JP4223645B2 - ポンプ水車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポンプ水車,すなわち同一のランナーを使って、回転方向を変えて、ポンプと水車両方の運転を可能にしたポンプ水車およびその制御方法に係わり、特に水車運転領域においてS字特性を有する高落差ポンプ水車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ポンプ水車のランナー,特に高揚程ポンプ水車のランナーは、ポンプ運転時に高揚程を得るために、充分な遠心ポンプ作用を発揮するように設計されるのが普通である。しかしながら、この設計が、ポンプ水車の水車運転に悪影響を与える場合がある。特に後述するS字特性と呼ばれる特性が現れ、これを完全に回避するのは難しいと考えられている。
【0003】
この種ポンプ水車の流量特性は、一般に、案内羽根開度をパラメータにして単位落差当り回転数(N1=N/√H)と単位落差当り流量(Q1=Q/√H)との関係を示す一群の特性曲線で表わされる。他方、ポンプ水車のトルク特性は、案内羽根開度をパラメータにして単位落差当り回転数(N1=N/√H)と単位落差当りトルク(T1=T/H)との関係を示す一群の特性曲線で表わされるのが普通である。
【0004】
なお、これら2種類の特性曲線を総称して一般には完全特性と呼んでいる。ところで上記流量特性曲線は、水車運転領域において、回転数N1の値の増加に伴って流量Q1の値が減少する第1の部分と、回転数N1の値の減少に伴って流量Q1の値が減少する第2の部分とを有する。説明の便宜上、ここでは、前記第2の部分を、S字特性部分と称する。さらに、S字特性部分におけるポンプ水車の特性を、以後、S字特性と称する。
【0005】
S字特性部分における水車運転にあっては、単位落差当りトルク(T1)は、単位落差当り回転数(N1)の減少に伴い減少する。ポンプ水車の水車モードの通常運転は、上記第1の部分において行われる。しかしながら、負荷しゃ断により、単位落差当りの回転数(N1)が急激に大きく増加する場合は、ポンプ水車は、S字特性部分において運転されることになる。S字特性部分における運転が開始されると、ポンプ水車の運転点はS字特性部分を一端から他端へとたどりつつ、まず単位落差当りの流量(Q1)と単位落差当りの回転数(N1)は減少する。その後、今度は振子が振返すようにS字特性部分を逆方向にたどりつつ、流量Q1と回転数N1は増加する。S字特性部分におけるこの往復運動は、案内羽根開度を閉めない限りいつまでも継続する。この間、単位落差当りのトルク(T1)も減少と増加をくり返す。
【0006】
水車運転領域においてS字特性を有するポンプ水車の特性が、図9(A)および図9(B)に示されている。図9(A)において、ポンプ水車の特性が、案内羽根開度をパラメーターにとり、単位落差当りの回転数(N1)と単位落差当りの流量(Q1)との関係として示されている。一方、図9(B)においては、ポンプ水車の特性が、同じパラメーターにより、単位落差当りの回転数(N1)と単位落差当りのトルク(T1)との関係として示されている。この回転数N1,流量Q1およびトルクT1は図中の式により表現される。なお、符号N,Q,HおよびTは、それぞれ、ポンプ水車の回転数,流量,有効落差およびトルクを示している。
【0007】
特性曲線1および1′は、所定の比較的大きな案内羽根開度の下で得られる。特性曲線2および2′は、それよりも小さな案内羽根開度の下で得られる。特性曲線3および3′はさらにそれよりも小さい案内羽根開度の下で得られる。
【0008】
特性曲線1のa−d−h部分においては、Q1の値は、N1の減少に伴い減少する。上述の様に、この曲線部分a−d−hを、ここでは、S字特性部分と称する。同様に、曲線部分b−e−iは、特性曲線2のS字特性部分であり、曲線部分c−f−jは、特性曲線3のS字特性部分である。一見して明らかなように、特性曲線1のS字特性部分a−d−hは、特性曲線2のS字特性部分b−e−iより長く、特性曲線2のS字特性部分b−e−iは、特性曲線3のS字特性部分c−f−jよりも長い。このことは、案内羽根開度が小さくなるとS字特性部分の長さが短くなることを意味する。
【0009】
図9(A)と同様に、図9(B)においても、曲線部分a′−d′−h′,b′−e′−i′およびc′−f′−j′は、それぞれ特性曲線1′,2′および3′のS字特性部分である。
【0010】
この図9(B)は、図9(A)と密接な関係がある。例えば、図9(A)の曲線3上のQ1=Q1x,N1=N1xを満たす点xは、図9(B)の曲線3′上の点x′に対応している。点x′は、T1=T1x′,N1=N1x′(=N1x)を満たす点である。同様に、図9(A)における点a,b,c,d,e,f,h,iおよびjは、それぞれ図9(B)における点a′,b′,c′,d′,e′,f′,h′,i′およびj′に対応している。
【0011】
曲線nrは、無負荷流量曲線である。曲線1,2,3と曲線nrとの交点α,β,γは、それぞれ、曲線1′,2′,3′と直線T1=0との交点α′,β′,γ′に対応している。
【0012】
次に、この特性曲線1と1′を参照しながらポンプ水車の水車運転(発電モード運転)について説明する。上述したように特性曲線1と1′に対応する特性は、案内羽根開度を比較的大きな値にした時に得られる。通常は、ポンプ水車の水車運転は、特性曲線1の上部、すなわち、S字特性部分a−d−hより上部の曲線部分において行われる。しかしながら、もし例えばポンプ水車に加わっている負荷が突然失われた場合は、ポンプ水車の回転数(N)が急激に増加するので、N1の値も急激に増加する。こうして、ポンプ水車は、S字特性部分において運転され始まる。
【0013】
運転点が一旦S字特性部分に入ると、ポンプ水車の回転数(N)の低下によりN1の値が低下する。N1の値が低下すると、Q1の値が低下し、ポンプ水車流量(Q)が減少する。この様子をもう少し詳しく説明すると、図10のようになる。なお、Hの値、すなわちポンプ水車入口とポンプ水車出口との水頭差は、流量Qの減少に伴って上昇する。このようにして一旦N1の値が減少すると、流量Qが減少し、流量Qの減少は、ポンプ水車の有効落差Hの増加をもたらす。
【0014】
この有効落差Hの増加は、さらにN1の減少をもたらし、N1の減少は、さらにQ1の減少をもたらす。このようにして、一旦S字特性部分における運転が始まると、Q1とN1は、S字特性部分をQ1減少方向、すなわち点aから点dの方向にたどりつつ、加速度的に減少する。もちろん、この間に管路摩擦等の減衰作用も働くのでQの減少の進展にも自ずと抑制が作用することは言うまでもない。とにかく、Q1とN1は、正帰還制御回路におけると同様に、加速度的に、減少する傾向がある。
【0015】
ポンプ水車の運転点がS字特性部分を点aから点hまでたどり終えると、上記の現象は、負帰還制御回路におけると同様に次第に緩和され、その後、反転し、やがては、S字特性部分をQ1の増加方向、すなわち点hを少し過ぎた点から点aへとたどることになる。S字特性部分を逆方向にたどるのもやはり正帰還制御回路と同様の様式で行われる。なお、図11は、この振れ戻し作用を説明するものである。
【0016】
負荷遮断後、ポンプ水車の案内羽根を閉鎖せずに放置した場合には、ポンプ水車の運転点は当該案内羽根に相当するS字特性曲線上を、上記のように往復運動する。このようにポンプ水車特性任せの運転は有害で、場合によっては危険である。なぜならば、ポンプ水車流量は増減を繰り返し、水力発電所各水路系に激しい水撃が繰り返し発生するからである。
【0017】
S字特成部分における運転に伴うこのような悪影響は、S字特性部分の長さが短くなれば減少する。例えば、もし案内羽根開度を小さくして、より短いS字特性部分b−e−iを有する特性曲線2にしたがってポンプ水車を運転するならば、S字特性に伴う悪影響は軽減される。
【0018】
S字特性部分におけるポンプ水車の運転は、ポンプ水車のトルクTにも悪影響を与える。S字特性部分においてN1の値が減少すると、図9(B)に示されているように、T1の値が減少する。ここで再び図9(A)に示される特性曲線1上の点aとhは、図9(B)に示される特性曲線1′上の点a′とh′にそれぞれ対応することに注意しなければならない。
【0019】
有効落差Hが一定であると仮定すれば、T1減少は、ポンプ水車トルクTの減少を意味する。さらに、ポンプ水車トルクTの減少が、ポンプ水車回転数Nの減少をもたらすことは明白である。ポンプ水車回転数Nが減少すると、それに対応してN1が減少し、次にT1がさらに減少することになる。現実にはこの間に前記したように有効落差Hが増加しているのでこの加速傾向は益々強まる。
【0020】
このようにして、ポンプ水車は、特性曲線1を、Q1減少方向にたどる間、同時に特性曲線1′を点a′から点h′へとたどっていることになる。そのたどり方は、正帰還制御回路の場合と同様である。その後、S字特性部分をたどる方向が逆転すると、特性曲線1′は点h′から点a′の方向へと、たどることになる。明らかに、上述したようなトルク変動は、不利益である。
【0021】
負荷遮断後ポンプ水車の運転点がS字特性を辿り下っている時に案内羽根を速く閉めるのは危険である。N1の低下を助長する作用が働くためである。
【0022】
このため従来から、水車運転モードにおいては、案内羽根の所定開度、例えば80%より下では、案内羽根の閉鎖速度の上限制限を、案内羽根80%以上の時の閉鎖速度上限制限より下げて設定している。この結果、負荷遮断時には、運転点がS字特性に入る直前に、案内羽根の閉鎖速度が急速閉鎖から緩慢閉鎖に移行し、閉鎖パターンでみればここで腰折が入る。図12で説明すると、例えば、案内羽根開度が100%近くにあって負荷遮断(時刻to)が起きた場合を考えると、案内羽根は最初比較的速く閉まり、案内開度が予め設定された開度Yaに達した時点taで閉鎖速度制限がより小さい値に切り換えられる。
【0023】
したがってポンプ水車回転速度が最大値を超えて降下に転じたころから始まる運転点のS字特性突入と流量減少方向への辿り下りが進行中には、案内羽根閉鎖速度は比較的遅い速度に制限され、前述のようなN1の低下による過度の正帰還現象助長が抑えられ過度の水撃は防止できる。
【0024】
ところで、この案内羽根開度に応じた閉鎖速度切換に依存する従来の負荷遮断時の案内羽根閉鎖パターンと水撃、特に上池側管路水圧Hpの上昇の関係については図12のような関係になることが知られている。すなわち、案内羽根閉鎖速度を急速から緩慢閉鎖に切り換える条件となる案内羽根開度Yaを上げると、上池側管路水圧Hpの1波目のピーク値Hpxは下がってHpx1となるが、2波目のピーク値Hpyは上がってHpy1となる。下池側管路水圧Hdの波形は図示してないが、Hp波形の上下を逆にしたようになり、2波目のピークHdy1はHdyより下がる。なお、案内羽根の急速閉鎖部の速度制限を変えた場合もHp波形は変わる。すなわち、より緩慢な勾配に制限すれば、1波目のピーク値Hpxは下がり、2波目のピーク値Hpyは上がる。最も典型的な例は、急速閉鎖速度が腰折点以下の緩慢閉鎖速度と同じになった場合である。
【0026】
しかし、案内羽根閉鎖パターンの腰折だけに依存する従来技術では問題があることが解っている。例えば、S字特性を有する複数台のポンプ水車が図13に示されているように各ポンプ水車の上流側または下流側または両側を共有する場合には、水撃の相互干渉によって上流側水圧が異常上昇したり、下流側水圧が異常低下することがあることが知られている。
【0027】
当該の複数台のポンプ水車が同一仕様の場合を仮定すると、同時負荷遮断された時に発生する上流側水圧の最高値より、相次いで負荷遮断される時間差遮断時に発生する上流側水圧の最高値の方が高くなる問題や、同時負荷遮断された時に発生する下流側水圧の最低値より、相次いで負荷遮断される時間差負荷遮断時に発生する下流側水圧の最低値の方が低くなり、場合によっては水柱分離が発生するという問題がある。しかもこれらの異常水撃現象がS字特性を辿り下る微妙なタイミンク゛に関係しているため最悪になる時間差等の条件を事前に特定しにくいという問題もある。
【0028】
図14、図15、図16は、時間差負荷遮断時のこの種の相互干渉の難しさを説明する例図である。この場合には3台のポンプ水車が上下流水路を共有する場合で、1号機が20秒の時点で全負荷遮断されてからTd1秒後に2号機が全負荷遮断され、さらにこれより遅いTd2秒後に3号機が全負荷遮断される。結果的に1号機の下流側水圧が33.6秒の時点、すなわち、負荷遮断後13.6秒の時点で急降下している。このようにこの種の相互干渉による下流側水圧低下は突然スパイク状に発生する。それでもポンプ水車の下流側管路に水柱分離が発生しないようにするためにはポンプ水車の据付高さを充分低くして下池との水位差を充分な値に確保する必要があり、ポンプ水車用の掘削量が増大し、土木コストが異常にアップすることになる。
【0029】
なお、この場合には、各号機が単独で全負荷遮断された場合に、回転速度が降下に転じた後にS字特性によって現れる上池側管路水圧のピーク値Hpyに比べて案内羽根急閉鎖中の上池側管路水圧のピーク値Hpxが充分高くなるように案内羽根閉鎖パターンを設定しているので(図17参照)、相互干渉による異常水撃が上流側にはあまり顕著には現れない。換言すれば、HpxをHpyに対して充分高くし、上池側管路の設計水圧を充分高くできた場合で、上流側の建設コストの高騰を覚悟した設計である。もちろん、上流側の建設コスト低減を狙うためにはHpxの低下が必要で、その場合には、上池側管路の水撃の相互干渉問題に直面する。さらに、図17のような案内羽根閉鎖パターンを採用して、たとえ上池側管路の水撃の相互干渉による異常上昇問題を回避したとしても、図14、図15、図16のように下流側管路の相互干渉によるスパイク問題は依然として残る。
【0030】
このように、高落差ポンプ水車の場合には上下流水路や据付高さ等の土木設計を決める上でS字特性が大きな問題になるとの認識から従来もS字特性対応制御の提案がなされている。例えば、特開昭53−143842号公報では添付の図19のように負荷遮断後ポンプ水車の運転点がS字特性を流量減少方向に辿っている時に一時的に案内羽根を開き、運転点がS字特性を逆に流量増加方向に辿り始めた時か流量が略ゼロになった時点で案内羽根を急閉鎖する案が提案されている。
【0031】
しかし、この案では、負荷遮断後回転速度が一旦上昇した後降下に転じるが、この回転速度降下がガバナーの設定で決まる所定回転速度付近まで一気に進むようにしている。また案内羽根開度Y<Yaで案内羽根閉鎖速度制限を緩閉鎖に移行させる腰折を使わず一時開きした後の案内羽根閉鎖を負荷遮断直後の急閉鎖と同一レートで一気に閉めている。これではS字特性対応制御が故障した場合を考えると危険である。
【0032】
また、一時開きした後の案内羽根再閉鎖開始の時点を流量が減少から増加に転じる時点または流量が略ゼロになる点としているが、ポンプ水車の過渡状態において信頼性の高い流量検出をすることは難しい。たとえ信頼性の高い流量検出ができたとしても案内羽根の動作を急に反転させることは難しく案内羽根が開き過ぎになることは容易に推定できる。特に運転点がS字特性を流量減少方向に辿り終えて流量増加方向辿りに移った後も案内羽根開操作を続けると逆にS字特性を助長する結果になる。
【0033】
上述した問題点を考えると特開昭53−143842号公報が複数台のポンプ水車が同一管路を共有する場合、特に自分の運転状態だけでなく、他号機からの水撃干渉で流量が複雑に変動する場合にも安定した性能を発揮できるとは思えない。
【0034】
なお、従来のポンプ水車では、通常の有負荷運転では電力系統に連繋されていて安定性に不安がないため、ガバナーは安定性より応答速度を重点にしてゲインを高めに設定し、他方、負荷遮断後は当該ポンプ水車が単独で無負荷運転を継続する必要があるため安定性を重視し、ゲインを低めに設定するようにしている。
【0035】
しかしながら、この無負荷運転用の設定は過渡的に通過するS字特性を考慮したものではなく、S字特性を抜けた後の言わばN1の値の増加に伴ってQ1の値が減少する前記第1の部分においてはじめて安定性が確保できる程度の設定であった。正帰還作用が働くS字特性内の運転に対しては到底安定性が確保できない設定になっていた。なお、負荷遮断時ガバナーの演算部を応答速度を比較的高めに設定する有負荷運転用ゲインから無負荷運転用ゲインへの切換は回転速度が定格回転速度より充分高い所定値以上になったこと、または遮断器が開いた等の条件で自動的に行われていた。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明してきたように、従来のポンプ水車では、ポンプ水車の運転点が前述したS字特性内にある時には、このS字特性の影響を受けてポンプ水車の運転に悪影響を及ぼす嫌いがあり、前述のように従来においては、そのS字特性の影響の回避に種々の策が試みられたが、性能が安定で,かつ安価にしてこの影響を充分に回避することは難しかった。
【0037】
本発明はこれに鑑みなされたもので、その目的とするところは、ポンプ水車の運転点がS字特性内にある時でも、性能安定,かつ安価にして充分にS字特性の影響を緩和でき、ガバナーの安定性を向上させることが可能なこの種のポンプ水車を提供することにある。
【0038】
すなわち本発明は、発電電動機に結合されたランナーと、該ランナー部を通過する水量を調整する水量調整手段と、前記ランナーの回転速度が所定回転速度を保つように前記水量調整手段を制御するガバナーとを備え、前記ランナーの回転方向を換えることにより揚水,発電の両モードで運転可能に形成され、発電モード時で、かつ発電電動機の発電電力が突然遮断された負荷遮断時に、前記水量調整手段を閉動作させるようにしたポンプ水車において、前記ガバナーは、全負荷遮断時、前記回転速度が第1の上昇ピークを経て下降に転じ、その後の最初の回転速度下降曲線の前半において、閉動作中の前記水量調整手段が一時的に開動作に転じるように、かつ最初の回転速度下降が定格回転速度より1/3(第1ピーク値−定格回転速度)以上高い回転速度で止み再上昇に転じるように設定を行い、S字特性対応制御を行うガバナー演算部を有することを特徴とする。
【0039】
前記ガバナー演算部は、通常の有負荷運転制御、無負荷定常運転制御、前記負荷遮断直後のS字特性対応制御の設定値を有し、これらの設定値は、前記ガバナーの応答速度が、前記通常の有負荷運転制御、前記無負荷定常運転制御、前記負荷遮断直後のS字特性対応制御の順に低下するように設定されていることを特徴とする。
【0040】
前記ガバナー演算部は、前記演算部の設定値の切換がバンプレスで行うようにしたものである。また、前記ガバナー演算部は、往きの回路に比例、積分、微分演算要素を備えたPIDガバナーであり、前記積分のゲインだけを切換るようにしたものである。
【0041】
また、前記ガバナー演算部は、前記水量調整手段の開度に応じて前記水量調整手段の閉鎖速度を制限する閉鎖速度制限手段を備え、前記閉鎖速度制限手段が前記水量調整手段の開度が第一の設定値を超えている間は、前記水量調整手段の閉鎖速度を比較的高い速度設定値を超えないように制限し、前記水量調整手段の開度が前記第一の設定値未満になった後は閉鎖速度を比較的低い速度設定値を超えないように制限するように構成されている場合、少なくとも負荷遮断直後で前記水量調整手段の開度が前記第一の設定値以下に閉鎖するまでは、閉動作中の前記水量調整手段の一時的開動作が開始されないように調整している。
【0042】
また、前記ガバナー演算部は、前記負荷遮断後、前記ランナーの回転速度が前記第1の上昇ピーク値を経て下降に転じた後に前記水量調整手段の一時的開動作を始め、その後回転速度降下曲線が上に凸から下に凸に移る変曲点まで継続するように調整している。
【0043】
また、前記ガバナー演算部は、前記回転速度が定格回転速度よりも通常の有負荷運転制御では起こり得ないほど充分に高い設定値を超えたことを条件に、前記通常の有負荷運転制御の設定値から前記負荷遮断直後のS字特性対応制御の設定値に切換るようにしている。
【0044】
すなわちこのように形成されたポンプ水車,また制御方法であると、ポンプ水車の運転点がS字特性内にある時でも、充分にS字特性の影響を緩和することができるのである。すなわち、全負荷遮断時の最初の回転速度上昇から第1のピークを経て下降に転じた後の最初の回転速度下降曲線の前半というのは、ポンプ水車の運転点がS字特性を流量減少方向に辿っているときである。この時にガバナーによって閉動作中の前記水量調整手段が一時的に開動作に転じる程度までPIDガバナーであればガバナーのゲイン、特に積分ゲインや比例ゲインを下げるべきである。そのようにすれば、微分要素の作用で、最初の回転速度下降曲線の前半に前記水量調整手段(すなわち、案内羽根)の一時的開動作が開始されるようになる。復元回路に不完全微分要素を有するいわゆるダンピング型ガバナーの場合には、ダンピングゲインを大きくし、時定数を長くすることが上記の積分ゲインや比例ゲインの下げに相当する。
【0045】
なお、前記積分ゲインや比例ゲインの下げが不足すると前記案内羽根の一時的開動作が遅れて最初の回転速度下降曲線の後半に現れるようになる。しかし、これでは効果が低下するばかりか反って有害になる場合がある。なぜならこの段階ではポンプ水車の運転点はS字特性を流量減少方向に辿り終えて逆に流量増加方向に辿り始めるからである。この段階で案内羽根を開けると逆にS字特性を動的に強める結果になるからである。しかも、前記の案内羽根の一時的開動作の幅が充分大きくて前記S字特性対応制御の効果が充分現れる必要があるが、これを判断する基準は結果的に前記最初の回転速度下降が定格回転速度より1/3(第1ピーク値−定格回転速度)以上高い回転速度で止み再上昇に転じるか否かである。ポンプ水車特性によって多少の差はあるが効果が現れるおおよその目安として考えてよい。例えば、後述の本発明の実施例の場合(PIDガバナーを採用)には、無負荷定常運転時のKp=0.5、Ki=0.1、Kd=3.45、他方、S字特性対応制御時のKp=0.5、Ki=0.02、Kd=3.45である。前記ガバナーの演算部設定変更は負荷遮断の際に適切な条件によって自動的に行われるようにすべきである。
【0046】
前記S字特性対応制御では、PID等のゲイン調整だけ説明したが、この他にガバナーの目標回転速度を設定する速度調整の設定を一時的に上げ補正する制御などと組み合わせればより効果的である。
【0047】
負荷遮断後ポンプ水車がS字特性を抜けて最終的に無負荷運転で落ち着く前に、前記ガバナーの演算部をそれまでのS字特性対応設定に比べてより応答速度を改善する設定(無負荷定常運転用設定と呼ぶ)に自動修正しておくべきである。なぜならば、回転速度の降下が緩慢になり過ぎて、いつまでもポンプ水車および発電電動機を高い回転速度にさらす結果になること、このように負荷遮断後の回転速度復帰が遅い機械は運用上都合が悪いことおよびこのポンプ水車を再度電力系統に並列する場合に応答が遅すぎるという問題があるためである。
【0048】
なお、前記S字特性対応設定から無負荷定常運転用の設定に自動切換する条件の第1例は、負荷遮断後前記水量調整手段が所定の開度以下に閉鎖したことの確認である。前記S字特性対応設定から無負荷定常運転用の設定に自動切換する条件のもう一つの例は負荷遮断後回転速度が所定値以下に低下したことの確認である。ガバナーは、通常の有負荷運転では、安定性は電力系統に委ねてもよいので、速応性重視で設定し、負荷遮断後のS字特性対応のためには安定性が特別に強化されるように設定し、S字特性を抜けた後はできるだけ速やかに無負荷定常運転用の中間設定にするべきである。したがって、ガバナーの応答速度指標では、通常の有負荷運転、無負荷定常運転、負荷遮断直後のS字特性対応時の順になるように3種類の設定を用意し、これらを自動切換すればよい。
【0049】
なお、前記ガバナーの設定値切換はバンプレスで行われるようにするべきである。特にS字特性対応制御中に案内羽根がジャンプすると管路を共有する複数台のポンプ水車の場合には異常な水撃相互干渉を生ずる可能性がある。
【0050】
上記バンプレス切換の一例を挙げると、前記ガバナーが往きの回路に比例、積分、微分演算要素を備えたPIDガバナーの場合、積分ゲインだけを切換する設計にすればよい。
【0051】
前記ガバナーは前記水量調整手段(案内羽根)の開度に応じて前記案内羽根の閉鎖速度を制限する閉鎖速度制限手段を備え、前記閉鎖速度制限手段が前記案内羽根の開度が第一の設定値以上にある間は、前記案内羽根の閉鎖速度を比較的高い速度設定値以下に制限し、前記案内羽根の開度が前記第一の設定値未満になった後は閉鎖速度を比較的低い速度設定値以下に制限するように構成されている場合、少なくとも負荷遮断直後で前記案内羽根の開度が前記第一の設定値以下に閉鎖するまでは、閉動作中の前記案内羽根の一時的開動作が開始されないように前記ガバナーの演算部を調整するべきである。この理由は、運転点がS字特性に入るまではできるだけ速やかに案内羽根を閉鎖し、これから辿ることになるS字特性をできるだけ小さくしておく必要があるからである。また、これに反すると負荷遮断後の回転速度の第1ピークを余計に上げる結果になるからである。
【0052】
なお、ポンプ水車の運転点がS字特性を辿り下り終える時点はポンプ水車特性によって多少の差があるが、概略では、回転速度降下曲線が上に凸から下に凸に移る変曲点付近である。したがって、前記案内羽根の一時的開動作は回転速度が第1ピークを経て降下を始めてから、回転速度降下曲線が上に凸から下に凸に移る変曲点付近まで継続するのがよい。前記ガバナーの演算部はこれを規準に設定するとよい。
【0053】
なお、前記案内羽根の一時的開動作は回転速度が前記第1ピークに達する時点より若干早めに開始した方が効果的な場合がある。この段階では前記回転速度の第1ピークをほとんど上げることがないこと、逆に前記一時的開動作のタイミングが遅れた場合にはS字特性対応制御性能が急激に低下するためである。
【0054】
結局、前記案内羽根の一時的な開動作は、負荷遮断直後の回転速度上昇が止む時点(第1ピーク)より僅かに早くなし、かつ、回転速度降下曲線が上に凸から下に凸に移る変曲点付近まで継続するように前記ガバナーの演算部を調整するのが合理的である。
【0055】
なお、負荷遮断後、前記ガバナーの演算部をS字特性対応設定に切換するのは負荷遮断が行われたことを的確に検出する条件であればよい。その意味では当プラントだけの遮断器接点では不十分である。そこで回転速度が定格回転速度より充分高い所定値(通常の有負荷運転では起こり得ないほど充分高い値)を超えたことを条件にすればよい。
【0056】
また本発明の結果として、負荷遮断時の上流側水圧上昇の低減→上流側水路およびポンプ水車自身の設計水圧の低減→コスト低減、負荷遮断時の下流側水圧低下幅の低減→ポンプ水車据付高さの改善→土木コストの低減、複数台ポンプ水車が上流/下流管路を共有する場合の有害な水撃相互干渉の解消、ポンプ水車の水スラストの軽減→スラストメタルの設計合理化、ポンプ水車自身の負荷遮断時の運転安定化等を一挙に達成することが可能となるのである。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下図示した実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図3には、ポンプ水車のガバナがブロック線図で示されている。1は水車100の回転速度Nを検出する速度検出部、Xnは速度検出信号、2は回転速度の基準値を設定する速度調整部、x0は速度調整部2の設定値、3は加算部、Xσは速度調定率設定部からの復元信号、Xεは加算部3の出力信号ですぐ下流のPID演算回路の入力信号、4aは発電電動機が大電力系統に接続される通常の発電運転時の比例演算要素(P要素)、4bは負荷遮断後の無負荷運転時に使用する比例演算要素(P要素)が示されている。なお、前者の比例演算要素のゲインKpa>後者の比例演算要素のゲインKpbとなっている。
【0058】
5aは通常の発電運転時の積分演算要素(I要素)、5b1は負荷遮断直後で後述の20a,20b案内羽根開度検出器が動作していない時に使用する積分演算要素(I要素)を示し、5b2は負荷遮断直後で後述の20a,20b案内羽根開度検出器が動作した後に使用する積分演算要素(I要素)を示し、積分ゲインKia>積分ゲインKib2>積分ゲインKib1となっている。
【0059】
なお、19a、19bは発電電動機が負荷遮断されたことを検出する接点で(例えば回転速度が定格値より高い所定値を超える等の条件で検出)負荷遮断された時、同時にスイング動作して下側接点を開き上側接点を閉じる。19a、19bが各2個ある理由は比例演算要素、積分演算要素共に同時に切換するためである。また、20a、20bは案内羽根が所定の開度以下まで閉鎖されたことを検出する接点で、案内羽根が所定開度以下になった時同時にスイング動作して下側接点を開き上側接点を閉じる。
【0060】
6は微分演算要素(D要素)を示し、Zdはその出力信号である。Zpは比例演算要素の出力信号、Ziは積分演算要素の出力信号である。微分演算要素6のゲインはKdで可調整である。時定数T1は0.1秒程度の小さな値で固定される。
【0061】
7は加算部が示されている。ZはZp比例演算要素の出力信号、Zi積分演算要素の出力信号、Zd微分演算要素の出力信号を総合した案内羽根開度指令を示し、Yは実際の案内羽根開度が示されている。加算部8、リミッター9、油圧サーボモーター10は一種の油圧増幅器になっており、伝達関数ではリミッター付一次遅れ要素を構成し、Z案内羽根開度指令を増幅して水量制御手段である案内羽根を直接操作するに充分なストロークと操作力をもつ案内羽根開度Yに変換するものである。Yε1は、Z案内羽根開度指令と実際の案内羽根開度Yの偏差を示している。Yxxxは上流からのガバナー本来の制御信号のいかんを問わず急停止指令が与えられた時に案内羽根を急閉鎖することができるほど絶対値が充分大きい割り込み信号で通常はゼロである。
【0062】
21は、Yε1とYxxxを加算してYε2を出力する加算器である。リミッター9のθRは案内羽根の開速度をθR.Cyに、θLは閉速度をθl.Cyに制限するためのものである。すなわち、Yε3は偏差信号Yε2を上記開閉速度制限を考慮して制限した信号である。なお、11は加算部を示し、この加算部11に出力調整部13から所望の案内羽根開度設定信号Yaが与えられる。もし実際の案内羽根開度YがYaに達していない場合には、すなわち、Y<Yaの場合にはその差がゼロになるまでガバナのPID演算部に開信号σ(Ya−Y)が送り続けられるので、やがてはY=Yaとなりその段階で落ち着く。
【0063】
12は速度調定率設定部で上記の係数σを設定する部分である。換言するとσは速度検出信号Xnの変化に対する案内羽根開度Yの変化の割合を決めるゲインで、一般には電力系統の中での当該プラントの役割、すなわち、負荷分担の割合を考慮して一般には一度決めたら変更されないものである。14は水路系を含む水車を示している。Lは水車軸に直結された発電機に与えられる当該発電所の負荷電力、RLは電力系統側から与えられる負荷電力、PgはLとRLを総合した発電機負荷が示されている。したがって、17bは電力系統からの負荷特性を示している。17aは水車100の自己制御性で、具体的には回転速度上昇に伴い増加する機械損や効率低下等を総合した特性部である。したがって、RTは回転速度変化に伴う自己制御性による水車出力のロスを示している。かくして水車からみればPgだけでなくRTも一種の負荷のようにみなすことができる。すなわち、水車の出力Ptを消費する総合負荷LΣ=Pg+RTとみなすことができる。かくして(Pt−LΣ)が回転部慣性効果16の入力となり、回転部慣性効果16の出力が回転速度Nとなる。なお、負荷遮断後はPgはLに等しくなる。
【0064】
ここで、速度調整部2、出力調整部13、速度調定率設定部12の作用を図20(A)、図20(B)により説明する。なお、ここで無負荷時の案内羽根開度は0.2(pu)と仮定する。図20(A)の右下がりの実線はこのプラントが電力系統に接続される直前の状態が示されている。すなわち、Nの定格値(同期速度)ラインとこの実線の交点が案内羽根開度を示すが、丁度無負荷開度0.2になっている。なお、水車を起動する前はこの実線はこれより低い位置に設定される。例えば図20(A)の点線の位置に設定される。このように図20(A)の実線より下側でこの実線を上下に平行移動させるのが、速度調整部2である。この実線を上下に平行移動した時無負荷開度0.2線上の交点が上下に動くことから速度調整部の名が付いている。
【0065】
他方、このプラントが電力系統に接続された後の動きについて図20(B)により説明する。この場合は、実線と定格速度との交点はY=1.0になっている。すなわち、100%負荷運転中が示されている。図20(A)の並列時の実線位置は、図20(B)では点線の位置になる。
【0066】
このように実線を平行移動させて案内羽根開度を調整するのが出力調整部13である。出力調整部13は、実線を水平方向に平行移動させるものであるが、無限大電力系統に連繋された状態では、回転速度は事実上1.0に固定されるので、実線の水平方向移動に伴うN=1.0線上の交点は左右に動くことから、この名が付けられている。
【0067】
図20(B)の実線の設定では、定常時はN=1.0,Y=1.0で運転されるが、今、仮に電力系統の周波数が3%上昇しN=1.03になったとすると、Yは0.2になる。電力系統周波数の上昇幅が1.5%であれば、Y=0.6に閉め込まれる。このように周波数変化幅と案内羽根閉め込み幅の間に比例関係を与えているのが、速度調定率設計部12である。速度調定率設計部12のゲインを大きくすれば、図20(B)の実線の右下がり勾配はよりきつくなり、周波数変化に対する案内羽根開度応答幅のゲインが下がってくる。したがって、図20(B)の実線の設定で定格回転速度で(N=1.0で)全負荷(100%負荷)運転中に負荷遮断が起きれば、ガバナーは回転速度Nを最終的には定格値より速度調定率分だけ高い1.03に落ち着かせるように作動する。
【0068】
図21(A)は、ポンプ水車の案内羽根閉鎖速度制限を示す典型的な例図である。ポンプ水車の場合には、従来より案内羽根開度Y>Yaの範囲では勾配がθ1aより大きくならないよう、Y<Yaの範囲では勾配がθ1aよりさらに小さいθ1bより大きくならないよう速度制限を与える。すなわち、図3のθLをY>Yaの範囲では比較的大きいtan(θ1a)/Cyに、Y<Yaの範囲では比較的小さいtan(θ1b)/Cyに設定する。他方、案内羽根の開動作については、閉動作のようにS字特性の影響を受けないので、例えば図21(B)のように案内羽根開度に関係なく|θ1a|>|θ2|>|θ1b|となるような一定値θ2に設定する。
【0069】
ここで本発明のポイントである積分ゲインKib1、Kib2、比例ゲインKpb、微分ゲインKdの設定方法について説明する。負荷遮断後の定常状態、すなわち、負荷遮断後案内羽根が所定開度以下まで閉まり、S字特性対応制御がほぼ必要なくなる段階になれば、従来の無負荷定常時と同様の設定方法でよい。例えば、ポンプ水車上下流水路の管路時定数Tw=ΣLi.Vi/(g.H)と回転部慣性効果の時定数Tm=0.00274GD2N02/Kwに応じてKpb,Kib2を決めればよい。例えば、Kpb=0.3Tm/Tw、Kib2=0.25Kp/Tw、Kd=0.3Kp.Twのように決めればよい。すなわち、S字特性を考慮せずにTwとTmベースで決めればよい。但し、Liは各管路の長さ(m)、Viは各管路内の流速(m/sec)、gは重力の加速度(m/sec2)、Hは有効落差(m)、回転部慣性定数GD2(ton−m2)、N0は定格回転速度(rpm)、Kwは定格出力(kw)。しかし、S字特性対応制御のためには、すなわち、最初の回転速度下降曲線の前半において、閉動作中の前記水量調整手段が一時的に開動作に転じるように、かつ、結果的に前記最初の回転速度下降が定格回転速度より1/3(第1ピーク値−定格回転速度)以上高い回転速度で止み再上昇に転じるようにするために、安定性を格段に上げる必要がある。特にKib1ゲインを格段に小さくする必要がある。
【0070】
図1、図2、図4は500m級ポンプ水車に本発明の設定方法を適用した例であるが、この場合には、Kd=3.45、Kpb=0.5、Kib1=0.02、Kib2=0.1とした。この場合、Kpは負荷遮断後の切換は行わずKpb一本にしたので(図3参照)、KpbをS字特性対応制御の方も考慮して通常設定より小さくし、約1/5とした。S字特性対応制御から無負荷定常運転への切換時KpbもKib1→Kpb2と一緒に切換する案もあるがここではバンプが出ないよう切換対象を積分要素に限定している。
【0071】
かくして図1のように、案内羽根が閉鎖中に狙い通りのS字特性対応制御を行っている。この結果、流量は逆流することなくスムースに無負荷流量へと収斂してゆく。水撃Hpの第2波Hpyもほとんど消滅している。図2はこの時のポンプ水車のN1−Q1軌跡である。この図から運転点がS字特性を流量減少方向に辿る時は案内羽根が開かれ、逆に流量増加方向に辿る時は案内羽根が閉められている様子が確認でき、S字特有の加振作用がかなり抑制されていることも推察できる。
【0072】
図4はこの時のガバナーの応答、すなわち、PID要素の出力応答が示されている。案内羽根開度検出器20a,20bは、この場合には、負荷遮断後20秒の時点の案内羽根開度で動作している。このためZi曲線が負荷遮断後20秒の時点で大きく折れている。
【0073】
なお、図5はKpb、Kib2のゲインを無負荷通常運転用の設定に近づけた場合にどういう問題が起きるかを説明する図である。この場合には、Kd=3.45、Kpb=1.0、Kib1=Kib2=0.1とした場合でそれでもKib1=Kib2は通常の無負荷定常運転時の約1/3、Kpbは約1/2にしている。このようにガバナーのゲインが充分小さくなっていない中途半端な設定では案内羽根の開動作が最初の回転速度降下曲線の後半に現れ、S字特性の制振どころか逆に加振を助長する結果になっている。このようにS字特性対応制御の設定は規準がないと難しいが本発明の規準によれば簡単に的確に設定ができる。
【0074】
なお、無負荷定常運転になってもS字特性対応制御設定のまま放置してもよいが前述から推察できるように、ガバナーの応答速度が鈍くなり過ぎること、および負荷遮断後の回転速度の降下が大幅に遅れる欠点がある。
【0075】
図6,図7,図8は、図1,図2のように本発明の規準で設定した、管路を共有する3台のポンプ水車の時間差負荷遮断の解析結果である。図14、図15、図16の従来技術と対比すると効果は明白である。すなわち、異常な水撃干渉による水車下流側水圧のスパイクが全く発生しない。上流側水圧の様相も極めておだやかである。
【0076】
なお、上述の図1,2,3では、S字特性対応制御をガバナーのPIゲインの切換だけで行っているが、タイムリーに速度調整部2の設定値Xoを上げ補正する等の制御も組合せより効果的にすることも可能である。
【0077】
以上説明してきたようにこのようなポンプ水車であると、S字特性による異常な流量変動幅を大幅に圧縮できることから、ポンプ水車が受ける過渡的な水スラスト変動を大幅に低減することができ、したがって、スラスト軸受の設計合理化が可能になる。また、ポンプ水車の上流側または下流側管路を共有する複数台のポンプ水車においては、従来、異常水撃干渉の対策として各号機に運転制限を与えている場合もあったが、これが必要なくなり、各号機は互いに自由に運転できるようになる。
【0078】
さらには、負荷遮断時の余計な流量変動を抑制できるので振動、騒音等が軽減されポンプ水車自身の運転状態が改善され寿命の延長が可能になる。以上の効果は全てが揚水発電所コスト低減に貢献することは言うまでもない。しかも、本発明はガバナーの設定方法を工夫するだけで簡単に、かつ的確に達成することができる。
【0079】
また、ポンプ水車の負荷遮断に過大な流量変動を伴うことなくスムースに無負荷流量に収斂していくことから、水車の上流側水圧上昇幅を、特に第2ピークHpyを低くし、場合によってはほとんど消去することが可能である。したがって、第1ピークHpxはいかなる条件でも第2ピークHpyより低くしないようにとの従来主流になっている調整方法を踏襲しても、第1ピークHpxを大幅に下げることが可能になる。このため水車上流側管路およびポンプ水車自体の設計水圧を大幅に下げることが可能である。
【0080】
また、水車の下流側管路についてもS字特性に起因する水圧低下幅を大幅に縮小可能である。特に、下流管路を複数のポンプ水車が共有する場合の号機間相互干渉による異常スパイクを解消することができる。このため同じ下池水位の下でポンプ水車の据付高さを高くすることが可能になり、特に地下発電所の場合土木掘削ボリュームを少なくすることが可能である。
【0081】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、ポンプ水車の運転点がS字特性内にある時でも、性能安定,かつ安価にして充分にS字特性の影響を緩和することができ、ガバナーの安定性を向上させることが可能なこの種のポンプ水車を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポンプ水車の負荷遮断時の時間応答グラフである。
【図2】本発明の水車ポンプの負荷遮断時の運転点軌跡図である。
【図3】本発明の一実施例を示すブロック線図である。
【図4】本発明の図1の実施例の各部の応答グラフである。
【図5】本発明の別の実施例で好ましくない設定の例を示す図である。
【図6】本発明水車ポンプの時間差負荷遮断の解析結果を示す図である。
【図7】本発明水車ポンプの時間差負荷遮断の解析結果を示す図である。
【図8】本発明水車ポンプの時間差負荷遮断の解析結果を示す図である。
【図9】ポンプ水車の一般的な特性図である。
【図10】ポンプ水車の動作フローチャートである。
【図11】ポンプ水車の動作フローチャートである。
【図12】案内羽根の閉鎖パターンの説明図である。
【図13】複数のポンプ水車を有する発電所の例図である。
【図14】従来のポンプ水車の負荷遮断時の応答グラフである。
【図15】従来のポンプ水車の負荷遮断時の応答グラフである。
【図16】従来のポンプ水車の負荷遮断時の応答グラフである。
【図17】従来のポンプ水車の負荷遮断時の応答グラフである。
【図18】従来のポンプ水車の負荷遮断時の応答グラフである。
【図19】従来のポンプ水車のS字特性対応制御の例図である。
【図20】従来のポンプ水車のガバナー動作特性図である。
【図21】従来の案内羽根の速度制限の説明図である。
【符号の説明】
1…回転速度検出器、2…速度調整部、3…加算器、4a…発電電動機が大電力系統に接続される通常の発電運転時の比例演算要素(P要素)、4b…負荷遮断後の無負荷運転時に使用する比例演算要素(P要素)、5a…通常の発電運転時の積分演算要素(I要素)、5b1…案内羽根開度検出器が動作していない時に使用する積分演算要素(I要素)、5b2…負荷遮断直後で案内羽根開度検出器が動作した後に使用する積分演算要素(I要素)、6…微分演算要素(D要素)、7…加算部、8…加算部、9…リミッター、10…油圧サーボモーター、13…出力調整部、14…水路系を含む水車、16…回転部慣性効果、17b…電力系統からの負荷特性、19a,19b…発電電動機が負荷遮断されたことを検出する接点、20a,20b…案内羽根が所定の開度以下まで閉鎖されたことを検出する接点。
Claims (7)
- 発電電動機に結合されたランナーと、該ランナー部を通過する水量を調整する水量調整手段と、前記ランナーの回転速度が所定回転速度を保つように前記水量調整手段を制御するガバナーとを備え、前記ランナーの回転方向を換えることにより揚水,発電の両モードで運転可能に形成され、発電モード時で、かつ発電電動機の発電電力が突然遮断された負荷遮断時に、前記水量調整手段を閉動作させるようにしたポンプ水車において、
前記ガバナーは、全負荷遮断時、前記回転速度が第1の上昇ピークを経て下降に転じ、その後の最初の回転速度下降曲線の前半において、閉動作中の前記水量調整手段が一時的に開動作に転じるように、かつ最初の回転速度下降が定格回転速度より1/3(第1ピーク値−定格回転速度)以上高い回転速度で止み再上昇に転じるように設定を行い、S字特性対応制御を行うガバナー演算部を有することを特徴とするポンプ水車。 - 前記ガバナー演算部は、通常の有負荷運転制御、無負荷定常運転制御、前記負荷遮断直後のS字特性対応制御の設定値を有し、これらの設定値は、前記ガバナーの応答速度が、前記通常の有負荷運転制御、前記無負荷定常運転制御、前記負荷遮断直後のS字特性対応制御の順に低下するように設定されていることを特徴とする請求項1記載のポンプ水車。
- 前記ガバナー演算部は、前記演算部の設定値の切換がバンプレスで行われるようにした請求項2記載のポンプ水車。
- 前記ガバナー演算部は、往きの回路に比例、積分、微分演算要素を備えたPIDガバナーであり、前記積分のゲインだけを切換るようにした請求項2記載のポンプ水車。
- 前記ガバナー演算部は、前記水量調整手段の開度に応じて前記水量調整手段の閉鎖速度を制限する閉鎖速度制限手段を備え、前記閉鎖速度制限手段が前記水量調整手段の開度が第一の設定値を超えている間は、前記水量調整手段の閉鎖速度を比較的高い速度設定値を超えないように制限し、前記水量調整手段の開度が前記第一の設定値未満になった後は閉鎖速度を比較的低い速度設定値を超えないように制限するように構成されている場合、少なくとも負荷遮断直後で前記水量調整手段の開度が前記第一の設定値以下に閉鎖するまでは、閉動作中の前記水量調整手段の一時的開動作が開始されないように調整した請求項1記載のポンプ水車。
- 前記ガバナー演算部は、前記負荷遮断後、前記ランナーの回転速度が前記第1の上昇ピーク値を経て下降に転じた後に前記水量調整手段の一時的開動作を始め、その後回転速度降下曲線が上に凸から下に凸に移る変曲点まで継続するように調整した請求項1記載のポンプ水車。
- 前記ガバナー演算部は、前記回転速度が定格回転速度よりも通常の有負荷運転制御では起こり得ないほど充分に高い設定値を超えたことを条件に、前記通常の有負荷運転制御の設定値から前記負荷遮断直後のS字特性対応制御の設定値に切換するようにした請求項2記載のポンプ水車。
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