以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る積層型チップバリスタ1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る積層型チップバリスタの断面構成を説明する図である。
積層型チップバリスタ1は、図1に示されるように、バリスタ素体3と、当該バリスタ素体3において対向する端面にそれぞれ形成される一対の外部電極5とを備えている。バリスタ素体3は、バリスタ部7と、当該バリスタ部7を挟むように配置される一対の外層部9とを有し、バリスタ部7と一対の外層部9とが積層された積層体として構成されている。バリスタ素体3は、直方体形状を呈しており、例えば、長さが1.6mmに設定され、幅が0.8mmに設定され、高さが0.8mmに設定されている。本実施形態に係る積層型チップバリスタ1は、いわゆる1608タイプの積層型チップバリスタである。
バリスタ部7は、バリスタ特性を発現するバリスタ層11と、当該バリスタ層11を挟むように配置される一対の内部電極13とを含んでいる。バリスタ部7では、バリスタ層11と内部電極13とが交互に積層されている。バリスタ層11における一対の内部電極13に重なる領域11aがバリスタ特性を発現する領域として機能する。
バリスタ層11は、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分として希土類金属元素、Co、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体やこれらの酸化物を含む素体からなる。本実施形態において、バリスタ層11は、副成分としてPr、Co、Cr、Ca、Si、K、Al等を含んでいる。これにより、バリスタ層11における一対の内部電極13に重なる領域11aが、ZnOを主成分とすると共にPrを含むこととなる。
本実施形態では、希土類金属として、Prを用いている。Prは、バリスタ特性を発現させるための材料となる。Prを用いる理由は、電圧非直線性に優れ、また、量産時での特性ばらつきが少ないためである。バリスタ層11におけるZnOの含有量は、特に限定されないが、バリスタ層11を構成する全体の材料を100質量%とした場合に、通常、99.8〜69.0質量%である。バリスタ層11の厚みは、例えば5〜60μm程度である。
一対の内部電極13は、それぞれの一端部がバリスタ素体3において対向する端面に交互に露出するように略平行に設けられている。各内部電極13は、上記各一端部において外部電極5と電気的に接続されている。この内部電極13は、導電材を含んでいる。内部電極13に含まれる導電材としては、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金からなることが好ましい。内部電極13の厚みは、例えば0.5〜5μm程度である。
外層部9は、バリスタ層11と同様に、ZnOを主成分として含むと共に、副成分として希土類金属元素、Co、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体やこれらの酸化物を含む素体からなる。本実施形態において、外層部9は、副成分としてPr、Co、Cr、Ca、Si、K、Al等を含んでいる。これにより、外層部9が、ZnOを主成分とすると共にPrを含むこととなる。外層部9の厚みは、例えば0.10〜0.38mm程度である。外層部9にあっても、希土類金属として、Prを用いている。
外部電極5は、バリスタ素体3の両端面を覆うように設けられている。一対の外部電極5は、第1の電極層5a及び第2の電極層5bをそれぞれ有している。第1の電極層5aは、バリスタ素体3の外表面に形成されており、Pdを含んでいる。第1の電極層5aは、後述するように導電性ペーストが焼成されることにより形成されている。導電性ペーストには、Ag−Pd合金粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものが用いられている。金属粉末は、Pd粒子を主成分とするものであってもよい。
第2の電極層5bは、第1の電極層5a上にめっき法により形成されている。本実施形態において、第2の電極層5bは、第1の電極層5a上にNiめっきにより形成されたNiめっき層と、当該Niめっき層上にSnめっきにより形成されたSnめっき層とを含んでいる。第2の電極層5bは、主として積層型チップバリスタ1をはんだリフローにより外部基板等に実装する際の、耐はんだ喰われ性及びはんだ付け性を向上することを目的として形成されるものである。
第2の電極層5bは、耐はんだ喰われ性及びはんだ付け性を向上する目的が達成される限り、必ずしも上述した材料の組み合わせに限定されない。めっき層を構成し得るその他の材料としては、例えば、Sn−Pb合金等が挙げられ、上述のNiやSnと組み合わせて用いても好適である。また、めっき層は、必ずしも2層構造に限定されるものではなく、1層又は3層以上の構造を有するものであってもよい。
続いて、図1〜図3を参照して、上述した構成を有する積層型チップバリスタ1の製造過程について説明する。図2は、第1実施形態に係る積層型チップバリスタの製造過程を説明するためのフロー図である。図3は、第1実施形態に係る積層型チップバリスタの製造過程を説明するための図である。
まず、バリスタ層11及び外層部9を構成する主成分であるZnOと、Pr、Co、Cr、Ca、Si、K及びAlの金属又は酸化物等の微量添加物とを所定の割合となるように各々秤量した後、各成分を混合してバリスタ材料を調整する(ステップS101)。その後、このバリスタ材料に有機バインダ、有機溶剤、有機可塑剤等を加えて、ボールミル等を用いて20時間程度混合・粉砕を行ってスラリーを得る。
このスラリーを、ドクターブレード法等の公知の方法により、例えばポリエチレンテレフタレートからなるフィルム上に塗布した後、乾燥して厚さ30μm程度の膜を形成する。こうして得られた膜をフィルムから剥離してグリーンシートを得る(ステップS103)。
次に、グリーンシートに、内部電極13に対応する電極部分を複数(後述する分割チップ数に対応する数)形成する(ステップS105)。内部電極13に対応する電極部分は、Pd粒子を主成分とする金属粉末、有機バインダ及び有機溶剤を混合した導電性ペーストをスクリーン印刷等の印刷法にて印刷し、乾燥させることにより形成する。
次に、電極部分が形成されたグリーンシートと、電極部分が形成されていないグリーンシートとを所定の順序で重ねてシート積層体を形成する(ステップS107)。こうして得られたシート積層体をチップ単位に切断して、分割された複数のグリーン体LS1(図3参照)を得る(ステップS109)。得られたグリーン体LS1では、電極部分EL1が形成されていない複数枚のグリーンシートGS1、電極部分EL1が形成されたグリーンシートGS2、電極部分EL1が形成されていない複数枚のグリーンシートGS1、電極部分EL1が形成されたグリーンシートGS3、電極部分EL1が形成されていない複数枚のグリーンシートGS1の順に、これらのグリーンシートGS1〜S3が積層されている。なお、グリーンシートGS2とグリーンシートGS3との間に、必ずしも電極部分EL1が形成されていないグリーンシートGS1を積層する必要はない。
次に、グリーン体LS1の外表面に、外部電極5(第1の電極層5a)用の導電性ペーストを付与する(ステップS111)。ここでは、グリーン体LS1の両端部に、一対の電極部分EL1のそれぞれに接するように、導電性ペーストを塗布し、乾燥させる。外部電極5用の導電性ペーストには、上述したように、Ag−Pd合金粒子あるいはPd粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものを用いることができる。なお、この導電性ペーストは、ガラスフリットを含んでいない。
次に、導電性ペーストが付与されたグリーン体LS1に、180〜400℃、0.5〜24時間程度の加熱処理を実施して脱バインダを行った後、さらに、1000〜1400℃、0.5〜8時間程度の焼成を行い(ステップS113)、バリスタ素体3と外部電極5の第1の電極層5aとを得る。この焼成によって、グリーン体LS1における電極部分EL1の間のグリーンシートGS1,S3はバリスタ層11となり、電極部分EL1は内部電極13となる。
次に、外部電極5の第1の電極層5a上に、Niめっき層及びSnめっき層を順次積層して、第2の電極層5bを形成する(ステップS115)。こうして積層型チップバリスタ1が得られる。Niめっきは、Niめっき浴(例えば、ワット浴)を用いたバレルめっき法にて行うことができる。Snめっきは、Snめっき浴(例えば、中性Snめっき浴)を用いたバレルめっき法にて行うことができる。なお、焼成後に、バリスタ素体3の表面からアルカリ金属(例えば、Li、Na等)を拡散させてもよい。
以上のように、本第1実施形態によれば、グリーン体LS1がPrを含み、外部電極5用の導電性ペーストがPdを含み、当該導電性ペーストが付与されたグリーン体LS1を焼成して、バリスタ素体3と第1の電極層5aとを得るので、バリスタ素体3と第1の電極層5aとが同時焼成されることとなる。これにより、バリスタ素体3と外部電極5(第1の電極層5a)との接着強度を向上させることができる。
バリスタ素体3と外部電極5との接着強度が向上するという効果は、焼成時における次のような事象に起因するものと考えられる。グリーン体LS1と導電性ペーストとを焼成する際に、グリーン体LS1に含まれるPrがグリーン体LS1の表面近傍、すなわちグリーン体LS1と導電性ペーストとの界面近傍に移動する。そして、グリーン体LS1と導電性ペーストとの界面近傍に移動したPrと導電性ペーストに含まれるPdとが相互拡散する。PrとPdとが相互拡散するとき、バリスタ素体3と外部電極5との界面近傍(界面も含む)に、PrとPdとの酸化物(例えば、Pr2Pd2O5やPr4PdO7等)が形成されることがある。このPrとPdとの酸化物によりアンカー効果が生じ、焼成により得られたバリスタ素体3と外部電極5との接着強度が向上する。
ところで、第1の電極層5aを形成するための導電性ペーストがガラスフリットを含んでいる場合、焼成の際に、ガラス成分が第1の電極層5aの表面に析出することがあり、めっき性やはんだ付与性が悪化する懼れがある。しかしながら、本第1実施形態では、第1の電極層5aを形成するための導電性ペーストがガラスフリットを含んでいないため、めっき性やはんだ付与性が悪化することはない。
(第2実施形態)
続いて、図4〜図8を参照して、第2実施形態に係る積層型チップバリスタ21の構成を説明する。図4は、第2実施形態に係る積層型チップバリスタを示す概略上面図である。図5は、第2実施形態に係る積層型チップバリスタを示す概略下面図である。図6は、図5におけるVI−VI線に沿った断面構成を説明するための図である。図7は、図5におけるVII−VII線に沿った断面構成を説明するための図である。図8は、図5におけるVIII−VIII線に沿った断面構成を説明するための図である。
積層型チップバリスタ21は、図4〜図8に示されるように、略矩形板状とされたバリスタ素体23と、当該バリスタ素体23の一方の主面(下面)23aにそれぞれ形成される複数(本実施形態においては、25個)の外部電極25〜29と、当該バリスタ素体23の他方の主面(上面)23bにそれぞれ形成される複数(本実施形態においては、20個)の外部電極30a〜30dと、を備えている。バリスタ素体23は、例えば、縦が3mm程度に設定され、横が3mm程度に設定され、厚みが0.5mm程度に設定されている。外部電極25,26,28,29は、積層型チップバリスタ21の入出力端子電極として機能し、外部電極27は、積層型チップバリスタ21のグランド端子電極として機能する。外部電極30a〜30dは、後述する抵抗体61,63に電気的に接続されるパッド電極として機能する。
バリスタ素体23は、複数のバリスタ層と、それぞれ複数の第1〜第3の内部電極層31,41,51とが積層された積層体として構成されている。各一層の第1〜第3の内部電極層31,41,51を内部電極群として、当該内部電極群がバリスタ素体23内においてバリスタ層の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)に沿って複数(本実施形態においては、5つ)配置されている。各内部電極群において、第1〜第3の内部電極層31,41,51は、互いの間に少なくとも一層のバリスタ層が介在するように第1の内部電極層31、第2の内部電極層41、第3の内部電極層51の順に配置されている。各内部電極群も、互いの間に少なくとも一層のバリスタ層が介在するように配置されている。実際の積層型チップバリスタ21では、複数のバリスタ層は、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されている。
各バリスタ層は、第1実施形態におけるバリスタ層11と同様に、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分として希土類金属元素、Co、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体やこれらの酸化物を含む素体からなる。第2実施形態において、希土類金属としてPrを用いており、バリスタ層は、副成分としてPr、Co、Cr、Ca、Si、K、Al等を含むこととなる。
各第1の内部電極層31は、図6に示されるように、第1の内部電極33と、第2の内部電極35とをそれぞれ含んでいる。各第1及び第2の内部電極33,35は、略矩形状を呈している。第1及び第2の内部電極33,35は、バリスタ素体23における積層方向に平行な側面から所定の間隔を有した位置に、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有してそれぞれ形成される。
各第1の内部電極33は、引き出し導体37aを介して外部電極25に電気的に接続されると共に、引き出し導体37bを介して外部電極30aに電気的に接続されている。引き出し導体37a,37bは、第1の内部電極33と一体に形成されており、それぞれがバリスタ素体23の一方の主面23aに臨むように、第1の内部電極33から伸びている。各第2の内部電極35は、引き出し導体39aを介して外部電極29に電気的に接続されると共に、引き出し導体39bを介して外部電極30bに電気的に接続されている。引き出し導体39a,39bは、第2の内部電極35と一体に形成されており、それぞれがバリスタ素体23の他方の主面23bに臨むように、第2の内部電極35から伸びている。
各第2の内部電極層41は、図7にも示されるように、第3の内部電極43をそれぞれ含んでいる。各第3の内部電極43は、略矩形状を呈している。第3の内部電極43は、バリスタ素体23における積層方向に平行な側面から所定の間隔を有した位置に、積層方向から見て第1及び第2の内部電極33,35と重なるように形成される。各第3の内部電極43は、引き出し導体47を介して外部電極27に電気的に接続されている。引き出し導体47は、第3の内部電極43と一体に形成されており、それぞれがバリスタ素体23の一方の主面23aに臨むように、第3の内部電極43から伸びている。
各第3の内部電極層51は、図8にも示されるように、第4の内部電極53と、第5の内部電極55とをそれぞれ含んでいる。各第4及び第5の内部電極53,55は、略矩形状を呈している。第4及び第5の内部電極53,55は、バリスタ素体23における積層方向に平行な側面から所定の間隔を有した位置に、積層方向から見て第3の内部電極43と重なり且つ互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有してそれぞれ形成される。
各第4の内部電極53は、引き出し導体57aを介して外部電極26に電気的に接続されると共に、引き出し導体57bを介して外部電極30cに電気的に接続されている。引き出し導体57a,57bは、第4の内部電極53と一体に形成されており、それぞれがバリスタ素体23の一方の主面23aに臨むように、第4の内部電極53から伸びている。各第5の内部電極55は、引き出し導体59aを介して外部電極28に電気的に接続されると共に、引き出し導体59bを介して外部電極30dに電気的に接続されている。引き出し導体59a,59bは、第5の内部電極55と一体に形成されており、それぞれがバリスタ素体23の他方の主面23bに臨むように、第5の内部電極55から伸びている。
第1〜第5の内部電極33,35,43,53,55は、第1実施形態における内部電極13と同じく、PdまたはAg−Pd合金を含んでいる。また、引き出し導体37a,37b,39a,39b,47,57a,57b,59a,59bも、PdまたはAg−Pd合金を含んでいる。
外部電極25〜29は、一方の主面23a上に、M行N列(パラメータM及びNそれぞれを2以上の整数とする)に2次元配列されている。本実施形態では、外部電極25〜29は5行5列に2次元配列されている。外部電極25〜29は、矩形状(本実施形態では、正方形状)を呈している。外部電極25〜29は、例えば、各一辺の長さが300μm程度に設定され、厚みが2μm程度に設定されている。
外部電極25〜29は、第1の電極層25a〜29a及び第2の電極層25b〜29bをそれぞれ有している。第1の電極層25a〜29aは、バリスタ素体3の外表面に形成されており、Pdを含んでいる。第1の電極層25a〜29aは、第1実施形態における第1の電極層5aと同じく、この導電性ペーストが焼成されることにより形成されている。導電性ペーストには、Pd粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものが用いられている。金属粉末は、Ag−Pd合金粒子を主成分とするものであってもよい。
第2の電極層25b〜29bは、第1の電極層25a〜29a上に印刷法あるいはめっき法により形成されている。第2の電極層25b〜29bは、AuあるいはPtからなる。印刷法を用いる場合は、Au粒子あるいはPt粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合した導電性ペーストを用意し、当該導電性ペーストを第1の電極層25a〜29a上に印刷し、焼付あるいは焼成することにより第2の電極層25b〜29bを形成する。めっき法を用いる場合は、真空めっき法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等)により、AuあるいはPtを蒸着させるにより第2の電極層25b〜29bを形成する。Ptからなる第2の電極層25b〜29bは、主として積層型チップバリスタ1をはんだリフローにより外部基板等に実装する際に好適であり、耐はんだ喰われ性及びはんだ付け性を向上することができる。Auからなる第2の電極層25b〜29bは、主として積層型チップバリスタ1をワイヤボンディングにより外部基板等に実装する際に好適である。
外部電極30aと外部電極30bとは、他方の主面23b上において、バリスタ層の積層方向に垂直且つ他方の主面23bに平行な方向に所定の間隔を有して配されている。外部電極30cと外部電極30dとは、他方の主面23b上において、バリスタ層の積層方向に垂直且つ他方の主面23bに平行な方向に所定の間隔を有して配されている。外部電極30aと外部電極30bとの上記所定の間隔、及び、外部電極30cと外部電極30dとの上記所定の間隔は、同じに設定されている。外部電極30a〜30dは、矩形状(本実施形態では、長方形状)を呈している。外部電極30a,30bは、例えば、長辺の長さが1000μm程度に設定され、短辺の長さが150μm程度に設定され、厚みが2μm程度に設定されている。外部電極30c,30dは、例えば、長辺の長さが500μm程度に設定され、短辺の長さが150μm程度に設定され、厚みが2μm程度に設定されている。
外部電極30a〜30dは、第1の電極層25a〜29aと同じく、導電性ペーストが焼成されることにより形成されている。この導電性ペーストには、Pd粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものが用いられている。金属粉末は、Ag−Pd合金粒子を主成分とするものであってもよい。
他方の主面23b上には、外部電極30aと外部電極30bとの間に掛け渡されるように抵抗体61が形成され、外部電極30cと外部電極30dとの間に掛け渡されるように抵抗体63が形成されている。抵抗体61,63は、Ru系、Sn系あるいはLa系の抵抗ペーストを塗布することにより形成される。Ru系の抵抗ペーストとしては、RuO2にAl2O3−B2O3−SiO2等のガラスを混合したものを用いることができる。Sn系の抵抗ペーストとしては、SnO2にAl2O3−B2O3−SiO2等のガラスを混合したものを用いることができる。La系の抵抗ペーストとしては、LaB6にAl2O3−B2O3−SiO2等のガラスを混合したものを用いることができる。
抵抗体61の一端は、外部電極30a及び引き出し導体37bを通して第1の内部電極33に電気的に接続されている。抵抗体61の他端は、外部電極30b及び引き出し導体39bを通して第2の内部電極35に電気的に接続されている。抵抗体63の一端は、外部電極30c及び引き出し導体57bを通して第4の内部電極53に電気的に接続されている。抵抗体63の他端は、外部電極30d及び引き出し導体59bを通して第5の内部電極55に電気的に接続されている。
第3の内部電極43は、上述したように、積層方向から見て第1及び第2の内部電極33,35と重なるように形成されている。したがって、バリスタ層における第1の内部電極33と第3の内部電極43とに重なる領域がバリスタ特性を発現する領域として機能し、バリスタ層における第2の内部電極35と第3の内部電極43とに重なる領域がバリスタ特性を発現する領域として機能する。
更に、第3の内部電極43は、上述したように、積層方向から見て第4及び第5の内部電極53,55と重なるように形成されている。したがって、また、バリスタ層における第4の内部電極53と第3の内部電極43とに重なる領域がバリスタ特性を発現する領域として機能し、バリスタ層における第5の内部電極55と第3の内部電極43とに重なる領域がバリスタ特性を発現する領域として機能する。
上述した構成を有する積層型チップバリスタ21においては、図9に示されるように、抵抗RとバリスタB1とバリスタB2とが、π型に接続されることとなる。抵抗Rは、抵抗体61あるいは抵抗体63により構成される。バリスタB1は、第1の内部電極33と第3の内部電極43とバリスタ層における第1及び第3の内部電極33,43に重なる領域とにより、あるいは、第4の内部電極53と第3の内部電極43とバリスタ層における第4及び第3の内部電極53,43に重なる領域とにより構成される。バリスタB2は、第2の内部電極35と第3の内部電極43とバリスタ層における第2及び第3の内部電極35,43に重なる領域とにより、あるいは、第5の内部電極55と第3の内部電極43とバリスタ層における第5及び第3の内部電極55,43に重なる領域とにより構成される。
続いて、図10及び図11を参照して、上述した構成を有する積層型チップバリスタ21の製造過程について説明する。図10は、第2実施形態に係る積層型チップバリスタの製造過程を説明するためのフロー図である。図11は、第2実施形態に係る積層型チップバリスタの製造過程を説明するための図である。
まず、バリスタ層を構成する主成分であるZnOと、Pr、Co、Cr、Ca、Si、K及びAlの金属又は酸化物等の微量添加物とを所定の割合となるように各々秤量した後、各成分を混合してバリスタ材料を調整する(ステップS201)。その後、このバリスタ材料に有機バインダ、有機溶剤、有機可塑剤等を加えて、ボールミル等を用いて20時間程度混合・粉砕を行ってスラリーを得る。
このスラリーを、ドクターブレード法等の公知の方法により、例えばポリエチレンテレフタレートからなるフィルム上に塗布した後、乾燥して厚さ30μm程度の膜を形成する。こうして得られた膜をフィルムから剥離してグリーンシートを得る(ステップS203)。
次に、グリーンシートに、第1及び第2の内部電極33,35に対応する電極部分を複数(後述する分割チップ数に対応する数)形成する(ステップS205)。同様にして、異なるグリーンシートに、第3の内部電極43に対応する電極部分を複数(後述する分割チップ数に対応する数)形成する(ステップS205)。更に、異なるグリーンシートに、第4及び第5の内部電極53,55に対応する電極部分を複数(後述する分割チップ数に対応する数)形成する(ステップS205)。第1〜第5の内部電極33,35,43,53,55に対応する電極部分は、Pd粒子を主成分とする金属粉末、有機バインダ及び有機溶剤を混合した導電性ペーストをスクリーン印刷等の印刷法にて印刷し、乾燥させることにより形成する。
次に、電極部分が形成された各グリーンシートと、電極部分が形成されていないグリーンシートとを所定の順序で重ねてシート積層体を形成する(ステップS207)。こうして得られたシート積層体をチップ単位に切断して、分割された複数のグリーン体LS2(図11参照)を得る(ステップS209)。得られたグリーン体LS2では、第1及び第2の内部電極33,35及び引き出し導体37a,37b,39a,39bに対応する電極部分EL2が形成されたグリーンシートGS11と、第3の内部電極43及び引き出し導体47に対応する電極部分EL3が形成されたグリーンシートGS12と、第4及び第5の内部電極53,55及び引き出し導体57a,57b,59a,59bに対応する電極部分EL4が形成されたグリーンシートGS13と、電極部分EL2〜EL4が形成されていないグリーンシートGS14とが順次積層されている。なお、電極部分EL2〜EL4が形成されていないグリーンシートGS14は、必要に応じて、それぞれの箇所において複数枚ずつ積層してもよい。
次に、グリーン体LS2の外表面に、外部電極25〜29の第1の電極層25a〜29a、外部電極30a〜30d用の導電性ペースト及び外部電極25〜29の第2の電極層25b〜29b用の導電性ペーストを付与する(ステップS211)。ここでは、グリーン体LS2の一方の主面上に、対応する電極部分EL2〜EL4に接するように導電性ペーストをスクリーン印刷工法にて印刷した後、乾燥させることによって、第1の電極層25a〜29aに対応する電極部分を形成する。そして、第1の電極層25a〜29aに対応する電極部分上に、導電性ペーストをスクリーン印刷工法にて印刷した後、乾燥させることによって、第2の電極層25b〜29bに対応する電極部分を形成する。また、グリーン体LS2の他方の主面上に、対応する電極部分EL2,EL4に接するように導電性ペーストをスクリーン印刷工法にて印刷した後、乾燥させることによって、外部電極30a〜30dに対応する電極部分を形成する。第1の電極層25a〜29a及び外部電極30a〜30d用の導電性ペーストには、上述したように、Ag−Pd合金粒子あるいはPd粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものを用いることができる。第2の電極層25b〜29b用の導電性ペーストには、上述したように、Pt粒子を主成分とする金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤を混合したものを用いることができる。なお、これらの導電性ペーストは、ガラスフリットを含んでいない。
次に、導電性ペースト及び抵抗ペーストが付与されたグリーン体LS2に、180〜400℃、0.5〜24時間程度の加熱処理を実施して脱バインダを行った後、さらに、1000〜1400℃、0.5〜8時間程度の焼成を行い(ステップS213)、バリスタ素体23と第1の電極層25a〜29aと第2の電極層25b〜29bと外部電極30a〜30dとを得る。この焼成によって、グリーン体LS2におけるグリーンシートGS11〜GS14はバリスタ層となる。電極部分EL2は、第1及び第2の内部電極33,35及び引き出し導体37a,37b,39a,39bとなる。電極部分EL3は、第3の内部電極43及び引き出し導体47となる。電極部分EL4は、第4及び第5の内部電極53,55及び引き出し導体57a,57b,59a,59bとなる。
次に、抵抗体61,63を形成する(ステップS215)。これにより、積層型チップバリスタ21が得られることとなる。抵抗体61,63は、以下のようにして形成する。まず、バリスタ素体23の他方の主面23b上に、各一対の外部電極30aと外部電極30bとに、及び、各一対の外部電極30cと外部電極30dとにそれぞれ掛け渡すように、抵抗体61,63に対応する抵抗領域を形成する。抵抗体61,63に対応する各抵抗領域は、上述した抵抗ペーストをスクリーン印刷工法にて印刷し、乾燥させることにより形成する。そして、抵抗ペーストを所定温度にて焼き付け、抵抗体61,63を得る。
なお、焼成後に、バリスタ素体23の表面からアルカリ金属(例えば、Li、Na等)を拡散させてもよい。また、積層型チップバリスタ21の外表面に、外部電極25〜29が形成された領域を除いて、絶縁層(保護層)を形成してもよい。絶縁層は、グレーズガラス(例えば、SiO2、ZnO、B、Al2O3等からなるガラス等)を印刷し、所定温度にて焼き付けることにより形成することができる。
以上のように、本第2実施形態によれば、グリーン体LS2がPrを含み、外部電極25〜29の第1の電極層25a〜29a及び外部電極30a〜30d用の導電性ペーストがPdを含み、当該導電性ペーストが付与されたグリーン体LS2を焼成して、バリスタ素体23と第1の電極層25a〜29a及び外部電極30a〜30dとを得るので、バリスタ素体23と第1の電極層25a〜29a及び外部電極30a〜30dとが同時焼成されることとなる。これにより、バリスタ素体23と外部電極25〜29(第1の電極層25a〜29a)及び外部電極30a〜30dとの接着強度を向上させることができる。
バリスタ素体23と外部電極25〜29,30a〜30dとの接着強度が向上するという効果は、焼成時における次のような事象に起因するものと考えられる。グリーン体LS2と導電性ペーストとを焼成する際に、グリーン体LS2に含まれるPrがグリーン体LS2の表面近傍、すなわちグリーン体LS2と導電性ペーストとの界面近傍に移動する。そして、グリーン体LS2と導電性ペーストとの界面近傍に移動したPrと導電性ペーストに含まれるPdとが相互拡散する。PrとPdとが相互拡散するとき、バリスタ素体23と外部電極25〜29,30a〜30dとの界面近傍(界面も含む)に、PrとPdとの酸化物(例えば、Pr2Pd2O5やPr4PdO7等)が形成されることがある。このPrとPdとの酸化物によりアンカー効果が生じ、焼成により得られたバリスタ素体23と外部電極25〜29,30a〜30dとの接着強度が向上する。
ところで、第1の電極層25a〜29aを形成するための導電性ペーストがガラスフリットを含んでいる場合、焼成の際に、ガラス成分が第1の電極層25a〜29aの表面に析出することがあり、めっき性やはんだ付与性が悪化する懼れがある。しかしながら、本第1実施形態では、第1の電極層25a〜29aを形成するための導電性ペーストがガラスフリットを含んでいないため、めっき性やはんだ付与性が悪化することはない。
ところで、本第2実施形態の積層型チップバリスタ21では、入出力端子電極として機能する外部電極25,26,28,29とグランド端子電極として機能する外部電極27とが共に、バリスタ素体23の一方の主面23aに配されている。すなわち、積層型チップバリスタ21は、BGA(Ball Grid Array)パッケージとされた積層型チップバリスタである。この積層型チップバリスタ21は、はんだボールを用いて各外部電極25〜29と当該各外部電極25〜29に対応する外部基板のランドとを電気的及び機械的に接続することにより、外部基板に実装される。積層型チップバリスタ21が外部基板に実装された状態では、各内部電極33,35,43,53,55は外部基板に直交する方向に延びることとなる。
BGAパッケージとされた積層型チップバリスタは、入出力端子電極あるいはグランド端子電極として機能する外部電極の面積が特に小さい。このため、バリスタ素体と外部電極との接着強度が低くなり、外部電極がバリスタ素体から剥がれてしまう懼れがある。しかしながら、第2実施形態の積層型チップバリスタ21では、上述したようにバリスタ素体23と外部電極25〜29(第1の電極層25a〜29a)との接着強度が向上しているので、外部電極25〜29がバリスタ素体23から剥がれることはない。
第1及び第2実施形態に係る積層型チップバリスタ1,21では、バリスタ素体3,23がBiを含んでいない。バリスタ素体3,23がBiを含まない理由は、以下の通りである。バリスタ素体が、ZnOを主成分とすると共にBiを含み、外部電極が、バリスタ素体と同時焼成されることにより当該バリスタ素体の外表面に形成され且つPdを含む電極層を有する場合、バリスタ素体と電極層との同時焼成により、BiとPdとが化合し、バリスタ素体と電極層との界面にBiとPdとの化合物が形成されることとなる。BiとPdとの化合物は、特に、バリスタ素体との濡れ性が悪く、バリスタ素体と電極層との接着強度を低下させるように作用する。このため、バリスタ素体と電極層との接着強度を所望の状態に確保することが困難となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した積層型チップバリスタ1は、一対の内部電極がバリスタ層を挟んだ構造を有していたが、本発明のバリスタは、このような構造が複数積層された積層型チップバリスタであってもよい。
1…積層型チップバリスタ、3…バリスタ素体、5…外部電極、5a…第1の電極層、5b…第2の電極層、13…内部電極、21…積層型チップバリスタ、23…バリスタ素体、25〜29…外部電極、25a〜29a…第1の電極層、25b〜29b…第2の電極層、30a〜30d…外部電極、31…第1の内部電極層、41…第2の内部電極層、51…第3の内部電極層、61,63…抵抗体、グリーン体…LS1,LS2。