JP4221557B2 - 金の非水系分散液の製造方法、金の水系分散液の製造方法、金の水中油型エマルジョンの製造方法、及び、インクジェット記録用インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金の非水系分散液の製造方法、金の水系分散液の製造方法、金の水中油型エマルジョンの製造方法、及び、インクジェット記録用インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェト記録方法は、微細なノズルからインク組成物(本明細書において、単にインクともいう)を小滴として吐出して、文字や図形を紙等の記録媒体表面に記録する方法である。インクジェット記録方法としては、電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変化して、ノズルヘッド部分に貯えたインクを断続的に吐出して記録媒体表面に文字や記号を記録する方法や、ノズルヘッド部分に貯えたインクを吐出部分に極めて近い個所で急速に加熱し泡を発生させ、その泡による体積膨張で断続的に吐出することで記録媒体表面に文字や記号を記録する方法などが開発、実用化されている。
そして、インクジェット記録方法によれば、高解像度で高品位な画像を高速且つ簡便に印刷することが可能で、特に、カラー印刷においては写真に代わりうる画像形成方法となってきている。
【0003】
近年、カラー印刷において、様々な色の再現が益々求められるようになっており、中でも金色や銀色等を再現できるインクジェット記録用インクが求められている。
【0004】
金色を再現するための金の水系分散液としては、金イオンを含む酸性水溶液にクエン酸等の還元剤を添加して得られる金の水系分散液が知られている
しかしながら、金の水系分散液は、分散安定性が不十分であるので、それを解決するために上記金の水系分散液に界面活性剤等の添加剤を添加することが行われている(特開平7−204493号公報及び特開平8−89788号公報参照)。
【0005】
また、金イオンを含む酸性水溶液に、特定の保護高分子を添加することによって、還元剤を使用することなく金を水に分散させる技術も知られている(特開2000−281797号公報及び特開2000−160210号公報参照)。
しかしながら、これらの金の水系分散液でも、金の分散状態を確実に維持するのは困難であり、そのためには金の含有量を少なくとも0.1重量%以下とする必要があるが、金の含有量の低い水系分散液は、インクジェット記録用インクとして使用しても殆ど発色が得られない。
【0006】
一方、インクジェット記録用インクとして使用するために、金の水系分散液中の金の含有量を5重量%程度に調整すると、分散できない金が析出してしまうため、インクジェット記録用インクとしては使用できなかった。そのため、金色を発現させるインクジェット記録用インクは実用化されるに到っていない。
【0007】
また、金色を再現するための金の分散液としては、金の非水系分散液も考えられるが、水系分散液の場合と同様に、金を高濃度(0.1重量%以上)で含有し、かつ、金の分散安定性に優れる金の非水分散液は知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するものであり、金を高濃度で含有しても、金の分散安定性に優れる金の非水系分散液の製造方法、金を高濃度で含有しても、金の分散安定性に優れる金の水系分散液の製造方法、金の水中油型エマルジョンの製造方法、並びに、分散安定性に優れると共に金色を確実に再現し得るインクジェット記録用インクを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の化合物を金の微粒子と組み合わせることによって、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
[1] 下記工程を有する、金の非水系分散液の製造方法。
(1)塩化金酸(HAuCl4)水溶液から構成される水相と、テトラアルキルアンモニウム塩の疎水性有機溶液から構成される有機相とを混合する工程、
(2)下記一般式(I)で表される化合物を添加する工程、
HS(CH2)n−A (I)
(式中、Aは親水性基を表し、nは1〜12の整数である。)
(3)還元剤を添加する工程、及び、
(4)前記水相と前記有機相とを分離する工程
【0011】
[2] 前記一般式(I)において、Aが、カルボン酸及び/又はスルホン酸である、上記[1]に記載の金の非水系分散液の製造方法。
[3] 上記[1]若しくは[2]に記載の金の非水系分散液の製造方法から得られる金の非水系分散液の有機溶媒を除去し、水を添加することを特徴とする、金の水系分散液の製造方法。
【0012】
[4] 上記[1]若しくは[2]に記載の金の非水系分散液の製造方法から得られる金の非水系分散液を、水に更に分散させることを特徴とする、金の水中油型エマルジョンの製造方法。
[5] 上記[3]に記載の金の水系分散液の製造方法で得られる金の水系分散液及び/又は上記[4]に記載の金の水中油型エマルジョンの製造方法で得られる金の水中油型エマルジョンを含有するインクジェット記録用インク。
【0013】
従来の金微粒子分散液の製法では、金微粒子の表面は塩化物イオン等が吸着されて帯電し、静電反発力によって分散安定性を得ている。しかしながら水系の環境下で、イオン吸着による分散安定化だけでは、金微粒子の濃度が高くなり分散液中のイオン量が増えた場合には、塩析されたような状態になる為、分散が不安定になり金微粒子が凝集して沈降・沈殿が生成する等の不具合を生じる。それに対して、トルエンのような疎水性有機溶媒中では、水溶性イオン性物質の混入による凝集・沈降を防止出来るので、静電反発力による分散安定化が比較的容易である。しかし塩化金酸の還元による金微粒子の還元反応自体を疎水性有機溶媒中で行う事は、塩化金酸の溶解性の問題から困難である。
【0014】
一般的に、硫黄原子は金表面に対して特異的に吸着される事が知られており、チオール(−SH)基や−S−S−結合を有するジスルフィドのような化合物等は金表面に対して、これら官能基が金表面に配向するように吸着する事が知られている。本発明ではこの現象を利用し、水溶性であり、親水基を有するチオール化合物(I)を含有する反応水相中で還元反応を行い、金微粒子を生成させると共に、化合物(I)を金微粒子表面に吸着させ、金微粒子表面に化合物(I)からなる保護層を設け、その表面を親水性に改質する事によって、反応水相中での分散安定性を確保する事を達成している。金微粒子−保護層界面はAu−Sの相互作用によって、強固に吸着し保護層を形成する。また、直鎖アルキル基の鎖長を変化させる事で保護層の厚さを制御する事も可能である。この保護層の効果により、金微粒子を反応水相から単離した場合にも凝集による平均粒子径及び粒度分布の変化を抑制する事が可能となっている。但し、この場合でも、加熱乾燥は熱による凝集を引き起こす為、好ましくない。また単離した金微粒子は容易に再分散可能であって、水を主成分とする媒体及び疎水性有機溶媒中へ分散が可能である。このように、上記一般式(I)で表わされる化合物を使用する事で金微粒子表面に凝集を防止し、分散安定性を向上する保護層が形成され、従来の方法では不可能であった金微粒子の高濃度化が可能になったのではないかと考えている。
また、上記の機構はあくまで仮定であって、本発明はこの機構に限定して解釈されるものではない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の説明において、本発明の金の非水系分散液の製造方法によって得られる金の非水系分散液を参考形態として記載する。
本発明の参考形態に係る金の非水系分散液は、金微粒子と、下記一般式(I)で表される化合物とを含有することを特徴とする。
HS(CH2)n−A (I)
【0016】
一般式(I)中、
Aは親水性基を表し、カルボン酸、スルホン酸及びそれらの塩を挙げることができる。特には、カルボン酸及び/又はスルホン酸であるのが好ましく、これにより、金の非水系分散液の分散安定性をより確実に確保できる。特に好ましくはカルボン酸である。
nは1〜12の整数であり、好ましくは2〜10である。
【0017】
上記の一般式(I)で表される化合物には、直鎖のアルキル基の一端にメルカプト基を有し、他端に親水性官能基、例えばカルボキシル基、スルホン基及びそれらの塩等を有する水溶性化合物が挙げられる。例えばカルボキシル基を有するものには、3-メルカプトプロピオン酸、5-カルボキシ-1-ペンタンチオール、7-カルボキシ-1-ヘプタンチオール、11-メルカプトウンデカン酸等が、スルホン基を有するものには、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0018】
本発明の参考形態においては、金微粒子と上記一般式(I)で表される化合物との組み合わせによって、金を高濃度で含有しながらも、高い分散安定性を維持することが可能となる。
本発明において、金の非水系分散液中での金微粒子の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、最も好ましくは5重量%以上であり、通常20重量%以下であるのが望ましい。
また、上記一般式(I)で表される化合物の含有量は、金微粒子に対して好ましくは5〜120重量%、より好ましくは30〜100重量%である。
【0019】
尚、金微粒子とは、分散液中に分散させられ得る程度の大きさであれば特に限定されるものではないが、好ましくは平均粒径100nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。また、通常、平均粒径20nm以下となっている。このような金微粒子は、例えば塩化金酸等を所望の分散剤の存在下で、還元剤によって還元させることによって生成する。特には、塩化金酸等を上記した一般式(I)の化合物の存在下で、還元剤によって還元させることによって生成させるのが好ましい。
【0020】
本発明の参考形態に係る金の非水系分散液は、限定されるものではないが、そのままで、又は、所望の工程を経て水系に変えられた後に、薬品、化粧品、食品、水性塗料、及び、金色及び金の各種特性を再現するための各種インク等に適用することができるが、特には金色及び金の各種特性を再現するための各種インクに適用されるのが好ましい。
【0021】
次に、金の非水系分散液の製造方法について説明する。
金の非水系分散液の本発明の実施形態に係る製造方法としては、特に下記の(1)〜(4)の工程を有する製造方法が好ましい。
(1)塩化金酸(HAuCl4)水溶液から構成される水相と、テトラアルキルアンモニウム塩の疎水性有機溶液から構成される有機相とを混合する工程、
(2)下記一般式(I)で表される化合物を添加する工程、
HS(CH2)n−A (I)
(式中、Aは親水性基を表し、nは1〜12の整数である。)
(3)還元剤を添加する工程、及び、
(4)前記水相と前記有機相とを分離する工程
【0022】
工程(1)において使用される、テトラアルキルアンモニウム塩の疎水性有機溶液中のテトラアルキルアンモニウム塩としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、通常炭素数1〜16の、好ましくは炭素数1〜12の置換されていてもよいアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、3−ブロモプロピル基等が挙げられる。中でも、オクチル基が好ましい。従って、本発明の実施形態において好ましいテトラアルキルアンモニウム塩は、テトラオクチルアンモニウム塩である。
より具体的には、臭化テトラアルキルアンモニウム、塩化テトラアルキルアンモニウム等を挙げることができ、中でも、臭化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。
【0023】
また、工程(1)において使用される、テトラアルキルアンモニウム塩の疎水性有機溶液中の疎水性有機溶液としては、限定されるものではないが、ベンゼン,トルエン,キシレン,シクロヘキサン,ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素系、n−ヘキサン,n−ヘプタン,n−オクタン,イソオクタン,ミネラルスピリット等の通常の有機溶媒が使用され、好ましく芳香族炭化水素系の有機溶媒であり、特にはトルエンが好ましい。
本発明の実施形態においては、このテトラアルキルアンモニウム塩が、塩化金酸を水相から有機相へ移動させるための触媒の作用をしていると考えられる。
工程(1)における水相と有機相との混合時間は、2時間以上が好ましく、これにより、塩化金酸を有機相に充分に移動させることができる。
【0024】
工程(2)において使用される化合物は、上記金の非水系分散液で説明された化合物であり、添加することにより、有機相中に存在する。
工程(3)において使用される還元剤は、限定されるものではないが、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジン等が挙げられる。
ここで、還元剤は水溶性のものが好ましく、特に水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
本発明の実施形態においては、限定されるものではないが、この還元剤による還元反応が、水相と有機相との界面で行われ、ゆっくりと反応が進行し、そのため金の凝縮が起こりにくくなり、ひいては微粒子の金を安定的に分散させることが可能になったものと推測される。
【0025】
金の非水系分散液の本発明の実施形態に係る製造方法において、塩化金酸(HAuCl4)水溶液は、通常0.1〜20重量%の、好ましくは0.5〜5重量%の濃度のものが使用される。また、テトラアルキルアンモニウム塩の疎水性有機溶液は、通常0.1〜10重量%の、好ましくは1〜5重量%の濃度のものが使用される。両者の混合比は、好ましくは水相:有機相=10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20である。
【0026】
また、工程(2)における一般式(I)で表される化合物の添加量は、有機相の重量に対して、好ましくは5〜120重量%、より好ましくは30〜100重量%である。
更に、工程(3)における還元剤の添加量は、塩化金酸(HAuCl4)の重量に対して、好ましくは5〜120重量%、より好ましくは30〜100重量%である。
【0027】
次に、金の水系分散液の製造方法について説明する。
本発明の実施形態においては、上記方法から得られる金の非水系分散液から、水系が適する用途にも使用可能にするために、金の水系分散液を製造することができる。
即ち、金の水系分散液の本発明の実施形態に係る製造方法は、金の非水系分散液の有機溶媒を除去し、水を添加することを特徴とする。
【0028】
有機溶媒の除去は、限定されるものではないが、自然乾燥、真空乾燥機による減圧乾燥、真空乾燥等の、熱凝集を誘起しない乾燥手法が使用できる。
この有機溶媒の除去は、実質的に完全に行われるのが好ましいが、水を添加して最終的に出来上がる金の水系分散液中、有機溶媒量が0.01重量%以下となるように行われればよい。
【0029】
金の水系分散液の本発明の実施形態に係る製造方法において、添加される水の量は、水系分散液中の金微粒子の濃度が1〜10重量%となる量であるのが好ましい。
この水系分散液によれば、金を高濃度(0.1重量%以上)で含有しながらも、高い分散安定性を維持することが可能である。
【0030】
次に、金の油中水型エマルジョンの製造方法について説明する。
本発明の実施形態においては、上記方法から得られる金の非水系分散液から、水系が適する用途にも使用可能にするために、金の油中水型エマルジョンをも製造することができる。
即ち、金の油中水型エマルジョンの本発明の実施形態に係る製造方法は、金の非水系分散液を更に水に分散させることを特徴とする。
尚、水に分散させる際に、従来から知られている分散剤、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタンモノエステル類、ソルビタンジエステル類、ソルビタントリエステル類、ソルビタンテトラエステル類、ポリオキシエチレン付加ソルビタンエステル、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールエステル類、セチルアルコール等の高級アルコール、オレイン酸等の脂肪酸類及びそのエステル等を用いてもよい。
【0031】
本発明の金の油中水型エマルジョンの製造方法において、添加される水の量は、水相と有機相とが10:90〜90:10となるのが好ましく、20:80〜80:20となるのがより好ましい。
【0032】
次に、インクジェット記録用インクについて説明する。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクは、上記した金の水系分散液の製造方法及び/又は金の水中油型エマルジョンの製造方法で得られた、金の水系分散液及び/又は金の水中油型エマルジョンを含有することを特徴とする。ここで、金微粒子は、インク中に好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%となるように含有される。
【0033】
また、本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクは、通常のインクジェット記録用インクに使用されている各種添加剤を添加することが可能である。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクに含有され得る添加剤としては、湿潤剤、浸透剤、界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0034】
インクジェット記録用インクは、保水性と湿潤性をもたらす目的で、高沸点水溶性有機溶媒からなる湿潤剤を含有するのが好ましい。このような高沸点水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、などの多価アルコール類等を挙げることできる。この中でも、沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶媒が好ましい。これらの高沸点水溶性有機溶媒は単独または2種以上混合して使用することができる。これらの高沸点水溶性有機溶媒の含有量は、インクジェット記録用インクの全重量に対して、好ましくは0.01〜20重量%の範囲程度であり、より好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0035】
インクジェット記録用インクは、水性溶媒の記録媒体に対する浸透を促進する目的で、浸透剤を含有するのが好ましい。水性溶媒が記録媒体に対して素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない記録物を確実に得ることができる。このような浸透剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類(グリコールエーテル類ともいう)、および1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類から適宜選択されて良いが、特に、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ペンタジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。これらの浸透剤の含有量は、インクジェット記録用インクの全重量に対して、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜10重量%である。特に、1,2−ペンタジオール、1,2−ヘキサンジオール等の1,2−アルキルジオールを用いることによって、印字後の乾燥性と滲みが格段に改善される。
【0036】
また、前掲したグリコールエーテル類を使用する場合には、特に、グリコールエーテル類と後述する界面活性剤としてのアセチレングリコール化合物とを併用するのが好ましい。
さらに、水溶性有機溶媒としては、2−ピロリドン,N−メチルピロリドン,ε−カプロラクタム,ジメチルスルホキシド,スルホラン,モルホリン,N−エチルモルホリン,1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の極性溶媒を挙げることができ、これらから一種以上選択して用いるのが好ましい。
これらの極性溶媒の含有量は、インクジェット記録用インクの全重量に対して、好ましくは0.01重量%〜20重量%であり、より好ましくは1重量%〜10重量%である。
【0037】
また、インクジェット記録用インクは、界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤を含んでなることが好ましい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸、アシルメチルタウリン酸、ジアルキルスルホ琥珀酸等のスルホン酸型、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;脂肪酸塩、アルキルザルコシン塩などのカルボン酸型、;アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩などのリン酸型エステル型、;等が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどのエチレンオキシド付加型;グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステルなどのポリオールエステル型;多価アルコールアルキルエーテルなどのポリエーテル型;アルカノールアミン脂肪酸アミドなどのアルカノールアミド型;が挙げられる。
【0038】
特に、インクジェット記録用インクは、界面活性剤としてアセチレングリコール化合物を含んでなることが望ましい。アセチレングリコール化合物の添加によって、インクを構成する水性溶媒の記録媒体への浸透性を高くでき、種々の記録媒体において滲みの少ない印刷が期待できる。
本発明において用いられるアセチレングリコール化合物の好ましい具体例としては、下記の式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
上記式(1)において、m及びnは、それぞれ0≦m+n≦50を満たす数である。また、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してアルキル基(好ましくは炭素数6以下のアルキル基)である。
上記式(1)で表される化合物の中でも、特に好ましくは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。上記式(1)で表される化合物は、アセチレングリコール系界面活性剤として市販されている市販品を利用することも可能であり、その具体例としては、サーフィノール104、82、465、485またはTG(いずれもAir Products and Chemicals社より入手可能)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上、日信化学社製 商品名)が挙げられる。
【0041】
これらの界面活性剤の含有量は、インクジェット記録用インクの全重量に対して、好ましくは0.01〜10重量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0042】
また、インクジェット記録用インクは、糖を含有してもよい。水溶性で保水効果のある糖を使用することによって、水分の蒸発の抑制効果が高まり、ヘッドのノズル先端部での乾燥によるインクの粘度上昇やインクの固化を防止できるため、インクの目詰まりをより確実に防止することができ(目詰まり信頼性を向上でき)、長期にわたって良好な吐出安定性を確保することができる。糖としては、単糖類、少糖類、多糖類あるいは配糖体などを挙げることができ、アルデヒド型、ケトン型あるいは糖アルコール型を挙げることができる。
糖の含有量は、インクジェット記録用インクの全重量に対して、好ましくは2〜20重量%である。
【0043】
また、インクジェット記録用インクは、必要に応じて、pH調整剤を含有することもでき、好ましくは、pHを7〜12の範囲、より好ましくは、8〜10の範囲に設定される。
pH調整剤としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、酒石酸水素カリウムなどのカリウム金属類、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、モルホリン、プロパノールアミンなどのアミン類などが好ましい。
【0044】
さらに、インクジェット記録用インクは、防カビ、防腐、防錆の目的で、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン〔製品名:プロキセルXL(アビシア製)〕、3,4−イソチアゾリン−3−オン、4,4−ジメチルオキサゾリジン等を含むことができる。
【0045】
さらに、インクジェット記録用インクは、記録ヘッドのノズルが乾燥するのを防止する目的で、尿素、チオ尿素、及び/又はエチレン尿素等を含むことができる。
【0046】
インクジェット記録用インクは、それぞれ、表面張力が20〜45mN/mであることが好ましく、25〜40mN/mであることが更に好ましい。表面張力が20mN/m未満であると、ヘッドのノズル周辺部を濡らすため吐出安定性が低下するおそれがあり、45mN/mを超えると、普通紙上において滲みが発生したり、多色印刷の場合にブリードが発生するおそれがある。
【0047】
尚、本発明の実施形態に係る金の水系分散液及び/又は金の水中油型エマルジョンを用いたインクジェット記録用インクは、紙等の媒体に印刷された時点で金色を呈するものではなく、その後の処理(例えば、加熱処理、UV処理等)によって金色の光沢を呈するものも含む。また、基板上に印刷を行う事で、電子回路のパターニングや端子の処理等に使用する事も可能である。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1:金の非水系分散液の製造
0.03mol/lの塩化金酸水溶液30mLを反応容器に入れ、次いで0.05mol/lの臭化テトラオクチルアンモニウムのトルエン溶液80mLを添加して、水相と有機溶媒相の2相からなる混合液を調製した。常温、常圧下で3時間攪拌混合して、塩化金酸を水相から有機溶媒相へ移動させ、更に200mgのHS(CH2)10COOH(アルドリッチ社製)を有機相へ添加し、更に常温、常圧下で1時間攪拌混合した。その後、0.4mol/lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液25mLを添加し、常温、常圧下で3時間攪拌混合して、反応させた。反応終了後、水相は無色透明であり、有機溶媒相は暗紫色であった。水相と有機溶媒相とを分離し、金コロイドのトルエン分散液を得た。この分散液は、1週間放置した後でも沈殿物は認められず、分散安定性に優れたものであった。
次いで、この金コロイドのトルエン分散液80mLをロータリーエバポレーターを用いて、20mLになるまでトルエンを減圧留去し、約8重量%の濃度まで濃縮した。尚、この分散液をガラス板上に塗布し、150℃に加熱しながら低圧水銀灯でUV照射を行うことにより、金光沢を有する膜が形成することを確認した。
【0050】
実施例2:金の水系分散液の製造
0.03mol/lの塩化金酸水溶液30mLを反応容器に入れ、次いで0.05mol/lの臭化テトラオクチルアンモニウムのトルエン溶液80mLを添加して、水相と有機溶媒相の2相からなる混合液を調製した。常温、常圧下で3時間攪拌混合して、塩化金酸を水相から有機溶媒相へ移動させ、更に200mgのHS(CH2)10COOHを有機相へ添加し、更に常温、常圧下で1時間攪拌混合した。その後、0.4mol/lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液25mLを添加し、常温、常圧下で3時間攪拌混合して、反応させた。反応終了後、水相は無色透明であり、有機溶媒相は暗紫色であった。水相と有機溶媒相とを分離し、金コロイドのトルエン分散液を得た。この分散液に無水エタノール400mLを添加し、攪拌混合した後、1晩静置して金微粒子を沈殿させた。続いて上澄み液を除去してから、再び無水エタノール400mLを添加し、攪拌混合し、1晩静置して金微粒子を沈殿させる洗浄操作を合計3回繰り返した後に、自然乾燥を行って金微粒子を得た。この金微粒子は暗紫色の粉体であった。
尚、この金微粒子を、超音波分散機を用いて、イオン交換水中に分散させて、8.0重量%の金の水系分散液を調製した。
また、この分散液をガラス板上に塗布し、150℃に加熱しながら低圧水銀灯でUV照射を行うことにより、金光沢を有する膜が形成することを確認した。また、上記温度を200℃とした場合も金光沢を有する膜が形成することを確認した。
【0051】
実施例3:金の水中油型エマルジョンの製造
上記実施例2にて作製した金微粒子30gを混合容器に量り取り、それにトルエン70gを加え、1時間攪拌して、金微粒子のトルエン分散液を調製した。これにイオン交換水197g及びソルビタンラウレート3.0gを添加し、攪拌しながら超音波照射による分散処理を行うことにより、金濃度が10重量%の油中水型エマルジョンを得た。
また、このエマルジョンをガラス板上に塗布し、200℃に加熱することで、金光沢を有する膜が形成することを確認した。
【0052】
実施例4:インクジェット記録用インクの製造
下記に記載の成分を配合・溶解させてインク溶媒を調製し、次いで上記実施例3で得られたエマルジョン60gを攪拌しながら、調製したインク溶媒40gを徐々に滴下して、常温で20分間攪拌した。その後、5μmのメンブランフィルターで濾過して、実施例4のインクジェット記録用インクを調製した。インク中において、金の微粒子は安定に分散していた。
【0053】
インク溶媒
グリセリン 30重量%
ノニオン系界面活性剤 2.5重量%
(Air Product and Chemicals社製、
商品名サーフィノール465)
トリエタノールアミン 2.5重量%
1,2−ヘキサンジオール 7.5重量%
糖アルコール(林原生物化学研究所製、 10重量%
商品名HS−500)
イオン交換水 残量
【0054】
実施例4のインクジェット記録用インクを、インクジェットプリンタEM−930C(セイコーエプソン株式会社の商品名)を用いてPM/MC写真用紙(セイコーエプソン株式会社製,型番KA420MSH)に対して印刷し、その後、150℃での加熱処理を行いながら低圧水銀灯によるUV照射処理を行ったところ、金色を呈する印刷物を得ることができた。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金の非水系分散液、金の水系分散液及び金の水中油型エマルジョンは、金を高濃度で含有しても、金の分散安定性に優れ、またこれを用いたインクジェット記録用インクは、分散安定性に優れると共に金色を確実に再現し得る。
Claims (5)
- 下記工程を有する、金の非水系分散液の製造方法。
(1)塩化金酸(HAuCl4)水溶液から構成される水相と、テトラアルキルアンモニウム塩の疎水性有機溶液から構成される有機相とを混合する工程、
(2)下記一般式(I)で表される化合物を添加する工程、
HS(CH2)n−A (I)
(式中、Aは親水性基を表し、nは1〜12の整数である。)
(3)還元剤を添加する工程、及び、
(4)前記水相と前記有機相とを分離する工程 - 前記一般式(I)において、Aが、カルボン酸及び/又はスルホン酸である、請求項1に記載の金の非水系分散液の製造方法。
- 請求項1若しくは2に記載の金の非水系分散液の製造方法から得られる金の非水系分散液の有機溶媒を除去し、水を添加することを特徴とする、金の水系分散液の製造方法。
- 請求項1若しくは2に記載の金の非水系分散液の製造方法から得られる金の非水系分散液を、水に更に分散させることを特徴とする、金の水中油型エマルジョンの製造方法。
- 請求項3に記載の金の水系分散液の製造方法で得られる金の水系分散液及び/又は請求項4に記載の金の水中油型エマルジョンの製造方法で得られる金の水中油型エマルジョンを含有するインクジェット記録用インク。
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