JP4229523B2 - ブラシレスモータの駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回転子に永久磁石が配置されたDCブラシレスモータ(以下ブラシレスモータという)の駆動装置に係り、特に回転子の位置検出センサを持たずに、固定子巻線に誘起される誘起電圧によって回転子の位置検出を行う駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータ1は印加電圧と回転速度がほぼ比例関係にあるという特徴があり、印加電圧をパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御にて行う方法が一般的である。
【0003】
図5は従来のブラシレスモータ1の駆動装置を示すブロック図である。図5において、1はブラシレスモータであり、三相結線された3組の固定子巻線2が配置された固定子と永久磁石を有する回転子3とからなる。5はインバータであり、6個のスイッチングトランジスタやサイリスタなどのスイッチング半導体素子6を組み合わせてコンバータ4により交流電源9から整流された直流電力を交流電力に変換してブラシレスモータ1へ供給している。7はインバータ5を制御するインバータ制御回路である。このインバータ制御回路7は定常運転においては、インバータ5の通電の切換時期は、回転子3が回転することにより固定子巻線2に誘起される電圧を基に、位置検出回路8が固定子巻線2に対する回転子3の位置を求め、この位置に応じて決められている。
【0004】
この位置検出回路8には、主に次の2種類の方式が知られている。
【0005】
第1の方式は、固定子巻線2に供給される直流電圧の1/2の電圧に分圧した電圧と回転子3の回転により通電されていない固定子巻線2に生じる誘起電圧とを比較して回転子3の回転位置を検出するもの(以下第1の位置検出回路という)である。
【0006】
第2の方式は、各固定子巻線の端子電圧を抵抗を介して接続した中性点の電圧と回転子3の回転により通電されていない固定子巻線2に生じる誘起電圧とを比較して回転子3の回転位置を検出するもの(以下第2の位置検出回路という)である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、インバータのスイッチングに伴うサージ電圧の発生期間がスイッチング周波数に関係なくほぼ一定であるため、第1の位置検出回路8aにおいて、スイッチング周波数が比較的低周波数(2〜6KHz)のパルス幅変調制御により制御されるブラシレスモータの場合、固定子巻線に発生する誘起電圧のパルス幅(時間幅)に対してサージ電圧の発生時間の比率が小さいので、回転子の位置検出がサージ電圧の影響をあまり受けずに検出できるが、スイッチング周波数が比較的高周波数(15〜20KHz)の場合には、スイッチング周波数に伴って狭くなる誘起電圧のパルス幅に対してサージ電圧の発生時間が長くなってサージ電圧の影響が大きくなる。このサージ電圧の影響を小さくしようと位置検出回路の時定数の値を大きく設定すると、誘起電圧そのものが時定数の影響を受け正確な回転子の位置検出が難しくなるという問題がある。
【0008】
これに対処するために第2の位置検出回路8bのようにしてサージ電圧の影響を少なくするよう時定数を大きな値にすることが可能であるが、このような位置検出回路8bでは低いスイッチング周波数において第1の位置検出回路に比べ精度、応答性ともに劣るという問題がある。
【0009】
このように、第1の位置検出回路8aでは、高いスイッチング周波数での位置検出において適しておらず、逆に第2の位置検出回路8bでは、低いスイッチング周波数での位置検出において、適していないという問題があった。
【0010】
本発明は上述のような問題点を解消し、スイッチング周波数の高低にかかわらずブラシレスモータの回転子位置検出を正確に行うことのできるブラシレスモータの駆動装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、永久磁石を有する回転子と、複数の固定子巻線が配置された固定子とを有し、これら固定子巻線のそれぞれに駆動用スイッチング素子を介してパルス幅変調されたスイッチング波による電力を供給して固定子に回転磁界を発生させるとともに、回転子の回転によって固定子巻線に生じる誘起電圧から回転子の位置を検出し、この回転子の位置検出信号に基づいて固定子巻線への通電を順次切り換えるようにしたブラシレスモータの駆動装置において、前記回転子の位置を検出する複数の位置検出回路を備え、これらの位置検出回路のいずれかを選択して前記駆動装置へ位置信号を伝達させる信号切り換え回路を備え、この切り換え回路はブラシレスモータの回転周波数が2〜6KHzであった場合は、直流電源電圧の1 / 2の電圧と、各相電圧に対し抵抗とコンデンサとが並列接続されたフィルタ回路を介して取られた分圧電圧とを比較する形式の位置検出回路からの出力信号を用いるように選択し、回転周波数が15〜20KHzであった場合は、各相電圧をY結線して得られた中性点電圧と、各相電圧に対し抵抗とコンデンサとが並列接続されたフィルタ回路を介して取られた分圧電圧とを比較するヒステリシス比較器の入力端子間にノイズ除去コンデンサを備え、更に各ヒステリシス比較器の出力側に時定数調整回路を備える形式の位置検出回路からの出力信号を用いるように選択することを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図5と同じ構成要素には同一の符号を付して適宜、その詳細な説明は省略する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るブラシレスモータ1の駆動装置を示す制御ブロック図である。図1において、1はブラシレスモータであり、このブラシレスモータ1を駆動するために、交流電源9から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータ4と、直流電力を供給されるインバータ5と、このインバータ5を制御するインバータ制御回路7と、ブラシレスモータ1の回転子3の回転によって生じる誘起電圧の変化を検出する第1の位置検出回路8aと、第2の位置検出回路8bと、それぞれの位置検出回路から検出された信号を選択してインバータ制御回路7に送る位置検出信号の信号切換回路12とを備えている。
【0016】
図2は図1に示す第1の位置検出回路8aの具体的な回路構成の一例を示す回路図であり、ブラシレスモータ1の固定子巻線2の各端子電圧をそれぞれ抵抗R1、R2、R3と、抵抗R4、R5、R6およびコンデンサC1、C2、C3との並列回路で分圧する端子電圧分圧回路13aと、コンバータ4により整流された直流電圧を抵抗R7、R8で1/2の電圧に分圧する直流電圧分圧回路14と、この直流電圧分圧回路14から検出された電圧と前記端子電圧分圧回路13aから検出された電圧とをそれぞれ比較することによりU相、V相、W相を介して回転子3の回転位置を検出する位置検出信号を得るようにした比較回路11aとを備えている。尚P1、P2、P3はコンパレータであり、これらU相、V相、W相の位置検出信号は図1の信号切換回路12に送られる。
【0017】
第1の位置検出回路8aは、比較的高いスイッチング周波数(15〜20KHz)で使用する場合に、回転子3の位置検出が不正確になるが、スイッチング周波数が比較的低い周波数(2〜6KHz)で使用する場合に、回転子3の位置検出が有効に検出できるという特徴がある。
【0018】
図3は図1に示す第2の位置検出回路8bの回路構成の一例を示す回路図であり、ブラシレスモータ1の固定子巻線2の各端子電圧をそれぞれ抵抗R11、R12、R13と、抵抗R14、R15、R16およびコンデンサC11、C12、C13の並列回路とで分圧する端子電圧分圧回路13bと、ブラシレスモータ1の固定子巻線2の各端子に抵抗R17、R18、R19を接続してY結線された合成回路15と、これら端子電圧分圧回路13bおよび合成回路15から検出された電圧をそれぞれ比較することによりU相、V相、W相を介して回転子3の回転位置を検出する位置検出信号を得るようにした比較回路11bとを備えている。尚、P11、P12、P13はコンパレータ、R21、R22、R23はヒステリシスを付けるための抵抗、C14、C15、C16はノイズ除去用のコンデンサ、R24、R25、R26は抵抗であり、抵抗R24、R25、R26、R27、R28、R29とコンデンサC17、C18、C19とで時定数の調整をしている。そして、各相の位置検出信号は図1の信号切換回路12に送られる。
【0019】
第2の位置検出回路8bは、時定数が第1の位置検出回路8aより大きく設定されているので、低いスイッチング周波数(2〜6KHz)の範囲で位置検出の精度、応答性ともに回路8aより劣るもののスイッチング周波数が比較的高い周波数(15〜20KHz)においては回転子3の位置検出が可能である。
【0020】
図4はブラシレスモータ1の通電していない相の固定子巻線2に回転子3の回転によって発生する誘起電圧の例を示す波形図であり、(a)の場合、(b)の場合ともにスイッチング周波数に対してデューティ(スイッチングの一周期Tcの通電時間Tonの割合)を50%にしてあり、(a)(b)いずれの場合もサージ電圧が一定期間Ts発生している。図4の(a)はインバータのスイッチング周波数が低い場合、(b)はインバータのスイッチング周波数が高い場合であり、このサージ電圧Tsは位置検出の妨げとなるため、時定数を適切な値に設定してサージ電圧の影響を受けないようにしている。
【0021】
すなわち、第1の位置検出回路8aでは通電時間Tonに対してサージ電圧の発生期間Tsの比率が小さいのでサージ電圧の影響を受けないような時定数K(図2のR4ないしR6およびC1ないしC3により設定される)の値を設定でき、位置検出精度、応答性ともに優れた位置検出が可能である。図4の(b)において、スイッチング周波数が高くなると、通電時間Tonに対してサージ電圧の発生期間Tsの占める割合が大きくなるため、低周波の時定数Kの設定では位置検出信号がサージ電圧の影響を充分に消すことができない。サージ電圧の影響を受けないようにするためにはもっと大きな値の時定数を設定する必要があるが、大きな値の時定数を設定すると誘起電圧に対しても影響が大きくなり正確な位置検出が難しくなってしまう。
【0022】
第2の位置検出回路8bでは、抵抗R1、R2、R3、R4、R5、R6とコンデンサC1、C2、C3とにより時定数Kよりも大きな値を設定してサージ電圧の影響を小さくすることができ、位置検出の精度、応答性ともにやや低下するもののサージ電圧の影響を受けることなく高いスイッチング周波数でも位置検出が可能である。
【0023】
図1に示す位置検出信号の信号切換回路12は、スイッチング周波数が低い場合には低い周波数で優れた位置検出が可能な第1の位置検出回路8aを使った回転子の回転位置の検出信号がインバータ制御回路7に送られるように作動し、インバータのスイッチング周波数が高い場合は位置検出精度、応答性ともにやや劣るものの高いスイッチング周波数でも位置検出が可能な第2の位置検出回路8bとから得られた位置検出信号がインバータ制御回路7に送られるように、位置検出回路8からインバータ制御回路7に送られる。回転子位置検出信号をスイッチング周波数に応じて選択する回路であり、これにより、精度の高い、応答性にすぐれた位置検出信号をブラシレスモータ駆動装置に使用することができる。
【0024】
このような回転子の回転位置検出は、例えば、ブラシレスモータ1を始動時から安定した所定回転数まで低いスイッチング周波数を使って駆動する場合、信号切換回路12は始動時から安定した所定回転数まで第1の位置検出回路8aから検出された信号を選択してインバータ制御回路7に送るようにする。
【0025】
また、例えば、始動時に低いスイッチング周波数を使いブラシレスモータ1が所定回転数に達したら高いスイッチング周波数に切り換えるというように、ブラシレスモータ1の回転している途中から異なるスイッチング周波数に切り換わる場合、信号切替回路12は始動時に第1の位置検出回路8aから検出された信号を選択し、高いスイッチング周波数に切り換わった時点で、第2の位置検出回路8bから検出された信号に切り換えて選択してインバータ制御回路7に送るようにする。
【0026】
このように、本発明によれば、ブラシレスモータ1の位置検出回路8をスイッチング周波数の低い場合に適した位置検出回路8aと、高い場合に適した位置検出回路8bとの2種類を設け、使用されるスイッチング周波数に応じて位置検出回路8の信号を選出することにより精度の高い安定したブラシレスモータ1の駆動が可能である。
【0027】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明ではブラシレスモータ1の位置検出回路8をスイッチング周波数の低い場合に適した位置検出回路8aと高い場合に適した位置検出回路8bとの2種類を設けて説明しているが、異なるスイッチング周波数においてそれぞれの周波数に適した3種類以上の位置検出回路8を設けておいても良い。異なるそれぞれの周波数に適した位置検出回路8を多く設けることにより、より精度の高い位置検出信号を得ることができ、これらの信号のいずれか1つを選択して使用することにより一層精度良く回転子の位置検出が実現されて、効率の良い最適なブラシレスモータ1の駆動が可能となる。
【0028】
また、ブラシレスモータ1も三相結線された固定子巻線でなくとも良く、四相以上の多相巻線であって、これに応じた制御が行われるようにインバータ5およびインバータ制御回路7を備えたものであっても良い。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、回転子の位置を検出する複数の位置検出回路を備え、これらの位置検出回路のいずれかを選択して前記駆動装置へ位置信号を伝達させる信号切り換え回路を備え、この切り換え回路はブラシレスモータの回転周波数が2〜6KHzであった場合は、直流電源電圧の1 / 2の電圧と、各相電圧に対し抵抗とコンデンサとが並列接続されたフィルタ回路を介して取られた分圧電圧とを比較する形式の位置検出回路からの出力信号を用いるように選択し、回転周波数が15〜20KHzであった場合は、各相電圧をY結線して得られた中性点電圧と、各相電圧に対し抵抗とコンデンサとが並列接続されたフィルタ回路を介して取られた分圧電圧とを比較するヒステリシス比較器の入力端子間にノイズ除去コンデンサを備え、更に各ヒステリシス比較器の出力側に時定数調整回路を備える形式の位置検出回路からの出力信号を用いるように選択するので、前記ブラシレスモータの回転周波数が2〜6KHzのときと15〜20KHzのときとの位置検出精度や応答性がともに優れた位置検出を可能にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るブラシレスモータの駆動装置を示す制御ブロック図である。
【図2】図1に示す第1の位置検出回路を主に示す回路図である。
【図3】図1に示す第2の位置検出回路を主に示す回路図である。
【図4】ブラシレスモータの回転子の回転によって通電していない固定子巻線に発生する誘起電圧を示す波形図である。
【図5】従来のブラシレスモータの駆動装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ブラシレスモータ
2 固定子巻線
3 回転子
4 コンバータ
5 インバータ
6 スイッチング半導体素子
7 インバータ制御回路
8 位置検出回路
8a 第1の位置検出回路
8b 第2の位置検出回路
9 交流電源
10 ブラシレスモータ駆動回路
11、11a、11b 比較回路
12 信号切換回路
13a、13b 端子電圧分圧回路
14 直流電圧分圧回路
15 合成回路

Claims (1)

  1. 永久磁石を有する回転子と、複数の固定子巻線が配置された固定子とを有し、これら固定子巻線のそれぞれに駆動用スイッチング素子を介してパルス幅変調されたスイッチング波による電力を供給して固定子に回転磁界を発生させるとともに、回転子の回転によって固定子巻線に生じる誘起電圧から回転子の位置を検出し、この回転子の位置検出信号に基づいて固定子巻線への通電を順次切り換えるようにしたブラシレスモータの駆動装置において、
    前記回転子の位置を検出する複数の位置検出回路を備え、これらの位置検出回路のいずれかを選択して前記駆動装置へ位置信号を伝達させる信号切り換え回路を備え、この切り換え回路はブラシレスモータの回転周波数が2〜6KHzであった場合は、直流電源電圧の1 / 2の電圧と、各相電圧に対し抵抗とコンデンサとが並列接続されたフィルタ回路を介して取られた分圧電圧とを比較する形式の位置検出回路からの出力信号を用いるように選択し、回転周波数が15〜20KHzであった場合は、各相電圧をY結線して得られた中性点電圧と、各相電圧に対し抵抗とコンデンサとが並列接続されたフィルタ回路を介して取られた分圧電圧とを比較するヒステリシス比較器の入力端子間にノイズ除去コンデンサを備え、更に各ヒステリシス比較器の出力側に時定数調整回路を備える形式の位置検出回路からの出力信号を用いるように選択することを特徴とするブラシレスモータの駆動装置。
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