。
◎：６０Ｋｇｆ未満
○：６０〜８０Ｋｇｆ未満
△：８０〜１００Ｋｇｆ未満
×：１００Ｋｇｆ以上
【００１５】
２．作業性
滑剤組成物の温度を５℃に保ち、刷毛で塩ビ管に塗布して塗布しやすさで作業性を以下のように評価した。
○：塗布しやすい。
△：伸びが悪く塗布しにくい。
×：塗布できない。
３．濡れ性
塩ビ管に滑剤組成物を塗布して経時によるハジキの有無を観察して濡れ性を以下のように評価した。
○：塗布後１０分経過してもハジキがない。
△：塗布後３分以内ではハジキがないが、１０分後ではハジキがある。
×：塗布後３分でハジキがある。
【００１６】
４．濁り
滑剤組成物を水道水で５０倍に希釈し、その希釈液５００ｇを５００ｍＬガラスビーカーに取り、その濁りを以下のように評価した。
○：透明で濁りがない。
×：濁りがある。
５．臭気
滑剤組成物を水道水で１０倍に希釈し、その希釈液１００ｇを５００ｍＬガラスビーカーに取り、１０人の試験者が希釈液の臭いを嗅ぎ、臭いを感じた人の人数で臭気を以下のように評価した。
○：臭いを感じた人が２人以下
△：臭いを感じた人が３人以上５人以下
×：臭いを感じた人が６人以上
【００１７】
【表１】

【００１８】
【表２】

【００１９】
【表３】

【００２０】
【表４】

【００２１】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、粘度変化が少なく、潤滑性、作業性に優れ、水に溶解しても透明で且つスカム等を発生させず、臭気もなく、しかも塗布されてから長時間放置された場合でもハジキを発生させることがないゴムリング型継手用滑剤組成物を提供することができる。

Claims

（Ａ）ポリアクリル酸ナトリウムと、（Ｂ）カーボン数が８〜１０の脂肪酸又はその塩を必須成分として含有するゴムリング型継手用滑剤組成物であって、ゴムリング型継手用滑剤組成物１００質量部当たり、（Ｂ）カーボン数が８〜１０の脂肪酸又はその塩を０．１〜２０質量部含有することを特徴とするゴムリング型継手用滑剤組成物。
（Ａ）ポリアクリル酸ナトリウムのポリアクリル酸の数平均分子量が１０万〜１００万の範囲にあることを特徴とする請求項１に記載のゴムリング型継手用滑剤組成物。
ゴムリング型継手用滑剤組成物中の固形分濃度が５〜５０質量％であり、その組成物の２０℃における粘度が２千〜２０万ｍＰａ・ｓであることを特徴とする請求項１又は２に記載のゴムリング型継手用滑剤組成物。