JP4227084B2 - 回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置および回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法 - Google Patents
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Description
近年、パソコン,携帯電話,AV機器等の小型化に伴って電子回路基板(プリント基板)の配線のファインピッチ(高精細)化が求められており、高精細なスクリーン印刷を可能とするペーストが必要とされている。このような背景から、銅ペースト用の微小銅粉は、硬化した際に緻密な導体膜を形成して十分な導電性を有することが必要であり、導電性を確保するためには充填密度の高い銅ペースト用の微小銅粉が必要である。
また、多層プリント基板の導入により、スルーホールやビアホール等の内側に銅ペーストを充填し硬化させて導体層を作ることで、プリント基板の両面にある回路層の銅箔を導通させる方法が開発されており、銅ペーストをスルーホールやビアホール等に高充填密度で充填するためには流動性の高い銅ペースト用の微小銅粉が必要である。
このような不具合を解消するため、硬化した際に十分な導電性を有し、かつ流動性の高い(低粘性度の)銅ペースト用の微小銅粉が求められている。球状微小銅粉は、流動性が高い、充填密度が高い、比表面積が小さいといった特性を有しており、低粘性度の銅ペーストを製造することが期待でき、球状微小銅粉が注目されている。
湿式還元法は、他の製造方法に比べて均一な(粒度分布巾の狭い)微小銅粉を比較的容易に得られることから、現在では導電性の銅ペースト用の微小銅粉の製造方法の主流となっている。また、湿式還元法によって、形状が球状に近い微小銅粉(球状微小銅粉)を、粒径を制御しながら製造できるようになってきた。
水アトマイズ法は、冷却速度が速く、微小銅粉を製造することが可能であるが、その形状は不定形なものが多く、表面は凸凹している。また、水を媒体としているので微小銅粉の酸素含有量は比較的高くなってしまう。
一方、ガスアトマイズ法は、球状銅粉を比較的容易に製造することができ、高純度な不活性ガスを噴射ガスに用いることで、球状銅粉の酸素含有量を低く抑えられると共に不純物の少ない球状銅粉を製造する方法である。しかし、この製造方法で得られる球状銅粉の粒径は比較的大きく、最大直径が10μm以下の球状微小銅粉を得るためには微小銅粉を分級する必要があり、製造工程が複雑になるとともに分級後の歩留まりが悪くコスト高になってしまうという問題がある。
したがって、最大直径が15μm以下または10μm以下の球状微小銅粉を製造するには、ガスアトマイズ法と同様に微小銅粉を分級する必要があり、製造工程が複雑になるとともに分級後の歩留まりが悪くコスト高になってしまうという問題があった。
回転ディスク法により球状銅粉を製造する技術として、直径80 mm、厚さ40 mmの金属製(SC37)の大型のディスクを使用したものがある(例えば特許文献1)。この特許文献5で用いるディスクは、ディスクの重量が大きいため高速回転ができず、ディスクの回転数が1分間に5000回転という低速であり、球状微小銅粉を製造することはできなかった。
回転ディスク法において製造する球状微小銅粉の粒径を小さくするためには、ディスクを高速回転させる必要があるが、従来のディスクは直径および重量が大きいため、高速回転させるには大掛かりな装置が必要となってしまう。さらに、溶融温度が1100 ℃を超える高温の銅の溶湯をディスク上に流下させる時に、その熱衝撃に耐えうるディスク材料や、溶湯と反応して腐食しないディスク材料を選定する必要がある。
特許文献2では、図15に示すように、外周に誘導加熱コイルなどの加熱手段62aを螺旋状に備えた坩堝62の底面に設けられた開口62bに連続してパイプ状の出湯ノズル63を設ける。一方、坩堝62の外周には昇降駆動部65をブラケットを介して取り付け、その昇降駆動部65には、取付部材64a,64bを介して、棒状ストッパ64を取り付ける。
そして、金属材料を坩堝62に入れ、加熱手段62aに電力を供給して坩堝62を加熱して金属の溶湯を得る。この溶湯を出湯ノズル63の出湯口63aから流下させるには、昇降駆動部65を駆動して、矢印aの方向に取付部材64aを上昇させる。すると開口62bを塞いでいた棒状ストッパ64が矢印a方向に上昇して開口62bを開放し、溶湯が出湯ノズル63の出湯口63aから流下する。そして、溶湯の流下を停止するには、昇降駆動部65を駆動して、矢印aと反対方向に取付部材64aを下降させる。すると棒状ストッパ64が矢印aと反対方向に下降して開口62bを塞ぎ、溶湯の流下を停止する。
しかし、出湯ノズル63の出湯口63aからの溶湯の流下を停止するために、昇降駆動部65、取付部材64a,64b、棒状ストッパ64などを要し、構造が複雑であり、回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置に適用すると、装置が大型化してしまうという問題があった。
ディスク加熱手段を別途設けると、球状微小銅粉製造装置の構成を複雑にし、装置を大型化させてしまうという問題がある。
そこでこの発明の目的は、簡単な構成でコンパクトな回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置を提供することにある。
前記溶湯を流下させる出湯ノズルと、
回転し遠心力によって前記流下した溶湯を飛散させるディスクとを備えた回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置において、
前記出湯ノズルの外周に前記出湯ノズルを加熱する加熱手段を備え、
前記溶湯を前記ディスクに流下させる前には、前記加熱手段が前記出湯ノズルを予熱温度で加熱し、その輻射熱によって前記ディスクを加熱し、
前記溶湯を前記ディスクに流下させるときには、前記加熱手段が前記出湯ノズルを加熱温度で加熱することによって前記溶湯を固化させずに前記ディスクに流下させることを特徴とする。
前記加熱手段による前記出湯ノズルの加熱を停止するとともに、前記冷却手段によって前記出湯ノズルを冷却して前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯を冷却、固結させて前記出湯ノズルを閉塞させることを特徴とする。
前記溶湯を出湯ノズルより回転するディスク上に流下する注湯ステップと、
前記回転するディスク上に流下された前記溶湯を遠心力で前記ディスクの半径方向外側に飛散させる溶湯飛散ステップと、
前記飛散した溶湯が冷却して球状微小銅粉を形成する銅粉形成ステップとを備える回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法において、
前記注湯ステップに先立って、
前記出湯ノズルの外周に設けられた加熱手段にて前記出湯ノズルを前記銅が溶融しない予熱温度まで加熱するノズル加熱ステップと、
前記ディスクを前記予熱温度となった前記出湯ノズルの輻射熱によって加熱するディスク加熱ステップと、
前記出湯ノズルを前記加熱手段にて前記溶湯が固化しない加熱温度まで加熱して前記溶湯を前記ディスクに流下可能にする出湯口開口ステップとを備えるとともに、
前記銅粉形成ステップに続けて、
前記加熱手段による前記出湯ノズルの加熱を停止する加熱停止ステップと、
前記加熱が停止された出湯ノズルが冷却することによって前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯が冷却、固結して前記出湯ノズルの出湯口を閉塞する出湯口閉塞ステップとを備えることを特徴とする。
前記出湯口開口ステップが、前記出湯ノズルを前記加熱手段にて前記溶湯が固化しない加熱温度まで加熱して前記溶湯を前記ディスクに流下可能にするとともに、前記ディスクを回転位置まで移動させ、
前記出湯口閉塞ステップが、前記加熱が停止された出湯ノズルが冷却することによって前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯が冷却、固結して前記出湯ノズルの出湯口を閉塞するとともに、前記ディスクを格納位置まで移動させることを特徴とする。
図1はこの発明の回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置の一例を示す概略構成図、図2(a),(b)は図1に備える出湯ノズルの概略断面図、図3は図1に備えるディスクの概略断面図、図4は図1の球状微小銅粉製造装置で形成した球状微小銅粉に付着した付着物を剥離して拡散するための銅粉剥離装置の概略図である。
坩堝2の外周には、坩堝2を加熱して内部の装填した銅を主とする原料を加熱溶融するための誘導加熱コイルなど(第1加熱手段)を外周面と一定の距離を隔てて螺旋状に備えるとともに、坩堝2の温度計測をするための熱電対H1を設ける。また、坩堝2の下部をチャンバー1内に設け、坩堝2の底部には、流出口2aから下方に連続するように出湯ノズル3を備える。
出湯ノズル3の外周には外周面3eと一定の距離aを隔てて誘導加熱コイル(加熱手段)3aが螺旋状に備えられている。この誘導加熱コイル3aは銅製のパイプ状で、内部には冷却水が充填されている。この誘導加熱コイル3aの両端は水冷ケーブル(例えば、特許第2881074号公報)などに接続されてチャンバー1外に導かれ、導電部分は不図示の電源制御部に接続されるとともに、冷却水が入った内部は冷却ポンプに配管されている。
また、出湯ノズル3の中央付近には、本体3dの温度計測をするための熱電対H2が本体3dに挿入して設けられている。この熱電対H2は前述の電源制御部に接続されている。
ディスク本体4aの直径ΦXは30〜40mm、ディスク本体4aの表面4sは平面状であり、その面粗度は23μm以下であることが好ましい。表面4sが平面状であるこのようなディスク本体4aを使用する理由は、噴霧時に銅の溶湯6をディスク本体4aの周縁部まで薄く一様に広がらせて飛散させ、不定形粒子の発生を防止することができることと、ディスク本体4aの加工が簡単で、表面4sを削り直せば再利用が可能であることである。
なお、球状微小銅粉製造時の出湯ノズル3の出湯口3bからディスク本体4aの表面4sまでの距離は20〜25mmとすることが好ましい。出湯口3bからディスク4の表面4sまでの距離を20mm未満にすると、銅の溶湯6がディスク本体4a上に流下する際、その流下点でディスク本体4aから跳ね上がる銅の溶湯6の液滴が出湯口3bに付着して、出湯ノズル3から銅が安定して流下することが困難になってしまう。また、出湯口3bからディスク4の表面4sまでの距離が25mmを超えると、銅の溶湯6の表面4sへの流下圧が大きくなってモータ5の回転に負荷がかかり、停止してしまう恐れがある。
窒化珪素としては、セラミックス原料として一般に市販されているものであれば問題なく使用でき、その配合量は60〜80質量%の範囲とする。配合量が60質量%未満では、窒化珪素特有の高強度、耐熱衝撃性等の特性が損なわれ、80質量%を超えると、Al分として添加する窒化アルミニウムの量と、焼結時にガラスの液相を結晶粒界に形成しながら、窒化珪素が焼結する助剤として機能するアルミナ、イットリアの量が相対的に不足し、耐食性に優れた高強度の窒化珪素質のディスクにはならない。
アルミナとしては、セラミックス原料として一般に市販されているものであれば問題なく使用でき、その配合量は2〜8質量%の範囲とする。配合量が2質量%未満では、窒化珪素が焼結する助剤として機能するアルミナの量が不足し、耐食性に優れた高強度のディスクにはならない。一方、配合量が8質量%を超えると、ガラス成分が多くなり、耐食性に優れたディスクにはならない。
本発明のディスクは、一般的な窒化珪素やサイアロンの製法によって製造することができる。例えば、以下の製法によって製造できる。
ディスク4の格納位置Aは、チャンバー1の外側にチャンバー1に隣接して設けられた格納庫20内である。この格納庫20はチャンバー1とバルブを介して隣接して設けられている。また、格納庫20には真空排気設備と窒素ガス導入設備を備え、チャンバー1が大気圧以下であれば真空排気設備を用いて格納庫20内をチャンバー1内と同じ気圧まで排気してバルブを開いて、チャンバー1と格納庫20を連通することができる。さらに、格納庫20が大気圧以下となった状態でバルブを閉じて、窒素ガス導入設備により格納庫20内を大気圧とすることができるようになっている。
したがって、チャンバー1内の雰囲気圧が大気圧以下であっても、チャンバー1の雰囲気圧を維持したままディスク4をチャンバー1から格納庫20に格納することができる。
なお、球状微小銅粉を製造するにあたって、以下の点を考慮する必要がある。
(1)最大直径が15μm以下または10μm以下の球状微小銅粉を歩留良く製造する。
(2)製造された球状微小銅粉は真球度が高く、かつ酸素含有量を低くする。
(3)製造された球状微小銅粉は個々の粒子が付着することなく分散する。
最大直径が15μm以下または10μm以下の球状微小銅粉を歩留良く製造するためには、ディスク4の回転数を極めて高くする必要がある。そこで本発明者等は銅の溶湯6に対して耐久性のある窒化珪素質のディスク4を使用し、そのディスク4を高速回転可能なモータ5に取り付けて、ディスク4の回転数を1分間に70000回転(以下、1分間の回転数を「rpm」という。)以上で安定に噴霧することにより歩留まりの向上を可能にした。
このとき、得られる微小銅粉の形状は噴霧時のチャンバー1内の雰囲気に大きく依存する。従来の回転ディスク法(遠心噴霧法)で製造される微小銅粉は、形状が不定形になる場合や表面が凸凹状になる場合がある。その原因は、飛散した液滴7の表面が酸化・吸湿することで、飛散した液滴7の冷却過程で表面張力が低下して球状化を妨げるからである。
しかし、本発明者等による研究の結果、1.013×105Pa以上の不活性ガス中で噴霧を行った場合、ディスク4から飛散した液滴7が不活性ガス分子と衝突することによって液滴7の飛散距離が短くなるため、ディスク4の周辺の雰囲気中に浮遊する液滴7が多くなり、その浮遊した液滴7にディスク4から飛散してきた液滴7が次々と衝突することで不定形な微小銅粉や表面の凸凹した微小銅粉を発生していることが分かった。
このような付着性の強い球状微小銅粉に対する付着防止策として、微量の酸素を添加した不活性ガスを噴霧時の冷却ガスに使用する方法がある(例えば、特開平7−179912号公報)。これは、冷却ガスに含有する微量の酸素が、噴霧時の球状微小銅粉の表面に酸化被膜を形成させ、球状微小銅粉の凝集力を低下させて微小銅粉を分離させる方法である。
しかし、本発明者等はこの方法により球状微小銅粉の製造を試みたが、得られた球状微小銅粉の表面は酸化被膜によって凸凹してしまい、滑らかな表面を得ることは出来なかった。
そこで本発明者等は、この発明の球状微小銅粉を製造するにあたり、表面にへこみや傷を付けずに付着物を分離させる方法として、図4に示すような一般的な容器回転型の銅粉分離装置を用いることとした。すなわち、ステンレス製の円筒状の容器をV字型に形成して剥離容器10とし、その剥離容器10に回転軸11を延出して設け、その回転軸11を支持台12に回転自在に取り付ける。なお、剥離容器10には開閉蓋13を設ける。
図5はこの発明の回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法を示すフローチャート、図6および7は図5のフローチャートの一部を詳細に説明するためのフローチャートである。
次に、溶湯をディスク4上に流下させるための出湯ノズル3を加熱して銅の溶湯6を流下させる準備をする(S2)。
詳しくは、図6に示すように、第1加熱ステップにて、出湯ノズル3の外周に設けられた誘導加熱コイル(加熱手段)3aを用いて出湯ノズル3を銅が溶融しない程度(予熱温度)まで加熱する(S21)。
なお、坩堝2および出湯ノズル3の加熱は、それらの周りに巻かれた加熱手段としての誘導加熱コイルによって別々に加熱することができる。
さらに、ディスク回転ステップにて、加熱されたディスク4を回転して銅の溶湯6を飛散させる回転位置Cに移動して回転を開始する(S24)。このとき、出湯口3bの中心線は、ディスク4の回転中心線Rからディスク4の半径方向外側に5mm以内の位置に配置する。すなわち、ディスク4上での銅の溶湯6の流下位置はディスク4の回転中心線Rからディスク4の半径方向外側に5mm以内の位置となるようにする。なお、ディスク4は最大100000rpmで回転する。
すなわち、銅の溶湯6をディスク4上に流下させるときには、移動手段がディスク4を加熱位置Bから回転位置Cに移動させるとともに、誘導加熱コイル3aが出湯ノズル3を加熱温度で加熱することによって銅の溶湯6を固化させずにディスク4上に流下させる。
なお、坩堝2における銅の溶湯6の温度は、1100〜1250 ℃にするのが好ましい。また、出湯ノズル3の内径Φaは5mm程度、出湯口3bの内径Φbは0.9〜1.2 mmであることが好ましい。この出湯ノズル3の内径Φbを0.9mmよりも小さくすると、銅の溶湯6の流下量が少なくなり、銅の溶湯6がディスク4の周縁部まで広がる前にディスク4上で冷却してしまい、銅の凝固膜が発生し噴霧が乱れる恐れがある。一方、出湯ノズル3の内径Φbを1.2 mmよりも大きくすると、銅の溶湯6の流下量が多くなり、球状微小銅粉を製造することが困難になる。
出湯ノズル3からの銅の溶湯6の流下量は0.6〜1.5kg/minとすることが好ましい。また、出湯ノズル3から銅の溶湯6を層流の状態で流下させるために、出湯ノズル3の先端の長さL1を出湯ノズル3の内径の10〜20倍にすることが好ましい。
そして、銅粉形成ステップにて、飛散した銅の溶湯6(液滴7)はチャンバー1内の雰囲気中で冷却・固化して球状微小銅粉を形成する(S5)。すなわち、液滴7はディスク4より飛散して表面張力により球状になるとともに、チャンバー1内の雰囲気により冷却されて固化し球状微小銅粉を形成しながら落下して銅粉回収部8に回収される。
すなわち、銅の溶湯6のディスク4上への流下を停止するときには、移動手段がディスク4を回転位置Cから格納位置Aに移動させるとともに、誘導加熱コイル3aによる出湯ノズル3の加熱を停止することによって出湯ノズル3を自然冷却し、出湯ノズル3内側を流下する銅の溶湯6を冷却、固結させて出湯ノズル3を閉塞させる。
なお、ディスク4を格納位置Aに移動するとともに誘導加熱コイル3aによる出湯ノズル3の加熱を停止してから出湯ノズル3の出湯口3bが完全に閉塞されるまでの所要時間は40秒〜1分程度であり、この間、出湯口3bから銅の溶湯6が滴下する状態となる。この滴下された銅の溶湯6は不図示の受け坩堝で回収する。
剥離容器10が水平方向に回転軸11を備えるV字型円筒状であり、その剥離容器10を25rpmで30ないし90分間回転させることによって剥離容器10内にある球状微小銅粉どうしを衝突または摩擦させることによって球状微小銅粉に付着する別の球状微小銅粉である付着物を剥離する。
なお、チャンバー1内のガス(雰囲気)の圧力は5.065×104以上1.013×105Pa未満の範囲とすることが特に好ましい。チャンバー1内のガスの圧力が5.065×104Pa未満になると、噴霧中に飛散した液滴の冷却ガスによる冷却効果が遅くなることで、微小銅粉が完全に球状化する前にチャンバー1の内壁に衝突してしまい、不定形粒子を発生させてしまう。噴霧時のチャンバー1内の雰囲気の温度は、70〜90℃,残留酸素量は300ppm以下とする。
このとき、剥離容器10内の酸素濃度は1000ppm以下、剥離容器10は25rpmで回転する。剥離容器10の回転時間は30〜90分が好ましい。回転時間が30分未満であると球状微小銅粉の分離が不十分であり、回転時間が90分を超えると剥離容器10内で分散した球状微小銅粉の再凝集を引き起こしてしまう。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。まず、本発明のディスク4の製造方法について説明する。
(ディスクの製造)
下記表1に示す配合割合で、各種の原料、水、成形助剤を加えて、ボールミルで混合し、スプレードライヤーにて顆粒を作製した。それぞれの顆粒をφ90mm×90mmのラバーモールドに充填後、CIP成形した。成形体はφ45mm×L40mmの傘型のディスク4上にグリーン加工した。脱脂、焼成後研削加工して、図3において、L=40mm、ΦX=35mm、ΦY=8mmのディスク4を得た。
また、製品の一部からサンプリングして、X線による結晶構造の同定とアルキメデス法による密度測定を行った。その結果を下記表1に示した。
なお、ディスク状の製品と同時に製造したサンプルより、JISR1601に準じて、曲げ試験片を加工、曲げ強さを測定した。その結果も表1に示した。
上記の要領で作成した窒化珪素質ディスク4を用いて、遠心噴霧機で溶銅を流下しながら、噴霧安定性、耐用時間の試験をした。以下にその試験方法を示す。なお、この試験で使用した装置は図1に示す球状微小銅粉製造装置である。
図5,6に示すフローでディスク4を試験した。すなわち、銅原料を黒鉛製の坩堝2に入れ、誘導加熱コイルが巻かれている坩堝2および黒鉛製の出湯ノズル3を加熱し、銅原料を溶融させる。なお、測温は坩堝2と出湯ノズル3にそれぞれ接触させている熱電対H1,H2で行った。
次に、ディスク4をモータ5で回転させ、ディスク4が出湯ノズル3の輻射により加熱された時点で銅の溶湯6を流下する。
本試験では、出湯口3bとディスク4の表面4sとの距離は20mm、ディスク4の回転数は70000rpm、遠心噴霧機のチャンバー1内は5.065×104Paの窒素雰囲気とした。
表1に噴霧試験結果を示した。比較例である試料No1,No2,No3は、ディスク本体4aの中心部に銅の溶湯6を流下することで、その周辺部分1mmが溶損しはじめて、平面でなくなり、噴霧の方向が水平方向でなく、上向きに角度がついた状態で噴霧された。この場合は、要求される球状の微小銅粉が得られなかったので、その時点で「噴霧不可能」とした。ここで、比較例の試料No1は、特願2002−151752号公報に記載のものと同等のものである。
一方、実施例の試料No4,No5,No6では、平均直径52.3±30μmの真球状の球状微小銅粉が得られた。比較例の試料No6は、強度が不足しているために、溶銅を流下後の熱衝撃により割れた。
次に、上述のディスク4を備える微小銅粉製造装置を使用して、球状微小銅粉を製造する手順を図1〜4を参照しつつ、図5〜7を用いて説明する。
まず、坩堝2に銅の原材料入れて不図示の誘導加熱コイルにて加熱し、銅を溶融して、銅の溶湯6を形成する(S1)。
次に、溶湯をディスク4上に流下させるための出湯ノズル3を加熱して銅の溶湯6を流下させる準備をする(S2)。
詳しくは、図9に示すように、坩堝2の誘導加熱コイルに電力供給を開始するときに、出湯ノズル3の外周に設けられた誘導加熱コイル(加熱手段)3aにも電力供給を開始し、t1にてT1℃にまで出湯ノズル3を加熱する(P0〜P1)。この温度で出湯ノズル3をt2まで保持する(P1〜P2)。なお、ここで用いる誘導加熱コイル3aの内側には冷却水が充填されている。
そして、電力第1加熱ステップにて(P2〜P3)、t3において出湯ノズル3を銅が溶融しないT2℃(予熱温度)まで加熱する(S21)。
さらに、ディスク回転ステップにて、加熱されたディスク4を回転位置Cに移動して(P3〜P4)回転を開始する(S24)。また、出湯口3bの中心線は、ディスク4の回転中心線Rからディスク4の半径方向外側に1mmの位置に配置する。すなわち、ディスク4上での銅の溶湯6の流下位置はディスク4の回転中心線Rからディスク4の半径方向外側に1mmの位置となるようにする。なお、ディスク4は100000rpmで回転させる。
なお、ディスク4を格納位置Aに移動するとともに誘導加熱コイル3aによる出湯ノズル3の加熱を停止してから出湯ノズル3の出湯口3bが完全に閉塞されるまでの間、出湯口3bから滴下した銅の溶湯6は不図示の受け坩堝で回収する。
分散した球状微小銅粉は、空気分級機により最大直径10μm以下に分級した。詳しくは、空気分級機の円盤回転数1350rpm、風量6m3/minで分級した。
このようにして製造された最大直径10μm以下の球状微小銅粉の概要を下記表2に示す。また、球状微小銅粉の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)像を図10,11に示す。図から明らかなように、球状微小銅粉は分散していて凝集や付着は抑えられていた。また、回転による球状微小銅粉表面のへこみや損傷は見られなかった。
すなわち、この例の製造方法によって製造された球状微小銅粉は、銅を主とする原料を加熱溶融して銅の溶湯6とするための坩堝(容器)2と、溶湯を注ぐための出湯ノズル3と、回転し遠心力によって注がれた銅の溶湯6を飛散させる、窒化珪素60〜80質量%、窒化アルミニウム15〜24質量%、アルミナ2〜8重量%、及びイットリア2〜8重量%を含む配合物を焼結してなる窒化珪素質のディスク4とを備えた微小銅粉製造装置を用いて製造される、最大直径が10.0μm以下、真球度が1.007ないし1.009、酸素含有量が263ないし324ppm、タップ密度が5.35〜5.46g/cm3、比表面積が0.138〜0.142m2/gの球状微小銅粉であって、複数の球状微小銅粉の粒度分布の標準偏差が0.085ないし0.166である。
真球度DR(DR=DL/DS、但し、DLは最大直径、DSは最小直径とする)は、図10,11に示すように球状微小銅粉の走査型電子顕微鏡像をもとに測定した。最大直径、最小直径、真球度はいずれも走査型電子顕微鏡像にある球状微小銅粉を無作為に20個選択して測定した。測定は、20個の球状微小銅粉のそれぞれについて、略球状の直径の最大値と最小値を測定してそれぞれの真球度を算出した。表2中に記載されている最大直径、最小直径、真球度は、20個の球状微小銅粉それぞれから得られた最大直径、最小直径、真球度の平均値である。
酸素含有量の測定は、酸素・窒素分析装置(堀場製作所製、EMGA−523型)にて行った。
タップ密度の測定は、日本粉末冶金工業会発行の「金属粉のタップ密度試験法」JPMA P 08に記載の測定方法にて行った。
比表面積は、BET法により測定した。
すなわち、誘導加熱コイル3aに近接して、出湯ノズル3および誘導加熱コイル3aを冷却するための冷却ノズル14を備え、その冷却ノズル14を、誘導加熱コイル3aによる出湯ノズル3の加熱を停止することによって出湯ノズル3内を流下する銅の溶湯6を冷却、固結させて出湯ノズル3を閉塞させる際に用いる。
このようにすると、出湯口閉塞ステップにて、加熱が停止された出湯ノズル3が自然冷却することによって出湯ノズル3内を流下する銅の溶湯6が冷却、固結して出湯ノズル3の出湯口3bを閉塞するのに比べて、冷却時間を短縮することができ、出湯口3bを閉塞するまでに出湯口3bより滴下する銅の溶湯6の量を低減することができ、効率よく球状微小銅粉を製造することができる。
上述の実施例1と同じ微小銅粉製造装置と銅粉分離装置とをそれぞれ同じ条件で使用して製造された球状微小銅粉を空気分級機により最大直径15μm以下に分級した。
なお、空気分級機の円盤回転数1100rpm、風量6m3/minで最大直径15μm以下に分級した。
このようにして製造された最大直径15μm以下の球状微小銅粉の概要を下記表3に示す。また、球状微小銅粉の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図13,14に示す。図から明らかなように、球状微小銅粉は分散していて凝集や付着は抑えられ、銅粉剥離装置による分散時の球状微小銅粉表面のへこみや損傷は見られなかった。
すなわち、この例の製造方法によって製造された球状微小銅粉は、銅を主とする原料を加熱溶融して銅の溶湯6とするための坩堝(容器)2と、溶湯を注ぐためのノズル(出湯口)3と、回転し遠心力によって注がれた銅の溶湯6を飛散させる、窒化珪素60〜80質量%、窒化アルミニウム15〜24質量%、アルミナ2〜8重量%、及びイットリア2〜8重量%を含む配合物を焼結してなる窒化珪素質のディスク4とを備えた微小銅粉製造装置を用いて製造される、最大直径が15.0μm以下、真球度が1.007ないし1.008、酸素含有量が206ないし262ppm、タップ密度が5.41〜5.53g/cm3、比表面積が0.096〜0.108m2/gの球状微小銅粉であって、複数の球状微小銅粉の粒度分布の標準偏差が0.111ないし0.140である。
真球度DR(DR=DL/DS、但し、DLは最大直径、DSは最小直径とする)は、図13,14に示す球状微小銅粉の走査型電子顕微鏡像をもとに測定した。最大直径、最小直径、真球度はいずれも走査型電子顕微鏡像にある球状微小銅粉を無作為に20個選択して測定した。測定は、20個の球状微小銅粉のそれぞれについて、略球状の直径の最大値と最小値を測定してそれぞれの真球度を算出した。表3中に記載されている最大直径、最小直径、真球度は、20個の球状微小銅粉それぞれから得られた最大直径、最小直径、真球度の平均値である。
酸素含有量の測定は、酸素・窒素分析装置(堀場製作所製、EMGA−523型)にて行った。
タップ密度の測定は、日本粉末冶金工業会発行の「金属粉のタップ密度試験法」JPMA P 08に記載の測定方法にて行った。
比表面積は、BET法により測定した。
2 坩堝(容器)
2a 流入口
3 出湯ノズル
3a 誘導加熱コイル
3b 出湯口
3c 流路
3d 本体
3e 外周面
3f 段部
3g 流入口
4 ディスク
4a ディスク本体
4b 支持部
4s 表面
5,18 モータ
6 銅の溶湯(溶湯)
7 液滴
8 銅粉回収部
10 剥離容器
11 回転軸
12 支持台
13 開閉蓋
20 格納庫
A 格納位置
B 加熱位置
C 回転位置
H1,H2 熱電対
R 回転中心線
Claims (9)
- 銅を加熱溶融して溶湯とするための容器と、
前記溶湯を流下させる出湯ノズルと、
回転し遠心力によって前記流下した溶湯を飛散させるディスクとを備えた回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置において、
前記出湯ノズルの外周に前記出湯ノズルを加熱する加熱手段を備え、
前記溶湯を前記ディスクに流下させる前には、前記加熱手段が前記出湯ノズルを予熱温度で加熱し、その輻射熱によって前記ディスクを加熱し、
前記溶湯を前記ディスクに流下させるときには、前記加熱手段が前記出湯ノズルを加熱温度で加熱することによって前記溶湯を固化させずに前記ディスクに流下させることを特徴とする、回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置。 - 前記溶湯の前記ディスクへの流下を停止するときには、前記加熱手段による前記出湯ノズルの加熱を停止することによって前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯を冷却、固結させて前記溶湯ノズルを閉塞させることを特徴とする、請求項1に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置。
- 前記加熱手段が誘導加熱コイルであることを特徴とする、請求項1に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置。
- 前記ディスクが、窒化珪素60〜80質量%、窒化アルミニウム15〜24質量%、アルミナ2〜8重量%、及びイットリア2〜8重量%を含む配合物を焼結してなる窒化珪素質ディスクであることを特徴とする、請求項1に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置。
- 前記出湯ノズルを冷却するための冷却手段を前記出湯ノズルに近接して備え、
前記加熱手段による前記出湯ノズルの加熱を停止するとともに、前記冷却手段によって前記出湯ノズルを冷却して前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯を冷却、固結させて前記出湯ノズルを閉塞させることを特徴とする、請求項2に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置。 - 前記冷却手段が金属製のパイプからなり、該パイプより不活性ガスを前記出湯ノズルおよび前記加熱手段に吹き付けて冷却することを特徴とする、請求項5に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉製造装置。
- 銅を容器内で加熱溶融して溶湯にする原料加熱溶融ステップと、
前記溶湯を出湯ノズルより回転するディスク上に流下する注湯ステップと、
前記回転するディスク上に流下された前記溶湯を遠心力で前記ディスクの半径方向外側に飛散させる溶湯飛散ステップと、
前記飛散した溶湯が冷却して球状微小銅粉を形成する銅粉形成ステップとを備える回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法において、
前記注湯ステップに先立って、
前記出湯ノズルの外周に設けられた加熱手段にて前記出湯ノズルを前記銅が溶融しない予熱温度まで加熱するノズル加熱ステップと、
前記ディスクを前記予熱温度となった前記出湯ノズルの輻射熱によって加熱するディスク加熱ステップと、
前記出湯ノズルを前記加熱手段にて前記溶湯が固化しない加熱温度まで加熱して前記溶湯を前記ディスクに流下可能にする出湯口開口ステップとを備えるとともに、
前記銅粉形成ステップに続けて、
前記加熱手段による前記出湯ノズルの加熱を停止する加熱停止ステップと、
前記加熱が停止された出湯ノズルが冷却することによって前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯が冷却、固結して前記出湯ノズルの出湯口を閉塞する出湯口閉塞ステップとを備えることを特徴とする、回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法。 - 前記ディスク加熱ステップが、前記ディスクを加熱位置まで移動させた後、前記予熱温度となった前記出湯ノズルの輻射熱によって加熱し、
前記出湯口開口ステップが、前記出湯ノズルを前記加熱手段にて前記溶湯が固化しない加熱温度まで加熱して前記溶湯を前記ディスクに流下可能にするとともに、前記ディスクを回転位置まで移動させ、
前記出湯口閉塞ステップが、前記加熱が停止された出湯ノズルが冷却することによって前記出湯ノズル内を流下する前記溶湯が冷却、固結して前記出湯ノズルの出湯口を閉塞するとともに、前記ディスクを格納位置まで移動させることを特徴とする、請求項7に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法。 - 前記出湯口閉塞ステップが、外周に低温の不活性ガスを吹き付けて前記出湯ノズルを冷却し、該出湯ノズル内を流下する前記溶湯が冷却、固結して前記出湯ノズルの出湯口を閉塞することを特徴とする、請求項7に記載の回転ディスク法による球状微小銅粉の製造方法。
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