JP4224196B2 - 溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サブマージ溶接方法に関し、特に溶接鋼管の製造や鋼板の各種板継ぎを行うための多電極サブマージ溶接法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、サブマージアーク溶接においては、溶接作業の高能率化のためにより溶接速度を高速化するための様々な方法が出されている。例えば、特公昭54−32749号公報には、2本以上の電極を用いて3m/min以上の高速溶接を行う多電極サブマージアーク溶接方法に関して、高速溶接時のアークによる後方への溶融金属の湯流れによる溶接ビード不良を防止するために、溶接電源に直流逆極性電源を用い、先行電極と後行電極との電極軸心間距離を10〜40mmとし、かつ最終後行電極軸を鉛直軸に対して20〜40度の前進角をなすようにして溶接を行う多電極サブマージアーク溶接法が開示されている。
【0003】
また、特公昭56−52672号公報には、単電極または多電極の高速サブマージアーク溶接方法に関して、溶接開先形状をI型にし、先行電極の先端を非溶接物の表面下より深く潜行させ、かつ先行電極の溶接電流・電圧を高電流・低電圧にすることにより、アーク熱を板厚方向で均等に分布させ、それにより接合部前方の非溶接物を十分溶融させながらその溶融金属を後方に押し上げつつ流すことができ、よって高速溶接時において平滑な溶接ビードを形成できるサブマージアーク溶接方法が開示されている。
【0004】
上記の特公昭54−32749号公報および特公昭56−52672号公報に開示されている高速サブマージアーク溶接方法は、電極間距離および電極軸角度、開先形状および電極先端潜行深さなどの溶接電極の位置の調整により、溶接中の溶融金属の流れを変えて溶接速度の高速化に伴うアンダーカットやハンピングビードなどの溶接ビード形状不良を防止する方法である。
【0005】
一方、高速サブマージアーク溶接を行う際に、電磁力を作用させて溶接中の溶融金属の流れを変えることにより高速溶接時のアンダーカットやハンピングビードなどの溶接ビードの形状不良を防止する方法も提案されている。
【0006】
例えば、特公昭60−148679号公報には、単電極または多電極の高速サブマージアーク溶接方法に関し、溶接中の凝固前の溶接金属に対して平行に移動磁界発生装置を設け、移動磁界とそれによって溶融金属中に発生した渦電流との相互作用によって溶融金属に前方(溶接方向)の推力(ローレンツ力)を与え、よって高速溶接時の溶融池の長大化に伴う溶融金属の後方(溶接方向の逆)への湯流れおよびそれによるアンダーカット欠陥を防止する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特公昭60−148679号公報の溶接方法は、2本以上の多電極を用いた高速サブマージアーク溶接の場合、上記のように溶融池(未凝固の溶融金属)が長大化するため、溶融金属の流動を抑制するための十分な推力(ローレンツ力)を得るためには、大型かつ高価格の移動磁界発生装置が必要になる。また、溶接時は、溶融金属の周辺は高温であり、また、溶融金属の直上にはフラックスがあるため、移動磁界発生装置を溶融金属の直近に近づけるには限界があることから、工業的に実現が困難である。
【0008】
また、特開平8−243750号公報には、板厚60mm以上の極厚鋼材を低電流で1パス溶接する2電極サブマージアーク溶接方法に関し、先行電極から発生するアークに、このアーク電流(交流)と同期させた交流磁場を印加することにより、ローレンツ力を発生させてこのアークを後行電極の方向(溶接方向と逆)に向けることにより、後行電極から発生するアーク力に起因して後行電極から先行電極へ向かう溶融金属の流れを抑制し、先行電極直下の湯溜まりを低減することにより先行電極による溶け込み深さを向上させる方法が開示されている。また、この特開平8−243750号公報では、先行電極から発生するアークに交流磁場を印加するのに加えて、先行電極と後行電極との間の溶融金属に交流磁場を印加してローレンツ力による同様な効果を得る方法も開示されている。
【0009】
しかしながら、特開平8−243750号公報の発明は、板厚60mm以上の極厚鋼材を低電流で1パス溶接するために問題となる先行電極直下の湯溜まりによる被溶接材のガウジング(溶込み)低下を解消することを目的として、交流磁場の印加によって先行電極から発生するアークまたは先行電極と後行電極との間の溶融金属にローレンツ力を作用させるものであり、高速溶接時の溶融池の長大化に伴う最終後行電極以降の溶融金属の後方(溶接方向の逆)への湯流れを抑制し、溶接ビードのアンダーカット欠陥を防止することはできない。
【0010】
また、特開昭60−240382号公報には、多電極の高速サブマージアーク溶接方法に関し、高速溶接時の先行電極ワイヤから後方に流れて発生しているアークに対して上下垂直方向に磁界を与え、そのアークに対して左右垂直方向(溶接線の横方向)にローレンツ力を作用させるとともに、先行電極ワイヤの溶接電流値(交流)と磁束密度値(直流磁界)の比率を規定することにより、先行電極ワイヤのアークを溶接線の横(垂直)方向に振動させながら溶接する方法が開示されている。この発明は、先行電極ワイヤ自体を振動させずに、先行電極ワイヤのアークのみを電磁気的に溶接線の横(垂直)方向に振動させることにより、ワイヤ先端の溶滴の飛散やフラックスの攪乱等を防止しつつ、高速溶接時の先行電極ワイヤから後方溶融金属へのアーク力を分散低減し、それによって溶融金属の後方への湯流れを抑制し、溶接ビードのアンダーカット欠陥を防止する方法である。
【0011】
しかしながら、本発明者らの実験によれば、この先行電極のアークを電磁気的に溶接線の横(垂直)方向に振動させる方法は、十分な溶接ビードのアンダーカット防止効果は得るに至らなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術の問題点に鑑みて、本発明は、多電極のサブマージアーク溶接の高速化に伴う溶接ビードのアンダーカット等の欠陥を防止することを技術課題とし、その原因となる高速溶接時の溶融金属の後方(溶接方向の逆)への湯流れを電磁気作用を利用して有効かつ効率的に抑制するための方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
(1)少なくとも最も後行の電極の溶接電流に交流を用いる多電極サブマージアーク溶接方法において、最も後行の電極の後方の未凝固溶接金属部に対して、溶接線の左右垂直方向から前記電極の溶接電流と同周波数の交流磁場を印加して、前記溶接電流と前記交流磁場との電磁気的作用により、前記未凝固溶接金属部の上方から下方に向けてローレンツ力を発生させるとともに、溶接速度に応じて、前記交流磁場の磁束密度を調整することを特徴とする溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法。
(2)前記未凝固溶接金属部に印加する交流磁場と、最も後行の電極の溶接電流の周波数の位相差を−10゜〜10゜の範囲内に調整することを特徴とする上記(1)に記載の溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法。
(3)前記交流磁場の印加位置を未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置までの距離をLとした場合に、未凝固溶接金属の最先端位置から0.5L以下の範囲に調整することを特徴とする上記(1)または(2)の何れかに記載の溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
図4に従来の3電極の高速サブマージアーク溶接を行った時の溶接線を含む垂直断面から見た側面図および上方から見た平面図とその溶接部断面図(A−A’断面)を示し、図7(b)に従来法による高速溶接(アンダーカット欠陥の発生)時の溶接ビード部の幅方向溶接線の断面図を示す。
【0015】
一般に、図4に示すように、サブマージアーク溶接を高速で行った場合、最も後行の電極(第3電極3)の後方の未凝固溶接金属部14は、後方(溶接方向の逆)へ流れる傾向が大きくなることが知られている。
つまり、図4において溶接線12上における被溶接材溶融部の最先端位置23と未凝固溶接金属の最先端位置18との距離を未凝固溶接金属の後退距離17とし、溶接ビード(未凝固溶接金属部)表面で最も早く凝固が始まる溶接止端部の位置をビード止端部の凝固開始位置19と定義すると、溶接速度が高速になるに連れて、未凝固溶接金属の後退距離17は大きくなり、それに伴ってビード止端部の凝固開始位置19も後退(溶接方向の逆向きに移動)する。その結果、ビード止端部の凝固開始位置19で未凝固溶接金属が少ない状態で凝固してしまい(溶接部A−A’断面図)、溶接ビード止端部19に図7(b)のようなアンダーカット欠陥25が発生することとなる。
【0016】
未凝固溶接金属の後退距離17およびビード止端部の凝固開始位置19は、溶接条件により決まるアーク力と、スラグと溶融金属(固体、液体)との界面張力や重力等により決まる溶融金属の流動のバランスでほぼ決定され、溶接速度の増加に伴い所定溶着金属を確保するために溶接電流を増加させアーク力が強まる傾向があるため、未凝固溶接金属の後退距離17の増大およびビード止端部の凝固開始位置19の後退によるアンダーカット欠陥を防止するため、溶接時の溶接速度を規制せざるをえなかった。
【0017】
本発明は、溶接速度の増加にともない増加する傾向にある最も後行の電極の後方に形成された未凝固溶融金属の後方への流動を抑制するために有効な方法を鋭意検討した結果、最も後行の電極の後方の未凝固溶接金属部に対して、溶接線の左右垂直方向から最も後行の電極の交流溶接電流と同周波数の交流磁場を印加してその電磁気的作用により、未凝固溶融金属部の上方から下方への押しつけ力を発生させるとともに、溶接速度に応じてその交流磁場の磁束密度、位相、交流磁場の印可位置を調整する方法が、未凝固溶融金属の後退距離17の増大およびビード止端部の凝固開始位置19の後退によるアンダーカット欠陥を防止するために有効であることが判った。
【0018】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、図1に示すように2本以上の溶接電極1〜3を用いてサブマージアーク溶接をする際に、最も後方に位置する溶接電極(第3電極3)の後方の未凝固溶接金属部に対して、溶接線の左右垂直方向から最も後行の溶接電極(第3電極3)の交流溶接電流と同周波数の交流磁場を印加するとともに、溶接速度に応じて、交流磁場の磁束密度、交流磁場と前記電極の交流溶接電流との周波数位相差、および交流磁場の印加位置のうちの少なくとも一方を調整することを特徴とする多電極の高速サブマージアーク溶接方法である。
【0019】
本発明により最も後行に位置する溶接電極(第3電極3)の後方の未凝固溶接金属部に対して溶接線の左右垂直方向に印加された交流磁場8と、溶接電極から溶融プール中を溶接方向と逆の方向に流れる溶接電流との電磁的相互作用により生じた上から下の方向のローレンツ力9で、最も後行に位置する溶接電極(第3電極3)の後方の未凝固溶融金属は下方へ押され、見かけ上、未凝固溶融金属の最先端位置18および凝固開始位置19は前方に押し出される。この結果、溶接速度の増加にともなう未凝固溶接金属の後退距離17の増加および凝固開始位置19の後退(溶接方向の逆方向に移動)は抑制され、アンダーカット欠陥などの発生を防止し、良好な溶接ビード形状を確保しつつ高速溶接が可能となる。
【0020】
この際、最も後方に位置する溶接電極の後方の未凝固溶接金属部に対して、印加する交流磁場8の磁束密度を溶接速度に応じて、例えば溶接速度が増加した場合には、交流磁場の磁束密度を増加するように調整して、未凝固溶融金属に発生する上から下方向の押しつけ力9を調整する。これにより、溶接速度増大にともない未凝固溶融金属の後方への流動を抑制し、溶接部におけるアンダーカット欠陥等の欠陥発生を抑制でき、高速溶接においても溶接速度に応じて常に安定して良好な溶接ビード形状を確保することが可能になる。
【0021】
交流磁場の磁束密度の調整は、溶接速度に応じてそのときの溶接部の溶接ビード欠陥の発生状況を確認しながら、溶接ビード欠陥が発生しないように調整すれば良いが、予め溶接速度やその他の溶接条件における交流磁場の磁束密度と溶接部のアンダーカット欠陥等の欠陥発生率との関係を調べておき、この関係に従って溶接欠陥が発生しないように交流磁場の磁束密度を調整することが望ましい。
【0022】
また、本発明では、最終後方電極3の溶接電流に直流電流に比べて溶接電源が安価であり、溶着量が得られやすく、またソフトなアークを得られられる交流電流を用いることとするため、その電極の後方未凝固溶接金属部に対して印加する磁場としては、その電極に用いる交流溶接電流の周波数とほぼ同じ周波数の交流磁場を用いることとする。これにより、常に下方のローレンツ力9を発生させることが可能となり、未凝固溶融金属の後方への流れを抑制することができる。
【0023】
また、本発明では、上記の理由から最終電極3の溶接電流に交流電流を用いたが、当然ながら最終後方電極3の溶接電流に直流電流を用いる場合にも、その電極後方の未凝固溶接金属部に対して印加する磁場を直流磁場にして、図1の8に示す方向に磁場を印加することで上記交流電流と交流磁場の場合と同様な効果が得られる。
【0024】
また、本発明では、最終後方電極の後方の未凝固溶接金属部に対して印加する交流磁場と最終後方電極の交流溶接電流との位相差は、アンダーカット欠陥発生を防止するために−10度から10度に規定する必要がある。図6には、表1および溶接速度:2.1m/minの溶接条件でサブマージアーク溶接した時の最終後方電極の交流溶接電流と交流磁場との位相差とアンダーカット欠陥の発生率の関係を示す。ここで、アンダーカット発生率は、溶接ビードの単位長さ当たりのアンダーカット欠陥長さの合計値である。
【0025】
図6に示す結果から、最終後方電極の交流溶接電流と交流磁場との周波数位相差が0の場合は、未凝固溶融金属に対して常に下向きのローレンツ力が作用するが、その位相差が10度の範囲より増加(位相の絶対値で)すると共に未凝固溶融金属に上向きのローレンツ力が発生する割合が増加し、未凝固溶融金属の後方への流動を抑制する効果が減少するためアンダーカット欠陥の発生率が増加することが分かった。これは、発明者らの検討の結果によれば、最終後方電極の交流溶接電流と交流磁場との周波数位相差の増加に伴うローレンツ力の向きの変化に起因して未凝固溶融金属が上下に振動し、特にビード止端部凝固開始位置に悪影響を与えることが分かっており、これがアンダーカット欠陥の発生を助長すると考えられる。
【0026】
従って、本発明では、これらの理由で最終後方電極の交流溶接電流と交流磁場との周波数位相差の増加に伴って発生するアンダーカット欠陥を防止するために、最終後方電極の交流溶接電流と交流磁場との位相差を−10度から10度に規定する。
【0027】
また、本発明では、最終後方電極の後方の未凝固溶接金属部に対して印加する交流磁場の位置を、未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置まで距離をLとした場合に、未凝固溶接金属の最先端位置から0.5L以下の範囲に調整する必要がある。
ここで、凝固終了位置とは、図4に示される28の溶接ビード(未凝固溶接金属部)表面で最も遅く凝固が終了する位置と定義される。
【0028】
図8には、表1および溶接速度:2.1m/minの溶接条件で、磁気発生コイルを未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置までの範囲の種々の位置に配置して交流磁場を印加し、サブマージアーク溶接した場合の交流磁場の印加位置とアンダーカット欠陥の発生率との関係を示す。ここで、アンダーカット発生率は、溶接ビードの単位長さ当たりのアンダーカット欠陥長さの合計値である。ここで、図8の横軸の磁気発生用コイル設置位置(%)は、未凝固溶接金属の最先端位置からの距離を未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置までの距離との相対比率で示したものである。
【0029】
図8の結果から、最終後方電極の後方の未凝固溶接金属部に印加する交流磁場の位置を、未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置までの距離をLとした場合に、未凝固溶接金属の最先端位置から0.5L以下の範囲では、アンダーカット欠陥が発生しないが、0.5Lを越える範囲ではアンダーカット欠陥の発生を減少することができない。これは未凝固溶接金属中を流れる溶接電流は電極先端部直下位置から放射状に分散して流れているために、交流磁場の印加位置が電極先端部直下位置から過度に離れると電流が小さくなり、それとの電磁作用で発生するローレンツ力も減少するためであると考えられる。
これらの理由から本発明では、交流磁場の印加位置を未凝固溶接金属の最先端位置から0.5L以下の範囲に規定する。
【0030】
なお、上記本発明は、図1から図3に示す装置構成で実施できる。交流磁場8は、3本の溶接電極1〜3の最も後方に位置する第3電極の後方の未凝固溶接金属部に対して、軸中心に鉄芯5を配した1対の磁場発生コイル4を図2および3に示すように配置し、1対の鉄芯5の先端部を結ぶ直線が、溶接線12と垂直でかつ被溶接材6面と平行になるように配置する。
【0031】
このときの鉄芯5の先端の位置は、磁場発生コイルが溶接金属に近づきすぎることによるコイル電流の短絡を防止し、安定した磁束密度を得るために、図2に示すように第3電極3のワイヤ11の軸中心から被溶接材の幅(横)方向にそれぞれ20mm以上かつ、被溶接材表面から10mm以上の高さに設置し、図3のように、それぞれの鉄芯5の中心軸と被溶接材6面の垂線とがなす角度を45度以内とするように配置することが望ましい。
【0032】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
図1は本発明で用いる溶接装置の一例を示し、そのさいの第3電極のワイヤ11先端と磁場発生用コイル4に配した鉄芯5の先端との位置関係を図2および図3に示した。
【0033】
本発明例として上記図1〜3の装置を用いて表1に示す各電極のワイヤ径、溶接電流、溶接電圧、開先形状、未凝固溶接金属部の磁場条件で、表2に示す溶接速度で平板鋼板の溶接を行い、溶接部のアンダーカット欠陥の発生有無を評価した。また、本発明と従来法との効果を比較するために、比較例として磁場条件を除き表1および2と同じ条件で実施した。表2にそのときの結果を示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004224196
【0035】
【表2】
Figure 0004224196
【0036】
図4には従来法である比較例として最終後行電極後方に磁場を印加しない場合、図5には、本発明例の磁場を印加した場合のそれぞれのサブマージアーク溶接時における側面図および平面図とその溶接部断面図(A−A’断面)を示し、図7に得られた溶接ビード部の幅方向溶接線の断面図を示す。
【0037】
表2に示す結果から明らかなように、最も後方に位置する第3電極3のワイヤ11の後方の未凝固溶接金属部に対して磁場8を作用させなかった比較例では、溶接速度1.9m/minの比較的低速の溶接では、アンダーカット欠陥が発生しなかったが、溶接速度が2.1m/minの高速溶接時にはアンダーカット欠陥25(図7(b))が発生した。一方、本発明例では、溶接速度が1.9m/minおよび2.1m/minのいずれの場合にも溶接ビード止端部27にアンダーカット欠陥は発生せず、良好なビード26(図7(a))を得ることができた。
【0038】
図4に示すように、従来法(比較例)の最終後行電極後方に磁場を印加しない場合は、溶接速度が2.1m/minの高速溶接時には、溶接アーク13の増加によって未凝固の溶接金属14が後方に流されやすくなり、未凝固溶接金属の後退距離17が増大するとともにビード止端部の凝固開始位置19が後退(溶接方向と逆向きに移動)し、未凝固溶接金属が少ない状態でビード止端部の凝固開始位置14が凝固してしまい(溶接部のA−A’断面図)、溶接ビード止端部19に図7(b)のようなアンダーカット欠陥25が発生した。
【0039】
一方、本発明例では、図5に示すように最も後方に位置する電極3のワイヤ後方の未凝固溶接金属部に対して交流磁場8を印加することにより、下向き方向にローレンツ力9を発生させて、その作用により、未凝固溶接金属14の溶接方向と逆方向への流動を抑制することができる。その結果、溶接速度2.1m/minの高速溶接時でも未凝固溶接金属の後退距離17の増大を抑制させるとともにビード止端部の凝固開始位置19の後退を防止でき(溶接部A− A’断面図)、図7(a)のようにアンダーカット欠陥27がない良好な形状の溶接ビード28を得ることができた。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、多電極のサブマージアーク溶接の高速化に伴う溶接ビードに発生するアンダーカットなどの欠陥防止し、良好な溶接ビードを維持しつつ、溶接速度を高速化することが可能となるため、溶接施工の高能率化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるサブマージアーク溶接装置の構成図
【図2】本発明の実施形態であるサブマージアーク溶接装置の交流磁場印加装置の配置を示す正面図
【図3】本発明の実施形態であるサブマージアーク溶接装置の交流磁場印加装置の配置を示す側面図
【図4】従来法によるサブマージアーク溶接時の側面図および平面図とその溶接部断面図(A−A’断面)
【図5】本発明の実施形態であるサブマージアーク溶接時の側面図および平面図とその溶接部断面図(A−A’断面)
【図6】本発明における交流磁場と溶接電流との周波数位相差とアンダーカット欠陥の発生率との関係を示したグラフ
【図7】(a)本発明実施例と(b)従来例(比較例)の高速溶接における溶接ビード部の断面形状図
【図8】本発明における交流磁場の印可位置とアンダーカット欠陥の発生率との関係を示したグラフ
【符号の説明】
1 第1溶接電極
2 第2溶接電極
3 第3溶接電極
4 磁気発生用コイル
5 鉄芯
6 被溶接材
7 溶接方向
8 交流磁場
9 ローレンツ力
10 開先
11 溶接ワイヤ
12 溶接線
13 溶接アーク
14 未凝固溶接金属部
15 凝固溶接金属
16 フラックス
17 未凝固溶接金属の後退距離
18 未凝固溶接金属の最先端位置
19 ビード止端部の凝固開始位置
20 第1電極アーク発生点
21 第2電極アーク発生点
22 第3電極アーク発生点
23 被溶接材溶融部の最先端位置
24 未凝固溶接金属
25 アンダーカット欠陥部
26 未凝固溶接金属中の溶接電流方向
27 未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置まで距離(L)
28 凝固終了位置
29 凝固溶接金属
30 溶接ビード止端部

Claims (3)

  1. 少なくとも最も後行の電極の溶接電流に交流を用いる多電極サブマージアーク溶接方法において、最も後行の電極の後方の未凝固溶接金属部に対して、溶接線の左右垂直方向から前記電極の溶接電流と同周波数の交流磁場を印加して、前記溶接電流と前記交流磁場との電磁気的作用により、前記未凝固溶接金属部の上方から下方に向けてローレンツ力を発生させるとともに、溶接速度に応じて、前記交流磁場の磁束密度を調整することを特徴とする溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法。
  2. 前記未凝固溶接金属部に印加する交流磁場と、最も後行の電極の溶接電流の周波数の位相差を−10゜〜10゜の範囲内に調整することを特徴とする請求項1に記載の溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法。
  3. 前記交流磁場の印加位置を未凝固溶接金属の最先端位置から凝固終了位置までの距離をLとした場合に、未凝固溶接金属の最先端位置から0.5L以下の範囲に調整することを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の溶接ビード形状に優れた多電極サブマージアーク溶接方法。
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