JP4232875B2 - 鞘管 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、給湯・給水用の通水管が内部に挿通される二重配管用の鞘管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物内において給湯、或いは給水を行うための流体管の配管構造の一つとして、鞘管工法と称されるものがある。この鞘管工法は、図17に示されるように、給湯器21等の流体供給部Aと、給水栓22等の流体消費部Bとの間に鞘管Sと称される合成樹脂製の可撓性を有する保護管を配管して、該保護管内に、同じく合成樹脂製の可撓性を有する通水管Pを挿通させて二重配管構造とする工法である。この鞘管工法は、その以前に実施されていた金属管による配管工法に比較して、施工が容易であって、しかも通水管Pの更新等の保守が容易である利点を有する。
【0003】
上記鞘管工法による二重配管構造に限られず、給湯・給水配管においては、給水栓22等の弁を閉じて、水の流れを急に停止させると、この給水栓22等の弁の部分に水流が衝突することにより、当該部分の圧力が急激に大きくなり、その後に、この大きな圧力が給湯器21の側に伝播して、通水管P内の水が内壁に衝突して異常音を発生させるウォーターハンマー現象が生ずる。上記した鞘管工法による二重配管構造においては、内部の水によって異常音を発生させる通水管Pは、鞘管S内に挿通されているために、上記原因に基づく異常音は比較的容易に消音される。
【0004】
ところが、内部に水が通過する通水管Pは、可撓性を有しているために、上記ウォーターハンマー現象によって、この通水管Pは、波打った状態に変形させられて、鞘管Sの内壁面に衝突し、この通水管Pと鞘管Sとの衝突によっても、音が発生する。この通水管Pと鞘管Sとの衝突による衝突音は、わん曲部分において大きくなる。
【0005】
そこで、本出願人は、通水管の外側を緩衝材で覆った状態にして、該通水管を鞘管内に挿通して、この緩衝材によって、上記ウォーターハンマー現象に基づく衝突音を消音することを、その要旨とする出願を行った(特開平3-292487号) 。ところが、通水管の外側を緩衝材で覆った状態にして、鞘管内に該通水管を挿通させると、その挿通途中において、通水管に対して緩衝材が部分的に剥がれてしまい、通水管の外側が緩衝材により完全に覆われた状態のままで、該通水管を鞘管内に挿通するのは困難である。また、通水管の挿通時における通管抵抗が大きいため、該抵抗によって緩衝材が延伸されたり、破損されたりし易い。更に、給湯時においては、通水管、或いは鞘管自体に保温性が要求されるが、通水管に対して緩衝材を完全に被覆した状態で鞘管に挿通するのは困難であり、しかも緩衝材は、通水管の外側、或いは鞘管の内側に密接していないために、その保温性は低いものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、給湯・給水用の通水管が挿通される二重配管用の鞘管において、上記ウォーターハンマー現象に基づく鞘管に対する通水管の衝突を緩和すると共に、管自体の保温性を高めることを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するための請求項1の発明は、合成樹脂製の波付可撓管で構成されて、その内部に、合成樹脂製で可撓管から成る給湯・給水用の通水管が挿通される二重配管用の鞘管であって、前記鞘管の内周面には、保温性と緩衝性との双方を有する発泡材から成って、前記鞘管の内周面に設けられた凹凸部のうち凸部のみに接して、該凹部との間に空気層を形成する緩衝層が一体に形成され、前記緩衝層の内周面には、ウォーターハンマー現象の発生時に前記緩衝層に対する通水管の衝突を緩和すると共に、通水管の挿通時に当該通水管が前記緩衝層の内周面に当接するのを回避して通管を可能にするための複数の緩衝突起が横断面視で放射状に配置されて長手方向に沿って連続して突設されていることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、鞘管の内周面に一体に形成された緩衝層の内周面には、複数の緩衝突起が横断面視で放射状に配置されて長手方向に沿って連続して形成されているため、ウォーターハンマー現象の発生時において前記通水管は緩衝突起を介して緩衝層に衝突するため、衝突の緩衝効果が高められると共に、鞘管に対する通水管の通管時には、鞘管の長手方向に沿って設けられた該緩衝突起が通管の案内を行うために、緩衝層が損傷されなくなる。このように、鞘管の内周面に一体形成した緩衝層の内周面に突設された緩衝突起は、鞘管の使用前の配管作業時には、通水管が緩衝層に接触することなく通管が可能になると共に、鞘管の使用時には、ウォーターハンマー現象の発生時における緩衝層に対する通水管の衝突が緩和されるという異なる二つの作用効果が異なる時点において奏される。また、鞘管の内周面に一体に形成された緩衝層と、該鞘管の内周面の凹部との間に空気層が形成されているため、鞘管自体の保温性が高められる。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記緩衝突起は、通水管の通管時における傾倒が容易なように傾斜して、或いはわん曲して突設されているために、鞘管に挿通される通水管を安定して保持でき、しかも通水管の通管時においては、緩衝突起が傾斜、或いはわん曲して内部空間が広くなるために、通管抵抗が小さくなって、鞘管に対する通水管の通管が容易となる。更に、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、外周面には、保温性を有する発泡材から成る保温層が外周凸部に密接して形成されて、その外周凹部との間に空気層が形成されているため、鞘管の内外にそれぞれ空気層が形成されて、保温性が一層に高められる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。図1は、参考例の鞘管S1 の一部を破断した斜視図であり、図2は、同じく半縦断面図である。鞘管S1 は、ポリエチレン等の合成樹脂製の波付可撓管であって、その内周面に緩衝層C1 が凹部1と凸部2との双方に密接した状態で形成されている。この緩衝層C1 は、ゴム,軟質樹脂等の発泡材で成形されて、保温性と緩衝性とを備えていることが必要である。このようにして、鞘管S1 の内周面の凹部1と凸部2の双方に密接させて緩衝層C1 を一体に形成するには、該鞘管S1 の成形時において、緩衝層C1 をブロー成形すればよい。また、給湯・給水用の通水管Pは、合成樹脂製の可撓管であって、前記鞘管S1 に挿通される。この鞘管S1 は、その内周面に一体に形成された緩衝層C1 が保温性と緩衝性とを備えているために、ウォーターハンマー現象によって、内部に挿通された通水管Pが波打った場合には、該通水管Pは緩衝層C1 に衝突して、この衝突が緩和されると共に、給湯時における保温が図られる。また、この鞘管S1 においては、該鞘管S1 の内周面の凹凸部に密接して緩衝層C1 が形成されているため、通水管Pの通管時において、前記緩衝層C1 がずれない利点がある。
【0010】
次に、別の参考例の鞘管S2 について説明する。図3は、鞘管S2 の一部を破断した斜視図であり、図4は、同じく半縦断面図である。この鞘管S2 は、その内周面に凸部2のみに密接するようにして円筒状の緩衝層C2 が一体に形成されて、該緩衝層C2 と、鞘管S2 の凹部1との間に環状の空気層E1 が形成された構成である。この鞘管S2 においても、緩衝層C2 の存在によって、ウォーターハンマー現象の発生時において、通水管Pの衝突を緩和できると共に、保温性も高まるが、この保温性に関しては、緩衝層C2 と空気層E1 との相乗作用によって、大きく高められるのが特徴である。
【0011】
次に、更に別の参考例の鞘管S3 について説明する。図5は、鞘管S3 の一部を破断した斜視図であり、図6は、同じく半縦断面図である。この鞘管S3 は、その内周凸部2のみに密接するようにして円筒状の緩衝層C2 が内周面に一体に形成されていると共に、その外周凸部3のみに密接するようにして円筒状の保温層Hが外周面に一体に形成されたものである。このため、鞘管S3 の内周凹部1と緩衝層C2 との間に空気層E1 が形成されると共に、該鞘管S3 の外周凹部4と外部緩衝層C3 との間に空気層E2 が形成される。この鞘管S3 は、その内外の各周面がそれぞれ緩衝層C2 及び保温層Hで被覆されていると共に、その内外にそれぞれ空気層E1,E2 が形成されているために、保温性が一層高められる。
【0012】
引き続いて、本発明に係る鞘管について説明するが、以下に説明する各鞘管は、いずれも鞘管の内周面に一体に形成された緩衝層の内周面に緩衝突起が突設された構造である点において共通している。図7及び図8に示される鞘管S4 は、その内周面に内周凸部2にのみ密接するようにして緩衝層C4 が一体に形成され、該緩衝層C4 の内周面に多数の緩衝突起F4 が横断面視で放射方向に突設された構成である。この緩衝突起F4 の突出長は、鞘管S4 に挿通された通水管Pの軸心を、該鞘管S4 の軸心と一致させた場合において、該通水管Pに接触しない長さになっている。この緩衝突起F4 は、鞘管S4 の長手方向に沿って連続した突条で構成されている。このように、緩衝層C4 の内周面に緩衝突起F4 が突設されていると、ウォーターハンマー現象の発生時には、鞘管S4 の内部に挿通された通水管Pは、該緩衝突起F4 を介して緩衝層C4 に衝突するために、衝突の緩衝効果が一層高められる利点がある。
【0013】
また、図9及び図10に示される鞘管S5 は、その内周面に内周凸部2にのみ密接するようにして緩衝層C5 が一体に形成され、該緩衝層C5 の内周面に多数の緩衝突起F5 が放射方向に突設された構成は、上記鞘管S4 と同一であるが、この緩衝突起F5 の突出長は、鞘管S5 に挿通された通水管Pの軸心を、該鞘管S5 の軸心と一致させた場合において、該緩衝突起F5 の先端部が該通水管Pに接触する長さになっている。更に、図11及び図12に示される鞘管S6 は、その緩衝層C6 の内周面に突設された緩衝突起F6 の突出方向は、前記各緩衝突起F4,F5 と同一であるが、緩衝突起F6 の本数が前記各緩衝突起F4,F5 よりも少なくて、しかもその突出長が、前記各緩衝突起F4,F5 の中間の長さになっている。鞘管S5,S6 の各緩衝突起F5,F6 は、いずれも長手方向に連続した突条で構成されている。
【0014】
また、図13ないし図15には、更に別の鞘管S7,S8,S9 の横断面図が示されている。これらの各鞘管S7,S8,S9 の緩衝層C7,C8,C9 の内周面に突設された緩衝突起F7,F8,F9 は、いずれも突条で構成されているが、鞘管S7,S8 の突出長は、これに挿通された通水管Pの軸心を、該鞘管S7,S8 の軸心と一致させた場合において、各緩衝突起F7,F8 の先端部が該通水管Pに接触しない長さになっているが、鞘管S9 の緩衝突起F9 の突出長は、同様な状態において、その緩衝突起F9 の先端部が該通水管Pに所定長だけ接触する長さになっている。また、いずれの緩衝突起F7,F8,F9 においても、その突設方向が各鞘管S7,S8,S9 の放射方向に対して傾斜している構成に共通の特徴を有している。ここで、鞘管S7 の緩衝突起F7 は、非変形時においては板状であって、全て同一方向に傾斜しており、鞘管S8 の緩衝突起F8 は、非変形時においてわん曲板状をしていて、しかも相隣接する各緩衝突起F6 のわん曲方向が互いに逆になっている。更に、緩衝突起F9 は、非変形時において同一方向にわん曲した板状になっている。
【0015】
上記鞘管S7 の緩衝突起F7 は、非変形時において板状を呈しているが、該鞘管S7 の放射方向に対して傾斜して突設されており、上記各鞘管S8,S9 の緩衝突起F8,F9 は、いずれも非変形時においてわん曲している。このため、各緩衝突起F7,F8,F9 は、傾倒し易くて、鞘管S7,S8,S9 内に挿通される通水管Pを安定して支持でき、しかも通水管Pの通管時においては、傾倒して内部空間が広くなるために、通管抵抗が小さくなるという多くの利点を有する。
【0016】
また、緩衝層C4 〜C9 の内周面に突設した上記各緩衝突起F4 〜F9 は、いずれも長手方向に連続した突条の例であるが、長手方向に断続した突条で構成してもよい。長手方向に断続した突条で緩衝突起を構成した場合には、連続した突条に比較して、傾倒し易くなる。
【0017】
そして、いずれの鞘管S4 〜S9 においても、その内部に通水管Pを挿通させて二重配管構造にして施工する。特に、鞘管S4 〜S9 においては、その緩衝層C4 〜C9 の内周面に緩衝突起F4 〜F9 が突設されているために、該緩衝突起F4 〜F9 が通水管Pの通管を案内して、緩衝層C4 〜C9 が損傷されにくいと共に、通水管Pが鞘管S4 〜S9 の中央部において支持され易くなって、支持状態が安定する利点がある。更に、鞘管S7 〜S9 においては、その緩衝突起F7 〜F9 が、非変形時において放射方向に対して傾斜していたり、わん曲しているために、各緩衝突起F7 〜F9 が傾倒し易くなって、通管時における抵抗が小さくなると共に、通水管Pを確実に支持できる利点がある。
【0018】
このように、本発明に係る鞘管S1 〜S9 は、その内周面に緩衝層C1 〜C9 が一体に形成されているために、これに通水管Pを挿通して二重配管した場合においても、ウォーターハンマー現象の発生時に、通水管Pが波打った状態に変形させられても、該通水管Pは緩衝層C1 〜C9 に衝突して、この衝突が緩和される。特に、図16に示されるように、緩衝層C4 〜C9 の内周面に緩衝突起F4 〜F9 が突設された鞘管S4 〜S9 においては、該緩衝突起F4 〜F9 を介して通水管Pが緩衝層C4 〜C9 に衝突するために、その衝突が一層緩和される。
【0019】
なお、本発明に係る鞘管は、施工現場において、その内部に通水管を挿通させて使用する場合の他に、予め通水管を挿通しておいて、施工現場において必要長さに切断して使用することも可能である。後者の使用例において、上記したように緩衝層の内周面に緩衝突起が突設されていると、内部に挿通された通水管は、該緩衝突起に支持されて、鞘管の中央部に配置されるために、鞘管の切断時において、通水管が損傷されにくくなる。
【0020】
【発明の効果】
本発明に係る鞘管は、鞘管の内周面に一体に形成された緩衝層の内周面には、複数の緩衝突起が横断面視で放射状に配置されて長手方向に沿って連続して形成されているため、ウォーターハンマー現象の発生時において前記通水管は緩衝突起を介して緩衝層に衝突するため、衝突の緩衝効果が高められると共に、鞘管に対する通水管の通管時には、鞘管の長手方向に沿って設けられた該緩衝突起が通管の案内を行うために、緩衝層が損傷されなくなる。また、鞘管の内周面に一体に形成された緩衝層と、該鞘管の内周面の凹部との間に空気層が形成されているため、鞘管自体の保温性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例の鞘管S1 の一部を破断した斜視図である。
【図2】 同じく半縦断面図である。
【図3】 参考例の鞘管S2 の一部を破断した斜視図である。
【図4】 同じく半縦断面図である。
【図5】 本発明に係る鞘管S3 の一部を破断した斜視図である。
【図6】 同じく半縦断面図である。
【図7】 本発明に係る鞘管S4 の一部を破断した斜視図である。
【図8】 同じく横断面図である。
【図9】 本発明に係る鞘管S5 の一部を破断した斜視図である。
【図10】 同じく横断面図である。
【図11】 本発明に係る鞘管S6 の一部を破断した斜視図である。
【図12】 同じく横断面図である。
【図13】 本発明に係る鞘管S7 の横断面図である。
【図14】 本発明に係る鞘管S8 の横断面図である。
【図15】 本発明に係る鞘管S9 の横断面図である。
【図16】 ウォーターハンマー現象によって、鞘管S5 のわん曲部に挿通された通水管Pが波打った状態の縦断面図である。
【図17】 鞘管工法の模式図である。
【符号の説明】
1,C2,C4 〜C9 :緩衝層
1,E2 :空気層
4 〜F9 :緩衝突起
H:保温層
P:通水管
1 〜S9 :鞘管
1:鞘管の内周凹部
2:鞘管の内周凸部
3:鞘管の外周凸部
4:鞘管の外周凹部

Claims (3)

  1. 合成樹脂製の波付可撓管で構成されて、その内部に、合成樹脂製で可撓管から成る給湯・給水用の通水管が挿通される二重配管用の鞘管であって、
    前記鞘管の内周面には、保温性と緩衝性との双方を有する発泡材から成って、前記鞘管の内周面に設けられた凹凸部のうち凸部のみに接して、該凹部との間に空気層を形成する緩衝層が一体に形成され、
    前記緩衝層の内周面には、ウォーターハンマー現象の発生時に前記緩衝層に対する通水管の衝突を緩和すると共に、通水管の挿通時に当該通水管が前記緩衝層の内周面に当接するのを回避して通管を可能にするための複数の緩衝突起が横断面視で放射状に配置されて長手方向に沿って連続して突設されていることを特徴とする鞘管。
  2. 前記緩衝突起は、通水管の通管時における傾倒が容易なように傾斜して、或いはわん曲して突設されていることを特徴とする請求項1に記載の鞘管。
  3. 外周面には、保温性を有する発泡材から成る保温層が外周凸部に密接して形成されて、その外周凹部との間に空気層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞘管。
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