JP4229753B2 - 放射線計測装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、AD変換手段の最大入力範囲内でプリアンプのリセット操作を行って、半導体検出器で放射線の発生を検出しプリアンプを通して出力される放射線のエネルギーに比例した波高値を持つ階段波信号より放射線計測を行う放射線計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は従来のアナログ処理形放射線計測装置の構成例を示す図、図5は従来のデジタル処理形放射線計測装置の構成例を示す図、図6はプリアンプのリセット操作を説明するための図である。図中、11は半導体検出器、12はプリアンプ、13はアナログパルスプロセッサ、14、16はAD変換器、15は増幅器、17はデジタル波形成形部、18はリセット回路、19はイベント検出・制御回路を示す。
【0003】
エネルギー分散型X線分析装置では、電子ビームあるいはX線を試料に照射することにより、試料から出る特性X線のエネルギーを計測して、その試料の元素分析が行われる。この特性X線のエネルギーを計測するための放射線計測においては、図4に示すように放射線の発生を半導体検出器11で検出し、チャージセンシティブアンプ(以後プリアンプと記述)12を用いて電気信号に変換することが行われており、プリアンプ12では入射した放射線のエネルギーに比例した波高値をもつ階段波信号Aを出力している。従来この階段波信号Aは、アナログパルスプロセッサ13により階段波信号Aの波高値に相当する単独パルスBに成形され、放射線用のAD変換器14でパルスBのピーク値を計測(AD変換)していた。
【0004】
しかし近年、従来図4に示すようにアナログ的に処理していた波形成形等をデジタル処理するようになり、図5に示すようにプリアンプ12からの階段波信号Aをさらに増幅器15で増幅し、その階段波信号BをAD変換器16で直接AD変換し、デジタル波形成形部17でDSP等によりデジタル処理して、イベント検出・制御回路19によるイベントの検出に基づき波高値を計測する方法が一般的になってきている。但しこの方法はプリアンプ12からの階段波信号Aを増幅器15で直接増幅して、その増幅した階段波信号BについてAD変換器16の最大入力範囲を越えないようにAD変換を行うため、1リセット周期における階段波信号の段数が限られてしまい、リセット回路18からプリアンプ12に対してディスチャージ、すなわちリセット操作が頻繁に発生することになる。
【0005】
また、プリアンプ12のディスチャージでは、図6のX部に示すようにリセット信号の立ち上がり、立下がりエッジでチャージコンデンサ周辺への飛びつき等が発生してチャタリングを生じたりする。このためリセット時には、成形波のプロセスタイムに数μ秒の余裕を持たせ、その期間のパルスプロセッサは計測をインヒビットして誤った情報を出力しないようにしている。
【0006】
この計測をインヒビットする時間は、最も長い成形時定数のプロセスタイムに合わせて設定されているのが一般的であり、例えば1μsec、2μsec、4μsec、8μsec、16μsec、32μsec、64μsec、128μsecの8個の成形時定数のプロセスタイムが選択できるパルスプロセッサであれば、インヒビット時間は128μsec+αとなる。ここでα時間は、半導体検出器11とプリアンプ12の仕様で決まるが、一般的には数μsec程度である。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−221458号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように放射線計測において、デジタル処理により波高計測を行う場合にはプリアンプからの階段波信号を直接増幅してAD変換を行うため、1リセット周期における階段波信号の段数が限られてしまい、プリアンプに対してディスチャージ、すなわちリセット操作が頻繁に発生することになる。
【0009】
また、プリアンプのディスチャージはリセット信号の立ち上がり、立ち下がりエッジでチャージコンデンサ周辺への飛びつき等が発生してチャタリングを生じさせたりするため、リセット時には成形波のプロセスタイムに数μ秒の余裕を持たせて、パルスプロセッサの計測をインヒビットして誤った情報を出力しないようにしている。
【0010】
その結果、リセット操作、すなわちプリアンプのリセット時だけでも約130μsec程度がデットタイムとなって計数率を低下させることになる。そして計数効率の低下は、リセット周期が短い場合、例えば数百μsec〜数msecの場合に顕著になる。特に1μsecや2μsecの高計数率対応成形時定数の場合には、リセット時の大きなデットタイムは計数効率を著しく低下させることになる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであって、リセット時のデッドタイムを必要最小限に抑え、リセット時のデットタイムによる計数効率の低下を防ぐようにするものである。
【0012】
そのために本発明は、放射線のエネルギーに比例した波高値を持つ階段波信号を出力するプリアンプ、前記階段波信号をデジタル値に変換するAD変換手段、前記AD変換手段の出力を選択された成形時定数に基づきデジタル成形波出力に波形成形する成形時定数の切り替え可能なデジタル成形手段、前記デジタル成形波出力のピーク検出を行うピーク検出手段を備え、前記AD変換手段の最大出力範囲内で前記プリアンプのリセット操作を行って、半導体検出器で放射線の発生を検出し前記プリアンプを通して出力される放射線のエネルギーに比例した波高値を持つ階段波信号より放射線計測を行う放射線計測装置において、前記リセット時に、前記選択された成形時定数一定の余裕時間を加算した時間幅のインヒビット信号を出力する手段を設け、該インヒビット信号により前記計測のインヒビットを制御するように構成したことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る放射線計測装置の実施の形態を示す図であり、1は増幅器、2はAD変換器、3はデジタル成形部、4はパイルアップ&ピーク検出部、5はリセット回路、6はイベント検出部、7はイベント制御部、8はインヒビット制御部、Si は入力信号、So は出力信号、Sr はリセット信号、Sh はインヒビット信号、Ss は成形時定数切り替え信号、Sd はデジタル成形波出力である。
【0014】
図1において、入力信号Si は、半導体検出器からプリアンプを通して増幅器1に入力されてAD変換器2でデジタル値に変換され、デジタル成形部3において成形時定数切り替え信号Ss にしたがってデジタル成形波出力Sd に波形成形され、パイルアップ&ピーク検出部4でピークが検出されて結果So が出力され、放射線計測が行われる。さらに、増幅器1で増幅された入力信号は、リセット回路5に送られてAD変換器2の最大入力範囲を越えないように、最大入力範囲内でプリアンプのリセット信号Sr を出力する。
【0015】
また、入力信号Si は、イベント検出部6に入力されてX線の発生(イベントの発生)が検出される。インヒビット制御部8は、リセット信号Sr をトリガとして、成形時定数切り替え信号Ss に基づき選択された成形時定数のプロセスタイムに応じ一定の余裕時間を加算した時間幅のインヒビット信号Sh をイベント制御部7に出力する。イベント制御部7は、イベント検出信号が複数の場合優先順位を決定し、さらに入力されたインヒビット信号Sh と論理積をとってパイルアップ&ピーク検出部4に出力する。パイルアップ&ピーク検出部4はイベント制御部7からの信号を受け、パイルアップ処理とピーク検出を行う。
【0016】
図2はデジタル成形波とリセット信号、並びにインヒビット信号のタイミングを示す図、図3は成形時定数のプロセスタイムに対応してインヒビット信号幅が変化する様子を示す図であり、(a)は成形時定数のプロセスタイムが1μsec、(b)は2μsec、(c)は4μsec、(d)は8μsec、(e)は16μsec、(f)は32μsecにおけるデジタル成形波とインヒビット信号を想定している。
【0017】
リセット回路5は、増幅器1で増幅された入力信号がAD変換器2の最大入力範囲を越えるレベルに達する前にリセット信号Sr を出力すると、図2に示すように成形時定数のプロセスタイムに応じ数μ秒の余裕を持たせた幅のインヒビット信号Sh をインヒビット制御部8が出力する。このことにより、図3に示すように(a)の1μsec、(b)の2μsec、(c)の4μsec、(d)の8μsec、(e)の16μsec、(f)の32μsecなど、多数の成形時定数のプロセスタイムが選択可能な場合にも、それぞれの成形時定数に対応して成形後のプロセスタイムに数μ秒の余裕を持たせただけで誤った情報を出力しないようにすることができる。
【0018】
つまり、従来は、全ての場合に、(f)の32μsecに合わせた幅のインヒビット信号Sh が用いられ、図3に示す(a)〜(e)においてリセット時の大きなデッドタイムが発生し、計数効率を著しく低下させていたが、このような問題が解消される。
【0019】
このように本実施形態では、インヒビット制御部8において、リセット回路5から出力されるリセット信号Sr をトリガとして、成形時定数切り替え信号Ss に基づき、選択された成形時定数のプロセスタイムに応じて数μ秒の余裕を持たせた幅のインヒビット信号Sh をイベント制御部7に出力するので、リセット時のデットタイムを成形時定数のプロセスタイム+数μ秒に抑えることができ、計数効率の低下を防ぐことができる。
【0020】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、1μsec〜32μsecにおけるデジタル成形波とインヒビット信号を想定して説明したが、成形時定数のプロセスタイムが64μsec、128μsec、或いは他の成形時定数のプロセスタイムにあっても同様にインヒビット信号幅が成形時定数のプロセスタイムに応じて制御されることはいうまでもない。
【0021】
また、上記実施の形態では、インヒビット制御部8から、リセット信号Sr をトリガとして、成形時定数切り替え信号Ss に基づき、選択された成形時定数のプロセスタイムに応じた幅のインヒビット信号Sh をイベント制御部7に出力するように構成したが、AD変換器の最大入力範囲内でプリアンプをリセットする時に、デジタル成形波出力に波形成形するために選択された成形時定数のプロセスタイムに一定の余裕時間を加算した時間幅のインヒビット信号によりAD変換器2、デジタル成形部3を制御して放射線計測を制御するように構成してもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、階段波信号をデジタル値に変換するAD変換手段、AD変換手段の出力を選択された成形時定数に基づきデジタル成形波出力に波形成形する成形時定数の切り替え可能なデジタル成形手段、デジタル成形波出力のピーク検出を行うピーク検出手段を備え、AD変換手段の最大入力範囲内でプリアンプのリセット操作を行って、半導体検出器で放射線の発生を検出しプリアンプを通して出力される放射線のエネルギーに比例した波高値を持つ階段波信号より放射線計測を行う放射線計測装置において、リセット時に、選択された成形時定数のプロセスタイムに一定の余裕時間を加算した時間幅のインヒビット信号を出力する手段を設け、該インヒビット信号により放射線計測を制御するので、プリアンプのリセット時において、従来は計測をインヒビットする時間が最も長い成形波のプロセスタイムに合わせて設定されていたのを、選択された成形時定数のプロセスタイムに応じたインヒビット時間とすることができ、リセット時におけるデットタイムを短縮し、これにより計数率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る放射線計測装置の実施の形態を示す図である。
【図2】 デジタル成形波とリセット信号、並びにインヒビット信号のタイミングを示す図である。
【図3】 成形時定数のプロセスタイムに対応してインヒビット信号幅が変化する様子を示す図である。
【図4】 従来のアナログ処理形放射線計測装置の構成例を示す図である。
【図5】 従来のデジタル処理形放射線計測装置の構成例を示す図である。
【図6】 プリアンプのリセット操作を説明するための図である。
【符号の説明】
1…増幅器、2…AD変換器、3…デジタル成形部、4…パイルアップ&ピーク検出部、5…リセット回路、6…イベント検出部、7…イベント制御部、8…インヒビット制御部、Si …入力信号、So …出力信号、Sr …リセット信号、Sh …インヒビット信号、Ss は成形時定数切り替え信号、Sd …デジタル成形波出力

Claims (1)

  1. 放射線のエネルギーに比例した波高値を持つ階段波信号を出力するプリアンプ、前記階段波信号をデジタル値に変換するAD変換手段、前記AD変換手段の出力を選択された成形時定数に基づきデジタル成形波出力に波形成形する成形時定数の切り替え可能なデジタル成形手段、前記デジタル成形波出力のピーク検出を行うピーク検出手段を備え、前記AD変換手段の最大出力範囲内で前記プリアンプのリセット操作を行って、半導体検出器で放射線の発生を検出し前記プリアンプを通して出力される放射線のエネルギーに比例した波高値を持つ階段波信号より放射線計測を行う放射線計測装置において、前記リセット時に、前記選択された成形時定数一定の余裕時間を加算した時間幅のインヒビット信号を出力する手段を設け、該インヒビット信号により前記計測のインヒビットを制御するように構成したことを特徴とする放射線計測装置。
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