JP4224576B2 - 芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族炭酸エステル化合物又は脂肪族炭酸エステル化合物の製造方法に関し、詳しくはエステル交換法によるポリカーボネート合成等、種々の有機化合物合成の中間体として、また、ポリカーボネート樹脂原料等として有用な芳香族炭酸エステル化合物及び樹脂や塗料等の溶媒,アルキル化剤,カルボニル化剤あるいはポリカーボネート樹脂原料等として有用な脂肪族炭酸エステル化合物を、芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物から効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族炭酸エステル化合物は、エステル交換法によるポリカーボネートの製造原料として、あるいは各種有機合成の中間体として有用な化合物である。また、脂肪族炭酸エステル化合物は、樹脂や塗料等の溶媒,アルキル化剤,カルボニル化剤あるいはポリカーボネート樹脂原料などとして有用な化合物である。
芳香族炭酸エステル化合物の製造方法としては、一般に芳香族ヒドロキシ化合物とホスゲンとをアルカリの存在下で反応させる方法があるが、この方法では猛毒なホスゲンを用いる上に、量論量のアルカリ塩が副生すること等の問題がある。従って、ホスゲンを使用しない芳香族炭酸エステル化合物の製造方法が多く提案されてきた。
【0003】
芳香族炭酸エステル化合物製造の一般的な方法として、炭酸エステル化しようとする芳香族ヒドロキシ化合物を、触媒の存在下で一酸化炭素及び酸素と反応させる酸化的カルボニル化反応を用いる方法が提案されている。この方法においては、使用される触媒の代表的なものとして、パラジウム化合物と銅化合物及び塩基を組み合わせた触媒(特公昭61−8816号公報,特公昭61−43338号公報)、パラジウム化合物,助触媒の他に、キノン類及びテトラアルキルアンモニウムハライドまたはアルカリ金属ハライド,アルカリ土類金属ハライドからなる触媒(特開昭54−135743号公報,特開昭54−135744号公報,特開平2−104564号公報,特開平2−142754号公報,特開平6−9505号公報,特開平6−172268号公報,特開平6−172269号公報,特開平6−271506号公報,特開平6−271509号公報,特公平6−57678号公報,特開平8−89810号公報,特開平8−193056号公報及び米国特許4349485号明細書)、パラジウム化合物,アルカリ金属またはアルカリ土類金属,ヨウ化物またはヨウ化オニウム化合物及びゼオライト類からなる触媒(特開平1−165551号公報)、パラジウム化合物,アルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物,活性炭からなる触媒(特開平8−92168号公報)等が提案されているが、いずれの場合も酸化的カルボニル化反応の反応速度が経済的な面で十分でない上に、塩基として臭化アンモニウム塩等の含ハロゲン化合物を大量に用いる必要があるため、反応装置の腐食、芳香族ヒドロキシ化合物のハロゲン化による原料ロス等の問題がある。また、パラジウム化合物,銅化合物またはランタノイド化合物,2−ヒドロキシピリジン,非プロトン性極性溶媒を用いる方法(特開平9−110804号公報)が提案されているが、この方法は、反応速度は経済的な面では十分であるが非プロトン性極性溶媒が必須であり、溶媒の回収工程が必要となる等、経済的ではない。さらに、いずれの方法とも触媒成分として反応溶液に溶解する化合物を用いるため、触媒成分を分離することが困難である。
【0004】
一方、酸化的カルボニル化反応を用いない芳香族炭酸エステル化合物の製造方法としては、炭酸ジメチルと芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を用いた製造方法(特開平9−176094号公報)が提案されているが、この方法は原料となる炭酸ジメチルの製造工程が必要となり、必ずしも経済的な方法とは言えない。さらに、シュウ酸ジフェニル類からの脱一酸化炭素反応による製造方法(特開平9−255628号公報)が提案されているが、芳香族炭酸エステルを製造するために、一酸化炭素とメタノールを原料としたカルボニル化反応及びシュウ酸ジメチルと芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う必要があり、工程が複雑となり、経済的ではない。
【0005】
脂肪族炭酸エステル化合物の製造方法としては、一般に脂肪族ヒドロキシ化合物とホスゲンとをアルカリの存在下で反応させる方法があるが、この方法では有毒なホスゲンを用いる上に、量論量のアルカリ塩が副生すること等いくつかの問題がある。従ってホスゲンを使用しない脂肪族炭酸エステル化合物の製造方法が多く提案されてきた。
脂肪族炭酸エステル化合物の製造方法としては、例えば、脂肪族ヒドロキシ化合物の亜硝酸エステルと一酸化炭素とを反応させる方法(特開昭60−181051号公報)が提案されているが、亜硝酸エステルは腐食性ガスである上、爆発性でもあるため、安全性に問題があり、その対策のための費用が必要になる等、経済的にも問題がある。また、脂肪族ヒドロキシ化合物とアルキレンカーボネートとを反応させる方法(特公昭60−27658号公報)が提案されているが、アルキレンカーボネートが高価であり、また副生成物のグリコールの利用が必要となる等、経済的に問題がある。あるいは、脂肪族ヒドロキシ化合物と脂肪族ヒドロキシ化合物のカルバミン酸エステルとを反応させる方法(特公平1−49698号公報)が提案されているが、高価であり、また反応速度が極めて遅い等の問題がある。さらに、脂肪族ヒドロキシ化合物と尿素とを反応させる方法(特公昭62−54297号公報)が提案されているが、この方法においては有毒なアンモニアを副生し、また経済的に十分な反応速度を得るには200℃以上の高い反応温度が必要である等の問題がある。
【0006】
一方、脂肪族ヒドロキシ化合物と一酸化炭素とを触媒の存在下に反応させる方法が報告されている。この方法において用いられる触媒としては、論文(ACSSymposium Series,No.626,70頁,アメリカ化学会)に示されているように、銅化合物を助触媒として用いるパラジウム化合物触媒,銅化合物触媒,コバルト化合物触媒等が提案されているが、いずれの場合も反応速度や触媒寿命が経済的な面で十分でない上、触媒成分を分離することも困難である。担持触媒を用いた例もあるが、反応速度や触媒寿命の面で問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の芳香族炭酸エステル化合物及び脂肪族炭酸エステル化合物の製造方法が有する問題点を解消し、芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物から一段でかつ高収率で芳香族炭酸エステル化合物又は脂肪族炭酸エステル化合物を効率よく製造でき、使用した触媒組成物の分離が容易な方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒組成物の存在で芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物と,一酸化炭素及び酸素とを反応させることにより、上記の課題を達成しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
〈1〉芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを、(a)p−メチルポリスチレン,ポリスチレン、p−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体およびポリビニルピロリドンから選ばれた少なくとも一種の担体に結合した有機パラジウム錯体と、(b)レドックス触媒能を有する化合物および/または(c)ハロゲンオニウム化合物を含む触媒の存在下で、反応させることを特徴とする芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
〈2〉(a)成分の有機パラジウム錯体が、パラジウム原子のみからなる1個以上の金属中心及び有機配位子から構成される有機金属錯体、又はパラジウム原子とパラジウム原子以外の金属原子よりなる2個以上の金属中心及び有機配位子から構成される有機金属錯体であることを特徴とする〈1〉に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
〈3〉(b)成分が、セリウム化合物又はマンガン化合物であることを特徴とする〈1〉に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
〈4〉パラジウム化合物及びピリジン環構造を有する化合物からなる有機金属錯体又はパラジウム化合物及びビピリジン環構造を有する化合物からなる有機金属錯体をp−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体に結合させ、さらに塩化ピリジニウム塩を同一のp−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体に同時に結合させた触媒を用いることを特徴とする〈1〉に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
〈5〉パラジウム化合物及びトリフェニルホスフィン結合スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる触媒を用いることを特徴とする〈1〉に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、上記のように、芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物と一酸化炭素及び酸素とを、特定の触媒組成物の存在下で反応させるものである。
本発明において、芳香族ヒドロキシ化合物としては、従来公知の種々のものが使用でき、所望の芳香族炭酸エステルの種類により適宜選定することができ、例えば、モノヒドロキシ化合物及びジヒドロキシ化合物から選ばれる芳香族ヒドロキシ化合物類が挙げられる。芳香族モノヒドロキシ化合物としては、一般式(I)
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、nは1〜3の整数を示し、Xは水素原子,ハロゲン原子(例えば塩素,臭素,フッ素,ヨウ素),炭素数1〜4のアルキル基,アルコキシル基,シアノ基またはエステル基を示し、o−、m−、p−位のいずれの位置に存在してもよい。〕
で表される炭素数6〜18の芳香族モノヒドロキシ化合物(一価フェノール)が挙げられる。具体的には、フェノール,クレゾール,p−メチルフェノール,t−ブチルフェノール(p−t−ブチルフェノール等),4−クミルフェノール,メトキシフェノール,クロロフェノール,シアノフェノール等のフェノール類が例示される。
【0013】
また、ジヒドロキシ化合物としては、一般式(II)
HO−Ar−OH ・・・(II)
[式中、Arはアリーレン基を示す。]
で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(二価フェノール)が挙げられる。具体的には、カテコール,ハイドロキノン,レゾルシンあるいはこれらの置換誘導体であるフェノール類が例示される。
また、ジヒドロキシ化合物としては、一般式(III)
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、Rは、それぞれ水素原子,ハロゲン原子(例えば、塩素,臭素,フッ素,ヨウ素)あるいは炭素数1〜8のアルキル基であり、このRが複数の場合、それらは同一であっても、異なっていてもよく、a及びbは、それぞれ1〜4の整数である。そしてYは単結合,炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基,炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基,−S−,−SO−,−SO2 −,−O−,−CO−結合または一般式(IV)
【0016】
【化3】
【0017】
で表される基を示す。]で表される炭素数12〜27の芳香族ジヒドロキシ化合物(二価フェノール)である。
【0018】
ここで、上記一般式(IV)で表される二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;ハイドロキノン;4,4’−ジヒドロキシジフェニル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノールA以外のビス(4−ヒドロキシフェニル)化合物またはビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール類等が挙げられる。これらのフェノール類が置換基としてアルキル基を有する場合には、該アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0019】
さらに、脂肪族ヒドロキシ化合物としては、従来公知の種々のものが使用でき、所望の脂肪族炭酸エステルの種類により適宜選定することができ、例えば脂肪族モノヒドロキシ化合物及び脂肪族ジヒドロキシ化合物から選ばれる脂肪族ヒドロキシ化合物類が挙げられる。脂肪族モノヒドロキシ化合物としては、一般式
R’OH
(ただしR’は炭素数1〜20の脂肪族アルキル基を示す。R’の構造としては一級,二級,三級のいずれでもよく、分岐構造,環状構造,ハロゲン原子等を適宜含んでいてもよい。)で表される脂肪族モノヒドロキシ化合物が挙げられる。具体的には、メタノール,エタノール,1−プロパノール,2−プロパノール,2−クロロ−1−プロパノール,1−クロロ−2−プロパノール,1−ブタノール,2−ブタノール,イソブタノール,tert−ブタノール,1−ペンタノール,2−メチル−1−ブタノール,3−メチル−1−ブタノール,2,2−ジメチル−1−プロパノール,シクロペンタノール,1−ヘキサノール,2−メチル−1−ペンタノール,3−メチル−1−ペンタノール,4−メチル−1−ペンタノール,2,2−ジメチル−1−ブタノール;2,3−ジメチル−1−ブタノール;3,3−ジメチル−1−ブタノール;2−エチル−1−ブタノール,3−エチル−1−ブタノール,シクロヘキサノール,1−オクタノール,2−オクタノール,2−エチル−1−ヘキサノール,1−デカノール,2−デカノール,1−ドデカノール,2−ドデカノール,1−テトラデカノール,2−テトラデカノール,1−ヘキサデカノール,2−ヘキサデカノール,1−オクタデカノール,2−オクタデカノール,ベンジルアルコール等が例示される。
【0020】
また、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、一般式
HOR”OH
(ただしR”は炭素数2〜20の脂肪族アルキレン基を示す。R”の構造としては任意の位置に、分岐構造、環状構造、ハロゲン原子等を含んでいてもよい。)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。具体的には、エチレングリコール;1,2−ジヒドロキシプロパン;1,3−ジヒドロキシプロパン;1,2−ジヒドロキシブタン;1,4−ジヒドロキシブタン;1,2−ジヒドロキシヘキサン;1,6−ジヒドロキシヘキサン;1,2−ジヒドロキシオクタン;1,8−ジヒドロキシオクタン;1,2−ジヒドロキシデカン;1,10−ジヒドロキシデカン;1,2−ジヒドロキシドデカン;1,10−ジヒドロキシドデカン;シクロヘキサンジオール;シクロヘキサンジメタノール;1,2−ジヒドロキシ−1−フェニルエタン;p−(ヒドロキシメチル)ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0021】
上記芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物と反応させる一酸化炭素は、単体であってもよいが、不活性ガスで希釈されていても、水素との混合ガスであってもよい。また、上記芳香族ヒドロキシ化合物と反応させる酸素は、純酸素であってもよいが、一般には不活性ガスで希釈されたもの、例えば空気等の酸素含有ガスであってもよい。
【0022】
本発明においては、上記の反応は、(a)有機金属錯体,
(b)レドックス触媒能を有する化合物及び
(c)芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物を活性化する能力を有する化合物
のうち少なくとも1種が担体に結合した触媒組成物の存在下に行われる。
このような触媒組成物としては、一般式(V)
【0023】
【化4】
【0024】
[式中、aは前記の(a)成分、bは前記の(b)成分、cは前記の(c)成分を表す。Ra ,Rb 及びRc はそれぞれ前記の(a)成分、(b)成分、(c)成分を担体と結合させる共有結合を表し、炭素数0以上の置換基を表し、具体的には、単結合,二重結合,三重結合,炭素数1以上20以下の二官能性飽和炭化水素基,二官能性不飽和炭化水素基,炭素数6以上20以下の二官能性芳香族炭化水素基(以上の炭化水素基には適宜ヘテロ原子,金属原子等を含有してもよい),エステル結合,エーテル結合,チオエステル結合,チオエーテル結合,アミノ結合,尿素結合,アミド結合,イミド結合,あるいは、これらの二官能性置換基の組合わせで形成される二官能性置換基,三官能性置換基又は四官能性置換基を表す。これらの二官能性置換基,三官能性置換基又は四官能性置換基には適宜置換基を有していてもよい。Sの連なりは担体を表し、炭素,ホウ素,窒素,酸素,リン,ケイ素,硫黄,アルミニウム,ジルコニウム,チタン等から選ばれる一種類以上の原子よりなる原子数1以上の化合物を表す。また、Ra 、Rb 及びRc から選ばれる少なくとも一種類が、それぞれ同一のSに結合し、放射状または線状の構造を形成してもよい。n、n’及びn”はそれぞれ単独に0以上で、それぞれの合計が1以上の整数を表し、各々が任意の異なった値であってもよい。mは単独に1以上の整数を表す。]が例示される。
【0025】
ここで一般式(V)においてaで表した(a)成分としては、(a)パラジウム原子のみからなる一個以上の金属中心及び有機配位子により構成される有機金属錯体、又はパラジウム原子とパラジウム原子以外の金属原子よりなる二個以上の金属中心及び有機配位子により構成される有機金属錯体であればいかなる化合物であってもよい。パラジウム原子を含む金属原子が二個以上金属中心として含まれる場合は、それぞれの金属原子同士が金属結合により直接結合していてもよく、有機配位子を介して結合していてもよい。有機配位子としては、パラジウム錯体等の配位子として一般的な、ホスフィン構造,ホスファイト構造,リン酸エステル構造,ピリジン構造,イミン構造,アミン構造,ニトリル構造,アルシン構造,カルボニル構造等から選ばれる構造を一個以上含んでいるものであればよい。複数の構造が含まれる有機配位子としては、ホスフィン構造を複数含む化合物,ピリジン構造を複数含む化合物,イミン構造を複数含む化合物,アミン構造を複数含む化合物,ニトリル構造を複数含む化合物,カルボニル構造を複数含む化合物,ホスフィン構造とピリジン構造を含む化合物,アルシン構造とピリジン構造を含む化合物等が挙げられる。これらの化合物の具体例としては、一般式(V)のa部分を、Ra 部分に結合していない構造(すなわちRa 部分の代わりに水素を有している構造)として示すと、以下の有機配位子が挙げられる。
【0026】
有機配位子構造を一個含んでいるものとしては、トリフェニルホスフィン,トリシクロヘキシルホスフィン,トリ−n−ブチルホスフィン,トリフェニルホスファイト,ピリジン,アルキルピリジン,ヒドロキシピリジン,キノリン,アセトニトリル,ベンゾニトリル等が具体的に挙げられる。複数の構造が含まれる有機配位子としては、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン;1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン;1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン;ビス(ジフェニルアルシノ)メタン;1,2−ビス(ジフェニルアルシノ)エタン;1,3−ビス(ジフェニルアルシノ)プロパン;2,2’−ビキノリン;4,4’−ジメチル−2,2’−ビキノリン;2,2’−ビピリジン;6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジン;フェナントロリン;2,9−ジメチルフェナントロリン;アジポニトリル;フタロニトリル;ピリジルニトリル;2−ジフェニルホスフィノピリジン;ジ−2−ピリジルフェニルホスフィン;トリ−2−ピリジルホスフィン;2−ジフェニルホスフィノキノリン;2−ジフェニルアルシノピリジン;1,2−ジ(フェニルイミノ)エタン;1,2−ビス(ジアルキルフェニルイミノ)エタン;1,2−ビス(トリアルキルフェニルイミノ)エタン;2,3−ジ(フェニルイミノ)ブタン;2,3−ビス(ジアルキルフェニルイミノ)ブタン;2,3−ビス(トリアルキルフェニルイミノ)ブタン;アセチルアセトン、あるいはこれらの有機配位子に置換基を導入した誘導体、又はこれらの位置異性体等が具体的に挙げられる。
これらの有機配位子は、一般式(V)中に示したRa 部分を介して担体と結合しており、その結合位置はいかなる部位でもよく、反応に支障のない限り、適宜選択することができる。
【0027】
上記のように、本発明において触媒組成物の(a)成分として挙げた有機金属錯体としては、パラジウム原子のみからなる一個以上の金属中心及び有機配位子により構成される有機金属錯体、又はパラジウム原子とパラジウム原子以外の金属原子よりなる二個以上の金属中心及び有機配位子により構成される有機金属錯体であれば、いかなる化合物であってもよい。このような有機金属錯体としては、具体的には、一般式(V)のa部分を、Ra 部分に結合していない構造(すなわちRa 部分の代わりに水素を有している構造)として示すと、以下の有機金属錯体が挙げられる。
【0028】
パラジウム原子一個のみからなる金属中心を有する有機金属錯体としては、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム;ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム;ジクロロビス(ピリジン)パラジウム;ジブロモビス(ピリジン)パラジウム;ジクロロビス(キノリン)パラジウム;ジブロモビス(キノリン)パラジウム;ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム;ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム;(2,2’−ビキノリン)パラジウムジクロリド;(4,4’−ジメチル−2,2’−ビキノリン)パラジウムジクロリド;(2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボキシリックアシッド ジポタシウムソルト)パラジウムジクロリド;(ジメチル 2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボキシレート)パラジウムジクロリド;(6,7−ジヒドロ−5,8−ジベンゾ[b,j][1,10]フェナントロリン)パラジウムジクロリド;(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジクロリド;(2,9−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジクロリド;(2,9−ジ−t−ブチル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジクロリド;(6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジル)パラジウムジクロリド;(6,6’−ジフェニル−2,2’−ビピリジル)パラジウムジクロリド;(6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビピリジル)パラジウムジクロリド;(2,2’−ビキノリン)パラジウムジブロミド;(4,4’−ジメチル−2,2’−ビキノリン)パラジウムジブロミド;(2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボキシリックアシッド ジポタシウムソルト)パラジウムジブロミド;(ジメチル 2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボキシレート)パラジウムジブロミド;(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジブロミド;(2,9−ジ−t−ブチル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジブロミド;(6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジル)パラジウムジブロミド;(2,2’−ビキノリン)パラジウムジヨーダイド;(4,4’−ジメチル−2,2’−ビキノリン)パラジウムジヨーダイド;(2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボキシリックアシッド ジポタシウムソルト)パラジウムジヨーダイド;(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジヨーダイド;(2,9−ジ−t−ブチル−1,10−フェナントロリン)パラジウムジヨーダイド;(6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジル)パラジウムジヨーダイド;[1,2−ビス(ジアルキルフェニルイミノ)エタン]パラジウムジクロリド;[2,3−ビス(ジアルキルフェニルイミノ)ブタン]パラジウムジクロリド等が挙げられる。
【0029】
また、パラジウム原子二個以上からなる金属中心を有する有機金属錯体としては、具体的には、ジクロロビス[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]ジパラジウム,ジブロモビス[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]ジパラジウム,ジナイトライトビス[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]ジパラジウム,ジアジドビス[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]ジパラジウム,ジシアナトビス[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]ジパラジウム,ジイソシアナトビス[ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン]ジパラジウム,ジクロロビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)ジパラジウム,ジブロモビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)ジパラジウム,ジナイトライトビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)ジパラジウム,ジアジドビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)ジパラジウム,ジシアナトビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)ジパラジウム,ジイソシアナトビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)ジパラジウム,ジクロロビス(2−ジフェニルホスフィノキノリン)ジパラジウム,ジブロモビス(2−ジフェニルホスフィノキノリン)ジパラジウム,ジナイトライトビス(2−ジフェニルホスフィノキノリン)ジパラジウム,ジアジドビス(2−ジフェニルホスフィノキノリン)ジパラジウム,ジシアナトビス(2−ジフェニルホスフィノキノリン)ジパラジウム,ジイソシアナトビス(2−ジフェニルホスフィノキノリン)ジパラジウム,ジクロロビス(トリ−2−ピリジルホスフィン)ジパラジウム,ジブロモビス(トリ−2−ピリジルホスフィン)ジパラジウム,ジナイトライトビス(トリ−2−ピリジルホスフィン)ジパラジウム,ジアジドビス(トリ−2−ピリジルホスフィン)ジパラジウム,ジシアナトビス(トリ−2−ピリジルホスフィン)ジパラジウム,ジイソシアナトビス(トリ−2−ピリジルホスフィン)ジパラジウム,ジクロロビス(2−ジフェニルアルシノピリジン)ジパラジウム,ジブロモビス(2−ジフェニルアルシノピリジン)ジパラジウム,ジナイトライトビス(2−ジフェニルアルシノピリジン)ジパラジウム,ジアジドビス(2−ジフェニルアルシノピリジン)ジパラジウム,ジシアナトビス(2−ジフェニルアルシノピリジン)ジパラジウム,ジイソシアナトビス(2−ジフェニルアルシノピリジン)ジパラジウム,テトラクロロビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)トリパラジウム等が挙げられる。
【0030】
パラジウム原子とパラジウム以外の金属原子よりなる二個以上の金属中心を有する有機金属錯体としては、一つの多核金属錯体化合物中にパラジウム原子及びパラジウム以外の金属原子を有しているものであればいかなる化合物であってもよい。パラジウム原子とパラジウム以外の金属原子よりなる二個以上の金属中心を有する有機金属錯体の、好ましいパラジウム以外の金属原子としては、スズ,チタン,鉄,ジルコニウム,モリブデン,コバルト,ニッケル,ルテニウム,ロジウム,イリジウム,プラチナ,銅,銀,金,亜鉛,アルミニウム,鉛等が挙げられる。これらパラジウム原子とパラジウム以外の金属原子よりなる二個以上の金属中心を有する有機金属錯体において、パラジウム及びパラジウム以外の金属原子の含有数は、その構造中において、それぞれが一つ以上含まれるものであればよい。このようなパラジウム原子とパラジウム以外の金属原子よりなる二個以上の金属中心を有する有機金属錯体としては、具体的には、ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン](トリクロロチン)ジパラジウムクロリド,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]ビス(トリクロロチン)ジパラジウム,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン](トリクロロチタニウム)ジパラジウムクロリド,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]ビス(トリクロロチタニウム)ジパラジウム,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン](ジクロロアイアン)ジパラジウムクロリド,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]ビス(ジクロロアイアン)ジパラジウム,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン](トリクロロチン)(トリクロロチタニウム)ジパラジウム,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン](トリクロロチン)(ジクロロアイアン)ジパラジウム,ビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン](トリクロロチタニウム)(ジクロロアイアン)ジパラジウム,π−アリル(トリフェニルホスフィン)(トリクロロチン)パラジウム,π−アリル(トリフェニルホスフィン)(トリクロロチタニウム)パラジウム,π−アリル(トリフェニルホスフィン)(ジクロロアイアン)パラジウム,ビス(トリクロロチン)パラジウム,ビス(トリクロロチタニウム)パラジウム,ビス(ジクロロアイアン)パラジウム,ジクロロカルボニルイリジウムビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)パラジウムクロリド,ジクロロカルボニルイリジウムビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,カルボニルイリジウムビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,ジクロロカルボニルロジウムビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)パラジウムクロリド,ジクロロカルボニルロジウムビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,カルボニルロジウムビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,トリクロロジカルボニルルテニウムビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)パラジウムクロリド,トリクロロジカルボニルルテニウムビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,クロロジカルボニルルテニウムビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,クロロプラチナビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)パラジウムクロリド,クロロプラチナビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド,クロロニッケルビス(2−ジフェニルホスフィノピリジン)パラジウムクロリド,クロロニッケルビス[(ビスジフェニルホスフィノ)メタン]パラジウムクロリド等が挙げられる。
【0031】
本発明の製造方法において、上記触媒組成物の(a)成分として挙げた有機金属錯体は、それぞれ一種で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機金属錯体の前駆体となり得る化合物を、それぞれ単独に用い、物理的に混合した形のものであってもよい。また、これら触媒組成物の(a)成分には、反応に支障のない限り、適宜、アルキルホスフィンあるいは芳香族ホスフィン,亜リン酸エステル,リン酸エステル等の配位子やアセトニトリル等のニトリル配位子等を組み合わせてもよい。これらの有機金属錯体は、適宜の位置でRa を介し担体に結合させればよい。
【0032】
本発明の製造方法に用いられる触媒組成物において、触媒組成物に含まれる(a)成分、(c)成分又は担体等により(b)成分の作用を代用できる場合は用いる必要はないが、必要となる場合は、上記(a)成分及び(c)成分の他に、さらに上記一般式(V)においてbとして表される(b)成分を適当量、担体に結合させ用いる。(b)成分としては、レドックス触媒能を有する化合物を用いる。この化合物としては、ランタノイド化合物,新周期律表第5族遷移金属化合物,第6族遷移金属化合物,第7族遷移金属化合物,鉄化合物,コバルト化合物,ニッケル化合物,銅化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を用いるが、これらは、有機錯体,有機塩及び無機塩のいずれの形でもあってもよい。具体的にはセリウム化合物,バナジウム化合物,クロム化合物,マンガン化合物,鉄化合物,コバルト化合物,銅化合物等が挙げられ、好ましくはセリウム化合物,マンガン化合物が挙げられる。上記触媒組成物の(b)成分として挙げたレドックス触媒は、それぞれ一種で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのレドックス触媒の前駆体となり得る化合物を、それぞれ単独に用い、物理的に混合した形のものであってもよい。これらの化合物は、適宜の位置でRb を介して担体に結合させればよい。
【0033】
本発明の製造方法に用いられる触媒組成物において、触媒組成物に含まれる(a)成分、(b)成分又は担体等により(c)成分の作用を代用できる場合は用いる必要はないが、必要となる場合は、上記(a)成分及び(b)成分の他に、さらに上記一般式(V)においてcとして表される(c)成分を適当量、担体に結合させ用いる。(c)成分としては芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物を活性化する能力を有する化合物が好適に用いられる。より好ましい例としては、ハロゲン化オニウム化合物,ルイス酸性を有する金属化合物,塩基触媒化合物等が挙げられる。
ハロゲン化オニウム化合物の例としては、次の式(VI)で表される化合物が具体的に挙げられる。
R1 R2 R3 R4 AB ・・・(VI)
[式中、Aは窒素原子またはリン原子、Bはフッ素,塩素,臭素,ヨウ素等のハロゲン原子,ヒドロキシ基,アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。R1 〜R4 はそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,へキシル基,オクチル基,シクロヘキシル基,フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等が挙げられる。R1 〜R4 は各々同一でも、異なっていてもよい。また、R1 及びR2 、R3 及びR4 はそれぞれ一緒になって−(CH2 )n−で表される2価の基であって、nが2〜7の整数であるものを形成してもよい。]さらに、上記ハロゲン化オニウム化合物としては、上記式(VI)で表される化合物以外のビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムハライド類も使用できる。それらの具体例としてはテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド,テトラフェニルホスホニウムブロミド,ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミド,ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムヒドロキシド,ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフェノキシド等が挙げられる。これらの化合物は、適宜の位置でRc を介して担体に結合させればよい。
【0034】
本発明の製造方法において用いる触媒組成物において、一般式(V)におけるRa 〜Rc に相当する、(a)〜(c)成分を担体と結合させるために用いる成分としては、反応に支障のない限り、いかなる置換基を用いてもよい。具体的には、単結合,二重結合,三重結合(以上の結合については、ここでは炭素数0の置換基として考える。),炭素数1〜20の二官能性飽和炭化水素基,二官能性不飽和炭化水素基,炭素数6〜20の二官能性芳香族炭化水素基(以上の炭化水素基には適宜ヘテロ原子、金属原子等を含有してもよい。),エステル結合,エーテル結合、チオエステル結合,チオエーテル結合,アミノ結合,尿素結合,アミド結合,イミド結合,あるいは、これらの二官能性置換基及び結合の組合わせで形成される二官能性置換基,三官能性置換基又は四官能性置換基を用いてもよい。これらの二官能性置換基,三官能性置換基又は四官能性置換基は、反応に支障のない限り、適宜置換基を有していてもよい。
【0035】
本発明の製造方法において用いる触媒組成物に用いる担体[一般式(V)におけるSの連なりに相当する。]としては、反応に支障のない限り、炭素,ホウ素,窒素,酸素,リン,ケイ素,硫黄,アルミニウム,ジルコニウム,チタン等から一種類以上選ばれる原子よりなる原子数1以上の化合物であれば、いかなる化合物でも用いることができる。また、Ra 、Rb 及びRc から選ばれる少なくとも一種類が、それぞれ一般式(V)における同一のSに結合し、放射状又は線状の構造を形成してもよい。好ましい具体例としては、有機ポリマー類,デンドリマー類,フラーレン類,カーボンナノチューブ類,糖類,生体高分子類等の有機担体、あるいはゼオライト類,シリカ,アルミナ,ジルコニア,チタニア,金属炭酸塩,金属硫酸塩,金属酸化物等の無機担体等が挙げられる。より好ましい担体としては、p−メチルポリスチレン,ポリスチレンなどのポリスチレン類、p−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,ポリスチレン,ポリビニルピロリドン,ポリピリジン類,ポリエステル類,ポリビニルアルコール,ポリビニルアセテート,シリカ等が挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法に用いる触媒組成物において、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(a)〜(c)成分を担体と結合させるために用いる成分、担体の他に、反応に支障のない限り、各成分又は担体の性質を改良する添加物、すなわち、有機バインダー,無機バインダー,架橋剤,改質剤等の添加物を、必要に応じ適宜加えても良い。また、触媒組成物の形状は反応に支障のない限りいかなる形状であってもよく、反応形式の都合により、粉末状であっても、ペレット形状、ハニカム形状、板形状等の成形体となっていてもよい。また、これらの触媒の前駆体となり得る有機金属錯体,化合物,担体,添加物等は、それぞれ単独に用い、物理的に混合した形のものであってもよい。
【0037】
本発明の製造方法において、上記の触媒組成物のうち、特に好ましい触媒組成物の具体例としては、(1)パラジウム化合物及びピリジン環構造を有する化合物からなる有機金属錯体、又はパラジウム化合物及びビピリジン環構造を有する化合物からなる有機金属錯体をp−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体に結合させ、さらに塩化ピリジニウム塩を同一のp−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体に同時に結合させた触媒組成物、(2)パラジウム化合物及びトリフェニルホスフィン結合スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる触媒組成物、(3)パラジウム化合物、レドックス触媒能を有する化合物及びポリビニルピロリドンからなる触媒組成物が挙げられる。
【0038】
本発明の製造方法において、触媒組成物の使用量については特に制限はなく、通常の触媒量でよいが、例えば、(a)成分については、その使用量は原料である芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物1モルに対して、パラジウムとして1×10-8〜0.5モル、好ましくは1×10-6〜0.1モルである。上記使用量が1×10-8モル未満では、反応速度が遅く実用的でない場合がある。一方、0.5モルを越えても、それに相当する効果が認められず経済的に不利である。また、(b)成分の使用量は、(a)成分のパラジウム1モルに対して通常0.1〜100モル、好ましくは0.5〜50モルである。0.1モル未満では、反応速度が遅い場合があり実用的でなく、100モルを越えると生成した芳香族エステル化合物又は脂肪族炭酸エステル化合物の(b)成分による酸化分解反応が進行し経済的に不利である。また、(c)成分の使用量は、(c)成分のパラジウム1モルに対して通常0.1〜1000モル、好ましくは0.5〜500モルである。0.1モル未満では、反応速度が遅い場合があり実用的でなく、1000モルを越えると、(c)成分による副反応が進行し経済的に不利である。上記以外の触媒成分、すなわち担体等の使用量は、各成分の担体に対する結合量に依存するため一概に規定できない。
一方、(a)成分、(b)成分及び(c)成分のうち、それぞれ一成分又は二成分が上記触媒に含まれていなくてもよい。その場合においては、その触媒に含まれていない(a)成分、(b)成分、(c)成分等により発現される触媒機能を追加する必要がある場合は、それぞれの(a)成分、(b)成分、(c)成分等を単独に用い、別途添加することにより用いてもよい。その際に用いる(a)成分、(b)成分、(c)成分等は、担体に結合している形態でも、結合していない形態でもよい。
【0039】
本発明の製造方法においては、反応は無溶媒下でも、溶媒中でも進行する。一般的に無溶媒下で本発明の方法を行なう方が経済的に有利ではあるが、芳香族炭酸エステル化合物及び脂肪族炭酸エステル化合物の製造プロセス上の都合等で必要な場合は、溶媒中で行ってもよい。ここで、使用できる溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素,環状脂肪族炭化水素,ハロゲン化炭化水素,エーテル,エステル,含窒素溶媒,含硫黄溶媒等が挙げられ、本発明の製造方法に用いる触媒組成物の種類,組み合わせにより、適宜選択することができる。
【0040】
本発明においては、反応温度は特に制限はないが、通常は50〜200℃、好ましくは70〜150℃である。上記範囲より高温では、分解反応等の副反応が多くなり、また、上記反応より低温では、反応速度が低下して実用的でない。また、反応圧力は、一酸化炭素や酸素等のガス状の原料を用いるため、加圧状態に設定することが一般的であり、一酸化炭素分圧は1×10-2〜20MPa、好ましくは1×10-2〜10MPaの範囲内であればよく、酸素分圧は1×10-2〜10MPa、好ましくは1×10-2〜5MPaの範囲内であればよい。特に、酸素分圧は、反応系内のガス組成が爆発範囲を外れるように調節することが好ましく、上記反応圧力があまり低圧では反応速度が低下し、また高圧過ぎると反応装置が大型となり、建設費用が高く、経済的に不利である。不活性ガスや水素等を用いる際には、その分圧は特に規定されないが、適宜実用的な圧力の範囲で用いればよい。
【0041】
反応方式は、回分,半連続,連続のいずれでも可能である。ここで反応系の状態は、液相状態の場合と、液相と気相の混合状態の場合と、気相と固相の混合状態の場合と、液相と固相の混合状態の場合と、液相と気相と固相の混合状態の場合のいずれかである。また、触媒組成物の反応系における状態は、均一系であっても不均一であってもよく、触媒組成物を適宜選択することにより選ぶことができる。また、触媒組成物を不均一の状態で用いる場合は、触媒組成物が反応系中に懸濁した状態で用い、反応後にろ過等の操作によって分離しても、反応器又は容器等に充填もしくは結合した状態にし、これに反応液を通過させる状態で用いてもよい。上記の原料成分及び触媒組成物は、必要に応じて希釈して用いてもよい。希釈剤としては、液相では飽和炭化水素等の不活性溶媒の他、脂肪族炭化水素,環状脂肪族炭化水素,ハロゲン化炭化水素,エーテル,エステル,含窒素溶媒,含硫黄溶媒等の溶媒が用いられ、気相では窒素,アルゴン,エタン,プロパン等の不活性ガスが用いられる。
【0042】
本発明の製造方法は、芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素を原料として、これらを上記特定の触媒組成物の存在下で反応させて、芳香族炭酸エステル化合物又は脂肪族炭酸エステル化合物を製造するものである。この反応で得られる目的物である芳香族炭酸エステル化合物(即ち、芳香族ヒドロキシ化合物の炭酸エステル)又は脂肪族炭酸エステル化合物(即ち、脂肪族ヒドロキシ化合物の炭酸エステル)としては、様々なものがある。例えば、芳香族モノヒドロキシ化合物を用いた場合、一般式(VII)
【0043】
【化5】
【0044】
[式中、X、nは上記一般式(I)の場合と同じである。]
で表される芳香族炭酸エステルが挙げられる。また、芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として用いた場合、一般式(VIII)
【0045】
【化6】
【0046】
[式中、R、a、b、Yは上記一般式( )の場合と同じである。mは生成物の分子量により異なり、1以上の整数である。なお、分子の末端構造は特に規定されない。]
で表される芳香族炭酸エステルが挙げられる。
さらに、脂肪族モノヒドロキシ化合物を用いた場合、一般式(IX)
【0047】
【化7】
【0048】
(式中、R’は炭素数1から20の脂肪族アルキル基を示す。R’の構造としては一級,二級,三級のいずれでもよく、分岐構造,環状構造,ハロゲン原子等を適宜含んでいても良い。)
で表される脂肪族炭酸エステルが挙げられる。また、脂肪族ジヒドロキシ化合物を原料として用いた場合、一般式(X)
【0049】
【化8】
【0050】
(式中、R”は炭素数2から20の脂肪族アルキレン基を示す。R”の構造としては任意の位置に、分岐構造,環状構造,芳香族環,ハロゲン原子等を含んでいても良い。なお、分子の末端構造は特に規定されない。)で表される脂肪族炭酸エステルが挙げられる。
【0051】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、以下の例で使用した触媒成分、試薬は、市販の製品、または文献記載の方法に従い調製したものである。
【0052】
実施例1
トリフェニルホスフィン結合ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(1g中0.25ミリ当量のトリフェニルホスフィン単位を含む:0.25ミリモル/g)0.500gを室温で、窒素雰囲気下、トルエン(10ミリリットル)中で1時間撹拌した。次に、その懸濁液にジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム0.576g(1.50ミリモル)のトルエン(30ミリリットル)溶液を添加し、さらに窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。その後、得られた褐色の固体をろ別し、トルエンで洗浄した後、減圧乾燥し、触媒組成物Pd−PPh2 −PSを0.531g得た。元素分析の結果、単位触媒組成物重量中のパラジウム含有量は0.29ミリモル/g、リン含有量は0.22ミリモル/gであった。
【0053】
容量30ミリリットルのオートクレーブに、触媒組成物Pd−PPh2 −PSを41.6mg(Pdとして12マイクロモル)、フェノールを3.02g(32ミリモル)、Mn(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)3 を14.5mg(24マイクロモル)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミドを0.15g(0.24ミリモル)封入した。一酸化炭素で加圧及び脱圧することにより、このオートクレーブ内を一酸化炭素置換した。その後、25℃換算で0.50MPaとなるように一酸化炭素を加圧し、さらに、全体の圧力が0.75MPaとなるように空気を加圧した。
【0054】
これを100℃に加熱し、3時間反応させた。冷却し、脱圧した後、塩化メチレン20ミリリットルを添加し、濃褐色の懸濁液を得た。この懸濁液をろ過することにより触媒組成物を分離することが容易にでき、濃褐色の均一反応液が得られた。この均一反応液をそれぞれガスクロマトグラフィーによって分析した結果、炭酸ジフェニル(以下、DPCと略す)が0.098ミリモル生成していた(収率0.60%)。実施例1の反応条件を第1表に、実施例1で得られた生成物の生成量、収率、生成速度を第2表に示す。なおDPCの収率は、フェノール基準として%で示し、DPC生成速度は、単位時間、単位パラジウム量あたりのDPC生成量をTOF(mol−DPC/mol−Pd・時間)で示す。
【0055】
実施例2
実施例1においてMn(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)3の代わりにCe(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)4を9.6mg(11マイクロモル)用いた以外は、実施例1と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例2の反応条件を第1表に、実施例2で得られたDPCの生成量、収率、生成速度を第2表に示す。
【0056】
実施例3
p−クロロメチルポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(1g中4.3ミリ当量のクロロ単位を含む:4.3ミリモル/g)1.00g, 2−キノリンカルボン酸0.745g(4.3ミリモル), ピリジン(5ミリリットル)及びジメチルスルホキシド(20ミリリットル)を混合した懸濁液を、窒素雰囲気下、100℃で72時間撹拌した。その後、得られた褐色の固体をろ別し、ジメチルスルホキシド及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。次に、この固体をトルエン(10ミリリットル)中で1時間撹拌した。この懸濁液にジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム0.825g(2.15ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)溶液を添加し、さらに窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。その後、得られた褐色の固体をろ別し、トルエンで洗浄した後、減圧乾燥し、触媒組成物Pd−2quCO2 −Py+ −PSを1.41g得た。元素分析の結果、単位触媒組成物重量中のパラジウム含有量は0.37ミリモル/g、窒素含有量は2.7ミリモル/gであった。以降の実験操作は、実施例1において触媒組成物Pd−PPh2 −PSの代わりにPd−2quCO2 −Py+ −PSを32.4mg(Pdとして12マイクロモル)を用い、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミドを用いなかった以外は、実施例1と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例3の反応条件を第1表に、実施例3で得られたDPCの生成量、収率、生成速度を第2表に示す。
【0057】
実施例4
実施例3において、2−キノリンカルボン酸の代わりに2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸ジカリウム塩三水和物1.02g(2.15ミリモル)を用い、触媒組成物Pd−2quCO2 −Py+ −PSの代わりに触媒組成物Pd−biqCO2 −Py+ −PS(パラジウム含有量は0.29ミリモル/g、窒素含有量は2.8ミリモル/g)を得た。以降の実験操作に、得られた触媒組成物Pd−biqCO2 −Py+ −PSを41.4mg(Pdとして12マイクロモル)を用い、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミドを用いなかった以外は、実施例3と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例4の反応条件を第1表に、実施例4で得られたDPCの生成量、収率、生成速度を第2表に示す。
【0058】
実施例5
ポリビニルピロリドンを1.34g(モノマー単位換算で12ミリモル)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウムを0.460g(1.2ミリモル)、Mn(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)3を1.451g(2.4ミリモル)、エタノール(30ミリリットル)に溶解させ、室温下で24時間撹拌した後、エタノールを留去し、ヘキサン中にて懸濁させ、ろ過し、トルエンにて洗浄し、減圧下乾燥することにより、触媒組成物Pd−Mn−PVP(パラジウム含有量は0.39ミリモル/g、マンガン含有量は0.76ミリモル/g、窒素含有量は4.1ミリモル/g)を得た。容量30ミリリットルのオートクレーブに、フェノールを30.8g(32ミリモル)、触媒組成物Pd−Mn−PVPを30.8mg(Pdとして12マイクロモル)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミドを0.15g(0.24ミリモル)封入した。以降の実験操作は、実施例1と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例5の反応条件を第1表に、実施例5で得られたDPCの生成量、収率、生成速度を第2表に示す。
【0059】
比較例1
実施例1において触媒組成物Pd−PPh2 −PSの代わりに臭化パラジウム(PdBr2 )3.19mg(12マイクロモル)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。触媒組成物の分離については、反応後は濃褐色の均一反応液が得られたため、ろ過による分離は不可能であった。そこで、触媒成分が溶解しにくい溶媒を用いた再沈殿法、冷却による再結晶法等を試みたが触媒成分の分離はできなかった。比較例1の反応条件を第1表に、比較例1で得られたDPCの生成量、収率、生成速度を第2表に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
なお、表中の記号は、下記のものを表わす。
TMHD:2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート、
(Ph3P=)2NBr:ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミド
【0062】
【表2】
【0063】
実施例6
実施例1においてフェノール3.02g(32ミリモル)の代わりにメタノール3.95g(123ミリモル)を用いた以外は実施例1と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例6の反応条件を第3表に、実施例6で得られた炭酸ジメチル(以下、DMCと略す。)の生成量、収率、生成速度を第4表に示す。なお、以下、DMCの収率は、メタノール基準として%で示し、DMC生成速度は、単位時間、単位パラジウム量あたりのDMC生成量をTOF(mol−DMC/mol−Pd・時間)で示す。
【0064】
実施例7
実施例2においてフェノール3.02g(32ミリモル)の代わりにメタノール3.95g(123ミリモル)を用いた以外は実施例2と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例7の反応条件を第3表に、実施例7で得られたDMCの生成量、収率、生成速度を第4表に示す。
【0065】
実施例8
実施例3においてフェノール3.02g(32ミリモル)の代わりにメタノール3.95g(123ミリモル)を用いた以外は実施例3と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例8の反応条件を第3表に、実施例8で得られたDMCの生成量、収率、生成速度を第4表に示す。
【0066】
実施例9
実施例4においてフェノール3.02g(32ミリモル)の代わりにメタノール3.95g(123ミリモル)を用いた以外は実施例4と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例9の反応条件を第3表に、実施例9で得られたDMCの生成量、収率、生成速度を第4表に示す。
【0067】
実施例10
実施例5においてフェノール3.02g(32ミリモル)の代わりにメタノール3.95g(123ミリモル)を用いた以外は実施例5と同様に実施した。触媒組成物の分離は、ろ過することにより容易にできた。実施例10の反応条件を第3表に、実施例10で得られたDMCの生成量、収率、生成速度を第4表に示す。
【0068】
比較例2
比較例1においてフェノール3.02g(32ミリモル)の代わりにメタノール3.95g(123ミリモル)を用いた以外は比較例1と同様に実施した。触媒組成物の分離については、反応後は濃褐色の均一反応液が得られたため、ろ過による分離は不可能であった。そこで、触媒成分が溶解しにくい溶媒を用いた再沈殿法、冷却による再結晶法等を試みたが触媒成分の分離はできなかった。比較例2の反応条件を第3表に、比較例2で得られたDMCの生成量、収率、生成速度を第4表に示す。
なお、第3表中、TMHDは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートを示し、(Ph3P=)2NBrはビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロミドを示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【発明の効果】
以上の如く、本発明の方法によれば、エステル交換法によるポリカーボネート合成等、種々の有機化合物合成の中間体として、また、ポリカーボネート樹脂等として有用な芳香族炭酸エステル化合物及び樹脂や塗料等の溶媒,アルキル化剤,カルボニル化剤あるいはポリカーボネート樹脂等として有用な脂肪族炭酸エステル化合物を、芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物からから一段でかつ高収率で効率よく製造することができる。また、触媒組成物の分離も容易に行うことができる。したがって、本発明は、芳香族炭酸エステル化合物又は脂肪族炭酸エステル化合物を効率よく高収率で製造できる方法として利用価値が高い。
Claims (5)
- 芳香族ヒドロキシ化合物又は脂肪族ヒドロキシ化合物と、一酸化炭素及び酸素とを、(a)p−メチルポリスチレン,ポリスチレン、p−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体およびポリビニルピロリドンから選ばれた少なくとも一種の担体に結合した有機パラジウム錯体と、(b)レドックス触媒能を有する化合物および/または(c)ハロゲンオニウム化合物を含む触媒の存在下で、反応させることを特徴とする芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
- (a)成分の有機パラジウム錯体が、パラジウム原子のみからなる1個以上の金属中心及び有機配位子から構成される有機金属錯体、またはパラジウム原子とパラジウム原子以外の金属原子よりなる2個以上の金属中心及び有機配位子から構成される有機金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
- (b)成分が、セリウム化合物又はマンガン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
- パラジウム化合物及びピリジン環構造を有する化合物からなる有機金属錯体又はパラジウム化合物及びビピリジン環構造を有する化合物からなる有機金属錯体をp−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体に結合させ、さらに塩化ピリジニウム塩を同一のp−メチルスチレン−ジビニルベンゼン共重合体に同時に結合させた触媒を用いることを特徴とする請求項1に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
- パラジウム化合物及びトリフェニルホスフィン結合スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる触媒を用いることを特徴とする請求項1に記載の芳香族炭酸エステル又は脂肪族炭酸エステルの製造方法。
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