JP4227293B2 - 蛍光測定による核酸の検出定量方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の塩基配列を有する標的核酸の検出ならびに定量に利用される、乾式蛍光測定による核酸の高感度な検出定量方法に関する。また、本発明は、前記の検出定量方法に専ら使用されるハイブリダイゼーション法による検出用基板にも関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、特定配列を有する標的核酸分子、例えば、生物の遺伝子に由来する標的核酸分子の検出方法として、その相補的な塩基配列を有するプローブを利用するハイブリダイゼーション法が良く知られている。このハイブリダイゼーション法では、特定の塩基配列を有する核酸(プローブ核酸)を予め用意し、その塩基配列と相補的な塩基配列を持つ検体(標的核酸)のみが高い選択性でハイブリッド体を形成することを利用している。形成されたハイブリッド体を検出する手段としては、プローブ核酸、あるいは標的核酸をラジオアイソトープで標識する方法、蛍光色素で標識する方法、発光試薬を利用する方法などが挙げられる。また、プローブ核酸または標的核酸を固相に固定化して検出する方法、あるいは、溶液中でプローブ核酸と標的核酸との二本鎖形成に伴う変化を追跡することにより検出する方法がある。
【0003】
これら種々の方法の中で、固相にプローブ核酸または標的核酸のいずれかを固定化して検出する方法は、より高い検出感度を持つ方法として広く用いられている。すなわち、この方法では、一旦固相上に固定化することより、未反応の試薬を洗い流して除去することができる。その結果として、未反応の試薬に起因するバックグランドを下げることが可能となり、相対的な感度を大幅に上昇させることができる。一方、ラジオアイソトープによる標識は、個々には微量な放射線量であるものの、継続的な使用に伴い積算される被曝量による人体への影響、ならびに、使用後の放射性廃棄物の処理などの問題を有している。そのため、近年では、ラジオアイソトープによる標識に代えて、蛍光色素で標識する方法、発光試薬を利用する方法などの利用が主流になりつつある。
【0004】
ハイブリダイゼーション法を用い、簡便に特定の遺伝子に由来する核酸分子を検出する手段として、マイクロプレート表面にプローブ核酸を固定し、ここに例えば、mRNAなどの標的核酸を作用させ、形成されるハイブリッド体を検出する手法がある。このハイブリッド体形成を検出する際、プローブ核酸の標識の利用でなく、二本鎖核酸に特異的に作用し、蛍光が増大する色素、例えば、エチジウムブロマイド(EB)を利用することにより、ハイブリッド体を検出するという手法も開示されている(特表平7−506482号公報)。
【0005】
この二本鎖核酸の検出に利用される蛍光色素の研究も進み、感度の良い核酸検出用蛍光色素が種々開発されてきている。溶液中で二本鎖核酸に特異的に作用して蛍光を発する蛍光色素として、例えば、Molecular Probe社からYOYO-1を初めとするいくつかの色素が販売されている。また、二本鎖核酸存在下でのみ蛍光を発する色素として、2−メチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩も、利用可能であることが報告されている(Nucleic Acids Research, 1995, Vol.23, No.8, p.1445-1446)。
【0006】
特許第2575270号特許掲載公報には、核酸塩基を検出する際、蛍光性の分子の溶液を微少な液滴状態にして基板表面に付着させ、自然乾燥をし、この基板表面に固定されている蛍光性の分子を利用し、核酸塩基を単分子状態で検出する方法が開示されている。この方法の特徴は、検出に利用する蛋白に結合させている蛍光分子を乾燥状態におくことにより、検出感度の上昇を図っている点にある。具体的な構成は、核酸分子を構成する4種の塩基にそれぞれ特異的なモノクロナル抗体を準備し、各塩基にこのモノクロナル抗体を反応させ、次いで、塩基と反応したモノクロナル抗体に特異的に結合し、蛍光を発するモノクロナル抗体を反応させ、その蛍光を検出することで塩基の種別を決定するものであり、この塩基種別の決定法を、核酸分子の塩基配列決定に利用するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来報告されている蛍光性分子のほとんどは、単独では、乾燥によりその蛍光能を失うものである。また、生体試料は一般に水溶液中において、その本来の機能を発揮・保持するものであり、このような生体試料を蛍光によって検出する際にも、通常は、対象の生体試料を水溶液に溶解させて、あるいは水溶液中に懸濁させて、それから発する蛍光を観察する。
【0008】
上記マイクロプレート表面に固定した上で行う検出の場合も、一般には、ハイブリッド体を形成させた後、各ウェルに水溶液を加え、溶液として蛍光を観察定量する。このように溶液に調製した上で、蛍光の定量を行う際には、ある程度の容量の溶液が必要である。また、その溶液中には、ある程度の濃度の蛍光分子が存在することが必要である。すなわち、用いる検出装置、蛍光分子自体の蛍光特性にも依るが、その検出限界は、溶液中に含まれる蛍光分子濃度により決まり、数分子を検出することは事実上不可能である。
【0009】
また、生体試料の蛍光顕微鏡観察でも、試料の懸濁液をスライドガラスにのせ、その上に乾燥を防ぐとともに、表面を保護するために、通常、カバーガラスを載せて観察する。当然のことながら、乾燥により蛍光能を喪失する蛍光色素を利用する際には、有効な方法であるが、乾燥に対して安定な蛍光能を示す蛍光色素を利用する際には、懸濁液の溶媒自体に起因するラマン散乱やカバーガラスなどのガラス表面における反射による背景光が問題となることも少なくない。さらには、場合によっては、溶媒と試料分子との反応による色素の劣化が生じることもある。以上に述べた通り、溶液または懸濁液に調製した試料を用いることは、溶媒を用いることに起因する問題のため、高い検出感度を達成する上では、好ましくないこともある。
【0010】
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、プローブ核酸を利用するハイブリダイゼーション法により単離された特定の塩基配列を有する核酸を検出する際、そのハイブリッド体に結合した蛍光分子からの蛍光を観測する時、高い検出感度を達成する上でその障害ともなり得る溶媒を排除し、なお、水溶液あるいは懸濁液状態における検出感度と比較しても、少なくとも遜色のない、あるいはより高い感度を達成することが可能な、新規な構成を採用した蛍光測定による核酸の検出・定量を行う方法を提供することにある。加えて、本発明は、前記の検出・定量方法に専ら用いる、検出用の固相表面を有する固体基板の提供をも、併せてその目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記の課題を解決すべく、鋭意検討・研究を進め、その結果、上述するようなプローブ核酸を利用するハイブリダイゼーション法により単離された特定の塩基配列を有する核酸を検出・定量する場合において、特定の塩基配列を有する標的核酸と、それにハイブリダイゼーション可能な所定の塩基配列を含むプローブ核酸とが形成するハイブリッド体を、そのハイブリッド体に結合した蛍光分子からの蛍光を観測することで検出・定量する際、溶媒の水が存在する状態でハイブリダイゼーションを行い、形成するハイブリッド体に蛍光分子が結合した蛍光性の核酸分子を固相表面上に固定させ、一旦単離を図り、その後、固相表面上に固定されている目的の蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作を施し、検出用の固体基板とし、この固体基板上の、乾燥状態となった蛍光性の核酸分子に励起光を照射し、それが発する蛍光を検出・定量する工程構成を採用すると、蛍光観測の際に、その障害ともなる溶媒を排除でき、また、溶媒の蒸散を防止するためのカバーガラスも不要となり、従って、溶媒やカバーガラスの使用に付随する感度低下を回避できることを見出した。
【0012】
さらに、本発明者らは、かかる方法を用いる際、乾燥状態となった蛍光性の核酸分子から発する蛍光自体は、溶媒に浸された状態において得られる蛍光と遜色のないものとなることを確認し、前記の溶媒やカバーガラスの使用に付随する感度低下の回避と相俟って、高い検出感度が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の標的核酸の検出および定量の少なくとも一方を行う方法は、
特定の塩基配列を有する標的核酸の検出、及び定量の少なくとも一方を行う方法であって、
前記特定の塩基配列を有する標的核酸と、それにハイブリダイゼーション可能な所定の塩基配列を含むプローブ核酸とが形成するハイブリッド体に蛍光分子を結合させた、蛍光性の核酸分子を固相表面上に固定する工程;
固相表面上に固定されている前記蛍光性の核酸分子を乾燥させる工程; 及び乾燥状態となった前記蛍光性の核酸分子に励起光を照射し、それが発する蛍光を検出する工程を有することを特徴とする方法である。本発明の方法では、ハイブリッド体を形成する前記プローブ核酸が固相表面上に固定されている状態とすることができる。また、ハイブリッド体を形成する前記標的核酸が固相表面上に固定されている状態とすることもできる。
【0014】
一方、ハイブリッド体に結合される前記蛍光分子として、核酸二本鎖に特異的に結合する蛍光色素を用いることができる。その際、ハイブリッド体に結合されている前記蛍光分子が、乾燥することにより、溶液状態において発する蛍光強度と比較して、その蛍光強度が増大する特性を有することが好ましい。例えば、前記の特性を有する蛍光分子として、2−メチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩を用いるとより好ましい。なお、一本鎖核酸に共有結合により固定される蛍光分子としては、ローダミンのほか、さらには、2−メチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩の誘導体である2−カルボキシエチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩、あるいは2−カルボキシプロピル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩も好適に用いることができる。
【0015】
本発明の方法では、蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作において、その乾燥手段に自然乾燥を採用することができる。同じく、蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作において、その乾燥手段に短時間乾燥を採用することもできる。乾燥手段に短時間乾燥を採用する際には、その短時間乾燥の操作には、加熱が含まれる手段とすることができる。また、その短時間乾燥の操作には、乾燥窒素ガスの吹き付けが含まれる手段とすることもできる。
【0016】
本発明の方法において、蛍光性の核酸分子をその表面上に固定させる前記固相には、ガラス基板を採用することができる。その際、蛍光性の核酸分子の固相表面上への固定は、
前記ガラス基板と固定に係わる核酸とがそれぞれ官能基を有し、前記官能基同士は互いに化学反応により共有結合するものであり、
前記共有結合の形成によってなされるようにすることができる。例えば、ガラス基板表面上の官能基がマレイミド基であり、前記ガラス基板表面上に固定される核酸の有する官能基がチオール基(メルカプト基:−SH)である組み合わせを用いることができる。また、ガラス基板表面上の官能基がエポキシ基であり、前記ガラス基板表面上に固定される核酸の有する官能基がアミノ基である組み合わせを用いることもできる。
【0017】
本発明の方法においては、蛍光性の核酸分子の固相表面上への固定にあたって、
前記固相表面に、多種類の核酸が互いに独立したスポットとしてアレイ状に配列され、
前記アレイ状スポットの密度は、1平方インチあたり1000個以上とされることも可能である。
【0018】
さらに、本発明の標的核酸の検出及び定量の少なくとも一方を行うための固体基板は、上述の本発明の一実施態様にかかる、前記請求項1に記載の標的核酸の検出及び定量の少なくとも一方を行う方法に用いられる固体基板であって、
検出対象である、特定の塩基配列を有する標的核酸と、それにハイブリダイゼーション可能な所定の塩基配列を含むプローブ核酸とで形成されているハイブリッド体に蛍光分子が結合されている蛍光性の核酸分子をその表面に乾燥状態で保持していることを特徴とする固体基板である。本発明にかかる固体基板においては、ハイブリッド体を形成する前記プローブ核酸が固相表面上に固定されている固体基板とすることができる。あるいは、ハイブリッド体を形成する前記標的核酸が固相表面上に固定されている固体基板とすることもできる。
【0019】
一方、ハイブリッド体に結合される前記蛍光分子には、核酸二本鎖に特異的に結合する蛍光色素を採用することができる。また、ハイブリッド体に結合されている前記蛍光分子は、ハイブリッド体の核酸二本鎖のうち、いずれかの一本鎖核酸に共有結合により固定されているものであってもよい。
【0020】
本発明の固体基板において、ハイブリッド体に結合されている前記蛍光分子が、乾燥することにより、溶液状態において発する蛍光強度と比較して、その蛍光強度が増大する特性を有することが好ましい。この特性を有する蛍光分子として、例えば、2−メチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩は好適に用いることができる。また、一本鎖核酸に共有結合により固定される蛍光分子として、ローダミンのほか、さらには、2−メチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩の誘導体である2−カルボキシエチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩、あるいは2−カルボキシプロピル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩も好適に用いることができる。
【0021】
本発明の固体基板において、蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作において、その乾燥手段に自然乾燥を利用したものであってもよい。あるいは、蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作において、その乾燥手段に短時間乾燥を利用したものであってもよい。この乾燥手段に短時間乾燥を利用したものでは、その短時間乾燥の操作には、加熱が含まれる手段を用いたものでもよい。あるいは、その短時間乾燥の操作には、乾燥窒素ガスの吹き付けが含まれる手段を用いたものでもよい。
【0022】
本発明の固体基板において、蛍光性の核酸分子をその表面上に固定させる前記固相として、ガラス基板を用いることができる。その場合には、蛍光性の核酸分子の固相表面上への固定は、
前記ガラス基板と固定に係わる核酸とがそれぞれ官能基を有し、前記官能基同士は互いに化学反応により共有結合するものであり、
前記共有結合の形成によってなされている基板とすることができる。例えば、ガラス基板表面上の官能基がマレイミド基であり、前記ガラス基板表面上に固定される核酸の有する官能基がチオール基(−SH)である組み合わせを用いることができる。また、ガラス基板表面上の官能基がエポキシ基であり、前記ガラス基板表面上に固定される核酸の有する官能基がアミノ基である組み合わせを用いることもできる。
【0023】
本発明の固体基板は、蛍光性の核酸分子の固相表面上への固定にあたって、
前記固相表面に、多種類の核酸が互いに独立したスポットとしてアレイ状に配列され、
前記アレイ状スポットの密度は、1平方インチあたり1000個以上とされている基板とすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる蛍光を用いた核酸の検出及び定量の少なくとも一方を行う方法(以降「核酸の検出定量方法」と略す)は、固相表面に核酸ハイブリッド体を一旦固定し、この固定状態のまま乾燥し、ハイブリッド体に結合した蛍光分子に起因する蛍光を検出・測定することで、高い感度の検出を達成するものである。具体的には、蛍光分子が結合したハイブリッド体のみを固相表面に選択的に固定することで、ハイブリッド体に結合していない蛍光分子の影響は、洗浄により容易に排除できる。一方、固相表面に固定されたハイブリッド体を乾燥すると、結合している蛍光分子は、その二本鎖核酸に取り囲まれ、加えて、その状態で乾燥・固定されるため、蛍光強度はその後維持される。あるいは、蛍光分子によっては、乾燥して、二本鎖核酸に取り囲まれて、分子形状の安定化が成されると、水溶液中に孤立している際よりも、蛍光強度の増大が成されることもある。また、溶媒によるラマン散乱といった、蛍光測定における雑音成分も除去される。本発明は、前記の固定と乾燥に伴う、これらの干渉成分の排除と、蛍光強度の維持・増大を利用することで、より感度の向上を果たしたものである。
【0025】
以下に、本発明にかかる標的核酸の検出定量方法をより詳しく説明する。
【0026】
本発明にかかる標的核酸の検出定量方法では、標識に用いる蛍光分子(色素)に由来する蛍光を乾燥状態において測定するので、用いる蛍光分子(色素)には、乾燥後も蛍光能を有するものを選択することが望ましい。つまり、蛍光標識に用いられる蛍光分子(色素)のうち、アルカリ性水溶液中において高い蛍光能を有する蛍光色素FITC(フルオロセインイソチオシアネート)は、乾燥状態では、その高い蛍光能を失うものであり、本発明においては、好ましいものではない。一方、エタノール中に溶解し、強い蛍光を発するローダミンは、乾燥した際にも、その蛍光能を保持するものであり、本発明に利用することができる。
【0027】
特に、2−メチル−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩(P2と略す)は、単独では、水溶液中では蛍光を発せず、二本鎖核酸に結合した状態では、顕著な蛍光を発し、その状態で乾燥させると、蛍光がさらに増大する特徴を有するため、本発明により適する蛍光分子である。このP2と同様に、二本鎖核酸に結合した状態では、顕著な蛍光を発し、その状態で乾燥させると、蛍光がさらに増大する特徴を有するピリリウム塩、例えば、特開平7−174759号公報、特開平9−40661号公報などに記載される類似のピリリウム塩も、本発明により適する蛍光分子である。このP2などのピリリウム塩は、ピリリウム環に二つの置換フェニル基が置換している環集合分子であるが、水溶液中では、置換フェニル基とピリリウム環とは、その環面が同一平面になく、共役系を形成しないため、可視領域に蛍光を示さない。しかし、二本鎖核酸分子に結合すると、核酸塩基の環平面にスタックすると、置換フェニル基とピリリウム環とは、全体として平面性を獲得して、共役系を形成するようになり、可視領域に蛍光を示すと推察される。この核酸塩基の環平面にスタックした状態は、乾燥状態においても維持され、寧ろ、溶媒分子が喪失すると、前記のスタックはより密なものとなり、蛍光能の増大が起きている。この現象は、一本鎖核酸に結合させて、所謂標識プローブとした際にも、二本鎖核酸分子となった際、遊離の色素と同様にスタックが可能な限り、同様に生じる。
【0028】
この乾燥状態に達すると、二本鎖核酸分子の核酸塩基面との間で、安定な平面構造をとり、さらに、その構造は、核酸塩基の作る微少な疎水環境により安定化される。しかしながら、乾燥状態に達するまで、水分子や塩と長時間共存させると、色素分子自体の劣化が誘起される場合があるので、短時間のうちに乾燥を完了することが望ましい。より具体的には、蛍光分子が結合した二本鎖核酸分子を固定した基板を、予め100℃に加熱したオーブンに入れて瞬時に水分子を加熱蒸散させる方法や、表面の水分を乾燥窒素ガスにより吹き飛ばし、急速に乾燥する方法が特に有効である。
【0029】
乾燥試料とすることで、溶液試料と異なり、溶媒分子によるラマン散乱、また、蒸散防止のため表面を覆う、カバーガラス表面における励起光の反射など、不要な背景光も当然のことながら排除でき、より高い感度で目的の蛍光の測定が可能となる。
【0030】
蛍光分子(色素)は、ガラス基板上に形成された核酸ハイブリッドの二本鎖核酸内部に入ることができれば、その形態は限定されず、遊離の蛍光分子(色素)がインターカレーションなどの機構により、二本鎖核酸分子と特異的に結合するものであっても構わない。しかしながら、好ましい形態は、二本鎖核酸分子当たり、一定の数の蛍光分子(色素)が結合する状態が達成されることであり、従って、核酸プローブまたは標的核酸分子、いずれかの一本鎖核酸に共有結合されていることが好ましい。例えば、核酸プローブに標識として、蛍光分子(色素)を予め所定の部位に、一定の個数結合させておくことにより、形成されたハイブリッド体と比例する蛍光量が測定されるものとなる。なお、標的核酸分子に蛍光分子(色素)を予め結合させるには、例えば、PCR法を用いて、目的の標的核酸を増幅する際、そのプライマーとして、蛍光分子(色素)を予め結合させた標識プライマーを用いることで、簡便に行える。
【0031】
また、検出系に水溶液を持ち込まないということは、防水という点に最早配慮する必要がないことを意味する。従って、試料を保持する機構に、防水機能を必要としないので、そのための付属部材・機構が不要となることに加え、例えば、検出用の固体基板を水平に保持する制約もなく、さらに検出装置自体の構成に、自由度が増し、また、その構成をより容易にするという利点をも持つ。
【0032】
これらの核酸を固定する基板としてはガラス基板が好ましい。ガラス基板自体は、蛍光を発することもなく、その上で蛍光を観測する際、適している。核酸自体がガラスにある程度吸着することを利用し、ガラス基板上への固定を行うことも可能である。しかしながら、より確実に固定を図る上では、ガラス基板上に官能基を導入し、核酸に導入された官能基との化学反応により、ガラス基板表面に核酸を固定化することがより好ましい。一本鎖核酸への官能基の導入は、鎖の5′末端、あるいは3′末端に導入するのが一般的である。なお、ハイブリダイゼーションに際し、その障害とならない限り、官能基の導入部位は末端に限定されるものではない。
【0033】
本発明の方法では、ハイブリダイゼーションに先立ち、プローブ核酸または標的核酸の何れかを上記の方法で、予め固相表面に固定し、ハイブリダイゼーション反応を行って、形成されるハイブリッド体が固相表面に固定される形態とすることが好ましい。この予め固相表面に固定する際、例えば、プローブ核酸を多種類、互いに独立したスポットとしてアレイ状に配列し、この複数種のプローブ核酸とそれぞれハイブリダイゼーションするか否かを同時に検査する構成とすることができる。その際、本発明の方法では、乾燥後に測定を行うため、隣接するスポットの影響を受けないため、前記アレイ状スポットの密度は、1平方インチあたり1000個以上とされている基板を用いることもできる。加えて、高い検出感度を有するので、このような高い密度、換言するならば、各スポットに含まれる核酸量が僅かなものとしても、十分に確度のある検出が可能である。
【0034】
このように、ガラス基板と何れかの一本鎖核酸とが共有結合により結合されていると、ハイブリダイゼーション後、核酸ハイブリッドのガラス基板への結合状態が均一であり、また、蛍光分子(色素)の一本鎖核酸への結合状態も一様である際には、固相上に固定されるハイブリッド体を、固相上から観測される蛍光量から定量することが可能となる。固相上に固定されるハイブリッド体の配向が揃うことも期待され、その結果、強い蛍光が観測されることも考えられる。加えて、乾燥の過程で、分子の配向が制御され、整えられている可能性もある。
【0035】
共有結合を形成させる、ガラス基板上の官能基と核酸の官能基の組み合わせには種々あるが、ガラス基板上のマレイミド基と核酸のチオール基、ガラス基板上のエポキシ基と核酸のアミノ基、これらの組み合わせは、特に、ガラス基板上へのこれら官能基の導入は確実なものであり、より有効な手段として挙げられる。これらの官能基の組み合わせのうち、どの官能基をガラス基板上に導入し、相対する官能基を核酸分子に導入するかは、個々の導入が可能な限り、特に限定されない。例えば、ガラス基板上にシランカップリング剤やポリグリシジルメタクリレート等の樹脂を用いてエポキシ基を導入し、核酸プローブの末端にアミノ基を自動合成機上で導入する方法、あるいはガラス基板上にシランカップリング剤を用いてアミノ基を導入し、それに架橋剤を用いてマレイミド基を導入し、やはり自動合成機上で導入された核酸プローブのチオール基と反応させる方法などが挙げられる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明の最良の実施の形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例により限定を受けるものではない。
【0037】
(実施例1)
本実施例は、本発明の蛍光測定による核酸の検出定量方法を用いて、溶媒の水が存在する状態でハイブリダイゼーションを行い、形成するハイブリッド体に蛍光分子が結合した蛍光性の核酸分子を固相表面上に固定させ、一旦単離を図り、その後、固相表面上に固定されている目的の蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作を施し、検出用の固体基板とする工程の一例を示す。加えて、この固体基板上の、乾燥状態となった蛍光性の核酸分子に励起光を照射し、それが発する蛍光を検出・定量する工程構成を採用すると、乾燥状態となった蛍光性の核酸分子から発する蛍光自体は、溶媒に浸された状態において得られる蛍光より、蛍光強度が高くなることを検証した。
【0038】
(1)基板洗浄
1インチ角のガラス基板をラックに入れ、超音波洗浄用洗剤に一晩浸す。その後、洗剤中で20分間超音波洗浄を行った後、水洗により洗剤を除去する。蒸留水で濯いだ後、蒸留水を満たした容器中でさらに超音波処理を20分間行う。
最後に、予め加温した1N水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸す。この処理後、水洗、蒸留水洗浄を行って、表面に付着する水酸化ナトリウムを除く。
【0039】
(2)基板表面へのマレイミド基被覆処理
洗浄したガラス基板を1%シランカップリング剤水溶液(信越化学工業社製、商品名KBM603)に室温で20分間浸す。その後、両表面に窒素ガスを吹き付けて、水分を飛ばし、乾燥する。120℃に加熟したオーブンで1時間ベークし、シランカップリング剤処理を完結させる。
【0040】
続いて、EMCS(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)2.7mgを秤量し、DMSO((CH3)2SO)/エタノール(体積比1:1)溶媒に溶解する(最終濃度0.3mg/ml)。このEMCS溶液に、シランカップリング剤処理を施したガラス基板を2時間浸し、表面のシランカップリング剤のアミノ基とEMCSのスクシンイミド基とを反応させる。この状態のガラス表面には、シランカップリング剤を介して、EMCS由来のマレイミド基が表面に固着・付与されている。EMCSとの反応後、ガラス板は蒸留水で洗浄後、窒素ガスを吹き付け乾燥させ、後に述べるDNAとの結合反応に用いられる。
【0041】
(3)ガラス基板固定用DNAの合成
表面にマレイミド基を付与されたガラス基板上へのDNA固定化には、マレイミド基とチオール(SH)基との反応を利用すべく、DNAの5’末端にSH基の導入を行う。5’末端へのSH基の導入は、DNA自動合成機上Thiol-Modifier(Glen Research社製)を用いる事によりなされる。続いて、定法に従い脱保護を行い、合成されたDNAを回収する。回収したDNAは、高速液体クロマトグラフィーにて精製した後、以下の実験に用いた。
【0042】
本実施例において用いる基板上に固定するDNAは、下記の配列(配列1)を有し、その5’末端にはSH基が導入されている。
【0043】
配列1:HS−5’ACTGGCCGTCGTTTTACA3’
(4)合成DNAの基板への結合
前工程で合成されたDNAを、グリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、アセチレノールEH(川研フアインケミカル社製)1%を含む水溶液に、濃度8μMになるように溶解する。この合成DNA溶液を、ガラス基板上にスポッティングする。加湿チャンバー内に30分間放置して、マレイミド基とチオール(SH)基との反応を行い、DNAの固定化を行う。その後、1MNaClを含む10mMリン酸緩衝液にて洗浄して、ガラス基板表面の未反応のDNA溶液を完全に洗い流す。
【0044】
その後、2%ウシ血清アルブミン水溶液中に浸し、2時間放置し、残余の表面について、ブロッキング処理を施す。
【0045】
(5) 2−(3−カルボキシプロピル)−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニルノン)ピリリウム アイオダイドの合成
下記の式(1):
【0046】
【化1】
を、下記する方法で合成した。
【0047】
原料の4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノン163mgと無水グルタル酸456mgを、氷冷下で濃硫酸3mlに加え、溶解させた。この溶液を、オイルバスにて120℃まで加熱し、約3時間攪拌した。その後、室温にて放冷した。この反応液を水100mlに加え、攪拌した。この液に、クロロホルム50mlを加え、抽出操作により、未反応原料の洗浄・除去を行い、水層を回収した。このクロロホルムによる洗浄を計4回繰り返し、未反応原料4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノンを除去した。
【0048】
回収した水層に、ヨウ化ナトリウム1.50gを加え、攪拌した後、一晩冷蔵庫にて冷却放置した。析出する黒色の沈澱物を濾別、回収して、標記化合物の粗結晶を得た。得られた粗結晶を適量の水で再結晶し、標記化合物3:2−(3−カルボキシプロピル)−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニルノン)ピリリウム アイオダイドの黒色結晶66mgを得た。
【0049】
(6)2−(3−カルボキシプロピル)−4,6−ビス(4−N、N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム アイオダイド(P2誘導体と略す)による標識を行ったP2誘導体結合プローブの作製
前記配列1と相補的な配列(配列2)を有するDNAを合成する。このDNAの5’末端はアミノ化されており、このアミノ基にP2誘導体中のカルボキシル基を反応させ、P2結合DNAプローブとする。
【0050】
配列2:H2N−5’TGACCGGCAGCAAAATGTTG3’
(7)ハイブリダイゼーション反応
5’末端にP2誘導体を結合させた上記標識DNAを、1MNaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度7nMとなるように溶解する。この溶液を、前記配列1のDNAを固定化したガラス基板上に載せ、ハイブリダイゼション反応を一晩行う。その後、未反応の標識DNAを1MNaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液にて洗い流す。
【0051】
このガラス基板表面から発するP2誘導体の蛍光をカバーガラスを付けて観察する。蛍光の観察は、ニコン蛍光顕微鏡Eclipse−E800(対物レンズ20倍)を使用する。蛍光観察用のフィルターキューブは、P2の光学特性に合わせて、特製したもの(朝日分光株式会社 励起:580nm、蛍光640nm、ダイクロイックミラー610nm)を使用する。蛍光強度の測定は、上記蛍光顕微鏡に中継レンズ(NFK 2.5×LD)を介して、イメージインテンシファイヤー付きCCD(浜松ホトニクス ICCD C2400-87)を接続し、このCCDで測定した画像を画像解析装置(浜松ホトニクス Arugus 50)により解析する。蛍光強度の測定領域には、平均的な明るさで、ある程度均一と判断される領域を選択し、この領域について画素の平均値を蛍光強度測定値として採用している。
【0052】
一方、ハイブリダイゼーション反応後のガラス基板について、その表面にカバーガラスを付したまま、室内に放置し、自然乾燥させる。その乾燥済みガラス基板に関しても、前記の装置を用い、蛍光強度の測定を行う。
【0053】
(8)結果
以上の述べた手順に従って測定された蛍光強度について、洗浄に用いた1MNaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液を含む状態での測定と、その後自然乾燥した、乾燥状態での測定とで、その測定結果を比較した。
【0054】
溶液を含む状態での測定では、ICCD C2400-87のイメージインテンシファイヤーの増幅度に2.0(表示値)を選択した場合、1画素あたり4600の蛍光光量が観測された。同じ基板を自然乾燥した後、乾燥状態での測定では、イメージインテンシファイヤーの増幅度に1.0(表示値)を選択した際にも、5046の蛍光光量が観測された。その増幅度の違い基づき、強度の補正(規格化)を行った上で、両者を比較すると、溶液を含む状態に比べて、乾燥状態では、同じサンプルにおいて、観測された蛍光光量は2倍以上に増大したことになる。
【0055】
(参考例1)
実施例1において用いたP2誘導体結合プローブの代わりに、5′末端のアミノ基にローダミンを結合させた、ローダミン標識のプローブを用意した。このローダミン標識のプローブを用いて、実施例1と同様の手順で、ハイブリダイゼーション反応を行い、ガラス基板からの蛍光光量を測定した。同じサンプルについて、溶液を含む状態での測定と、その後自然乾燥した、乾燥状態での測定とで、その測定結果を比較した。
【0056】
溶液を含む状態での測定では、イメージインテンシファイヤーの増幅度に2.0(表示値)を選択した場合、1画素あたり9071の蛍光光量が観測された。同じ基板を自然乾燥した後、乾燥状態での測定では、イメージインテンシファイヤーの増幅度に1.0(表示値)を選択した際に、4507の蛍光光量が観測された。その増幅度の違い基づき、強度の補正(規格化)を行った上で、両者を比較すると、溶液を含む状態と、乾燥状態とでは、観測された蛍光光量は実質的に変化していないと判断される。
【0057】
(参照例1)
P2誘導体結合プローブの代わりに、5′末端にFITC(フルオレセインイソチオシアネート)を結合させた、FITC標識のプローブを用意した。このFITC標識のプローブを用いて、実施例1と同様の手順で、ハイブリダイゼーション反応を行い、ガラス基板からの蛍光光量を測定した。なお、この例では、標識色素の違いに合わせて、蛍光測定の際、B励起フイルターを用いた。同じサンプルについて、溶液を含む状態での測定と、その後自然乾燥した、乾燥状態での測定とで、その測定結果を比較した。
【0058】
溶液を含む状態での測定では、イメージインテンシファイヤーの増幅度に2.0(表示値)を選択した場合、1画素あたり3020の蛍光光量が観測された。一方、自然乾燥後は、用いた測定装置の検出範囲では、蛍光光量は観測されず、蛍光能を全く消失していると判断された。
【0059】
(実施例2)
ハイブリダイゼーション反応後、未反応のP2誘導体結合プローブを除くため、基板洗浄を行う際、NaCl濃度100mMのNaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液を用いるように変更した以外は、実施例1と同じ手順、条件で、ハイブリダイゼーション反応を行い、ガラス基板からの蛍光光量を測定した。同じサンプルについて、溶液を含む状態での測定と、その後自然乾燥した、乾燥状態での測定とで、その測定結果を比較した。
【0060】
溶液を含む状態での測定では、イメージインテンシファイヤーの増幅度に4.0(表示値)を選択した場合、1画素あたり4696の蛍光光量が観測された。同じ基板を自然乾燥した後、乾燥状態での測定では、イメージインテンシファイヤーの増幅度に2.0(表示値)を選択した際に、11859の蛍光光量が観測された。その増幅度の違い基づき、強度の補正(規格化)を行った上で、両者を比較すると、溶液を含む状態に比べて、乾燥状態では、同じサンプルにおいて、観測された蛍光光量は4倍以上に増大したことになる。
【0061】
(実施例3)
ハイブリダイゼーション反応後、基板洗浄した後、基板の乾燥する際、用いられる乾燥方法によって、乾燥状態で観測される蛍光強度に差異があるか否かについて検討した。
【0062】
実施例1と同様の条件・手順でハイブリダイゼーション反応後、基板洗浄した後、カバーガラスを付けたまま一昼夜風乾したもの(No.1)、カバーガラスを付けずに一昼夜風乾したもの(No.2)、洗浄後、直ちに100℃に加温したオーブン中に15分間置き、乾燥させたもの(No.3)、洗浄後、直ちに乾燥窒素ガスを吹き付け、表面に付着する溶液を吹き飛ばし乾燥させたもの(No.4)、以上4種の乾燥方法によって、検出用の固体基板を調製する。この4種の固体基板上の試料について、乾燥状態で観測される蛍光強度の比較を行った。いずれも乾燥後、蛍光測定までの間、乾燥済検出用の固体基板はデシケーター中に保存した。これらの比較において、カバーガラスを付け、未乾燥状態(溶液を含む状態)において測定される蛍光強度を基準として用いた。表1に、4種の乾燥方法によって、調製した乾燥済検出用の固体基板に関する乾燥状態で観測される蛍光強度、ならびに、基準とした未乾燥状態において測定される蛍光強度を併せて示す。
【0063】
【表1】
ここで評価した4種の乾燥方法で調製された乾燥済検出用の固体基板について、その乾燥状態で観測される蛍光強度は、基準とした、未乾燥状態(溶液を含む状態)において測定される蛍光強度と比較すると、何れも2倍以上の高い値である。なお、一昼夜風乾によって自然乾燥した乾燥済検出用の固体基板(No.1,2)に関しては、表面にカバーガラスを付すか否かによっては、乾燥状態で観測される蛍光強度に実質的な差異が見出されない。従って、含まれる溶液中の水分を緩やかに蒸散させる場合、カバーガラスを付すか否かによって、その乾燥後の状態には、差異がないことが判る。
【0064】
一方、加熱(No.3)や乾燥窒素ガスの吹き付け(No.4)により、含まれる溶液の水分を短時間の内に除去して乾燥させる、短時間乾燥を行った際には、自然乾燥を行ったもの(No.1,2)と比較しても、その乾燥状態で観測される蛍光強度はより大きなものとなっている。この差異は、洗浄に用いた溶液を含むサンプルを乾燥する際、長時間、蛍光分子の周囲に溶媒や溶質の電解質が残ると、その間に、例えば、溶媒と蛍光分子との間の反応などが徐々に進行して、蛍光分子自体の劣化、構造の変化が起こり、乾燥に伴う蛍光能の向上を部分的に損なっていることが、その要因と考えられる。
【0065】
(実施例4)
実施例1と同様な実験を、P2の他の誘導体である、2−(2−カルボキシエチル)−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニルノン)ピリリウムアイオダイドを用いて行った。
【0066】
(1)2−(2−カルボキシエチル)−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニルノン)ピリリウム アイオダイドの合成
下記式(2):
【0067】
【化2】
で示される化合物を、下記する方法で合成した。
【0068】
原料の4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノン163mgと無水コハク酸400mgを、氷冷下で濃硫酸3mlに加え、溶解させた。この溶液を、オイルバスにて120℃まで加熱し、約3時間攪拌した。その後、室温にて放冷した。この反応液を水100mlに加え、攪拌した。この液に、クロロホルム50mlを加え、抽出操作により、未反応原料の洗浄・除去を行い、水層を回収した。このクロロホルムによる洗浄を計4回繰り返し、未反応原料4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノンを除去した。
【0069】
回収した水層に、ヨウ化ナトリウム1.50gを加え、攪拌した後、一晩冷蔵庫にて冷却放置した。析出する黒色の沈澱物を濾別、回収して、標記化合物の粗結晶を得た。得られた粗結晶を適量の水で再結晶し、標記化合物6:2−(2−カルボキシエチル)−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニルノン)ピリリウム アイオダイドの黒色結晶52mgを得た。
【0070】
(2)2−(2−カルボキシエチル)−4,6−ビス(4−N,N−ジメチルアミノフェニルノン)ピリリウム アイオダイドによる標識を行ったP2誘導体結合プローブの作製
実施例1に記載した配列2のアミノ基を利用して、上記カルボキシル基との反応を行い、式(2)の誘導体が結合したDNAプローブを得た。
【0071】
(3)(2)で作製したDNAプローブを用いて、実施例1と同様な実験を行った結果、実施例1と同様な結果を得た。溶液を含む状態に比べて、乾燥状態では、同じサンプルにおいて、観測された蛍光光量は大幅に増大していた。
【0072】
【発明の効果】
本発明の蛍光測定による核酸の検出定量方法では、特定の塩基配列を有する標的核酸と、それにハイブリダイゼーション可能な所定の塩基配列を含むプローブ核酸とが形成するハイブリッド体を、そのハイブリッド体に結合した蛍光分子からの蛍光を観測することで検出・定量する際、溶媒の水が存在する状態でハイブリダイゼーションを行い、形成するハイブリッド体に蛍光分子が結合した蛍光性の核酸分子を固相表面上に固定させ、一旦単離を図り、その後、固相表面上に固定されている目的の蛍光性の核酸分子を乾燥させる操作を施し、検出用の固体基板とし、この固体基板上の、乾燥状態となった蛍光性の核酸分子に励起光を照射し、それが発する蛍光を検出・定量する工程構成を採用することによって、乾燥状態となった蛍光性の核酸分子から発する蛍光自体は、溶媒に浸された状態において得られる蛍光と比べて、その強度自体は少なくとも遜色のない、多くの場合、より大きな強度となり、蛍光標識された核酸ハイブリッド体の検出方法として、高い検出感度が達成できる利点を有する。
【0073】
更には、蛍光観測の際に、その障害ともなる溶媒を排除でき、また、溶媒の蒸散を防止するためのカバーガラスも不要となり、従って、溶媒やカバーガラスの使用に付随する感度低下を回避できる利点をも有する。加えて、一旦乾燥操作を施した、乾燥済の検出用固体基板を測定に用いるので、かかる方法に利用される検出装置は、試料に含まれる溶媒の水分の維持、あるいは、防水性を保つための部材・機能が不要となり、より簡便な装置構成とすることを可能とするという波及効果をも有する。特に、乾燥済の検出用固体基板を調製後、その乾燥状態を保つ限り、実際の検出・測定までの時間間隔を自由に選択でき、多量の試料に関して適用する際、その利点は作業効率の向上化に有用である。
【0074】
【配列表】
Claims (13)
- 標的核酸の検出、及び定量の少なくとも一方を行う方法であって、
前記標的核酸、あるいは、該標的核酸にハイブリダイゼーション可能なプローブ核酸のいずれかに蛍光標識がなされており、
前記標的核酸とプローブ核酸とを反応させ、形成される両者のハイブリッド体を固相表面上に固定する工程;
前記ハイブリッド体の形成後、乾燥手段を用いて、前記蛍光標識を乾燥させる工程; 及び
乾燥状態となった前記蛍光標識に励起光を照射し、乾燥状態の前記蛍光標識が発する蛍光を検出する工程を有し、
前記蛍光標識を乾燥させる工程で用いる乾燥手段には、自然乾燥、100℃以下の温度における加熱により該蛍光標識を乾燥させる手段、または、乾燥ガスの吹き付けにより該蛍光標識を乾燥させる手段のいずれかを選択し;
前記蛍光標識として、核酸二本鎖に特異的に結合する蛍光色素である、2−メチル−4,6−ビス−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩の誘導体である、2−(2−カルボキシエチル)−4,6−ビス−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩、または2−(3−カルボキシプロピル)−4,6−ビス−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩のいずれかが選択され、
前記ハイブリッド体の核酸二本鎖に特異的に結合している、前記蛍光標識は、乾燥することにより、溶液状態において発する蛍光強度と比較して、その蛍光強度が増大する特性を有している
ことを特徴とする標的核酸の検出および定量の少なくとも一方を行う方法。 - ハイブリッド体を形成する前記プローブ核酸が固相表面上に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - ハイブリッド体を形成する前記標的核酸が固相表面上に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 前記蛍光標識が、ハイブリッド体の核酸二本鎖のうち、いずれかの一本鎖核酸に共有結合により固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 一本鎖核酸に共有結合により固定される蛍光標識が2−(2−カルボキシエチル)−4,6−ビス−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩である
ことを特徴とする請求項 1 〜4のいずれか一項に記載の方法。 - 一本鎖核酸に共有結合により固定される蛍光標識が2−(3−カルボキシプロピル)−4,6−ビス−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ピリリウム塩である
ことを特徴とする請求項 1 〜4のいずれか一項に記載の方法。 - 前記乾燥手段は、100℃以下の温度における加熱により該蛍光標識を乾燥させる手段である
ことを特徴とする請求項 1 〜6のいずれか一項に記載の方法。 - 前記乾燥手段は、乾燥ガスの吹き付けにより該蛍光標識を乾燥させる手段である
ことを特徴とする請求項 1 〜6のいずれか一項に記載の方法。 - 前記固相がガラス基板である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の方法。 - 前記核酸分子の固相表面上への固定は、
前記ガラス基板と固定に係わる核酸とがそれぞれ官能基を有し、前記官能基同士は互いに化学反応により共有結合するものであり、
前記共有結合の形成によってなされる
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。 - ガラス基板表面上の官能基がマレイミド基であり、
前記ガラス基板表面上に固定される核酸の有する官能基がチオール基(−SH)である
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。 - ガラス基板表面上の官能基がエポキシ基であり、
前記ガラス基板表面上に固定される核酸の有する官能基がアミノ基である
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。 - 前記標的核酸またはプローブ核酸のいずれかが固相表面上に固定されており、
その固相表面上への固定にあたって、
前記固相表面に、多種類の核酸が互いに独立したスポットとしてアレイ状に配列され、前記アレイ状スポットの密度は、25.399956mm平方(なお、1インチ=25.399956mmである)あたり、少なくとも1000個とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
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