以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明を適用した映像表示装置は、図1に側面図、図2に上面図を示すように、観察者に凹面を向けた任意形状の投影面を有した映像表示手段であるスクリーン1に歪みの無い映像光を表示させるために、歪み補正処理を施した結果としての映像信号によって、映像投影手段であるプロジェクタ2から映像光を出射させるものである。
なお、以下の例では、プロジェクタ2からスクリーン1に非立体の映像光を出射する場合について説明するが、スクリーン1に立体映像を表示させても良い。この場合、映像表示装置は、ユーザに右眼と左眼とで透過する映像光の偏光方向が異なる偏光メガネを装着させて、偏光方式でプロジェクタ2から相互に視差が与えられ且つ偏光方向が異なる複数種の映像光を出射する。あるいは、映像表示装置は、ユーザに液晶シャッタメガネを装着させて、時分割方式でプロジェクタ2から相互に視差が与えられた映像光を出射しても良い。偏光方式でスクリーン1に立体映像を表示する場合、スクリーン1として映像光の偏光方向を保持する素材のものを使用し、プロジェクタ2の2個の光出射口から偏光方向が異なる右眼用映像光と左眼用映像光を出射させる。また、時分割方式でスクリーン1に立体映像を表示する場合、1個の光出射口から右眼用映像光と左眼用映像光とを時分割で交互に出射し、右眼用映像光と左眼用映像光との出射タイミングと液晶シャッタメガネの右眼及び左眼シャッタの切り替えタイミングとの同期を取る。
また、立体映像が投影されるスクリーン1として、偏光方式の場合には、映写面の表面にアルミ粉末などを塗布した所謂シルバースクリーンを用いる。更に、スクリーン1の形状としては、図1や以下に示す半球ドーム型だけではなく、平面スクリーンや、円筒型の一部を用いた2次曲面スクリーンであっても良く、半球ドーム型スクリーン、平面スクリーン、2次曲面を種々組み合わせて形成したスクリーンであっても良い。このような様々な形状のスクリーン1であっても、映像表示装置は、当該形状に応じた映像の歪み補正処理を行うことになる。
この映像表示装置は、プロジェクタ2が載置台4に置かれ、当該プロジェクタ2とスクリーン1とを3箇所のリンク機構3a、3b、3cと2本のアーム3d、3eによって接続した接続機構3を備える。2個のリンク機構3a,3aはプロジェクタ2のX軸方向両端の位置a,aに設けられ、2個のリンク機構3c,3cはスクリーン1のY軸(上下)方向の略中心であってX軸(左右)方向の側縁部の位置c,cに設けられ、2個のリンク機構3b,3bは、アーム3d,3dとアーム3e,3eとのアーム関節点b,bに設けられている。この接続機構3は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢が自動又は手動で可動としている。
なお、図1及び図2に示す映像表示装置においては、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢がY軸方向及びZ軸(前後)方向に動くような接続機構3を示しているがX軸方向にも動くような接続機構3であっても良い。また、図1に示す映像表示装置は、プロジェクタ2が載置台4に置かれている場合を示しているが、載置台4の下面にキャスターを設けて移動自在にしても良く、当該キャスターによってスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を可動としても良い。
また、接続機構3のリンク機構3a、3b、3cには、プロジェクタ2とスクリーン1との相対的な位置及び姿勢を計測するための角度情報を取得する角度センサを内蔵させている。図1に示すように、リンク機構3aに内蔵された角度センサは、プロジェクタ2の光軸とアーム3dとの角度θaを計測し、リンク機構3bに内蔵された角度センサは、点bにおいてアーム3dとアーム3eのとのなす角度θbを計測し、リンク機構3cに内蔵された角度センサは、半球状のスクリーン1の半径方向とアーム3eとのなす角度θcを計測する。
このような映像表示装置は、その機能的な構成を図3に示すように、プロジェクタ2とスクリーン1とが接続機構3で接続され、当該接続機構3のリンク機構3a、3b、3cに内蔵された3個の角度センサがセンサ部11を構成する。なお、角度θ、θa、θb、θcの正の向きを図1に示す矢印とする。
このセンサ部11で検出した角度θa、θb、θcは、映像信号処理部12で読み込まれる。映像信号処理部12は、例えばパーソナルコンピュータ等で構成され、映像生成部21と、補正処理部22と、補正パラメータ演算部23と、センサ部11と接続された座標演算部24とを備える。
座標演算部24は、センサ部11で計測された角度θa、θb、θcを入力し、当該現在の角度θa、θb、θcと、予め記憶しておいた接続機構3のアーム3d、3eの長さLa,Lbとから、プロジェクタ2の位置a(Xp,Yp,Zp)を原点としたスクリーン1の相対位置c(Xs,Ys,Zs)を算出する。また、座標演算部24は、プロジェクタ2の光軸方向を基準としたスクリーン1の回転角度であるプロジェクタ2とスクリーン1との相対的な姿勢を算出する。
このような座標演算部24は、例えばプロジェクタ2の原点(Xp,Yp,Zp)に対するスクリーン1の相対的なZ軸方向位置Zs、Y軸方向位置Ysを、
Zs=Lacosθa−Lbcos(θa+θb)
Ys=Lasinθa−Lbsin(θa+θb)
という演算式を使用して算出する。また、座標演算部24は、プロジェクタ2の光軸とスクリーン1の投影面とがなす相対角度である相対的な姿勢θを、
θ=θa+θb+θc−180°
という演算式を使用して算出する。
なお、座標演算部24は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び距離と、プロジェクタ2の画角からプロジェクタ2の投影範囲の外側にスクリーン1が配置しているか否かを判定する。そして、プロジェクタ2からの映像光がスクリーン1に投影されないような場合には、スクリーン1が無いものと判定して、映像光の投影を中止させる。
また、座標演算部24は、スクリーン1とプロジェクタ2との距離を演算して、プロジェクタ2に映像光の拡大又は縮小の程度を通知して、プロジェクタ2のズーム・フォーカス機構を制御することが望ましく、これによって、スクリーン1の全面に亘って映像光を投影させることができる。
補正パラメータ演算部23は、予め設定しておいた映像の観察者位置、スクリーン1の投影面形状、座標演算部24から受け取った相対的な位置及び姿勢、プロジェクタ2の現在の画角、及び、スクリーン1に設定した光軸に垂直な仮想投影平面と光軸との交点と、当該仮想投影平面上での投影映像中心とのずれ量であるシフト量を入力し、映像信号がスクリーン1に投影した時の歪みを補正するための補正パラメータとして、歪み補正テーブルを作成する。
プロジェクタ2の画角は、図4に示すように、プロジェクタ2から出射されて仮想投影平面に投影される映像光の投影範囲を表す値である。この仮想投影平面は、プロジェクタの光軸と垂直に配置された平面である。プロジェクタ2の画角は、垂直画角と水平画角がある。このプロジェクタ2の画角は、プロジェクタ2と仮想投影平面との距離と、仮想投影平面に投影された映像の幅又は映像の高さとの比である。通常、プロジェクタ2の画角は、当該比の逆正接である角度で表される。補正パラメータ演算部23は、補正パラメータとして、映像の幅に基づく比、映像の高さに基づく比を入力しても良い。
シフト量は、図5及び図6に示すように、投影映像の中心位置が光軸中心位置から垂直方向にずれる垂直シフト量と、投影映像の中心位置が光軸中心位置から水平方向にずれる水平シフト量とを含む。図5は、垂直シフト量及び水平シフト量を示し、図6は、垂直シフト量のみを示している。このシフト量が大きくなるほど、スクリーン1に表示された映像の光軸からのずれ量が大きくなる。また、スクリーン1上での映像の光軸からのずれ量は、プロジェクタ2と仮想投影平面との距離とシフト量との比によって変化する。従って、補正パラメータ演算部23は、補正パラメータとして当該比を入力しても良い。プロジェクタ2とスクリーン1との相対的な位置及び姿勢と、スクリーン1の形状が既知のとき、プロジェクタ2からの投影光がスクリーン1に投影される位置及び範囲は、プロジェクタ2の画角及びシフト量によって規定される。
この歪み補正テーブルは、平面の投影面と任意形状のスクリーン1の投影面のメッシュモデルとの対応マップであり、当該歪み補正テーブルに従って座標変換を行い、画素ごとに、平面表示用の映像信号を任意形状投影面への表示用の出力映像信号に変換するためのものである。
映像生成部21は、平面上に映像を投影するための平面映像信号を生成して、補正処理部22に出力する。補正処理部22は、映像生成部21からの平面映像信号を入力すると、補正パラメータ演算部23で演算された補正パラメータに従って、平面映像信号をスクリーン1の投影面に投影して観察者位置から歪みの無い映像を視認させるための歪み補正処理を行う。補正処理部22は、画素ごとに、平面映像信号を任意形状投影面への表示用の出力映像信号に変換して出力映像信号を作成して、プロジェクタ2に供給する。これによって、プロジェクタ2からは、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢に応じて歪み補正がなされた映像光をスクリーン1に向けて投影する。
このように、本発明を適用した映像表示装置によれば、スクリーン1とプロジェクタ2とを接続機構3で接続した構成であっても、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を計測して自動的に映像信号に歪み補正処理を施すことができ、歪みの無い映像をスクリーン1で表示させることができる。また、映像表示装置によれば、スクリーン1に立体視映像を表示させることにより、観察者に奥行き方向の認識がしやすい没入感のある映像を表示させることができる。
また、本発明を適用した映像表示装置によれば、スクリーン1とプロジェクタ2との間に障害物等がありスクリーン1の位置を移動させた場合であっても、新たなスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢に基づく歪み補正処理を再度行うことによって、障害物の影等の影響を受けずに没入感があり、歪みがなく鮮明な映像をスクリーン1に映し出すことができる。例えば、観察者が医師である場合、手術室において、スクリーン1とプロジェクタ2との間に障害物となるベッドや計器類や照明機器等を挟むように接続機構3を駆動させてスクリーン1及びプロジェクタ2の位置を配することができるので、スペースの少ない手術室のような空間であっても、患者の患部の映像をスクリーン1に投影して、歪みのない鮮明な映像を見ながら手術を行うことも可能である。
更にまた、図1乃至図3を参照して説明した映像表示装置は、映像信号処理部12に、観察者の音声を認識する音声認識機能、又は、観察者の操作を検出する操作入力機能を搭載し、観察者の音声又は操作に基づいてスクリーン1の位置及び姿勢を変更する命令を入力する手段を更に備えていても良い。観察者からの命令を入力した場合、接続機構3は、当該命令に従ってスクリーン1の位置及び姿勢を変更して、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を変更する。そして、映像信号処理部12の座標演算部24及び補正パラメータ演算部23は、スクリーン1の位置及び姿勢の変化に応じて補正パラメータを更新して、観察者の意図に対応したスクリーン1位置において歪みの無い映像を観察させることができる。
また、観察者からの命令に従ってスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を変更した場合、当該変更後のスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を固定するロック機構をリンク機構3a、3b、3c内に備えていることが望ましい。これにより、観察者の命令によってスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を変更した後には、確実にスクリーン1位置を固定することができる。
このようにスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を固定した後、映像表示装置は、当該固定したスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢における観察者の視点位置を予め設定しておき、当該観察者の視点位置を監視して、監視している観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた場合に、その旨を観察者に報知しても良い。この映像表示装置は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を固定した後に、観察者の視点位置が適切な位置から外れた場合には、スクリーン1で表示している映像が最適な状態で観察者から観察することができないことを報知するものである。
この映像表示装置は、図7に示すように、図1又は図2に示した構成に加えて、観察者の視点位置を監視するための視点監視手段である測距センサ5及び視点位置監視部6と、報知手段である報知機能部7とを備えている。
測距センサ5は、例えば、スクリーン1に取り付けられた距離センサである。この測距センサ5は、例えば赤外線光を照射して、予め設定された観察者の被装品、例えば内視鏡手術の手術室で用いる場合は術者の帽子、マスク或いは立体視用偏光眼鏡に取り付けた反射板からの反射により距離を測定するセンサや、撮像素子で被測定対象物、例えば術者の眉を捉えた画像から距離を計測するセンサ等が挙げられる。この測距センサ5で測定した距離は、観察者の視点位置の情報として視点位置監視部6に供給される。また、測距センサ5は、観察者(術者)被装品の位置以外であっても、例えば観察者が乗る台座の位置を検出しても良い。つまり、観察者の視点位置を表す検出対象は、観察者が装着する被装品や観察者が乗る台座など、観察者の視点移動に伴って移動する物体であれば良い。
視点位置監視部6は、測距センサ5で計測された距離から、観察者の視点位置とスクリーン1との間の距離を求め、この距離が、予め記憶している視点位置の距離から許容範囲以上外れたか否かを監視する。そして、視点位置監視部6により、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れたことを検知した場合には、報知機能部7を駆動させる。
視点位置監視部6で予め設定している観察者の視点位置は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢が固定された状態において、当該固定された状態における最適な観察者の視点位置を映像信号処理部12の座標演算部24によって演算されたプロジェクタ2の位置a(Xp,Yp,Zp)を原点としたスクリーン1の相対位置c(Xs,Ys,Zs)、プロジェクタ2の光軸方向を基準としたプロジェクタ2の回転角度であるプロジェクタ2とスクリーン1との相対的な姿勢から、視点位置監視部6によって、推奨する観察者の立ち位置(視点位置)を演算するようにしても良い。
報知機能部7は、視点位置監視部6からの制御信号に従って、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れたことを報知する。この報知機能部7としては、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた場合に観察者に向けて音響を出力する音響出力手段、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた場合に映像光の色を変化させるプロジェクタ2、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた場合に観察者に向けて発光を行う発光手段が挙げられる。
また、報知機能部7は、視点位置監視部6から、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた量(距離)を示す信号が供給されて、当該外れた量に応じて報知の強弱、報知の仕方を変更するものであっても良い。
例えば報知機能部7が音響出力手段である場合、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた量が大きいほど、高音の音響(高周波の音響)を発生させることによって、どの程度の距離に亘って観察者の視点位置が外れたかを音響によって観察者に報知できる。また、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた方向によって報知の強弱、報知の仕方を変更しても良い。
また、例えば報知機能部7が発光手段である場合、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた量、外れた方向によって発光する光の強さ、点滅の周波数、発光色を変化させても良い。これによって、観察者の視点位置が予め設定した視点位置から外れた量がどの程度であるかを報知でき、更に、外れた方向を同時に報知できる。
更に、観察者の視点位置が予め設定した視点位置よりも外れた場合の報知機能部7としてプロジェクタ2を使用する場合、プロジェクタ2からスクリーン1に向けて出射している映像光の色を変化させるようにしても良い。例えば、映像信号処理部12内に、視点位置監視部からの出力を受けて、映像生成部21によって生成される平面映像信号の色の濃さ、色調などを変化させるパラメータを発生させる信号処理機能を持たせる。これによって、映像生成部21から補正処理部22に供給される映像色の濃さや色調を変化させて、観察者の視点位置が予め設定された視点位置から外れたことや、外れた量(距離)や方向を同時に報知することができる。
つぎに、本発明を適用した映像表示装置の他の構成例について説明する。なお、以下の説明において、上述した映像表示装置の構成及び動作と同じ部分については同一符号を付することなどによって、その詳細な説明を省略するが、上述の構成を以下の映像表示装置に適用可能であることは勿論である。
先ず、本発明を適用した映像表示装置において、プロジェクタ2の位置を任意に変更できる構成について図8乃至図15を参照して説明する。
この映像表示装置は、図8に示すように、接続機構3として、プロジェクタ2から出射される映像光の光軸とスクリーン1の所定位置とを一致させるようにプロジェクタ2の映像光出射方向を駆動するプロジェクタ駆動機構41を備える。このプロジェクタ駆動機構41は、載置台4上に設けられ、プロジェクタ2を支持して当該プロジェクタ2を上下左右方向に駆動する。このプロジェクタ駆動機構41は、例えば直動アクチュエータと回転アクチュエータとを組み合わせて構成される。
映像信号処理部12は、図9に示すように、センサ部11及び座標演算部24によって計測・演算したスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を入力して、プロジェクタ2の光軸がスクリーン1の所定位置である中心部に向くようにプロジェクタ駆動機構41の駆動方向及び駆動量を演算する駆動パラメータ演算部31を備える。
この駆動パラメータ演算部31は、演算したプロジェクタ駆動機構41の駆動方向及び駆動量からなる駆動パラメータをプロジェクタ駆動機構41に供給してプロジェクタ2を位置を変更させると共に、座標演算部24で演算したスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢の情報と、駆動パラメータとを補正パラメータ演算部23に供給する。なお、この駆動パラメータ演算部31による駆動パラメータの算出処理については、後述する。
補正パラメータ演算部23は、プロジェクタ駆動機構41によってプロジェクタ2の映像光出射方向が変更されたことに応じて、座標演算部24で演算された相対的な位置及び姿勢を変更して、当該変更後における補正パラメータを更新する。
このような映像表示装置は、その動作手順を図10に示すように、ステップS1において、センサ部11によってスクリーン1の移動を検出した場合に、ステップS2において、座標演算部24によってセンサ部11のセンサ値を読み込み、ステップS3において、座標演算部24によってスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を算出して、駆動パラメータ演算部31に出力する。
駆動パラメータ演算部31は、ステップS4において、現在の相対的な位置及び姿勢から、プロジェクタ2の光軸がスクリーン1の中心部に向くプロジェクタ駆動機構41の駆動パラメータを算出し、ステップS5において当該駆動パラメータをプロジェクタ駆動機構41に出力する。これによって、ステップS6において、プロジェクタ駆動機構41の直動アクチュエータ又は回転アクチュエータを駆動させてプロジェクタ2の光軸を変更する。
次のステップS7において、補正パラメータ演算部23により、プロジェクタ駆動機構41が駆動した結果としてのスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢から補正パラメータを更新し、ステップS8において、補正処理部22によって、プロジェクタ駆動機構41の駆動後の補正パラメータに従って平面映像信号に歪み補正処理を行って、ステップS9において、プロジェクタ2からスクリーン1に映像を投影させて、歪みのない映像を表示させる。
次に、駆動パラメータ演算部31による駆動パラメータの算出処理について説明する。
プロジェクタ駆動機構41は、図11に示すように、プロジェクタ2をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に直進駆動させる直動アクチュエータ41a,41b,41c(以下、X軸直動アクチュエータ41a、Y軸直動アクチュエータ41b、Z軸直動アクチュエータ41cと呼ぶ。)を備える。この直動アクチュエータ41a,41b,41cは、接地リンク41dを介して載置台4上に接地されており、直動アクチュエータ41a,41b,41cは、接続リンク41eを介して回転アクチュエータ41f、41gと接続されている。回転アクチュエータ41fは、接続リンク41eを中心軸としてプロジェクタ2の光軸を回転させる回転アクチュエータであり、回転アクチュエータ41gは、プロジェクタ2の光軸を回転アクチュエータ41fの回転軸と光軸に垂直な軸を中心に回転させる回転アクチュエータである。なお、図11は、スクリーン1が自動又は手動で移動し、スクリーン1の位置がプロジェクタ2の投影範囲外となった様子を示している。
また、接続機構3は、仮想的な接地点からの接地リンク3fの先端であって、リンク機構3aに内蔵された回転アクチュエータ3g(3g1,3g2)が設けられ、当該回転アクチュエータ3gからアーム3dを介してリンク機構3bに内蔵された回転アクチュエータ3hが設けられ、当該回転アクチュエータ3hからアーム3eを介してリンク機構3cに内蔵された回転アクチュエータ3i(3i1,3i2)が設けられて構成されている。なお、スクリーン1の基準位置は、スクリーン1の中心位置としている。
このようなプロジェクタ駆動機構41及び接続機構3は、図12及び図13に示すように、座標系Uにおいてプロジェクタ2の接地面の位置をU[xBp,yBp,zBp]とし、プロジェクタ2の姿勢をU[e1p,e2p,e3p]とし、スクリーン1の接地面の位置をU[xBs,yBs,zBs]とし、スクリーン1の姿勢をU[e1s,e2s,e3s]とする。また、図12に示すように、プロジェクタ2の位置及び姿勢を変化させる回転アクチュエータ41f、41gの回転関節iの角度をθipとし、プロジェクタ2の位置及び姿勢を変化させる直動アクチュエータ41a,41b,41cの直接関節iの長さをdipとし、図13に示すように、スクリーン1の位置及び姿勢を変化させる接続機構3において、リンク機構3a、3b、3cの回転関節iの角度をθisとしている。
このような映像表示装置の座標系Uにおいて、プロジェクタ2に対するスクリーン1の位置(X,Y,Z)は、下記の式1〜式3で表現される。
この式1〜式2において、l2はアーム3dの長さ、l3はアーム3eの長さ、lsは回転アクチュエータ3iとスクリーン1の中心位置との距離、θ1sは回転アクチュエータ3g1の回転角度、θ2sは回転アクチュエータ3g2の回転角度、θ3sは回転アクチュエータ3hの回転角度、θ4sは回転アクチュエータ3i1の回転角度、θ5sは回転アクチュエータ3i2の回転角度、d1pはX軸直動アクチュエータ41aの移動距離、d2pはZ軸直動アクチュエータ41cの移動距離、d3pはY軸直動アクチュエータ41bの移動距離、θ4pは回転アクチュエータ41fの回転角度、θ5pは回転アクチュエータ41gの回転角度である。
より詳細には、図11に示すように、θ1sは、接地リンク3fを軸に回転する回転アクチュエータ3g1の回転角度であり、θ2sは、アーム3dと回転アクチュエータ3g1の回転軸に垂直な方向を軸に回転する回転アクチュエータ3g2の回転角度であり、θ3sは、アーム3dとアーム3eに垂直な方向を軸に回転する回転アクチュエータ3hの回転角度であり、θ4sは、回転アクチュエータ3hの回転軸に平行な方向を軸に回転する回転アクチュエータ3i1の回転角度であり、θ5sは、回転アクチュエータ3i1の回転軸とスクリーン1の投影面の法線に垂直な方向を軸に回転する回転アクチュエータ3i2の回転角度である。
この座標系Uにおいて、プロジェクタ2に対するスクリーン1の姿勢(e1,e2,e3)は、下記の式4〜式6に示すようになる。
また、座標系Uから見て、スクリーン1の位置U[xs,ys,zs]は、下記の式7〜式9に示すようになる。
更にまた、座標系Uから見て、スクリーン1の姿勢U[e1s,e2s,e3s]は、下記の式10〜式12に示すようになる。
また、座標系Uから見て、プロジェクタ2の位置U[xp,yp,zp]は、下記の式13〜式15に示すようになる。
更にまた、座標系Uから見て、プロジェクタ2の姿勢U[e1p,e2p,e3p]は、下記の式16〜式18に示すようになる。
このように、式1〜式3のように表現されるプロジェクタ2に対するスクリーン1の位置は、式7〜式9で表現されるスクリーン1の位置と式13〜式15で表現されるプロジェクタ2の位置との相対関係を求めることによって得られ、式4〜式6のように表現されるプロジェクタ2に対するスクリーン1の姿勢は、式10〜式12で表現されるスクリーン1の姿勢と式16〜式18で表現されるプロジェクタ2の姿勢との相対関係を求めることによって得られる。
このような映像表示装置において、プロジェクタ駆動機構41の並進運動によってプロジェクタ2の位置を制御する時、駆動パラメータ演算部31は、プロジェクタ2のX軸方向の移動距離d1p、Y軸方向の移動距離d3pを制御して、プロジェクタ2の光軸がスクリーン1の中心部に向くようにする。プロジェクタ2の光軸をスクリーン1の中心部に向けるための移動距離d1p、d3pは、下記の式19及び式20に示すようになる。
この式19及び式20におけるA,B,Zは、下記の式21,式22,式23となる。なお、この式21のAは式1で求められたプロジェクタ2とスクリーン1とのX軸方向相対位置であり、式22のBは式2で求められたプロジェクタ2とスクリーン1とのY軸方向相対位置であり、式23のZは式3で求められたプロジェクタ2とスクリーン1とのZ軸方向相対位置である。
これらの式19乃至式23により、駆動パラメータ演算部31は、プロジェクタ2のY軸方向の移動距離d3pを求めた場合、図14に示すようにプロジェクタ2を移動距離d3pだけ移動させるように駆動パラメータを生成して、Y軸直動アクチュエータ41bを駆動させて、スクリーン1の中心部とプロジェクタ2の光軸とが交差するようにする。
また、プロジェクタ駆動機構41の回転運動によってプロジェクタ2の姿勢を制御する時、駆動パラメータ演算部31は、プロジェクタ2の回転角度θ4p、θ5pを制御して、プロジェクタ2の光軸がスクリーン1の中心部に向くようにする。プロジェクタ2の光軸をスクリーン1の中心部に向けるための回転角度θ4p、θ5pは、下記の式24及び式25に示すようになる。
この式24及び式25におけるX,Y,Zは、下記の式26,式27,式28となる。なお、この式26のAは式1で求められたプロジェクタ2とスクリーン1とのX軸方向相対位置であり、式27のBは式2で求められたプロジェクタ2とスクリーン1とのY軸方向相対位置であり、式28のZは式3で求められたプロジェクタ2とスクリーン1とのZ軸方向相対位置である。
これらの式24乃至式28により、駆動パラメータ演算部31は、プロジェクタ2の回転角度θ5pを求めた場合、図15に示すようにプロジェクタ2を回転角度θ5pだけ回転させるように駆動パラメータを生成して、回転アクチュエータ41gをθ5pだけ回転させて、スクリーン1の中心部とプロジェクタ2の光軸とが交差するようにする。
このような映像表示装置によれば、スクリーン1が手動で移動されて、図11に示すようにスクリーン1がプロジェクタ2の投影範囲外となった場合であっても、スクリーン1の中心部にプロジェクタ2の光軸を向けるようにプロジェクタ駆動機構41を制御できるので、歪みの無い映像を確実にスクリーン1に投影させることができる。
つぎに、本発明を適用した映像表示装置において、プロジェクタ2からの映像光を確実にスクリーン1の全面に投影する構成について図16乃至図23を参照して説明する。
この映像表示装置は、図16に示すように、スクリーン1の映像表示範囲を撮像するカメラである状態撮影機構52を備え、スクリーン1の全体に亘って映像光が投影されているかを判定する。この判定処理は、図17に示すように、状態撮影機構52と接続された画像処理部61で行う。画像処理部61によってスクリーン1の全体に亘って映像が投影されていないと判定した場合には、対応テーブル記憶部62に記憶されている対応テーブルをスクリーン駆動演算部63で参照して、スクリーン1の全体に亘って映像光が投影されるようにスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を変更する。
なお、スクリーン1の全体に亘って映像光が投影されていない場合に、スクリーン1のみの位置及び姿勢を変化させてもよく、プロジェクタ2のみの位置及び姿勢を変化させてもよく、スクリーン1及びプロジェクタ2の双方の位置及び姿勢を変化させて、プロジェクタ2からの映像光がスクリーン1の全体に投影されるようにしても良い。
映像信号処理部12の画像処理部61は、状態撮影機構52で撮像された映像信号を入力して、当該映像信号を解析し、スクリーン1で表示している映像内に影が存在するか否かを判定する。画像処理部61は、例えば、所定輝度よりも輝度が低い画素群が存在する場合に、当該画素群を影であると判定する。スクリーン1に影が発生する理由としては、プロジェクタ2からスクリーン1への光路に障害物があるために映像光を遮っている、プロジェクタ2の光軸方向に対するスクリーン1の回転角度が大きいためにスクリーン1の一部によって映像光が遮られているといった状況がある。
画像処理部61は、スクリーン1に影が発生していると判定すると、当該影が発生しているスクリーン1内の領域を判定して、スクリーン駆動演算部63に通知する。対応テーブル記憶部62は、スクリーン1内の影が発生している領域と、スクリーン1の位置及び姿勢の変更方向及び変更量との対応関係を記述した対応テーブルを記憶している。したがって、スクリーン駆動演算部63は、画像処理部61から影が発生している領域が通知されることに応じて対応テーブルを参照して、スクリーン1の駆動パラメータを作成して、スクリーン1に影が映り込まない位置及び姿勢に変更させるために、リンク機構3a、3b、3c内の回転アクチュエータであるスクリーン駆動機構51を駆動する制御信号を出力する。
画像処理部61は、例えば図18に示すように半球状のスクリーン1の投影面を8分割した映像投影領域1−1,1−2,1−3,1−4,1−5,1−6,1−7,1−8を設定しておき、どの映像投影領域に影が発生しているかを判定する。対応テーブルは、影が発生している映像投影領域から、スクリーン1の中心位置方向に移動させるスクリーン1の変更方向及び変更量が登録されている。例えば映像投影領域1−5に影が発生していると画像処理部61によって判定した場合、図18中の矢印で示す方向、すなわち映像投影領域1−5から映像投影領域1−1に向かう方向にスクリーン1を移動させる。
スクリーン駆動演算部63からスクリーン駆動機構51への制御信号によって、リンク機構3a、3b、3c内の回転アクチュエータが駆動して、スクリーン1のプロジェクタ2に対する位置及び姿勢が変更すると、当該スクリーン1の位置及び姿勢の変更がセンサ部11で検知されてスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢が再計算されて、補正パラメータが更新される。これによって、映像生成部21からの映像信号に、更新された補正パラメータを使用した歪み補正処理を行い、歪みが無く影がない状態でスクリーン1に映像を表示できる。
また、映像信号処理部12は、座標演算部24から得たスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を入力して、現在のプロジェクタ2の投影範囲を投影範囲演算部65で演算する。この投影範囲演算部65は、プロジェクタ2の光軸方向、プロジェクタ2の画角、スクリーン1の中心位置、スクリーン1とプロジェクタ2との距離などから、スクリーン1の全体に亘って映像光が投影されているか否かを判定する。そして、スクリーン1の全体に亘って映像光が投影されていないと判定した場合、プロジェクタ駆動位置演算部64は、プロジェクタ2の位置及び姿勢を変更するような駆動パラメータを作成して、プロジェクタ駆動機構41を駆動させる。
そして、プロジェクタ駆動機構41の直動アクチュエータ、回転アクチュエータが駆動して、プロジェクタ2のスクリーン1に対する位置及び姿勢が変更すると、補正パラメータ演算部23で補正パラメータが更新される。これによって、映像生成部21からの映像信号に、更新された補正パラメータを使用した歪み補正処理を行い、歪みが無く影がない状態でスクリーン1に映像を表示できる。
このような映像表示装置の動作は、図19に示すようになる。なお、この図19に示す動作は、スクリーン1の位置及び姿勢を変更する動作と、プロジェクタ2の位置及び姿勢を変更する動作の双方を含んでいる。
映像表示装置は、ステップS1〜ステップS3の処理によってスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を演算すると、ステップS11において、投影範囲演算部65によってプロジェクタ2の投影範囲を演算し、ステップS12において、映像光がスクリーン1の全体に亘って投影されている適正な投影範囲内か否かを判定する。そして、適正な投影範囲内であると判定した場合にはステップS7以降に処理を進め、そうでない場合にはステップS13に処理を進める。
ステップS13において、映像表示装置は、プロジェクタ駆動位置演算部64によって、プロジェクタ2の投影範囲が適正な投影範囲内となるようにプロジェクタ2の駆動位置を算出して、駆動パラメータをプロジェクタ駆動機構41に供給する。これによって、ステップS14において、プロジェクタ駆動機構41の直動アクチュエータ、回転アクチュエータを駆動させて、プロジェクタ2の位置及び姿勢を変更することができる。
ステップS12においてプロジェクタ2の投影範囲が適正な投影範囲内であると判定された後には、ステップS7において、後述するズーム・フォーカス調整機構で調整された画角のデータを加味した上で、歪み補正処理のための補正パラメータを算出して、この算出した補正パラメータを用いて、ステップS8において平面映像信号に歪み補正処理を施して、ステップS9においてプロジェクタ2から映像を投影させる。
また、ステップS8の次のステップS15において、映像表示装置は、画像処理部61によって状態撮影機構52で撮像したスクリーン1の投影状態を解析して、スクリーン1の全体に亘って映像が投影されているか否かを判定して、スクリーン1に影が無く映像光が投影されている場合にはステップS19に処理を進めて、現在のスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢を維持して、処理を終了する。
一方、ステップS15において、スクリーン1の映像投影範囲に影が発生していると判定した場合には、画像処理部61によって当該影が発生している映像投影領域を求めて、スクリーン駆動演算部63に通知する。
次にスクリーン駆動演算部63は、ステップS16において、ステップS15で判定された影が発生した映像投影領域に応じて対応テーブル記憶部62の対応テーブルを参照して、ステップS17においてスクリーン1の位置及び姿勢の変更方向及び変更量を求めて、駆動パラメータをスクリーン駆動機構51に供給する。これによって、ステップS18において、スクリーン駆動機構51のリンク機構3a、3b、3cに内蔵された回転アクチュエータを駆動させて、スクリーン1の位置及び姿勢を変更することができる。
また、図16乃至図19を参照して説明した映像表示装置は、座標演算部24によってスクリーン1とプロジェクタ2との距離を演算して、プロジェクタ2から出射させる映像光の拡大又は縮小の程度を演算し、図16におけるプロジェクタ駆動機構41に含まれるプロジェクタ2のズーム機構(投影光の拡大・縮小)、フォーカス機構(スクリーン1の位置の遠近に応じたピント合わせ)を制御して、スクリーン1の全面にプロジェクタ2からの映像光を投影させても良い。
この映像表示装置は、図19の点線で示す処理のように、ステップS12において、映像光がスクリーン1の全体に亘って投影されている適正な投影範囲ではないと判定された場合、ステップS31において、投影範囲演算部65によってプロジェクタ2の望ましい投影範囲を算出して、ステップS32において、当該望ましい投影範囲となるようにプロジェクタ駆動機構41におけるズーム・フォーカス調整機構を駆動する。これにより、スクリーン1の全体に亘って投影される適正な投影範囲となるように、ズーム及びフォーカス調整ができる。
更に、映像表示装置は、状態撮影機構52によってスクリーン1の映像表示状態を判定するのみならず、図20に示すように、スクリーン1の周縁部における映像表示状態を検出する複数の光センサ71を取り付けても良い。そして、映像表示装置は、図21に示すように、光センサ71と接続された光センサ信号処理部81、対応テーブル記憶部82及び駆動位置演算部83を映像信号処理部12に設ける。
光センサ71は、図18に示したように映像投影範囲1−1〜1−8の周縁部にそれぞれ一個ずつ設ける。そして、スクリーン1の周縁部に係って影が存在する場合、何れかの光センサ71によって当該影の発生を検出できる。そして、光センサ信号処理部81は、何れかの光センサ71によって検出された映像光の光量が少なくなって影の発生を検知した場合、影が発生した映像投影領域を駆動位置演算部83に通知する。これに応じて、対応テーブル記憶部82の対応テーブルを参照して、スクリーン1の位置及び姿勢の変更方向及び変更量を求めて、スクリーン駆動機構51のアクチュエータを制御する。
このような映像表示装置の動作は、図22に示すように、ステップS1〜ステップS8の動作を行うことによって、現在のスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢に応じた歪みの無い映像を投影させている時に、ステップS21において、光センサ信号処理部81により、スクリーン1の周縁部に設置された光センサ71のうち、検出光量が少なく影の発生に対して反応した光センサ71が存在するか否かを判定する。
そして、光センサ71で影の発生を検出していないと光センサ信号処理部81が判定した場合にはステップS19に処理を進め、光センサ71で影の発生を検出した場合にはステップS16〜ステップS18の処理を行って、スクリーン1に影が映り込まないようにスクリーン1の位置及び姿勢を変更できる。
つぎに、本発明を適用した映像表示装置において、プロジェクタ2からの映像光をミラーで反射させて、映像光の投影範囲を任意なものとできる構成について図23を参照して説明する。
この映像表示装置は、プロジェクタ2の光軸をスクリーン1とは反対方向に向け、当該プロジェクタ2から出射した映像光をミラー91で反射して、スクリーン1に映像光を投影させる。このミラー91には、映像信号処理部12の制御信号に応じて、映像光の反射角度を可変とする回転アクチュエータ92が設置されている。
このような映像表示装置は、予めプロジェクタ2の映像光出射位置、光軸、画角が設定されており、映像信号処理部12によって、現在のスクリーン1の位置及び姿勢が演算されて、ミラー91に姿勢(回転角度)に対するスクリーン1の中心位置における位置及び姿勢が演算される。そして、映像信号処理部12は、ミラー91で反射した映像光がスクリーン1の全面に亘って投影されるミラー91の回転角度を演算して、回転アクチュエータ92を制御する。
また、映像信号処理部12は、ミラー91で反射した映像光がスクリーン1の全面に亘って歪み無く表示されるように、スクリーン1とミラー91との相対的な位置及び姿勢を演算して補正パラメータを作成し、歪み補正処理を行う。
このような映像表示装置によれば、プロジェクタ2の位置及び姿勢を変更するプロジェクタ駆動機構41を備えることなく、スクリーン1を任意の位置及び姿勢としても、歪みの無い映像を表示させることができる。また、プロジェクタ2の設置位置の自由度も高くできる。
つぎに、本発明を適用した映像表示装置において、映像の観察者位置を計測する構成について図24を参照して説明する。
上述した映像表示装置においては、観察者の視点位置を予め設定しておいて歪み補正処理のための補正パラメータを演算していたが、この映像表示装置は、観察者に装着されたメガネ100に位置センサ101を取り付けて、映像信号処理部12によって観察者の位置を検出する。この観察者の視点位置を検出する機能としては、位置センサ101を磁気センサとする。
このような映像表示装置は、位置センサ101の位置を所定期間ごとに検知して、観察者の視点位置と同じ高さとなるようにスクリーン1の高さ位置を制御する。この場合、スクリーン1の高さ位置をリンク機構3a、3b、3cの回転アクチュエータで変更して、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置及び姿勢が変更したことに応じて、プロジェクタ2の位置及び姿勢を更新して、常に歪みの無い映像をスクリーン1の全体に亘って表示させる。また、映像表示装置によれば、観察者の視点位置と同じ高さにスクリーン1の位置を制御できるので、スクリーン1の表示を視認しやすい位置とすることができる。また、観察者とスクリーン1とを正対させることができる。
つぎに、本発明を適用した映像表示装置において、上述の接続機構3に代えて、図25に示すようなプロジェクタ2とスクリーン1とを接続する接続機構110を備えたものについて説明する。
この接続機構110は、図26(a)に示すように、アーム関節点111−1,111−2,111−3,111−4を有し、四辺のアームを回転リンク機構によって接続する平行リンク機構と、図26(b)に示すように、アーム関節点111−1,111−5,111−6,111−7を有し、四辺のアームを回転リンク機構によって接続する平行リンク機構とを結合して、図26(c)に示すように構成される。この図26(c)に平行リンク機構の示すアーム関節点111−1〜111−8は、図中の縦方向(Y軸方向)に可動とされた回転リンク機構で構成されている。なお、以下の説明において図26(c)に示す接続機構110のアーム関節点111−1〜111−8を総称する場合には単に「アーム関節点111」と呼ぶ。
図26(a)に示す平行リンク機構及び図26(b)に示す平行リンク機構は、共に、4個の回転リンク機構によって平行した2組のアームを連結して構成されている。
図26(a)に示す平行リンク機構は、プロジェクタ2の光軸と平行となるようにプロジェクタ2に固定して設置されたアーム112−1(第1のアーム)と、アーム112−1の光軸方向において異なる位置に接続され、接続リンク41eが設けられた接地面に対して常に鉛直となるアーム(第2のアーム)とを有する。図26(b)に示す平行リンク機構は、第2のアームの鉛直方向において異なる位置に接続されて、映像光の光軸と常に平行(アーム112−1と常に平行)となり、且つ同じ長さの2本のアーム112−2(第3のアーム)と、接地面に対して常に鉛直となるアームとを有している。アーム112−2のスクリーン1側端部には、スクリーン1の周縁部であってスクリーン1の上下方向の中心位置に接続されるアーム112−3(第4のアーム)が接続されている。このアーム112−2とアーム112−3とのアーム関節点111−5,111−6には、回転リンク機構が内蔵され、アーム112−3は、接地面に対して常に鉛直となる。
また、アーム関節点111の何れか一つには、全アーム関節点111の回転リンク機構を鉛直方向とプロジェクタ2の光軸に垂直な方向に回転させる回転アクチュエータが内蔵されている。この回転アクチュエータを内蔵するアーム関節点111は、アーム関節点111−1〜111−8のうちの任意で良く、1個のアーム関節点111が回転アクチュエータによって回転駆動されることによって、当該回転アクチュエータの回転量と同じ回転量だけ他のアーム関節点の回転リンク機構が連動して回転駆動される。
望ましい回転アクチュエータの設置個所としては、図26(c)におけるアーム関節点111−3又はアーム関節点111−4である。この理由としては、回転アクチュエータのような重量物は、アームの先端部分よりもプロジェクタ2に接続された部分に存在する方が、接続機構全体の重量を軽くできることによる。
更に、プロジェクタ2とスクリーン1との相対的な位置及び姿勢を計測するための角度情報を取得する角度センサは、アーム関節点111のうち少なくとも一つのアーム関節点111に設けられる。この角度センサで得られた角度情報によって、映像信号処理部12は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置・姿勢を演算して、当該相対的な位置・姿勢に応じてプロジェクタ2から出射する映像光を補正することになる。
このような接続機構110は、図25に示すように、プロジェクタ2から出射される映像光の光軸と平行するアーム112−1がプロジェクタ2に連結されている。これにより、プロジェクタ2がプロジェクタ駆動機構41によってパン方向及びチルト方向に駆動された場合、アーム112−1の両端における回転リンク機構及び他の回転リンク機構が回転する。例えば、接続機構110は、図27(a)に示すような状態において、プロジェクタ2のプロジェクタ駆動機構41によってプロジェクタ2の映像光を上方に向けるように駆動された場合、図27(b)に示すように、全ての回転リンク機構が回転して、アーム112−1とアーム112−2とが平行となるように保持される。また、2本のアーム112−2は、図28に示すように、アーム関節点111−1,111−7が回転して、(a)から(b)に示す状態に駆動された場合、常に平行となる。
このとき、接続機構110は、アーム関節点111における角度θ1,θ2の和が常に180度となる。これにより、アーム112−1,112−2は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置・姿勢に拘わらず、プロジェクタ2の映像光の光軸と常に平行となり、プロジェクタ2の映像光の光軸を常にスクリーン1の中心位置に向けることができる。
また、このような接続機構110を備えた映像表示装置は、図29に示すように、アーム112−2の長さを伸縮する伸縮機構120A,120Bを備えていても良い。この伸縮機構120A,120Bは、手動又は自動で伸縮してスクリーン1とプロジェクタ2との距離を変更させる。自動でアーム112−2の長さを変更可能とする場合、伸縮機構120A,120Bは、直動アクチュエータを含む。手動又は自動で伸縮機構120A,120Bが伸縮されて、所定位置のスクリーン1から、当該所定位置よりも距離が長いスクリーン1’となった場合、映像信号処理部12は、スクリーン1とプロジェクタ2との相対的な距離の変化に応じてプロジェクタ2から出射する映像光の歪み補正を行うことになる。
これによって、映像表示装置は、プロジェクタ2の映像光の光軸を常にスクリーン1に向けることができると共に、スクリーン1とプロジェクタ2との前後方向における位置の自由度を向上させることができる。
更に、接続機構110を備える映像表示装置は、図30に示すように、スクリーン1の投影面が常にプロジェクタ2に対して一定の角度となる機能を有していても良い。この機能は、アーム112−1,112−2と常に平行となり、プロジェクタ2から出射される映像光の光軸と平行となるアーム112−4(第5のアーム)で実現される。このアーム112−4の一方端は、スクリーン1の周縁部であってスクリーン1の上下方向の中心位置に接続され、且つ、アーム112−4の両端は、2本のアーム112−2にそれぞれ接続された同じ長さの2本のアーム112−3と接続され、アーム112−3とアーム112−4とが接続されるアーム関節点111に回転リンク機構が内蔵される。
この接続機構110は、図31に示すように、(a)の平行リンク機構と(b)の平行リンク機構と(c)の平行リンク機構とを連結して、(d)のように構成される。(c)の平行リンク機構は、アーム関節点111−10,111−5,111−8,111−9を有し、四辺のアームを回転リンク機構によって接続して構成されている。(b)の平行リンク機構のアーム関節点111−5と(c)の平行リンク機構のアーム関節点111−5とが重ね合わされる。
これによって、映像表示装置は、映像表示装置は、スクリーン1の投影面を常に一定角度でプロジェクタ2に向けることができ、プロジェクタ2がプロジェクタ駆動機構41によって駆動されても、図10おけるステップS1〜ステップS7の映像光の歪み補正をする歪み補正パラメータを変更する処理を行う必要なく、常に歪みのない映像を提示することができる。
更にまた、接続機構110を備える映像表示装置は、図32に示すように、スクリーン1の投影面を、当該投影面の中心位置を中心とし、投影面の中心点に対して直交する任意の方向に回動自在とする機能を有していても良い。
この接続機構110は、アーム112−2のスクリーン1側端部に接続され、接地面と鉛直となるアーム112−3の先端に、アーム112−3を軸に回転する回転機構114を備える。この回転機構114は、スクリーン1の周縁部であってスクリーン1の中心点から左右方向の両端に接続されたアーム113が接続されており、手動又は自動で回転する。自動で回転可能とする場合、回転機構114は回転アクチュエータを内蔵することになる。これにより、回転機構114が駆動すると、アーム113によって、スクリーン1の投影面を、投影面の中心点を中心として上下方向を軸として左右方向に回転させる。また、接続機構110は、アーム113のスクリーン1との接続点にアーム112−3とスクリーン1の投影面の法線に垂直な方向に回転する回転機構115を備える。この回転機構115が、手動又は自動で回転すると、スクリーン1の投影面を投影面の中心点を中心として左右方向を軸として前後方向に回転させる。自動で回転可能とする場合、回転機構115は回転アクチュエータを内蔵することになる。
このような接続機構110を備えた場合に、回転機構114又は回転機構115が回転してプロジェクタ2に対するスクリーン1の姿勢が変更すると、映像信号処理部12は、当該姿勢の変更に基づいて歪み補正パラメータを更新して、プロジェクタ2から歪みのない映像光を出射させる。
このような映像表示装置は、スクリーン1が前後左右方向に回転した場合であっても、投影面の中心点とプロジェクタ2との相対位置は固定となるために、常に歪みのない映像光をスクリーン1に投影できる。
更にまた、接続機構110を備える映像表示装置は、図33に示すような回転リンク機構を固定させる固定機構を何れかのアーム関節点111に備えていても良い。
この固定機構は、アーム関節点111の筐体131に、接続機構110を構成するアーム130の端部に設けられた回転部132と押圧部133と押圧力発生部134とを収容している。押圧力発生部134は、例えばバネ機構からなり、当該バネによって発生させた押圧力を押圧部133に与える。押圧部133は、押圧力発生部134によって発生された押圧力によって回転部132に当接することによって回転部132の回転動作を抑える。
この固定機構は、アーム関節点111に接続されたアーム130を回転させる場合には、図34(a)に示すように、回転部132が押圧部133に押圧されていない状態となっており、アーム130を回転さないロック状態とする場合には、図34(b)に示すように、押圧力発生部134によって発生させた押圧力を押圧部133に与えて、当該押圧部133によって、回転部132が回転しないように押圧する。
このような映像表示装置によれば、回転アクチュエータをアーム関節点111に備えずに、手動によって接続機構110を動作させてスクリーン1とプロジェクタ2との相対的な位置・姿勢を変更しても、固定機構によってアーム関節点111を安定して固定できる。
更にまた、接続機構110を備える映像表示装置は、図35に示すように、スクリーン1の重量を補償する機能をプロジェクタ2に備えていても良い。
この機能は、アーム112−1の両端に接続されて接地面と鉛直となっているアームを接地面側に延長した箇所に接続されたアーム141と当該アーム141の先端に取り付けられた重量部142とからなるカウンタバランス部140で実現される。アーム141は、アーム112−1、アーム112−2と平行となっている。また、重量部142は、プロジェクタ2に対するスクリーン1の所望の位置によって重量が設定されている。なお、重量部142の重量は任意に変更可能であっても良い。
このようなカウンタバランス部140は、プロジェクタ2の前後方向における中心点を支点とし、プロジェクタ2の姿勢を所定の姿勢に保持する力を重量物によってプロジェクタ2に与えている。
このようなカウンタバランス部140を備えた映像表示装置は、操作者がスクリーン1を鉛直方向(Y軸方向)に動かすために必要な力を軽減でき、操作性を向上させることができる。更に、アクチュエータで駆動する場合では、カウンタバランス部140を有しない構成に比べて、必要な駆動力を低減できる効果がある。
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
例えば、上述した説明では、プロジェクタ2からスクリーン1に投影する映像の種類は特定していないが、映像表示装置を手術室に設置して、内視鏡手術において内視鏡カメラを直接病変のある臓器へ挿入した状態において、当該内視鏡カメラから得られた視覚情報(映像信号)を映像信号処理部12の映像生成部21に入力して、プロジェクタ2からスクリーン1に投影して、没入感のある映像を術者に提供することができる。
また、内視鏡カメラで得られた映像信号をプロジェクタ2からスクリーン1に投影するのみならず、手術室に設置されている被術者状態を計測する各種の計測機器(血圧計、心拍計)からの情報をスクリーン1に投影させるようにしても良い。この場合、血圧計、心拍計によって計測されている数値を示す文字情報を、映像生成部21で生成された映像信号に重畳させ、補正処理部22で映像の歪み補正処理を施した上でプロジェクタ2から映像光を出射させる。これによって、映像表示装置によれば、内視鏡カメラで撮像した映像信号と、被術者の生体情報(血圧、心拍等)とを含む手術状況提示用映像信号を映像生成部21で生成して、プロジェクタ2からスクリーン1に投影することで術者に提示できる手術室を実現できる。
このような手術室によれば、内視鏡カメラの映像をリアルタイムで術者に見せながら手術を進行させることができ、同時に、被術者の生体情報をリアルタイムで更新して術者に見せることができ、内視鏡カメラの映像と生体情報とを同じ視点で見せることができる。また、映像表示装置に手術のナビゲータとしての役割を持たせることで手術を的確にかつ迅速に行える手術室を提供できる。
更に、映像表示装置は、手術シミュレーションのプラグラムと連携し、例えばCG等によって被術者の映像をスクリーン1に映すと共に、術者に装着したセンサ付きグローブから得られたセンサ信号により術者の手の動きに応じた手術進行状態をCGでスクリーン1に映して、仮想的に手術シミュレーションを行うシミュレータを構成してもよい。この場合、映像生成部21は、センサ付きグローブのセンサ信号に応じて手術部位のCG映像を更新することになる。このような手術シミュレータによれば、観察者(術者)にとってはスクリーン1に映し出される映像が歪みのない映像であるため、違和感なく、仮想現実であるシミュレーションの世界に没入させることができる。