JP4224668B2 - 燃料電池用構成部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の構成要素をなす燃料電池用の構成部品に関するものであり、更に詳しくは、ガス拡散層とガスケットと絶縁部材との一体品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、その主な構成要素として、カーボンプレート等よりなるセパレータと、ガスを反応させるための、Pt触媒を担持させた触媒電極および電解質膜と、ガスの拡散を促進させるための、カーボン繊維等よりなるガス拡散層と、ガスや冷媒をシールするためのガスケットとを有している。
【0003】
しかしながら、従来技術では、燃料電池を組み立てる際にこれらの構成要素を順次組み付ける構成であるために、その組立てに多くの手間と時間がかかる不都合があり、特に、電解質膜と触媒電極とを組み付ける際には両者の位置が固定されにくいために、面倒な位置決め作業を行なう必要がある。
【0004】
これに対して、現在は、電解質膜と触媒電極とをホットプレスを用いて予め結合させる方法が開発されており(特開2000−223134)、この方法による電解質膜と触媒電極との結合品である反応電極部(MEA)が燃料電池の構成部品として利用されている。
【0005】
しかしながら、この方法を用いても、反応電極部とセパレータとを組み付ける際にはその間にガスケットを挟み込む必要があり、この場合、反応電極部の電解質膜の両側から電解質膜を挟み込むようにしてガスケットを組み付けるが、電解質膜の位置決めが困難であるために、電解質膜に皺が寄る等の問題が発生している。
【0006】
また、セパレータの電解質膜側にガスケットを一体化する技術も開発されているが(特開2000−133288)、この場合であっても電解質膜を挟み込む際には同様な問題が発生している。
【0007】
更にまた、ガス拡散層と電解質膜との一体品にゴムまたは樹脂を直接含浸する方法も考えられるが、この場合には、陰極側と陽極側のガス拡散層がゴムまたは樹脂を含浸した内部で短絡する可能性がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、燃料電池用構成要素の組付工数を削減することができ、併せて、燃料電池の両極が短絡するのを防止することができる燃料電池用構成部品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による燃料電池用構成部品は、多孔質状のガス拡散層と、前記ガス拡散層の一面側に配置されたゴム状弾性材製のガスケットと、前記ガス拡散層の他面側に配置されたシート状の絶縁部材との一体品であって、前記ガスケットは、その一部の成形材料が前記ガス拡散層に含浸して前記絶縁部材に達することにより前記ガス拡散層および絶縁部材と一体化されており、前記絶縁部材は、そのガス拡散層とは反対側の一面に貼着機能を備え、前記一体品は、前記絶縁部材の貼着機能によって電解質膜またはセパレータに取り付けられることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2による燃料電池用構成部品は、多孔質状のガス拡散層と、前記ガス拡散層の一面側に配置されたセパレータと、前記ガス拡散層の他面側に配置されたシート状の絶縁部材と、前記セパレータにおけるガス拡散層とは反対側の一面上に成形されたゴム状弾性材製のガスケットとの一体品であって、前記ガスケットは、その一部の成形材料が前記セパレータに設けた貫通穴に充填されるとともに前記ガス拡散層に含浸して前記絶縁部材に達することにより前記セパレータ、ガス拡散層および絶縁部材と一体化されており、前記絶縁部材は、そのガス拡散層とは反対側の一面に貼着機能を備え、前記一体品は、前記絶縁部材の貼着機能によって電解質膜に取り付けられることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3による燃料電池用構成部品は、上記した請求項1または2の燃料電池用構成部品において、ガスケットは接着性ゴムよりなり、かつその接着性を用いて絶縁部材と一体化されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項4による燃料電池用構成部品は、上記した請求項1または2の燃料電池用構成部品において、ガスケットは接着性を有しないゴムよりなり、かつ絶縁部材の一面に塗布した接着剤の接着機能によって前記絶縁部材と一体化されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成を備えた本発明の請求項1による構成部品によると、ガス拡散層とガスケットと絶縁部材との一体品が形成されるために、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、また、この一体品をシート状絶縁部材の一面に設定した貼着機能によって電解質膜またはセパレータ等の相手取付部材に取り付けるものであるために、取付作業を容易化することが可能となる。
【0014】
また、ガス拡散層およびガスケットが絶縁部材を介して電解質膜またはセパレータ等に取り付けられるため、良好な電気絶縁性が発揮される。
【0015】
尚、ガスケットと絶縁部材との一体化に関しては、請求項3に記載したようにガスケットが接着性ゴムよりなり、かつその接着性を用いて絶縁部材と一体化される場合と、請求項4に記載したように、ガスケットが接着性を有しないゴムよりなり、かつ絶縁部材の一面に塗布した接着剤の接着機能によって絶縁部材と一体化される場合とがある。
【0016】
また、上記構成を備えた本発明の請求項2による構成部品によると、ガス拡散層とガスケットと絶縁部材とセパレータとの一体品が形成されるために、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、また、この一体品をシート状絶縁部材の一面に設定した貼着機能によって電解質膜等の相手取付部材に取り付けるものであるために、取付作業を容易化することが可能となる。
【0017】
また、ガス拡散層およびガスケットが絶縁部材を介して電解質膜等に取り付けられるため、良好な電気絶縁性が発揮される。
【0018】
尚、ガスケットと絶縁部材との一体化に関しては、請求項3に記載したようにガスケットが接着性ゴムよりなり、かつその接着性を用いて絶縁部材と一体化される場合と、請求項4に記載したように、ガスケットが接着性を有しないゴムよりなり、かつ絶縁部材の一面に塗布した接着剤の接着機能によって絶縁部材と一体化される場合とがある。
【0019】
また、上記請求項1に係る発明に関連して、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0020】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一の燃料電池用構成部品は、
(1) 燃料電池で使用されるガス拡散層と接着剤(粘着剤)付き絶縁部材(樹脂フィルム)とガスケットとの一体品であって、接着性ゴムをガス拡散層に含浸させその直下にある絶縁部材(樹脂フィルム)と接着させた一体品であり、
(2) また、燃料電池で使用されるガス拡散層と接着剤(粘着剤)付き絶縁部材(樹脂フィルム)とガスケットとの一体品であって、絶縁部材(樹脂フィルム)に接着剤が塗布されており、ゴムをガス拡散層に含浸させその直下にある絶縁部材(樹脂フィルム)と接着させた一体品である。
【0021】
(3) また、上記(1)または(2)のガスケットが射出成形によって製作された製品であり、
(4) また、上記(1)または(2)のガスケットがディスペンサーによって製作された製品であり、
(5) また、上記(1)または(2)のガスケットがプリントによって製作された製品である。
【0022】
(6) また、上記(1)または(2)の製品を燃料電池用電解質膜(イオン交換膜)に貼り付けた一体品であり、
(7) また、上記(1)または(2)の製品を燃料電池用セパレータに貼り付けた一体品である。
【0023】
(8) また、片面に接着剤(粘着剤)が塗布されている絶縁部材(樹脂フィルム)のもう一方の面にガス拡散層を介して接着性ゴムを含浸させて、その接着性ゴムと絶縁部材(樹脂フィルム)とが一体化した製品であり、
(9) また、その製品の絶縁部材(樹脂フィルム)に塗布されている接着剤(粘着剤)側を電解質膜(イオン交換膜)の両面に貼り合せた電解質膜(イオン交換膜)、ガス拡散層およびガスケットの一体品であり、
(10) その他に、燃料電池用のセパレータに貼り付けたセパレータ、ガス拡散層およびガスケットの一体品である。
【0024】
(11) 実施形態としては、一方の面に接着剤(粘着剤)を塗布した絶縁部材(樹脂フィルム)の接着剤(粘着剤)を塗布していない面上にガス拡散層を配置し、その上部にガスケットを成形する。そのときにゴムは、ガス拡散層の内部を浸透し、ゴムが含浸される。浸透したゴムは、絶縁部材(樹脂フィルム)の接着剤(粘着剤)の塗布されていない面に到達し、絶縁部材(樹脂フィルム)と反応し一体化される。
【0025】
(12) ガス拡散層は、水素または酸素を触媒層に導くための通気性と、発電した電気をセパレータに導くための導電性とを有しており、通常、カーボンペーパーまたは不織布を炭化させたものが用いられる。厚さは、0.05〜0.5mm程度である。ガスケットのゴム材料には、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエン(EPDM)またはフッ素ゴム等が用いられ、ガス拡散層に含浸するために、液状ゴムが最も使用される。絶縁部材(樹脂フィルム)には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)またはポリイミド(PI)等の片面に接着剤(粘着剤)を塗布したものが用いられる。厚さは、0.03〜0.3mm程度である。
【0026】
(13) また、上記したガス拡散層にゴムを含浸して成形したガス拡散層とガスケットと絶縁部材(樹脂フィルム)との一体品を、絶縁部材(樹脂フィルム)に塗布された接着剤(粘着剤)を介して、MEA(電解質膜の両面に触媒層を一体化したもの)における電解質膜の両面に貼り合わせる。
【0027】
(14) また、上記したガス拡散層にゴムを含浸して成形したガス拡散層とガスケットと絶縁部材(樹脂フィルム)との一体品を、絶縁部材(樹脂フィルム)に塗布された接着剤(粘着剤)を介して、セパレータの一面に貼り付ける。
【0028】
(15) セパレータは、通常、カーボンまたは金属等の導電性のプレートであり、厚さ0.3〜3mm程度のものである。
【0029】
(16) そして、上記構成によれば、燃料電池の組付工数を削減することができ、ガス拡散層とガスケットと絶縁部材(樹脂フィルム)とを一体化したことにより、取扱い性(ハンドリング性)を向上させることができ、更に、ガスケットとガス拡散層との一体品が絶縁部材(樹脂フィルム)を介して電解質膜またはセパレータと粘着されるために、電気絶縁性が良く、両極の短絡の可能性を低減させることができる。
【0030】
また、上記請求項2に係る発明に関連して、本件出願には、以下の技術的事項が含まれる。
【0031】
すなわち、上記目的を達成するため、本件出願が提案する一の燃料電池用構成部品は、
(17) 燃料電池で使用されるガス拡散層と接着剤(粘着剤)付き絶縁部材(樹脂フィルム)とセパレータとガスケットとの一体品であって、貫通穴をあけたセパレータと、ガス拡散層と、接着剤(粘着剤)付き絶縁部材(樹脂フィルム)とをこの順に重ね、接着性ゴムをセパレータ上に成形することにより、ガスケットを成形しつつ、接着性ゴムをガス拡散層に含浸し、その直下にある絶縁部材(樹脂フィルム)と接着させた一体品であり、
(18) また、燃料電池で使用されるガス拡散層と接着剤(粘着剤)付き絶縁部材(樹脂フィルム)とセパレータとガスケットとの一体品であって、貫通穴をあけたセパレータと、ガス拡散層と、接着剤をゴムの接触する面に予め塗布した接着剤(粘着剤)付き絶縁部材(樹脂フィルム)とをこの順に重ね、ゴムをセパレータ上に成形することにより、ガスケットを成形しつつ、ゴムをガス拡散層に含浸し、その直下にある絶縁部材(樹脂フィルム)と接着させた一体品である。
【0032】
(19) また、上記(17)または(18)の製品を燃料電池用電解質膜(イオン交換膜)の両面に貼り合わせた製品である。
【0033】
(20) また、貫通穴のあるセパレータの片面にガス拡散層と絶縁部材(樹脂フィルム)とが一体化された製品であって、絶縁部材(樹脂フィルム)の反対面には接着剤(粘着剤)が塗布されており、その接着剤(粘着剤)を電解質膜(イオン交換膜)の両面に貼り合わせて一体化したセパレータとガスケットとガス拡散層と電解質膜(イオン交換膜)の一体品である。電解質膜(イオン交換膜)側のシールは、ガス拡散層に含浸されたゴムの弾性および、接着剤(粘着剤)によって一体化されていることにより行なわれる。また、冷媒側のシールもセパレータ側のゴムによって可能である。
【0034】
(21) 実施形態としては、セパレータの片面にガス拡散層を挟み込んだ状態で、接着剤(粘着剤)が塗布されている絶縁部材(樹脂フィルム)が組み付けられる。絶縁部材(樹脂フィルム)の片面(ガス拡散層と接していない反対側の面)には、接着剤(粘着剤)が塗布されている。ガスケットを成形するセパレータには貫通穴がある。その貫通穴を通してゴムは反対側に存在するガス拡散層に含浸され、絶縁部材(樹脂フィルム)に到達する。絶縁部材(樹脂フィルム)のガス拡散層に接している面には、接着剤が塗布されており、その接着剤とゴムが反応して一体化される。また、成形するゴムとして選択接着性ゴムを用いれば、絶縁部材(樹脂フィルム)に接着剤を塗布する必要はない。
【0035】
(22) ガス拡散層は、水素または酸素を触媒層に導くための通気性と、発電した電気をセパレータに導くための導電性とを有しているもので、通常、カーボンペーパーまたは不織布を炭化させたものが用いられる。厚さは、0.05〜0.5mm程度である。ガスケットのゴム材料には、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエン(EPDM)またはフッ素ゴム等が用いられ、ガス拡散層に含浸するために、液状ゴムが最も使用される。絶縁部材(樹脂フィルム)には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)またはポリイミド(PI)等の片面に接着剤(粘着剤)を塗布したものが用いられる。厚さは、0.03〜0.3mm程度である。
【0036】
(23) また、ガス拡散層にゴムを含浸して成形したガス拡散層とガスケットと絶縁部材(樹脂フィルム)とセパレータとの一体品を、絶縁部材(樹脂フィルム)に塗布された接着剤(粘着剤)を介して、MEA(電解質膜の両面に触媒層を一体化したもの)における電解質膜の両面に貼り合わせる。
【0037】
(24) そして、上記構成によれば、燃料電池の組付工数を削減することができ、セパレータとガス拡散層とガスケットと絶縁部材(樹脂フィルム)とを一体化したことにより、取扱い性(ハンドリング性)を向上させることができ、更にガスケットとガス拡散層との一体品が絶縁部材(樹脂フィルム)を介して電解質膜と粘着されるために、電気絶縁性が良く、両極の短絡の可能性を低減させることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0039】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係る燃料電池用構成部品1の要部断面を示している。当該実施例に係る構成部品1は、ガス拡散層2とガスケット3と絶縁部材4との一体品であって、以下のように構成されている。
【0040】
すなわち先ず、所定の平面形状を備えた平板状のガス拡散層2が設けられており、このガス拡散層2の周縁部2aにおける一面(図上上面)2b側にガスケット3が配置されるとともに、他面(図上下面)2c側に絶縁部材4が配置されている。
【0041】
ガス拡散層2は、カーボン繊維等の多孔質体によって形成されており、その周縁部2aに比較的薄肉のガスケット取付部2dを形成すべく、一面2bに内高状の段差部2eが設けられている。尚、この段差部2eは無くても良い。
【0042】
ガスケット取付部2dの一面2bに配置されるガスケット3は、液状ゴムの硬化物によって形成されており、当該ガスケット3の成形時、ガス拡散層2の厚さ内に、ガスケット3を形成する一部の液状ゴムを含浸せしめることによってガス拡散層2とガスケット3とが一体化されている。図では説明の便宜上、含浸部3aに点々を付して示している。ガスケット3は当該構成部品1の取付後、セパレータに密接するものであって、接触面圧を局部的に高めるべく、断面略三角形状のシールリップ3bが一体成形されている。
【0043】
また、上記一部の液状ゴムは、ガス拡散層2のガスケット取付部2dにおいてその一面2bから他面2cに達して絶縁部材4と接触しており、この接触部においてガスケット3と絶縁部材4とが一体化されている。このガスケット3と絶縁部材4との一体化は、ガスケット3が接着性ゴムよりなる場合には、この接着性ゴムの備える接着性によってガスケット3が絶縁部材4の一面(図上上面)4aに接着されるが、ガスケット3が接着性を有しないゴムよりなる場合には、絶縁部材4の一面4aに予め接着剤(図示せず)が塗布されることにより、この接着剤の接着機能によってガスケット3が絶縁部材4の一面4aに接着される。
【0044】
絶縁部材4は、PETフィルム等の樹脂フィルムによってシート状のものとして形成されており、またガス拡散層2のガスケット取付部2dの全周に亙って帯状のものとして配置されている。また、この絶縁部材4は、ガス拡散層2の他面2cまで浸透したゴムがこの他面2c側で露出することがないように、ガスケット3の幅w2よりも広い幅寸法w1を有している。
【0045】
絶縁部材4の他面(図上下面)4bには予め接着剤5が塗布されており、この接着剤5の貼着機能によって当該構成部品1が電解質膜またはセパレータ等の相手取付部材に取り付けられる。図2は、当該構成部品1を反応電極部(MEA)6の両面にそれぞれ取り付けた状態を示しており、各構成部品1が接着剤5の貼着機能によって反応電極部6における電解質膜(イオン交換膜)7の周縁部7aの一面または他面に貼着されている。反応電極部6は、電解質膜7の両面にそれぞれ触媒電極(触媒層)8を重ね合わせたものである。
【0046】
尚、取付作業前、接着剤5を保護する必要があるときは、絶縁部材4の他面4bに離型フィルム(図示せず)を剥離自在に貼り付けることによって接着剤5を被覆するのが好適である。
【0047】
上記構成を備えた構成部品1においては、上記したようにガス拡散層2とガスケット3と絶縁部材4との一体品が形成されるために、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、よって燃料電池用構成要素の組付工数を削減することができる。また、予め一面4bに接着剤5を塗布した絶縁部材4を電解質膜7やセパレータ等の相手取付部材に押し付けるだけで当該構成部品1を相手取付部材に取り付けることができるために、取付作業を容易化することができる。
【0048】
また、ガス拡散層2およびガスケット3が絶縁部材4を介して電解質膜7またはセパレータ等の相手取付部材に取り付けられるために、良好な電気絶縁性が発揮され、よって陰極側と陽極側のガス拡散層2がゴムを含浸した内部で短絡するのを防止することができる。
【0049】
第二実施例・・・
図3は、本発明の第二実施例に係る燃料電池用構成部品1の要部断面を示している。当該実施例に係る構成部品1は、ガス拡散層2とガスケット3と絶縁部材4との一体品であって、以下のように構成されている。
【0050】
すなわち先ず、所定の平面形状を備えた平板状のガス拡散層2が設けられており、このガス拡散層2の周縁部2aにおける一面(図上上面)2b側にガスケット3が配置されるとともに、他面(図上下面)2c側に絶縁部材4が配置されている。
【0051】
ガス拡散層2は、カーボン繊維等の多孔質体によって形成されており、その周縁部2aに比較的薄肉のガスケット取付部2dを形成すべく、一面2bに内高状の段差部2eが設けられている。尚、この段差部2eは無くても良い。
【0052】
ガスケット取付部2dの一面2bに配置されるガスケット3は、液状ゴムの硬化物によって形成されており、当該ガスケット3の成形時、ガス拡散層2の厚さ内に、ガスケット3を形成する一部の液状ゴムを含浸せしめることによってガス拡散層2とガスケット3とが一体化されている。図では説明の便宜上、含浸部3aに点々を付して示している。ガスケット3は当該構成部品1の取付後、図4に示すように反応電極部6における電解質膜(イオン交換膜)7の周縁部7aに密接するものであって、電解質膜7を保護すべく接触面圧が局部的に上昇することがないよう、フラットシール構造とされている。
【0053】
また、上記一部の液状ゴムは、ガス拡散層2のガスケット取付部2dにおいてその一面2bから他面2cに達して絶縁部材4と接触しており、この接触部においてガスケット3と絶縁部材4とが一体化されている。このガスケット3と絶縁部材4との一体化は、ガスケット3が接着性ゴムよりなる場合には、この接着性ゴムの備える接着性によってガスケット3が絶縁部材4の一面(図上上面)4aに接着されるが、ガスケット3が接着性を有しないゴムよりなる場合には、絶縁部材4の一面4aに予め接着剤(図示せず)が塗布されることにより、この接着剤の接着機能によってガスケット3が絶縁部材4の一面4aに接着される。
【0054】
絶縁部材4は、PETフィルム等の樹脂フィルムによってシート状のものとして形成されており、またガス拡散層2のガスケット取付部2dの全周に亙って帯状のものとして配置されている。また、この絶縁部材4は、ガス拡散層2の他面2cまで浸透したゴムがこの他面2c側で露出することがないように、ガスケット3の幅w2よりも広い幅寸法w1を有している。
【0055】
絶縁部材4の他面(図上下面)4bには予め接着剤5が塗布されており、この接着剤5の貼着機能によって当該構成部品1が電解質膜またはセパレータ等の相手取付部材に取り付けられる。この図3は、当該構成部品1をセパレータ9に取り付けた状態を示しており、当該構成部品1が接着剤5の貼着機能によってセパレータ9の一面に貼着されている。セパレータ9の一面には、絶縁部材4の厚さを吸収するための内高状の段差部9aが設けられている。尚、この段差部9aは無くても良い。
【0056】
取付作業前、接着剤5を保護する必要があるときは、絶縁部材4の他面4bに離型フィルム(図示せず)を剥離自在に貼り付けることによって接着剤5を被覆するのが好適である。
【0057】
上記構成を備えた構成部品1においては、上記したようにガス拡散層2とガスケット3と絶縁部材4との一体品が形成されるために、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、よって燃料電池用構成要素の組付工数を削減することができる。また、予め一面4bに接着剤5を塗布した絶縁部材4を電解質膜やセパレータ9等の相手取付部材に押し付けるだけで当該構成部品1を相手取付部材に取り付けることができるために、取付作業を容易化することができる。図4は、図3に示したセパレータ9を含む一体品によって反応電極部6をその両面側から挟んだ状態を示している。
【0058】
また、上記構成を備えた構成部品1によれば、ガス拡散層2およびガスケット3が絶縁部材4を介して電解質膜またはセパレータ9等の相手取付部材に取り付けられるために、良好な電気絶縁性が発揮され、よって陰極側と陽極側のガス拡散層2がゴムを含浸した内部で短絡するのを防止することができる。
【0059】
第三実施例・・・
図5は、本発明の第三実施例に係る燃料電池用構成部品1の要部断面を示している。当該実施例に係る構成部品1は、ガス拡散層2とガスケット3と絶縁部材4とセパレータ9との一体品であって、以下のように構成されている。
【0060】
すなわち先ず、所定の平面形状を備えた平板状のガス拡散層2が設けられており、このガス拡散層2の一面(図上上面)2b側にセパレータ9が配置されるとともに、他面(図上下面)2c側に絶縁部材4が配置されている。ガスケット3はセパレータ9におけるガス拡散層2とは反対の一面(図上上面)9b側に配置されている。
【0061】
ガス拡散層2は、カーボン繊維等の多孔質体によって形成されており、セパレータ9は、カーボンまたは金属等よりなるプレートによって形成されている。また、このセパレータ9の他面9cには、その周縁部9dに位置して溝部9eが全周に亙って設けられており、セパレータ9の一面9bとこの溝部9eの底面とを貫通するように貫通穴9fが設けられている。この貫通穴9fは複数が溝部9eに沿って、すなわちセパレータ9の周縁部9dに沿って設けられている。
【0062】
セパレータ9の一面9bに配置されるガスケット3は、液状ゴムの硬化物によって形成されており、その成形時に一部の液状ゴムが貫通穴9fおよび溝部9eに充填されるとともにガス拡散層2の厚さ内に含浸することによって、ガスケット3、セパレータ9およびガス拡散層2が一体化されている。図では説明の便宜上、ガス拡散層2内に含浸したガスケット3の含浸部3aに点々を付して示している。ガスケット3は当該構成部品1の取付後、隣のセルのセパレータに密接するものであって、接触面圧を局部的に高めるべく、断面略三角形状のシールリップ3bが一体成形されている。
【0063】
また、上記した一部の液状ゴムは、ガス拡散層2のガスケット取付部2dにおいて、その一面2bから他面2cまで含浸して絶縁部材4と接触しており、この接触部において、ガスケット3と絶縁部材4とが一体化されている。このガスケット3と絶縁部材4との一体化は、ガスケット3が接着性ゴムよりなる場合には、この接着性ゴムの備える接着性によってガスケット3が絶縁部材4の一面(図上上面)4aに接着されるが、ガスケット3が接着性を有しないゴムよりなる場合には、絶縁部材4の一面4aに予め接着剤(図示せず)が塗布されることにより、この接着剤の接着機能によってガスケット3が絶縁部材4の一面4aに接着される。
【0064】
絶縁部材4は、PETフィルム等の樹脂フィルムによってシート状のものとして形成されており、またガス拡散層2のガスケット取付部2dの全周に亙って帯状のものとして配置されている。また、この絶縁部材4は、ガス拡散層2の他面2cまで浸透したゴムがこの他面2c側で露出することがないように、溝部9eの幅w3よりも広い幅寸法w1を有している。
【0065】
絶縁部材4の他面(図上下面)4bには予め接着剤5が塗布されており、この接着剤5の貼着機能によって当該構成部品1が電解質膜等の相手取付部材に取り付けられる。図6は、当該構成部品1を反応電極部(MEA)6の両面にそれぞれ取り付けた状態を示しており、各構成部品1が接着剤5の貼着機能によって反応電極部6における電解質膜(イオン交換膜)7の周縁部7aの一面または他面に貼着されている。反応電極部6は、電解質膜7の両面にそれぞれ触媒電極(触媒層)8を重ね合わせたものである。
【0066】
尚、取付作業前、接着剤5を保護する必要があるときは、絶縁部材4の他面4bに離型フィルム(図示せず)を剥離自在に貼り付けることによって接着剤5を被覆するのが好適である。
【0067】
上記構成を備えた構成部品1においては、上記したようにガス拡散層2とガスケット3と絶縁部材4とセパレータ9との一体品が形成されるために、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、よって燃料電池用構成要素の組付工数を削減することができる。また、予め一面4bに接着剤5を塗布した絶縁部材4を電解質膜7等の相手取付部材に押し付けるだけで当該構成部品1を相手取付部材に取り付けることができるために、取付作業を容易化することができる。
【0068】
また、ガス拡散層2およびガスケット3が絶縁部材4を介して電解質膜7等の相手取付部材に取り付けられるために、良好な電気絶縁性が発揮され、よって陰極側と陽極側のガス拡散層2がゴムを含浸した内部で短絡するのを防止することができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0070】
すなわち先ず、上記構成を備えた本発明の請求項1による燃料電池用構成部品においては、上記したようにガス拡散層とガスケットと絶縁部材との一体品が形成されるため、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、よって燃料電池用構成要素の組付工数を削減することができる。また、この一体品をシート状絶縁部材の一面に設定した貼着機能によって電解質膜またはセパレータ等の相手取付部材に取り付けるものであるために、取付作業を容易化することができる。
【0071】
また、ガス拡散層およびガスケットが絶縁部材を介して電解質膜またはセパレータ等に取り付けられるために、良好な電気絶縁性が発揮され、よって陰極側と陽極側のガス拡散層がゴムまたは樹脂を含浸した内部で短絡するのを防止することができる。
【0072】
また、上記構成を備えた本発明の請求項2による燃料電池用構成部品においては、ガス拡散層とガスケットと絶縁部材とセパレータとの一体品が形成されるため、これらの構成要素を一部品として纏めて取り扱うことが可能となり、よって燃料電池用構成要素の組付工数を削減することができる。また、この一体品をシート状絶縁部材の一面に設定した貼着機能によって電解質膜等の相手取付部材に取り付けるものであるために、取付作業を容易化することができる。
【0073】
また、ガス拡散層およびガスケットが絶縁部材を介して電解質膜等に取り付けられるために、良好な電気絶縁性が発揮され、よって陰極側と陽極側のガス拡散層がゴムまたは樹脂を含浸した内部で短絡するのを防止することができる。
【0074】
またこれに加えて、上記構成を備えた本発明の請求項3による燃料電池用構成部品においては、ガスケットが接着性ゴムよりなり、かつその接着性を用いて絶縁部材と一体化されるものであり、また請求項4による燃料電池用構成部品においては、ガスケットが接着性を有しないゴムよりなり、かつ絶縁部材の一面に塗布した接着剤の接着機能によって絶縁部材と一体化されるものであるためにそれぞれ、ガスケットと絶縁部材とを強固に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例に係る燃料電池用構成部品の要部断面図
【図2】同構成部品の取付状態を示す要部断面図
【図3】本発明の第二実施例に係る燃料電池用構成部品の要部断面図
【図4】同構成部品の取付状態を示す要部断面図
【図5】本発明の第三実施例に係る燃料電池用構成部品の要部断面図
【図6】同構成部品の取付状態を示す要部断面図
【符号の説明】
1 燃料電池用構成部品
2 ガス拡散層
2a,7a,9d 周縁部
2b,4a,9b 一面
2c,4b,9c 他面
2d ガスケット取付部
2e,9a 段差部
3 ガスケット
3a 含浸部
3b シールリップ
4 絶縁部材
5 接着剤
6 反応電極部
7 電解質膜
8 触媒電極
9 セパレータ
9e 溝部
9f 貫通穴
Claims (4)
- 多孔質状のガス拡散層(2)と、前記ガス拡散層(2)の一面(2b)側に配置されたゴム状弾性材製のガスケット(3)と、前記ガス拡散層(2)の他面(2c)側に配置されたシート状の絶縁部材(4)との一体品であって、
前記ガスケット(3)は、その一部の成形材料が前記ガス拡散層(2)に含浸して前記絶縁部材(4)に達することにより前記ガス拡散層(2)および絶縁部材(4)と一体化されており、
前記絶縁部材(4)は、そのガス拡散層(2)とは反対側の一面(4b)に貼着機能を備え、前記一体品は、前記絶縁部材(4)の貼着機能によって電解質膜(7)またはセパレータ(9)に取り付けられることを特徴とする燃料電池用構成部品。 - 多孔質状のガス拡散層(2)と、前記ガス拡散層(2)の一面(2b)側に配置されたセパレータ(9)と、前記ガス拡散層(2)の他面(2c)側に配置されたシート状の絶縁部材(4)と、前記セパレータ(9)におけるガス拡散層(2)とは反対側の一面(9b)上に成形されたゴム状弾性材製のガスケット(3)との一体品であって、
前記ガスケット(3)は、その一部の成形材料が前記セパレータ(9)に設けた貫通穴(9f)に充填されるとともに前記ガス拡散層(2)に含浸して前記絶縁部材(4)に達することにより前記セパレータ(9)、ガス拡散層(2)および絶縁部材(4)と一体化されており、
前記絶縁部材(4)は、そのガス拡散層(2)とは反対側の一面(4b)に貼着機能を備え、前記一体品は、前記絶縁部材(4)の貼着機能によって電解質膜(7)に取り付けられることを特徴とする燃料電池用構成部品。 - 請求項1または2の燃料電池用構成部品において、
ガスケット(3)は接着性ゴムよりなり、かつその接着性を用いて絶縁部材(4)と一体化されていることを特徴とする燃料電池用構成部品。 - 請求項1または2の燃料電池用構成部品において、
ガスケット(3)は接着性を有しないゴムよりなり、かつ絶縁部材(4)の一面(4a)に塗布した接着剤の接着機能によって前記絶縁部材(4)と一体化されていることを特徴とする燃料電池用構成部品。
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